(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、繰り返し単位の85%〜100%がカチオン性カーボネート繰り返しユニットである、抗菌性のカチオン性ポリマーに基づくものである。カチオン性ポリマーは、概ね低分子量であり、グラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌類に対して高く活性であり選択性である。活性、選択性のいずれかまたは両方は、帯電したヘテロ原子に結合する置換基のサイズおよびタイプの他にも、主鎖からの正に帯電したヘテロ原子の間隔によって重大な影響を受けることが示される。活性、選択性のいずれかまたは両方は、また、カチオン性の繰り返し単位の混合使用によって好ましい影響を受け、この場合、正に帯電したヘテロ原子は、主鎖から異なる長さで離間される。ポリマーの末端基のサイズおよびタイプは、また、活性、選択性のいずれかまたは両方に影響を与えることができる。カチオン性ポリマーは、重合の後にカチオン性カーボネート繰り返し構造単位を形成することが可能な、1つまたはそれ以上の環状カーボネート・モノマーの、有機触媒による開環重合(ROP)を使用して形成することができる。ポリマーは、一親核開始剤、二親核開始剤を使用して形成することができる。
【0018】
また、開示されるものは、抗菌性カチオン性のコポリマーであり、該共重合体は、ビタミンからの共有結合を有するカーボネート繰り返し単位を少モル量で含有する。好ましくは、これらの繰り返し単位は、無電荷である。
【0019】
カチオン性ポリマーは、生分解性とすることができる。用語「生分解性」とは、American Society of Testing and Materialsによって定義される、生物学的活性、具体的には酵素作用によって引き起こされる、材料の化学構造の顕著な変化をもたらす劣化を言う。本開示の目的のため、材料は、ASTMD6400に従って180日間で60%が生分解する場合、「生分解性」であるものとする。本開示において、材料は、当該材料が酵素による触媒反応により劣化(例えば非ポリマー化)される場合、「酵素生分解性」であるものとする。
【0020】
カチオン性ポリマーは、生体適合性とすることができる。「生体適合性」材料は、本開示において、特定の用途において適切なホスト応答を与えることができる材料として定義される。
【0021】
本開示において、ビタミンは、本質的に生体の正常な代謝のための少量で、生体内で合成することができない有機化合物のいかなるグループとして定義される。例示的なビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(コバラミン)、ベータ・カロテン、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD化合物(ビタミンD1(カルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(クロロカルシフェロール)のいずれかまたはこれらの組み合わせを含む)、ビタミンE化合物(アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、デルタ−トコフェロール、アルファ−トコトリエノール、ベータ−トコトリエノール、ガンマ−トコトリエノール、デルタ−トコトリエノールのいずれかまたはこれらの組み合わせを含む)、およびビタミンK1(フィロキノン)を挙げることができる。
【0022】
正に帯電したカチオン性の繰り返しユニットは、重合の前または後に形成することができる。
1つのポリマー鎖(1腕)を有するカチオン性ポリマー類
【0023】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(1)の構造を有することができる。
【0024】
【化6】
上記式中、
Z′が、1価のC
1〜C
15の第1末端基であり、Z′は、P′の主鎖カルボニル基に結合し、
Z″が、1価の水素およびC
1〜C
15部分を含む基から選択される第2末端基であり、
P′が、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位からなるポリマー鎖であって、i)P′は、5〜約45の重合度(DP)を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分および前記主鎖部分に結合したC
6〜C
25のカチオン性側鎖を含み、かつiii)前記カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子Q′を含み、
カチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性のカーボネート繰り返し単位の約0〜約75%が、炭素数6〜12のカチオン性側鎖を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0025】
Z′は、炭素数1〜15を有するいかなる置換基とすることができる。Z′は、酸素、窒素、または硫黄といったヘテロ原子を有することができ、当該ヘテロ原子は、それぞれカーボネート、カルバメート、またはチオカルバメート基の形態で主鎖カルボニルP′に結合する。Z′は、カチオン性ポリマーを形成するための開環重合に使用される開始剤の残基とすることができる。1実施形態では、Z′は、C
1〜C
15化合物の共有結合形態である。他の実施形態では、Z′は、C
1〜C
15のアルコキシまたはアリールオキシ基である。
【0026】
Z″は、P′の主鎖酸素に結合することが好ましい。Z″が水素である場合、カチオン性ポリマーは、末端水酸基を有する。Z″が水素でない場合、Z″は、炭素数1〜15のいかなる好適な末端基とすることができる。1実施形態では、Z″は、C
1〜C
15の化合物の共有結合形態である。他の実施形態では、Z″は、C
1〜C
15のアシル基である。
【0027】
第1カチオン性繰り返し単位は、炭素数13〜約20のカチオン性側鎖を有することが好ましく、より好ましくは、炭素数15〜約20である。
【0028】
1実施形態では、P′は、本質的に25モル%〜約75モル%の第1カチオン性ポリカーボネート繰り返し単位と、約75モル%〜約25モル%の第2カチオン性ポリカーボネート繰り返し単位とからなる。他の実施形態では、P′は、本質的に25モル%〜約50モル%の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位と、約75モル%〜約25モル%の第2カチオン性ポリカーボネート繰り返し単位とからなる。
【0029】
