(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
本体と、光ファイバの被覆を除去する被覆除去刃を有する一対の刃部材とを備え、前記刃部材は、未使用の部位を使って前記被覆を除去するために、前記本体に対してスライド可能に設けられていることを特徴とする被覆除去具が明らかとなる。このような被覆除去具によれば、被覆除去具の寿命を延ばすことができる。
【0012】
前記本体は、基部と、基部から延出した一対のアーム部とを有し、それぞれの前記アーム部は、前記刃部材を装着した操作部を備え、一対の前記操作部を互いに近接させると一対の被覆除去刃が前記光ファイバを挟み込むように構成されており、それぞれの前記操作部の対向面には、前記光ファイバの位置を誘導する誘導部が設けられていることが望ましい。これにより、光ファイバの位置がずれていても、光ファイバの位置を所定の位置に誘導できる。
【0013】
前記誘導部は、一対の前記操作部を互いに近接させると前記光ファイバを所定の位置に誘導する誘導面を有しており、一対の前記操作部のそれぞれに設けられた前記誘導面は、互いに異なる位置に設けられていることが望ましい。これにより、光ファイバの初期位置が大きくずれていても、光ファイバの位置を所定の位置に誘導できる。
【0014】
一対の前記操作部のそれぞれに設けられた前記誘導面は、前記光ファイバの端部の側ほど、前記基部から離れた位置に設けられていることが望ましい。これにより、光ファイバの端部が反るように曲げグセがついていても、光ファイバの位置を所定の位置に誘導できる。
【0015】
一対の前記刃部材を近接させて接触させたとき、一対の前記被覆除去刃の間に隙間が形成されることが望ましい。これにより、裸光ファイバの損傷を抑制できる。
【0016】
一方の前記被覆除去刃には上下の両縁に突出部が形成されており、他方の前記被覆除去刃には突出部が形成されていないことが望ましい。これにより、寸法の公差の管理が容易になる。
【0017】
前記本体は、前記光ファイバの長さを測るためのゲージ部を有することが望ましい。これにより、被覆除去具の所定の位置に光ファイバをセットすることができる。
【0018】
それぞれの前記刃部材は、前記被覆除去刃を両刃に備えており、未使用の前記被覆除去刃を使うために、一対の前記刃部材を入れ替えて前記本体に装着可能であることが望ましい。これにより、被覆除去具の寿命を延ばすことができる。
【0019】
一対の前記刃部材は、共通の部材であることが望ましい。これにより、刃部材の製造コストを抑制できる。
【0020】
前記刃部材は、係合部を有し、前記本体は、複数の係止部を有し、複数の係止部のいずれかに前記係合部を係止させることによって、前記刃部材の位置を段階的に変更可能であることが望ましい。これにより、刃部材を所定の位置に固定した状態で刃部材を使用できるため、被覆除去刃の寿命を予想しやすくなる。
【0021】
前記刃部材の材質は、前記本体の材質と異なることが望ましい。これにより、被覆の除去に適した材質で被覆除去刃を構成できる。
【0022】
前記本体は、前記ファイバを保持するホルダをスライドさせるスライド部と、所定の終了位置で前記ホルダのスライドを停止させる終了位置ストッパとを有することが望ましい。これにより、所定の位置で被覆の除去を終了させることができる。
【0023】
前記本体は、所定の開始位置に前記ホルダを位置合わせする開始位置ストッパを有し、前記開始位置から前記終了位置までの間の前記ホルダのスライド距離は、前記開始位置に前記ホルダを位置合わせしたときに前記被覆除去刃から突出する前記光ファイバの端部の長さよりも短く設定されていることが望ましい。これにより、光ファイバの端部に被覆を残存させることができる。
【0024】
前記終了位置まで前記ホルダをスライドさせたとき、前記光ファイバの端部には、前記被覆除去刃に未到達で除去されない被覆が残存することが望ましい。これにより、作業者が光ファイバの端部を視認しやすくなる。
【0025】
前記本体は、基部と、基部から延出した一対のアーム部とを有し、前記基部は、所定の開始位置にホルダを位置合わせする開始位置ストッパを有し、前記アーム部には、前記開始位置ストッパで前記ホルダを位置合わせしたときに前記アーム部越しに前記ホルダを確認するための貫通穴が形成されていることが望ましい。これにより、ホルダと開始位置ストッパとの接触状態の確認が容易になる。
【0026】
前記本体は、下側ほど幅の狭まる形状のV溝部と、前記V溝部の底部において一定幅の形状のスリット部とを有するファイバガイド部を備えることが望ましい。これにより、スリット部に光ファイバを差し入れる作業が容易になる。
【0027】
本体と、被覆除去刃を有する一対の刃部材とを備えた被覆除去具を用意すること、前記被覆除去刃を使用して、光ファイバの被覆を除去すること、及び、前記光ファイバの被覆を除去した後、前記本体に対して前記刃部材をスライドさせ、前記被覆除去刃の未使用の部位を使って別の光ファイバの被覆を除去することを行う被覆除去方法が明らかとなる。このような被覆除去方法によれば、被覆除去具の寿命を延ばすことができる。
【0028】
===第1実施形態===
図9A及び
図9Bは、本実施形態の被覆除去の概略説明図である。以下の説明では、光ファイバ1の光軸に平行な方向を「前後方向」とし、光ファイバ1の端部の側を「前」とし、逆側を「後」とする。
