特許第6474839号(P6474839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474839
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】臭気の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20190218BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20190218BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190218BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20190218BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20190218BHJP
   A61F 5/441 20060101ALI20190218BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A61L9/16 D
   B01J20/04 A
   B01J20/28 Z
   A23L5/20
   A61F13/15 141
   A61F5/441
   C01F11/18 H
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-574089(P2016-574089)
(86)(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公表番号】特表2017-528172(P2017-528172A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015063455
(87)【国際公開番号】WO2015193299
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】14173318.8
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/030,154
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オール,シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シェルコップ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/064073(WO,A1)
【文献】 特表2012−530042(JP,A)
【文献】 特開平07−290070(JP,A)
【文献】 特開昭56−060641(JP,A)
【文献】 特開2001−218791(JP,A)
【文献】 特開平07−039749(JP,A)
【文献】 特開2013−136037(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0003797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/20
A61F 5/441
A61F 13/15
A61L 9/00−16
B01J 20/04−28
C01F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応炭酸カルシウムを臭気物質と接触させることによって臭気を制御する方法であって、表面反応炭酸カルシウムは、水性媒体中での天然の重質炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物であり、表面反応炭酸カルシウムは、水銀圧入ポロシメトリー測定から計算された、0.150から1.300cm/gの範囲内の粒子内侵入比細孔容積を有し、ここで、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部供給源から供給される、該方法。
【請求項2】
天然の重質炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石およびそれらの混合物を含む群から選択される鉱物を含む炭酸カルシウムから選択され、沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライトまたはカルサイト鉱物結晶形態またはそれらの混合物を有する沈降炭酸カルシウムを含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面反応炭酸カルシウムは、粉末および/または顆粒、懸濁液および/またはゲルの形態であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびISO 9277に従うBET法を用いて測定された、1m/gから200m/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
表面反応炭酸カルシウムは、0.1から50μmの体積メジアン粒径d50を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
表面反応炭酸カルシウムは、ふるい分画によって決定される0.1から6mmの体積メジアン顆粒サイズを有する顆粒の形態であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびISO 9277に従うBET法を用いて測定された、1から175m/gの比表面積を有する顆粒の形態であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
臭気物質は、ヒトおよび動物の体液および分泌物に含まれる臭気物質、ヒトまたは動物の組織の腐敗に由来する臭気物質、食品、果物、織物、家具、車のインテリア、壁材を含む群から選択されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
臭気物質は、アミン、カルボン酸、硫黄有機化合物、リン有機化合物、それらの誘導体およびそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
表面反応炭酸カルシウムは、女性用衛生製品、失禁用製品、消臭剤配合物、ペーパータオル、トイレットペーパーおよび化粧紙、不織製品、包装材料、単層および多層構造、透過性バッグ、吸着パッド、接着剤層を有するまたは有さない、表面反応炭酸カルシウムで充填および/または被覆された紙製品、動物用リター、建設および建築材料、堆肥および有機肥料の製剤において使用されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
臭気の制御のための請求項1からのいずれか一項に定義された表面反応炭酸カルシウムの使用であって、表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での天然の重質炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物であり、表面反応炭酸カルシウムは、水銀圧入ポロシメトリー測定から計算された、0.150から1.300cm/gの範囲内の粒子内侵入比細孔容積を有し、ここで、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部供給源から供給される、使用。
【請求項12】
臭気の制御のために表面反応炭酸カルシウムを含むことを特徴とする臭気制御製品であって、表面反応炭酸カルシウムは、水性媒体中での天然の重質炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物であり、表面反応炭酸カルシウムは、水銀圧入ポロシメトリー測定から計算された、0.150から1.300cm/gの範囲内の粒子内侵入比細孔容積を有し、ここで、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部供給源から供給され、
女性用衛生用品、失禁用製品、消臭剤配合物、不織製品、単層および多層構造、透過性バッグ、吸着パッド、動物用リター、建設および建築材料、堆肥および有機肥料の製剤から選択される製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気の制御方法、臭気の抑制のための表面反応炭酸カルシウムの使用、および臭気制御のための製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、臭気は環境の至るところに存在している。ある種の臭気は心地よいものとしてとらえられるが、不快な感覚を引き起こす他の臭気である悪臭も存在するため、この臭気を多くの方法で制御することが継続的に検討されている。
