特許第6474787号(P6474787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474787アルカリ性次亜塩素酸塩水性組成物中の腐食抑制剤としての高分子量ポリアクリル酸及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474787
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】アルカリ性次亜塩素酸塩水性組成物中の腐食抑制剤としての高分子量ポリアクリル酸及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/54 20060101AFI20190218BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20190218BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20190218BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20190218BHJP
   C23G 1/18 20060101ALI20190218BHJP
   C23F 11/12 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C11D7/54
   C11D7/22
   C11D7/10
   C11D17/08
   C23G1/18
   C23F11/12 101
【請求項の数】8
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-509026(P2016-509026)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2016-518491(P2016-518491A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】US2014034094
(87)【国際公開番号】WO2014172318
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】61/812,855
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・イー・シャルマン
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−273700(JP,A)
【文献】 特表2001−525452(JP,A)
【文献】 特開平01−004699(JP,A)
【文献】 特開平06−235000(JP,A)
【文献】 特表平11−501067(JP,A)
【文献】 特開平02−043299(JP,A)
【文献】 特開平02−070799(JP,A)
【文献】 特開平06−080999(JP,A)
【文献】 米国特許第05053158(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00541203(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00812909(EP,A1)
【文献】 米国特許第05688756(US,A)
【文献】 特開平02−289699(JP,A)
【文献】 特開2006−150267(JP,A)
【文献】 特開2006−225742(JP,A)
【文献】 特表2012−532245(JP,A)
【文献】 特開2013−053182(JP,A)
【文献】 特開昭60−059081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/54
C11D 7/10
C11D 7/22
C11D 17/08
C23F 11/12
C23G 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも11のpHを有し、(a)2〜15重量%の金属次亜塩素酸塩、及び(b)少なくとも350,000の重量平均分子量を有する0.2〜4重量%のポリアクリル酸を含む、水性組成物であって、前記ポリアクリル酸が0.3重量%以下の架橋剤の重合残基を含み、前記水性組成物が液体排水管洗浄剤である、水性組成物
【請求項2】
前記水性組成物が、少なくとも12のpHを有する、請求項1に記載の成物。
【請求項3】
0.5〜2重量%の前記ポリアクリル酸を含む、請求項1または2に記載の成物。
【請求項4】
前記金属次亜塩素酸塩が、次亜塩素酸ナトリウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成物。
【請求項5】
4〜11重量%の次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成物。
【請求項6】
少なくとも350,000重量平均分子量を有する0.2〜4重量%のポリアクリル酸を添加することによって、少なくとも11のpH及び2〜15重量%の金属次亜塩素酸塩を有する水性組成物における金属パイプの腐食を抑制するための方法であって、前記ポリアクリル酸が0.3重量%以下の架橋剤の重合残基を含み、前記水性組成物が液体排水管洗浄剤である、方法
【請求項7】
前記排水管洗浄剤が、少なくとも12のpHを有する、請求項に記載の法。
【請求項8】
記水性組成物が、0.5〜2重量%の前記ポリアクリル酸を含み、前記水性組成物が、4〜11重量%の次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項に記載の法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、概して、腐食抑制剤としてポリアクリル酸を含有する高アルカリ性の酸化組成物に関する。
【0002】
低分子量分散剤ポリマーは、腐食抑制剤として使用されている。例えば、米国特許第5,976,414号は、弱アルカリ性水性組成物中の腐食抑制パッケージの一部として500〜15,000の範囲の分子量を有するポリアクリル酸を開示している。しかしながら、より高いアルカリ性の酸化系において腐食抑制の必要性が存在する。
【0003】
本発明によって解決される問題は、高アルカリ性の酸化組成物において改善された耐腐食性を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも11のpHを有し、(a)2〜15重量%の金属次亜塩素酸塩、及び(b)少なくとも40,000の重量平均分子量(M)を有する0.2〜4重量%のポリアクリル酸を含む、水性組成物を対象とする。
【0005】
本発明は、少なくとも40,000の数平均分子量を有する0.2〜4重量%のポリアクリル酸を添加することによって、少なくとも11のpH、及び2〜15重量%の金属次亜塩素酸塩を有する水性組成物の腐食を抑制するための方法をさらに対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0006】
全てのパーセンテージは重量パーセンテージ(重量%)であり、別途示されない限り、全ての分率は重量により、全ての温度は℃単位である。ポリマー中の重合モノマー残基のパーセンテージは、固体ポリマーの全重量に基づき、モノマーのパーセンテージは、総モノマー重量に基づく。「室温(room temperature)」(室温(room temp.))で行われた測定は、20〜25℃で行われた。当技術分野で既知のように、重量平均分子量Mおよび数平均分子量Mは、ポリアクリル酸基準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって計測される。GPCの技術は、Modern Size Exclusion Chromatography,W.W.Yau,J.J.Kirkland,D.D.Bly;Wiley−Interscience,1979、およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis,J.P.Sibilia;VCH,1988,p.81−84において詳細に論じられる。本明細書に報告される分子量の単位は、ダルトンである。
