特許第6474801号(P6474801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474801硬化性樹脂組成物、硬化物、封止材、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474801
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、封止材、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20190218BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190218BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20190218BHJP
   C08G 77/12 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08K5/3477
   C08K5/098
   C08K5/54
   C08L83/05
   C08L83/07
   H01L23/30 R
   H01L33/56
   C08G77/20
   !C08G77/12
【請求項の数】14
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-525196(P2016-525196)
(86)(22)【出願日】2015年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2015065989
(87)【国際公開番号】WO2015186722
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-117841(P2014-117841)
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】板谷 亮
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/109349(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/016000(WO,A1)
【文献】 特開平07−310016(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070525(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/005633(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/039322(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/094625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン(A)、シルセスキオキサン(B)、イソシアヌレート化合物(C)、及び希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を含み、ポリオルガノシロキサン(A)としてアリール基を有しないポリオルガノシロキサンを含み、シルセスキオキサン(B)としてラダー型シルセスキオキサンを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物であって、
希土類金属原子の含有量が、硬化性樹脂組成物全量に対して、5ppm以上5000ppm未満である、硬化性樹脂組成物
【請求項2】
硬化性樹脂組成物全量に対する、ポリオルガノシロキサン(A)の含有量が55〜95重量%、シルセスキオキサン(B)の含有量が5〜45重量%、イソシアヌレート化合物(C)の含有量が0.01〜10重量%、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)の含有量が0.008〜1.000重量%である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
イソシアヌレート化合物(C)として、式(1)
【化1】
[式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基を示す。
【化2】
【化3】
[式(2)及び式(3)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
式(1)で表される前記イソシアヌレート化合物が、Rx、Ry、Rzのうち、ひとつ以上が式(3)で表される基であるイソシアヌレート化合物である請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)として、カルボン酸イットリウムを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)が、カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、及びカルボン酸ネオジムの混合物である請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の総数に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するSi−H基の総数の比が、1未満である請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
更に、シランカップリング剤(D)を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物硬化物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて得られる封止材。
【請求項14】
請求項13に記載の封止材を用いて得られる半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、並びにその硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物、封止材、及びその封止材を用いて得られる半導体装置に関する。本願は、2014年6月6日に日本に出願した、特願2014−117841号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱・高耐電圧が求められる半導体装置において、半導体素子を被覆する材料には一般に、150℃程度以上の耐熱性が求められている。特に、光半導体素子などの光学材料を被覆する材料(封止材)には、耐熱性に加えて、透明性、柔軟性等の物性に優れることが求められている。現在、例えば、液晶ディスプレイのバックライトユニットにおける封止材としては、特許文献1〜4などのシリコーン系樹脂材料が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−206721号公報
【特許文献2】特開2007−031619号公報
【特許文献3】特開2002−314140号公報
【特許文献4】特開2011−178983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、耐熱性が高く熱放散性の良い材料として、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた、分子量が2万から80万である第3の有機珪素ポリマーの1種以上を含有する合成高分子化合物が開示されている。しかしながら、これらの化合物の硬化物の物性は、未だ満足できるものではない。
【0005】
また、特許文献2には、透明性、耐UV性、耐熱着色性に優れた光素子封止用樹脂組成物として、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しSi−H結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサン、及び、Si−H結合を含有し脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサンからなる群から選択される少なくとも1種のシルセスキオキサンを樹脂成分として含有する光素子封止用樹脂組成物が開示されている。そして、150℃で100時間加熱後の透過率低下が、比較的小さくなることが記載されている。しかし、耐熱性は、未だ満足できるものではなく、また、籠型のシルセスキオキサンを含む樹脂組成物の硬化物は比較的硬く、柔軟性に乏しいため、クラックや割れが生じやすいという問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するトリアリルイソシアヌレートなどの有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する、鎖状、及び/又は、環状ポリオルガノシロキサンなどの化合物、ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有する硬化性組成物が開示されている。しかしながら、これらの材料の耐熱性、耐クラック性等の物性は、未だ満足できるものではない。
【0007】
一方、光半導体装置における電極等の金属材料は、腐食性ガスにより腐食され易く、通電特性(例えば、高温環境における通電特性)が経時的に悪化するという問題がある。そのため、光半導体用の封止材料には、腐食性ガスに対する高いバリア性(腐食性ガスに対する耐腐食性)が求められる。しかしながら、特許文献1〜3等に開示されている従来のシリコーン系樹脂材料を用いた封止材料は、腐食性ガスに対するバリア性が十分とは言えない。
【0008】
特許文献4には、(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、(B)ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、(C)ヒドロシリル化反応触媒と、(D)亜鉛化合物とを含み、前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有し、耐硫化性に優れたシリコーン樹脂組成物が開示されている。しかしながら、硫化水素(H2S)に対する耐腐食性は開示されているが、他の腐食性ガスに対する耐腐食性については、何ら記載がない。また、耐熱性についても、満足できるものではなかった。
【0009】
次世代光源用の封止材として、一層優れた耐熱性が要求されてきている。また、機器の小型化、薄型化に伴い、半導体素子を被覆する材料には、一層優れた耐熱性が要求されてきている。
さらに、半導体装置を腐食させる腐食性ガスには複数の種類が存在するため、多種多様な腐食性ガスに対するバリア性も併せて有することが要求されてきている。中でも、本発明者らは、半導体素子を被覆する材料には、少なくとも、硫化水素(H2S)ガスに対するバリア性(耐H2S腐食性)と硫黄酸化物(SOx)ガスに対するバリア性(耐SOx腐食性)の二つを兼ね備えていることが重要であることを見出した。
【0010】
従って、本発明の目的は、耐熱性(特に、180℃以上の耐熱性)、及び腐食性ガスに対する耐腐食性(特に、硫化水素(H2S)ガスに対するバリア性(耐H2S腐食性)、及び硫黄酸化物(SOx)ガスに対するバリア性(耐SOx腐食性))を兼ね備えた、半導体素子(特に光半導体素子)の封止用途に有用な硬化性樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、透明性、柔軟性を備えると共に、耐熱性、腐食性ガスに対する耐腐食性を兼ね備えた、半導体素子(特に光半導体素子)の封止用途に有用な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定のシリコーン樹脂に希土類金属原子のカルボン酸塩を添加すると、硬化物の加熱後の硬度上昇が抑えられ、耐熱性が著しく向上することに加え、耐H2S腐食性も向上することを見出した。さらには、特定のシリコーン樹脂及び希土類金属原子のカルボン酸塩に、ラダー型シルセスキオキサンを含むシルセスキオキサン及びイソシアヌレート化合物を配合することで、耐熱性、耐H2S腐食性(H2Sガスバリア性)を低下させることなく、耐SOx腐食性(SOxガスバリア性)にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)、シルセスキオキサン(B)、イソシアヌレート化合物(C)、及び希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を含み、ポリオルガノシロキサン(A)としてアリール基を有しないポリオルガノシロキサンを含み、シルセスキオキサン(B)としてラダー型シルセスキオキサンを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
上記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含むことが好ましい。
【0014】
上記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含むことが好ましい。
【0015】
上記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンを含むことが好ましい。
【0016】
イソシアヌレート化合物(C)として、式(1)
【化1】
[式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基を示す。
【化2】
【化3】
[式(2)及び式(3)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物を含むことが好ましい。
【0017】
式(1)で表される上記化合物が、Rx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上が式(3)で表される基である化合物であることが好ましい。