【0003】
例えば、悪臭の1つの原因は、あらゆる種類の廃棄されたヒトおよび動物の体内排泄物、液体および分泌物である。しかし、制御される必要のある不快な臭気の他の原因、例えば乳製品、肉および魚のような食物、または織物、家具、および壁材によって引き起こされるものもある。
【0004】
ヒトまたは動物の体液に関しては、臭気を制御する継続的な必要性、および、例えば、生理用ナプキン、パンティライナー、大人用失禁用品、乳児用おむつ、ペーパータオル、トイレットペーパーおよび化粧紙のような個人用衛生用品、医療目的のための不織布等の分野でその必要性を満たすための絶え間ない開発が存在する。このような物品はしばしば体液および人体によって排泄される他の滲出物を吸収し、保持するために使用される。
【0005】
例えば、EP0510619A1号は、個人衛生の吸収性物品における悪臭を低減する特定の状況において有効であることが判明している多種多様な材料を開示する。EP0959846A1号は、ポリアクリレート超吸収体およびシリカを含むそのような材料を開示する。EP0811387A1号は、ゼオライトおよびシリカ臭気制御システムを備えた吸収性物品を開示する。EP0963186A1号は、ゼオライト、シリカおよびポリアクリル超吸収体を含む臭気制御システムを開示する。EP0912149A1号は、吸収性物品における臭気制御に使用するためのキレート剤、特に多官能性置換芳香族キレート剤を開示する。
【0006】
ポリマー超吸収体は大量の液体を吸収することができるが、それほど速くない。ナプキンおよびおむつの製造業者は液体吸収性のために超吸収ポリマーを使用しているが、最初の漏れを防止するために吸収速度において改善の可能性が要求される。
【0007】
さらに、現在使用されている吸収剤の多くは、かなり特異的であり、いくつかの悪臭物質に同時に使用することはできない。
【0008】
この問題を解決するために、例えば、吸収剤または吸収剤および鼻遮断薬の組み合わせが示唆されている。例えば、EP2258408A1号は、臭気制御システムを含む吸収性物品を開示し、この臭気制御組成物は2種類の臭気制御物質を含んでおり、シリカゲル、アルデヒドまたはメソ多孔性ゼオライト等の第1の種類の臭気制御物質が、吸収性物品中の悪臭または悪臭物質に作用することによって臭気を低減し、第2の種類の臭気制御物質が選択された物質、例えば、メントールの揮発性の性質のために使用者の鼻受容器を遮断することによって臭気を低減する。
【0009】
さらに、例えば、食品関連用途に関しては、多くの既知の吸収剤は、それらが健康に有害であるため使用することができないので、しばしば臭気源を密封することによって臭気制御を簡単に管理するが、それは望ましくない劣化を加速する可能性がある。従って、例えば、あらゆる悪臭物質、例えば、乳製品、肉または魚によって生じる悪臭を吸収する無害の物質を含む包装紙または容器を提供することが非常に望ましいであろう。例えば、冷蔵庫の中の臭気の制御にも同じことが当てはまる。
【0010】
例えば、室内の気候等を改善するための臭気の制御のためにさらに複数の用途があり、現在この問題を解決する最も一般的なアプローチは、ルームスプレーの使用等によってある臭気を他の臭気と交換することである。しかし、これはいつも望ましいとは限らず、中間的臭気制御がより望ましいであろう。
【0011】
この点において、単に、例えば、不快な臭気を有する液体を吸収することができるあらゆる物質が、この臭気、即ち、臭気物質の揮発性部分を制御するために必ずしも適切ではないだけでなく、その場合には臭気を除去するために吸収剤および被吸収物質の複合体を除去することが要求されることに留意されたい。
【0012】
理想的には、臭気を制御する薬剤は、異なる機構に従って悪臭を低減することができ、例えば、薬剤は、吸収/吸着機構により悪臭分子の量を減少させることができるか、および/または悪臭分子と反応して、悪臭分子を低揮発性/非臭気性分子に変えることができるか、および/または揮発性を抑制して悪臭分子を抑制することができるか、および/または微生物の代謝活性によって引き起こされる分解過程を阻害することにより、悪臭の発生を抑制することができる。
【0013】
従って、既知のものはしばしばいくつかの臭気の同時制御には適さないか、または、例えば、安全上または経済上の理由から特定の分野では適用できないという事実を考慮して、臭気制御のための多くの適用分野、およびそのための新しい方法および薬剤に対する継続的な必要性がある。
【0014】
特定の方法で表面処理された炭酸カルシウムは、制御されるべき日常的な悪臭の多くに関して優れた吸収/吸着特性を有することが今や見出され、これは炭酸カルシウムが健康に有害な影響を及ぼさない一般的で、容易に入手できる材料であるという事実に鑑みて特に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0510619号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0959846号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0811387号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0963186号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0912149号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2258408号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明によれば、臭気を制御するための新規な方法が、表面反応炭酸カルシウムを臭気物質と接触させることによって提供され、表面反応炭酸カルシウムは、天然の重質炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部供給源から供給される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】いくつかの既知の吸収/吸着剤および本発明による表面反応炭酸カルシウム粉末を用いたトリエチルアミンの吸収/吸着試験の結果を示す。
図2】いくつかの既知の吸収/吸着剤および本発明による表面反応炭酸カルシウム顆粒を用いたジエチルアミンおよびトリエチルアミンの吸収/吸着試験の結果を示す。
図3】いくつかの既知の吸収/吸着剤および本発明による表面反応炭酸カルシウム顆粒を用いたブタン酸、3−メチルブタン酸およびヘキサン酸の吸収/吸着試験の結果を示す。
図4】いくつかの既知の吸収/吸着剤および本発明による表面反応炭酸カルシウム粉末および顆粒を用いたブタン酸の吸収/吸着試験の結果を示す。
図5】いくつかの既知の吸収/吸着剤および表面反応炭酸カルシウム粉末を比表面積に応じて用いたブタン酸の吸収/吸着試験の結果を示す。
図6】表面反応炭酸カルシウム有りおよび無しのおむつにおける尿の匂い強度評価試験の結果を示す。
図7】表面反応炭酸カルシウム有りおよび無しのおむつにおける尿の快不快評価試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
表面処理される炭酸カルシウムは、天然の重質炭酸カルシウム(GCC)または合成、即ち、沈降炭酸カルシウム(PCC)であってもよい。
【0019】
天然の重質炭酸カルシウムは、好ましくは、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石およびそれらの混合物を含む群から選択される鉱物を含む炭酸カルシウムから選択される。沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライトまたはカルサイト鉱物結晶形態またはそれらの混合物を有する沈降炭酸カルシウムを含む群から選択される。
【0020】
好ましい実施形態では、天然炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムは、1つ以上の酸および二酸化炭素で処理する前に粉砕される。粉砕工程は、当業者に知られている粉砕ミルのような任意の従来の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0021】
