(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第3の触媒層が、ルテニウム、レニウム、ロジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、アルカリ及びアルカリ土類金属、並びにパラジウムのための金属酸化物粒子担体の形態の遷移金属を除く遷移金属を実質的に含まない、請求項2又は3に記載の触媒物品。
第1の酸化触媒が、金属酸化物粒子上で担持されるPt、又は金属酸化物粒子上で担持されるPt及びPdの混合物である、請求項1から6の何れか一項に記載の触媒物品。
【背景技術】
【0002】
炭化水素系燃料の燃焼によって、主に、比較的無害な窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を含有するエンジン排ガス又は燃焼排ガスが生成される。しかし、排ガスはまた、有害及び/又は毒性物質、例えば不完全燃焼から生じる一酸化炭素(CO)、未燃燃料由来の炭化水素(HC)、過度の燃焼温度による窒素酸化物(NO
x)、及び粒子状物質(大部分はすす)も比較的少量だが含有する。大気中に放出される排ガスの環境影響を軽減するために、望ましくない成分の量を、別の有害又は有毒な物質を発生させないプロセスにより、除去又は削減することが望ましい。
【0003】
一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、及び亜酸化窒素(N
2O)を含むNO
xは、リーンバーンエンジンによって生成される排ガスから除去すべき厄介な成分である。NO
xのN
2への還元は、排ガスが還元の代わりに酸化反応を有利にするのに十分な酸素を含有するため、特に問題である。それにもかかわらず、NO
xは、選択的触媒還元(SCR)として一般に知られているプロセスにより還元することができる。SCRプロセスは、触媒の存在下、アンモニア等の窒素含有還元剤を用いて、NO
xを元素の窒素(N
2)と水に変換することを含む。SCRプロセスにおいて、アンモニアのようなガス状の還元剤が、排ガスをSCR触媒と接触させる前に、排ガス流に添加される。還元剤は触媒に吸収され、ガスが触媒基材の内部又は表面を通過する間にNO
xの還元反応が起こる。アンモニアを使用した化学量論的SCR反応の化学式は次の通りである:
4NO+4NH
3+O
2→4N
2+6H
2O
2NO
2+4NH
3+O
2→3N
2+6H
2O
NO+NO
2+2NH
3→2N
2+3H
2O
【0004】
ほとんどのSCRプロセスは、NO
xの変換を最大にするために、化学量論超過のアンモニア量を使用する。スリップしたアンモニアガスが放出されると、他の燃焼種と反応し、及び/又は大気に負の影響を与える可能性があるため、SCRプロセスを通過する未反応のアンモニア(「アンモニアスリップ」とも呼ばれる)は望ましくない。アンモニアスリップを低減するために、SCRシステムは、SCR触媒の下流にアンモニア酸化触媒(AMOX)(アンモニアスリップ触媒(ASC)としても知られる)を含むことができる。
【0005】
排ガス中の過剰なアンモニアを酸化するための触媒が知られている。例えば、米国特許番号7393511には、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの担体上に白金、パラジウム、ロジウム、又は金などの貴金属を含有するアンモニア酸化触媒が記載される。これらの触媒は、次のようなN
2及び/又は二次的なNO
x+H
2Oを得るために、NH
3を酸化させる:
4NH
3+7O
2→4NO
2+6H
2O
4NH
3+5O
2→4NO+6H
2O
2NH
3+2O
2→N
2O+3H
2O
4NH
3+3O
2→2N
2+6H
2O
【0006】
この二次的なNOx形成を改善するために、典型的なASCは、従来のSCR触媒を含む最上部の触媒層と、アンモニア酸化触媒を含む底部の触媒層とを含む。スリップしたNH
3を含有しかつNO
xをほとんど又は全く含まない排ガスがASCのSCRを通過し、ここでSCR触媒は、NH
3の一部を吸蔵する。NH
3の別の部分は、二次的なNo
x及びH
2Oに酸化される底部層に到達するまで、触媒に浸透し続ける。二次的なNO
xは、最上部層を介して再び浸透し、最上部層では、貯蔵されたNH
3と反応し、N
2及びH
2Oを生成する。
【0007】
ASCの最上部層及び底部層は、排気流での未処理の二次的なNOxの形成につながるであろうNH
3の即座の酸化を防止するために分離される。このため、ASCの最上部層は、白金族金属(PGM)などの貴金属を含まない。更に、PGM系酸化触媒を含有する底部層は、未処理の二次的NOxが排気流に侵入することを防止するために、最上部層によって完全に覆われる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適な実施態様では、本発明は、環境大気質を改善するための触媒物品、特に、発電所、ガスタービン、リーンバーン内燃エンジン等により生じた排ガスの排出を改良するための触媒物品を対象とする。排出は、HC、CO、NH
3及び/又はNO
xの濃度を幅広い動作温度範囲にわたり低下させることにより、少なくとも部分的に改善される。本発明は、単一のユニットで複数の機能を実行することによって、排ガス後処理システムに必要なコスト及びスペース全体を削減することができる。加えて、本発明は、高温フィルタ再生動作を温度感性DOC及びSCR触媒の下流に位置付けることによって、排ガス後処理システムの熱耐久性を改善することができる。
【0019】
好適な実施形態では、本発明は、特に低温(例えば、250℃)で、NH
3を主に二次的なNO
x及びH
2Oに酸化させるための第1の酸化触媒をローディングする基材と;NH
3を貯蔵し及び/又はO
2の存在下でNH
3でNO
xを選択的に還元するためのSCR触媒と;実質的にNH
3を酸化せずに、主にCOをCO
2に、HCをCO
2及びH
2Oに酸化させるための第2の酸化触媒とを含み、第2の酸化触媒は、第1の酸化触媒の上方又は上流にある。本明細書で使用されるように、用語「二次的なNO
x」は、NH
3の酸化によって生成されるNO
xを指し、燃料の燃焼によって生成されるNO
xを含まない。好適には、第2の酸化触媒が、CO及びHCを完全に酸化させるために選択され、第2の酸化触媒は、部分的酸化触媒ではない。
