特許第6474833号(P6474833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474833モノリシック三軸リニア磁気センサ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474833
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】モノリシック三軸リニア磁気センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20190218BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01R33/09
   G01R33/02 V
   H01L43/08 Z
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-563090(P2016-563090)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2017-516987(P2017-516987A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】CN2015076517
(87)【国際公開番号】WO2015158243
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】201410155003.2
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ゲザ ディーク
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−175120(JP,A)
【文献】 特開2012−127788(JP,A)
【文献】 特開2009−162540(JP,A)
【文献】 特開2012−063232(JP,A)
【文献】 特表2013−506141(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068146(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0265039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G01R 33/02
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの磁場成分を検知するために、電気的に相互接続される一以上の同一の磁気抵抗センシング素子を備える、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサが一体化されたXY平面内の基板を備え、
前記X軸センサは、参照ブリッジ及び少なくとも二つのX強磁性磁束ガイドを備え、前記参照ブリッジの参照アーム及びセンシングアームが交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を備え、前記参照アームの前記磁気抵抗センシング素子は、前記X強磁性磁束ガイドの上方又は下方に配置され、かつ、参照素子列を形成するように前記X強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記センシングアームの前記磁気抵抗センシング素子は、隣接する二つの前記X強磁性磁束ガイド間の隙間に配置され、かつ、センシング素子列を形成するように前記X強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記Y軸センサはプッシュプルブリッジを備え、前記プッシュプルブリッジのそれぞれのプッシュアーム及びプルアームは、それらの上に少なくとも二つのY強磁性磁束ガイドが対応して設けられ、前記プッシュアーム及び前記プルアームが交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を備え、前記磁気抵抗センシング素子は各々が隣接する二つの前記Y強磁性磁束ガイド間の隙間に配置され、
前記Z軸センサはプッシュプルブリッジ及び少なくとも一つのZ強磁性磁束ガイドを備え、前記プッシュプルブリッジのプッシュアーム及びプルアームが交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を備え、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子は、それぞれ前記Z強磁性磁束ガイドの底部又は上部の両側に配置され、かつ、前記Z強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサにおける全ての前記磁気抵抗センシング素子の固定層の磁化方向は、全て同一であり、かつ、強磁性磁束ガイドが存在しない場合は、全ての前記磁気抵抗センシング素子のセンシング方向がX軸方向であり、
前記X軸、前記Y軸及び前記Z軸は相互に対ごとに直交する、モノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項2】
前記磁気抵抗センシング素子は、GMRスピンバルブ素子又はTMRセンシング素子である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項3】
前記X強磁性磁束ガイド、前記Y強磁性磁束ガイド及び前記Z強磁性磁束ガイドは、全て短冊片のアレイであり、かつ、軟強磁性合金からなる、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項4】
個々の前記参照素子列は、隣接する一つの前記センシング素子列から間隔L(Lは自然数)の離間をしており、前記X強磁性磁束ガイドの数が偶数である場合、前記参照素子列の二つは前記X軸センサの中央で互いに隣接し、かつ、その間隔は2Lであり、前記X強磁性磁束ガイドの数が奇数である場合、前記センシング素子列の二つは前記X軸センサの中央で互いに隣接し、かつ、その間隔は2Lである、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項5】
前記X強磁性磁束ガイド間の隙間での磁場の利得係数は1<Asns<100であり、かつ、前記X強磁性磁束ガイドの上方又は下方の磁場の減衰係数は0<Aref<1である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項6】