調製のための好ましい方法では、天然炭酸カルシウムおよび合成の炭酸カルシウムは、粉砕によるように細かく分割されているかまたはされていないかどうかにかかわらず、水中に懸濁される。好ましくは、スラリーは、スラリーの重量に基づいて1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲の天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムの含有率を有する。
【0022】
次の工程では、本発明の文脈においてブレンステッド酸、即ち、Hイオン供与体である酸を、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に添加する。好ましくは、酸は25℃で2.5以下のpKを有する。25℃におけるpKが0以下である場合、酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、またはそれらの混合物から選択される。25℃におけるpKが0から2.5である場合、酸は好ましくはHSO、MHSO(Mはナトリウムおよびカリウム、リチウムまたは他の第I族金属を含む群から選択されるアルカリ金属イオンである)、HPO、シュウ酸またはそれらの混合物である。
【0023】
1種以上の酸は、濃縮溶液またはより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムに対する酸のモル比は、0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0024】
代替として、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムを懸濁する前に酸を水に添加することも可能である。
【0025】
次の工程では、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムは二酸化炭素で処理される。天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムの酸処理に硫酸または塩酸等の強酸を使用すると、必要なモル濃度を達成するのに十分な量で二酸化炭素が自動的に形成される。代替的または付加的に、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。
【0026】
酸処理および二酸化炭素による処理を同時に行うことができ、これは強酸を用いる場合に当てはまる。例えば、0から2.5の範囲のpKを有する中程度の強酸を用いる酸処理を最初に行い、その後外部供給源から供給された二酸化炭素で処理することも可能である。
【0027】
好ましくは、懸濁液中の二酸化炭素ガスの濃度は、体積に関して、(懸濁液の体積):(COガスの体積)の比が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から1:5である。
【0028】
好ましい実施形態において、酸処理工程および/または二酸化炭素処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。
【0029】
酸処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定した水性懸濁液のpHは、当然、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、それにより6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面反応天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムが調製される。水性懸濁液を平衡に到達させる場合、pHは7を超える。6.0を超えるpHは、水性懸濁液の撹拌を十分な時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは1から5時間続ける場合には、塩基の添加なしで調整することができる。
【0030】
あるいは、平衡(7を超えるpHで生じる)に達する前に、二酸化炭素処理の後に塩基を添加することによって、水性懸濁液のpHを、6を超える値に上昇させることができる。任意の従来の塩基、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することができる。
【0031】
表面反応天然炭酸カルシウムの製造に関するさらなる詳細は、WO00/39222A1号、WO2004/083316A1号、WO2005/121257A2号、WO2009/074492A1号、EP2264108A1号、EP2264109A1号およびUS2004/0020410A1号に記載されており、これによりこれらの文献の内容は本出願に含まれる。
【0032】
本発明に有用な表面反応炭酸カルシウムは、重質天然炭酸カルシウムを少なくとも1つの水溶性酸およびCOガスと接触させることによっても調製することができ、ここで酸はその第1の利用可能な水素のイオン化、および水溶性カルシウム塩を形成することができるこの第1の利用可能な水素の損失上に形成される対応するアニオンに関連して、20℃で測定した場合に、2.5を超え、7以下のpKを有する。続いて、水素含有塩の場合には、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で測定した場合に、7を超えるpKを有し、その塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供される。
【0033】
この点において、例示的な酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸およびそれらの混合物であり、水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸一水素塩、シュウ酸塩、ケイ酸塩、それらの混合物およびそれらの水和物からなる群から選択される。
【0034】
これらの表面反応天然炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、EP2264108A1号およびEP2264109A1号に開示されており、これによりその内容は本出願に含まれる。
【0035】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。WO2009/074492号から詳細に理解されるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをHイオン、および水性媒体中で可溶化され、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成するための水性媒体中で水不溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと接触させることによって得られ、ここで表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された前記アニオンの不溶性の、少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0036】
前記可溶化カルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に天然に生成される可溶化カルシウムイオンに対する過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、前記Hイオンは、もっぱらアニオンに対して対イオンの形態で、即ち、酸または非カルシウム酸性塩の形のアニオンの添加を介して、いかなるさらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン発生源も存在しないで提供される。
【0037】
前記過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性中性カルシウム塩または酸性カルシウム塩の添加によって、または可溶性中性カルシウム塩または酸性カルシウム塩をその場で生成する酸または中性非カルシウム塩もしくは酸性非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0038】
前記Hイオンは、前記アニオンの酸もしくは酸性塩の添加、または前記過剰の可溶化カルシウムイオンの全部または一部を提供するのに同時に役立つ酸もしくは酸性塩の添加によって提供することができる。