【0020】
第2の酸化触媒は、パラジウム、好適にはローディングパラジウムを含む。任意選択的に、第2の酸化触媒は、基本的にローディングパラジウムから成る。好適には、第2の酸化触媒は、Pd以外の任意の触媒活性金属を基本的に含まない。本明細書で使用されるように、用語「触媒活性金属」は、NH
3、HC、又はCOの触媒酸化に直接関与する金属を意味する。本明細書で使用されるように、第2の酸化触媒の金属に対する用語「実質的に含まない(substantially free)」は、金属が存在しないか、触媒の酸化機能に影響しない程度の低い濃度で存在するかのどちらかを意味する。特定の金属を基本的に含まない触媒の例は、特定の金属が、第2の酸化触媒のPdの総重量に基づき、約1重量%未満、約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で存在する触媒を含む。
【0021】
Pdを除いて、第2の酸化触媒には、好適には、ルテニウム、レニウム、ロジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金を含む貴金属が含まれない。好適には、酸化触媒には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムなどの一又は複数のアルカリ並びにアルカリ土類金属が基本的に含まれない。好適には、酸化触媒には、バナジウム、タングステン、及び/又はモリブデンが基本的に含まれない。ある実施態様では、金属が金属酸化担体の形態で存在しない限り、酸化触媒には、マンガン、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、及びそれらの酸化物が基本的に含まれない。ある実施態様では、酸化触媒には、銅、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、ハフニウム、ランタン、ガリウム、セリウム、及び亜鉛から選択される一又は複数の金属などの遷移金属が基本的に含まれない。ある実施態様では、酸化触媒には、希土類金属が基本的に含まれない。
【0022】
好適には、第2の酸化触媒のパラジウムは、金属酸化物が特に好適であるが、金属酸化物又はゼオライトなどの高い表面積の担体によってローディングされる。パラジウム構成成分は、金属を含有する塩水溶液を担体と混合するなどの任意の従来の手段によって担体上に取り入れることができ、次に基材に適用することができる金属コロイドウオッシュコートを形成することができる。ある実施態様では、パラジウムは、ウオッシュコートのバッチングに先立ち、含浸によって担体上に予め固定される。好適には、パラジウムは、高い表面積の担体上の被覆である。
【0023】
パラジウムに対する担体の種類は、大きな表面積を有する粒子であり、不活性であり、かつ後処理システムでの使用に適していれば、特に限定されない。担体の材料の例は、アルミナ更にはセリアが特に好適であるが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及び物理的混合物又はそれらの合成物などの耐熱金属酸化物を含む。ある実施態様では、担体は、幅の広い細孔(100〜350Å)、又は幅の広い細孔と幅の狭い細孔との両方を有する。ある実施態様では、担体は、少なくとも50m
2/g、好適には約50〜500m
2/g、より好適には約50〜300m
2/g、又は約150〜250m
2/gのBET表面積を有する。耐熱金属酸化物担体は、好適には水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、約0.1〜0.5g/cc、例えば、約0.2〜0.4g/ccの細孔容積を好適には有する。 粒子計数に基づく、担体材料の平均粒径は、好適には、約0.01〜10μm、例えば、約0.5〜5μm、約0.1〜1μm、若しくは約5〜10μmであり、好適には、粒子計数の大部分は、粒径がこれらの範囲のうちの1つにある。ある実施態様では、担体のD
90粒径は、これらの範囲のうちの1つにある。
【0024】
第2の酸化触媒に対する他のパラジウム担体は、AEI、AFX、CHA、KFI、LEV、ERI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、VIN、AEI/CHA連晶、BEA、MFI、MOR、及びFERなどのゼオライト型骨格を有する、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩、アルミノリン酸塩などのモレキュラーシーブを含む。
【0025】
ある実施態様では、第2の酸化触媒は、基材上に配置された又は基材の上及び/又は内部にある別の触媒層上に配置された別個の固有の層である。そのような実施態様では、第2の酸化触媒には、好適には、任意の他の触媒材料が含まれない。
【0026】
他の実施態様では、第2の酸化触媒は、第2の酸化触媒とSCR触媒との物理的混合物を含有する触媒層として、基材上に配置される。第2の酸化触媒がSCR触媒を含む混合物として基材上に配置される実施態様について、混合物には、任意の貴金属、特にPGMが含まれない。好適には、混合物は、ローディングPdとSCR触媒との不均一な混合物であり、この場合Pdは、混合物に不均一に分配される。
【0027】
本発明のSCR触媒は、酸化環境における還元剤の存在下でNO
xを選択的に還元することができるならば、特に限定されない。ASCに取り入れられるSCR触媒は、二次的なNO
xを処理するために使用され、燃料の燃焼によって生成されるNO
xを処理するために使用されるSCR触媒とは別個の異なったものである。従って、ASCに取り入れられるSCR触媒は、「二次的なSCR」触媒と呼ぶことができ、燃料の燃焼によって生成されるNO
xを処理するために使用されるSCR触媒は、「主要なSCR」触媒と呼ぶことができる。これらの異なるSCR触媒は、同一の
配合を有していても異なる
配合を有していてもよい。
【0028】
ある実施態様では、SCR触媒は、高い表面積担体上に、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)、シリコアルミノリン酸塩(SAPOs)、又はアルミノリン酸塩(AlPOs)などの耐熱金属酸化物及びモレキュラーシーブを含む、少なくとも1つの助触媒金属を含む。ある実施態様では、SCR触媒は、皆無かそれに近いNH
