特許第6474856号(P6474856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474856パイプ材の曲げ加工方法及びパイプ材の曲げ加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474856
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】パイプ材の曲げ加工方法及びパイプ材の曲げ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/025 20060101AFI20190218BHJP
   B21D 7/06 20060101ALI20190218BHJP
   B21D 37/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B21D7/025
   B21D7/06 A
   B21D37/18
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-110678(P2017-110678)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-202455(P2018-202455A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591077704
【氏名又は名称】東亜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 一治
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿一
(72)【発明者】
【氏名】大成 良和
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528480(JP,A)
【文献】 特開平07−039942(JP,A)
【文献】 特開2008−246504(JP,A)
【文献】 特開2004−009125(JP,A)
【文献】 米国特許第04325244(US,A)
【文献】 特開2012−055952(JP,A)
【文献】 特開2010−167470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/025
B21D 7/00
B21D 7/06
B21D 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ型(11)と、この曲げ型(11)との間でパイプ材をクランプするクランプダイ(12)と、前記曲げ型(11)の後方に配置され、パイプ材の外周曲面に摺接するパイプ摺接面(131)を有しパイプ材の曲げ皺の発生を防止するワイパー(13)と、を準備し、
前記パイプ材を前記クランプダイ(12)によりクランプした状態で前記曲げ型(11)を回転中心軸の回りに回転させることにより、パイプ材を前記曲げ型(11)の外周曲面に沿って差し込み、かつ前記ワイパー(13)をパイプ材の外周曲面に摺接させながらパイプ材の曲げ加工を行う、パイプ材の曲げ加工方法において、
前記ワイパー(13)内部に設けられた潤滑油通路(132)を介して、前記パイプ摺接面(131)に潤滑油を供給しながら、パイプ材の曲げ加工を行うことを特徴とするパイプ材の曲げ加工方法。
【請求項2】
前記ワイパー(13)は、裏側にベース溝(133a)を有するベース(133)と、このベース(133)の先端部に着脱可能に連結され裏側にガイド溝(134a)を有するガイド(134)と、を備え、
前記ガイド溝(134a)が前記パイプ摺接面(131)を構成しており、前記潤滑油通路(132)は前記ベース(133)を貫通して前記ベース溝(133a)の表面に潤滑油出口(132b)を有していることを特徴とする請求項1に記載のパイプ材の曲げ加工方法。
【請求項3】
回転中心軸の回りに回転可能な曲げ型(11)と、
前記曲げ型(11)との間でパイプ材をクランプするクランプダイ(12)と、
前記曲げ型(11)の後方に配置され、パイプ材の外周曲面に摺接するパイプ摺接面(131)を有しパイプ材の曲げ皺の発生を防止するワイパー(13)と、を備え、
前記ワイパー(13)は、前記パイプ摺接面(131)に潤滑油を供給するための潤滑油通路(132)を内部に有することを特徴とするパイプ材の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記ワイパー(13)は、裏側にベース溝(133a)を有するベース(133)と、このベース(133)の先端部に着脱可能に連結され裏側にガイド溝(134a)を有するガイド(134)と、を備え、