前記Y軸センサの場合、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドの数は同一であり、前記プッシュアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度αは0°から90°であり、かつ、前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度βは−90°から0°であり、又は、前記プッシュアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度αは−90°から0°であり、かつ、前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度βは0°から90°であり、|α|=|β|である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項7】
前記Y軸センサの場合、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の数は同一であり、かつ、対向位置における前記磁気抵抗センシング素子は互いに平行であり、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の回転角は振幅が同じであるが、方向が異なる、請求項6記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項8】
前記Z軸センサの場合、前記プッシュプルブリッジの前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の数は同一である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項9】
前記Z軸センサの前記磁気抵抗センシング素子の長さと幅との比は1よりも大きい、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項10】
前記Z強磁性磁束ガイドの隣接する二つの間の隙間Sは、前記Z強磁性磁束ガイドの幅L以上である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項11】
前記Z強磁性磁束ガイドの隣接する二つの間の前記隙間Sは2Lより大きい、請求項10記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項12】
前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子は、前記Z強磁性磁束ガイドの上部又は底部の両側の端部の外側に位置している、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項13】
前記Z軸センサのセンシティビティは、前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子と前記Z強磁性磁束ガイドの底部の端部との間の隙間を減少させることによって、又は、前記Z強磁性磁束ガイドの厚さLzを増加させることによって、又は、前記強磁性磁束ガイドの幅Lを減少させることによって増加させることが可能である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項14】
外部磁場が存在しない場合、前記磁気抵抗センシング素子は、永久磁石バイアス、二重交換相互作用、形状異方性、又は、それらのいずれかの組み合わせによって、前記固定層の磁化方向に対して垂直な磁化自由層の磁化方向を達成する、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項15】
前記参照ブリッジ及び前記プッシュプルブリッジは、いずれもハーフブリッジ、フルブリッジ又は疑似ブリッジ構造である、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項16】
前記基板はその上のASICチップと一体化される、又は、前記基板は独立したASICチップに電気的に接続される、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項17】
前記モノリシック三軸リニア磁気センサの半導体パッケージ方法は、ボンディングパッ
ドのワイヤボンディング、フリップチップ、ボールグリッドアレイ(BGA)、ウェハレベルパッケージ(WLP)又はチップオンボード(COB)を備える、請求項1記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項18】
前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサは、センシティビティが同一である、請求項1又は請求項13記載のモノリシック三軸リニア磁気センサ。
【請求項19】
(1)ウェハに磁気抵抗材料薄膜積層を堆積させ、かつ、磁場中の熱アニールによって前記磁気抵抗材料薄膜積層に、固定層の磁化方向、前記固定層の磁気特性、自由層の磁気特性、及び、トンネル接合の電気特性を設定するステップと、
(2)下部電極を構築し、かつ、同時に前記磁気抵抗材料薄膜積層のX軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサの磁気抵抗センシング素子を構築するステップと、
(3)前記磁気抵抗センシング素子の上方に絶縁層Iを堆積させ、かつ、前記絶縁層Iに前記磁気抵抗センシング素子用の電気的接続チャネルを提供するビアを形成するステップと、
(4) 前記ビアの上方に上部金属層を堆積させ、前記上部金属層に上部電極を構築し、かつ前記素子間の配線を行うステップと、
(5)前記上部金属層の上方に絶縁層IIを堆積させてから、前記絶縁層IIの上方に軟強磁性合金材料層を堆積させ、かつ、同時に前記軟強磁性合金材料層にX強磁性磁束ガイド、Y強磁性磁束ガイド及びZ強磁性磁束ガイドを構築するステップと、
(6)同時に前記X強磁性磁束ガイド、前記Y強磁性磁束ガイド及び前記Z強磁性磁束ガイドの全ての上方にパッシベーション層を堆積させ、前記下部電極及び前記上部電極に対応する位置で前記パッシベーション層及び開口ビアをエッチングし、かつ、外部接続されるボンディングパッドを形成するステップと、
を含むモノリシック三軸リニア磁気センサの製造方法。
【請求項20】
前記磁気抵抗材料薄膜積層では、前記固定層はブロッキング温度がTB1である反強磁性材料を用いることによって固定され、かつ、前記自由層はブロッキング温度が前記TB1よりも低いTB2である第二の反強磁性材料を用いることによってバイアスがかけられ、前記磁場中で行われる熱アニーリングは、まず、前記TB1よりも高い温度T1で磁場中で前記ウェハをアニーリングするステップと、次に、前記TB1よりも低くTB2よりも高い温度T2に磁場中で冷却するステップと、前記ウェハの温度が前記T2まで冷却された後に前記ウェハ又は外部磁場の方向を90度回転させるステップと、それから、前記TB2よりも低い温度T3まで前記ウェハを冷却してから前記外部磁場を除去するステップと、最後に、前記ウェハを常温まで冷却するステップとを備える、二ステップの熱磁気アニーリングである、請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