3酸化容量を有しているが、温度の関数として、リーン環境若しくはリッチ環境の関数として、又はその両方として、NH
3を吸蔵及び放出することができる。本明細書で使用されるように、用語「リーン環境」は、化学量論的混合気を上回って(例えば、過剰空気)燃料を燃焼させることによって生成される排ガス、又はリーンバーン排ガスに少なくとも相当する酸素量を含有する排ガスを指す。本明細書で使用されるように、用語「リッチ環境」は、リッチな混合気の燃焼によって生成される排ガスを意味する。
【0029】
好適な助触媒金属は、V、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、La、Ce、In、V、Mn、Ni、Zn、Gaを別個に又は組み合わせて成るグループから選択される。助触媒金属は、遊離金属又は金属イオンとすることができ、イオン交換、初期湿潤、直接被覆を含む様々な技術によって担体の上若しくは内部で、又は担体材料の合成中の原位置(in situ)で、取り入れることができる。好適な助触媒金属は、好適には、助触媒金属がモレキュラーシーブ、好適には小さな細孔ゼオライトの上及び/又は内部にローディングされるときに、Cu及びFeを含む。
【0030】
いくつかの実施態様では、助触媒金属酸化物は、遊離バナジウム、バナジウムイオン、又はバナジウムの酸化物若しくはその誘導体などのバナジウムである。好適には、バナジウムの形態は、バナジア(V
2O
5)である。バナジウムに加えて、助触媒金属酸化物は、タングステンの酸化物及び/又はモリブデンの酸化物など、他の触媒活性金属酸化物を含むことができる。本明細書で使用されるように、「触媒活性」金属酸化物は、NO
xの触媒による還元及び/又はNH
3若しくは他の窒素系SCR還元剤の酸化において、分子成分として直接関与するものである。ある実施態様では、SCR触媒は、V
2O
5/WO
3/TiO
2であり、任意選択的にMoO
3を含む。
【0031】
好適なモレキュラーシーブ担体は、AEI、AFX、CHA、KFI、LEV、ERI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、VIN、AEI/CHA連晶、BEA、MFI、MOR、及びFERから成るグループから選択された骨格を有するゼオライト並びにSAPOを含む。ある実施態様では、骨格は、AEI、CHA、及びそれらの連晶から選択される。好適なアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブは、約10〜約50、好適には約15〜約25のシリカ対アルミナ比を有する。
【0032】
特に好適なSCR触媒は、任意選択的にMoO
3を含む、V
2O
5/WO
3/TiO
2;AEI、CHA、又はそれらの連晶の組み合わせから選択される骨格を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブにローディングされたCu;及びBEA及びFERから選択される骨格を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブにローディングされるFeを含む。
【0033】
第1の酸化触媒は、好適には、約250℃未満、約200℃未満、約150℃未満などの低温で、NH
3をNO
x及びH
2Oへ完全に酸化させるために選択される。好適には、第1の酸化触媒は、部分酸化触媒ではない。第1の酸化触媒は、好適には、ルテニウム、レニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、又はそれらの組み合わせなどの貴金属を含有する。第1の酸化触媒に好適な金属は、PGM、特にPt及びPtとPdとの組み合わせを含む。ある実施態様では、第1の酸化触媒は、第1の酸化触媒に存在する貴金属の総重量に基づき、少なくとも約30重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約75重量%、又は少なくとも約90重量%のPtを含有する。
【0034】
第1の酸化触媒の金属は、好適には、高い表面積の担体によってローディングされる。第1の酸化触媒金属に対する担体の種類は、大きな表面積を有する粒子であり、不活性であり、かつ後処理システムでの使用に適したものであれば、特に限定されない。担体の材料の例は、アルミナが特に好適であるが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及び物理的混合物又はそれらの合成物などの耐熱金属酸化物を含む。ある実施態様では、担体は、幅の広い孔(100〜350Å)、又は幅の広い孔と幅の狭い孔との両方を有する。ある実施態様では、担体は、少なくとも50m
2/g、好適には約50〜500m
2/g、より好適には約50〜300m
2/g、又は約150〜250m
2/gのBET表面積を有する。耐熱金属酸化物担体は、好適には水銀圧入ポロシメトリーによって測定される、約0.1〜0.5g/cc、例えば、約0.2〜0.4g/ccの細孔容積を好適には有する。粒子計数に基づく、担体材料の平均粒径は、好適には、約0.01〜10μm、例えば、約0.5〜5μm、約0.1〜1μm、若しくは約5〜10μmであり、好適には、粒子計数の大部分は、粒径がこれらの範囲のうちの1つにある。ある実施態様では、担体のD
90粒径は、これらの範囲のうちの1つにある。
【0035】
第1の酸化触媒の金属に対する他の担体は、AEI、AFX、CHA、KFI、LEV、ERI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、VIN、AEI/CHA連晶、BEA、MFI、MOR、及びFERなどのゼオライト型骨格を有する、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩、アルミノリン酸塩などのモレキュラーシーブを含む。
【0036】