【0018】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)として、カルボン酸イットリウムを含むことが好ましい。
【0019】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)が、カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、及びカルボン酸ネオジムの混合物であることが好ましい。
【0020】
硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の総数に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するSi−H基の総数の比が、1未満であることが好ましい。
【0021】
更に、シランカップリング剤(D)を含むことが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を用いて得られる封止材を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、上記封止材を用いて得られる半導体装置を提供する。
【0025】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]ポリオルガノシロキサン(A)、シルセスキオキサン(B)、イソシアヌレート化合物(C)、及び希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を含み、ポリオルガノシロキサン(A)としてアリール基を有しないポリオルガノシロキサンを含み、シルセスキオキサン(B)としてラダー型シルセスキオキサンを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[2]前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含む[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサンを含む[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記ラダー型シルセスキオキサンとして、分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンを含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[5]イソシアヌレート化合物(C)として、前記式(1)で表されるイソシアヌレート化合物を含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]前記式(1)で表される前記イソシアヌレート化合物が、Rx、Ry、Rzのうち、ひとつ以上が前記式(3)で表される基であるイソシアヌレート化合物である[5]に記載の硬化性樹脂組成物。
[7]希土類金属原子のカルボン酸塩(E)として、カルボン酸イットリウムを含む[1]〜[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[8]希土類金属原子のカルボン酸塩(E)が、カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、及びカルボン酸ネオジムの混合物である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[9]硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の総数に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するSi−H基の総数の比が、1未満である[1]〜[8]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[10]更に、シランカップリング剤(D)を含む[1]〜[9]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[11]前記ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンが、ヒドロシリル基又は脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有する基を有する直鎖状又は分岐鎖状のポリオルガノシロキサンである[1]〜[10]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[12]前記ポリオルガノシロキシシルアルキレンが、式(6)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである[1]〜[11]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[13]前記のアリール基を有しないポリオルガノシロキサンの割合が、ポリオルガノシロキサン(A)全量に対して、50重量%以上である[1]〜[12]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[14]前記ポリオルガノシロキサン(A)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量に対して、55〜95重量%である[1]〜[13]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[15]前記ラダー型シルセスキオキサンの含有量が、シルセスキオキサン(B)全量に対して、50重量%以上である[1]〜[14]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[16]前記の分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンの含有量が、シルセスキオキサン(B)全量に対して、20重量%以上である[2]〜[15]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[17]前記の分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサンの含有量が、シルセスキオキサン(B)全量に対して、10重量%以上である[3]〜[16]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[18]前記シルセスキオキサン(B)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量に対して、5〜45重量%である[1]〜[17]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[19]前記イソシアヌレート化合物(C)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量に対して、0.01〜10重量%である[1]〜[18]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[20]前記シランカップリング剤(D)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量に対して、0.01〜15重量%である[1]〜[19]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[21]前記の希土類金属原子のカルボン酸塩(E)の含有量が、硬化性樹脂組成物全量に対して、0.008〜1.000重量%である[1]〜[20]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[22][1]〜[21]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
[23][1]〜[21]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて得られる封止材。
[24][23]に記載の封止材を用いて得られる半導体装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、耐熱性、及び、H2SガスやSOxガス等、複数の腐食性ガスに対するバリア性(耐H2S腐食性、耐SOx腐食性など)に優れる。また、透明性、柔軟性、耐リフロー性、密着性等にも優れる。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体装置の封止材、特に、LED等の光半導体素子用の封止材として有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、これまでにない高温(例えば、180℃以上)の環境における耐熱性が要求される次世代光源用の封止材として有用である。更に、光半導体素子が、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物によって封止されることにより、品質や耐久性等に優れた光半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A)、シルセスキオキサン(B)、イソシアヌレート化合物(C)、及び希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を少なくとも含む。ポリオルガノシロキサン(A)は、アリール基を有しないポリオルガノシロキサンを少なくとも含む。シルセスキオキサン(B)は、ラダー型シルセスキオキサンを少なくとも含む。
【0028】
[ポリオルガノシロキサン(A)]
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)は、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有するポリオルガノシロキサンであって、アリール基を有しないポリオルガノシロキサンを少なくとも含む。
なお、本明細書において、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有するポリオルガノシロキサンを、単に「ポリオルガノシロキサン」と称する場合がある。
【0029】
ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、アリール基を有しないポリオルガノシロキサン、アリール基を有するポリオルガノシロキサン、主鎖として−Si−O−基(シロキシ基)に加え、さらに−Si−A−基[シルアルキレン基;Aは二価の炭化水素基(例えば、アルキレン基)を示す]を有する、アリール基を有しないポリオルガノシロキサン(以下、当該ポリオルガノシロキサンを「ポリオルガノシロキシシルアルキレン」と称する)などが挙げられる。
また、ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンは、ヒドロシリル基又は脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有する基を有する直鎖状又は分岐鎖状のポリオルガノシロキサンであっても良い。ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンとしては、ジメチルシリコーン骨格(ポリジメチルシロキサン)等の周知慣用のシリコーン骨格を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
なお、ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンには、シルセスキオキサン(B)は含まれない。
【0030】
上記ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンは、直鎖及び/又は分岐鎖を有するポリオルガノシロキサンであってもよい。
【0031】
上記アリール基を有するポリオルガノシロキサンにおけるアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特にC6-10アリール基)等が挙げられる。これらアリール基は、ポリオルガノシロキサン(A)におけるケイ素原子が有する置換基(ケイ素原子に直接結合する基)であっても良い。
【0032】
上記アリール基を有しないポリオルガノシロキサンは、分子内に実質的にアリール基を含有しないポリオルガノシロキサンであることが好ましい。具体的には、上記アリール基を有しないポリオルガノシロキサン(100重量%)中のアリール基の含有量が、0.5重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下がさらに好ましく、ポリオルガノシロキサン(A)中にアリール基が存在しないことが特に好ましい。アリール基の含有量が0.5重量%以下であることにより(特に、アリール基が存在しないことにより)、硬化物において所望の物性(耐熱性や屈折率等)が得られやすい。ポリオルガノシロキサン中のアリール基の含有量は、1H−NMRにより測定することができる。
【0033】
上記ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンにおけるケイ素原子が有する置換基としては、例えば、Si−H結合を有する基、置換又は無置換の炭化水素基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0034】
上記アルキル基としては、C1-10アルキル基が好ましく、C1-4アルキル基がより好ましい。上記アルケニル基としては、C2-10アルケニル基が好ましく、C2-4アルケニル基がより好ましい。上記シクロアルキル基としては、C3-12シクロアルキル基が好ましい。上記シクロアルケニル基としては、C3-12シクロアルケニル基が好ましい。上記アルコキシ基としては、C1-6アルコキシ基が好ましい。上記アルケニルオキシ基としては、C1-6アルケニルオキシ基が好ましい。上記アシルオキシ基としては、C1-6アシルオキシ基が好ましい。上記アルキルチオ基としては、C1-6アルキルチオ基が好ましい。上記アルケニルチオ基としては、C1-6アルケニルチオ基が好ましい。上記アルコキシカルボニル基としては、C1-6アルコキシカルボニル基が好ましい。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましい。