前記ステップ(2)では、前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子は、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチング、リフトオフ又はハードマスキングによって、前記磁気抵抗材料薄膜積層に同時に構築される、請求項19記載の製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(3)では、前記ビアは、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング又はウェットエッチングによって形成される、請求項19記載の製造方法。
【請求項23】
前記ステップ(3)における前記ビアは、リフトオフプロセス又はハードマスクプロセスによって形成されるセルフアラインコンタクトホールである、請求項19記載の製造方法。
【請求項24】
前記上部金属層の上方に絶縁層IIを堆積させてから、前記絶縁層IIの上方に軟強磁性合金材料層を堆積させることは、
前記絶縁層IIに電磁コイル構築用の導体を堆積させること、
前記導体上に絶縁層IIIを堆積すること、
前記絶縁層IIIに前記軟強磁性合金材料層を堆積することを備える、請求項19記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア磁気センサに関し、特に、モノリシック三軸磁気センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ技術の発展に伴い、磁気センサは、初期の単軸磁気センサから、後期の二軸磁気センサ、その後、X、Y及びZの三方向の磁場信号を同時に検出することができる現在の三軸磁気センサまで発展した。
【0003】
AMR、GMR及びTMRのような磁気センサの場合、磁場センシング方向は薄膜材料の平面内にあり、その平面内のX軸及びY軸の磁場成分の測定は、二つのセンサを直交させることによって実装することができ、それによって、XY二軸磁場センサシステムが実装されている。しかし、Z軸の磁場成分に対しては、通常の解決手段は、二軸平面センサ上に別個に傾斜した単軸平面磁気センサを設置することであり、例えば、発明の名称が「三軸磁場センサ」である中国特許出願番号第201110251902.9の明細書に記載されている三軸磁場センサである。しかし、この方法は、以下の改善点を有する。
1)X,Y二軸磁気センサ及びZ単軸磁気センサは、取り付け前はディスクリート素子であるので、一体化された三軸磁気センサの製造を実施することができず、これにより、製造プロセスの複雑さが増大する。
2)一体化された製造方法と比較して、ディスクリート素子を組み立てることによって製造される三軸磁気センサの素子の位置精度は低下するので、センサの測定精度が悪化する。
3)Z単軸磁気センサのセンシング軸は、X、Y二軸磁気センサ平面に垂直であるので、三軸磁気センサのZ方向の寸法が増大し、これにより、デバイスのサイズ及びパッケージングの困難性が増加する。
【0004】
別の解決手段は、考案の名称が「三軸磁気センサ」である中国実用新案公告第202548308号明細書に開示されているように、Z方向の磁気信号を検出する磁気センサユニットに設けられる傾斜面を用いることである。しかし、この構成のセンサの傾斜面の角度を制御することは大変であり、かつ、傾斜面に磁気抵抗薄膜を堆積するプロセスでは、シャドーイング効果が簡単に生じてしまい、これにより、磁気センサ素子の性能が低下する。さらに、この解決手段は、Z軸方向の磁気信号を計算するためのアルゴリズムが必要である。
【0005】
別の解決手段は、発明の名称が「三軸デジタルコンパス」である中国特許出願番号第201310202801.1号明細書に開示される解決手段であり、ある平面に対して垂直なZ軸磁場成分を、磁束コンセントレータによる磁場の歪みを用いて、XY平面内の磁場成分に変換し、それにより、Z軸方向の磁気信号の測定を実施する。しかし、この構造の磁気センサは、ASICチップ、又は、X、Y及びZの三方向の磁気信号を取得するためのアルゴリズムを用いる計算が必要となる。
【0006】
現在、三軸磁気センサは、主として、傾斜面を形成するように基板層をエッチングし、傾斜面に磁気抵抗材料薄膜を堆積させ、センサ材料の二重堆積するなどの方法によって製造されており、例えば、考案の名称が「三軸磁気センサ」である中国実用新案登録公告第202548308号明細書に開示されているセンサの製造プロセスは、実質的に、二つの傾斜面を形成するようにウェハの基板層をエッチングし、二つの傾斜面にそれぞれ磁気抵抗材料薄膜を二重堆積し、XZ方向及びYZ方向の測定用のセンサユニットを製造する
ために二重アニーリングを行うことを含む。欧州特許第2267470B1号明細書にも、傾斜面を形成するように基板がエッチングされ、かつ、Z軸方向の磁場成分測定用のセンサユニットが傾斜面に製造される、三軸センサの製造方法が開示されている。いずれの実施でもエッチングされた傾斜面の角度を制御することは大変であり、かつ、傾斜面に磁気抵抗材料薄膜を堆積することには困難であるため、実際には、これらは実施されていない。加えて、EVERSPIN TECHNOLOGIES社の発明の名称が「単一チップ三軸磁場センサのプロセスの一体化」である中国特許出願第102918413号明細書でも、三軸磁場を一体化する方法が開示されているが、ここでは、底部及び側部を有する第一及び第二の複数のトレンチを第一の誘電体層内にエッチングし、前記第一の複数のトレンチの各々の少なくとも側部に高透磁率の第一の材料を堆積させ、前記第一の複数のトレンチに第二の材料を堆積させ、かつ、前記第二の複数のトレンチに第三の導電性材料を堆積させ、前記第一の誘電体層と前記第一及び第二の複数のトレンチとに第二の誘電体層を堆積させ、前記第二の誘電体層をとおって前記第二のトレンチの第一の部分の前記第三の材料まで到達する第一の複数の導電性チャネルを形成し、前記第一の複数のトレンチの側部に隣接して位置する前記第二の誘電体層にそれぞれが前記第一の複数のチャネルの一つに電気的に結合されている第一の複数の薄膜磁気抵抗磁場センサ素子を形成し、前記第二の誘電体層及び前記第一の複数の薄膜磁気抵抗磁場センサ素子に第三の誘電体層を堆積させる。この方法は、相対的に複雑であり、かつ、作業プロセスを制御することは容易ではない。従来技術では、三軸磁気センサは、磁束コンセントレータを用いることによって形成されることもできるが、その磁気抵抗素子の固定層の磁化方向が同じ方向に整列しておらず、その実施は相対的に困難である。
【発明の概要】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、モノリシック三軸リニア磁気センサ及びその製造方法を提案する。モノリシック三軸リニア磁気センサは、X、Y及びZ三センシング方向からの磁気信号を直接出力することができる。したがって、計算アルゴリズムを用いる必要はない。加えて、製造プロセスにおいて、溝をエッチングすること、又は、傾斜面を形成することは不要であり、二重堆積はいずれも必要ではなく、さらに、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサにおける磁気抵抗センシング素子の固定層の方向は、同一であり、かつ、全てX軸方向に沿って配向している。