【0029】
光ファイバ1は、裸光ファイバ1Aと、内側被覆層1Bと、外側被覆層1Cとを有する。裸光ファイバ1Aは、コアとクラッドから構成された部位である。裸光ファイバ1Aは、従来公知の各種の光ファイバ1(例えばシングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバ、偏波保持光ファイバ、ホーリーファイバなど)を適用することができる。裸光ファイバ1Aの外径D1は125μmが一般的であるが、これに限定されるものではない。
内側被覆層1Bは、裸光ファイバ1Aの外周を被覆する被覆層である。内側被覆層1Bの外径D2は250μmが一般的であるが、これに限定されるものではない。内側被覆層1Bは、例えばUV樹脂により構成されている。外側被覆層1Cは、内側被覆層1Bの更に外周を被覆する被覆層である。外側被覆層1Cの外径D3は例えば500μmや900μm等であるが、これに限定されるものではない。外側被覆層1Cは、例えばUV樹脂により構成されている。
【0030】
本実施形態の被覆除去具100は、一対の第1被覆除去刃41と、一対の第2被覆除去刃34とを有する。第1被覆除去刃41は、内側被覆層1Bを除去するための刃である。言い換えると、第1被覆除去刃41は、裸光ファイバ1Aよりも外側の被覆を除去するための刃である。また、第2被覆除去刃34は、外側被覆層1Cを除去するための刃である。一対の第1被覆除去刃41は、一対の第2被覆除去刃34よりも光ファイバ1の端部の側に配置されている。
【0031】
光ファイバ1の被覆を除去するとき、一対の第1被覆除去刃41及び一対の第2被覆除去刃34の間に光ファイバ1が挟み込まれた状態で(
図9A参照)、光ファイバ1が引き抜かれることになる(
図9B参照)。これにより、光ファイバ1は、一対の第1被覆除去刃41によって内側被覆層1B(及び外側被覆層1C)を除去されるとともに、一対の第2被覆除去刃34によって外側被覆層1Cを除去されることによって、一度の除去工程で内側被覆層1Bと外側被覆層1Cが段付きに除去されることになる。
【0032】
図9Cは、被覆除去後の光ファイバ1の一例の説明図である。被覆除去後の光ファイバ1は、最端部において裸光ファイバ1Aが露出しており、その後側で内側被覆層1Bが露出しており、その外側では被覆の除去されていない部位が配置されている。後述する被覆除去具100は、
図9Cに示すように光ファイバ1の被覆を除去してもよい。但し、裸光ファイバ1Aは細くて透明なため、
図9Cに示す光ファイバ1の先端(裸光ファイバ1Aの先端)を作業者が視認し難いという問題がある。
【0033】
図9Dは、本実施形態の被覆除去具100による被覆除去後の光ファイバ1の説明図である。本実施形態の被覆除去具100は、
図9Dに示すように、光ファイバ1の最端部には、第1被覆除去刃41に未到達で除去されなかった被覆(内側被覆層1B及び外側被覆層1C)が残存する。これにより、裸光ファイバ1Aと比べて太い被覆が光ファイバ1の端部に残るため、作業者は、光ファイバ1の端部を視認し易くなる。
【0034】
ところで、裸光ファイバ1Aは、例えばガラス製であり、UV樹脂で構成された内側被覆層1B及び外側被覆層1Cと比べると、硬い材料で構成されている。このため、第1被覆除去刃41は、第2被覆除去刃34と比べると摩耗しやすく、同じ部位で繰り返し被覆の除去が行われると摩耗が早く進行してしまう。
そこで、本実施形態では、被覆除去具100の本体に対して第1被覆除去刃41をスライド可能に構成している。そして、第1被覆除去刃41をスライドさせて、第1被覆除去刃41の未使用の部位を使って光ファイバ1の被覆を除去することにより、第1被覆除去刃41の使用可能回数を増やし、被覆除去具100の寿命を延ばすことを可能にしている。以下、本実施形態の被覆除去具100の具体的な構成について説明する。
【0035】
図1Aは、本実施形態の被覆除去具100の斜視図である。
図1Bは、ホルダ5と刃部材40を外した状態の被覆除去具100の斜視図である。
図2Aは、ホルダ5を外した状態の被覆除去具100の上面図及び側面図である。
図2Bは、ホルダ5を取り付けた状態の被覆除去具100の上面図及び側面図である。
図3は、ホルダ5を外した状態の被覆除去具100を別の角度から見た斜視図である。
【0036】
以下の説明では、ホルダ5を載置する載置面12Aに垂直な方向を「上下方向」とし、載置面12Aから見てホルダ5の側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、一対の刃部材40の並ぶ方向を「左右方向」とし、後側から前側を見たときの右手側を「右」とし、逆側を「左」とする。
【0037】
被覆除去具100は、光ファイバ1の被覆を除去する工具である。被覆除去具100は、「ストリッパ」などと呼ばれることもある。被覆除去具100は、本体と、刃部材40とを有する。刃部材40には、前述の第1被覆除去刃41が設けられている。刃部材40は、被覆除去具100の本体に対して別部材として構成されており、着脱可能に構成されている。以下の説明では、被覆除去具100の本体のことを単に「被覆除去具100」と呼ぶこともある。
【0038】
被覆除去具100(被覆除去具100の本体)は、基部10と、一対のアーム部30とを有する。