【0035】
上記置換基として、Si−H結合を有する基、置換又は無置換の炭化水素基(好ましくはアルキル基又はアルケニル基)から選ばれる少なくとも1種以上の置換基が好ましい。
【0036】
ポリオルガノシロキサン中の上記置換基の位置は、特に限定されず、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖に対して、側鎖に位置しても良いし、末端に位置しても良い。
【0037】
なお、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンは、同時に、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンであっても良い。また、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンは、同時に、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンであっても良い。
【0038】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンのシルアルキレン基における二価の炭化水素基(上記A)としては、例えば、アルキレン基(炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基など)、二価の脂環式炭化水素基などが挙げられ、好ましくは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(特にエチレン基)である。
【0039】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンとしては、例えば、下記式(6)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
【化4】
【0040】
式(6)中、R21〜R26は、同一又は異なって、水素原子、一価の炭化水素基、又は一価の複素環式基を示す。但し、R21〜R26の内一つ以上は、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含む一価の基である。
【0041】
上記一価の炭化水素基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基;一価の脂環式炭化水素基;脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基が結合した一価の基等が挙げられる。
【0042】
上記一価の複素環式基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0043】
上記一価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基)等が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)等が挙げられる。上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)等が挙げられる。
【0044】
上記一価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
【0045】
また、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した一価の基として、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
上記一価の炭化水素基、及び上記一価の複素環式基は、置換基を有していてもよい。
即ち、上記一価の炭化水素基、又は上記一価の複素環式基は、上記で例示した一価の炭化水素基又は一価の複素環式基の少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換わった一価の炭化水素基又は一価の複素環式基であってもよい。上記置換基の炭素数は0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。上記置換基としては、具体的には、例えば、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;アルコキシ基;アルケニルオキシ基;アシルオキシ基;メルカプト基;アルキルチオ基;アルケニルチオ基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;アミノ基;モノ又はジアルキルアミノ基;アシルアミノ基;エポキシ基含有基;オキセタニル基含有基;アシル基;オキソ基;イソシアネート基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。
【0047】
上記ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)等が挙げられる。上記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくはC2-4アルケニルオキシ基)等が挙げられる。上記アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
上記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくはC1-4アルキルチオ基)等が挙げられる。上記アルケニルチオ基としては、例えば、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくはC2-4アルケニルチオ基)等が挙げられる。上記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基等が挙げられる。上記モノ又はジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基等が挙げられる。上記アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、等のC1-11アシルアミノ基等が挙げられる。上記エポキシ基含有基としては、例えば、グリシジル基、グリシジルオキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。上記オキセタニル基含有基としては、例えば、エチルオキセタニルオキシ基等が挙げられる。上記アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0049】
上記一価の炭化水素基、一価の複素環式基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ビニル基、アリル基、置換基を有する炭化水素基(例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−グリシジルプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基等)等が好ましい。
【0050】
上記式(6)におけるR21〜R26は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
式(6)中、R27は、二価の炭化水素基を示す。上記二価の炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロエルキリデン基を含む)が挙げられる。中でも、R27としては、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数2〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基である。
【0052】
式(6)中、rは1以上の整数を示す。rが2以上の整数の場合、rが付された括弧内の構造は、それぞれ同一であっても良く、異なっていても良い。rが付された括弧内の構造がそれぞれ異なる場合、各構造同士の付加形態は特に限定されず、ランダム型であっても良く、ブロック型であっても良い。また、式(6)中、sは1以上の整数を示す。sが2以上の整数の場合、sが付された括弧内の構造は、それぞれ同一であっても良く、異なっていても良い。sが付された括弧内の構造がそれぞれ異なる場合、各構造同士の付加形態は特に限定されず、ランダム型であっても良く、ブロック型であっても良い。更に、式(6)において、rが付された括弧内の構造と、sが付された括弧内の構造の付加形態は、特に限定されず、ランダム型であっても良く、ブロック型であっても良い。なお、rとsは、同一であってもよいし異なっていてもよい。即ち、式(6)中、r、sは、同一又は異なって、それぞれ1以上の整数を示す。
【0053】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基、ヒドロシリル基、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基)等が挙げられる。
【0054】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンは、上述のように、直鎖、分岐鎖のいずれの鎖状構造を有するものであっても良い。
【0055】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンは、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。
【0056】
ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0057】
ポリオルガノシロキサン(A)中のアリール基を有しないポリオルガノシロキサン(例えば、ポリオルガノシロキシシルアルキレン)の割合は、特に限定されないが、柔軟性の観点から、例えば、ポリオルガノシロキサン(A)全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。中でも、一層優れた柔軟性が得られる観点から、ポリオルガノシロキサン(A)は、アリール基を有しないポリオルガノシロキサンのみであることが特に好ましい。なお、アリール基を有しないポリオルガノシロキサンを2種以上含む場合は、合計含有量(重量)の割合をいう。
【0058】
ポリオルガノシロキサンを2種以上組合せて使用する場合、少なくとも1種はヒドロシリル基を有し、少なくとも1種は脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有することが好ましい。
【0059】
ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサン(特に、アリール基を有しないポリオルガノシロキサン)の数平均分子量(Mn)は、500〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、2000〜8000が更に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、500〜50000が好ましく、5000〜40000がより好ましく、10000〜30000が更に好ましい。数平均分子量及び/又は重量平均分子量が500以上であることにより、得られる硬化物の耐熱性に優れる。数平均分子量が20000以下、及び/又は重量平均分子量が50000以下であることにより、ポリオルガノシロキサン(A)と他成分との相溶性に優れる。
なお、本明細書における上記数平均分子量、重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量として、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、の条件で測定したものをいう。
したがって、数平均分子量、重量平均分子量が、他の分析機器を用いた場合に別の範囲に含まれるものであっても、上記測定条件によって、数平均分子量、及び/又は重量平均分子量が上記範囲であれば、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する一つの成分であるポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサンに該当する。
【0060】
ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサン(特に、アリール基を有しないポリオルガノシロキサン)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)より算出される分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、耐熱性及び他の成分との相溶性の観点から、例えば、1.0〜7.0が好ましく、より好ましくは2.0〜6.5、さらに好ましくは3.0〜6.0、特に好ましくは4.0〜5.5である。
【0061】
ポリオルガノシロキサン(A)中に含まれるポリオルガノシロキサン(特に、アリール基を有しないポリオルガノシロキサン)の分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の数を調整しやすく、柔軟性および強度に優れる硬化物が得られやすいという観点から、例えば、3.0重量%以下(例えば0.5〜3.0重量%)が好ましい。なお、分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、例えば、1H−NMRによって測定することができる。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、55〜95重量%が好ましく、60〜92重量%がより好ましく、65〜90重量%が更に好ましい。含有量が55重量%未満であると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。一方、含有量が90重量%を超えると、腐食性ガスに対するガスバリア性が十分得られない場合がある。
