特許第6474811号(P6474811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474811
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】高硫黄固体の処理
(51)【国際特許分類】
   C22B 13/02 20060101AFI20190218BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20190218BHJP
   C22B 7/04 20060101ALI20190218BHJP
   C01B 17/56 20060101ALN20190218BHJP
   C01B 17/90 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   C22B13/02
   C22B7/00 J
   C22B7/04 A
   !C01B17/56 Z
   !C01B17/90 Z
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-535275(P2016-535275)
(86)(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公表番号】特表2016-528390(P2016-528390A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】AU2014050191
(87)【国際公開番号】WO2015024073
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】2013903136
(32)【優先日】2013年8月19日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515080401
【氏名又は名称】グレンコア テクノロジー プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLENCORE TECHNOLOGY PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー マーティン リルイス オラフ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブロウズ アリスター スチュアート
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04135912(US,A)
【文献】 特開平06−279878(JP,A)
【文献】 特開昭59−226130(JP,A)
【文献】 特開昭62−120435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
C01B 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛及び元素硫黄を含有する固体材料を処理するためのプロセスであって、元素硫黄が炉内で燃焼して二酸化硫黄を形成し、且つ前記固体材料中の鉛が酸化されて溶融スラグに還るような条件下で、前記スラグ浴を収容する前記炉に前記固体材料を供給することと、二酸化硫黄を含有するガス流を前記炉から取り出すことと、鉛含有スラグを前記炉から取り出すことと、を含み、
前記固体材料中の前記元素硫黄が、前記固体材料の30重量%超を占める、プロセス。
【請求項2】
前記炉を、前記固体材料中の鉛化合物が酸化されて前記スラグに還るような酸化条件下で操作し、前記鉛化合物は酸化されて酸化鉛となる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記固体材料中の前記元素硫黄が、前記固体材料の30〜60重量%を占める、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記固体材料中の前記元素硫黄が、前記固体材料の40〜60重量%を占める、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記固体材料中の前記元素硫黄が、前記固体材料の45〜58重量%を占める、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記炉が、トップ・エントリー・サブマージド・ランス炉を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記炉内の前記浴の温度が1000℃〜1350℃の範囲内となるような操作温度で前記炉を操作する、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記