特許第6474799号(P6474799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474799
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】アビラテロン及びその中間体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20190218BHJP
   A61K 31/58 20060101ALN20190218BHJP
   A61P 13/08 20060101ALN20190218BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20190218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   C07J43/00
   !A61K31/58
   !A61P13/08
   !A61P35/00
   !C07B61/00 300
【請求項の数】30
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-522894(P2016-522894)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-523889(P2016-523889A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】IB2014002020
(87)【国際公開番号】WO2014207567
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/840,590
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513105579
【氏名又は名称】サイノファーム タイワン,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】クオ ルン−ホワーン
(72)【発明者】
【氏名】ファーン シヤオ−ピン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ミーン−フオン
(72)【発明者】
【氏名】チャーン ユイ−シュヨン
【審査官】 吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/110941(WO,A2)
【文献】 国際公開第2006/021776(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103059091(CN,A)
【文献】 Tetrahedron Letters,2001年,Vol.42, No.3,pp.369-372,DOI: 10.1016/S0040-4039(00)01970-5
【文献】 Tetrahedron Letters,2001年,Vol.42, No.51,pp.9081-9084,DOI: 10.1016/S0040-4039(01)01980-3
【文献】 Steroids,2010年,Vol.75, No.12,pp.936-943,DOI: 10.1016/j.steroids.2010.05.018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
のアビラテロンの調製方法であって、
(a)式(II)
【化2】
の化合物を式(III)
【化3】
(上式中、Rはヒドロキシ保護基を表す)の化合物に転化すること、
(b)式(III)の化合物をトリフレート化剤と反応させ、次いで、強塩基と反応させて、式 (IV)
【化4】
の化合物を提供すること、
(c)式(IV)の化合物を脱保護し、式(V)
【化5】
の化合物を提供すること、及び、
(d)式(V)の化合物を、式(VI)
【化6】
(上式中、Xはボリル基である)の化合物とカップリングさせ、式(I)のアビラテロンを提供すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ保護基はトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、テトラヒドロピラニル(THP)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)及びトリフェニルメチル(トリチル、Tr)からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシ保護基はトリメチルシリル(TMS)である、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記トリフレート化剤はN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)、N-(5-クロロ-2-ピリジル)トリフリミド又はN-(2-ピリジル)トリフリミドからなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記トリフレート化剤はN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)である、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記強塩基はアミドをベースとする有機金属試薬である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記アミドをベースとする有機金属試薬はナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)及びリチウムジイソプロピルアミド(LDA)からなる群より選ばれる、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記アミドをベースとする有機金属試薬はナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)である、請求項記載の方法。
【請求項9】
Xは式-BY2(式中、Yはアルキル、アルコキシ又はヒドロキシ基から選ばれる)を有する、請求項記載の方法。
【請求項10】
Yはエチル及びヒドロキシからなる群より選ばれる、請求項記載の方法。
【請求項11】
工程(d)はパラジウム触媒の存在下に行われる、請求項記載の方法。
【請求項12】
前記パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、ジクロロ(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム (II) (PdCl2(dppe)2)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン(PdCl2(dppf).CH2Cl2)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PhCN)2Cl2)及びビス (アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(CH3CN)2Cl2)からなる群より選ばれる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式(I)のアビラテロンはスカベンジャーにより精製される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記スカベンジャーは二酸化ケイ素(SiO2)であるか、又は
【化7】
から成る群から選択されるシリカ系スカベンジャーである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記工程(d)は有機溶媒中で行われる、請求項記載の方法。
【請求項17】
前記有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、エタノール、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、トルエン(PhMe)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記有機溶媒は水と組み合わされている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
工程(d)は塩基の存在下に行われる、請求項記載の方法。
【請求項20】
前記塩基は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
工程(a)〜(d)は1つの反応容器において行われる、請求項記載の方法。
【請求項22】
式(I)のアビラテロンを式(I’)
【化8】
の酢酸アビラテロンへと転化させることをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項23】
前記転化は有機溶媒中に酢酸アビラテロンの溶液を提供すること、
前記溶液を加熱すること、
結晶形態の酢酸アビラテロンを分離すること、及び、
分離された結晶形態の酢酸アビラテロンを乾燥すること、
を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記有機溶媒はn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記有機溶媒は、場合により、水と組み合わされている、請求項23記載の方法。
【請求項26】
結晶形態の酢酸アビラテロンは、5.8°、12.1°、14.8°、15.1°、15.9°、18.4°、18.9°、21.7°、22.4°及び23.0°± 0.2の2θでのピークを有する粉末X-線回折パターンを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記粉末X-線回折パターンは図1中に示される、請求項26記載の方法。
【化9】
【請求項28】
結晶形態の酢酸アビラテロンは図2中に示される赤外線吸収スペクトルを示す、請求項23記載の方法。
【化10】
【請求項29】
結晶形態の酢酸アビラテロンは図3中に示されるDSC曲線を示す、請求項23記載の方法。
【化11】
【請求項30】
結晶形態の酢酸アビラテロンは図4中に示されるTGA曲線を示す、請求項23記載の方法。
【化12】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2013年6月28日に出願された米国仮特許出願第61/840,590号の利益を35 U.S.C. § 119(e)の下に主張する出願であり、その内容の全体を参照により本明細書に取り込む。
【0002】
連邦政府支援研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する声明
適用なし
【0003】
コンパクトディスクで提出される「配列表」、表又はコンピュータプログラムリスティングの付録に対する参照
適用なし
【0004】
発明の背景
本発明は、高い収率及び純度で、酢酸アビラテロンなどの、アビラテロン及びその誘導体を得るための新規方法、ならびに、該方法に有用な新規中間体に関する。
【背景技術】
【0005】
ZYTIGA(登録商標)の有効成分である酢酸アビラテロンはアビラテロンのアセチルエステルであり、それはCYP17(17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ)の阻害剤である。酢酸アビラテロンは、(3β)-17-(3-ピリジニル)アンドロスタ-5,16-ジエン-3-イルアセテートと化学的に指定され、その構造は、
【化1】
である。
【0006】
酢酸アビラテロンは、商品名ZYTIGA(登録商標)の下でJohnson and Johnsonによって製造されている。アビラテロンのプロドラッグである抗アンドロゲン、酢酸アビラテロンは、転移性去勢抵抗性前立腺癌を治療する250mgの錠剤として投与される。第III相臨床試験は2010年9月に開始され、その結果は3.9ヶ月の全生存率の増加を示した。その後、酢酸アビラテロンは、加速6ヶ月審査の後、2011年4月にFDAにより承認された。2012年3月までに、酢酸アビラテロンの生産は2.5トンを超え、全世界売上高は4億ドルを超えている。
【0007】