本発明の触媒は、不均一触媒反応システム(即ち、反応ガスと接触した固体の触媒)で利用することができる。接触表面積、機械的安定性、及び流体流動の特性を改善するために、触媒成分を、基材の上及び/又は内部に、例えば、被覆として、配置することができる。ある実施態様では、触媒成分のうちの一又は複数を含有するウオッシュコートは、被覆として、波形金属プレート又はハニカムコーディエライトブリック(brick)などの不活性基材に適用される。ウオッシュコートは、好適には、溶液、懸濁液、又はスラリーである。適切な被覆は、基材の一部若しくは全体を被覆する表面被覆、基材の一部を通る被覆、基材に浸透する被覆、又はこれらの何らかの組合せを含む。触媒成分に加えて、ウオッシュコートはまた、アルミナ、シリカ、非ゼオライトのシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカのうちの一又は複数を含んだ、充填剤、結合剤、安定剤、レオロジー重合調整剤、及び他の添加物などの成分を含むことができる。ある実施態様では、ウオッシュコートは、グラファイト、セルロース、でんぷん、ポリアクリル酸塩、及びポリエチレン等の細孔形成剤を含む。これらの追加成分は、必ずしも所望の触媒反応を促さないが、代わりに、例えば、その動作温度範囲を増大すること、触媒の接触表面積を増大すること、基材に対する触媒の付着性を増大すること、より好ましい処理のためにレオロジーを修正すること等によって、触媒材料の有効性を改善する。通常、結合剤の粒子が担体の粒子に対してかなり大きいため、結合剤として使用される金属酸化物粒子は、粒径に基づき、担体として用いられる金属酸化物粒子と区別可能である。
【0037】
ある実施態様では、第1の酸化触媒の担体は、充填剤、結合剤、及び強化剤等の他の成分と共に練られて、その後に、ハニカムブリックを形成するためにダイを通して押し出される、押し出し可能なペーストになる。ハニカムブリックが乾燥及び/又はか焼される前又は後に、第1の酸化触媒を形成するために、第1の酸化触媒の貴金属成分が、ブリックの一又は複数の部分、又はブリック全体のどちらかに加えられる。他の実施態様では、ローディング貴金属を含有する第1の酸化触媒は、押し出す前に押し出し可能なペーストに取り入れられる。SCR触媒及び第2の酸化触媒は、次いで、押し出された第1の酸化触媒ブリック上の被覆として適用される。
【0038】
本発明で有益な2つの基材設計は、プレート及びハニカムである。プレート型触媒は、ハニカム型よりもよりも比較的低い圧力降下を有し、閉塞や汚れの影響もより受けにくいが、プレートの形状がはるかに大きく、より高価である。プレートは、通常、金属又は波形金属から構成される。
【0039】
ハニカム基材は、一般的に基材の入口面から出口面に延び、両端が開放されている(フロースルー基材)か、チェッカーボード型パターンで交互に端部が被蓋されている(ウォールフロー型フィルタ)かのどちらかである、複数の隣接する平行な流路を備える。この幾何学形状により、高い表面積対体積率がもたらされる。ハニカム形状は、プレート型よりも小型だが、より高い圧力低下を有し、より詰まりやすい。しかしながら、ほとんどのモバイルアプリケーションついて、好適な基材はハニカムである。
【0040】
特定の用途に対して、ハニカムフロースルーモノリスは、例えば、約600から800平方インチ当たりのセル数までの範囲内に含まれる高いセル密度、及び/又は約0.18から0.35mm、好適には、約0.20から0.25mmまでの範囲内に含まれる内部壁の平均厚さを有する。特定の他の用途に対して、ハニカムフロースルーモノリスは、好適には、約150から600平方インチ当たりのセル数、より好ましくは、約200から400平方インチ当たりのセル数までの範囲内に含まれる低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスは多孔質である。コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック及び金属に加えて、基材に使用され得る他の材料には、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、針状ムライト等のムライト、ポルサイト、例えば、Al
2OsZFe、Al
2O
3/Ni又はB
4CZFe等のサーメット、或いはこれらのうち任意の2種以上の断片を含む複合物が含まれる。好ましい材料は、コーディエライト、炭化ケイ素、及びアルミナチタネートを含む。ある実施態様では、基材は、不活性である。
【0041】
ハニカムの基材壁は、好適には、ウオッシュコートに役立つ気孔率及び孔サイズを有する。気孔率は、多孔質の基材における空隙スペースのパーセンテージの尺度である。好適には、多孔質の基材は、約30から約80%、例えば、約40から約75%、約40から約65%、又は約50から60%までの範囲内に含まれる気孔率を有する。基材の全空隙容量のパーセンテージとして測定される孔の相互接続性は、多孔質の基材を通る連続的な経路、すなわち、フィルタの入口面から出口面までを形成するために、孔、空隙、及び/又は流路が接合する度合いである。好適には、多孔質の基材は、少なくとも約30%、より好適には少なくとも約40%の孔の相互接続容量を有する。
【0042】
基材壁の平均孔径は、水銀ポロシメトリーを含んだ、受け入れ可能な任意の手段によって決定することができる。好適な多孔性基材は、約10から約40μm、例えば約20から約30μm、約10から約25m、約10から約20μm、約20から約25μm、約10から約15μm、及び約15から約20μmの、平均孔径を有する。
【0043】
図1Aを参照すると、支持壁(14)と、第1の酸化触媒12を有する第1の層と、第2の酸化触媒とSCR触媒との混合物を有する第2の層とを有する本発明の実施態様が示される。概して、本発明の触媒層は、基材に浸透し;基材の一部、例えば、大部分に浸透し;基材の表面を被覆し;又はそれらの何らかの組み合わせを実行する。ここでは、第1の層12は、下層としての基材14上に直接配置され、第2の層10は、上層として第1の層12を覆うように配置される。好適には、第1の層12及び第2の層10は、物理的に異なった別個ではあるが、連続的な層である。本明細書で使用されるように、層に関する用語「連続的」は、各々の層が、その隣接する層と接触し、かつ層は全体として基材上の別の層の上端上に配置されることを意味する。本明細書で使用される用語「第1層」及び「第2層」は、触媒物品を通過する及び/又は触媒物品から出る排ガスフロースルーの法線方向に対する触媒物品内の触媒層の相対的な位置を記述するために使用される。通常の排ガス流条件下で、排ガスは、第1の層と接触する前に第2の層と接触し、少なくとも部分的に第2の層に浸透し、実質的に第2の層を介して戻ることにより、触媒成分から出る。
【0044】