【0063】
[シルセスキオキサン(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、シルセスキオキサン(B)として、ラダー型シルセスキオキサンを少なくとも含む。上記ラダー型シルセスキオキサンは、架橋された三次元構造を有するポリシロキサンである。
【0064】
ポリシロキサンは、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する化合物であり、その基本構成単位としては、M単位(ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した1価の基からなる単位)、D単位(ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した2価の基からなる単位)、T単位(ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した3価の基からなる単位)、Q単位(ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した4価の基からなる単位)が挙げられる。また、Si−O−Si骨格の構造としては、ランダム構造、カゴ構造、ラダー構造が挙げられる。
シルセスキオキサン(B)中に含まれるシルセスキオキサンは、上記T単位を基本構成単位とし、実験式(基本構造式)SiO1.5で表されるポリシロキサンであり、例えば、ランダム構造のSi−O−Si骨格の構造を有するシルセスキオキサン、カゴ構造のSi−O−Si骨格の構造を有するシルセスキオキサン、ラダー構造のSi−O−Si骨格の構造を有するシルセスキオキサン(ラダー型シルセスキオキサン)などが挙げられる。シスセスキオキサン(B)に含まれる上記シルセスキオキサン(例えば、ラダー型シスセスキオキサン)は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0065】
上記ラダー型シルセスキオキサンの実験式(基本構造式)RSiO1.5における上記Rとしては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基(炭素原子を含まない一価の酸素原子含有基)、一価の窒素原子含有基(炭素原子、酸素原子を含まない一価の窒素原子含有基)、又は一価の硫黄原子含有基(炭素原子、酸素原子を含まない一価の硫黄原子含有基)などが挙げられる。上記Rの少なくとも一部は、一価の有機基であることが好ましい。上記Rは、それぞれ同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0066】
上記Rにおける上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0067】
上記Rにおける上記一価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の炭化水素基(一価の炭化水素基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基などが挙げられる。
【0068】
上記Rにおける上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。
【0069】
上記Rにおける上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基などのC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などのC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)などが挙げられる。
【0070】
上記Rにおける上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基などのC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基などのC4-15の架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0071】
上記Rにおける上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0072】
また、上記Rにおける上記脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0073】
上記Rにおける炭化水素基は置換基を有していても良い。上記炭化水素基における置換基の炭素数は0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基などのC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基);ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、より好ましくはC1-4アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(好ましくはC2-6アルケニルオキシ基、より好ましくはC2-4アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いアリールオキシ基(好ましくはC6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(好ましくはC1-12アシルオキシ基);メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(好ましくはC1-6アルキルチオ基、より好ましくはC1-4アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(好ましくはC2-6アルケニルチオ基、より好ましくはC2-4アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いアリールチオ基(好ましくはC6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(好ましくはC7-18アラルキルチオ基);カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(好ましくはC1-6アルコキシ−カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(好ましくはC6-14アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基);アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(好ましくはモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(好ましくはC1-11アシルアミノ基);グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0074】
上記Rにおける上記アルコキシ基、上記アルケニルオキシ基、上記アシルオキシ基、上記アルキルチオ基、上記アルケニルチオ基、上記アルコキシカルボニル基としては、式(6)中の上記R21〜R26として例示したものが挙げられる。
【0075】
上記Rにおける上記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリールオキシ基等が挙げられる。上記アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基等が挙げられる。上記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリールチオ基等が挙げられる。上記アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基等が挙げられる。上記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基等が挙げられる。上記アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基等が挙げられる。
【0076】
上記Rにおける上記一価の酸素原子含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、ヒドロパーオキシ基、スルホ基などが挙げられる。上記一価の窒素原子含有基としては、例えば、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)などが挙げられる。また、上記一価の硫黄原子含有基としては、例えば、メルカプト基(チオール基)などが挙げられる。
【0077】
さらに、上記実験式(基本構造式)RSiO1.5における上記Rとしては、例えば、下記式(4)で表される基が挙げられる。
【化5】
上記式(4)中の複数個のR´は、それぞれ同一でも良いし、異なっていても良い。式(4)中のR´としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基などが挙げられる。これらの基としては、上記実験式(基本構造式)RSiO1.5におけるRとして例示したものと同様の基が挙げられる。
【0078】
上記式(4)で表される基において、各R´としては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルケニル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
【0079】
中でも、上記実験式(基本構造式)RSiO1.5における上記Rとしては、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(特に、アルキル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。
【0080】
上記ラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、下記式(5)で表されるラダー型シルセスキオキサンであってもよい。
【化6】
【0081】
上記式(5)において、pは1以上の整数(好ましくは1〜5000、より好ましくは1〜2000、更に好ましくは1〜1000)である。上記式(5)中のTは末端基を示す。上記式(5)中のR(以下「側鎖」と称することがある)としては、例えば、実験式RSiO1.5のRとして例示したものが挙げられる。上記式(5)中のTとしては、例えば、実験式RSiO1.5のRとして例示したものが挙げられる。中でも、上記式(5)中のR又はTとしては、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基、式(4)で表される基が好ましく、より好ましくは水素原子、脂肪族炭化水素基(特に、アルキル基、アルケニル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。特に、上記式(5)におけるTとしては、トリメチル基を含むことが好ましく、トリメチル基とビニル基、又はトリメチル基とSiH含有基とを含むことがより好ましい。
【0082】
式(5)における上記Rの全量(100モル%)に対する、置換又は無置換の炭化水素基の占める割合は、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。特に、式(5)における上記Rの全量(100モル%)に対する、置換又は無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、特にメチル基又はエチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、置換又は無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10のアリール基、特にフェニル基)、置換又は無置換の炭素数7〜10のアラルキル基(好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、特にベンジル基)の合計量は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点からは、上記Rの一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましい。
【0083】
[ラダー型シルセスキオキサン(B1)]
上記ラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサン(B1)(以下、単に「ラダー型シルセスキオキサン(B1)」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記ラダー型シルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン(B1)であることが好ましい。ラダー型シルセスキオキサン(B1)としては、上記側鎖又は上記末端基に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を持つ化合物であれば特に限定されない。
【0084】