酢酸アビラテロンは、ロンドンのがん研究所(Institute of Cancer Research)内のがん治療のためのがん研究英国センター(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics)で1990年にGerry Potterによって発見された。酢酸アビラテロンの商業化の権利は英国の会社であるBritish Technology Group (BTG plc)に与えられている。酢酸アビラテロンの初期の経路を図5に示している(スキーム1、米国特許第5,604,213号明細書を参照されたい)。端的には、ジクロロメタン(DCM)中で2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルピリジン(DTBMP)の存在下に酢酸プラステロン1をトリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)で処理し、粗ビニルトリフレート2を得た。得られた粗生成物混合物を、シリカゲルを装填したカラムクロマトグラフィーにより精製し、次いで、n-ヘキサンから再結晶化して、精製されたビニルトリフレート2を58%収率で得た。ビニルトリフレート2とジエチル(3-ピリジル)ボラン3との続いて行う鈴木カップリングを触媒量のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh32Cl2)の存在下で行った。得られた粗生成物混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、次いで、n-ヘキサンから再結晶化した。所望の酢酸アビラテロンは84%収率で得られた。
【0008】
その後の努力はカラムクロマトグラフィーを使用しないでビニルトリフレート2を分離することに向けられた(WO2006021776A1を参照されたい。図6、スキーム2を参照されたい)。同時に、高価なDTBMPを容易に入手可能な塩基(2,6-ルチジン, Et3N又はDIPEA)で置き換えた。この努力にもかかわらず、酢酸プラステロン1の転化は中程度の収率しか達成されなかった。HPLCにより示して、粗生成物混合物は約60%のビニルトリフレート2及び約20%の未反応酢酸プラステロン1を特定量のトリエン4とともに含んだ。
【0009】
酢酸プラステロン1及びトリエン4の両方は再結晶化により効率的に除去することが困難であった。粗ビニルトリフレート2混合物は、その後、精製なしに、ジエチル(3-ピリジル)ボラン3との鈴木カップリングに直接的に使用した。得られた粗生成物混合物は酢酸アビラテロン及び酢酸プラステロン1を約1/3の比で含むが、特定量のトリエン5も含むものと決定された。ここでも、酢酸プラステロン1及びトリエン5の両方は再結晶化により効率的に除去することが困難であった。
【化2】
【0010】
BTG plcは、しかしながら、酢酸プラステロン1及びトリエン5の両方が塩生成工程によりうまくパージされうることを報告している(WO2006021776A1)。酸対応物は塩酸、硫酸、トルオイル酒石酸又はメタンスルホン酸(MsOH)から選択されることができる。酢酸アビラテロンMsOH塩は、評価した4つの塩の中で最良の結果をもたらすことが示された。酢酸アビラテロンMsOH塩はMTBEとEtOAcの混合物から優先的に調製された(図7、スキーム3)。イソプロピルアルコール(IPA)から再結晶した後、精製された酢酸アビラテロンMsOH塩は約33%の全収率で得られ、純度は87.7%から96.4%に改善しされた。
【0011】
Wanle Pharmaceutical (CN102030798A)はMsOHの代わりにトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)を用いた密に関連したアプローチを開示しており、それは対応する酢酸アビラテロンCF3SO3H塩を製造する(図8、スキーム4)。酢酸アビラテロンCF3SO3H塩は、また、MTBEとEtOAcとの混合物から優先的に調製された。得られた再結晶化酢酸アビラテロンCF3SO3H塩を、最初にNa2CO3(aq)により中和し、次いで、n-ヘキサンから再結晶化し、所望の酢酸アビラテロンを生成した。
【0012】
高価なヒンダード塩基(DTBMP)の使用ならびに有害なTf2Oを回避する異なるアプローチは図9、スキーム5に示すとおり、プラステロン6で出発することにより記載された(米国特許第5,604,213号明細書及びWO 95/09178明細書を参照されたい)。EtOH中のプラステロン6を、触媒量のヒドラジンスルフェート(H2NNH2-H2SO4)の存在下に、ヒドラジン一水和物(H2NNH2-H2O)と混合し、ヒドラゾン7を98%収率で得た。ヒドラゾン7及び1,1,3,3-テトラメチルメチルクアニジン (TMG)をEt2O及びTHFの混合物中でI2により処理した後に、ヨウ化ビニル8を90%収率で提供した。
【0013】
ヨウ化ビニル8とジエチル (3-ピリジル)ボラン3との間のスズキ反応は触媒量のPd(PPh3)2Cl2の存在下でも行うことができた。しかしながら、反応は非常に遅く、完了に2〜4日間を要した。得られた生成物混合物は約5%のダイマー10を含んだ。所望の純度レベルのアビラテロン9は、MeCN/MeOHとトルエン/MeOHとの混合物からの続いて行う再結晶化の後に57%で得られた。粗酢酸アビラテロンはアビラテロン9をピリジン中の無水酢酸(Ac2O)により処理した後に提供された。対応するダイマー11を除去するために逆相カラムクロマトグラフィーをさらに必要とした。
【化3】
【0014】
Crystal Pharm (WO2013030410A2)はアビラテロン9をもたらす別のアプローチを開示した(図10、スキーム6)。米国特許第5,604,213号明細書に提供されている条件下に2工程で、プラステロン6から出発して、ヨウ化ビニル8を86%収率で得た(図 9、スキーム5)。ヨウ化ビニル8中のヒドロキシル基をその対応するtert-ブチルジメチルシリル(TBS) エーテル12に90%収率で転化した。シリルエーテル12にn-BuLiを低温条件(−78℃)で添加し、対応するビニルリチウム中間体をトリエチルボレートとともにトラップし、次いで、加水分解して、2つの工程でビニルボロン酸13を81%収率で提供した。ビニルボロン酸13を3-ブロモピリジンと、適切な塩基及び触媒量(6 モル%)のジクロロ[1,1’-ビス (ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-パラジウム(II) (Pd(dppf)Cl2)-DCMの、THF及びH2Oの混合物中での存在下に還流温度(約70℃)にてカップリングさせた。反応が完了した後に、混合物をを濃縮し、そしてEtOAcで希釈し、次いで、HCl水溶液を添加して、アビラテロン9を提供した。次いで、得られたアビラテロン9 HCl 塩を未知の純度で70%収率(プラステロン6から49%の全体収率)で分離した。
【0015】
Zach System (WO2013053691A1, FIG. 11、スキーム7を参照されたい)は、BTGの方法と密に関連した、プラステロンホルメート14を介したアビラテロン6の調製のための改良法を記載している。プラステロン6をギ酸で処理し、定量的にプラステロンホルメート14を提供した。プラステロンホルメート14をDCM 中のTf2Oと、2,6-ルチジンの存在下に反応させ、ビニルトリフレート15を提供した。反応は80〜85%の転化率で起こり、70〜75%のビニルトリフレート15、15〜20%の未反応プラステロンホルメート14、及び、<3%のジエン16を生じた。粗混合物を、Pd(PPh3)2Cl2 の存在下にジエチル(3-ピリジル)ボラン3とのスズキクロスカップリングに用い、粗アビラテロンホルメート 17を提供した。得られた混合物をMeOH中の10% NaOH(aq)で加水分解し、粗アビラテロン9をもたらした。粗アビラテロン9の精製をDCM/MeOH中で行い、得られた精製後のアビラテロン9はプラステロン6から約50%の全体収率で生じた。続いて行うアビラテロン9のアセチル化で、非常に直接的な様式で酢酸アビラテロンを90%収率で生じた。
【0016】
CRCセンター(米国特許第5,604,213号と同一の出願人)はOrganic Preparations and Procedures Int., 29 (1), 123-134 (1997)(スキーム5を参照)において、ヨウ化ビニル8のジエチル(3-ピリジル)ボラン3とのパラジウム触媒クロスカップリング反応が3-ヒドロキシル基を保護することなく進行し、アビラテロン(I)を提供し、一方、カップリング反応においてエノールトリフレート(すなわち、プラステロンビニルトリフレート(V))を使用すると、この選択肢が可能でなかったことを示した。
【0017】
ほぼ定量的な収率でのビニルトリフレート19の生成は、KHMDS (トルエン中0.5M)をヒドロキシル基保護プラステロン18に添加することにより行うことができ、そしてTHF中のPhNTf2は Steroids, 2010, 75, 936-943に報告されている(図12、スキーム8を参照されたい)。この開示の方法において、プラステロン18は非常に有害な保護基 (メトキシメチル、MOM、発がん性クロロメチルメチルエーテル (MOMCl)から生成)により保護されており、その保護基は医薬産業において使用が制限されている。さらに、この開示の方法の反応条件は-78℃未満でなければならない。さらに、生成物はカラムクロマトグラフィーを用いて分離される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
当該技術分野で必要なことは、他者により記載された困難さに取り組む、アビラテロン及びその誘導体の調製の改良方法である。本発明はこの要求に取り組み、例えば、プラステロンビニルトリフレート(V)のカップリング反応における使用が操作可能であることを発見する。アビラテロン(I)の調製の他の改良点も本明細書中に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
1つの態様において、本発明は式(IV)の化合物の調製方法を提供する。
【化4】
(上式中、Rはヒドロキシル保護基である)
本方法は、
a)式(II)
【化5】
の化合物を、式(III)
【化6】
の化合物に転化すること、及び、
b)式(III)の化合物をトリフレート化剤と反応させ、次いで、強塩基と反応させて、式(IV)の化合物を提供すること、
を含む。
【0020】
別の態様において、本発明は式(I)のアビラテロンの調製方法を提供する。
【化7】
本方法は、
(a)式(II)
【化8】
の化合物を式(III)
【化9】
(上式中、Rはヒドロキシル保護基を表す)の化合物に転化すること、
(b)式(III)の化合物をトリフレート化剤と反応させ、次いで、強塩基と反応させて、式 (IV)
【化10】
の化合物を提供すること、
(c)式(IV)の化合物を脱保護し、式(V)
【化11】
の化合物を提供すること、及び、
(d)式(V)の化合物を、式(VI)
【化12】
(上式中、Xはボリル基を表す)の化合物とカップリングさせ、式(I)のアビラテロンを提供すること、
を含む。
【0021】
上記の本発明の好ましい実施形態によると、工程(d)で使用される式(VI)の化合物に関して、Xはボリル基であり、それはBY2基であることができ、ここで、各Yはアルキル、アルコキシ又はヒドロキシ基から選ばれる。より好ましくは、各Yはエチル又はヒドロキシ基である。
【0022】
工程(d)でのカップリングは有機溶媒中のパラジウム触媒の存在下に行われる。特定の実施形態において、パラジウム触媒は、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)、テトラキス(トリフェニルホスファン)-パラジウム(Pd(PPh3)4)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、ジクロロ(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム (II) (PdCl2(dppe)2)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン(PdCl2(dppf).CH2Cl2)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムクロリド(Pd(PhCN)2Cl2)、ビス (アセトニトリル)パラジウム(II)クロリド(Pd(CH3CN)2Cl2)又はそれらの組み合わせから選ばれる。より好ましくは、パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)である。有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、エタノール、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、トルエン(PhMe)又はこれらの溶媒の2種以上の混合物、又は、水と組み合わされた、これらの溶媒の1種以上であることができる。