【0039】
基部10は、被覆除去具100の基礎を構成する部位である。基部10は、台部11と、支柱部21とを有する。
台部11は、被覆除去具100の底部を構成する板状の部位である。台部11の後側には、スライド部12が形成されている。スライド部12は、ホルダ5を前後方向にスライド可能に載置する部位である。スライド部12は、ホルダ5を載置する載置面12Aと、載置面12Aの左右両縁から上側に延び出た一対の側壁部12Bとによって構成されており、載置面12A及び一対の側壁部12Bの内壁面によって、ホルダ5が前後方向に案内されることになる。
【0040】
台部11には、開始位置ストッパ13と、終了位置ストッパ14とが形成されている。開始位置ストッパ13は、被覆除去の開始位置にホルダ5を位置合わせするための部位である。開始位置ストッパ13は、ホルダ5の載置面12Aから上側に突出した部位であり、ホルダ5の前端面と接触することによってホルダ5を開始位置に位置合わせすることになる。開始位置ストッパ13は、アーム部30の下側に配置されている。終了位置ストッパ14は、被覆除去時のホルダ5のスライドを停止させる部位である。言い換えると、終了位置ストッパ14は、被覆除去時のホルダ5の移動の終了位置を規定する部位である。終了位置ストッパ14は、スライド部12の側壁部12Bの内壁面から内側に突出した部位であり、ホルダ5の側面に形成された接触部(
図1Bでは不図示)と接触することによって、ホルダ5を終了位置で停止させることになる。本実施形態では、光ファイバの先端が第1被覆除去刃41を通過する前にホルダ5が停止するように、終了位置ストッパ14が設けられている。
【0041】
支柱部21は、台部11の上面から上側に突出した部位である。支柱部21は、台部11の前方に設けられている。支柱部21は、片持ち梁状のアーム部30を支持する部位であり、支柱部21から後側にアーム部30が延出している。
【0042】
支柱部21には、ガイド部22が形成されている。ガイド部22は、光ファイバ1の位置(主に左右方向の位置)を規制する部位である。ガイド部22は、上側の開放したV溝状に構成されており、上方から一対の側壁の間に光ファイバ1を入れることが可能である。ガイド部22は、V溝部22Aと、スリット部22Bとを有する。V溝部22Aは、下側(底側)ほど一対の内壁面の幅の狭まる部位である。スリット部22Bは、V溝部22Aの底部において一定幅の形状の部位である。スリット部22Bでは、一対の内壁面の間隔が光ファイバ1の直径よりも僅かに広い程度(例えば光ファイバ1の直径の1.1倍程度)である。光ファイバ1に曲げグセがついている場合には、スリット部22Bに光ファイバ1を差し入れることによって、光ファイバ1が矯正されるとともに、光ファイバ1がスリット部22Bに保持されることになる。スリット部22Bの上側にV溝部22Aが配置されることにより、狭い幅のスリット部22Bに光ファイバ1を差し入れる作業が容易になる。
【0043】
ところで、V溝状にガイド部22を形成する代わりに、前後方向に平行な貫通孔でガイド部を構成することも可能である。この場合、貫通孔に光ファイバ1を挿入することによって、光ファイバ1の位置を規制することになるため、光ファイバ1の位置精度を高めることができる。但し、ガイド部を貫通孔で構成した場合、光ファイバ1に曲げグセがついていると、貫通孔に光ファイバ1を挿入する作業が困難になる。これに対し、本実施形態のようにV溝状にガイド部22を構成した場合、貫通孔と比べて光ファイバ1の上下方向の位置精度は劣るものの、ガイド部22の上側が開放されているため、ガイド部22に光ファイバ1を差し込む作業が容易になる。なお、後述するように、本実施形態では、仮にガイド部22に差し込まれた光ファイバ1の位置が上下方向にずれていても、被覆除去時の操作中に光ファイバ1の上下方向の位置が正常な位置に誘導されることになる(
図4A〜
図4D参照)。このため、ガイド部22をV溝状に形成することは許容されている。
【0044】
支柱部21には、ゲージ部23が形成されている。ゲージ部23は、光ファイバ1の長さを調整するための部位である。ゲージ部23は、ガイド部22よりも前側に突出した部位である。光ファイバ1をガイド部22に差し込む際に、光ファイバ1の先端をゲージ部23の前縁に合わせることによって、所定の長さの光ファイバ1が第1被覆除去刃41から前側に延び出るように、光ファイバ1を被覆除去具100にセットすることができる(
図8B参照)。
【0045】
アーム部30は、基部10(支柱部21)に対して後側に延出した部位である。アーム部30の前側は支柱部21に固定されており、アーム部30は、片持ち梁状に構成されている。一対のアーム部30は、左右に並んで配置されている。一対のアーム部30は、互いに近接するように内側に向かって弾性変形可能に構成されている。アーム部30は、変形部31と、操作部32とを有する。
【0046】
変形部31は、弾性変形する部位である。変形部31が弾性変形することによって、操作部32が左右方向に変位可能である。変形部31は、支柱部21から後側に延び出た板状の部位であり、左右方向に薄く、上下方向に厚く構成されている。これにより、操作部32が左右方向に変位可能である。但し、変形部31の形状は、これに限られるものではない。板状の一対の変形部31は、互いに対向して配置されているため、一対の操作部32を互いに近接させるように変位させることができる。