上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基などのC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基などが挙げられる。なお、上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、上記式(4)で表される基において、3つのR´のうち少なくとも1つが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基(例えば、C2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基など)である基も含まれる。中でも、アルケニル基が好ましく、より好ましくはC2-20アルケニル基、さらに好ましくはビニル基である。
【0085】
ラダー型シルセスキオキサン(B1)における、分子内(一分子中)の上記脂肪族炭素−炭素二重結合の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、2〜30個がより好ましい。上述の範囲で上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有することにより、耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。
【0086】
ラダー型シルセスキオキサン(B1)中の上記脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、特に限定されないが、0.7〜5.5mmol/gが好ましく、1.1〜4.4mmol/gがより好ましい。また、ラダー型シルセスキオキサン(B1)に含まれる上記脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、特に限定されないが、ビニル基換算で、2.0〜15.0重量%が好ましく、3.0〜12.0重量%がより好ましい。
【0087】
ラダー型シルセスキオキサン(B1)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であってもよいし、固体であってもよい、中でも、常温で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(B1)の25℃における粘度は、100〜100000mPa・sが好ましく、500〜10000mPa・sがより好ましく、1000〜8000mPa・sが更に好ましい。粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が100000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となる場合がある。なお、25℃における粘度は、例えば、レオーメーター(商品名「PhysicaUDS−200」、AntonPaar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:25℃、回転数:20rpmの条件で測定することができる。
シルセスキオキサン(B)に、常温で固体のシルセスキオキサン(B1)が含まれると、腐食性ガスに対する耐腐食性や、強靭性(特に耐クラック性)が向上する傾向がある。
【0088】
[ラダー型シルセスキオキサン(B2)]
上記ラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサン(B2)(以下、単に「ラダー型シルセスキオキサン(B2)」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記ラダー型シルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン(B2)であってもよい。ラダー型シルセスキオキサン(B2)としては、上記側鎖又は上記末端基に水素原子又はSi−H結合を有する基を持つ化合物であれば特に限定されない。
【0089】
上記Si−H結合を有する基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル基、上記式(4)で表される基において、3つのR´のうち少なくとも1つが水素原子である基などが挙げられる。
【0090】
ラダー型シルセスキオキサン(B2)における、分子内(一分子中)の上記水素原子又は上記Si−H結合を有する基の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、2〜30個がより好ましい。上述の範囲で上記水素原子又は上記Si−Hを有する基を有することにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
【0091】
ラダー型シルセスキオキサン(B2)に含まれる上記水素原子又は上記SiH基の割合(重量基準)は、特に限定されないが、水素原子又はSiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%が好ましく、0.08〜0.28重量%がより好ましい。上記水素原子又は上記SiH基の含有量が少なすぎると(例えば、H換算で0.01重量%未満の場合)、硬化性樹脂組成物の硬化が十分に進行しない場合がある。一方、上記水素原子又は上記SiH基の含有量が多すぎると(例えば、H換算で0.50重量%を超える場合)、硬化物の硬度が高くなり、割れやすくなる場合がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(B2)における上記水素原子又は上記SiH基の含有量は、例えば、1H−NMRなどによって測定することができる。
【0092】
ラダー型シルセスキオキサン(B2)中に存在するSiH基の割合は、特に限定されないが、柔軟性の観点から、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在する全SiH基(100モル%)に対して、0〜80モル%が好ましく、より好ましくは0〜50モル%である。
【0093】
ラダー型シルセスキオキサン(B2)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であってもよいし、固体であってもよい、中でも、常温で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(B2)の25℃における粘度は、100〜100000mPa・sが好ましく、500〜10000mPa・sがより好ましく、1000〜8000mPa・sが更に好ましい。粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が100000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となる場合がある。なお、25℃における粘度は、例えば、ラダー型シルセスキオキサン(B1)の粘度と同様の方法により測定することができる。
シルセスキオキサン(B)に、常温で固体のシルセスキオキサン(B2)が含まれると、腐食性ガスに対する耐腐食性や、強靭性(特に耐クラック性)が向上する傾向がある。
【0094】
[その他のラダー型シルセスキオキサン]
上記ラダー型シルセスキオキサンは、例えば、分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンを含んでいてもよい。分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特にC6-10アリール基)等が挙げられる。これらアリール基は、ポリオルガノシロキサン(A)におけるケイ素原子が有する置換基(ケイ素原子に直接結合する基)であっても良い。
また、上記ラダー型シルセスキオキサンとしては、ラダー型シルセスキオキサン(B1)、ラダー型シルセスキオキサン(B2)、分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサン以外のラダー型シルセスキオキサン(以下、「その他のラダー型シルセスキオキサン」と称する場合がある)を含んでいてもよい。特に、上記その他のラダー型シルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン(B1)やラダー型シルセスキオキサン(B2)と併用することが好ましい。
【0095】
上記ラダー型シルセスキオキサンは、特に限定されないが、例えば、ラダー型ポリオルガノシロキサン(B1)、ラダー型ポリオルガノシロキサン(B2)、及び分子内にアリール基を有するラダー型シルセスキオキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種のシルセスキオキサンを含むが好ましく、ラダー型シルセスキオキサン(B1)及び/又はラダー型シルセスキオキサン(B2)を含むことがより好ましい。
【0096】
シルセスキオキサン(B)中の上記ラダー型シルセスキオキサンの含有量は、特に限定されないが、例えば、シルセスキオキサン(B)全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。中でも、シルセスキオキサン(B)は、上記ラダー型シルセスキオキサンのみであることが好ましい。即ち、シルセスキオキサン(B)は、上記ラダー型シルセスキオキサンであることが好ましい。ラダー型シルセスキオキサンの含有量が上記範囲であることにより、耐SOx腐食性に一層優れる。
【0097】
シルセスキオキサン(B)中のラダー型シルセスキオキサン(B1)の含有量は、特に限定されないが、例えば、シルセスキオキサン(B)全量(100重量%)に対して、20重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上限としては、例えば、100重量%が好ましく、95重量%や80重量%や60重量%であってもよい。中でも、シルセスキオキサン(B)は、上記ラダー型シルセスキオキサン(B1)のみであることが好ましい。即ち、シルセスキオキサン(B)は、上記ラダー型シルセスキオキサン(B1)であってもよい。
【0098】
シルセスキオキサン(B)中のラダー型シルセスキオキサン(B2)の含有量は、特に限定されないが、例えば、シルセスキオキサン(B)全量(100重量%)に対して、10重量%以上が好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。上限としては、例えば、100重量%が好ましく、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは60重量%、特に好ましくは50重量%である。シルセスキオキサン(B)は、上記ラダー型シルセスキオキサン(B2)のみであってもよい。
シルセスキオキサン(B2)は、硬化性樹脂組成物中に含まれるSiH基の数を制御しやすいという観点から、シルセスキオキサン(B1)と併用することが好ましい。中でも、シルセスキオキサン(B1)とシルセスキオキサン(B2)の比率(シルセスキオキサン(B1):シルセスキオキサン(B2))が、2〜8:8〜2が好ましく、より好ましくは4〜6:6〜4である。
【0099】
上記ラダー型シルセスキオキサンは、公知の製造方法(例えば、3官能シラン化合物を原料とした加水分解縮合法)により製造することができる。
【0100】
シルセスキオキサン(B)中に含まれるシルセスキオキサンの数平均分子量及び/又は重量平均分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、200〜10万がより好ましく、300〜3万が更に好ましく、500〜20000が特に好ましい。100未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合があり、80万を超えると、シルセスキオキサン(B)の他の成分に対する相溶性が低下する場合がある。なお、シルセスキオキサン(B)は、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であっても良い。
【0101】
シルセスキオキサン(B)中に含まれるシルセスキオキサン(特に、ラダー型シルセスキオキサン)の分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(重量基準、ビニル基換算)は、特に限定されないが、柔軟性および強度に優れる硬化物が得られやすいという観点から、例えば、15.0重量%以下(例えば1.0〜15.0重量%)が好ましく、より好ましくは1.2〜12.0重量%である。分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、例えば、1H−NMRによって測定することができる。
【0102】
シルセスキオキサン(B)中に含まれるシルセスキオキサン(特に、ラダー型シルセスキオキサン)の分子内のSiH基の含有量(SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算)は、特に限定されないが、柔軟性および強度に優れる硬化物が得られやすいという観点から、例えば、0.50重量%以下(例えば0.01〜0.50重量%)が好ましく、より好ましくは0.03〜0.28重量%である。上記SiH基含有量は、例えば、1H−NMRなどによって測定することができる。
【0103】
シルセスキオキサン(B)中に含まれるシルセスキオキサン(特に、ラダー型シルセスキオキサン)は、特に限定されないが、オルガノシロキサン(A)との相溶性の観点から、メチル基とビニル基を含むシルセスキオキサンであって、メチル基とビニル基の比(モル比、メチル基:ビニル基)が、5:5〜9.5:0.5の範囲であることが好ましく、5.5:4.5〜9:1の範囲であることがより好ましい。上記メチル基、ビニル基の含有量は、例えば、1H−NMRによって測定することができる。
【0104】
シルセスキオキサン(B)は、特に限定されないが、例えば、無色透明であることが好ましい。具体的には、紫外可視光分光光度計で測定される400nmにおける光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0105】