【0039】
表面反応天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムの調製の好ましい実施形態では、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウムのようなアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、酸および/または二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を添加する前に、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0040】
あるいは、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応が既に始まっている一方で、天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムの水性懸濁液に、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分を添加することができる。少なくとも1つのケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下での表面反応天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムの製造についてのさらなる詳細は、WO2004/083316A1号に開示され、これによりこの文献の内容は本出願に含まれる。
【0041】
表面反応天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムは、懸濁液中に保存することができ、場合により分散剤によってさらに安定化される。当業者に既知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤はポリアクリル酸である。
【0042】
あるいは、上記の水性懸濁液を乾燥させることができる。
【0043】
本発明で使用される表面反応天然炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、乾燥粉末形態で提供される。
【0044】
さらに、好ましい実施形態において、表面反応天然炭酸カルシウムまたは合成炭酸カルシウムは、窒素およびISO 9277に従うBET法を用いて測定された、1m/gから200m/g、好ましくは40m/gから175m/g、より好ましくは50から145m/g、特に好ましくは60m/gから90m/g、最も好ましくは70m/gから80m/gの比表面積を有する。
【0045】
表面反応炭酸カルシウムは、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemで測定された、0.1から50μm、好ましくは0.5から25μm、より好ましくは0.8から20μm、特に1から10μm、例えば、4から7μmの体積メジアン粒径d50を有する。この方法および装置は当業者に知られており、充填剤および顔料の粒径を決定するために一般に使用される。
【0046】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、実験の節に記載された水銀圧入ポロシメトリー測定から計算して、0.150から1.300cm/g、好ましくは0.178から1.244cm/gの範囲内の粒子内侵入比細孔容積を有する。累積侵入データに見られる総細孔容積は、侵入データが214μmから約1−4μmまでの2つの領域に分離することができ、強く寄与するあらゆる凝集構造間の試料の粗い充填を示す。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填物が存在する。それらがまた粒子内の細孔を有する場合、この領域は二峰性を示す。これらの3つの領域の合計は、粉末の全細孔容積を与えるが、その分布の粗い細孔終端における粉末の元の試料の圧縮/沈降に強く依存する。
【0047】
累積侵入曲線の一次導関数を取ることによって、必然的に細孔遮蔽を含む同等のラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。微分曲線は、存在する場合には、粗い凝集体細孔構造領域、粒子間細孔領域および粒子内細孔領域を明瞭に示す。粒子内細孔直径範囲を知ることにより、単位質量当たりの比細孔容積として、内部細孔の所望の比細孔容積のみを供給するために、全細孔容積から残余の粒子間および凝集体間細孔容積を差し引くことが可能である。勿論、同じ減算の原理が、他の細孔径の関心領域のいずれかを単離するために当てはまる。
【0048】
表面反応炭酸カルシウムの細孔径は、水銀ポロシメトリー測定によって決定される好ましくは10から100nmの範囲、より好ましくは20から80nmの間の範囲、特に30から70nmの範囲、例えば、50nmである。
【0049】
表面反応炭酸カルシウムは、粉末および/または顆粒の形態であってもよい。適切であれば、それは懸濁液の形態であってもゲルの一部であってもよい。それは粉末および/または顆粒の形態であることが特に好ましい。
【0050】
顆粒は、溶融、乾式または湿式造粒法ならびにローラー圧縮から選択される一般的な造粒法によって調製することができる。
【0051】
表面反応炭酸カルシウムを含む顆粒の製造のための特に好ましい方法は、未公開の欧州特許出願第14170578号に記載されている。この湿式造粒法によれば、表面反応炭酸カルシウム粒子の細孔は、最初に1つ以上の造粒液で飽和され、その後に1つ以上のバインダーが添加される。
【0052】
この点、液体は一般に造粒の分野で一般的に用いられている任意のものであればよく、好ましくは水であり、液体は生物に特異的な作用を有し、特異的な反応を引き起こす有効成分として作用しない。
【0053】
液体飽和は、乾燥したまたは完全に飽和していない表面反応炭酸カルシウムに液体を加えることによって達成することができ、または表面反応炭酸カルシウムが懸濁液またはフィルターケーキとして提供される場合、それは過剰の液体を除去することによっても達成することができる。これは、当業者に既知の技術によって熱的または機械的に行うことができる。粒子は、同じ粒子内細孔容積全体が液体で満たされている場合、液体で飽和されたと定義される。
【0054】
使用され得るバインダーは、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンのような造粒技術において周知のものであり、ある条件下で崩壊性を有してもよい。
【0055】
1つ以上のバインダーは、表面反応炭酸カルシウムの重量を基準として0.5から50重量%の量で、乾燥形態で、またはエマルション、分散液または溶液の形態で液体飽和表面反応炭酸カルシウムに添加される。それは、液体飽和表面反応炭酸カルシウムと同時にまたは後に攪拌装置に添加することができ、そこでは液体飽和表面反応炭酸カルシウムおよび1つ以上のバインダーを組み合わせた後で、バインダー、表面反応炭酸カルシウムおよび/または液体飽和炭酸カルシウムの量を調整する必要がある可能性がある。
【0056】
それぞれ所望の顆粒サイズまたは顆粒サイズ分布が達成されるとすぐに、混合物は適切な粘稠度を有し、攪拌を続けることができる。
【0057】
造粒装置は、造粒目的で従来から使用されているものから選択することができる。従って、攪拌装置は、Eirichミキサー、流動床乾燥機/造粒機/ミキサー、レディゲミキサー等を含む群から選択することができる。
【0058】
造粒プロセスが完了した後、得られた顆粒から液体を分離することによって液体が除去される。
【0059】
得られた顆粒は、広いサイズ範囲を有してもよく、異なるサイズの画分はふるい分けのような従来の手段によって分離することができる。
【0060】
一般に、顆粒は、0.1から6mm、好ましくは0.2から5mm、より好ましくは0.3から4mmの体積メジアン顆粒サイズを有することができる。顆粒の使用目的に応じて、ふるい分画によって決定された0.6から1mmまたは1から2mmの粒径と同様に、0.3から0.6mmまたは1mmから4mmのサイズ分画が得られる。
【0061】
表面反応炭酸カルシウムを含む顆粒は、窒素およびISO 9277に従うBET法を用いて測定された、1から175m/g、好ましくは2から145m/g、より好ましくは10から100m/g、特に好ましくは20から70m/g、最も好ましくは30から40m/gの比表面積を有することができる。