炉内の前記浴の温度が1080℃〜1300℃の範囲内となるような操作温度で前記炉を操作する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炉内の前記浴の温度が1080℃〜1280℃の範囲内となるような操作温度で前記炉を操作する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記炉内の前記浴の温度が1100℃〜1250℃の範囲内となるような操作温度で前記炉を操作する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスが、前記炉内に沈められた酸素吹き込みランスによって、前記固体材料の酸化のために前記炉内に酸素含有流を導入することを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記炉内に導入される前記酸素が、前記炉内で起こる前記固体材料の酸化のための酸化反応の化学量論的必要量の100〜150%に相当する量である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記炉内に導入される前記酸素が、前記炉内で起こる前記固体材料の酸化のための酸化反応の化学量論的必要量の110%〜130%に相当する量である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記炉から出るガス生成物流を処理することを更に含み、前記生成物流が、前記固体材料中に含まれる前記鉛の少なくとも一部を含有し、
前記ガス生成物流中の前記少なくとも一部の鉛が、回収ステップによって少なくとも部分的に回収されて、回収された鉛を得る、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ガス生成物流が更に二酸化硫黄を含有し、前記プロセスが、前記二酸化硫黄を回収又は処理する追加のステップを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記固体材料が、浸出残渣、亜鉛浸出プロセスから得られる浸出残渣、または一種以上の浸出残渣と鉛精鉱及び/又は鉛スラグとのブレンドを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記固体材料が、150〜30000ppmの範囲内の銀を更に含有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記固体材料が、10〜35重量%の範囲内の水分を更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記固体材料が、15〜35重量%の範囲内の水分を更に含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記固体材料が、18〜31重量%の範囲内の水分を更に含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記炉に一種以上のフラックスを添加することを更に含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記酸化された鉛を含む前記スラグの少なくとも一部を前記炉から取り出し、続いて前記酸化された鉛から鉛及び/又は鉛地金を生成するために処理する、請求項1〜21のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硫黄固体を処理するためのプロセスに関する。より詳細には、本発明は、鉛と高濃度の元素硫黄とを含有する固体を処理するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄鉱石及び精鉱から鉛を回収するためのいくつかの現行のプロセスには、Kivcet法、QSL法、SKS法及びISASMELT(商標)法がある。世界の主な鉛生産の一部はこれらのプロセスを用いて為されており、他の一部は従来の焼結プラント及び溶鉱炉の流れ作業により為されている。
【0003】
ISASMELT(商標)法は、トップ・エントリー・サブマージド・ランス(top entry submerged lance)を介した溶融物中へのガス吹き込みを用いる。トップ・エントリー・サブマージド・ランスを介したガスの吹き込みは、非常に大きな乱流浴を生じ、この浴中では強力な精錬又は還元反応が起こる。ISASMELT(登録商標)法では、二段階プロセスが用いられ得る。この二段階プロセスでは、鉛精鉱が溶鉱炉内の溶融スラグ浴に直接添加される。これにより鉛含有スラグが生成され、該スラグは第二の炉に移動される。該第二の炉内で鉛含有スラグが還元されて、鉛地金が形成される。両方の炉は、ガス吹き込みのためにトップ・エントリー・サブマージド・ランスを使用する。