【0008】
本発明で提供されるモノリシック三軸リニア磁気センサは、
それぞれがX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの磁場成分を検知するために、電気的に相互接続される一以上の同一の磁気抵抗センシング素子を含む、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサが一体化されたXY平面内にある基板を含み、
前記X軸センサは、参照ブリッジ及び少なくとも二つのX強磁性磁束ガイドを含み、前記参照ブリッジの参照アーム及びセンシングアームが交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を含み、前記参照アームの前記磁気抵抗センシング素子は、前記X強磁性磁束ガイドの上方又は下方に配置され、かつ、参照素子列を形成するように前記X強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記センシングアームの前記磁気抵抗センシング素子は、隣接する二つの前記X強磁性磁束ガイド間の隙間に配置され、かつ、センシング素子列を形成するように前記X強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記Y軸センサはプッシュプルブリッジを含み、前記プッシュプルブリッジのそれぞれのプッシュアーム及びプルアームは、それらの上に少なくとも二つのY強磁性磁束ガイドが対応して設けられ、前記プッシュアーム及び前記プルアームは、交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を含み、前記磁気抵抗センシング素子は各々が隣接する二つの前記Y強磁性磁束ガイド間の隙間に配置され、
前記Z軸センサはプッシュプルブリッジ及び少なくとも一つのZ強磁性磁束ガイドを含み、前記プッシュプルブリッジのプッシュアーム及びプルアームが交互に配列され、かつ、各々が電気的に相互接続される一以上の同一の前記磁気抵抗センシング素子を含み、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子は、それぞれ前記Z強磁性磁束ガイドの底部又は上部の両側に配置され、かつ、前記Z強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、
前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサにおける全ての前記磁気抵抗センシング素子の固定層の磁化方向は、全て同一であり、かつ、強磁性磁束ガイドが存在しない場合は、全ての前記磁気抵抗センシング素子のセンシング方向がX軸方向であり、
前記X軸、前記Y軸及び前記Z軸は相互に対ごとに直交する。
【0009】
好ましくは、前記磁気抵抗センシング素子は、GMRスピンバルブ素子又はTMRセンシング素子である。
【0010】
好ましくは、前記X強磁性磁束ガイド、前記Y強磁性磁束ガイド及び前記Z強磁性磁束ガイドは、全て短冊状のストリップのアレイであり、かつ、全て軟強磁性合金からなる。
【0011】
好ましくは、個々の前記参照素子列は、隣接する一つの前記センシング素子列から間隔L(Lは自然数)の離間をしており、前記X強磁性磁束ガイドの数が偶数である場合、前記参照素子列の二つは前記X軸センサの中央で互いに隣接し、かつ、その間隔は2Lであり、前記X強磁性磁束ガイドの数が奇数である場合、前記センシング素子列の二つは前記X軸センサの中央で互いに隣接し、かつ、その間隔は2Lである。
【0012】
好ましくは、前記X強磁性磁束ガイド間の隙間での磁場の利得係数は1<Asns<100であり、かつ、前記X強磁性磁束ガイドの上方又は下方の磁場の減衰係数は0<Aref<1である。
【0013】
好ましくは、前記Y軸センサの場合、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドの数は同一であり、前記プッシュアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度αは0°から90°であり、かつ、前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度βは−90°から0°であり、又は、前記プッシュアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度αは−90°から0°であり、かつ、前記プルアームの前記Y強磁性磁束ガイドと前記X軸の正方向との間の角度βは0°から90°であり、|α|=|β|である。
【0014】
好ましくは、前記Y軸センサの場合、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の数は同一であり、かつ、対向位置における前記磁気抵抗センシング素子は互いに平行であり、前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の回転角は振幅が同じであるが、方向が異なる。
【0015】
好ましくは、前記Z軸センサの場合、前記プッシュプルブリッジの前記プッシュアーム及び前記プルアームの前記磁気抵抗センシング素子の数は同一である。
【0016】
好ましくは、前記Z軸センサの前記磁気抵抗センシング素子の長さと幅との比は1よりも大きい。
【0017】
好ましくは、前記Z強磁性磁束ガイドの隣接する二つの間の隙間Sは、前記Z強磁性磁束ガイドの幅L以上である。
【0018】
好ましくは、前記Z強磁性磁束ガイドの隣接する二つの間の前記隙間Sは2Lより大
きい。
【0019】
好ましくは、前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子は、前記Z強磁性磁束ガイドの上部又は底部の両側の端部の外側に位置している。
【0020】
好ましくは、前記Z軸センサのセンシティビティは、前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子と前記Z強磁性磁束ガイドの底部の端部との間の隙間を減少させることによって、又は、前記Z強磁性磁束ガイドの厚さLzを増加させることによって、又は、前記強磁性磁束ガイドの幅Lを減少させることによって増加させることが可能である。
【0021】
好ましくは、外部磁場が存在しない場合、前記磁気抵抗センシング素子は、永久磁石バイアス、二重交換相互作用、形状異方性、又は、それらのいずれかの組み合わせによって、前記固定層の磁化方向に対して垂直な磁化自由層の磁化方向を達成する。
【0022】