【0062】
本発明による方法によって得られた顆粒は、バインダーを用いずに、または表面反応炭酸カルシウムを事前に液体飽和しない湿式顆粒化で提供された顆粒よりも安定であることが分かった。
【0063】
本発明による「臭気」は、一般に非常に低濃度でヒトまたは他の動物が嗅覚によって知覚する、1つ以上の揮発した化合物であると一般に定義される。従って、「臭気物質」は、匂いまたは臭気を有する、即ち、鼻の上部の嗅覚系に輸送されるほど十分に揮発性である化合物である。
【0064】
本発明に従って制御される好ましい臭気は、不快な感覚、即ち、悪臭を引き起こす臭気であるが、これに限定されない。
【0065】
そのような臭気は、好ましくは、ヒトおよび動物の体液に含まれる臭気物質、ならびに月経血、血液、血漿、薄い膿液等の分泌物、膣分泌物、粘液、乳、尿、糞便、嘔吐および発汗、ヒトまたは動物の組織等の腐敗に由来する臭気物質、乳製品、肉および魚等の食品、ドリアン果実のような果物、織物、家具、車のインテリア、壁材を含む群から選択される臭気物質に由来し得る。
【0066】
具体的には、これらの臭気物質は、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ピリジン、インドール、3−メチルインドール等のアミン、プロピオン酸、ブタン酸、3−メチルブタン酸、2−メチルプロパン酸、ヘキサン酸等のカルボン酸、チオール、例えば、メタンチオール等の硫黄有機化合物、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン等のリン有機化合物、それらの誘導体およびそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0067】
従って、おむつ、パッド、パンティライナー、生理用ナプキン、タンポン等の女性用衛生製品、失禁用製品、消臭剤配合物、ペーパータオル、トイレットペーパーおよび化粧紙、ワイプおよび医療製品のような不織製品、包装材料、好ましくはプラスチック、紙または板の梱包材料、例えば、包装紙、包装板、単層および多層構造、透過性バッグ、吸収/吸着パッド、接着剤層を有するまたは有さない、表面反応炭酸カルシウムで充填および/または被覆することができる紙製品、好ましくは紙シート、動物用リター、建設および建築材料、堆肥および有機肥料の製剤において表面反応炭酸カルシウムを使用することは、臭気の制御のための本発明の方法の有利な実施形態である。
【0068】
従って、表面反応炭酸カルシウムを含有し、好ましくは、おむつ、パッド、パンティライナー、生理用ナプキン、タンポン等の女性用衛生用品、失禁用製品、消臭剤配合物、ペーパータオル、トイレットペーパーおよび化粧紙、ワイプおよび医療製品のような不織製品、包装紙、包装板等の包装材料、単層および多層構造、透過性バッグ、吸収/吸着パッド、接着剤層を有するまたは有さない、表面反応炭酸カルシウムで充填および/または被覆することができる紙製品、好ましくは紙シート、動物用リター、建設および建築材料、堆肥および有機肥料の製剤から選択される、臭気を抑制する製品を提供することが本発明のさらなる態様である。
【0069】
この点で、表面反応炭酸カルシウムを、多層系において別個の層の形態で、または既存の、例えば、液体吸収層中の添加剤として、例えば、包装紙等の、例えば、紙またはプラスチック中の充填剤として、もしくはコーティングとして、バッグの形態で、または臭気物質および/またはその揮発性相と表面反応炭酸カルシウムとの接触を可能にする任意の他の形態で任意の周知の製品に含めることが一般に可能である。
【0070】
例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷によって、紙のような材料上に表面反応炭酸カルシウムを印刷することも有利であり得る。
【0071】
以下の図、実施例および試験は本発明を例示するものであるが、決して本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0072】
1.測定方法
以下の測定方法を用いて、実施例および請求項に記載のパラメーターを評価した。
【0073】
材料のBET比表面積(SSA)
BET比表面積は、250℃で30分間加熱して試料を調整した後に窒素を用いたISO 9277に従うBET法により測定した。このような測定の前に、試料を濾過し、すすぎ、オーブン中110℃で少なくとも12時間乾燥した。
【0074】
粒状材料の粒度分布(<Xの直径を有する体積%の粒子)、d50値(体積メジアン粒径)およびd98値:
体積メジアン粒径d50値は、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを用いて評価した。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使用して測定したd50値またはd98値は、それぞれ、粒子の50体積%または98体積%がこの値より小さい直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、粒子屈折率1.57、吸収指数0.005を使いMie理論を用いて分析する。
【0075】
重量メジアン粒径は沈降法によって決定され、これは、重力場における沈降挙動の分析である。測定はMicromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標) 5100で行う。この方法および装置は当業者に知られており、一般に使用され、充填剤および顔料の粒径を決定する。測定は0.1重量%Naの水溶液中で行う。高速攪拌機を用いて試料を分散し、超音速処理した。
【0076】
この方法および装置は当業者に知られており、一般に使用され、充填剤および顔料の粒径を決定する。
【0077】
多孔度/細孔容積
多孔度または細孔容積は、ラプラススロート直径0.004μm(~nm)に等しい水銀414MPa(60000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore IV 9500水銀ポロシメータを使用して測定する。 各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。分析のために、試料材料を5mlチャンバー粉末ペネトロメーターに密封する。 データは、ソフトウェアPore−Comp(Gane、PAC、Kettle、J.P.、Matthews、G.P.およびRidgway、C.J.、「Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper−Coating Formulations」、Industrial and Engineering Chemistry Research、35(5)、1996、p1753−1764)を使用して、水銀圧縮、ペネトロメーター拡張、および試料材料の圧縮のために補正される。
【0078】
2.材料および装置
2.1.装置
−収着管(Sigma Aldrich、ステンレス鋼、1/4in×3 1/2in)
− Tenax(R) TA(Sigma Aldrich、ステンレス鋼、1/4in×3 1/2in)を有する熱脱着管
− ポケットポンプ210−1000シリーズ(SKC Inc.、84、ペンシルベニア州、米国)
− TD−GC−MS(昇温脱離ガスクロマトグラフィー質量分析計):
TD TurboMatrix Perkin Elmer
温度モード:管300℃、バルブ195℃、トランスファー200℃、トラップ低−20℃、トラップ高300℃
タイミング:脱着10分、パージ1.0分、トラップ保持5.0分
空気圧設定:カラム95kPa、出口スプリット50ml/分、入口スプリット40ml/分、脱着30mL/分
GC方法AutoSystem XL Perkin Elmer
カラム:Optima 5 Accent 1.0μm、60μm*0.32mm、Macherey−Nagel
オーブンの温度:110℃で15分間(アミン)
オーブンの温度:130℃で10分間(酸)
MSターボ質量Perkin Elmer
溶媒遅延0.0分
フルスキャン25から350m/z(質量/電荷)(EI+)
【0079】
2.2.材料
吸収剤
− Millicarb OG(オムヤAG;天然重質炭酸カルシウム;d50=3mm)
− カオリンクレー(Sigma−Aldrich;CAS 1332−58−7)
− 海砂(シリカ)(CAS 60676−86−0)
− バーミキュライト(BET比表面積:4.3m/g)
− 珪藻土(BET比表面積:5.6m/g)
− 活性炭(BET比表面積:1400m/g)