カチオン性カーボネート繰り返し単位は、下記式(2)の構造を有することができる。
【0030】
【化7】
上記式中、
L
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
tが、0〜2の値を有する正の整数であり、
t′が、0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が両方ゼロにはならず、かつ
X′が負帯電イオンである。
【0031】
星印の結合は、ポリマー構造の他の部分への結合ポイントである。カチオン性カーボネート繰り返し単位のポリマー主鎖原子は、式(2)中の1〜6のラベルで示す。この実施例では、カチオン性カーボネート側鎖基は、繰り返し単位の炭素5に結合する。1実施形態では、tおよびt′は、両方とも1であり、それぞれのR′およびR″は、メチルまたはエチルである。
【0032】
式(1)のカチオン性ポリマーにおいては、そのカチオン性カーボネート繰り返し構造単位は、式(2)であり、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25の側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。第2カチオン性繰り返し単位は、炭素数6〜12のL
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0033】
カチオン性カーボネート繰り返し単位は、下記式(3)の構造を有することができる。
【0034】
【化8】
上記式中、
L
b−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含む、C
5〜C
24のカチオン性部分であり、L
bが、少なくとの炭素数2を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであって、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであって、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
X′が負帯電のイオンである。
【0035】
この実施例では、カチオン性側鎖基は、式(2)の2価結合基L
aに相当する、C(=O)O−L
b−Q′(R
a)
u′およびC(=O)O−L
bである。カチオン性側鎖は、ラベル5の主鎖炭素に結合する。
【0036】
式(1)のカチオン性ポリマーにおいてそのカチオン性カーボネート繰り返し単位は、式(3)であり、第1カチオン性カーボネート繰り返し構造単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖C(=O)O−L
b−Q′(R
a)
u′を有する。第2カチオン性カーボネート繰り返し構造単位は、炭素数6〜12のC(=O)O−L
b−Q′(R
a)
u′を有する。
【0037】
カチオン性繰り返しユニットは、式(4)の構造を有することができる。
【0038】
【化9】
上記式中、
L
c−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
5〜C
24のカチオン性部分であり、L
cが、少なくとの炭素数2を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aは、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
X′が負帯電イオンである。
【0039】
この実施例では、カチオン性側鎖は、式(2)のL
aに相当する、N(H)C(=O)O−L
c−Q′(R
a)
u′およびN(H)C(=O)O−L
cである。カチオン性側鎖は、ラベル5の主鎖炭素に結合する。セリノール、スレオニノール、のいずれかまたは両方が、式(4)の繰り返し単位を形成するための有用な出発材料を提供する。
【0040】
式(1)のカチオン性ポリマーにおいて、そのカチオン性カーボネート繰り返し単位は、式(4)であり、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖N(H)C(=O)O−L
c−Q′(R
a)
u′を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返し構造単位は、炭素数6〜12のカチオン性側鎖N(H)C(=O)O−L
c−Q′(R
a)
u′を有する。
【0041】
式(2)のカチオン性繰り返し単位を使用し、式(1)のカチオン性は、式(5)の構造を有することができる。
【0042】
【化10】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′は5〜45の値を有し、
Z′が、1価のC
1〜C
15の第1末端基であり、
Z″が、1価の水素およびC
1〜C
15部分を含む基から選択される第2末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
前記カチオン性ポリマーの前記カチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0043】
式(5)に示すように、ポリマー鎖は、鎖の第1末端(“カルボニル末端”として参照する)にオキシカルボニル基を有し、鎖の第2末端(“酸素末端”として参照する。)に主鎖の酸素を有する主鎖部分を含む。カチオン性カーボネート繰り返し単位の主鎖原子は、1〜6の数字で示されている。
【0044】
式(5)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で13〜約25である。好ましくは、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aは、炭素数5〜約12であり、より好ましくは、炭素数8〜約12である。さらに好ましくは炭素数4〜約18である。第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のQ′(R
a)
u′は、炭素数3〜約18が好ましく、炭素数4〜約18がより好ましい。
【0045】
同様に、式(5)の第2カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、少なくとも炭素数3を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で6〜約12である。
【0046】