【0023】
工程(d)でのカップリングは、また、塩基の存在下に進行する。好ましくは、塩基は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によると、上記の方法から得られる式(I)のアビラテロンは(I)をアシル化試薬で処理することにより、式(I’)の酢酸アビラテロンへとさらに転化され、
【化13】
ここで、該アシル化試薬は好ましくは、無水酢酸(Ac2O)又は塩化アセチルであり、より好ましく、アセチル化試薬は無水酢酸(Ac2O)である。アシル化反応は塩基の存在下で行われ、該塩基は4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(Et3N)、N-エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)及びピリジンからなる群より選ばれる。より好ましくは、塩基は4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0025】
本出願の別の実施態様によると、本発明は、
a)有機溶媒中の酢酸アビラテロンの溶液を提供すること、
b)溶液を加熱すること、
c)結晶形態の酢酸アビラテロンを分離すること、及び、
d)分離された結晶形態の酢酸アビラテロンを乾燥すること、
による式(I’)の酢酸アビラテロンの精製をさらに含む、精製方法を提供する。この方法は酢酸アビラテロン(I’)の純度を増加させる。好ましくは、有機溶媒は、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、又は、これらの溶媒の2種以上の混合物、又は、水と組み合わされた、これらの溶媒の1種以上からなる群より選ばれる。より好ましくは、溶媒はシクロヘキサンと水との混合物である。
【0026】
本発明を特徴付ける種々の特徴は本開示に添付されそして本開示の一部を形成している特許請求の範囲において特に指摘されている。本発明、その使用により達成される、その操作上の利点及び特定の目的のよりよい理解のために、本発明の好ましい実施形態を例示しそして説明している図面及び説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は式(I’)の酢酸アビラテロンのX-線粉末回折(XRPD)を示す略図である。
図2図2は式(I’)の酢酸アビラテロンのIRスペクトルを示す略図である。
図3図3は式(I’)の酢酸アビラテロンのDSC曲線を示す略図である。
図4図4は式(I’)の酢酸アビラテロンのTGA曲線を示す略図である。
図5図5は米国特許第5,604,213号明細書に示される合成経路を例示するスキーム1を提供する。
図6図6はWO2006021776A1明細書に示されるビニルトリフレート2の調製を例示するスキーム2を提供する。
図7図7はWO2006021776A1明細書に示される酢酸アビラテロンMsOH塩の生成を例示するスキーム3を提供する。
図8図8はCN102030798A明細書に示されるとおりの酢酸アビラテロンCF3SO3H塩の生成を例示するスキーム4を提供する。
図9図9は米国特許第5,604,213号明細書に示される合成経路を例示するスキーム5を提供する。
図10図10はWO2013030410A2明細書に示される合成経路を例示するスキーム6を提供する。
図11図11はWO2013053691A1明細書に示される合成経路を例示するスキーム7を提供する。
図12図12はSteroids, 2010, 75, 936-943に示される合成経路を例示するスキーム8を提供する。
図13図13は式(IV)の化合物の生成を例示するスキーム9を提供する。
図14図14は式(I)のアビラテロンの生成を例示するスキーム10を提供する。
図15図15は式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸と式(IV)のビニルトリフレートの鈴木カップリングを例示するスキーム11を提供する。
図16図16は式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸と式(V)のビニルトリフレートの鈴木カップリングを例示するスキーム12を提供する。
図17図17は式(I’)の酢酸アビラテロンの生成を例示するスキーム13を提供する。
図18図18は式(III-aからIII-d及びIV-aからIV-d)の化合物に関する合成スキームを提供する。
図19図19は式(I)のアビラテロンの生成のための別の合成スキームを提供する。
図20図20は式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸と式(IV-a-d)のビニルトリフレートの鈴木カップリングの合成スキームを提供する。
図21図21は式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸と式(V)のビニルトリフレートの鈴木カップリングの合成スキームを提供する。
図22図22は式(I)の化合物のワンポット調製に関する合成スキームを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
I.一般
本発明はアビラテロン及びその誘導体、例えば、酢酸アビラテロンを高い収率及び純度で得るための新規方法、ならびに、これらの方法に有用な新規中間体に関する。
【0029】
II.定義
本明細書中に使用されるときに、用語「アリール」及び「芳香環」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、多飽和炭化水素基を指し、その基は単一環又は多環(3個までの環)であることができ、該環は縮合され又は共有結合で結合されている。アリールの非限定的な例としては、フェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。「置換アリール」基はハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ及びアルコキシから選ばれる1つ以上の基により置換されていてよい。
【0030】
用語「アルキル」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、特段の指示がないかぎり、直鎖もしくは枝分かれ鎖炭化水素基を意味する。アルキル置換基、ならびに、他の炭化水素置換基は置換基中の炭素原子の数を指示する数値指定子を含むことができ(すなわち、C1〜C8は1〜8個の炭素を意味する)、しかし、このような指定子は省略してもよい。特段の指示がないかぎり、本発明のアルキル基は1〜10個の炭素原子を含む。例えば、アルキル基は1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、1〜8、1〜9、1〜10、2〜3、2〜4、2〜5、2〜6、3〜4、3〜5、3〜6、4〜5、4〜6又は5〜6個の炭素原子を含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用されるときに、用語「接触させる」及び「反応させる」は、新しい生成物を生成することができるように少なくとも2つの別個の種を接触させるプロセスを指す。しかしながら、得られる反応生成物は、添加された試薬の間の反応により直接的に製造されることができ、又は、反応混合物中で製造することができる、1種以上の試薬からの中間体から製造されることができることが理解されるべきである。本明細書で使用するときに、用語「処理する」はある物質を少なくとも1つの他の物質と接触させることを指す。
【0032】
本明細書中に使用されるときに、「ボリル基」は式-BR’R”(式中、R’及びR’’は独立して、本明細書中に規定されるとおり、水素、ヒドロキシ、アルキル基及びアリール基から選ばれる)を有する部分を指す。一般に、ボリル基を有する化合物は少なくとも1つの炭素−ホウ素結合を特徴とするボランである。ボランとしては、限定するわけではないが、ボロン酸、アルキルボラン、アルケニルボラン及びビニルボランが挙げられる。ボランは、例えば、式R’R”BHを有する化合物とアルケンなどの適切な親分子との反応により生成されうる。ボラン誘導体は分離されそして精製され、その後に別の化合物に転化され、又は、それは分離及び精製なしにその場で使用されうる。
【0033】
本明細書中に使用されるときに、用語「保護基」は官能性部分をより低い反応性又は無反応性にするように形成される部分を指す。その部分を形成することを、官能性部分又は官能性部分を含む分子を「保護する」という。保護基は、初期の状態に官能性部分を回復するように除去されうる。保護基の除去は「脱保護」と呼ばれる。ヒドロキシ保護基を含む、種々の保護基及び保護試薬は当業者によく知られており、Protective Groups in Organic Synthesis, 4th edition, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, John Wiley & Sons, New York, 2006に開示されている化合物が挙げられ、該文献の全体を参照により本明細書中に取り込む。
【0034】
本明細書中に使用されるときに、用語「トリフレート化剤」はトリフレート基をヒドロキシ基に結合させ、トリフレートエステルを形成する反応に有用である化合物を指す。トリフレート化剤はトリフルオロアセチル基の源である。トリフレート化剤としては、限定するわけではないが、無水トリフリン酸、N-フェニル-ビス (トリフルオロメタンスルホンイミド) (PhNTf2)、N-(5-クロロ-2-ピリジル)トリフリミド及びN-(2-ピリジル)トリフリミドが挙げられる。
【0035】
本明細書中に使用されるときに、用語「溶媒」は周囲温度及び圧力で液体である物質を指す。溶媒の例としては、水、アセトン、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及び石油エーテルが挙げられる。
【0036】
本明細書中に使用されるときに、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。用語「ハロゲン化物」はハロゲンを含む化合物又は親ハロゲンから得られるアニオンを指す。
【0037】
本明細書中に使用されるときに、用語「塩基」はプロトン(すなわち、水素カチオン)を受け取り、塩基の共役酸を生成することができる分子を指す。塩基の例としては、限定するわけではないが、ヒューニッヒ塩基(すなわち、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、2,6-ルチジン(すなわち、2,6-ジメチルピリジン)を含むルチジン、トリエチルアミン及びピリジンが挙げられる。強塩基の例としては、限定するわけではないが、アミドをベースとする有機金属試薬、例えば、リチウムジイソプロピルアミド又はリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが挙げられる。
【0038】
本発明は、以下の実施形態を参照して、より詳細に記載されるであろう。本発明の好ましい実施形態の以下の説明は例示及び説明の目的でのみ本明細書中に示され、開示される厳密な形態に排他的又は限定的とされることが意図されないことは注意されるべきである。以下のスキームは例示される実施形態として提供されるが、本発明を限定しないように提供される。
【0039】
III.本発明の実施形態
1つの態様において、式(IV)
【化14】
(上式中、Rはヒドロキシ保護基を表す)の化合物を調製するための方法は提供され、
該方法は、
a) 式(II)
【化15】
の化合物を式(III)
【化16】
の化合物に転化させること、及び、