【0004】
ISASMELT(商標)法は、溶鉱炉に加えられた精鉱の一部を鉛地金に直接還元することにも用いられる。一般的に、例えば55%〜80%、より好ましくは60%〜75%の高濃度の鉛を含有する精鉱は、この方法で処理されているが、この範囲外の鉛濃度を有する精鉱も直接精錬を用いて処理される場合がある。
【0005】
亜鉛の生産では、亜鉛を含有する鉱石及び精鉱を浸出プロセスに供して、亜鉛有価物(zinc values)を可溶化することができる。可溶化された亜鉛を浸出残渣から分離し、溶解した亜鉛を多く含有する浸出液を処理して、亜鉛を回収する。
【0006】
Albion Process(商標)は、硫化亜鉛の鉱石及び精鉱の処理に用いることができる酸化的浸出プロセスである。硫化亜鉛の鉱石及び精鉱は、通常、鉛も含有する。Albion Process(商標)での浸出ステップの後、鉛(一般に、鉛化合物、特に硫化鉛及び硫酸鉛の形態にある)及び大量の元素硫黄を含有する固体残渣を回収する。例えば、浸出残渣は、15〜25%の鉛と、少なくとも30%の元素硫黄、例えば40〜60%の元素硫黄を含有し得る。他の浸出プロセスも、鉛及び高濃度の元素硫黄を含有する浸出残渣を形成することができる。浸出残渣中には幾分かの銀も存在し得る。
【0007】
そのような高濃度の元素硫黄を含有する固体残渣は、処理が困難であることが知られている。これらの残渣は、通常、処理されて鉛を生成する硫化鉛精鉱とは非常に異なる化学組成を有する。そのような高濃度の元素硫黄を含有する固体残渣は処理が困難であるがゆえに今日まで効果的な処理経路を有さず、鉱滓ダム又は鉱滓堆積場内に保管されてきた。
【0008】
本明細書で先行技術の公報が参照される場合、この参照によって、該公報がオーストラリア又は他の国で通常の一般知識の一部を為すことを容認するものではないことが明確に理解されるであろう。
【0009】
本明細書全体を通して、単語「を含む」及びその文法的等価物は、それが使用される文脈が他を示さない限り、包括的意味を有すると理解されるものとする。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、高硫黄固体を処理するためのプロセスに関し、該プロセスは、上述した欠点のうちの少なくとも一つを少なくとも部分的に克服し、又は消費者に有用な商業的選択肢を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記を考慮して、本発明の一形態は、広義には、鉛及び元素硫黄を含有する固体材料を処理するためのプロセスであり、該プロセスは、元素硫黄が炉内で燃焼して二酸化硫黄を形成し、且つ固体材料中の鉛が酸化されて溶融スラグに還る(report)ような条件下で、溶融スラグ浴を収容する炉に固体材料を供給することと、二酸化硫黄を含有するガス流を炉から取り出すことと、鉛含有スラグを炉から取り出すことと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、硫黄は、大部分が溶融スラグ浴中で燃焼する。
【0013】
炉は、固体材料中の鉛化合物が酸化された状態となりスラグに還るように、酸化条件下で操作されることが望ましい。固体材料中の鉛化合物は、大部分は硫化鉛及び硫酸鉛の形態にあると考えられる。鉛化合物は、好適には酸化されて酸化鉛となる。
【0014】
一実施形態において、固体材料は、高濃度の元素硫黄を含有する。例えば、固体材料中の元素硫黄の含有率は、30重量%を超えてもよく、又は30〜60重量%、又は40〜60重量%、又は45〜58重量%を含んでもよい。そのような高濃度の元素硫黄を含有する浸出残渣等の固体材料は、本発明の開発以前は、処理が困難であることが知られていた。
【0015】
いくつかの実施形態において、炉は、トップ・エントリー・サブマージド・ランス炉を含む。そのような炉は、商標ISASMELT(商標)で本願出願人により販売されているような炉を含んでもよい。そのような炉は当業者に周知であり、この段階で更に説明する必要はない。ランスの末端部は、好適には、本発明のプロセスの操作中、浴の最高液面の下方に沈められる。
【0016】
本発明のプロセスの操作中、炉に供給される固体材料中の鉛の幾分かは、蒸発し、ガス流中にて炉から出ることが予想される。従って、いくつかの実施形態では、炉から出るガス流を処理して、該ガス流から鉛蒸気を回収してもよい。鉛蒸気は、当業者に好適として知られる任意の従来技術を用いて、炉から出るガス流から回収してもよい。例えば、炉から出るガス流を鉛蒸気が凝結するように冷却し(又は強制的に冷却し)、凝結した鉛蒸気を、フィルター、バグハウス又は静電沈降分離装置等の気体/固体分離技術を用いて取り出してもよい。
【0017】
ガス流から回収された鉛蒸気を炉に戻して、鉛の回収率を向上させてもよい。鉛蒸気は、一般に鉛含有ダストの形態にあり、鉛含有ダストを炉に戻す前に凝集ステップに供してもよい。