1実施形態では、Z″は、水素である。他の実施形態では、第1カーボネート繰り返し単位は、炭素数15〜約20のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0047】
より詳細な非限定的な実施形態として、Z′は、ベンジルオキシ、4−メチルベンジルオキシのいずれかまたはその両方とすることができ、Z″は、水素、アセチルのいずれかまたはその両方とすることができる。
【0048】
末端基Z′、Z″のいずれかまたはその両方および後述する末端基は、抗菌効果を向上させ、かつ、例えば未保護の求核性の水酸末端基により生じる可能性のある、所望しない副反応(例えば、鎖切断)の可能性からカチオン性ポリマーを安定化させる。
【0049】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、式(6)の構造を有することができる。
【0050】
【化11】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
Y′が、ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、薬剤からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む1価の第1末端基であり、
Y″が、水素およびC
1〜C
15部分からなる基から選択される1価の第2末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0051】
式(6)の第1カチオン性カーボネート繰り返しユニットのL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で10〜約25である。1実施形態では、式(6)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0052】
生物学的に活性な化合物は、立体特異的であっても非立体特異的であっても良い。1実施形態では、Y′は、S′で示す、ステロイド(例えばコレステロール)の共有結合形態を含む。ステロイド基は、カチオン性ポリマーの生体適合性を改善することができる。
【0053】
他の実施形態ではY′は、ビタミン(例えば、アルファ−トコフェロール(ビタミンE化合物)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)のいずれかまたは両方)の共有結合形態を含む。
【0054】
Y′は、S′−L′−*の構造を有することができ、ここで、S′は、ステロイド基であり、L′は、炭素数1〜約10を有する単結合またはいかなる好適な2価結合基である。この実施例において、L′は、S′を、ポリカーボネート主鎖のカルボニル末端に結合する。
【0055】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、式(7)の構造を有することができる。
【0056】
【化12】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′は約5〜約45の値を有し、
W′が、1価のC
1〜C
15の第1末端基であり、
W″が、ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、薬剤からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む1価の第2末端基であり、
各L
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
前記カチオン性ポリマーの前記カチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
前記カチオン性ポリマーの前記カチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0057】
式(7)の第1カチオン性カーボネート繰り返しユニットのL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で10〜約25である。1実施形態では、式(7)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0058】
W″は、立体特異的であっても非立体特異的であっても良い。1実施形態では、W″は、コレステロール、アルファ−トコフェロール(ビタミンE化合物)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)またはこれらの組み合わせの共有結合形態を含む。
【0059】
W″は、S′−L″−*の構造を有することができ、ここで、S′は、ステロイド基であり、L″は、炭素数1〜10を有する単結合またはいかなる好適な2価結合基である。この実施例において、L″は、S′を、ポリカーボネート主鎖の酸素末端に結合する。
【0060】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、式(8)の構造を有するランダム・コポリマーとすることができる。
【0061】
【化13】
上記式中、
Z′が、1価のC
1〜C
15の第1末端基であり、
Z″が、1価の水素およびC
1〜C
15部分を含む基から選択される第2末端基であり、
P″が、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位からなるポリマー鎖であって、I)約85モル%〜約99.9モル%のカチオン性カーボネート繰り返し単位、およびII)ステロイド、ビタミン化合物のいずれかまたは両方の共有結合形態を含む、0.1モル%〜約15モル%のカーボネート繰り返し単位からなるポリマー鎖であり、i)P″は、約5〜約45の重合度(DP)を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分および前記主鎖部分に結合したカチオン性側鎖を含み、かつiii)前記カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子含み、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位を有し、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位を有する。
【0062】
式(8)の第1カチオン性カーボネート繰り返しユニットのL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で10〜約25である。1実施形態では、式(8)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0063】