【0047】
操作部32は、作業者が操作する部位である。操作部32は、変形部31よりも後側に配置されている。一対の操作部32は、隙間をあけて左右方向に並んで配置されている。左右に並ぶ一対の操作部32の間に、光ファイバ1が差し込まれることになる(
図2B参照)。作業者が一対の操作部32を左右方向の外側から指で摘まんで把持することによって、一対の操作部32が互いに近接する(一対の操作部32の隙間が狭まる)。一対の操作部32が互いに近接すると、一対の第1被覆除去刃41や一対の第2被覆除去刃34が光ファイバ1を挟み込むことになる。
【0048】
操作部32には、装着部33と、第2被覆除去刃34と、誘導部35と、確認窓36とが設けられている。
【0049】
装着部33は、刃部材40を着脱可能な部位である。装着部33に刃部材40が装着されると、刃部材40の第1被覆除去刃41が操作部32から内側に向かって突出する。一対の装着部33にそれぞれ刃部材40が装着されると、一対の第1被覆除去刃41は、左右方向に対向して配置されるとともに、左右方向に並ぶ一対の操作部32の隙間から内側に突出する。後述するように、本実施形態の装着部33は、刃部材40を上下方向にスライド可能に構成されている。また、後述するように、装着部33には複数の係止部(
図5B及び
図5C参照:第1係止部331及び第2係止部332)が設けられており、刃部材40の上下方向の位置を段階的に変更可能である。
【0050】
第2被覆除去刃34は、既に説明したように、外側被覆層1Cを除去するための刃である。第2被覆除去刃34は、装着部33よりも後側に配置されている。これにより、第2被覆除去刃34が第1被覆除去刃41よりも後側に位置することになる。第2被覆除去刃34は、丸刃状に構成されている。丸刃状の第2被覆除去刃34の刃先は、真円状でなくてもよく、楕円状でもよい。一対の第2被覆除去刃34は、左右方向に対向して配置されている。一対の操作部32が互いに近接すると、丸刃状の一対の第2被覆除去刃34の間に光ファイバ1が挟み込まれ、外側被覆層1Cに除去の起点(表面傷)が形成される。なお、光ファイバ1が丸刃状の一対の第2被覆除去刃34に挟み込まれた状態で引き抜かれることにより、外側被覆層1Cが除去されることになる(
図9B参照)。第2被覆除去刃34が丸刃状に構成されているため、平刃の場合と比べて光ファイバ1との接触面積を大きくでき、これにより、光ファイバ1に加わる圧力を低減させることができ、内側被覆層1Bや裸光ファイバ1Aの損傷を抑制することができる。但し、第2被覆除去刃34が第1被覆除去刃41のように平刃状に構成されてもよい。
【0051】
誘導部35は、光ファイバ1を所定の位置に誘導するための部位である。本実施形態のように、第2被覆除去刃34が丸刃状に構成されている場合、平刃状の場合と比べて、一対の第2被覆除去刃34の間に光ファイバ1を挟み込む際に、光ファイバ1の位置を第2被覆除去刃34の位置まで精度よく誘導する必要があるため、誘導部35を備えることは特に有効である。
【0052】
本実施形態では、一対の操作部32の対向面に、それぞれ誘導部35が設けられている。誘導部35は、上下方向に沿った突条に形成されている。それぞれの操作部32の誘導部35は、左右方向に並ぶ一対の操作部32の隙間から内側に突出するように配置されている。それぞれの操作部32の誘導部35は、左右方向には対向しておらず、前後方向にずれて配置されている(
図2A上図参照)。すなわち、複数の誘導部35が、互い違いに設けられている。ここでは、左側の操作部32の誘導部35は、右側の操作部32の誘導部35よりも前側に配置されている。
【0053】
図4A〜
図4Dは、誘導部35による光ファイバ1の誘導の説明図である。各図は、一対の操作部32の隙間を後側から見た図である。図中には、一対の第2被覆除去刃34、右側の操作部32の誘導部35、及び左側の操作部32の誘導部35が示されている。これらの部材は、後側から(図中の手前側から)、一対の第2被覆除去刃34、右側の操作部32の誘導部35、左側の操作部32の誘導部35、の順に配置されている。
【0054】
突条の誘導部35の下面には、誘導面351が形成されている。誘導面351は、操作部32の内壁に近いほど下側になるような傾斜面として形成されている。いずれの誘導面351も、第2被覆除去刃34よりも上側の位置に設けられている。また、光ファイバ1の端部(前側、図中の奥側)の側の誘導面351ほど、上側の位置に設けられている。ここでは、左側の誘導面351の方が、右側の誘導面351よりも上側の位置に設けられている。
【0055】
被覆除去作業時に、作業者が一対の操作部32を左右方向の外側から指で摘まんで把持することによって、
図4Aに示すように、一対の操作部32が互いに近接することになる。但し、
図4Aに示すように、光ファイバ1の初期位置は、第2被覆除去刃34の位置よりも上側に位置することがある。
【0056】
図4Bに示すように、一対の操作部32が互いに近接し、一対の操作部32の隙間が狭まると、まず、光ファイバ1は、前側に位置している左側の誘導部35の誘導面351に接触する。誘導面351は、操作部32の内壁に近いほど下側になるように傾斜しているため、