前記ガイド溝(134a)が前記パイプ摺接面(131)を構成しており、前記潤滑油通路(132)は前記ベース(133)を貫通して前記ベース溝(133a)の表面に潤滑油出口(132b)を有していることを特徴とする請求項3に記載のパイプ材の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記ベース溝(133a)の表面が前記ワイパー(13)の表側に向かって前記ガイド溝(134a)の表面より高くなるように、前記ベース溝(133a)と前記ガイド溝(134a)との間に段差(135)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のパイプ材の曲げ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材の曲げ加工方法及びパイプ材の曲げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ材の曲げ加工は、例えば、ハイドロフォーミングの予備加工として実施される。特許文献1,2には、パイプ材の曲げ加工により発生する曲げ皺を防止するためのワイパーが記載されている。
【0003】
この種のワイパーは、ベースの先端にガイドが連結される構造になっており、ガイドの先端のエッジ部から後方側にパイプ摺接面が形成される。パイプ材の曲げ加工時には、曲げ型の後方にエッジ部を隣接させてパイプ材の曲げ内周側の皺の発生を防止している(特許文献1を参照)。
【0004】
また、この種のワイパーは、パイプ材に、皺、その他の傷を付けないようにするために青銅等の柔らかい素材を使用する必要がある。従って、パイプ加工の回数に応じて磨耗するので、その解決策として、ワイパーをベースとガイドに二分割し、ガイドを、ベースの後端部より挿入した止め具でベースの先端部に固定し、ガイドを交換可能な構造とされている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−167470号公報
【特許文献2】特開2012−55952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、ワイパーをベースとガイドに二分割し、磨耗しやすいガイドだけを交換可能とすることによりコスト削減が図られている。しかしながら、パイプ加工の回数に応じてガイドの磨耗が生じることは避けられなかった。そこで、本発明は、ワイパーの磨耗を抑えて、その使用寿命を延ばすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題に鑑み、本発明のパイプ材の曲げ加工方法は、曲げ型(11)と、この曲げ型(11)との間でパイプ材をクランプするクランプダイ(12)と、前記曲げ型の後方に配置され、パイプ材の外周曲面に摺接するパイプ摺接面(131)を有しパイプ材の曲げ皺の発生を防止するワイパー(13)と、を準備し、前記パイプ材を前記クランプダイ(12)によりクランプした状態で前記曲げ型(11)を回転中心軸の回りに回転させることにより、パイプ材を前記曲げ型(11)の外周曲面に沿って差し込み、かつ前記ワイパー(13)をパイプ材の外周曲面に摺接させながらパイプ材の曲げ加工を行う、パイプ材の曲げ加工方法において、前記ワイパー(13)内部に設けられた潤滑油通路(132)を介して、前記パイプ摺接面(131)に潤滑油を供給しながら、パイプ材の曲げ加工を行うことを特徴とする。
【0008】
また、パイプ材の曲げ加工装置は、回転中心軸の回りに回転可能な曲げ型(11)と、前記曲げ型(11)との間でパイプ材をクランプするクランプダイ(12)と、 前記曲げ型(11)の後方に配置され、パイプ材の外周曲面に摺接するパイプ摺接面(131)を有しパイプ材の曲げ皺の発生を防止するワイパー(13)と、を備え、前記ワイパー(13)は、前記パイプ摺接面(131)に潤滑油を供給するための潤滑油通路(132)を内部に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイパーのパイプ摺接面に潤滑油を供給しながら、パイプ材の曲げ加工を行うので、ワイパーの磨耗を抑えることで、その耐久性を向上させ、使用寿命を延ばすことができる。
【0010】
また、本発明によれば、ワイパー内部に潤滑油通路を設けているので、ワイパー外部に潤滑油供給手段を設ける場合に比べて、ワイパー本体や、曲げ加工装置を小型化することができることに加え、この潤滑油通路に外部から潤滑油を注油すればよいので、作業性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】パイプ材の曲げ加工装置の模式的断面図である。
図2】ワイパーの表側の斜視図である。
図3】ワイパーの裏側の斜視図である。
図4】ワイパーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、パイプ材の曲げ加工装置の模式的断面図であり、図1(a)は、パイプ材Pが装置にセットされた状態、図1(b)はパイプ材Pの曲げ加工の状態を示す断面図である。
【0013】
図示のように、パイプ材の曲げ加工装置10は、パイプ材Pの曲げ加工に用いられるもので、回転可能な曲げ型11、回転駆動手段(不図示)、曲げ型11との間でパイプ材Pをクランプするクランプダイ12、曲げ型11の後方に配置されたワイパー13、及びプッシャーダイ14を備えている。ワイパー13はパイプ材Pの外周曲面に摺接するパイプ摺接面131を有し、パイプ材Pを挟持して曲げ皺の発生を防止するためのものである。
【0014】