式(8)の抗菌性のカチオン性ポリマーは、式(9)の構造を有することができる。
【0064】
【化14】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、0より大きく、
m′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、m′が、0より大きく、
n′+m′が、約5〜約45を有し、
m′と、n′との比が約15:85〜約0.1:99.9であり、
Z′が、C
1〜C
15の1価の第1末端基であり、
Z″が、水素、またはC
1〜C
15部分からなる群から選択される1価の第2末端基であり、
それぞれのL
dが、単結合および炭素数1〜10を有する1価ラジカルからなる群から選択される独立した2価結合基であり、
それぞれのH′が、ステロイド、ビタミン化合物のいずれかまたは両方の共有結合形態を含む独立した1価ラジカルであり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0065】
式(9)の大かっこ内の繰り返し単位の垂直な重ね合わせは、ポリマー鎖中の繰り返し単位のランダムな分布を示す。
【0066】
式(9)の第1カチオン性カーボネート繰り返しユニットのL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、炭素数が全部で10〜約25である。1実施形態では、式(9)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0067】
H′は、ビタミンE、ビタミンD化合物またはこれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、ビタミン化合物は、アルファ−トコフェロール(ビタミンE化合物)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)またはこれらの組み合わせである。
【0068】
後述する論議は、本開示におけるすべての開示されたポリマー構造に適用されるものである。
【0069】
非限定的に例示する2価のL
a基としては以下のものおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0070】
【化15】
これらの実施例において、星印を付したカルボニルおよびカルバメートの窒素は、ポリカーボネート主鎖に結合し(例えば、上述したカーボネート繰り返し単位におけるラベル5の主鎖炭素)、メチレン基の星印を付した結合は、Q′に結合する。
【0071】
L
aおよびQ′(R
a)
u′は、ともに第4アンモニウム基または第4ホスホニウム基を形成し、これは、正帯電のヘテロ原子Q′が、L
aの炭素に結合し、独立したR
a基に上ってゆくことを意味する。
【0072】
それぞれのR
aは、少なくとも炭素数1を有する。それぞれのR
aは、u′が3となる1価の炭化水素置換基(例えばメチル、エチル、など)である。
【0073】
R
aの環が2価の場合、R
aは、Q′とともに環を形成することができる。例えば、Q′(Ra)
u′は、
【0074】
【化16】
上記式中、星印を付した結合は、L
aに結合し、Q′が窒素であり、u′が2である。この実施形態では、第1のR
aは、2価のブチレン基(*−(CH
2)
4−*)であり、第2のR
aが、メチルである。
【0075】
R
aは、Q′と多環部分を形成することができる。例えばQ′(R
a)
u′としては以下のものを挙げることができる。
【0076】
【化17】
上記式中、星印を付した結合は、L
aに結合し、Q′が窒素であり、u′が1であり、R
aが3価の下記フラグメントである。
【0078】
R
a基は、また、独立して酸素、窒素、イオウ、他のヘテロ原子のいずれかまたはこれらの組み合わせを含むことができる。1実施形態では、それぞれのR
aは、独立して1価の分岐鎖または分岐を持たない炭化水素置換基である。
【0079】
非限定的なR
a基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、およびベンジルを挙げることができる。R
a基は、組み合わせて使用することができる。
【0080】
非限定的なQ′(R
a)u′の例としては、以下のものおよびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0084】
上述した実施例において、正帯電の窒素およびリンは、4価であり、星印を付した結合は、L
aの炭素に結合することを理解されたい。Q′基は、カチオン性ポリマー中に単一でまたは組み合わせとして存在することができる。
【0085】
負帯電のイオンX′としては、ハライド、(例えば、クロリド、ブロミド、およびヨード)、カルボキシレート(例えば、アセテートおよびベンゾエート)、スルホネート(例えばトシレート)、のいずれかまたはこれらの組み合わせを挙げることができる。X′イオンは、単一でまたは組み合わせとして存在することができる。
【0086】
非限定的なカチオン性カーボネート繰り返し単位の例としては、以下のものおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。なお、Xは、負帯電イオンである。
【0091】
一般的に、カチオン性ポリマーの抗菌活性は、カチオン性カーボネート繰り返し単位(第1カチオン性カーボネート繰り返し単位)が25モル%〜100モル%において、ポリカーボネート主鎖からの正帯電ヘテロ原子Q′の間隔によって改善され、ポリマー主鎖から連続して結合する原子中心を6以上とするのが最短の経路である。最短の経路は、ポリマー主鎖への連結するQ′の連続して結合する原子中心の最小数として定義される。連続して結合する原子中心とは、ポリカーボネート主鎖とQ′との間を意味するものとして理解されるものである。例えば、L
a−Q′が、
【0092】
【化26】
である場合、ポリマー主鎖からQ′への最短経路は、数字として5の連続して結合した原子中心を有する。最短経路は、カルボニル基の酸素を含まない。他の実施例としては、L
a−Q′が、
【0093】
【化27】
である場合、ポリマー主鎖からQ′への最短経路は、数字として6の連続して結合した原子中心を有する。最短経路は、アミド基の水素およびカルボニル基の酸素を含まない。他の実施例としては、L
a−Q′が、
【0094】
【化28】
である場合、ポリマー主鎖からQ′への最短経路は、数字として8の連続して結合した原子中心を有する。最短経路は、芳香族環の2炭素およびカルボニルの酸素を含まない。他の実施例としては、L