【0080】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末1(d50=4.3μm、d98=8.6μm、SSA=51.6m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて20重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液8リットルを調製することによりSRCC1を得た。スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸と0.4%の硫酸アルミニウムの16水和物とを含む水溶液1.22kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0081】
表面反応炭酸カルシウム粉末1の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.26μmの細孔直径範囲に対し)0.644g/cmである。
【0082】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末2(d50=3.7μm、d98=8.1μm、SSA=72.7m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの重質大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて20重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液8リットルを調製することによりSRCC2を得た。
【0083】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液1.2kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液添加の開始と同時に、10重量%のケイ酸ナトリウムを含有する水溶液0.92kgを前記懸濁液に14分間かけて添加した。2つの溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0084】
表面反応炭酸カルシウム粉末2の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.14μmの細孔直径範囲に対し)0.491g/cmである。
【0085】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末3(d50=3.5μm、d98=7.6μm、SSA=92.3m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて20重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液8リットルを調製することによりSRCC3を得た。
【0086】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液1.2kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液添加開始2分後に、25重量%のクエン酸を含む水溶液0.37kgを前記懸濁液に0.5分間かけて添加した。2つの溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0087】
表面反応炭酸カルシウム粉末3の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.09μmの細孔直径範囲に対し)0.258g/cmである。
【0088】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末4(d50=5.5μm、d98=10.6μm、SSA=141.5m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて16重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによりSRCC4を得た。
【0089】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液3kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液添加開始2分後に、25重量%のクエン酸を含む水溶液0.36kgを前記懸濁液に0.5分間かけて添加した。2つの溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0090】
表面反応炭酸カルシウム粉末4の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.33μmの細孔直径範囲に対し)1.025g/cmである。
【0091】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末5(d50=5.1μm、d98=9.8μm、SSA=51.4m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによりSRCC5を得た。
【0092】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液1.7kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0093】
表面反応炭酸カルシウム粉末5の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.51μmの細孔直径範囲に対し)1.154g/cmである。
【0094】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末6(d50=5.0μm、d98=9.6μm、SSA=62.2m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによりSRCC6を得た。
【0095】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液1.7kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液添加開始4分後に、クエン酸三ナトリウムを含む水溶液41gを別の流れでスラリーに0.5分間かけて添加した。溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0096】
表面反応炭酸カルシウム粉末6の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.41μmの細孔直径範囲に対し)1.086g/cmである。
【0097】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末7(d50=5.1μm、d98=9.8μm、SSA=77.1m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによりSRCC7を得た。
【0098】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液1.7kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液添加の開始と同時に、7.5重量%ケイ酸ナトリウムを含有する水溶液0.88kgを前記懸濁液に10分間かけて添加した。2つの溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0099】
表面反応炭酸カルシウム粉末7の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.41μmの細孔直径範囲に対し)1.108g/cmである。
【0100】
− 表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末8(d50=4.4μm、d98=8.6μm、SSA=39.9m−1
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Hustadmarmor ASからの、粉砕処理で添加されたポリアクリレート分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによりSRCC8を得た。
【0101】
スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液0.83kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0102】
表面反応炭酸カルシウム粉末8の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.17μmの細孔直径範囲に対し)0.412g/cmである。
【0103】
− 表面反応炭酸カルシウム顆粒1
造粒のための出発材料として、以下の表面反応炭酸カルシウム粉末SRCC9(d50=6.6μm、d98=13.7μm、SSA=59.9m−1)を調製した:
【0104】
沈降によって決定した1.3μmの質量ベースのメジアン粒径を有するオムヤ SAS Orgonからの、粉砕処理で添加された分散剤を含有する湿式粉砕石灰石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液350リットルを調製した。
【0105】
スラリーを6.2m/秒の速度で混合しながら、11.2kgのリン酸を、30重量%のリン酸を含む水溶液の形態で、70℃の温度で20分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸を添加した後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、ジェット乾燥機を用いて乾燥させた。
【0106】
この表面反応炭酸カルシウムの粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.51μmの細孔直径範囲に対し)0.939g/cmである。
【0107】
この表面反応炭酸カルシウム400gをレディゲミキサー(Model L5、5リットル、Gebr. Lodige Maschinenbau GmbH、パーダーボルン、ドイツ)に添加した。続いて、3重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Sigma Aldrich(平均モル質量90000g/モル;CAS No. 9004−32−4)を含む水溶液400gを、スプレーボトルを用いて、混合要素(速度は500rpmから最高速度(999rpm)との間、主に700から999rpmの間で変化した)およびカッターの両方で、材料が少し塊状に見えるようになるまで粉末を混合しながら添加した。この時点で試料はペーストに変わった。乾燥した表面反応炭酸カルシウム100gを添加してこれを再び精留した。個々の顆粒が形成されるまで数分間試料を混合した。その後、試料を取り出し、90℃で12時間乾燥させた。
【0108】
− 表面反応炭酸カルシウム顆粒2および3
530gのSRCC9粉末を水で飽和させて固形分61重量%とし、レディゲミキサーに加えた。続いて、26gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Sigma Aldrich(平均モル質量90000g/モル;CAS No. 9004−32−4)を添加し、乾燥させ、その組み合わせを数分間混合して適切な混合を確実にした。続いて、混合要素(500rpmから最大速度(999rpm)の間、主に700から999rpmの間で変化した)およびカッターの両方で材料が少し塊状に見えるようになるまで粉末を混合しながら、時間をかけて水道水を添加した。この時点で、もう少し水を加えると、試料はペーストに変わった。乾燥した表面反応炭酸カルシウム100gを添加してこれを再び精留した。個々の顆粒が形成されるまで数分間試料を混合した。この試料の最終固形分は65重量%であった。その後、試料を取り出し、90℃で12時間乾燥させた。
【0109】
乾燥した試料をレッチェふるい上で別々のサイズ分画、即ち、<0.3mm、0.3から0.6mmの間、0.6mmから1mmの間、および1mmから2mmの間にふるい分けた。
【0110】
さらなる試験のために、以下の画分を使用した。ここで、xは顆粒の粒径である。
表面反応炭酸カルシウム顆粒2:0.6mm<x<1mm
表面反応炭酸カルシウム顆粒3:0.3mm<x<0.6mm
【0111】
臭気物質
− ジエチルアミン(Sigma Aldrich、CAS 109−89−7)
− トリエチルアミン(Sigma Aldrich、CAS 121−44−8)
− ブタン酸(Sigma Aldrich、CAS 107−92−6)
− 3−メチルブタン酸(Sigma Aldrich、CAS 503−74−25)
− ヘキサン酸(Sigma Aldrich、CAS 142−62−1)
【0112】
3.吸収/吸着試験
3.1.表面反応炭酸カルシウム粉末
1500mg/lのトリエチルアミンの保存水溶液を調製した。
【0113】
吸収/吸着試験を実施するために、吸収/吸着管を以下のもので充填した:
実施例1:吸収/吸着剤なし
実施例2:海砂1gおよびMillicarb OG 0.5gの混合物0.4g
実施例3から6:それぞれ、海砂1gおよびSRCC粉末1から4 0.5gの混合物0.4g
【0114】
吸収/吸着管の前に、調製したトリエチルアミンベースの原液10μlで満たしたバイアルを取り付け、吸収/吸着管の後にTenax TAを有する熱脱着管を取り付けた。
【0115】
5分間、室温(23℃)で80ml/分の速度でポケットポンプ(SKC)を用いて、両方の管を介して臭気物質充填バイアルから空気を吸引した。続いて、TD−GC−MSによってTenax TA管内の臭気物質含有率を分析した。
【0116】
検出されたピークの下の面積は、臭気物質濃度に比例する。従って、異なる材料による臭気物質の吸収/吸着は、ピーク面積を用いて比較することができる。
【0117】
試験を数回繰り返した。それぞれの試料の結果として得られる相対的な吸収/吸着容量を反映させて得られた平均値を図1に要約する。ここで、100%はブランクの試料(実施例1)について決定された最大値を指す。
【0118】
これらの結果から明らかにわかるように、従来の天然重質炭酸カルシウム(Millicarb OG)ではトリエチルアミンの非常に乏しい吸収/吸着しかない。しかし、この結果は、表面反応炭酸カルシウムの粉末を用いるとかなり異なって見え、吸収/吸着のレベルがはるかに高いことを示している。
【0119】
これらの知見に基づいて、さらなる臭気物質および表面反応炭酸カルシウム顆粒を用いてさらなる実験を行った。
【0120】
3.2.表面反応炭酸カルシウム顆粒
それぞれ所定の濃度を有する以下の保存水溶液を調製した:
ジエチルアミン:3000mg/l
トリエチルアミン:1500mg/l
ブタン酸:1000mg/l
3−メチルブタン酸:1000mg/l
ヘキサン酸:1600mg/l
【0121】
吸収/吸着試験を実施するために、吸収/吸着管を以下のもので充填した:
実施例7:吸収/吸着剤なし
実施例8:海砂1gおよびMillicarb OG 0.5gの混合物0.4g
実施例9:海砂1gおよびカオリンクレー0.5gの混合物0.4g
実施例10:0.4gの表面反応炭酸カルシウム顆粒1
【0122】
吸収/吸着管の前に、10μlのそれぞれの保存水溶液で満たされたバイアルを取り付けし、吸収/吸着管の後ろにTenax TAを有する熱脱着管を取り付けた。
【0123】
5分間、室温(23℃)で80ml/分の速度でポケットポンプ(SKC)を用いて、両方の管を介して臭気物質充填バイアルから空気を吸引した。続いて、TD−GC−MSを用いてTenax TA管内の臭気物質含有率を分析した。
【0124】
検出されたピークの下の面積は、臭気物質濃度に比例する。従って、異なる材料による臭気物質の吸収/吸着は、ピーク面積を用いて比較することができる。
【0125】
試験を数回繰り返した。それぞれの試料の結果として得られる相対的な吸収容量を反映させて得られた平均値を図2および3に要約する。100%はブランクの試料(実施例7)について決定された最大値を指す。
【0126】
これらの結果から明らかに観察できるように、従来の天然重質炭酸カルシウム(Millicarb OG)ではジエチルアミンおよびトリエチルアミンの非常に乏しい吸収/吸着しかない。これに反して、これらの臭気物質は表面反応炭酸カルシウム顆粒により基本的に完全に吸収/吸着される。
【0127】
カオリンクレーに非常によく吸着されているブタン酸、3−メチルブタン酸およびヘキサン酸に関しては、これらの結果は表面反応炭酸カルシウム顆粒を使用することによってさらに改善することができる。
【0128】