シルセスキオキサン(B)は、特に限定されないが、例えば、上記ラダー型シルセスキオキサン等を均一に混合することにより、製造することができる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるシルセスキオキサン(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、5〜45重量%が好ましく、7〜40重量%がより好ましく、10〜35重量%が更に好ましい。含有量が5重量%未満であると、SOx等の腐食性ガスに対するガスバリア性が十分得られない場合がある。一方、含有量が45重量%を超えると、硬化物の耐クラック性が低下したり、耐熱性が十分得られない場合がある。
【0107】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるシルセスキオキサン(B)の含有量は、特に限定されないが、例えば、ポリオルガノシロキサン(A)及びシルセスキオキサン(B)の合計量(100重量部)に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは8〜30重量部である。含有量が上記範囲であることにより、腐食性ガスに対する耐腐食性(特に耐SOx腐食性)に優れる。
【0108】
本発明の硬化性樹脂組成物中の、ポリオルガノシロキサン(A)及びシルセスキオキサン(B)の合計含有量は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、60.000〜100重量%が好ましく、より好ましくは、70.000〜99.000重量%である。ポリオルガノシロキサン(A)及びシルセスキオキサン(B)の合計含有量が上記範囲であることにより、腐食性ガスに対する耐腐食性(特に耐SOx腐食性)に優れる。特に、99重量%以下であることにより、耐熱性、及び腐食性ガスに対する耐腐食性に一層優れる。
【0109】
[イソシアヌレート化合物(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、イソシアヌレート化合物(C)を含む。本発明の硬化性樹脂組成物はイソシアヌレート化合物(C)を含むことにより、特に、硬化により形成される硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、被着体に対する密着性が向上する傾向がある。
【0110】
イソシアヌレート化合物(C)は、式(1)で表されるイソシアヌレート化合物を含むことが好ましい。特に、イソシアヌレート化合物(C)は、式(1)で表されるイソシアヌレート化合物のみであることが好ましい。
【化7】
【0111】
上記式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、上記式(2)で表される基、又は上記式(3)で表される基を示す。中でも、上記式(1)におけるRx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上(好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つ)が上記式(3)で表される基であることが好ましい。
【化8】
【化9】
【0112】
上記式(2)及び上記式(3)中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基などが挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(2)及び上記式(3)におけるR1、R2は、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
【0113】
イソシアヌレート化合物(C)に含まれるイソシアヌレート化合物としては、特に限定されないが、例えば、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、モノメチルジグリシジルイソシアヌレート、ジメチルモノグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレートなどが挙げられる。中でも、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートが好ましい。なお、イソシアヌレート化合物(C)中のイソシアヌレート化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0114】
イソシアヌレート化合物(C)は、他の成分との相溶性を向上させる観点から、後述のように、シランカップリング剤とあらかじめ混合してから他の成分と配合しても良い。
【0115】
イソシアヌレート化合物(C)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜3重量%が更に好ましい。上記イソシアヌレート化合物の含有量が0.01重量%未満であると、腐食性ガスに対するバリア性、被着体に対する密着性が低下する場合がある。一方、上記イソシアヌレート化合物の含有量が10重量%を超えると、硬化性樹脂組成物において固体が析出したり、硬化物が白濁する場合がある。
【0116】
[シランカップリング剤(D)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤(D)を含んでも良い。シランカップリング剤(D)を含むことにより、被着体に対する密着性が向上する傾向がある。
【0117】
シランカップリング剤(D)は、上記シルセスキオキサン(B)やイソシアヌレート化合物(C)等との相溶性が良好であるため、例えば、イソシアヌレート化合物のその他成分に対する相溶性を向上させるために、あらかじめイソシアヌレート化合物(C)とシランカップリング剤(D)の組成物を形成した上で、その他成分と配合すると、均一な硬化性樹脂組成物が得られやすい。
【0118】
シランカップリング剤(D)としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシランなどが挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が好ましい。なお、シランカップリング剤(D)は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0119】
シランカップリング剤(D)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましい。上記シランカップリング剤の含有量が0.01重量%未満であると、被着体に対する密着性が低下し、特に、イソシアヌレート化合物(C)を相溶させて使用する際に、十分な硬化が得られない場合がある。一方、シランカップリング剤(D)の含有量が15重量%を超えると、硬化が不十分になり、硬化物の靭性、耐熱性、バリア性が低下する場合がある。
【0120】
[希土類金属原子のカルボン酸塩(E)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を含む。希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を含むことにより、耐H2S腐食性と耐熱性が向上する傾向がある。希土類金属原子のカルボン酸塩中に含まれる希土類金属原子は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本明細書において、希土類金属原子のカルボン酸塩を、カルボン酸希土類と称する場合がある。
【0121】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)に含まれる希土類金属原子のカルボン酸塩における希土類金属原子としては、例えば、イットリウム、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムなどが挙げられる。上記希土類金属原子のカルボン酸塩におけるカルボン酸塩としては、例えば、炭素数1〜20(好ましくは2〜12、より好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜7)のカルボン酸のカルボン酸塩が好ましく、より好ましくは、2−エチルヘキサン酸塩などのヘキサン酸塩である。中でも、上記希土類金属原子のカルボン酸塩としては、カルボン酸イットリウム、カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、カルボン酸ネオジム(特に、炭素数1〜20のカルボン酸イットリウム、炭素数1〜20のカルボン酸セリウム、炭素数1〜20のカルボン酸ランタン、炭素数1〜20のカルボン酸プラセオジム、炭素数1〜20のカルボン酸ネオジムが好ましく、より好ましくは2−エチルヘキサン酸イットリウム、2−エチルヘキサン酸セリウム、2−エチルヘキサン酸ランタン、2−エチルヘキサン酸プラセオジム、2−エチルヘキサン酸ネオジム)が好ましい。
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)中の希土類金属原子のカルボン酸塩は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0122】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)は、例えば、セリウムを含む希土類金属原子のカルボン酸塩(例えば、カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、及びカルボン酸ネオジムからなる群より選ばれる少なくとも2種以上の希土類金属原子のカルボン酸塩の混合物(カルボン酸セリウム、カルボン酸ランタン、カルボン酸プラセオジム、及びカルボン酸ネオジムの混合物など)、若しくはカルボン酸セリウムのみ(単一化合物)など)、又はカルボン酸イットリウムを含む希土類金属原子のカルボン酸塩(例えば、カルボン酸イットリウムのみなど)であることが好ましく、セリウムを含む希土類金属原子の2−エチルヘキサン酸塩(例えば、2−エチルヘキサン酸セリウム、2−エチルヘキサン酸ランタン、2−エチルヘキサン酸プラセオジム、及び2−エチルヘキサン酸ネオジムからなる群より選ばれる少なくとも2種以上の希土類金属原子の2−エチルヘキサン酸塩の混合物(2−エチルヘキサン酸セリウム、2−エチルヘキサン酸ランタン、2−エチルヘキサン酸プラセオジム、及び2−エチルヘキサン酸ネオジムの混合物など)、又は2−エチルヘキサン酸セリウムのみ(単一化合物)など)、又は2−エチルヘキサン酸イットリウムであることがより好ましい。
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)としては、例えば、商品名「オクトープR」(ホープ製薬株式会社製)などの市販品を用いてもよい。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物中の希土類金属原子の含有量は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物全量(100重量%)に対して、5ppm以上5000ppm未満が好ましく、7ppm以上1000ppm未満がより好ましく、10ppm以上300ppm未満が更に好ましい。希土類金属原子の含有量が5ppm未満であると、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)の効果が十分に発揮されず、H2Sガスに対するバリア性の低下または耐熱性が低下する場合がある。一方、5000ppm以上であると、硬化物の透過率が低下する場合がある。
硬化性樹脂組成物中の上記希土類金属原子の含有量は、後述の評価の(希土類金属原子含有量(ppm))に記載の方法で測定することができる。
【0124】
本発明の硬化性樹脂組成物中の希土類金属原子の含有量は、特に限定されないが、例えば、ポリオルガノシロキサン(A)及びシルセスキオキサン(B)の合計含有量(100重量%)に対して、5ppm以上5000ppm未満が好ましく、7ppm以上1000ppm未満がより好ましく、10ppm以上300ppm未満が更に好ましい。希土類金属原子の含有量が、上記範囲であることにより、耐熱性、及び腐食性ガスに対する耐腐食性(特に、耐H2S腐食性)が一層優れる。
【0125】
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)の含有量は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物全量(100重量%)に対して、0.008〜1.000重量%が好ましく、より好ましくは0.010〜0.500重量%、さらに好ましくは0.015〜0.400重量%である。特に、希土類金属原子の含有量が上記範囲であり、且つ希土類金属原子のカルボン酸塩の含有量が上記範囲であることにより、耐熱性、腐食性ガスに対する耐腐食性に一層優れる。
【0126】
[ヒドロシリル化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、ヒドロシリル化触媒を含んでいても良い。本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒を含むことにより、硬化反応(ヒドロシリル化反応)を効率的に進行させることができる。上記ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示される。具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体などの白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体などの白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、ならびに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。なお、上記ヒドロシリル化触媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0127】