b)式(III)の化合物をトリフレート化剤と、次いで、強塩基と反応させ、式(IV)の化合物を提供することを含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、式(IV)のビニルトリフレートの効率的な調製は式(II)のプラステロンから出発して、2つの工程にわたって約90%収率で進行する(図13、スキーム9)。注目すべきことには、長くかつ高価なカラムクロマトグラフィー工程は完全に排除され、そして生産速度は大きく改良される。
【0041】
式(II)のプラステロン中のヒドロキシ基は個々にヒドロキシ保護試薬と反応でき、該ヒドロキシ保護試薬としては、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(DHP)、トリエチルシリルクロリド(TESCl)、トリイソプロピルシリルクロリド(TIPSCl)、ジメチルフェニルシリルクロリド、ジフェニルメチルシリルクロリド、tert-ブチルフェニルシリルクロリド (TBDPSCl)及びトリチルクロリド(TrCl)が挙げられ、ヒドロキシ保護基(R)を含む式 (III)の化合物を提供し、ここで、ヒドロキシ保護基はトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、テトラヒドロピラニル(THP)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)及びトリフェニルメチル(トリチル、Tr)であることができる。幾つかの実施形態において、ヒドロキシ保護基はトリメチルシリル(TMS)である。式(III)の対応する化合物は溶媒置換により分離するか、又は、揮発性副生成物を除去するために濃縮した後に、下流の工程に直接的に持っていくことができる。
【0042】
トリフレート化工程(式(III)の化合物を式(IV)の化合物に転化する)は式(III)の化合物を、トリフレート化剤、例えば、N-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド) (PhNTf2)、N-(5-クロロ-2-ピリジル)トリフリミド又はN-(2-ピリジル)トリフリミドとともに適切な溶媒中に溶解させることにより行うことができる。選択された実施形態において、トリフレート化剤はN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド) (PhNTf2)である。他の選択された実施形態において、式(III)の化合物を式(IV)の化合物に転化させる反応において使用される溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、キシレン、トルエン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。なおも他の選択された実施形態において、溶媒はTHFである。反応に次いで、強塩基を添加する。実施形態の1つの群において、強塩基はアミドをベースとする有機金属試薬である。例えば、アミドをベースとする有機金属試薬はリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(KHMDS)及びリチウムジイソプロピルアミド(LDA)から選ばれることができ、それにより、対応する式(IV)のビニルトリフレートを85〜95%収率で得ることができる。特定の実施形態において、アミドをベースとする有機金属試薬はナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)である。
【0043】
別の実施形態において、水性ワークアップの後に、式(IV)のビニルトリフレートは、式(VI)
【化17】
(上式中、Xは-BY2であり、ここで、Yはアルキル、アルコキシ又はヒドロキシ基である)の3-ピリジルボラン誘導体と、「スズキカップンリング」において、有機溶媒中の塩基とともに、パラジウム触媒の存在下に、反応させることができ、スキーム9(図13)の式(IV)のビニルトリフレートの分離を行い又は行わないで、式(VII)の化合物を提供することができる(図14、スキーム10を参照されたい)。
【0044】
本発明で使用される鈴木カップリングは、一般に、ボロン酸、ボロン酸誘導体又はボリル化合物の適切な官能化有機基質とのパラジウム触媒カップリングを介する炭素−炭素結合形成を含む。適切な官能化有機基質の例としては、限定するわけではないが、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルケニル、アリールトリフレート及びアルケニルトリフレートが挙げられる。ボロン酸誘導体としては、限定するわけではないが、カルシウムトリフルオロボレート、オルガノボラン及びボロン酸エステルが挙げられる。多くのパラジウム系触媒及び溶媒を種々の条件下に用いることができる。
【0045】
幾つかの実施形態において、各Yはエチル又はヒドロキシ基である。
【0046】
他の選択された実施形態において、式(VI)の3-ピリジルボラン誘導体はジエチル(3-ピリジル)ボラン又は3-ピリジルボロン酸である。
【0047】
なおも他の選択された実施形態において、パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)、テトラキス(トリフェニルホスファン)-パラジウム(Pd(PPh3)4)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、ジクロロ(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム (II) (PdCl2(dppe)2)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン(PdCl2(dppf).CH2Cl2)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムクロリド(Pd(PhCN)2Cl2)及びビス (アセトニトリル)パラジウム(II)クロリド(Pd(CH3CN)2Cl2)などからなる群より選ばれる。なおも他の好ましい実施形態において、パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (II)ジクロリド(PdCl2(PPh3)2)である。
【0048】
種々の塩基を鈴木カップリングにおいて使用することができ、該塩基としては金属炭酸塩、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)又は炭酸カリウム(K2CO3))、金属リン酸塩、例えば、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム(Na3PO4)又はリン酸カリウム(K3PO4))、金属重炭酸塩、例えば、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)又は重炭酸カリウム(KHCO3))及びそれらの組み合わせから選ばれる塩基が挙げられる。
【0049】
幾つかの実施形態において、有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、エタノール、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、トルエン(PhMe)又はそれらの組み合わせから選ばれる。幾つかの実施形態において、溶媒は、場合により、水と組み合わされる。
【0050】
フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製された後に、得られる式(VII)の化合物は少なくとも85%収率で得ることができる。或いは、式(VII)の化合物は非極性及び中性不純物の除去を伴い、対応するH3PO4塩として分離されうる。式(VII)の化合物は、適切な溶媒(例えば、MeOH, EtOH, THF, アセトン又はMeCN)中で水性HCl、水性HOAc又はテトラブチルアンモニウムフルオリド (TBAF)により処理することにより加水分解して、99%純度よりも高い純度で式(I)の純粋なアビラテロンを提供することができる。
【0051】
同様に、99%純度よりも高い純度の式(I)のアビラテロンは水性酸を適切な共溶媒(例えば、MeOH, EtOH, THF, アセトン又はMeCN)とともに又はそれを伴わずに用いて、式(VII)の化合物又はそのH3PO4塩を加水分解することにより得ることができる。図14、スキーム10を参照されたい。
【0052】
幾つかの実施形態において、式(IV)のビニルトリフレートを以下の鈴木カップリング工程の前に脱保護に供することができる(図14、スキーム10)。ヒドロキシ基の脱保護は式(IV)のビニルトリフレートを、MeOH、EtOH、THF、アセトン及びMeCNなどの適切な溶媒中で水性HCl、水性HOAc又はTBAFにより処理することにより達成できる。得られる式(V)のビニルトリフレートは80 %を超える収率で、95%を超える純度で分離されることができる。式(V)のビニルトリフレートが鈴木カップリング工程で使用されるときには、式(I)のアビラテロンは89%を超える収率で97%を超える純度で得ることができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、3-ピリジルボロン酸はジエチル(3-ピリジル)ボランと同様に反応することができる。鈴木カップリング工程で式(IV)のビニルトリフレート及び式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸を使用するときには、得られる式(VII)の化合物は少なくとも67%の収率で分離されることができる(図15、スキーム11)。
【0054】
非常に直接的な様式で、式(I)のアビラテロンは式(V)のビニルトリフレート及び式(VI’’)の3-ピリジルボロン酸のカップリング反応から生成されうる(図16、スキーム12)。得られる式(I)のアビラテロンは50%を超える収率で分離されうる。
【0055】
幾つかの実施形態において、式(I)のアビラテロンは式(I’)の酢酸アビラテロンへと転化される。式(I)のアビラテロンは、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)又はジクロロメタン(DCM)を含む反応溶媒中で、DMAP、Et3N、DIPEA、金属炭酸塩、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウム(K2CO3))、金属重炭酸塩、例えば、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO3))又はピリジンから選ばれることができる適切な塩基の存在下に、Ac2O又は塩化アセチルなどの適切なアシル化剤と反応される(図17、スキーム13を参照されたい)。
【0056】
別の態様において、本発明は酢酸アビラテロンの再結晶化のための方法を提供する。この方法は、
a)有機溶媒、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール又はそれらの組み合わせの中の、水の添加を伴う又は伴わない、酢酸アビラテロンの溶液を提供すること、
b)該溶液を加熱すること、及び、
c)結晶形態の酢酸アビラテロンを分離しそして乾燥すること、
を含む。
【0057】
得られた酢酸アビラテロンは、少なくとも95%の収率で、0.10%未満の単一不純物を含んで、99.5%を超える純度で分離されうる。幾つかの実施形態において、分離された結晶性酢酸アビラテロンは図1に示すとおりのX-線粉末回折パターンを特徴とする。幾つかの実施形態において、分離された結晶性酢酸アビラテロンは5.8°、12.1°、14.8°、15.1°、15.9°、18.4°、18.9°、21.7°、22.4°及び23.0° 2θ (± 0.2)でピークを有するX-線粉末回折(XRPD)を特徴とする。記載のピークの各々は5.8°での100%ピークの約20%以上の相対強度を有する。幾つかの実施形態において、分離された結晶性酢酸アビラテロンは5.8°、12.1°、14.8°、15.1°、15.9°、18.4°、18.9°、21.7°、22.4°及び23.0° 2θ (± 0.2) でのピークから選ばれる3つ以上のピークを有するX-線粉末回折(XRPD)を特徴とする。幾つかの実施形態において、分離された結晶性酢酸アビラテロンは5.8°、12.1°、14.8°、15.1°、15.9°、18.4°、18.9°、21.7°、22.4°及び23.0° 2θ (± 0.2)でのピークから選ばれる6つ以上のピークを有するX-線粉末回折(XRPD)を特徴とする。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を例示し、いかなる方法でも限定するものと解釈されるべきでない。