【0007】
架橋剤は、2つ以上の非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーである。架橋剤の例は、例えば、ジオールまたはポリオールのジアリルエーテルまたはトリアリルエーテル、及びジ(メタ)アクリルイルエステルまたはトリ(メタ)アクリルイルエステル(例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(TMPDAE)及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA))、二酸または三酸のジアリルエステルまたはトリアリルエステル、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルスルホン、リン酸トリアリル、ジビニル芳香族(例えば、ジビニルベンゼン)を含む。
【0008】
好ましくは、ポリアクリル酸のMは、少なくとも50,000、好ましくは少なくとも60,000、好ましくは少なくとも80,000、好ましくは少なくとも100,000、好ましくは少なくとも150,000、好ましくは少なくとも200,000、好ましくは少なくとも250,000、好ましくは少なくとも300,000、好ましくは少なくとも350,000である。好ましくは、ポリアクリル酸のMは、1,000,000以下、好ましくは800,000以下、好ましくは700,000以下、好ましくは600,000以下、好ましくは500,000以下である。本明細書において使用されるとき、「ポリアクリル酸」という用語は、ポリアクリル酸及びその塩、例えば、水酸化ナトリウムを含有する高pH水性配合物中に存在するポリアクリル酸ナトリウム塩を指す。ポリアクリル酸の分子量は、酸形態で測定されるものであり、重量パーセンテージは、酸形態に基づく。
【0009】
好ましくは、組成物中のポリアクリル酸(複数可)の量は、少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.6重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%である。好ましくは、組成物中のポリアクリル酸(複数可)の量は、3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、好ましくは2重量%以下、好ましくは1.7重量%以下、好ましくは1.4重量%以下である。
【0010】
好ましくは、金属次亜塩素酸塩は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、またはそれらの組み合わせであり、好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはカルシウム塩であり、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムである。好ましくは、金属次亜塩素酸塩(複数可)の量は、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは13重量%以下、好ましくは12重量%以下、好ましくは11重量%以下、好ましくは10重量%以下である。好適な実施形態において、組成物は、最大3重量%、好ましくは0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2重量%の過酸化水素またはその塩をさらに含む。
【0011】
好ましくは、水性組成物のpHは、少なくとも11.5、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも12.3、好ましくは少なくとも12.6である。好ましくは、水性組成物のpHは、14以下、好ましくは13.5以下である。好ましくは、水性組成物は、0.2〜5重量%の1つ以上のアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、好ましくは水酸化ナトリウムを含有する。好ましくは、アルカリ金属水酸化物の量は、少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.6重量%、好ましくは3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、好ましくは2重量%以下である。
【0012】
好ましくは、水性組成物は、少なくとも75重量%の水、好ましくは少なくとも78重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも82重量%、好ましくは少なくとも83重量%、好ましくは少なくとも84重量%、好ましくは少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも86重量%の水を含む。好ましくは、水性組成物は、95重量%以下の水、好ましくは93重量%以下、好ましくは91重量%以下、及び好ましくは90重量%以下の水を含む。好ましくは、水性組成物は、水、ポリアクリル酸、次亜塩素酸金属、及びアルカリ金属水酸化物以外の10重量%未満の成分、好ましくは7重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは4重量%未満、好ましくは3重量%未満の成分を含有する。
【0013】
好ましくは、ポリアクリル酸は、0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、好ましくは0.03重量%以下、好ましくは0.02重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、好ましくは0.005重量%以下、好ましくは0.001重量%以下の架橋剤の重合残基を含む。好ましくは、ポリアクリル酸は、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2重量%以下、好ましくは1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下のアクリル酸以外のモノマーの重合残基を含む。ポリアクリル酸鎖の末端基は重要ではない。
【0014】
本発明の水性組成物の例は、液体排水管洗浄剤及び液体塩素系漂白剤、好ましくは液体排水管洗浄剤である。液体排水管洗浄剤中に存在し得る他の成分には、表面活性剤、増粘剤、ケイ酸塩、及びリン酸塩が含まれる。好ましくは、アミンオキシド界面活性剤は、好ましくは1〜3重量%の量で存在する。本明細書に記載される高分子量ポリアクリル酸を含有しない液体排水管洗浄剤は、金属パイプ、特に亜鉛メッキ鋼で作製されたものの過剰な腐食を引き起こし得る。
【実施例】
【0015】
LIQUID PLUMR排水管洗浄剤の商品試料を購入し、本明細書に記載される試験に使用した。LIQUID PLUMR排水管洗浄剤は、pH13を有する。7.62cm×1.27cm×0.17cmの寸法の亜鉛メッキ鋼の切り取り試片を試験に使用した。様々なポリアクリル酸を、1重量%(固体として)のレベルで排水管洗浄剤に添加し、切り取り試片を静止条件下で、室温で6日間排水管洗浄剤に浸漬した。実験室浸漬腐食試験により、腐食を決定した。市販の金属標本を調製し、所定の期間及び温度で試験溶液に浸漬した。試験の最後に、標本を洗浄し、秤量し、実体ズーム顕微鏡を使用して視覚的に試験した。均一腐食率を計算し、mpy(mpy:1年当たりのミリインチ)単位の浸透率として報告した。mm/y(mm/y:1年当たりのミリメートル)のSI単位で腐食率を報告することも一般的であり、1mpyは、0.0254mm/yに等しい。ASTM G1−03「腐食試験標本を調製、洗浄、及び評価するための標準的技法」ならびにASTM G31−72「金属の実験室浸漬腐食試験のための標準的技法」に従って試験を行った。以下の表は、試験された排水管洗浄剤試料と結果を記載する。
【0016】
【表1】
【0017】
ポリアクリル酸Aは、ホスフィノ末端基を有し、B及びDは、スルホン酸塩末端基を有し、Cは、ホスホノ末端基を有する。
【0018】
上記の試験はまた、炭素鋼切り取り試片を使用して行った。試料間で腐食率の差は観察されなかった。