a−Q′が、
【0095】
【化29】
である場合、ポリマー主鎖からQ′への最短経路は、数字として7の連続して結合した原子中心を有する。最短経路は、芳香族環の3炭素およびカルボニルの酸素を含まない。最後の実施例としては、L
a−Q′が、
【0096】
【化30】
である場合、ポリマー主鎖からQ′への最短経路は、数字として4の連続して結合した原子中心を有する。最短経路は、芳香族環およびカルボニルの酸素を含まない。
【0097】
好ましくは、第1カーボネート繰り返し単位のQ′は、ポリマー鎖から連続して結合した原子中心で6〜約18、より好ましくは連続して結合した原子中心で8〜約15の最短経路でポリマー主鎖から離間する。
【0098】
ステロイド基S′は、天然のヒトステロイド、非ヒトステロイド、合成ステロイド化合物、のいずれかまたはこれらの組み合わせに由来することができる。本開示において、ステロイド基は、下記4環の環構造を含む。
【0099】
【化31】
上記式中、環システムの17炭素の番号付けを示す。ステロイド基は、1つまたはそれ以上の、1つまたはそれ以上の番号付けした環位置に結合する、追加的な置換基を有することができる。4環の環構造の各環は、独立して1つまたはそれ以上の二重結合を有することができる。
【0100】
例示的なステロイド基は、コレステロールに由来するコレステリルを挙げることができ、立体化学なしで、下記のものを挙げることができる。
【0101】
【化32】
コレステリルの非限定的な立体特異性構造としては、以下を挙げることができる。
【0102】
【化33】
上記式中、各立体特異性の非対称中心のR、S立体配置をラベルする。
【0103】
非限定的な追加的なステロイドとしては以下のものを挙げることができる。
【0106】
星印を付した結合は、結合ポイントを示す。例えば、上記のステロイド基のそれぞれの星印を付した結合は、ポリカーボネート主鎖(例えば、L′が単結合である。)の末端カルボニル基に直接結合することができる。代わりに、ステロイド基の星印を付した結合は、ポリカーボネート主鎖(例えば、L′が単結合である。)の末端カルボニル基に直接結合することができる。
【0107】
当業者によれば、ステロイド基の各非対称中心は、R立体異性体、S立体異性体、またはR,S立体異性体の混合物として表現できることができることは理解できるであろう。加えて、ステロイド基S′は、上述した構造の種々の立体異性体を含む。カチオン性ポリマーは、単一の立体異性体または立体異性体の混合物としてステロイド基を含有することができる。
【0108】
1実施形態においては、S′は、下記構造で示されるアイソマーの混合したコレステリル基である。
【0110】
より具体的には、ステロイド含有カチオン性ポリマーは、下記式(10)の構造を有する。
【0111】
【化37】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
S′−L′が、L′が、炭素数1〜約10の1価または2価結合基であり、S′が、ステロイドの共有結合形態を含む第1末端基であり、
Y″が、水素およびC
1〜C
15部分からなる基から選択される1価の第2末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位を有し、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位を有する。
【0112】
上記式(10)において、L′は単結合であり、S′は、ポリカーボメート主鎖の末端カルボニル基に結合する。1実施形態では、L′は、エチレンオキシド(*−CH
2CH
2O−*)、ポリプロピレンオキシド(*−CH
2CH
2CH
2O−*)、トリ(エチレンオキシド)(*−CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2O−*)のいずれか1つまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルキレンオキシドを含み、酸素の星印を付した結合は、ポリカーボネート主鎖の末端カルボニル基に結合し、炭素の星印を付した結合は、S′に結合する。
【0113】
上記式(10)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のLaおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(10)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0114】
ステロイド含有カチオン性ポリマーは、さらに上述したカチオン性カーボネート繰り返し単位の1またはそれ以上の組み合わせを含むことができる。
【0115】
ステロイド含有カチオン性ポリマーは、下記式(11)の構造を有することができる。
【0116】
【化38】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
Y′が、1価の水素およびC
1〜C
15部分からなる基から選択される第1末端基であり、
S′−L″が、炭素数1〜約10の1価または2価結合基であり、S′が、ステロイドの共有結合形態を含む第2末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0117】
基S′−L″は、ポリカーボネート主鎖の酸素末端に結合し、Y′は、カーボネート主鎖のカルボニル末端に結合する。
【0118】
上記式(11)において、前記第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(11)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
2つのカチオン性ポリマー鎖を有する(2腕カチオン性ポリマー)抗菌性のカチオン性ポリマー
【0119】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(12)の構造を有することができる。
【0120】
【化39】
上記式中、C′は、C
2−C
15でポリマー鎖P
bに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を含み、
Z
cは、水素およびC
1〜C