【0059】
IV.例
式(IV-a〜IV-d)のビニルトリフレートの生成(図18を参照されたい)
例1:式 (III-a)の化合物の合成
式(II)のプラステロン(30 g, 104.2 mmole)、イミダゾール(21.2 g, 312.6 mmole)及びDCM (150 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を20〜30℃で約5分間撹拌し、均一溶液を得た。TMSCl (29.7g, 234.5 mmole)及びDCM (150 mL)を含む混合物を20〜30℃で添加した。得られた混合物を20〜30℃で2時間撹拌し、反応を完了した。混合物をろ過し、イミダゾールHCl塩を除去し、ろ液を約40℃にて減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。MeCN (300 mL)を濃縮物に添加し、得られた混合物を、体積が150 mLとなるまで、約40℃で減圧下に蒸留した。混合物を約78℃に加熱し、均一溶液を得た。20〜30℃に冷却した後に、混合物をろ過し、そしてろ過ケーキをMeCN (30 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、化合物(III-a) (30.6 g)を81.6%収率で提供した。
【0060】
1H-NMR (400 MHz, アセトン-d6) δ5.38 (d, J = 5.2 Hz, 1 H), 3.55-3.49 (m, 1 H), 2.45-2.38 (m, 1 H), 2.26-1.51 (m, 14 H), 1.37-1.33 (m, 2 H), 1.29-1.02 (m, 2 H), 1.06 (s, 3 H), 0.88 (s, 3 H), 0.11 (s, 9 H)。
【0061】
例2:式(IV-a)の化合物の合成
化合物(III-a) (20 g, 55.6 mmole)、PhNTf2 (25.8 g, 72.3 mmole)及びTHF (100 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を0〜10℃に冷却した。NaHMDS (THF中2M、41.7 mL, 83.4 mmole)をゆっくりと0〜10℃で1時間添加した。反応が完了した後に、トルエン(100 mL)及び水(120 mL)を混合物に添加し、そして混合物を20〜30℃で約5分間撹拌した。相分離後に有機部分を分離し、順次に1N HCl(aq) (120 mL)、8% NaHCO3(aq) (120 mL)及び水(120 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を減圧下に約40℃でほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/50)に供し、精製された式(IV-a)の化合物 (24.7 g)を90.3%収率で提供した。
【0062】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.60 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.36 (d, J = 5.2 Hz, 1 H), 3.56-3.47 (m, 1 H), 2.32-2.20 (m, 3 H), 2.07-2.00 (m, 2 H), 1.18-1.59 (m, 10 H), 1.15-1.04 (1.04 (s, 3 H), 0.89 (s, 3 H), 0.11 (s, 9 H)。
【0063】
例3:式(III-b)の化合物の合成
式(II)のプラステロン (30 g, 104.2 mmole)、イミダゾール(21.2 g, 312.6 mmole)、DMAP (1.27 g, 10.4 mmole)及びDCM (300 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。TBSCl (31.3 g, 208.4 mmole)を20〜30℃で添加した後に、混合物を30〜40℃に加熱し、2時間撹拌し、反応を完了させた。水(150 mL)を添加し、混合物を20〜30℃で約5分間撹拌した。相分離の後に、分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。アセトン(200 mL)を濃縮物に添加し、そして混合物を50〜55℃で加熱し、均一溶液を得た。水(400 mL)を50〜55℃で添加し、得られた混合物をこの温度で30分間撹拌した。0〜10℃に冷却した後に、混合物をろ過し、そしてろ過ケーキをアセトン及び水の混合物(1/2, 40 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、化合物(III-b) (40.7 g)を97.2%収率で提供した。
【0064】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.37 (dd, J = 3.6, 1.6 Hz, 1 H), 3.54-3.48 (m, 1 H), 2.52-2.45 (m, 1 H), 2.13-1.40 (m, 14 H), 1.30-1.29 (m, 2 H), 1.15-1.05 (m, 2 H), 1.05 (s, 3 H), 0.91 (s, 3 H), 0.91 (s, 9 H), 0.08 (s, 6 H)。
【0065】
例4:式 (IV-b)の化合物の合成
化合物(III-b) (6.9 g, 17.2 mmole), PhNTf2 (12.2 g, 34.4 mmole)及びTHF (34.5 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を0〜10℃に冷却した。NaHMDS (THF中1M, 30.8 mL, 31.0 mmole)を0〜10℃で1時間、ゆっくりと添加した。反応が完了した後に、混合物をトルエン(70 mL)及び水(100 mL)と混合した。得られた混合物を20〜30℃で約5分間撹拌した。相分離の後に、有機部分を分離した。有機部分を順次に1N HCl(aq) (100 mL), 8% NaHCO3(aq) (100 mL)及び水(100 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/50)に供し、化合物(IV-b) (7.89 g)を85.9%収率で提供した。
【0066】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.60 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.35 (m, 1H), 3.53-3.49 (m, 1 H), 2.30-2.22 (m, 3 H), 2.06-2.00 (m, 2 H), 1.83-1.48 (m, 10 H), 1.15-1.06 (m, 2 H), 1.06 (s, 3 H), 1.02 (s, 3 H), 0.91 (s, 9 H), 0.08 (s, 6 H)。
【0067】
例5:式 (III-c)の化合物の合成
式(II)のプラステロン (700 g, 2.43 mole)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(305 g, 3.63 mole)、ピリジニウムp-トルエンスルホネート (60.7 g, 0.24 mole)及びDCM (16 L)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を20〜30℃で16時間撹拌し、反応を完了した。水(8 L)を20〜30℃で添加し、混合物をこの温度で約5分間撹拌した。相分離の後に、有機部分を40〜45℃で減圧下に体積が約3.5 Lになるまで濃縮した。アセトン(14 L)を添加し、そして混合物を40〜45℃で減圧下に体積が約7Lになるまで濃縮した。アセトン(14 L)を添加し、そして混合物を40〜45℃で減圧下に体積が約7 Lとなるまで濃縮した。水(7 L)を濃縮物に45〜55℃で添加し、得られた混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、そしてろ過ケーキをアセトン及び水の混合物 (1/1, 1.6 L)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、化合物(III-c) (873 g)を96.6%収率で提供した。
【0068】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.37 (dd, J = 11.6, 6.0 Hz, 1 H), 4.71 (dd, J = 4.8, 2.4 Hz, 1 H), 3.91-3.89 (m, 1 H), 3.54-3.49 (m, 2 H), 3.37-2.46 (m, 2 H), 2.20-1.52 (m, 20 H), 1.28-1.27 (m, 1 H), 1.09-0.99 (m, 2 H), 0.99 (s, 3 H), 0.88 (s, 3 H)。
【0069】
例6:式 (IV-c)の化合物の合成
化合物(III-c) (36 g, 96.8 mmole)、PhNTf2 (60.5 g, 169.4 mmole)及びTHF (180 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を0〜10℃に冷却した。NaHMDS (THF中 1M、145.2 mL, 145.2 mmole)を0〜10℃で1時間、ゆっくりと添加した。反応が完了した後に、混合物をトルエン(180 mL)及び水(540 mL)と混合した。得られた混合物を20〜30℃で約5分間撹拌した。相分離の後に、有機部分を分離した。有機部分を順次に1N HCl(aq) (540 mL)、8% NaHCO3(aq) (540 mL)及び水(540 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/30)に供し、精製された化合物(IV-c) (40.9 g)を83.8%収率で提供した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.59 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.37 (m, 1 H), 4.74-4.72 (m, 1 H), 3.94-3.92 (m, 1 H), 3.56-3.50 (m, 2 H), 2.40-2.39 (m, 1 H), 2.30-2.22 (m, 1 H), 2.05-1.50 (m, 19 H), 1.10-1.06 (m, 2 H), 1.06 (s, 3 H), 1.01 (s, 3 H)。
【0070】
例7:式 (III-d)の化合物の合成
式(II)のプラステロン(10 g, 34.7 mmole)、TrCl (17.4 g, 62.5 mmole)、DMAP (0.42 g, 3.5 mmol)及びピリジン(100 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を110℃に加熱し、そして16時間撹拌し、反応を完了した。DCM (500 mL)及び水(300 mL) を、混合物を20〜30℃に冷却した後に添加した。混合物を20〜30℃で約5分間撹拌した。相分離の後に、分離された有機部分を保存した。分離された水性部分にDCM (200 mL)を20〜30℃で添加し、そして混合物をこの温度で約5分間撹拌した。分離された有機部分を相分離の後に保存した。2つの有機部分を合わせ、約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/10)に供し、精製された化合物 (III-d) (12.5 g)を67.9%収率で提供した。