図1Aでは、第1及び第2の層が、基材の軸長全体を覆うように配置される。しかしながら、別の実施態様では、触媒層の一又は複数が、基材の一部だけを覆う(
図1Dを参照)。例えば、触媒層は、基材を介した排ガス流50の方向全体に対して、基材46の前部又は基材48の後部から、基材の長さの約10%に適用することができる。ある実施態様では、少なくとも第1の酸化触媒層は、基材48後部の一部に被覆される。他の実施態様では、触媒層は、好適には基材の後部48又は前部46から、基材の約25%、約50%、又は約75%を覆う。触媒被覆は、基材の同一の又は異なる部分に適用され得るが、好適には、SCR触媒を含有する被覆は、第1の酸化触媒を含有する被覆を完全に覆うので、これにより触媒層によって処理されているすべての排ガスは、第1の層に到達することができるよりも前に、まず第2の層を通過するだろう。
【0045】
好適には、第2の酸化触媒を含有する被覆は、第1の酸化触媒を含有する被覆又は層の最上部及び/又は上流にある。好適には、第2の層は、第1の層を完全に覆い、このため触媒層によって処理されているすべての排ガスは、第1の層に到達することができるよりも前に、まず第2の層を通過するだろう。
【0046】
図1Bでは、第1の酸化触媒が高多孔質の基材壁25内部に配置される発明の好適な実施態様を示す。被覆される基材は、SCR触媒及び第2の酸化触媒双方の混合物を含有する層で覆われる。本実施態様の例は、高気孔率の基材、好適には、フロースルー基材の壁内部に浸透する又は壁内部で被覆されるPtを含む。Pt含有基材は、次にSCR触媒と第2の酸化触媒との混合物で被覆される。代替的には、Pt含有基材は、別個のSCR触媒層と第2の酸化触媒層とを含有することができる。別の実施態様では、Pt含有基材は、次にSCR/第2の酸化触媒混合層又は別個のSCR及び第2の酸化触媒層で被覆される押出成型された触媒である。
【0047】
図1Cは、第2の酸化触媒30が、別個で異なるがSCR触媒層31を覆う連続的な層を形成する本発明の実施態様を示す。ここでは、第2の酸化触媒及びSCR触媒は、混合されず、単一のウオッシュコートとして適用されるが、その代わりに、別個の層として基材上に形成される。重要なことは、SCR触媒層は、第1の酸化触媒層32全体を覆うように配置され、第2の酸化触媒層は、SCR層を覆うように配置されることである。SCR層は、下層のアンモニア酸化を介して形成される未処理の二次的NOxが、SCR触媒と接触せずにシステムから出ることを防止するために、第1の酸化触媒層全体を覆う。
図1Cに見られるような、ある実施態様では、第1の酸化触媒が基材の一部だけに、好適には後部に配置される一方で、SCR触媒層は、基材全体を覆う。他の実施態様では、第1の酸化触媒は、基材の長さ全体に適用される。
【0048】
重要なことは、第2の酸化触媒が、SCR触媒層を覆うように及び/又はSCR触媒層の上流に配置されることである。
図1Dでは、第2の酸化触媒40は、SCR及び第1の酸化触媒の上流で基材上に直接被覆され、この場合、「上流」及び相対する「下流」は、基材を介する又は基材上方の排ガス流50の通常の方向に対するものである。ある実施態様では、第2の酸化触媒は、SCR及び第1の酸化触媒を含有する基材の下流部分又は下流ゾーンの上流にある基材壁の一部又はゾーン内に取り入れられる。
【0049】
基材壁上に被覆される代わりに、第2の酸化触媒は、例えば、壁に浸透する内部被覆として、高気孔率の基材壁に取り入れることができ、又は基材を形成する押し出し可能なペーストに取り入れることができる。第2の酸化触媒は、SCR及び第1の酸化触媒が、下流部分又は下流ゾーンに配置されるならば、上流ゾーンに制限することができ、又は基材の長さ全体に取り入れることができる。ある実施態様では、第2の酸化触媒は、基材の長さ全体に取り入れることができ、第1の酸化触媒が基材後部のゾーンに制限されるならば、第1の酸化触媒は、第2の酸化触媒上の壁内部で被覆又は含浸することができ、SCR触媒は、第1の酸化触媒を含有するゾーンを覆うように被覆することができる。
図1Eは、第2の酸化触媒60が、前端66から後端68までの基材の長さ全体に沿った壁にあり、第1の酸化触媒62が壁内部の後部ゾーン上にある、高気孔率の基材壁64を示し、この場合、後部ゾーンもまた、第1の酸化触媒60と、少なくとも後部ゾーンを覆うSCR被覆61を含んでいる。このような実施態様では、後部ゾーンは、Pdに加えて、Ptなどの貴金属を含有する。
【0050】
ある実施態様では、層毎に又は2以上の層の組み合わせに対して基材の上及び/又は内部にローディングするウオッシュコート又は含浸は、0.1〜8g/in
3、より好適には、0.5〜6g/in
3、更に好適には、1〜4g/in
3である。ある実施態様では、層毎に又は2以上の層の組み合わせに対して基材の上及び/又は内部にローディングするウオッシュコート又は含浸は、>1.00g/in
3、例えば、>1.2g/in
3、>1.5g/in
3、>1.7g/in
3若しくは>2.00g/in
3など、又は、例えば、1.5から2.5g/in
3である。
【0051】
ある実施態様では、第2の酸化触媒は、約0.1〜約50gPd/ft
3、より好適には約0.5〜約20gPd/ft
3、更に好適には約1〜約10gPd/ft
3のPdローディングを作り出すのに十分な量で存在する。
【0052】
ある実施態様では、第1の酸化触媒は、約0.1〜約75、より好適には約0.5〜約20又は約30〜50gの貴金属/ft3、更により好適には、約1〜10gの貴金属/ft3の触媒ローディングをもたらすのに十分な量で存在するが、発熱を起こすために触媒が使用されるいくつかの用途では、75g/ft3までの、例えば、約50g/ft3までの、貴金属のローディングを有する第1の酸化触媒が含まれ得る。先述の貴金属の範囲は、貴金属がPtであるときには特に関連性がある。
【0053】
ある実施態様では、SCR触媒は、助触媒金属及び担体の総重量に基づき、助触媒金属の約0.1〜約10重量%、より好適には、約1〜約7重量%、更に好適には、約2.5〜約5重量%を含有する。本発明の少なくとも1つの実施態様では、SCR触媒層の第1の酸化触媒層に対する重量比は、約0.5:1〜約10:1、より好適には、約2:1〜約7:1である。
【0054】
ある実施態様では、本発明は、ディーゼルエンジン又は固定式ガスタービンからの排ガスなど、リーンバーン燃焼プロセスから生成されるNO
x、CO、NH