図4Bに示す光ファイバ1は、一対の操作部32の隙間が狭まると、左側の誘導部35の誘導面351によって、下側(第2被覆除去刃34の位置)に向かって誘導されることになる。
【0057】
図4Cに示すように、更に一対の操作部32が互いに近接して一対の操作部32の隙間が狭まると、光ファイバ1は、右側の誘導部35の誘導面351に接触する。右側の誘導面351も、操作部32の内壁に近いほど下側になるように傾斜しているため、
図4Cに示す光ファイバ1は、右側の誘導部35の誘導面351によって、下側(第2被覆除去刃34の位置)に向かって誘導されることになる。加えて、右側の誘導面351は、左側の誘導面351よりも下側の位置に設けられているため、左側の誘導面351によって下側に誘導された光ファイバ1は、右側の誘導面351によって更に下側に誘導されることになる。このように、左右の誘導面351が異なる位置(高さ)に設けられていれば、一方の誘導面351によって光ファイバ1を誘導した後に、他方の誘導面351によって更に光ファイバ1を誘導できるため、光ファイバ1の初期位置が大きくずれていても、光ファイバ1を第2被覆除去刃34の位置へ誘導することが可能になる(
図4D参照)。
【0058】
また、本実施形態では、前側(光ファイバ1の端部の側)の誘導面351ほど、上側に設けられている(左側の誘導面351の方が、右側の誘導面351よりも上側に設けられている)。光ファイバ1の端部が反るように光ファイバ1に曲げグセがついている場合には、光ファイバ1の端部の側(前側)ほど上側に位置がズレることになるため、光ファイバ1の端部の側の誘導面351が上側に設けられていれば、このような曲げグセのついた光ファイバ1を誘導しやすくなる。
【0059】
確認窓36は、ホルダ5の位置を確認するための貫通穴(確認穴)である。確認窓36は、操作部32の上下方向に貫通するように形成されている。本実施形態のように開始位置ストッパ13がアーム部30の下側に設けられている場合、ホルダ5を位置合わせする際に、アーム部30が邪魔となり、ホルダ5の位置を確認し難いため、アーム部30(操作部32)に確認窓36を形成することによって、開始位置ストッパ13でホルダ5を位置合わせしたときに、アーム部30越しにホルダ5を確認できるようにしている(
図2B参照)。また、本実施形態では、開始位置ストッパ13の端面(ホルダ5との接触面)の上側に確認窓36が配置されているため、ホルダ5と開始位置ストッパ13との接触状態を確認することができる(
図2B参照)。なお、ホルダ5と開始位置ストッパ13との接触状態の確認作業を容易にするために、ホルダ5の色は、開始位置ストッパ13の色(すなわち被覆除去具100の本体の色)と異なることが望ましい。
【0060】
上記の被覆除去具100(被覆除去具100の本体)の基部10及びアーム部30は、樹脂により一体的に成形されている。被覆除去時にアーム部30の変形部31を弾性変形させることになるため、被覆除去具100(被覆除去具100の本体)を構成する樹脂は、適度な弾性を有し、弾性変形に対する耐久性の高い樹脂が望ましい。例えば、被覆除去具100(被覆除去具100の本体)は、ポリアセタール樹脂(POM)により構成されている。
【0061】
刃部材40は、第1被覆除去刃41を有する部材である。本実施形態では、刃部材40は、被覆除去具100の本体に対して別部材で構成されるため、被覆除去具100の本体とは異なる材質で構成することができる。本実施形態では、刃部材40は、内側被覆層1Bの除去に適した材質で構成することができ、例えばポリエーテルイミド樹脂(例えばウルテム1000(商標登録):ロックウェル硬度M109)で構成することができる。
【0062】
図5Aは、刃部材40の斜視図である。刃部材40は、第1被覆除去刃41と、係合部42とを有する。
【0063】
第1被覆除去刃41は、既に説明したように、内側被覆層1Bを除去するための刃である。第1被覆除去刃41は、刃部材40の左右方向の側面から突出している。
【0064】
第1被覆除去刃41は、平刃状に構成されている。これにより、第1被覆除去刃41をスライドさせて、第1被覆除去刃41の未使用の部位を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能となる。平刃状の第1被覆除去刃41の刃先は、上下方向に平行に配置される。このため、第1被覆除去刃41は、上下方向に沿ってスライドさせることになる。後述するように、刃部材40は、左右両側にそれぞれ第1被覆除去刃41を備えている。言い換えると、刃部材40は、第1被覆除去刃41を両刃に備えている。
【0065】
係合部42は、刃部材40の位置を固定するための部位である。係合部42は、装着部33の係止部(
図5B及び
図5C参照:第1係止部331及び第2係止部332)に引っ掛かる部位である。係合部42は、刃部材40の上部から下部に延出する片持ち梁状の部位であり、端部に突起が形成されており、この突起が装着部33の係止部に引っ掛かることになる。
【0066】
図5B及び
図5Cは、係合部42による刃部材40の固定位置の説明図である。装着部33には、係止部として、第1係止部331及び第2係止部332が設けられている。係止部は、刃部材40の係合部42が引っ掛かる部位であり、刃部材40を所定の位置に固定するための部位である。本実施形態の刃部材40は上下方向にスライド可能であるが、係合部42が装着部33の係止部(