【0071】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.56-7.53 (m, 6 H), 7.33-7.25 (m, 9 H), 4.94 (d, J = 5.2, Hz, 1 H), 3.41-3.36 (m, 1 H), 2.49-2.42 (m, 1 H), 2.20-1.20 (m, 16 H), 0.99 (s, 3 H), 0.86 (s, 3 H), 0.91-0.78 (m, 2 H)。
【0072】
例8:式 (IV-d)の化合物の合成
化合物(III-d) (10.5 g, 19.8 mmole)、PhNTf2 (14.1 g, 39.6 mmole)及びTHF (55 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を0〜10℃に冷却した。NaHMDS (THF中 1M、35.6 mL, 35.6 mmol)を0〜10℃で1時間、ゆっくりと添加した。反応が完了した後に、混合物をトルエン(50 mL)及び水(160 mL)と混合した。相分離の後に、分離された有機部分を保存した。分離された水性部分にトルエン(50 mL)を20〜30℃で添加し、混合物をこの温度で約5分間撹拌した。相分離の後に、分離された有機部分を保存した。2つの有機部分を合わせ、約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/50)に供し、精製された化合物(IV-d) (9.4 g)を71.7%収率で提供した。
【0073】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.56-7.53 (m, 6 H), 7.33-7.25 (m, 9 H), 5.57 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 4.91 (d, J = 5.2 Hz, 1 H), 3.38-3.37 (m, 1 H), 2.23-2.15 (m, 2 H), 2.01-1.94 (m, 2 H), 1.87-1.34 (m, 11 H), 1.03 (s, 3 H), 0.99 (s, 3 H), 0.99-0.81 (m, 2 H)
【0074】
或いは、NaHMDSをLiHMDS, KHMDS 又はLDAなどの他の強塩基で置き換えることができる。各塩基を、化合物(III, 5 mmol)及びPhNTf2 (1/1.3, 当量/当量) を含む THF (5 vol)中に溶液に0〜10℃で約1時間添加した。他の強塩基を用いて得られた化合物(IV) の収率(化合物(III-a〜III-d)からの工程にわたる)を表1に示し、例えば、KHMDSは81.6%〜93.4%の範囲の収率を提供し、LiHMDSは80.8%〜93.7%の範囲の収率を提供し、LDA は56.9%〜71.0%の範囲の収率を提供した。
【表1】
【0075】
アビラテロン(I)の合成 (図19を参照されたい)
例9:式(VII-a)の化合物の合成
化合物(IV-a) (2.0 g, 4.1 mmole)、ジエチル (3-ピリジル)ボラン(0.6 g, 4.1 mmole)、Na2CO3 (0.43 g, 4.1 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (21 mg, 0.03 mmole)、トルエン(10 mL)、THF (6 mL)、EtOH (4 mL)及び水(10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に0.5時間加熱した。反応が完了した後に、有機部分を相分離後に分離した。有機部分を水(20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/7)に供し、精製された化合物(VII-a) (1.48 g)を86.2%収率で提供した。
【0076】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.64 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.48 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.67 (ddd, 1 H), 7.26-7.22 (m, 1 H), 6.02 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.39 (dd, J = 5.2, 3.2 Hz, 1 H), 3.56-3.48 (m, 1 H), 2.37-2.20 (m, 3 H), 2.12-2.04 (m, 3 H), 1.86-1.45 (m, 9 H), 1.16-1.09 (m, 2 H), 1.08 (s, 3 H), 1.07 (s, 3 H), 0.14 (s, 9 H)。
【0077】
例10:式 (VII-b)の化合物の合成
化合物(IV-b) (13.3 g, 24.8 mmole)、ジエチル (3-ピリジル)ボラン(5.5 g, 37.4 mmole)、Na2CO3 (8.5 g, 80.2 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (350 mg, 0.5 mmole)、トルエン(67 mL)、THF (40 mL)、EtOH (20 mL)及び水 (100 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。得られた混合物を70〜75℃に1時間加熱した。反応が完了した後に、相分離後に有機部分を分離した。有機部分を水(100 mL)で洗浄し、分離し、そして約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー (溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/6)に供し、精製された化合物(VII-b) (9.38 g)を81.7%収率で提供した。
【0078】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.64 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.48 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.67 (ddd, 1 H), 7.26-7.23 (m, 1 H), 6.02 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.38 (dd, J = 5.6, 2.0 Hz, 1 H), 3.56-3.48 (m, 1 H), 2.35-2.20 (m, 3 H), 2.15-2.05 (m, 3 H), 1.88-1.47 (m, 9 H), 1.14-1.09 (m, 2 H), 1.08 (s, 3 H), 1.07 (s, 3 H), 0.92 (s, 9 H), 0.09 (s, 6 H)。
【0079】
例11:式 (VII-c)の化合物の合成
化合物(IV-c) (2.0 g, 4.0 mmole)、ジエチル (3-ピリジル)ボラン(0.59 g, 4.0 mmole)、Na2CO3 (0.25 g, 2.4 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (14 mg, 0.02 mmole)、トルエン(10 mL)、THF (6 mL)、EtOH (4 mL)及び水(10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に2時間加熱した。反応が完了した後に、相分離後に有機部分を分離した。有機部分を水 (20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン= 1/4)に供し、精製された化合物 (VII-c) (1.48 g)を85.5%収率で提供した。
【0080】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.62 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.46 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.65 (ddd, 1 H), 7.29-7.20 (m, 1 H), 6.00 (dd, J = 3.2, 2.0 Hz, 1 H), 5.39 (dd, J = 5.6, 2.0 Hz, 1 H), 4.74-4.72 (m, 1 H), 3.93-3.92 (m, 1 H), 3.55-3.51 (m, 2 H), 2.40-2.39 (m, 2 H), 2.26-2.24 (m, 2 H), 2.06-2.04 (m, 3 H), 1.88-1.49 (m, 14 H), 1.10-1.05 (m, 2 H), 1.08 (s, 3 H), 1.05 (s, 3 H)。
【0081】
例12:式 (VII-d)の化合物の合成
化合物(IV-d) (12.5 g, 18.8 mmole)、ジエチル(3-ピリジル)ボラン (4.1 g, 28.2 mmole)、Na2CO3 (8.5 g, 80.2 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (130 mg, 0.19 mmole)、トルエン (63 mL)、THF (38 mL)、EtOH (20 mL)及び水 (100 mL)を適切なフラスコに 20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に0.5時間加熱した。反応が完了した後に、相分離の後に有機部分を分離した。有機部分を水 (100 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約40℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン = 1/6)に供し、精製された化合物(VII-d) (9.45 g)を85.0%収率で提供した。
【0082】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.62 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.47 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.71 (ddd, 1 H), 7.56-7.54 (m, 6 H), 7.33-7.23 (m, 10 H), 6.02 (dd, J = 2.8, 1.6 Hz, 1 H), 4.95 (dd, J = 4.8, 2.0 Hz, 1 H), 3.40-3.37 (m, 1 H), 2.89-2.11 (m, 2 H), 2.10-1.94 (m, 2 H), 1.71-1.27 (m, 11 H), 1.03 (s, 3 H), 1.02 (s, 3 H), 0.98-0.81 (m, 2 H)。
【0083】
例13:式 (V)の化合物の合成
式(IV-a)の化合物→式(V)の化合物
化合物(IV-a) (17.0 g, 34.6 mmole)、THF (90 mL)及びn-ヘプタン (40 mL) を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を20〜30℃で約5分間撹拌し、均一溶液を得た。2N HCl(aq) (35 mL)を20〜30℃で添加し、そして混合物をこの温度で2時間撹拌した。反応が完了した後に、相分離後に、有機部分を分離した。4% NaHCO3(aq) (20 mL)を20〜30℃で添加してpHを8〜9に調節し、そして混合物をこの温度で約5分間撹拌した。得られた有機部分を約90〜95℃で体積が約50 mLになるまで濃縮した。n-ヘプタン (100 mL)を混合物に90〜95℃で添加し、そして得られた混合物を70〜75℃に1時間冷却した。その後、混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキをn-ヘプタン (20 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約60℃で減圧下に乾燥し、化合物(V) (12.3 g)を84.8%収率で提供した。