曲げ型11は、一例として、円筒とその周方向に沿って突出し円筒と一体化されたクランプ部111から構成され、円筒中心軸の回りに回転可能になっている。クランプダイ12は、クランプ部111に対向する位置に配置され、パイプ材Pをクランプし、あるいはクランプを解除するために前後に可動であり、曲げ型11と連動して回転可能になっている。そして、ワイパー13の内部には、パイプ摺接面131に潤滑油を供給するための潤滑油通路132が設けられている。
【0015】
この曲げ加工装置10を用いたパイプ材の曲げ加工方法を説明すると、先ず、図1(a)に示すように、パイプ材Pを曲げ型11とプッシャーダイ14の間にセットする。パイプ材Pの先端部は曲げ型11のクランプ部111とクランプダイ12によって挟持される格好でクランプされる。
【0016】
このセット状態で、ワイパー13とプッシャーダイ16は不図示の駆動手段により前進されており、ワイパー13の本体はパイプ材Pの差し込み方向に対して曲げ型11の後方に配置され、ワイパー13の先端は曲げ型11の外周曲面に沿って差し込まれている。ワイパー13のそのパイプ摺接面131はパイプ材Pの外周曲面に接している。なお、図示しないが、通常、パイプ材P内には内径を保持するためにマンドレルが挿入される。
【0017】
続いて、図1(b)に示すように、曲げ型11を円筒中心軸の回りに回転させ、パイプ材Pを曲げ型11の外周曲面に沿って差し込み、かつワイパー13をパイプ材Pの外周曲面に摺接させながら、パイプ材Pを曲げていく。
【0018】
この曲げ加工の間、ワイパー13内部に設けられた潤滑油通路132を介して、パイプ摺接面131に潤滑油を供給する。これにより、パイプ材Pの曲げ内周側の皺の発生が防止されると共に、パイプ摺接面131の磨耗が抑えられ、その使用寿命を延ばすことができる。
【0019】
また、ワイパー13内部に潤滑油通路132を設けているので、ワイパー13の外部に潤滑油供給手段を設ける場合に比べて、ワイパー13の本体や、曲げ加工装置10を小型化することができることに加え、この潤滑油通路132に外部から潤滑油を注油すればよいので、曲げ加工の作業性にも優れている。
【0020】
パイプ材Pの曲げ加工が終了した状態で、クランプダイ12を開放し、ワイパー15、プッシャーダイ14を後退させ、加工したパイプ材を曲げ加工装置10から取り外す。
【0021】
次に、ワイパー13の好ましい構造を図2乃至図4に基づいて説明する。ワイパー13は全体として鞍型の形状であり、裏側にベース溝133aを有するベース133と、このベース133の先端部に着脱可能に連結され裏側にガイド溝134aを有するガイド134とに二分割されている。
【0022】
ガイド134は、先端部から後端部に向かってスロープ形状に競り上がって背凭れ部を形成することで、ガイド134の形態は先端部から後端部に向かって、順次、肉厚形状になっている。ガイド134は、例えば、ベース133の後端部により挿入した不図示のボルト等の止め具によりベース133の先端部の取り付け面に固定され、止め具を着脱することにより、ガイド134を交換可能としている。
【0023】
ガイド溝134aはパイプ摺接面131を構成しており、パイプ材Pの外周曲面を反映した形状になっている。ガイド134は、傷を付けないようにするために青銅等の柔らかい素材で構成される。ベース133は、パイプ材Pに接触しないためステンレス等の硬い素材で構成し、耐久性を向上させることができる。
【0024】
潤滑油通路132は、ベース133の後端面からベース133の本体肉厚を貫通してベース溝133aの表面に至る。ベース133の後端面には潤滑油注入口132aが、ベース溝133aの表面には潤滑油出口132bが設けられている。
【0025】
また、図4に示すように、ベース溝133aの表面はワイパー13の表側に向かってガイド溝134aの表面より高くなるように、ベース溝133aとガイド溝134aとの間に段差135が設けられている。これにより、図4に示すように、パイプ材Pの曲げ加工の際に、潤滑油出口132bとパイプ材Pの外周曲面の間に隙間ができる。
【0026】
すると、潤滑油は潤滑油出口132bからこの隙間に流出し、パイプ材Pの外周曲面に付着する。そして、パイプ材Pが図4中の矢印の方向に差し込まれていくと、パイプ摺接面131が、潤滑油の付着したパイプ材Pの外周曲面に摺接するため、パイプ摺接面131にも潤滑油が付着することになる。これにより、パイプ摺接面131の磨耗を抑えることができる。
【0027】
この場合、パイプ摺接面131の面全体に均一に潤滑油を付着させパイプ摺接面131の磨耗を均一に抑制するために、潤滑油通路132を複数設けるか、又は1つの潤滑油通路132を分岐させて、複数の潤滑油出口132bを設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
10 パイプ材の曲げ加工装置
11 曲げ型
12 クランプダイ
13 ワイパー
14 プッシャーダイ
111 クランプ部
131 パイプ摺接面
132 潤滑油通路
132a 潤滑油注入口
132b 潤滑油出口
133 ベース
133a ベース溝
134 ガイド
134a ガイド溝
135 段差
図1
図2
図3
図4