図5B及び
図5C参照:第1係止部331及び第2係止部332)に引っ掛かることによって、刃部材40の位置が固定されることになる。
【0067】
本実施形態では、複数の係止部(第1係止部331及び第2係止部332)が設けられている。これにより、刃部材40の上下方向の位置を段階的に変更することができる。なお、刃部材40を所定の位置に固定する係止部は、2つに限られるものではなく、3つ以上でもよい。第1係止部331は、装着部33の内壁面の途中に設けられた穴状の部位である。第2係止部332は、装着部33の内壁の下縁である。第1係止部331は、第2係止部332よりも上側に設けられている。なお、係止部の形状は、これに限られるものではない。
【0068】
図6A〜
図6Eは、第1被覆除去刃41の使用部位の説明図である。
図6Aに示す状態では、刃部材40が第1係止部331によって固定されている。この状態では、第1被覆除去刃41の比較的下側の部位(図中の1番の矢印の部位)を使用して、光ファイバ1の被覆を除去することになる。作業者が
図6Aに示す刃部材40の頭部を下に押し込むと、刃部材40の係合部42が第1係止部331から外れ、刃部材40が下にスライドし、刃部材40の係合部42が第2係止部332に引っ掛かり、
図6Bに示す状態になる。
【0069】
図6Bに示す状態で刃、刃部材40が第2係止部332によって固定されている。この状態では、第1被覆除去刃41の比較的上側の部位(図中の2番の矢印の部位)を使用して、光ファイバ1の被覆を除去することになる。このように、刃部材40の上下方向の位置を変更することによって、第1被覆除去刃41の使用部位を変更することができる。すなわち、第1被覆除去刃41をスライドさせて、第1被覆除去刃41の未使用の部位を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能になる。これにより、第1被覆除去刃41の使用回数を増やすことができる。
【0070】
図6Cに示すように、本実施形態の刃部材40は、第1被覆除去刃41を両刃に備えている。このため、刃部材40の一方の第1被覆除去刃41が摩耗した後(一方の第1被覆除去刃41の寿命がきた後)、作業者は、
図6Cに示すように、左右の刃部材40を入れ替えて装着部33に再装着する。これにより、未使用の他方の第1被覆除去刃41を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能になり、刃部材40の使用回数を増やすことができる。
【0071】
なお、本実施形態の刃部材40は、左右対称の形状に構成されている。このため、一対の刃部材40は、同じ形状の部材である。このように、刃部材40を左右対称の形状に構成することによって、一対の刃部材40を共通化でき、一対の刃部材40の製造コストを抑制できる。
【0072】
左右の刃部材40を入れ替えた後においても、入れ替え前と同様に、第1被覆除去刃41は2段階で使用される。すなわち、まず、
図6Dに示すように、第1被覆除去刃41の比較的下側の部位(図中の3番の矢印の部位)を使用して、光ファイバ1の被覆を除去する。その後、刃部材40を下にスライドさせ、
図6Eに示すように、第1被覆除去刃41の比較的上側の部位(図中の4番の矢印の部位)を使用して、光ファイバ1の被覆を除去することになる。このように、本実施形態では、左右の刃部材40を入れ替えた後においても、第1被覆除去刃41をスライドさせて、第1被覆除去刃41の未使用の部位を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能である。
【0073】
図7Aは、第1被覆除去刃41の一例の説明図である(なお、
図7A(及び
図7B、
図7C)では、説明の都合上、第1被覆除去刃41の長さや光ファイバ1の直径などが変更されている)。既に説明したように、第1被覆除去刃41は平刃状に構成されている。一対の第1被覆除去刃41の刃先は、いずれも上下方向に平行である。このため、一対の刃部材40を近接させ過ぎると、一対の第1被覆除去刃41の刃先の隙間が極めて狭くなり、この結果、裸光ファイバ1Aを損傷させてしまうおそれがある。
【0074】
図7Bは、本実施形態の第1被覆除去刃41の説明図である。本実施形態では、平刃状の第1被覆除去刃41の上下の両縁に突出部43が形成されている。突出部43は、相手側の刃部材40に向かって突出した部位である。一対の刃部材40を近接させたとき、互いの突出部43同士が接触することになる。突出部43から見ると、第1被覆除去刃41の刃先は、凹んだ部位に設けられている。本実施形態では、仮に一対の刃部材40を近接させ過ぎて刃部材40同士が接触しても、一対の第1被覆除去刃41の間に隙間が形成される。このため、本実施形態では、光ファイバ1が一対の第1被覆除去刃41に挟み込まれたときに、
図7Aの場合と比べて、裸光ファイバ1Aの損傷を抑制することができる。なお、突出部43の突出量X1は、裸光ファイバ1Aの半径よりも小さいことが望ましい。本実施形態では、突出部43の突出量X1は、25μm以上55μm以下の範囲内である。言い換えると、刃部材40同士を接触させたときの一対の第1被覆除去刃41の隙間は、50μm以上110μm以下の範囲内である。