15部分からなる基から選択される第1末端基であり、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性ポリカーボネート繰り返し単位からなり、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位を含み、i)カチオン性のポリマーが全部で5〜約45のカチオン性のカーボネート繰り返し単位を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分および前記主鎖部分に結合したカチオン性側鎖を含み、かつiii)前記カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子Q′を含み、
カチオン性ポリマーのカチオン性の全カーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性の全カーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0121】
上記式(12)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のLaおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(12)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0122】
1実施形態では、それぞれのZ
cは、水素である。他の実施形態では、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位の正に帯電したヘテロ原子Q′は、Q′と主鎖部分との間において連続して結合した原子中心で6〜約15を有する最短経路によって主鎖部分から離間する。
【0123】
上記式(12)のより具体的なカチオン性ポリマーは、下記式(13)の構造を有する。
【0124】
【化40】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
C′は、C
2−C
15でポリマー鎖P
bに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を含み、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性ポリカーボネート繰り返し単位からなり、
それぞれのZ
cが、水素およびC
1〜C
15の部分からなる基から選択される1価の末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0125】
上記式(13)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のLaおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(13)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0126】
C′は、開環重合によってカチオン性ポリマーを製造するために使用する二親核開始剤の残基である。
【0127】
他の抗菌性ポリマーにおいては、2つのカチオン性ポリマー鎖を結合するフラグメントは、ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、および薬剤からなる群から選択される、生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む。これらの抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(14)の構造を有する。
【0128】
【化41】
上記式中、
C″は、ポリマー鎖P
bに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子、iii)ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、および薬剤からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含み、
それぞれのZ
cが、水素およびC
1〜C
15の部分からなる基から選択される1価の末端基であり、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位を含み、i)カチオン性のポリマーが全部で5〜約45のカチオン性のカーボネート繰り返し単位を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分および前記主鎖部分に結合したC
6−C
25のカチオン性側鎖を含み、かつiii)前記カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子Q′を含み、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0129】
上記式(14)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(14)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0130】
第1カチオン性カーボネート繰り返し単位性に帯電したヘテロ原子Q′は、は、Q′と、主鎖部分との間において連続して結合した原子中心で6〜約18を有する最短経路によって主鎖部分から離間する。
【0131】
1実施形態ではC″は、コレステロールの共有結合形態を含む。他の実施形態では、C″は、アルファ−トコフェロール、エルゴカルシフェロール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ビタミンの共有結合形態を含む。
【0132】
より具体的な式(14)のカチオン性ポリマーは、下記式(15)の構造を有する。
【0133】
【化42】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
C″は、ポリマー鎖P
bに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子、iii)ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、および薬剤からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含み、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位を含み、
それぞれのZ
cが、水素およびC
1〜C
15の部分からなる基から選択される1価の末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、独立してt=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0134】