3、及び/又はHCを処理するために採用される後処理排気システムである。
図2Aには、排気マニホールド500と、排気マニホールド500下流のSCR触媒520と、マニホールド500とSCR触媒520との間の地点515で排ガス流(図示されず)に導入される任意選択の窒素還元剤源510を備えるシステムの実施態様が示される。ここでは、SCR触媒520とASC触媒530が、別個のブリックとして示される。これらの別個のブリックは、互いに流体連通し、かつSCR触媒ブリックがアンモニアスリップ触媒のブリック上流に配置されるならば、互いに隣接し、及び互いに接触し、又は特定の距離によって分離することができる。他の実施態様では、SCR触媒520及びASC触媒530の成分は、上流/下流配置内の同一のブリック上で組み合わされる。例えば、SCR触媒は、基材を通る流れの上流側にあり、ASC触媒は、フロースルー基材の下流側にあるとすることができる。他の実施態様では、SCR触媒は、ウォールフロー型フィルタの入口側で被覆され、ASC触媒は、フロースルーフィルタの出口側で被覆される。下流DPF又は上流DPFなどの他の構成成分も、同様に含まれ得る。ここでは、用語「上流」及び「下流」は、システムを通した排ガス流575の通常の方向に基づき、後処理システムの構成成分の相対的位置を指す。
【0055】
排ガスマニホールドは、好適には、エンジンを出て後処理システム内に向かう排ガスを方向付けるための導管である。ターボチャージャーなどの他の構成成分が、任意選択的に、排ガスマニホールド500に又はその近くに含まれ得る。マニホールドを通過した後、排ガスは、排ガスからNO
xを選択的に還元するために、主要なSCR触媒に接触する。この種のSCR触媒は、特に限定されないが、好適には、本明細書に記載されるSCR触媒である。スタンドアロンの上流SCR触媒520は、ASC成分540で利用されるSCR触媒に対して、同一の
配合を有することも異なる
配合を有することもできる。
【0056】
図2Aに示されるようなある実施態様では、システムは、SCR触媒の上流で、排ガス流(図示されず)に注入又はそうでなければ導入される、尿素、アンモニア、又はそれらの前駆体若しくは誘導体などの窒素還元剤源510を備える。他の実施態様では、システムには、窒素系還元剤をシステムに注入する構成成分が含まれず、その代わりに、SCRプロセスでの消費用の窒素系還元剤の少なくとも一部、特にNH
3は、SCR触媒の上流に配置されるNO
X吸収触媒(NAC)、リーンNOxトラップ(LNT)、又はNO
Xストレージ/還元触媒(NSRC)によって供給される。本発明に有用なNAC成分は、塩基性材料(例えば、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びこれらの組み合わせを含んだ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属等)及び貴金属(白金等)、並びに任意選択的にロジウムのような還元性触媒成分の触媒組み合わせを含む。NACにおいて有用な塩基性材料の特定の種類は、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びこれらの組み合わせを含む。貴金属は、好適には、約10〜約200g/ft
3、例えば、20〜60g/ft
3で存在する。代替的に、触媒の貴金属は、約40〜約100g/ft
3であり得る平均濃度によって特徴付けられる。
【0057】
特定の条件下、周期的にリッチな再生現象の間、NH
3は、NO
x吸収触媒上で生成され得る。NO
x吸収触媒の下流のSCR触媒は、NO
x還元効率のシステム全体を改善し得る。複合システムでは、SCR触媒は、リッチ再生現象の間に、NAC触媒から放出されるNH
3を吸蔵することが可能であり、通常のリーン作動状態の間に、NAC触媒をすり抜けるNO
xの幾らか又は全てを選択的に還元するために吸蔵されたNH
3を利用する。
【0058】
ASC成分530は、SCR触媒の下流にあり、システムを通してアンモニアスリップを低減し、かつ排ガスに存在し得るCO及び/又はHCの少なくとも一部、好適には、少なくとも大部分を酸化させるために機能する。好適には、システムには、ASC成分540の上流には、分離基材上のディーゼル酸化触媒などの酸化触媒が含まれない。
【0059】
図2Bは、排ガス90に対して低濃度のNO
x、CO、及び/又はHCを含有する清浄排ガス160を生成するために、リーンバーンエンジンによって生成される排ガスなどのNO
x、CO、及び/又はHCを含有する排ガス90を受け入れ、排ガスを処理するための排ガス後処理システムを対象にする本発明の別の実施態様を示す。
図2Bの後処理システムは、SCR触媒120及びDOC触媒105の下流の地点135で導入される燃料源130を備える。好適には、燃料源130は、SCR触媒120とASC触媒130との間の地点135で後処理システムに導入され、この場合、好適には、システムには、SCR触媒120とASC触媒140との間の任意の触媒成分が含まれない。
【0060】
燃料源は、通常、排ガスを生成するエンジンによって使用されている燃料と同一又は類似の炭化水素系燃料である。燃料は、DPF成分150の上流で排気システムに周期的に導入され、発熱反応における反応物としての役割を果たす。より詳しくは、燃料は、発熱反応を介して熱を生成するために、ASC140によって酸化する。次に、熱は、DPF上に蓄積したすす又は他のパティキュレートマターを燃焼させるために使用され、これにより、すすが除去され、DPFが再生される。DPFを再生することにより、詰まり及び過度のシステム背圧が防止される。本発明のDPFは、好適には、セラミックのウォールフロー型フィルタである。フィルタは、一又は複数の触媒で被覆されなくしなくても、一又は複数の触媒で被覆されてもよい。フィルタの再生は、能動的に又は受動的に実行することができる。
【0061】
システムは、窒素系還元剤110(例えば、尿素、アンモニア、又はそれらの前駆体若しくは誘導体)を、SCR触媒120の上流及びDOC成分105の下流の地点115でシステムに導入するための任意選択のサブシステムを更に含む。
【0062】