【0075】
図7Cは、変形例の第1被覆除去刃41の説明図である。変形例では、一対の第1被覆除去刃41のうち、一方の第1被覆除去刃41には上下の両縁に突出部43が形成されており、他方の第1被覆除去刃41には突出部43が形成されていない。この変形例においても、一対の刃部材40を近接させて接触させたとき、一対の第1被覆除去刃41の間に隙間が形成されることになる。このため、変形例においても、光ファイバ1が一対の第1被覆除去刃41に挟み込まれたときに、
図7Aの場合と比べて、裸光ファイバ1Aの損傷を抑制することができる。変形例の突出部43の突出量X2は、裸光ファイバ1Aの直径よりも小さいことが望ましい。具体的には、突出部43の突出量X2は、50μm以上110μm以下の範囲内である。言い換えると、刃部材40同士を接触させたときの一対の第1被覆除去刃41の隙間は、50μm以上110μm以下の範囲内である。変形例では、刃部材40同士を接触させたときの一対の第1被覆除去刃41の隙間の寸法は、一方の第1被覆除去刃41に設けられた突出部43の突出量X2に依存するため、隙間の寸法の公差管理が容易になる(これに対し、
図7Bに示すように一対の第1被覆除去刃41のそれぞれに突出部43を設けた場合には、変形例と比べて公差が2倍になるため、隙間の寸法の公差管理が厳しくなる)。
【0076】
変形例においても、それぞれの刃部材40は、第1被覆除去刃41を両刃に備えていることが望ましい。この場合、変形例では、それぞれの刃部材40の一方の第1被覆除去刃41には突出部43が形成されており、他方の第1被覆除去刃41には突出部43が形成されていない。このようにしても、刃部材40の一方の第1被覆除去刃41が摩耗した後(一方の第1被覆除去刃41の寿命がきた後)、
図6Cに示すように、左右の刃部材40を入れ替えて装着部33に再装着することが可能である。なお、変形例の刃部材40は左右に非対称な形状になるが、一対の刃部材40を共通化できるため、一対の刃部材40の製造コストを抑制可能である。
【0077】
本実施形態のように刃部材40が上下方向にスライド可能に設けられている場合、平刃状の第1被覆除去刃41の上下方向の長さは、刃部材40のスライド長よりも長いことが望ましく、刃部材40のスライド長に外側被覆層1Cの外径を加算した長さよりも長いことが更に望ましい。言い換えると、第1被覆除去刃41の上下両縁に設けられた一対の突出部43の間隔は、刃部材40のスライド長よりも長いことが望ましく、刃部材40のスライド長に外側被覆層1Cの直径を加算した長さよりも長いことが更に望ましい。例えば、刃部材40のスライド長が3mmであり、外側被覆層1Cの外径が500μmの場合、第1被覆除去刃41の上下方向の長さ(若しくは、上下の突出部43の間隔)は、3mmよりも長いことが望ましく、3.5mmよりも長いことが更に望ましい。なお、刃部材40のスライド長は、刃部材40の最上位置と最下位置との間の長さであり、本実施形態では第1係止部331と第2係止部332との間の距離に相当する。
【0078】
図8A〜
図8Dは、本実施形態の被覆除去具100を用いた被覆除去方法の説明図である。
【0079】
まず、作業者は、本実施形態の被覆除去具100及びホルダ5を準備し(
図7A参照)、被覆除去具100にホルダ5をセットする。このとき、作業者は、
図2Bに示すように、被覆除去具100のスライド部12にホルダ5を載置するとともに、ホルダ5の前端面を開始位置ストッパ13に接触させて、ホルダ5を開始位置に位置合わせする。また、作業者は、確認窓36を通じて、ホルダ5と開始位置ストッパ13との接触状態を確認することができる(
図2B参照)。なお、このとき、ホルダ5には光ファイバ1はセットされておらず、ホルダ5の蓋部5Aは開いたままである。
【0080】
次に、作業者は、被覆除去具100及びホルダ5に光ファイバ1をセットする(
図7B参照)。本実施形態では、被覆除去具100のガイド部22の上側が開放されているため、被覆除去具100の上方から光ファイバ1を入れることによって、光ファイバ1を被覆除去具100にセットできるので、便利である。
【0081】
被覆除去具100に光ファイバ1をセットするとき、作業者は、
図8Bの一部拡大図に示すように、光ファイバ1の先端をゲージ部23の前縁に合わせる。これにより、所定の長さの光ファイバ1が第1被覆除去刃41から前側に延び出るように、光ファイバ1を被覆除去具100にセットすることができる。作業者は、
図8Bに示すように光ファイバ1を被覆除去具100にセットした後、ホルダ5の蓋部5Aを閉じて、光ファイバ1をホルダ5に固定する。
【0082】
次に、作業者は、
図8Cの1番の矢印に示すように、被覆除去具100の一対の操作部32を左右方向から把持する。これにより、アーム部30の変形部31が弾性変形し、一対の操作部32が互いに近接する。一対の操作部32が互いに近接すると、一対の第1被覆除去刃41や一対の第2被覆除去刃34が光ファイバ1を挟み込むことになる。なお、仮に被覆除去具100にセットしたときの光ファイバ1の位置が上下方向にずれていても、
図4A〜
図4Dに示すように、一対の操作部32が近接する際に、光ファイバ1の上下方向の位置が正常な位置に誘導されるため、丸刃状の一対の第2被覆除去刃34の間に光ファイバ1を挟み込ませることができる。