【0084】
式(IV-b)の化合物→式(V)の化合物
化合物(IV-b) (1.0g, 1.9 mmole)及びアセトン(10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物に12N HCl(aq) (0.2 mL)を添加してpHを1〜2に調節し、10分間撹拌した。反応が完了した後に、混合物を4% NaHCO3(aq) (10 mL)と混合してpHを7〜8に調節し、水(10 mL)と20〜30℃で混合した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (2 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、化合物(V) (0.72 g)を90.2%収率で提供した。
【0085】
式(IV-c)の化合物→式(V)の化合物
化合物(IV-c) (1.0g, 2.0 mmole)、2N HCl(aq) (1.0 mL)及びMeOH (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を60〜65℃に加熱し、30分間撹拌した。反応が完了した後に、混合物を20〜30℃に冷却し、そして2% NaHCO3(aq) (20 mL)を添加して、pHを7〜8に調節した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (2 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約60℃で減圧下に乾燥し、式 (V)の化合物 (0.81 g)を96.4%収率で提供した。
【0086】
式 (IV-d)の化合物 → 式(V)の化合物
化合物(IV-d) (1.0g, 1.5 mmole)及びアセトン (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物に12N HCl(aq) (0.2 mL)を添加してpHを1〜2に調節し、1.5時間撹拌した。反応が完了した後に、混合物を2% NaHCO3(aq) (20 mL)と混合してpHを7〜8に20〜30℃で調節した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (2 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、化合物(V) (0.52 g)を82.5%収率で提供した。
【0087】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.61 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.39 (dd, J = 3.6, 2.4 Hz, 1H), 3.59-3.52 (m, 1 H), 2.37-2.23 (m, 3 H), 2.07-2.00 (m, 2 H), 1.93-1.44 (m, 11 H), 1.18-1.10 (m, 2 H), 1.06 (s, 3 H), 1.02 (s, 3 H)。
【0088】
例14:式(I)のアビラテロンの合成
式(VII-a)の化合物→式(I)のアビラテロン
化合物(VII-a) (0.5 g, 1.2 mmole)及びMeOH (5 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物に、2N HCl(aq) (0.85 mL)を添加し、1.5時間撹拌しながらpHを1〜2に調節した。反応が完了した後に、混合物を4% NaHCO3(aq) (2.8 mL)と混合し、pHを7〜8に調節し、そして水 (5 mL)を20〜30℃で添加した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (2 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約 40℃で減圧下に乾燥し、アビラテロン(I) (0.4 g)を96.6%収率で提供した。
【0089】
式 (VII-b)の化合物→式 (I)のアビラテロン
化合物(VII-b) (1.0 g, 2.2 mmole)、12N HCl(aq) (0.22 mL)及びMeOH (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を20〜30℃で1時間撹拌し、均一溶液を得た。反応が完了した後に、混合物を17% Na2CO3(aq) (10 mL)に添加し、pHを11〜12に調節し、そして水 (20 mL)を20〜30℃で添加した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (4 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、アビラテロン(I) (0.74 g)を96.5%収率で提供した。
【0090】
式 (VII-c)の化合物→式(I)のアビラテロン
化合物(VII-c) (0.5 g, 1.2 mmole)及びMeOH (5 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物に、2N HCl(aq) (0.82 mL)を添加してpHを1〜2に調節し、そして撹拌を4時間続けた。反応が完了した後に、混合物を4% NaHCO3(aq) (3.5 mL)と混合してpHを7〜8に調節し、そして水 (5 mL)を20〜30℃で添加した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (2 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、アビラテロン(I) (0.38 g)を94%収率で提供した。
【0091】
式(VII-d)の化合物→式(I)のアビラテロン
化合物(VII-d) (1.0 g, 1.7 mmole)、12N HCl(aq) (0.22 mL)及びMeOH (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を20〜30℃で1時間撹拌し、均一溶液を得た。反応が完了した後に、混合物を17% Na2CO3(aq) (20 mL)と混合してpHを11〜12に調節し、そして水 (20 mL)を20〜30℃で添加した。得られた混合物を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (4 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、アビラテロン(I) (0.57 g)を96.1%収率で提供した。
【0092】
式(V)の化合物→式(I)のアビラテロン
化合物(V) (1.68 g, 4.0 mmole)、ジエチル(3-ピリジル)ボラン (0.88 g, 6.0 mmole), Na2CO3 (0.43 g, 4.0 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (28 mg, 0.04 mmole)、THF (10 mL)及び水 (5 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に0.5時間加熱した。反応が完了した後に、有機部分を相分離後に分離した。有機部分を水 (100 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を体積が8mLとなるまで約65〜70℃で濃縮した。8 mL EtOH (10 mL)及び水 (10 mL)を濃縮物に65〜70℃で添加した。得られた混合物を65〜70℃で1時間撹拌した。混合物を20〜30℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (10 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約40℃で減圧下に乾燥し、式(I)のアビラテロン (1.24 g)を88.8%の収率で提供した。
【0093】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.64 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.48 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.67 (ddd, 1 H), 7.26-7.22 (m, 1 H), 6.02 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1 H), 5.42 (dd, J = 5.2, 2.4 Hz, 1 H), 3.60-3.53 (m, 1H), 2.38-2.25 (m, 3 H), 2.13-2.04 (m, 2 H), 1.93-1.45 (m, 10 H), 1.18-1.10 (m, 2 H), 1.09 (s, 3 H), 1.07 (s, 3 H)。
【0094】
例15:式(VII-a)の化合物の合成 (図20を参照されたい)
化合物(IV-a) (2.02 g, 4.1 mmole)、3-ピリジンボロン酸 (0.77 g, 6.1 mmole)、Na2CO3 (1.72 g, 16.2 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (56 mg, 0.08 mmole)、トルエン (10 mL)、THF (6 mL)、EtOH (4 mL)及び水 (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に1.5時間加熱し、反応を完了させた。混合物を20〜30℃に冷却した後に、撹拌を止めて、相分離を行った。分離された有機部分を保存し、分離された水性部分を廃棄した。保存された有機部分を水 (20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約60℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: トルエン/n-ヘプタン = 1/5、1%のEt3Nを含む)に供した。精製された化合物(VII-a) (1.34 g)は77.6%収率を提供した。
【0095】
例16:式 (VII-b)の化合物の合成
化合物(IV-b) (2.0 g, 3.74 mmole)、3-ピリジンボロン酸 (0.69 g, 5.61 mmole)、Na2CO3 (0.4 g, 3.74 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (165 mg, 0.23 mmole)、THF (12 mL)及び水 (6 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を60〜65℃に6時間加熱し、反応を完了させた。トルエン (10 mL)を、混合物を20〜30℃に冷却した後に添加した。撹拌を止め、相分離を行った。分離された有機部分を保存し、分離された水性部分を廃棄した。保存された有機部分を水 (20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約60℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: トルエン/n-ヘプタン = 1/4)に供した。精製された化合物(VII-b) (1.17 g)は67.5%収率を提供した。
【0096】
例17:式 (VII-c)の化合物の合成
化合物(IV-c) (2.14 g, 4.0 mmole)、3-ピリジンボロン酸 (0.63 g, 5.0 mmole)、Na2CO3 (0.43 g, 4.0 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (56 mg, 0.08 mmole)、トルエン (10 mL)、THF (6 mL)、EtOH (4 mL)及び水 (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に2.5時間加熱し、反応を完了させた。混合物を20〜30℃に冷却した後に、撹拌を止め、相分離を行った。分離された有機部分を保存し、分離された水性部分を廃棄した。保存された有機部分を水 (20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約60℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/トルエン = 1/4、1%のEt3Nを含む)に供した。精製された化合物(VII-c) (1.26 g)は72.7%の収率で提供された。