システムは、排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させるための酸化触媒(例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC))を含み、窒素系還元剤を排ガスの中へ供給する地点115の上流に位置することができる。DOCはまた、排ガスのCO及び/又はHCを完全に又は部分的に酸化させることもできる。1つの実施態様では、酸化触媒は、SCR触媒に入る前に、例えば250℃から450℃の酸化触媒入口の排ガス温度で、NO対NO
2の体積比が約4:1から約1:3であるガス流を発生するように適用される。酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に被覆された、白金、パラジウム又はロジウムなど、少なくとも1つの白金族金属プラチナ族金属(又はこれらのいくつかの組み合わせ)を含むことができる。1つの実施態様では、少なくとも1つの白金族金属は、白金、パラジウム、又は、白金とパラジウム双方の組み合わせである。白金族金属は、アルミナ、アルミノケイ酸塩ゼオライトのようなゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、又は、セリアとジルコニア双方を含有する混合酸化物若しくは複合酸化物といった、高表面積ウオッシュコート成分上で支持することができる。
【0063】
本発明の更に別の実施態様では、好適には、リーンバーン内燃機関によって生成される排ガスのNO
x、NH
3、CO、HC、及びパティキュレートマターのうちの少なくとも1つの濃度を低下させることにより、排ガスを処理するための方法が提供される。好適には、プロセスは、上流SCR反応によって変換されない過度のNH
3を酸化させるための(アンモニア酸化又はAMOX)工程を含む。
【0064】
好適な実施態様では、本発明は、ガス中のNO
x化合物の還元及び/又はNH
3の酸化の工程を含む、排ガスを処理するための方法であり、ガス中のNO
x化合物及び/又はNH
3のレベルを低減するのに十分な時間にNO
x化合物の触媒還元のために、本明細書に記載される触媒組成物とガスを接触させることを含む。
【0065】
ある実施態様では、SCR及び/又はAMOXプロセスは、少なくとも100℃の温度で実行される。別の実施態様では、プロセスは、約150℃から約750℃までの温度で生じる。特定の実施態様では、温度範囲は、約175℃から約550℃である。別の実施態様では、温度範囲は、約175℃から約400℃である。更に別の実施態様では、温度範囲は、450℃から900℃、好適には、500℃から750℃、500℃から650℃、450℃から550℃、又は650℃から850℃である。
【0066】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
X化合物の還元及び/又はNH
3の酸化のための方法であって、ガスと本明細書に記載の触媒を、ガス中のNO
X化合物のレベルが低減するのに十分な時間接触させることを含む方法が提供される。本発明の方法は、以下の工程:(a)触媒フィルタの入口と接触しているすすを蓄積する及び/又は燃焼させること、(b)触媒フィルタと接触する前に、好適にはNO
x及び還元剤の処理を含む触媒化工程の介在なく、窒素を含んだ還元剤を排ガス流に導入すること、(c)好適には下流のSCR反応における還元剤としてそのようなNH
3を使用して、NO
x吸収触媒又はリーンNO
xトラップ上でNH
3を生成すること、(d)排ガス流をDOCと接触させ、炭化水素系可溶性有機成分(SOF)及び/又は一酸化炭素をCO
2へと酸化し、及び/又はNOをNO
2へと酸化し、次に、それらを使用してパーティキュレートフィルタ内のパティキュレートマターを酸化し、及び/又は排ガス中のパティキュレートマター(PM)を還元すること、(e)還元剤の存在下で、排ガスを一又は複数のフロースルーSCR触媒装置(類)と接触させ、排ガス中のNO
x濃度を低減させること、及び(f)排ガスを大気中に放出する前、又は排ガスがエンジンに入る/再度入るのに先立って排ガスを再循環ループに通す前に、アンモニアのほとんど、全てではなくても、を酸化させるために、好適にはSCR触媒の下流で、排ガスをアンモニアスリップ触媒と接触させることの一又は複数を含み得る。
【0067】
別の実施態様では、発明は、フィルタを再生するための方法である。この実施態様では、触媒物品は、ASC上流で、好適には、主要なSCR触媒の下流で、排ガスに注入される炭化水素系燃料を燃焼させるために使用される。燃焼によって排ガスが加熱され、排ガスは、次にパティキュレートフィルタに接触する。高温の排ガスは、フィルタ上のすす及び他のパティキュレートマターの燃焼を促進し、ゆえに、すす及びパティキュレートマターが除去される。すす及びパティキュレートマターが除去されることによって、フィルタが再生される。
【0068】
本明細書で説明される排ガスを処理するための方法は、燃焼プロセス、例えば、内燃機関(移動式又は固定式)、ガスタービン、及び石炭若しくは石油の火力発電所から放出された排ガスに対して実行することができる。方法はまた、精錬することのような工業プロセスから、精錬所のヒーター及びボイラー、燃焼炉、化学プロセス工業、コークス炉、都市廃棄物プラント、及び焼却炉などからのガスを処理するためにも使用され得る。特定の実施態様では、方法は、車両のリーンバーン内燃機関、例えば、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスにより駆動されるエンジンからの排ガスを処理するために使用される。
【0069】
ある実施態様では、本発明は、窒素酸化物(NO
x)、炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)の排出を低減するための三元触媒(TWC)、並びに本明細書に記載される下流のASC触媒を含むリッチバーン燃焼のための後処理システムを対象にする。空気燃料混合比が化学量論を上回る量の燃料を有する(即ち、空気燃料混合比が化学量論的比未満である)リッチ条件下で、エンジンなどの燃焼プロセスを操作すると、エンジン外のNO
x(the engine out NO
x)のかなりの部分が、三元触媒上でアンモニア(NH
3)に変換されるが、ASC触媒については、二次的な放出として放出される。TWC触媒を備える通常のリッチバーンエンジンについて、テールパイプのNH
3は、およそ400ppmになり得る。
【0070】
本発明の実施態様によれば、アンモニア(NH