【0018】
ガス流はまた、該ガス流から二酸化硫黄を分離するように処理されてもよい。一実施形態において、ガス流は、二酸化硫黄を硫酸に変換するように処理されてもよく、硫酸は別のプロセスにおける使用のため又は販売のために回収される。他の環境において、二酸化硫黄は、湿式洗浄、噴霧乾燥洗浄、SNOX燃焼排ガス脱硫又は乾燥吸着剤噴射を用いてガス流から取り出され得る。二酸化硫黄をガス流から取り出すための他のプロセスも、本発明に使用することができる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、炉から出るガス流は、鉛蒸気の取り出し後、二酸化硫黄の取り出しに供される。
【0020】
鉛蒸気及び二酸化硫黄の取り出し処理後、ガス流をスタックに排出してもよい。必要であれば、ガス流を大気に排出するのに先立ってガス流の更なる処理を行ってもよい。
【0021】
上述したように、炉に供給される固体材料は、高い元素硫黄含有率を有する固体材料を含んでもよい。固体材料は、例えば亜鉛浸出プロセスから得られる浸出残渣等の浸出残渣を含んでもよい。
【0022】
上述したように、炉に供給される固体材料は鉛を含有する。炉に供給される固体材料は鉛を5〜40重量%、又は10〜35重量%、又は15〜30重量%を含んでもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、炉に供給される固体材料は、浸出残渣を含んでもよい。別の実施形態では、炉に供給される固体材料は、一種以上の浸出残渣と、鉛精鉱及び/又は鉛スラグとのブレンドを含む。
【0024】
炉に供給される固体材料は、銀も含有し得る。いくつかの実施形態において、固体材料は、150〜30000ppmの範囲内の銀含有量を有してもよい。
【0025】
炉に供給される固体材料は、10〜35重量%、又は15〜35重量%、又は20〜31重量%の含水率を有してもよい。
【0026】
通常、酸素が炉に供給される。酸素は、元素硫黄と共に燃焼して二酸化硫黄を形成し、また固体材料中の鉛化合物を酸化させて、スラグに還る酸化された鉛化合物を形成するために必要である。炉に燃料が添加される場合、酸素はまた燃料を燃焼させるためにも必要である。いくつかの実施形態において、酸素は、炉内で起こる酸素がかかわる反応の化学量論的必要量の100〜150%、より典型的には化学量論的必要量の110%〜130%に相当する量で炉に添加される。
【0027】
いくつかの実施形態において、一種以上のフラックスが炉に添加されてもよい。炉に添加されるフラックスの添加及び選択は、炉内で生成され、かつ炉から取り出される鉛含有スラグのための下流処理の必要条件にある程度依存し得る。いくつかの実施形態では、鉄フラックス及び/又は石灰石フラックスが炉に添加されてもよい。
【0028】
炉は、二酸化硫黄の燃焼が起こり、かつ鉛含有スラグの形成が生じる温度範囲内で操作されてもよい。一般に、炉は、炉内の浴の温度が1000℃〜1350℃、又は1050℃〜1300℃、又は1080℃〜1280℃、又は1100℃〜1250℃の範囲内に含まれるような温度で操作されるであろう。
【0029】
鉛ダストの形態で炉から出るガス流から鉛蒸気を回収する実施形態では、鉛ダストは、酸化鉛及び硫酸鉛の混合物を含むことが予想される。鉛ダストは、70〜75重量%の鉛含有率を有し得る。鉛ダストは、一般に0.5重量%未満の低い亜鉛含有率を有し得る。鉛ダストは、炉に戻されてもよい。上述したように、鉛ダストを炉に戻すのに先立って、鉛ダストをより大きい粒子に凝集させることが望ましいことがある。戻された鉛ダストが炉内で反応する前に、該鉛ダストの混入及び取り出しを最小限に抑えられるからである。
【0030】
炉は、溶融スラグ浴を収容する。炉に供給される固体材料中の鉛含有成分は、炉内で酸化された状態となり、スラグに還る。スラグは炉から取り出され、続いて処理されて、該スラグから鉛が生成され得る。鉛スラグを鉛地金又は鉛金属に変換できる任意のプロセスを用いて、炉から回収されたスラグを処理することができる。
【0031】
スラグは、炉から溶融スラグを周期的に流し出すことによって取り出されてもよい。
【0032】
炉から取り出されたスラグは、該スラグを鉛地金又は鉛金属に変換する更なる処理に先だって、粒化ステップ又は鋳造ステップに供されてもよい。
【0033】
本発明のプロセスは、連続プロセスとして操作されてもよい。あるいは本発明のプロセスは、バッチプロセスとして操作されてもよい。
【0034】
本発明のプロセスにて形成されるスラグは、酸化鉛及び硫酸鉛等の酸化された鉛化合物を含有することになる。スラグは、酸化カルシウム、SiO及び鉄酸化物も含有し得る。フラックスはおおよそ:
PbO 15〜55%
CaO 1〜15%
SiO 20〜30%