好ましくは、前記参照ブリッジ及び前記プッシュプルブリッジは、いずれもハーフブリッジ、フルブリッジ又は疑似ブリッジ構造である。
【0023】
好ましくは、前記基板はその上のASICチップと一体化される、又は、前記基板は独立したASICチップに電気的に接続される。
【0024】
好ましくは、前記モノリシック三軸リニア磁気センサの半導体パッケージは、ボンディングパッドのワイヤボンディング、フリップチップ、ボールグリッドアレイ(BGA)、ウェハレベルパッケージ(WLP)又はチップオンボード(COB)を含む。
【0025】
好ましくは、前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサは、センシティビティが同一である。
【0026】
本発明は、さらに、
(1)ウェハに磁気抵抗材料薄膜積層を堆積させ、かつ、磁場中の熱アニールによって前記磁気抵抗材料薄膜積層に、固定層の磁化方向、前記固定層の磁気特性、自由層の磁気特性、及び、トンネル接合の電気特性を設定するステップと、
(2)下部電極を構築し、かつ、同時に前記磁気抵抗材料薄膜積層のX軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサの磁気抵抗センシング素子を構築するステップと、
(3)前記磁気抵抗センシング素子の上方に絶縁層Iを堆積させ、かつ、前記絶縁層Iに前記磁気抵抗センシング素子用の電気的接続チャネルを提供するビアを形成するステップと、
(4) 前記ビアの上方に上部金属層を堆積させ、前記上部金属層に上部電極を構築し、かつ前記素子間の配線を行うステップと、
(5)前記上部金属層の上方に絶縁層IIを堆積させてから、前記絶縁層IIの上方に軟強磁性合金材料層を堆積させ、かつ、同時に前記軟強磁性合金材料層にX強磁性磁束ガイド、Y強磁性磁束ガイド及びZ強磁性磁束ガイドを構築するステップと、
(6)同時に前記X強磁性磁束ガイド、前記Y強磁性磁束ガイド及び前記Z強磁性磁束ガイドの全ての上方にパッシベーション層を堆積させ、前記下部電極及び前記上部電極に対応する位置で前記パッシベーション層及び開口ビアをエッチングし、かつ、外部接続されるボンディングパッドを形成するステップと、
を含む、モノリシック三軸リニア磁気センサの製造方法を提供する。
【0027】
好ましくは、前記磁気抵抗材料薄膜積層では、前記固定層はブロッキング温度がTB1である反強磁性材料を用いることによって固定され、かつ、前記自由層はブロッキング温
度が前記TB1よりも低いTB2である第二の反強磁性材料を用いることによってバイアスがかけられ、前記磁場中で行われる熱アニーリングは、まず、前記TB1よりも高い温度T1で磁場中で前記ウェハをアニーリングするステップと、次に、前記TB1よりも低くTB2よりも高い温度T2に磁場中で冷却するステップと、前記ウェハの温度が前記T2まで冷却された後に前記ウェハ又は外部磁場の方向を90度回転させるステップと、それから、前記TB2よりも低い温度T3まで前記ウェハを冷却してから前記外部磁場を除去するステップと、最後に、前記ウェハを常温まで冷却するステップとを含む、二ステップの熱磁気アニーリングである。
【0028】
好ましくは、前記ステップ(2)では、前記X軸センサ、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサにおける前記磁気抵抗センシング素子は、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチング、リフトオフ又はハードマスキングによって、前記磁気抵抗材料薄膜積層に同時に構築される。
【0029】
好ましくは、前記ステップ(3)では、前記ビアは、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング又はウェットエッチングによって形成される。
【0030】
好ましくは、前記ステップ(3)における前記ビアは、リフトオフプロセス又はハードマスクプロセスによって形成されるセルフアラインコンタクトホールである。
【0031】
好ましくは、前記上部金属層の上方に絶縁層IIを堆積させることは、前記上部金属層の上方に第一の絶縁副層を堆積させること、前記第一の絶縁副層に電磁コイル構築用の導体を堆積させること、前記電磁コイル、前記第一の絶縁副層、前記第二の絶縁副層及び前記絶縁層IIを形成する導体に第二の絶縁副層を堆積することを含み、かつ、前記絶縁層IIの上方に軟強磁性合金材料層を堆積することは、前記第二の絶縁副層に前記軟強磁性合金材料層を堆積することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施形態における技術の技術的な解決手段をさらに明確に説明するために、本実施形態の技術に用いられる必要のある添付図面を簡単に紹介する。以下に説明される添付図面は、本発明のいくつかの実施形態にすぎず、かつ、当業者は、如何なる創造的努力なしに、添付図面に従って、他の添付図面をさらに取得することができることは明らかである。
【0033】
図1】本発明のモノリシック三軸リニア磁気センサの概略構成図である。
図2】本発明のモノリシック三軸リニア磁気センサのデジタル信号処理回路の概略図である。
図3】X軸センサの概略構成図である。
図4】X軸センサにおける磁気抵抗素子周辺の磁場の分布図である。
図5】X軸センサにおけるMTJ素子の位置に対するセンスされる磁場強度の関係曲線である。
図6】X軸センサの反応曲線である。
図7】X軸センサの概略回路図である。
図8】Y軸センサの概略構成図である。
図9】Y軸センサの他の概略構成図である。
図10】Y方向磁場におけるY軸センサの磁場の分布図である。
図11】X方向磁場におけるY軸センサの磁場の分布図である。
図12】Y軸センサの反応曲線である。
図13】Y軸センサの概略回路図である。
図14】Z軸センサの概略回路図である。
図15】Z方向磁場におけるZ軸センサの強磁性磁束ガイドの周辺磁場の分布図である。
図16】Z軸センサの概略回路図である。
図17】X方向磁場におけるZ軸センサの強磁性磁束ガイドの周辺磁場の分布図である。
図18】Y方向磁場におけるZ軸センサの強磁性磁束ガイドの周辺磁場の分布図である。
図19】Z軸センサの反応曲線である。
図20】本発明のモノリシック三軸リニア磁気センサの製造方法の概略フローチャートである。
図21】製造されるモノリシック三軸リニア磁気センサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、添付図面と実施形態との組み合わせを参照して、以下に詳細に説明されるであろう。
【0035】
実施形態1