さらに、例えば、 天然重質炭酸カルシウムまたはカオリンクレーに反して、表面反応炭酸カルシウム顆粒1は、異なる化学種の臭気物質を同様に良好に吸収/吸着することができる。
【0129】
これらの定量結果とは別に、嗅覚試験を行ったところ、ブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸を吸収または吸着した表面反応炭酸カルシウム顆粒の試料は全く匂いがないのに対し、カオリンクレーの試料は不快な臭気を有していたことが判明した。
【0130】
この知見は、さらに以下に記載されるさらなる嗅覚試験に至った。
【0131】
3.3.さらなるブタン酸の吸収/吸着試験
ブタン酸は食品分野で最も不快な臭気の1つであるため、この臭気物質についてさらに評価を行った。
【0132】
5重量%ブタン酸の保存水溶液を調製した。
【0133】
吸収/吸着試験を実施するために、吸収/吸着管を以下で充填した:
実施例11:吸収/吸着剤なし
実施例12:シリカゲル
実施例13:バーミキュライト
実施例14:珪藻土
実施例15:活性炭
実施例16:カオリンクレー
実施例17:Millicarb OG
実施例18から21:それぞれSRCC粉末5から8
実施例22+23:それぞれ表面反応炭酸カルシウム(SRCC)顆粒2および3
【0134】
0.2000gのガラス詰め物および0.8000gのそれぞれの吸収/吸着剤(顆粒を除く。顆粒は単独で使用した)を秤量してビーカーに入れた。均一な混合物が得られるまで、はさみで混合物を切断した。60mgの吸収剤/ガラス詰め物混合物、または48mgのSRCC顆粒2または3をそれぞれ吸収/吸着管に充填した。吸収/吸着管の前に、10μlのブタン酸保存水溶液を満たしたバイアルを取り付け、吸収/吸着管の後ろにTenax TAを有する熱脱着管を取り付けた。溶液を保存水溶液で満たした後、それを40℃の水浴中で加熱した。続いて、5分間、40℃で80ml/分の速度でポケットポンプ(SKC)を用いて、両方の管を介して臭気物質充填バイアルから空気を吸引した。続いて、TD−GC−MSによってTenax TA管内の臭気物質含有率を分析した。
【0135】
検出されたピークの下の面積は、臭気物質濃度に比例する。従って、異なる材料による臭気物質の吸収/吸着は、ピーク面積を用いて比較することができる。
【0136】
試験を数回繰り返した。それぞれの試料の結果として得られる相対的な吸収/吸着容量を反映させて得られた平均値を図4に要約する。ここで、100%はブランクの試料(実施例11)について決定された最大値を指す。
【0137】
図4からわかるように、SRCC粉末および顆粒のいずれか1つの吸収/吸着能力は、従来の天然重質炭酸カルシウムならびにバーミキュライト、珪藻土およびカオリンクレーよりも著しく良好である。
【0138】
シリカゲルおよび活性炭に関しては、表面反応炭酸カルシウム粉末は少なくとも同等の値を提供し、シリカゲルおよび活性炭はかなり高い比表面積を有し、表面積当たりの吸収/吸着能力はシリカゲルおよび活性炭のそれよりも著しく高い(図5参照)ことに留意しなければならない。
【0139】
4.嗅覚試験
以下の試験では、失禁製品における尿の匂いの比較によるヒトの感覚測定を行った。 この目的のために、本発明による表面反応炭酸カルシウムを含むおよび含まない製品を、臭い強度(強い臭気/無臭)および快不快評価(快適/不快)のパラメーターに関して比較した。
【0140】
4.1.測定方法
匂いは、いくつかの匂いのパラメーターによって記述することができる。これらのパラメーターの決定は、異なるガイドラインに記載されており、以下のものを使用した。
− 強度(VDI 3882;嗅覚;臭気強度の決定;技術的規則、出版日:1992−10;Beuth Verlag)
− 快不快の匂いの印象(VDI 3882およびISO 16000−28)
【0141】
匂いの測定は、12人の試験者および1人の監督者によって行われた。試験チームは、DIN EN 13725:2003[1]に従って訓練され、選択された。
【0142】
4.1.1.匂い強度
強度の評価は、VDI 3882に従って「知覚できない」(0)から「極端に強い」(6)までのカテゴリー尺度によって実行される。
【0143】
匂いの強度を評価するために、試験者は匂いの印象を表1に示す以下の用語に割り当てた。
【0144】
【表1】
【0145】
この点で、レベル1は、臭気検出閾値を超えた場合に割り当てられ、それが特定の匂いの質に明確に割り当てられていなくても、匂いが確認されたことを試験者が確信したことをそのことは意味する。
【0146】
続いて、試験者群のそれぞれの個々の評価の算術平均を計算した。
【0147】
4.1.2.快不快の匂いの印象
快不快評価は、匂いの印象が心地良いか不快な感覚かを説明する。快不快の匂いの印象を評価するために、以下の匂いの尺度を使用した。
【0148】
【表2】
【0149】
続いて、試験者群のそれぞれの個々の評価の算術平均を計算した。
【0150】
4.2.実験手順
4.2.1材料
以下の材料を使用した。
− 布オムツ2枚(100%綿;Alana;dm−drogerie markt GmbH + Co. KGから入手可能)
− Nalophan PET臭気試料バッグ(Odournet GmbHから入手可能)
− PureSniff装置(Odournet GmbHから入手可能)
− 20gの表面反応炭酸カルシウム(SRCC)粉末10(d50=6.1μm、d98=14.2μm、SSA=144.0m−1
【0151】
粒子の90w/w%が沈降によって決定した2μmより微細である質量ベースの粒度分布を有するオムヤ Avenza SPAからの、粉砕処理で添加された分散剤を含有する湿式粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて16重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で重質炭酸カルシウムの水性懸濁液350リットルを調製することによりSRCC10を得た。スラリーを混合しながら、30重量%のリン酸を含む水溶液104kgを70℃の温度で10分間かけて前記懸濁液に添加した。リン酸溶液の添加の開始2分後に、25重量%のクエン酸を含む水溶液12.5kgを前記懸濁液に0.5分間かけて添加した。
【0152】
2つの溶液の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器から取り出し、乾燥させた。
【0153】
表面反応炭酸カルシウム粉末10の粒子内侵入比細孔容積は、(0.004から0.33μmの細孔直径範囲に対し)0.856g/cmである。
【0154】
− 3人の発端者の尿(最初の朝の尿を含む)の混合物
【0155】
4.2.2試料の準備
おむつを1回折り畳み、20gの表面反応炭酸カルシウムをその上に注いだ。おむつを再び折り畳んで、表面反応炭酸カルシウムを覆った。第2のおむつを、同様に表面反応炭酸カルシウムを含まずに折り畳んだ。
【0156】
排尿をシミュレートするために、おむつをそれぞれ60Lの容積を有するNalophanバッグに入れ、10mlの尿をおむつのそれぞれに出した。2時間(10ml)後および4時間(5ml)後にさらにシミュレーションされた排尿を行った。バッグを空気で満たし、36℃の気候室に貯蔵した。1分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間および8時間後に匂いの試料を採取した。
【0157】
4.2.3試料評価
試料を採取した後、試料をPureSniff装置に移して、装置の出口(ノーズマスク)で一定で高度に反復可能な臭気試料の体積流量を生成した。このようにして、各嗅覚試験者は、一定の提示時間にわたって標準化された体積流量を有する同一の試料を受け取り、臭気評価のための反復可能な条件を保証する。任意の時点で、各試験者によって各試料が無作為な順序で2回評価された。このように、合計で各試料を、試料採取の任意の時点で(N=)24回評価した。
【0158】
4.3.結果
強度評価の全平均値を表2に要約し、図6に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
快不快評価の全平均値を表3に要約し、図7に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
これらの結果は、尿を含むおむつにおいて表面反応炭酸カルシウムを使用することにより、匂いの強度の低下をもたらすだけでなく、快不快の印象の改善をもたらすことを非常に明確に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7