【0083】
そして、作業者は、一対の操作部32を把持した状態で、
図8Cの2番の矢印に示すように、ホルダ5を後側にスライドさせる。これにより、一対の第1被覆除去刃41及び一対の第2被覆除去刃34の間に光ファイバ1が挟み込まれた状態で(
図9A参照)、光ファイバ1が引き抜かれることになる(
図9B参照)。この結果、一対の第1被覆除去刃41によって内側被覆層1B(及び外側被覆層1C)が除去されるとともに、一対の第2被覆除去刃34によって外側被覆層1Cが除去される。
【0084】
作業者がホルダ5を後側にスライドさせると、終了位置ストッパ14にホルダ5が接触することによって、
図8Dに示すように、ホルダ5が所定の終了位置で停止する。本実施形態では、開始位置(
図8C参照)から終了位置(
図8D)までの間のホルダ5のスライド距離は、開始位置にホルダ5を位置合わせしたときに第1被覆除去刃41から前側に突出させた光ファイバ1の端部の長さ(
図7B参照)よりも短く設定されている。言い換えると、本実施形態では、光ファイバの先端が第1被覆除去刃41を通過する前にホルダ5が停止するように、終了位置ストッパ14が設けられている。このため、終了位置ストッパ14によってホルダ5が停止したところで被覆の除去を終了すると、
図9Dに示すように、光ファイバ1の端部に被覆を残存させることができる。なお、光ファイバ1の端部に残存した被覆は、終了位置ストッパ14によってホルダ5が停止したために第1被覆除去刃41に未到達で除去されなかった被覆である。
【0085】
被覆除去作業後、作業者は、ホルダ5の蓋部5Aを開けて、光ファイバ1を取り出すことになる。なお、取り出された光ファイバ1は、通常、次にカット工程を施されることになる。本実施形態によれば、取り出された光ファイバ1は、
図9Dに示すように端部に被覆が残るため、作業者は、光ファイバ1の端部を視認し易いので、次のカット工程での作業が容易になる。また、次のカット工程では、裸光ファイバ1Aが所定の長さになるようにカットされ、このとき、光ファイバ1の端部の被覆の残存した部位は、切り落とされて除去されることになる。このため、被覆除去工程で光ファイバ1の端部に被覆が残存しても許容される。
【0086】
上記の被覆除去作業が繰り返し行われると、第1被覆除去刃41が摩耗し、この結果、内側被覆層1Bを除去し難くなってくる。そこで、作業者は、内側被覆層1Bを除去し難くなったとき、
図6A及び
図6B(若しくは
図6D及び
図6E)に示すように、刃部材40の頭部を下に押し込み、刃部材40を下にスライドさせる。これにより、第1被覆除去刃41の未使用の部位を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能になる。なお、刃部材40をスライドさせる方向は、上から下に向かう方向に限られるものではなく、下から上に向かう方向でもよい。
【0087】
作業者は、内側被覆層1Bを除去し難くなってから刃部材40をスライドさせる代わりに、上記の被覆除去作業を所定回数繰り返したとき、刃部材40をスライドさせるようにしてもよい。これにより、正常な被覆の除去を維持できる。特に、本実施形態では、刃部材40の係合部42が装着部33の係止部(
図5B及び
図5C参照:第1係止部331及び第2係止部332)に引っ掛かることによって刃部材40が所定の位置に固定されるため、第1被覆除去刃41の寿命を予想しやすいので、第1被覆除去刃41の使用回数を設定しやすい。なお、本実施形態のように刃部材40を所定の位置に段階的(離散的)に変更する代わりに、刃部材40の位置を連続的に変更可能にしてもよい。但し、この場合、第1被覆除去刃41の寿命を予測し難くなる。
【0088】
刃部材40を下にスライドさせた後、更に被覆除去作業が繰り返し行われると、再び第1被覆除去刃41が摩耗し、この結果、内側被覆層1Bを除去し難くなってくる。そこで、作業者は、再び内側被覆層1Bを除去し難くなったとき、若しくは、刃部材40を下にスライドさせてから所定回数の被覆除去作業を行ったとき、
図6Cに示すように、左右の刃部材40を入れ替えて装着部33に再装着する。これにより、未使用の第1被覆除去刃41を使って光ファイバ1の被覆を除去することが可能になる。
【0089】
なお、
図6Eに示すように第1被覆除去刃41の未使用の部位が無くなった後、作業者は、使用済みの刃部材40を未使用の刃部材40に交換してもよい。これにより、被覆除去具100の本体を使用し続けることができる。但し、第1被覆除去刃41の未使用の部位が無くなった段階で、被覆除去具100の本体ごと新品に交換してもよい。
【0090】
===第2実施形態===
前述の第1実施形態の被覆除去具100は、一対の第1被覆除去刃41と、一対の第2被覆除去刃34とを有しており、一度の除去工程で内側被覆層1Bと外側被覆層1Cを段付きに除去することが可能であった。但し、被覆除去具は、一対の第1被覆除去刃41を備え、一対の第2被覆除去刃34を備えていなくてもよい。この場合、作業者は、外側被覆層1Cを予め除去した光ファイバ1を被覆除去具にセットし、被覆除去具の第1被覆除去刃41によって内側被覆層1Bを除去するとよい。
【0091】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。