3)排出を低減するためのシステムは:(a)第1の基材と、その上に配置される三元触媒とを含む第1の成分であって、第1の成分は、第2の成分の上流に配置され、第2の成分と流体連通しており、第2の成分は、第2の基材と、第2の基材の上及び/又は内部に配置される第1の触媒層、及び第1の触媒層を覆うように被覆された第2の触媒層を有するASC触媒とを含み;第1の触媒層は、第1の酸化触媒を含み、第2の触媒層は、(i)ローディングパラジウムから成る第2の酸化触媒と(ii)選択的にNO
xを還元する及び/又はNH
3を貯蔵するための触媒との混合物を含有し;第1及び第2の酸化触媒は異なる
配合物である、第1の成分と、任意選択的に(b)第1及び第2の成分の間に配置される酸素含有ガス入力とを含む。本発明の更なる実施態様では、システムは、加えて:(c)リッチバーン燃焼プロセスから放出された排ガスを含む第1のガス状の供給流であって、第1の成分の上流にあり、かつ第1の成分と流体連通している、第1のガス状の供給流と、(d)第1及び第2の成分の間に配置され、第1及び第2の成分と流体連通しており、かつ前記酸素含有ガス入力と流体連通している導管とを含む。少なくとも1つの実施態様では、NH
3酸化のための小さな孔のモレキュラーシーブは、CuでローディングされるSAPO−34など、CuでローディングされるCHAフレームワークタイプの小さな穴のモレキュラーシーブである。
【0071】
本発明の別の実施態様では、アンモニア(NH
3)排出を低減するための方法は:含酸素ガス流を供給するために、NH
3及びラムダ<1を有する排ガスに酸素含有ガスを導入することと;選択的にNH
3の少なくとも一部をN
2に酸化させるために、少なくとも1つの遷移金属をローディングする少なくとも1つの小さな孔のモレキュラーシーブを含むNH
3酸化触媒に、含酸素ガス流を曝露することとを含む。本発明の更に別の実施態様では、方法は、酸素含有ガスを導入する工程の上流で、NH
3及びラムダ<1を有するガス流を生成するために、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)を変換するための三元触媒に、リッチバーン排ガスを曝露する工程を更に含む。酸素含有ガスは、少なくとも約1:1のO
2:NH
3比、好適には、約2:1から約1:1の比を有する含酸素ガス流を生成するために、導入され得る。少なくとも1つの実施態様では、酸素含有ガスは、周囲空気など、少なくとも0.1%の酸素を含む。曝露する工程は、好適には、リッチバーン排ガスが、少なくとも約350℃、好適には約400−650℃の範囲の温度であるときに発生する。
【0072】
TWCは、好適には、被覆されたモノリスの形態か押出成型された形態かのどちらかで特定の触媒滑性(例えば、H
2S抑制、NOx貯蔵、HC貯蔵)を高めるために追加の添加物を有していても有していなくてもよい、キャリア材料上でローディングされる活性触媒材料(即ち、白金族金属(PGM)若しくは非PGM)の単一層又は複数の層を含む、又はそれらから成る。
【実施例】
【0073】
実施例1:最上層にPdを有するASC触媒の調製
フロースルーハニカムコア(4.66インチ×3.0インチ、400cpsi、4ミルの壁厚)が、第1の酸化触媒で被覆され、底部層を形成し、次いで第2の酸化触媒/SCR触媒で被覆し、底部層上に最上層を形成した。
【0074】
底部層の触媒は、次のように調製された:粉砕されたガンマアルミナウオッシュコートを適切な容器に加えた。ガンマアルミナのd50は、約3.2−4.0μmと決定された。高剪断ミキサーを使用して、脱イオン水がウオッシュコート内に混合され、コハク酸がウオッシュコートに加えられ、ゲルを形成した。様々な量の硝酸白金(platinum nitrate)と任意選択的に硝酸パラジウムとがゲルに加えられ、次いで材料が混合され、スラリーを形成した。スラリーは、底部触媒層としてハニカムコアに塗布され、被覆されたコアは、乾燥及びか焼された。サンプル中の様々な量のPt及びPdが、表1に示される。
【0075】
最上層の触媒は、次のように調製された:酢酸銅溶液がSAPO−34と混合され、約2.5重量パーセントのCuを有する触媒を生成した。別個に、硝酸Pdとコハク酸とが脱イオン水の中で、1.1コハク酸/Pd重量比で混合され、初期湿潤溶液を調製した。初期湿潤点を超えた溶液量5%をターゲットにした初期湿潤により、この溶液がガンマアルミナ担体に加えられ、湿ったペーストを得た。3℃/分のランプ速度を用いて、ペーストは、固定オーブン中で、500℃で2時間、乾燥、粉砕及び燃焼された。
【0076】
別個に、脱イオン水中のアルミナの分散体が形成された。乾燥したCu/SAPO−34が分散体に加えられ、次に乾燥したPd/アルミナが加えられた。得られたウオッシュコートが、最上部触媒層としてハニカムコアに塗布され、被覆されたコアは、乾燥及びか焼された。最上部のウオッシュコートは、約0.35g/in
3のアルミナと約2g/in
3のCu/SAPO−34を含む約2.6−2.8g/in
3のローディングを有していた。底部ウオッシュコートは、約0.7g/in
3のローディングを有していた。
【0077】
実施例2:触媒性能
バナジウム系SCR触媒及びPd酸化触媒の混合物を含有する最上層と、Pt AMOX触媒を含有する底部層とを有する触媒サンプルが、NH
3変換、CO変換、及びHC変換について評価された。これらの結果は、最上層のPd酸化触媒を含まない同様の触媒と比較された。最上層にPdを有する触媒は、最上層にPdを含まない触媒(
図3及び
図4)と比べ、著しく良好なCO及びHC変換性能を示す。驚くべきことに、Pd最上層を含む調製された触媒とPd最上層を含まずに調整された触媒とは、NH
3変換及びNOx出口に関して非常によく似た性能を示す(
図5)。
【0078】
Cu/SAPO−34 SCR触媒及びPd酸化触媒の混合物を含有する最上層と、Pt AMOX触媒を含有する底部層とを有する触媒サンプルが、広範な温度にわたるNH
3変換に対するN
2の選択性と、更にはCO変換について評価された。これらの結果は、最上層のPd酸化触媒を含まないが、類似の触媒と比較された。最上層にPdを有する触媒は、最上層にPdを含まない触媒と比べ、著しく好ましいCO変換性能を示す(
図8)。驚くべきことに、Pd最上層を含む調製された触媒とPd最上層を含まずに調整された触媒とは、NH
3変換に対するN
2の選択性の観点からよく似た性能を示す(
図7)。