本発明の硬化性樹脂組成物における上記ヒドロシリル化触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で、0.01〜1,000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒の含有量がこのような範囲にあると、架橋速度が著しく遅くなることがなく、硬化物に着色等の問題を生じるおそれが少ないため好ましい。
【0128】
[ヒドロシリル化反応抑制剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化反応(ヒドロシリル化反応)の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいても良い。上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の架橋条件により異なるが、実用上、硬化性樹脂組成物中の含有量として、0.00001〜5重量%の範囲内が好ましい。
【0129】
[その他のシロキサン化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシロキサン化合物として、更に、分子内(一分子中)に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する環状シロキサンを含んでいても良い。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシロキサン化合物として、更に、分子内(一分子中)に2個以上のSiH基を有する環状シロキサンを含んでいても良い。上記環状シロキサンは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明の硬化性樹脂組成物における環状シロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。
【0130】
[その他のシラン化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシラン化合物(例えば、ヒドロシリル基を有する化合物)を含んでいても良い。上記その他のシラン化合物としては、例えば、メチル(トリスジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサンなどのSiH基を有する直鎖状又は分岐鎖状シロキサンなどが挙げられる。なお、上記シラン化合物は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。上記シラン化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0〜5重量%が好ましく、0〜1.5重量%がより好ましい。
【0131】
[溶媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶媒を含んでいても良い。上記溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒が挙げられる。上記溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0132】
[添加剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、補強材(他の充填剤など)、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤などの慣用の添加剤を含んでいても良い。これらの添加剤は単独で、又は2種以上を組合せて使用できる。
【0133】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の総数に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物に存在するヒドロシリル基の総数の比(モル比でもある)が、1未満(好ましくは0.20以上1.00未満、より好ましくは0.50〜0.98、さらに好ましくは0.70〜0.95)となるような組成(配合組成)であることが好ましい。ヒドロシリル基と脂肪族炭素−炭素二重結合との割合を上記範囲とすることにより、硬化物の硬度が低下するためLED封止材としたときのワイヤーへかかる負荷が小さくなり、熱衝撃に対する信頼性が向上する傾向にある。
なお、本明細書において、ケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合とは、ケイ素原子が有する置換基中に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。また、ケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合は、ケイ素原子が有する置換基の末端、及び末端以外の脂肪族炭素−炭素二重結合を含む。
【0134】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上記の各成分を室温で攪拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0135】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物は、25℃における粘度として、300〜20000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が300mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が20000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となり、硬化物に気泡が残存しやすくなる場合がある。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、上述のラダー型シルセスキオキサン(B1)の粘度と同様の方法で測定できる。
【0136】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化反応(ヒドロシリル化反応)により硬化させることにより、硬化物(以下、「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。硬化反応の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60℃〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。本発明の硬化物は、耐熱性、透明性、柔軟性等の各種物性に優れ、さらに、リフロー工程における耐クラック性、パッケージに対する密着性等の耐リフロー性に優れ、腐食性ガスに対するバリア性にも優れる。
【0137】
本発明の硬化物のエージング前のA硬度は、特に限定されないが、例えば、70未満が好ましく、より好ましくは30〜69、さらに好ましくは40〜68、特に好ましくは45以上60未満である。エージング前のA硬度が上記範囲であることにより、加熱後(例えば200℃500時間の加熱後)でも、硬度が上がりにくい傾向がある。特にA硬度が60未満であることにより、加熱後の硬度上昇が一層抑えられる傾向がある。上記エージング前のA硬度は、具体的には、後述の(評価)の「(エージング前のA硬度、エージング後のA硬度)」に記載の方法により測定される値をいう。
上記エージング前のA硬度は、例えば、硬化前の硬化性樹脂組成物中に含まれる全化合物に存在するヒドロシリル基に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる全化合物に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の比率、ポリオルガノシロキサン(A)やシルセスキオキサン(B)のビニル重量率、もしくはSi−H重量率、シルセスキオキサン(B)の配合量などにより調節することができる。
【0138】
本発明の硬化物のエージング後(200℃500時間のエージング後)のA硬度は、特に限定されないが、例えば、90未満が好ましく、より好ましくは50〜89、さらに好ましくは60〜85、特に好ましくは65〜75である。エージング後のA硬度が上記範囲であることにより、耐熱性、熱衝撃に対する信頼性に優れる。特に85以下であることにより、耐熱性及び熱衝撃に対する信頼性に一層優れる。上記エージング後のA硬度は、具体的には、後述の(評価)の「エージング前のA硬度、エージング後のA硬度)」に記載の方法により測定される値をいう。
上記エージング後のA硬度は、例えば、硬化前の硬化性樹脂組成物中に含まれる全化合物に存在するヒドロシリル基に対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる全化合物に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合の比率、ポリオルガノシロキサン(A)やシルセスキオキサン(B)に含まれるビニル重量率、SiH重量率、ヒドロシリル化触媒量などにより調節することができる。
【0139】
[封止材及び半導体装置]
本発明の封止材は、本発明の硬化性樹脂組成物を必須成分として含む封止材である。本発明の封止材を用いて(例えば、硬化させて)得られる封止材(硬化物)は、耐熱性、透明性、柔軟性等の各種物性に優れ、さらに、耐リフロー性、腐食性ガスに対するバリア性に優れる。このため、本発明の封止材は、半導体装置における半導体素子の封止材、特に、光半導体装置における光半導体素子(特に、高輝度、短波長の光半導体素子)の封止材等として好ましく使用できる。本発明の封止材を用いて半導体素子(特に、光半導体素子)を封止することによって、耐久性及び品質に優れた半導体装置(特に、光半導体装置)が得られる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0141】
反応生成物及び製品の1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。
また、反応生成物及び製品の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、ポリスチレン換算、により行った。
【0142】
[ポリオルガノシロキサン(A)]
ポリオルガノシロキサン(A)として、以下の製品を使用した。
GD−1012A:長興化学工業社製、ビニル基含有量1.33重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基(ヒドリド換算)含有量0重量%、数平均分子量5108、重量平均分子量23385
GD−1012B:長興化学工業社製、ビニル基含有量1.65重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基(ヒドリド換算)含有量0.19重量%、数平均分子量4563、重量平均分子量21873
KER−2500A:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.53重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基(ヒドリド換算)含有量0.03重量%、数平均分子量4453、重量平均分子量19355
KER−2500B:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.08重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基(ヒドリド換算)含有量0.13重量%、数平均分子量4636、重量平均分子量18814
【0143】
[シルセスキオキサン(B)の合成]
<合成例1>
反応容器に、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)30.06g、ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)21.39g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水281ミリモル(5.06g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水703ミリモル(12.64g)を添加し、重縮合反応を窒素下で12時間行った。
続いて、上記重縮合反応後の反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、上記上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にトリメチルシリル基を有するラダー型シルセスキオキサンを無色透明の固体状の生成物として22.0g得た。
上記ラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は5000、1分子当たりのビニル基の含有量(平均含有量)は11.68重量%であり、メチル基/ビニル基(モル比)は60/40であった。
上記ラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトルは、以下の通りであった。
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:0−0.3ppm(br)、5.8−6.1ppm(br)
【0144】
<合成例2>
反応容器に、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)34.07g、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)11.49g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水240ミリモル(4.33g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水606ミリモル(10.91g)を添加し、重縮合反応を窒素下で9時間行った。さらに、ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)6.25gを添加し、3時間反応を行った。