Fe 20〜45%
の組成を有してもよい。
【0035】
第二の態様において、本発明は、高濃度の元素硫黄を含有する固体材料を処理するための方法を提供し、該方法は、1000℃〜1350℃の温度の溶融スラグ浴を有する炉に固体材料を供給するステップであって、固体材料中の元素硫黄は、炉内で燃焼して二酸化硫黄を形成し、且つ固体材料中の鉛は酸化されて溶融スラグに還る、酸化された鉛化合物を形成するステップと、二酸化硫黄を含有するガス流を炉から取り出すステップと、鉛含有スラグを炉から取り出すステップと、を含む。
【0036】
本発明の第二の態様のいくつかの実施形態では、酸素又は酸素含有ガス(空気等)も炉に供給される。
【0037】
本発明の第二の態様のいくつかの実施形態では、炉は、トップ・エントリー・サブマージド・ランス炉を含む。
【0038】
本発明の開発中、本発明者らは、高い元素硫黄含有率を有する固体材料を炉に供給した場合、供給物中の元素硫黄が浴/炉内で燃焼するのではなく、蒸発して炉内上部で燃焼するか又はガス排出されるため、硫黄に関連する燃料価値が失われるのではないかと考えていた。そうであれば、硫黄の燃焼は気相で起こるため、燃料が大量に必要とされるとともに非常に高いオフガス送気管温度になるであろう。驚くべきことに、本発明者らが行った試験トライアル中、大量の燃料も必要なく、高いオフガス送気管温度も観察されなかった。これより本発明者らは、硫黄の燃焼が主にスラグ浴中で起こると結論付けた。この結果は、本発明のための試験トライアルを行う前は予想することができなかった。
【0039】
本発明のプロセスにトップ・エントリー・サブマージド・ランス炉が使用される実施形態では、本発明者らは、浴中で元素硫黄の燃焼が起こった場合、制御不能な浴の泡立ちが生じるのではないかと懸念した。硫黄の燃焼は、浴に供給される元素硫黄よりも顕著に大きい体積を有する二酸化硫黄ガスの生成をもたらすことが理解されるであろう。トップ・エントリー・サブマージド・ランス炉内での制御不能な浴の泡立ちは、溶融浴中容物の上方への泡立ちと炉の頂部からの流出をもたらし得るため、非常に危険な操作状態になる。これは明らかにプラントの操作員にとって非常に危険であり、もしも制御不能な泡立ちが生じた場合、一般的にはランスを引き出し、浴への材料及び酸素の供給を停止する必要がある。驚くべきことに、浴中で二酸化硫黄の塊に燃焼が生じることを試験トライアルが示しているにも関わらず、制御不能な浴の泡立ちは起こらなかった。場合により、少量の安定な泡が生成した。
【0040】
本明細書に記載した任意の特徴は、本発明の範囲内において、本明細書に記載した任意の一つ以上の他の特徴との任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【実施例】
【0041】
オーストラリア国、ノーザンテリトリーのマッカーサー川の鉱山からの鉛/亜鉛精鉱を大気浸出に供して、精鉱から亜鉛を取り出した。浸出プロセスの副産物は、精鉱及び脈石材料からの鉛と銀並びに元素硫黄を含有する固体残渣である。この固体材料は、典型的には50重量%及び60重量%の高濃度の元素硫黄を含有し得る。この固体残渣は、処理が困難であることが知られている。実施例全体を通して、この固体残渣は「直接浸出残渣」又は「DL残渣」と称される。
【0042】
この固体材料を使用してパイロットプラントによるトライアルを行った。パイロットプラントによるトライアルは、パイロットプラントサイズのISASMELT(登録商標)炉内で行った。最初に、内径およそ305mm、高さおよそ1.8mの円筒炉を準備する。この器をクロム−マグネサイト耐火れんがで、次いで高アルミナれんがで裏打ちし、シェルにカオウール(kaowool)を裏打ちした。マスフロー制御を用いて、内径29mmのステンレス鋼ランスを介して天然ガス及び空気を浴中に吹き込む。炉に供給される固体材料は、較正済みの可変速ベルトコンベアに既知の量で加えられ、該ベルトコンベアは供給物を振動する供給装置上に落下させた後、炉の頂部のシュートを通して落下させる。炉からの溶融生成物の取り出しは、炉の基部の単一の栓孔を開放し、材料を鋳鉄ひしゃく内に収集することにより達成され得る。必要であれば、炉の中心軸を回転するように傾斜させて、炉からその内容物を完全に流し出してもよい。プロセスのオフガスはスタックへ排出される前に、ダスト及び硫黄含有ガスを取り出すために、ドロップアウトボックス及び蒸発ガス冷却器を通過し、その後にバグハウス及び苛性ソーダ洗浄装置へ送られる。浴の温度は、炉の耐火物裏打ちを通して配置された熱電対により連続して測定される。浴の温度は、光温度計、流し出し中の浸漬先端(dip-tip)測定、又は炉の頂部を介したスラグの浸漬先端測定を用いて独立して確認される。パイロット炉は最初に加熱され、その後栓孔内に位置するガスバーナーを使用して、試験と試験との間に定温に保持される。