図1は、XY平面内の本発明のモノリシック三軸リニア磁気センサの概略構造図である。本センサは、基板1を含み、かつ、基板1は、その上に、X軸センサ3、Y軸センサ4、Z軸センサ5、及び、入出力用の複数のボンディングパッド2が一体化されている。X軸センサ3は、センシング素子列11、参照素子列12、及び、X強磁性磁束ガイド8を含み、参照素子列12はX強磁性磁束ガイド8の下方に配置され、かつ、センシング素子列11はX強磁性磁束ガイド8の隣接する二つの間の間隙に配置される。センシング素子列11及び参照素子列12は、それぞれ、電気的に接続される一以上の同一の磁気抵抗センシング素子によって形成される。Y軸センサ4は、Y強磁性磁束ガイド23、24及び磁気抵抗センシング素子13、14を備え、磁気抵抗センシング素子13はY強磁性磁束ガイド23の隣接する二つの間の間隙に列状に配列され、かつ、磁気抵抗センシング素子14はY強磁性磁束ガイド24の隣接する二つの間の間隙に列状に配列され、磁気抵抗センシング素子13の数及び磁気抵抗センシング素子14の数は同一であり、Y強磁性磁束ガイド23の数とY強磁性磁束ガイド24の数も同一であり、Y強磁性磁束ガイド23はX軸正方向と正の角度を形成し、かつ、Y強磁性磁束ガイド24はX軸正方向と負の角度を形成し、好ましくは二つの角度の絶対値は同一である。加えて、Y強磁性磁束ガイド23は、X軸正方向と負の角度を形成してもよく、一方で、Y強磁性磁束ガイド24は、X軸正方向と正の角度を形成してもよい。Z軸センサは、Z強磁性磁束ガイド10及び磁気抵抗センシング素子15、16を含み、磁気抵抗センシング素子15、16は、それぞれ、Z強磁性磁束ガイド10の下部の両側に列状に電気的に接続される。加えて、X軸センサ中の参照素子列12を形成する磁気抵抗センシング素子は、X強磁性磁束ガイド8の上方に配置されてもよい。ここで、Z軸センサ中の磁気抵抗センシング素子15、16は、Z強磁性磁束ガイド10の上部の両側に配置される。
【0036】
全ての磁気抵抗センシング素子は、GMRスピンバルブ又はTMRセンシング素子であり、かつ、これらに限定されるものではないが、四角形状、菱形状、又は、長円形状とすることができる。全ての磁気抵抗センシング素子の固定層の磁化方向6は、同一であり、かつ、全てX軸に沿って配向される。外部磁場が存在しない場合、磁気抵抗センシング素子は、永久磁石バイアス、二重交換相互作用、形状異方性、又はそれらの任意の組み合わせによって、固定層の磁化方向に対して垂直な磁化自由層の磁化方向を達成する。全ての強磁性磁束ガイドは、それぞれ短冊片のアレイであり、かつ、全て軟強磁性合金からなり、合金は、これらに限定されるものではないが、Ni、Fe、Co、Si、B、Ni、Zr及びAlを含む一以上の元素を含んでもよい。ボンディングパッド2は、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサ中に、入出力接続ボンディングパッドを含む。基板1は、AS
ICを含むことができ、又は、図面には示されていないが追加のASICチップに電気的に接続されてもよい。モノリシック三軸リニア磁気センサは、ボンディングパッドのワイヤボンディング、フリップチップ、ボールグリッドアレイ(BGA)、ウェハレベルパッケージ(WLP)、又はチップボードオンボード(COB)を用いてパッケージされてもよい。
【0037】
X軸、Y軸及びZ軸は、相互に、対ごとに直交している。X軸センサ3、Y軸センサ4及びZ軸センサ5は、同一のセンシティビティを有する。
【0038】
図2は、モノリシック三軸リニア磁気センサのデジタル信号処理回路の概略図である。X軸センサ3、Y軸センサ4及びZ軸センサ5によってセンスされる磁気信号は、デジタル信号処理回路50内のADC41を用いてアナログからデジタルへ変換され、変換されたデジタル信号はデータ処理器42に送信され、処理された信号はI/O43によって出力され、こうして外部磁場の測定を実現する。デジタル信号処理回路50は、基板1に配置され又は基板1に電気的に接続される他のASICチップに配置されてもよい。
【0039】
図3は、図1におけるX軸センサの概略構造図である。X軸センサは、参照フルブリッジ構造のセンサであり、参照アーム及びセンシングアームを含む。参照アームはX強磁性磁束ガイドの下方に配置される複数の参照素子列12を含み、かつ、センシングアームはX強磁性磁束ガイドの間隙9に配置される複数のセンシング素子列11を含む。センシング素子列11及び参照素子列は、互い違いになるように、かつ、X強磁性磁束ガイドの長さ方向に沿って配列され、センシング素子列11の各々一つは、参照素子列12の隣接する一つから間隔Lが離間されている。しかし、図2に示される偶数(8つ)のX強磁性磁束ガイドの場合には、中央の2つの参照素子列12は互いに隣接し、かつ、その間の間隔は2Lである。X強磁性磁束ガイドが奇数である場合には、中央で互いに隣接する2つのセンシング素子列11が存在するであろう。この状況は、図2には示されていないが、その隣接間隔も2Lである。間隔Lは、非常に小さく、好ましくは20ミクロン〜100ミクロンである。センシングアーム、参照アーム及びボンディングパッド17〜20は、電気接続導体21によって接続されてもよい。ボンディングパッド17〜20は、それぞれ入力端Vbias、接地端GND、及び出力端V1、V2として用いられ、図1の左端の4つのボンディングパッドに対応する。
【0040】
図4は、図3のセンシング素子列11及び参照素子列12周辺の磁場の分布を示す。X強磁性磁束ガイド8の間隙でのセンシング素子列11によってセンスされる磁場の大きさが増大すること、及び、X強磁性磁束ガイド8の下方に配置される参照素子列12によってセンスされる磁場の大きさが減少することが本図からわかり、したがって、X強磁性磁束ガイド8が磁場を減衰させる役割を果たすことができることは明らかとなる。
【0041】
図5は、図3におけるセンシング素子列11及び参照素子列12の位置に対する、センスされる磁場の強度の関係曲線であり、Bsns34はセンシング素子列11によってセンスされる磁場の強度であり、Bref35は参照素子列12によってセンスされる磁場の強度であり、かつ、外部磁場の強度はBext=100Gである。本図からBsns=160G、Bref=25Gであると取得される。対応する利得係数Asns及び対応する減衰係数Arefの大きさは、以下の数式(1)及び(2)に従って取得することができる。
【0042】
【数1】

【数2】

ext=100G、Bsns=160G、及びBref=25Gを上記数式に代入して、1<Asns=1.6<100、0<Aref=0.25<1を取得する。Asns/Arefの比が大きいほど、センサのセンシティビティが高いことを示す。一般的に、Asns/Aref>5であることが理想的であり、この場合、センサは高いセンシティビティを有する。この設計では、Asns/Aref=1.6/0.25=6.4>5であり、したがって、この出願のX軸センサが高いセンシティビティを有することは明らかである。
【0043】
図6は、図3のX軸センサにおける出力電圧に対する外部磁場の関係曲線である。X軸センサはX軸方向の磁場成分だけをセンスすることができ、出力電圧Vx36はY軸方向及びZ軸方向の磁場成分に反応せず、電圧Vy37及びVz38は共にゼロであり、かつVx36は原点0に対して対称であることが本図からわかる。
【0044】