上記式(14)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(14)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0135】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(16)を有することができる。
【0136】
【化43】
上記式中、
C′は、C
2−C
15でポリマー鎖P
cに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
cに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
cに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を含み、
それぞれのZ
cが、水素およびC
1〜C
15の部分からなる基から選択される1価の末端基であり、
それぞれのP
cが、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位からなるポリマー鎖であって、I)約85モル%〜99.9モル%のカチオン性カーボネート繰り返し単位、およびII)ステロイド、ビタミン化合物のいずれかまたは両方の共有結合形態を含む、0.1モル%〜約15モル%のカーボネート繰り返し単位からなるポリマー鎖であり、i)P″は、全数で約5〜約45のカチオン性ポリマー繰り返し単位を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分およびC
6−C
25の主鎖部分に結合したカチオン性側鎖を含み、かつiii)カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子含み、
カチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0137】
上記式(16)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(16)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0138】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(17)を有することができる。
【0139】
【化44】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、0より大きく、
m′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、m′が、0より大きく、
n′+m′が、約5〜約45を有し、
m′と、n′との比が約15:85〜約0.1:99.9であり、
C′は、C
2−C
15でポリマー鎖P
cに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
cに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
cに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を含み、
それぞれのZ
cが、水素およびC
1〜C
15の部分からなる基から選択される1価の末端基であり、
それぞれのL
dが、独立して炭素数1〜約10の単結合および1価ラジカルから選択される2価結合であり、
それぞれのH′が、ステロイド、ビタミン化合物のいずれかまたは両方の共有結合形態を含む独立した1価ラジカルであり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0140】
上記式(17)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のLaおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(17)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0141】
H′は、ビタミンE、ビタミンD化合物またはこれらの組み合わせを含むことができる。1実施形態では、H′は、ビタミン化合物は、アルファ−トコフェロール(ビタミンE化合物)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)またはこれらの組み合わせの共有結合形態を含む。
【0142】
抗菌性のカチオン性ポリマーは、下記式(18)を有することができる。
【0143】
【化45】
上記式中、
C′は、C
2−C
15でポリマー鎖P
bに結合する2価結合基であり、C″は、i)第1ポリマー鎖P
cに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を含み、
Y
cが、独立して、水素、ステロイドの共有結合形態を含む基、ビタミンの共有結合形態を含む基からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む基を含む群から選択される1価の第1末端基であり、
Y
dが、独立して、水素、ステロイドの共有結合形態を含む基、ビタミンの共有結合形態を含む基からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む基を含む群から選択される1価の第2末端基であり、
それぞれのポリマー鎖P
bが、i)全数で約5〜約45のカチオン性ポリマー繰り返し単位を有し、ii)カチオン性のカーボネート繰り返し単位のそれぞれは、前記ポリマー鎖の主鎖部分および主鎖部分に結合したカチオン性側鎖を含み、かつiii)カチオン性側鎖は、第4アンモニウム基、第4ホスホニウム基のいずれかまたは両方である正帯電したヘテロ原子含み、
カチオン性ポリマーのカチオン性の全カーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0144】
上記式(18)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のLaおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(18)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
【0145】
Y
c、Y