【0043】
DL残渣に加えて、他の浸出残渣及び/又は鉛精鉱を、パイロットプラントISASMELT(登録商標)炉に供給される混合固体材料の一部として加えてもよい。利便性のために、他の残渣を「残渣2」及び「残渣3」と称する。表1は、パイロット試験作業に提供された一連の供給材料と、受容時の材料の含水率とを示す:
【0044】
表1:パイロット試験作業で使用した供給材料
【表1】
【0045】
表2は、パイロットプラントによるトライアルにて使用した鉛含有供給材料の化学組成を示す:
【0046】
表2:供給材料の組成
【表2】
【0047】
実際のパイロット試験では、鉄フラックス又はケイ素フラックスを加える必要があることが見出された。
【0048】
試験作業計画は、試験作業に、基本ケース(商業的操作に近いもの)と、低硫黄ケース及び高硫黄ケースとのそれぞれを表す3種の異なる供給物ブレンドを使用を想定した。表3に、これら想定した供給物ブレンドを示すと共に、表4に、異なる供給物ブレンドの計算上の化学組成を示す。表5は、3種のブレンドについての想定化学種分布を示す。
【0049】
表3:供給物ブレンド
【表3】
【0050】
表4:供給物ブレンドの組成
【表4】
【0051】
表5:供給物ブレンド中の推定される種分布
【表5】
【0052】
一連の小規模(10kg)実験を行って、供給物ブレンドの各々に必要な供給用調製物を決定した。調製した供給物は、湿った、ダストを含まない凝集物であって、オフガス流中への顕著な量の同伴を示すことなく、炉内に清潔な状態で供給されるものである必要がある。同時に供給物は、振動供給装置内に粘着することなく供給できる程度に十分乾燥している必要があった。以下の手順を用いた。
【0053】
10kgの各混合供給物を調製し、25リットルのプラスチックドラムに加えた。混合物の湿気が多すぎると思われた場合、乾燥剤(小麦粉又はバイオ炭)を混合物に加えた。混合物が乾燥し過ぎていると思われた場合、水を混合物に加えた。ドラムをおよそ30回転させることにより混合物を凝集させた。
【0054】
試験の結果は以下の通りであった:
1.基本混合物は、水又は乾燥剤を添加することなく、ダストを含まない充分な品質の凝集物を形成した。
2.低硫黄混合物は、好適な凝集物を形成するために、元の10kgの湿潤混合物におよそ6%の水を添加する必要があった。
3.高硫黄混合物は、振動供給装置内に粘着することなく沿って供給可能な品質の凝集物を形成するために、0.5kgの乾燥剤(小麦粉又はバイオ炭いずれも好適であった)を添加する必要があった。
【0055】
搬送された直接浸出残渣は、商業的プラントで使用される際に必要と考えられる含水率25%と比べて非常に高い含水率31.7%を有したことに留意するべきである。直接浸出残渣が25%のみの水を含んでいた場合、基本ケースの塊を作製するために追加の水を必要としたであろう。
【0056】
高硫黄ケースの調製に使用した乾燥剤は両方とも顕著な燃料要求性を示し、この混合供給物を使用する実験において考慮に入れる必要があったことにも留意するべきである。
【0057】
表6に、3つの供給物ブレンドの最終的な含水率を示す。
【0058】
表6:各供給物ブレンドに関する概算含水率
【表6】
【0059】
パイロットトライアル用の実際の供給物の調製は、上記の試験と同様の方法で行ったが、ここではローラー上に位置する44ガロンのドラムを回転させることで凝集させたおよそ150kgの混合供給物のバッチを使用した。
【0060】
ISASMELT(商標)炉内で供給物ブレンドを精錬中、ランスの空気中の酸素は、元素硫黄を燃焼させてSOガスを生成し、供給物中のPbS、FeS、ZnS及びCuSをそれぞれ酸化物に変換するために必要であった。精錬プロセス中、金属硫酸塩(PbSO、ZnSO、CuSO及び鉄明礬石)は分解して、金属酸化物、幾分かの酸素及びSOガスを生成する。
【0061】
予備試験に続いて、1時間〜3時間の範囲の持続時間で合計10回の個別の試験を完了した。一般的には、バケツ内で予め秤量した混合供給物の10kgのバッチを、長さ1メートルの供給コンベア上に分配し、所望の供給速度(一般に60〜65kg/hの湿った供給物)を与えるようにコンベアの速度を調整した。シリカ又は石灰石フラックスの添加物を量り分け、各々長さ1メートルのコンベア上に一定の添加速度で同様に分配した。一試験では、再利用ダストを制御された速度でコンベアに加え、商業的プロセスにより近づけたシミュレーションを行った。
【0062】
次いで、ランス先端をスラグ浴中に沈め、炉への供給を開始し、ランスの流量を混合供給物の精錬に必要なものへと変化させた。これらの現試験中、基準上必要な量の100%〜150%の化学量論量の酸素を使用した。
【0063】
スラグ浴と接触するシース内に収容されている熱電対を使用して、スラグ浴の温度を監視した。浴の温度は、天然ガスの流速及び/又はランス空気の酸素含有量の変動を調整することにより制御した。