【0097】
例18:式(VII-d)の化合物の合成
化合物(IV-d) (2.0 g, 3.0 mmole)、3-ピリジンボロン酸 (0.55 g, 4.5 mmole)、Na2CO3 (0.32 g, 3.0 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (126 mg, 0.18 mmole)、THF (12 mL)及び水 (6 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を60〜65℃に6時間加熱し、反応を完了させた。トルエン (10 mL)を、混合物を20〜30℃に冷却した後に添加した。撹拌を止め、相分離を行った。分離された有機部分を保存し、分離された水性部分を廃棄した。保存された有機部分を水 (20 mL)で洗浄した。得られた分離された有機部分を約60℃で減圧下にほぼ乾燥まで濃縮した。濃縮物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤: EtOAc/n-ヘプタン = 1/6)に供した。精製された化合物(VII-d) (1.41 g)は80.2%の収率で提供された。
【0098】
例19:式(I)のアビラテロンの合成 (図21を参照されたい)
化合物(V) (1.68 g, 4.0 mmole)、3-ピリジンボロン酸 (0.74 g, 6.0 mmole)、Na2CO3 (0.43 g, 4.0 mmole)、PdCl2(PPh3)2 (168 mg, 0.24 mmole)、トルエン (10 mL)、THF (6 mL)、EtOH (4 mL)及び水 (10 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に2.5時間加熱し、反応を完了させた。THFのほとんどを常圧での蒸留により除去した。トルエン (20 mL)を添加した後に、得られた混合物を20〜30℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキをEtOH (5 mL)で洗浄した。精製されたアビラテロン(I) (0.72 g)は51.6%の収率で提供された。
【0099】
例20:式 (I’)の酢酸アビラテロンの合成
アビラテロン (I) (7 g, 20 mmole)、DMAP (122 mg, 1 mmole)、Ac2O (6.12 g, 60 mmole)及びアセトン (42 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。混合物を55〜65℃に加熱し、そして1時間撹拌した。反応が完了した後に、水 (14 mL)及び酢酸アビラテロンシード(35 mg, 0.5 wt%)を50〜55℃で添加した。混合物を50〜55℃で1時間撹拌した。水 (35 mL)を添加した後に、混合物を0〜5℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキをアセトン及び水の混合物(1/1, 28 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約60℃で減圧下に乾燥し、酢酸アビラテロン(I’) (7.45 g) を95.3%収率で提供した。
【0100】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.62 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 8.46 (dd, J = 4.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.64 (m, 1 H), 7.28-7.20 (m, 1 H), 5.99 (dd, J = 3.2, 2.0 Hz, 1 H), 5.42 (dd, J = 5.2, 2.4 Hz, 1 H), 4.63-4.60 (m, 1H), 2.38-2.33 (m, 2H), 2.32-2.25 (m, 1H), 2.12-2.05 (m, 3 H), 2.04 (s, 3H) 1.93-1.45 (m, 9 H), 1.19-1.10 (m, 2 H), 1.08 (s, 3 H), 1.05 (s, 3 H)。
【0101】
例21:式(I)の化合物のワンポット調製の実験(図22を参照されたい)
式(III-a)の化合物の調製
プラステロン (II) (30 g, 104.2 mmole)、HMDS (11.7 g, 72.9 mmole)及びTHF (210 mL)を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。触媒量のTMSOTf (0.46 g, 2.08 mmole)を20〜30℃で添加し、そして混合物をこの温度で20分間撹拌し、反応を完了させた。混合物を45〜55℃で蒸留し、約60 mLの溶媒を除去した。20〜30℃に冷却した後に、化合物(III-a)を含む、得られた溶液を次の工程に直接的に使用した。
【0102】
化合物 (IV-a)の調製
化合物(III-a)を含む溶液を適切なフラスコに添加し、次いで、PhNTf2 (48.4 g, 135.5 mmole)を20〜30℃で添加した。混合物を0〜10℃に冷却し、NaHMDS (THF中2M、 78 mL, 156 mmole)をこの温度で1時間添加した。トルエン (250 mL)を添加し、そして得られた混合物を水 (480 mL)で洗浄した。分離された有機溶液は溶液アッセイにより46.7 gの化合物(IV-a)(プラステロン (II)からの2つの工程にわたって、91.2%に対応する)を含むものと決定された。化合物(IV-a)を含む溶液を次の工程で直接的に使用した。
【0103】
化合物(V)の調製
化合物(IV-a) (10.2 g、溶液アッセイにより決定)を含む溶液の一部分を適切なフラスコに20〜30℃で添加した。HCl水溶液(0.1N, 92 mL)を20〜30℃で添加し、そして混合物をこの温度で18時間撹拌し、反応を完了させた。分離された有機溶液を順次に8% NaHCO3(aq) (92 mL)及び10% NaCl(aq) (92 mL)で20〜30℃で洗浄した。化合物(V)を含む分離された有機溶液を次の工程で直接的に使用した。
【0104】
アビラテロン (I)の調製
適切なフラスコに化合物(V)を含む溶液を、次いで、ジエチル(3-ピリジル)ボラン (4.6 g, 31.2 mmole)、Na2CO3 (2.2 g, 20.8 mmole)及びPdCl2(PPh3)2 (145 mg, 0.2 mmole)を20〜30℃で添加した。混合物を70〜75℃に40分間加熱し、反応を完了させた。有機部分を60℃で分離し、この温度で水 (100 mL)をゆっくりと添加した。混合物を20〜30℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを水 (40 mL)で洗浄した。ウエットケーキを約60℃で減圧下に乾燥し、アビラテロン (I) (5.38 g)を74.0%収率 (プラステロン (II)から4つの工程にわたる) で提供した。
【0105】
以前の合成で報告されたとおり、パラジウム(II)触媒をアビラテロン (I)生成に用いた。パラジウムの所望されない汚染は必然的に起こる。下記のとおり、本明細書中の方法により製造されるアビラテロン (I)は初期的に165 ppmのパラジウムを含んだ(表1、エントリー1)。酢酸アビラテロン(I’)中のパラジウムのレベルを10 ppm以下に低減するために、パラジウム含有分低減のための実行可能な方法は必要とされる。
【表2】
【0106】
粗アビラテロン(I)をシリカ系スカベンジャー(エントリー3〜13を参照されたい)の存在下に適切な溶媒(トルエン又はキシレン)からの再結晶化に供することにより、精製されたアビラテロンを80〜90%の収率で、非常に低減されたPd含有分を含んで得た。スカベンジャーの構造を下記に示す。エントリー3〜5において使用されたスカベンジャーはPhosphonicSから得られ、そしてエントリー6〜13において使用されたスカベンジャーはSilicycleから得られる。PEP-21及びPEP-27は10 ppm未満の残留パラジウム含有分をうまく達成するようであった(エントリー3〜5)。対照的に、精製されたアビラテロン (I’)は、非官能化シリカゲルを用いたときには40.6 ppmのパラジウムを含んだ(エントリー2)。
【表3】
【0107】
アビラテロン(I)におけるパラジウム含有分の低下のための代表的な手順
粗アビラテロン (40 g)及びトルエン (1200 mL)を適切なフラスコに20〜40℃で添加した。混合物を還流温度に加熱し、そして約1時間撹拌した。得られた混合物を約100℃でろ過し、不溶性材料を除去した。スカベンジャー(PEP-21, 3 g,)を添加した。混合物を還流温度で加熱し、そして約1.5時間撹拌した。得られた混合物を100℃でろ過し、スカベンジャーを除去した。溶液を0〜10℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、そしてろ過ケーキをトルエンで洗浄した。ウエットケーキを約60℃で減圧下に乾燥し、精製されたアビラテロン (35.7g)を89%収率で、2 ppmのPdを含んで得た。
【0108】
例22:アセトン/水からの結晶化
約15 gの酢酸アビラテロンを120 mLのアセトン中に50℃で溶解した。混合物を熱いうちに500 mL反応器(ジャケット温度60℃、撹拌速度300 rpm)にろ過し、次いで、30 mLのアセトンでリンスした。水 (60 mL)を約60℃でゆっくりと添加し、曇り点まで達し、そして混合物をこの温度で5分間撹拌した。さらなる水 (90 mL)を添加した後に、混合物を20℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキをアセトン及び水の混合物(1/1, 45 mL)で洗浄した。70℃で減圧下に18時間乾燥した後に、得られた結晶性酢酸アビラテロン(14.6 g)を96.5%収率で提供した。結晶性酢酸アビラテロンのXRPDパターンは5.8、9.5、10.7、12.1、12.6、14.8、15.1、15.9、16.5、17.2、17.6、18.4、18.9、19.8、21.7、21.9、22.4、23.0、23.5、23.7、24.3、25.4、26.0、26.3、26.8、27.5、27.9、29.0、29.5、29.9、30.5、31.0、31.2、32.2、33.1、33.5、33.8、34.5、34.8、35.9、36.8、37.5、38.4、38.8、39.4及び39.8° 2-θ± 0.2で特徴的なピークを示す(図1)。
【0109】
例23:シクロヘキサンからの結晶化
酢酸アビラテロン(30 g)をシクロヘキサン(210 mL)中に20〜40℃で溶解した。混合物を70〜80℃に加熱した。溶液を冷却し、そしてAPIシード(0.03 g)を60〜70℃で添加した。得られたスラリーを曇り点で1時間撹拌する。スラリーを10〜25℃に冷却し、そして1時間保持した。混合物をろ過し、そしてろ過ケーキをシクロヘキサンで10〜25℃にて洗浄した。ウエットケーキを約60℃で乾燥し、酢酸アビラテロン(24.9 g)を89%収率で得た。
【0110】
上記の本発明は理解の明確化の目的で例示及び実施例により幾分か詳細に記載してきたが、当業者は特定の変更及び改変は添付の特許請求の範囲内で実施されうることを理解するであろう。さらに、本明細書中に提供された各文献は各文献が個々に参照により取り込まれるのと同様に、その全体が参照により取り込まれる。本出願と本明細書中に提供された文献との間に矛盾が存在する場合には、本出願が優位を占めるであろう。
図1
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