図7は、図3におけるX軸センサの概略回路図である。本図では、二つのセンシングアーム52、52’及び二つの参照アーム53、53’はフルブリッジを構築するために間隔を空けて接続され、かつ、フルブリッジの出力電圧は、数式(3)となる。
【数3】

また、X軸センサのセンシティビティは、数式4のように表すことができる。
【数4】

非常に小さい外部磁場、すなわち、磁場強度Bは、非常に小さい場合には、上記数式(4)は次の数式5のように近似してもよい。
【数5】

図8は、図1におけるY軸センサの概略構造図である。このセンサは、プッシュプルフルブリッジ構造のセンサであって、斜めに配される複数のY強磁性磁束ガイド23、24、及び、プッシュアーム及びプルアームを形成するように電気的に接続される磁気抵抗センシング素子13、14を含む。磁気抵抗センシング素子13は、Y強磁性磁束ガイド23の隣接する二つの間の隙間に配置され、磁気抵抗センシング素子14は、Y強磁性磁束ガイド24の隣接する二つの間の隙間に配置され、Y強磁性磁束ガイド23、24とX軸との間の角度はそれぞれα25及びβ26である。好ましくは、|α|=|β|、かつ、α及びβの範囲はそれぞれ0°から90°、−90°から0°である。この実施形態では、α=45°かつ、β=−45°である。磁気抵抗センシング素子13、14の数は同一であり、かつ、対向する位置にある磁気抵抗センシング素子13、14は相互に平行であり、それらは回転することもでき、かつ、それらの回転角度は同一の振幅であるが、方向は異なる。Y軸センサの入出力のボンディングパッドは、本図には示されていないが、図1のボンディングパッド2の真中の4つのボンディングパッドに対応する。
【0045】
図9は、Y軸センサの別の概略構造図である。図8の磁気抵抗素子13、14は、本図に示される構造を取得するためにそれぞれ±45°回転し、かつ、図9は、磁気抵抗素子13、14がそれぞれY強磁性磁束ガイド23、24に対して平行である点で図8とは異なる。
【0046】
図10は、Y方向磁場中におけるY軸センサの磁場の分布図である。本図では、外部磁場の方向101はY軸に平行であり、かつ、測定方向100はX軸に平行である。センサに入る外部磁場はY強磁性磁束ガイド23、24によってバイアスがかけられ、Y強磁性磁束ガイド23の隙間での磁場方向は符号102であり、かつ、Y強磁性磁束ガイド24の隙間での磁場方向は符号103であることが本図からわかる。磁場方向102及び103は、Y軸に対して対称である。この実施形態では、外部磁場By=100G、測定されるX軸磁場のサイズBx+=90G、Bx=−90G、したがって、利得係数Axy=B/B=(Bx+−Bx?)/B=180/100=1.8である。
【0047】
図11は、X方向磁場におけるY軸センサの磁場の分布図である。本図では、外部磁場の方向及び測定方向は、共にX軸に対して平行である方向100となる。Y強磁性磁束ガイド23の隙間での磁場方向は符号104であり、かつ、Y強磁性磁束ガイド24の隙間での磁場方向は符号105である。磁場方向104及び105は、X軸に対して対称である。この実施形態では、外部磁場Bx=100G、測定されるX軸磁場のサイズBx+=101G、Bx−=−101G、したがって、利得係数Axx=(Bx+−Bx?)/B=(101−101)/100=0である。したがって、X軸での二つのブリッジアームの磁場成分が相互に相殺され、かつ、X軸磁場信号は検出されることがないことは明らかである。
【0048】
図12は、Y軸センサの出力電圧に対する外部磁場の関係曲線である。Y軸センサがY軸方向の磁気成分だけをセンスすることができ、出力電圧Vy37がX軸及びZ軸の磁場成分に反応せず、電圧Vx36及びVz38が共に0であり、V37が原点0に対して対称であることが本図からわかるであろう。
【0049】
図13は、Y軸センサの概略回路図である。いくつかの磁気抵抗センシング素子13は、等価の磁気抵抗器R39及びR39’を形成するように電気的に接続され、いくつかの磁気抵抗センシング素子14は、等価の磁気抵抗器R40及びR40’を形成するように電気的に接続され、かつ、4つの磁気抵抗器は、フルブリッジを構築するように接続される。
これらの磁化固定層の磁化方向は同一であり、対向する位置にある磁気抵抗器(R39及びR39’、R40及びR40’)の磁気自由層の磁化方向は同一であり、かつ、隣接する位置の磁気抵抗器(R39及びR40、R39及びR40’、R39’及びR40、R39’及びR40’)の磁気自由層の磁化方向は異なる。外部磁場が磁気抵抗センシング素子13及び14のセンシング方向に沿って印加される場合、磁気抵抗器R39、R39’の抵抗の変化状況は、磁気抵抗器R40、R40’の抵抗の変化状況とは反対となるようなプッシュプル出力が構築される。フルブリッジの出力電圧は、数式(6)である。
【数6】
一般的に、R39=R39’、R40=R40’、かつ、上記数式は、数式(7)のように簡略化することができる。
【数7】

それから、Y軸センサのセンシティビティは、数式(8)のように表すこともできる。
【数8】

図14は、Z軸センサの概略構造図である。Z軸センサは、プッシュプルフルブリッジ構造のセンサである。Z軸センサは、複数の磁気抵抗センシング素子15及び16、複数のZ強磁性磁束ガイド10、電気接続導体27、及び、ボンディングパッド28〜30を含み、ボンディングパッド28〜30は、それぞれ電源端VBias、接地端GND、及び出力電圧端V+、V−として用いられ、図1のボンディングパッド2における右端4つのボンディングパッドにそれぞれ対応する。全ての磁気抵抗センシング素子15はフルブリッジのプッシュアームを形成するように電気的に相互接続され、かつ、全ての磁気抵抗センシング素子16はフルブリッジのプルアームを形成するように電気的に相互接続される。プッシュアームはプルアームから離間されるように配列され、かつ、プッシュアーム、プルアームとボンディングパッド28〜30とは、プッシュプルフルブルッジを形成するように電気接続導体27によって接続される。磁気抵抗センシング素子15、16は、Z強磁性磁束ガイド10の長さ方向に沿って配列される。図14では、磁気抵抗センシング素子15、16は、Z強磁性磁束ガイド10の底部の両側に列状に配列され、かつ、Z強磁性磁束ガイド10によって覆われる。上端、下端、及び中央の三つのZ強磁性磁束ガイド10を除いて、プッシュアーム磁気抵抗センシング素子15の列及びプルアーム磁気抵抗センシング素子16の列は、各々、Z強磁性磁束ガイド10の底部の両側に配列され、かつ、必要であれば、磁気抵抗センシング素子15、16は、三つのZ強磁性磁束ガイド10の下方に配列することもできる。図15は、Z軸方向における外部磁場106のZ軸センサの磁場の分布図である。外部磁場がZ強磁性磁束ガイド10の近傍で歪められることによって、X軸方向の磁場成分が生成されるので、Z強磁性磁束ガイド10の下方の磁気抵抗センシング素子15及び16がこの成分をまさに検知することができるが、これらによって検知される磁場成分の方向は相互に反対となり、かつ、それぞれ符号107及び108であることが、本図の磁力線分布からわかる。印加される外部磁場の大きさは、検知されるX軸磁場成分に応じて知ることができる。