【0064】
分析を目的とするスラグのサンプルを、炉の基部に降下された浸漬バーを使用し、一定の間隔で採取した。バー上で凍結したスラグの厚さは、溶融スラグの流動度の良好な指標となった。スラグの温度は、ランスを上昇させ、温度プローブをスラグと接触するように炉内に挿入することにより測定することができた。
【0065】
精錬試験が完了すると供給を停止し、ランスをスラグ浴から上昇させた。次いで、スラグを、ドリルとオキシランスとの組み合わせを用いて栓孔を開放することにより炉から流し出すか、又は同一の溶融スラグ浴を使用するが異なる操作条件を用いた第二のトライアルのために、炉付着物を浴中に溶かして調製した。流し出し操作中、(可能であれば)Heraeus温度プローブを使用してスラグ温度を測定した。加えて、スプーンでスラグのサンプルを採取し、また溶融スラグのサンプルを水中にゆっくり注ぐことにより、溶融スラグを粒状にした。
【0066】
試験の完了後、バグハウスダストを収集し、秤量した。
【0067】
表9に、平均ランス流量、浴の温度(炉熱電対により示される)、最終的なスラグ及び鉛蒸発速度など個々の試験条件を記載する。試験は、基本ケース及び高硫黄供給物のみを使用して行ったことに留意するべきである。
【0068】
【表7】
【0069】
上記に示したパイロットプラント作業は、供給材料中の硫黄の大部分が浴中で燃焼することよって、浴の内容物に顕著な発熱量を加えることができることを示している。その結果、供給物中の高濃度の硫黄を使用して、炉に供給する必要がある燃料(天然ガス又は石炭等)の量を低減することができる。実際に本発明者らは本発明のいくつかの実施形態では、連続処理が達成された後、プロセスの操作に必要な燃料値の全てを提供できるほどに、供給材料の硫黄含有率が高いのではないかと考える。供給材料の硫黄含有率が、炉の操作に必要な燃料値の全てを提供するほど高くない場合であっても、本発明のプロセスの操作に必要とされる燃料が低減され、それによりプロセスの経済性が改善されるであろうと考えられる。
【0070】
驚くべきことに、パイロットプラント実験作業は、本発明をトップエントリーランス炉内で行う際に、制御不能な浴の泡立ちが起こらないことも示した。本発明者らは、パイロットプラント作業を行う前、制御不能な泡立ちがおそらく本発明のプロセスの結果として起こるであろうと考えていた。供給物中の硫黄含有物の燃焼が浴中で起こった場合(このことは、硫黄の燃焼により生じる熱を利用するのに望ましいと考えられる)、元素硫黄は浴中で気体の硫黄酸化物に変換されることが理解されるであろう。その場合、体積が浴内で非常に大きくなることによって、顕著、且つおそらく制御不能な浴の泡立ちをもたらす可能性があると考えられた。しかしながら、パイロットプラント作業は、泡立ちが起こらず、又は安定した泡が生成されることを示した。
【0071】
本発明は、鉛を含有するスラグを生成することができる、鉛及び元素硫黄を含有する固体材料を処理するための方法を提供する。続いて、鉛を含有するスラグを処理して鉛金属を生成し得る。このプロセスに必要とされる燃料は、炉内、より好ましくは溶融スラグ浴中での元素硫黄の燃焼中に生成した熱の利用により最小化できる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態のプロセスを元素硫黄が溶融スラグ浴中で燃焼されるように操作することによって、元素硫黄を二酸化硫黄に変換する際に放出された燃焼熱が炉内の熱源として作用する。このことは、炉に供給される必要がある他の燃料の量を低減し得る。実際、いくつかの実施形態では、他の燃料(天然ガス又は石炭等)を炉に供給する必要がない可能性がある。
【0073】
本明細書全体における「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。それ故、本明細書全体の様々な箇所における表現「一実施形態において」又は「実施形態において」の出現は、それらの全てが必ずしも同一の実施形態を参照するものではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、一つ以上の組み合わせにて、任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0074】
制定法に従って、本発明は、多少、構造又は組織的特徴に特有の専門用語で記載されている。本発明は、本明細書に記載した手段が本発明を具体化する好ましい形態を含むため、図示及び記載された特定の特徴に限定されないことを理解するべきである。従って、本発明は、当業者により適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内での任意の形態又はその変法(存在する場合)において主張される。