続いて、上記重縮合反応後の反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、上記上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にビニル基とトリメチルシリル基とを有するラダー型シルセスキオキサン(上述のラダー型シルセスキオキサン(B1)に相当)を無色透明の液状の生成物として得た。
上記ラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3400、1分子当たりのビニル基の含有量(平均含有量)は3.96重量%であり、フェニル基/メチル基/ビニル基(モル比)は17/68/15であった。
上記ラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトルは、以下の通りであった。
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:−0.3−0.3ppm(br)、5.7−6.2ppm(br)、7.1−7.7ppm(br)
【0145】
<合成例3>
反応容器に、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)31.06g、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)2.38g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)93.00gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水240ミリモル(4.33g)及び5Nの塩酸0.24g(塩化水素として1.2ミリモル)を1時間かけて滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。
次に、反応容器の温度を50℃まで昇温し、50℃になった時点で水120ミリモル(2.16g)を添加し、重縮合反応を窒素下で4時間行った。さらに、ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)11.18gを添加し、4時間反応を行った。
続いて、上記重縮合反応後の反応溶液にヘキサメチルジシロキサン19.5gを添加して、シリル化反応を50℃で1時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、上記上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にビニル基とトリメチルシリル基とを有するラダー型シルセスキオキサン(上述のラダー型シルセスキオキサン(B1)に相当)を無色透明の液状の生成物として得た。
上記ラダー型シルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)は879、重量平均分子量(Mw)は1116であった。
【0146】
<合成例4>
反応容器に、合成例2で得られたラダー型シルセスキオキサン12gと、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)24gと、2.0%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)10μlとを仕込んだ。次いで、70℃で8時間加熱して、反応終了とした。続いて、エバポレータで濃縮した後、真空ポンプを用いて0.2Torrで3時間減圧し、末端にSiH含有基とトリメチルシリル基とを有するラダー型シルセスキオキサン(上述のラダー型シルセスキオキサン(B2)に相当)を液状の生成物として得た。
上記ラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3700、1分子当たりのSiH基の含有量(平均含有量)は、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算で0.11重量%であった。
上記ラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトルは、以下の通りであった。
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:−0.3−0.3ppm(br)、4.7ppm(s)、7.1−7.7ppm(br)
【0147】
[イソシアヌレート化合物(C)]
イソシアヌレート化合物(C)として、以下の製品を使用した。
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート:四国化成工業(株)製
【0148】
[シランカップリング剤(D)]
シランカップリング剤(D)として、以下の製品を使用した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:東レ・ダウ・コーニング(株)製
【0149】
[希土類金属原子のカルボン酸塩(E)]
希土類金属原子のカルボン酸塩(E)として、以下の製品を使用した。
オクトープR:2−エチルヘキサン酸レア・アース(ホープ製薬(株)製;レア・アース類としてセリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジムを含む。溶剤として、2−エチルヘキサン酸:8wt%、ミネラルスピリット68%含む)
2−エチルヘキサン酸イットリウム(和光純薬工業(株)製;2−エチルヘキサン酸イットリウム(III), 49% トルエン溶液)
2−エチルヘキサン酸セリウム(和光純薬工業(株)製;2−エチルヘキサン酸セリウム(III), 49% 2−エチルヘキサン酸溶液)
【0150】
<実施例及び比較例>
実施例1〜9及び比較例1〜4を、以下の手順に従って実施した。
表1に従って、イソシアヌレート化合物(C)及びシランカップリング剤(D)を所定重量比率で混合した後、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)及びシルセスキオキサン(B)を混合し、70℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、ポリオルガノシロキサン(A)を混合し、室温で10分間攪拌して、硬化性樹脂組成物を得た。
【0151】
【表1】
【0152】
[評価]
実施例および比較例で得られたサンプルについて、下記の測定方法又は評価方法により評価を行った。
【0153】
(希土類金属原子含有量(ppm))
実施例1〜9、比較例1〜4で得られた硬化性樹脂組成物(100重量%)に対する、希土類金属原子の含有量は、ICP−MSを用いた、試料中に含まれる希土類金属原子の定量分析により測定した。
装置:商品名「Agilent7500cs」(横河アナリティカルシステムズ製)
試料を溶媒にて希釈調製したものをICP−MS測定用検液とした。検量線用標準液は、上記検液に各元素の原子吸光用標準液を適宜希釈したものを添加して用いた。
【0154】
(SiH/Vinyl(モル比))
実施例1〜9、比較例1〜4で得られた硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物中に存在するヒドロシリル基のモル数の比(モル比)を、1H−NMRにより以下の条件で測定した。
なお、ヒドロシリル基の割合(重量基準)は、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)により求めた。
測定条件
装置:JEOL ECA500(500MHz、溶媒:CDCl3)δ:5.7−6.2ppm、δ:4.6−4.8ppm
【0155】
(エージング前のA硬度、エージング後のA硬度)
直径6cmのアルミカップへ実施例1〜9、比較例1〜4で得られた硬化性樹脂組成物をそれぞれ注入し、100℃で1時間、続いて、150℃で5時間加熱した。得られた硬化物をアルミカップから取り出し、これを200℃エージング試験用の試料とした。得られた試料の厚さは6mmであった。
JIS K6253に準拠して、得られた試料のA硬度(エージング前のA硬度)を測定した。
得られた試料を温度200℃のオーブン(ヤマト科学株式会社製、型番「DN4101」)に入れ500時間後に取り出し、JIS K6253に準拠して、200℃500時間エージング後のA硬度(エージング後のA硬度)を測定した。
【0156】
(H2S腐食性試験)
LEDパッケージ(商品名「SMD LED(Top View Type 3528 Pre Mold Lead Frame)」、SDI Corporation製)に、実施例1〜9、比較例1〜4で得られた硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて、150℃で5時間加熱して、試料を作成した。
上記試料を硫化水素濃度12ppm、温度40℃、湿度80%RHに調整したガス腐食試験機(スガ試験機(株)製、型番「GS−UV」)に入れ、24時間後に、LEDパッケージにおける銀製電極の腐食状況を観察した。上記電極の色は、試験前は銀白色であるが、腐食が進むに従って、茶褐色、黒色へと変化する。
腐食性試験の評価基準については、銀製電極にほとんど変色が見られなかった場合は「A」、僅かに茶褐色あるいは黒色へ変色した場合は「B」、完全に茶褐色若しくは黒色に変色した場合は「C」とした。
【0157】
(SOx腐食性試験)
LEDパッケージ(商品名「SMD LED(Top View Type 3528 Pre Mold Lead Frame)」、SDI Corporation製)に、実施例1〜9、比較例1〜4で得られた硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて、150℃で5時間加熱して、試料を作成した。
上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mlのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱をオーブン(ヤマト科学(株)製、型番「DN−64」)に入れ、温度80℃で24時間経過後に、LEDパッケージにおける銀製電極の腐食状況を観察した。上記電極の色は、試験前は銀白色であるが、腐食が進むに従って、茶褐色、更に黒色へと変化する。
腐食性試験の評価基準については、上記H2S腐食試験方法と同様とした。
【0158】
[試験結果]
比較例1では、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加しなかったため、熱エージング後に硬度が大幅に上昇し、硬化物の耐熱性は認められなかった。また、耐H2S腐食性も認められなかった。
比較例2では少量の希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加したが、熱エージング後に硬度が大幅に上昇し、硬化物の耐熱性は認められなかった。また、耐H2S腐食性も認められなかった。
比較例3及び比較例4では、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加しなかったため、熱エージング後に硬度が大幅に上昇し、硬化物の耐熱性は認められなかった。また、耐H2S腐食性の効果も認められなかった。さらに、シルセスキオキサン(B)およびイソシアヌレート化合物(C)を添加しなかったため、耐SOx腐食性も認められなかった。
【0159】
実施例1〜9では、比較例1〜2に対して、十分な量の希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加することにより、200℃500時間エージング後でも硬度の上昇幅が小さく、耐熱性が向上した。さらに、耐H2S腐食性も向上することが認められた。
実施例4〜5と他の実施例との対比より、希土類金属原子のカルボン酸塩(E)として、オクトープRと2−エチルヘキサン酸イットリウム及び2−エチルヘキサン酸セリウムとでは同等の耐熱性、耐H2S腐食性を示すことが認められた。
【0160】
(SiH/Vinylについて)
比較例1及び比較例2では、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物に存在するヒドロシリル基のモル数(モル比)が、1未満であるため、エージング前のA硬度が低く、60未満であった。しかし、200℃500時間のエージングによるA硬度の上昇幅が、比較例3及び比較例4よりも比較的大きく、硬化物の耐熱性は認められなかった。
一方、実施例1〜7では、硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物に存在するケイ素原子に結合する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対する、硬化性樹脂組成物中に含まれる全化合物に存在するヒドロシリル基のモル数(モル比)が、1未満であるため、エージング前のA硬度が低く、60未満であった。実施例1〜7では、十分な量の希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加することにより、実施例8〜9に対して、200℃500時間のエージングによるA硬度の上昇幅は同程度であった。
以上より、シリコーン樹脂に対して十分な量の希土類金属原子のカルボン酸塩(E)を添加することにより、耐熱性および耐H2S腐食性を有した組成物が得られることが認められた。さらに、シルセスキオキサン(B)およびイソシアヌレート化合物(C)を添加することにより、耐SOx腐食性を有した組成物が得られることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の硬化性樹脂組成物及び硬化物は、耐熱性、透明性、柔軟性、腐食性ガスに対するバリア性が求められる接着剤、コーティング剤、封止材などの用途に有用である。特に、本発明の硬化性樹脂組成物及び硬化物は、光半導体素子(LED素子)の封止材として好適である。