【0050】
図16は、Z軸センサの概略回路図である。いくつかの磁気抵抗センシング素子15は、等価の磁気抵抗器R2及びR2’を形成するように電気的に接続され、いくつかの磁気抵抗センシング素子16は、二つの等価の磁気抵抗器R3及びR3’を形成するように電気的に接続され、かつ、4つの磁気抵抗器はフルブリッジを構築するように接続される。Z軸方向の外部磁場が印加されると、磁気抵抗器R2、R2’及びR3、R3’の抵抗の変化状況は、相互に反対となるようなプッシュプル出力が構築される。一般的に、R2’=R2、かつ、R3’=R3である。回路の出力電圧が数式(9)であることを、図15から取得することができる。
【数9】
そのセンシティビティは、数式(10)である。
【数10】
図17は、X軸方向における外部磁場100におけるZ軸センサの磁場分布図である。磁気抵抗センシング素子15及び16によって検知される磁場が同一であることが、本図からわかる。その結果、磁気抵抗器R2、R2’及びR3、R3’の抵抗の変化状況は同一となり、プッシュプル出力が形成されず、そのため、センサは応答しないであろう。
【0051】
図18は、Y軸方向の外部磁場101におけるZ軸センサの磁場分布図である。Z強磁性磁束ガイド10は、Y軸方向の外部磁場を完全に遮蔽し、かつ、磁気抵抗センシング素子15、16はY軸方向の磁場に対してセンシティビティがないことが本図からわかるであろう。そのため磁気抵抗センシング素子15、16はいかなる磁場成分も検知せず、かつ、Z軸センサもまた応答しない。
【0052】
図19は、Z軸センサの出力電圧に対する外部磁場の関係曲線である。Z軸センサがZ軸方向の磁気成分だけをセンスすることができ、出力電圧Vz38がX軸及びY軸方向の磁場成分に応答せず、電圧Vx36及びVy37が共に0であり、かつ、Vz38が原点0に対して対称であることが本図からわかる。
【0053】
上記記載は、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサにおけるブリッジがフルブリッジである場合の状況について述べたものであるが、ハーフブリッジ及び擬似ブリッジの作動原理はフルブリッジと同一であるため、ここでは繰り返さない。上記から取得される結論は、ハーフブリッジ構造及び擬似ブリッジ構造におけるモノリシック三軸リニア磁気センサに応用することも可能である。
【0054】
実施形態2
図20は、本発明のモノリシック三軸リニア磁気センサの製造方法であり、本方法は以下のステップを含む。すなわち、
(1)ウェハに磁気抵抗材料薄膜積層を堆積させ、関連するプロセスを用いることによって磁気抵抗材料薄膜積層の固定層の磁化方向を設定し、好ましくは磁場中で熱アニーリングによって同一の方向に沿った固定層の磁化方向を設定し、かつ、インピーダンス、閾値電圧、ヒステリシス、異方性、飽和磁場等を含む、固定層の電気的特性及び磁化特性を設定するステップを含む。ここで、この磁気特性は固定層及び自由層に固有であるが、電気的特性はトンネル接合に固有である。磁気抵抗材料薄膜積層では、固定層はブロッキング温度がTB1である反強磁性体材料を用いることによって固定され、かつ、自由層はブロッキング温度がTB1よりも低いTB2である第二の反強磁性材料を用いることによってバイアスがかけられる。また、磁場中で行われる熱アニールは、まず、TB1よりも高い温度T1で磁場中でウェハをアニーリングするステップと、次に、TB1よりも低くTB2よりも高い温度T2に磁場中で冷却するステップと、ウェハの温度がT2まで冷却された後にウェハ又は外部磁場の方向を90度回転させるステップと、それから、TB2よりも低い温度T3までウェハを冷却してから外部磁場を除去するステップと、最後に、ウェハを常温まで冷却するステップとを、を含む、二ステップの熱磁気アニーリングとすることができる。
【0055】
磁気抵抗材料薄膜は、シード層を含み、かつ、GMR又はTMR素子は、シード層に生成されてもよい。
【0056】
(2)磁気抵抗材料薄膜積層が堆積されたウェハに下部電極を構築し、かつ、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチング、リフトオフ、又は、ハードマスキングなどの技術によって、同時に同じ技術プロセスにおいて、同一の磁気抵抗材料薄膜にX軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサの磁気抵抗センシング素子を構築するステップを含む。
(3)磁気抵抗センシング素子の上方に絶縁層Iを堆積させ、かつ、リソグラフィ、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチングのような技術によって、磁気抵抗センシング素子に電気的接続を提供するビアを形成するステップを含む。ビアは、リフトオフプロセス又はハードマスキングプロセスによって形成されるセルフアラインコンタクトホールとしてもよい。
【0057】
(4)ビアの上方に上部金属層を堆積させ、上部金属層に上部電極を構築し、かつ、素子間の配線を行うステップを含む。
(5)上部金属層の上方に絶縁層IIを堆積させてから、絶縁層IIの上方に軟強磁性合金材料層(例えばNiFe)を堆積させるステップを含む。必要であれば、まず、絶縁層IIに電磁コイルを構築するための導体を堆積させ、その後、電磁コイルに絶縁層IIIを堆積させ、次に絶縁層IIIに軟強磁性合金材料層を堆積させ、かつ、軟強磁性合金材料層にX強磁性フラックスガイド、Y強磁性フラックスガイド及びZ強磁性フラックスガイドを同時に構築することも可能である。
(6)全てのX強磁性磁束ガイド、Y強磁性磁束ガイド及びZ強磁性磁束ガイドの上方にパッシベーション層を同時に堆積させ、下部電極及び上部電極に対応する位置でパッシベーション層及び開口ビアをエッチングし、かつ、外部接続されるボンディングパッドを形成するステップを含む。
【0058】
上記各ステップを実施した後のモノリシック三軸リニア磁気センサの概略断面図が図21に示されている。図21では、X軸センサ、Y軸センサ及びZ軸センサは、左から右へ並んで対応して配置される。Y軸センサにおける左のブリッジアームと右のブリッジアームとが対称であるので、単に、一つのブリッジアームのY強磁性磁束ガイド23及びそれらの隙間における磁気抵抗センシング素子13が示されている。この実施形態では、上記ステップにおける磁気抵抗効果素子は、MTJ素子である。
【0059】
上記の説明は、単に、本発明の好適な実施形態に関するものであって、本発明を限定するためのものではない。当業者にとって、本発明は様々な変更及び変形をすることができる。本発明の精神及び原理から逸脱しない如何なる変更、等価的置換、改良及びこれらに類似するものは、全て本発明の保護範囲内であるとする。
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