dのいずれかまたは両方は、ステロイド、ビタミンのいずれかまたはその両方の共有結合形態を含むことができる。
【0146】
より具体的には、式(18)のカチオン性ポリマーは、下記式(19)を有することができる。
【0147】
【化46】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′が、約5〜約45の値を有し、
C′は、ポリマー鎖P
bに結合するC
2〜C
15の2価結合基であり、C′は、i)第1ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第1ヘテロ原子、ii)第2ポリマー鎖P
bに結合し、窒素、酸素、イオウからなる群から選択される第2ヘテロ原子を有し、
それぞれのポリマー鎖P
bは、本質的にカチオン性のカーボネート繰り返し単位を含み、
Y
cが、独立して、水素、ステロイドの共有結合形態を含む基、ビタミンの共有結合形態を含む基からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む基を含む群から選択される1価の第1末端基であり、
Y
dが、独立して、水素、ステロイドの共有結合形態を含む基、ビタミンの共有結合形態を含む基からなる群から選択される生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含む基を含む群から選択される1価の第2末端基であり、
それぞれのL
a−Q′(R
a)
u′が、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を含むC
6〜C
25のカチオン性側鎖であり、L
aが、少なくとの炭素数3を有する2価結合基であり、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、少なくとも炭素数1を有し、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まず、かつ
それぞれのX′が負帯電イオンであり、かつ
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の約25%〜100%が、炭素数10〜約25のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第1カチオン性カーボネート繰り返し単位であり、
カチオン性ポリマーのカチオン性のカーボネート繰り返し単位の0〜約75%が、炭素数6〜9のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する指定された第2カチオン性カーボネート繰り返し単位である。
【0148】
上記式(19)において、第1カチオン性カーボネート繰り返し単位のL
aおよびQ′(R
a)
u′は、独立して炭素数3〜約22を有することができるが、L
a−Q′(R
a)
u′は、全部で炭素数10〜約25である。1実施形態では、上記式(19)の第1カチオン性カーボネート繰り返し単位は、炭素数13〜約25を有し、第2カチオン性カーボネート繰り返しユニットは、炭素数6〜12のカチオン性側鎖L
a−Q′(R
a)
u′を有する。
カチオン形成環状カーボネート・モノマー
【0149】
開示されるカチオン性ポリマーの好ましい製造方法は、重合の前または後でカチオン性部分を形成することができる環状カーボネート・モノマーを使用する。これらは、カチオン形成モノマーとして参照され、下記式(20)を有する。
【0150】
【化47】
上記式中、
環状の原子が1から6の数字で示されており、
L
aが、少なくとも炭素数3の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
aに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
aが共に炭素数6〜25を有しており、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
tが、0〜2の値を有する正の整数であり、
t′が、0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が両方ゼロにはならない。
【0151】
上記式(20)のカチオン形成モノマーは、環置換基L
a−E′を有する。この環置換基L
a−E′は、カチオン形成モノマーの開環重合により形成される初期モノマーの側鎖となる。E′は、側鎖L
a−E′が反応して、カチオン性ポリマーのC
6−C
25のカチオン性側鎖であるL
a−Q′(R
a)
u′を生成する限り、親電子性、親核性基のいずれかまたはそれら両方とすることができる。好ましくは、E′は、第4アミンと反応して第4アンモニウム基を形成することができるか、第4ホスフィンと反応して第4ホスホニウム基を形成することができるか、またはそれら両方を形成することができるかする能力を有する残基である。
【0152】
カチオン形成モノマーは、立体特異性または非立体特異性とすることができる。
【0153】
1実施形態では、式(20)のtおよびt′は、1であり、それぞれ炭素のR′が水素であり、炭素6のそれぞれのR′が水素であり、炭素5のR″が水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される。
【0154】
式(20)のカチオン形成モノマーの開環重合は、下記式(21)の繰り返し単位を有する初期ポリカーボネートを生成する。
【0155】
【化48】
上記式中、
主鎖原子は、1〜6の数字で示されており、
L
aが、少なくとも炭素数3の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
aに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
aが共に炭素数6〜25を有しており、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
tが、0〜2の値を有する正の整数であり、
t′が、0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が両方ゼロにはならない。
【0156】
より具体的なカチオン生成モノマーは、下記式(22)を有する。
【0157】
【化49】
上記式中、
環の原子5がラベルされており、
L
bが、少なくとも炭素数2の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
bに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
bが共に炭素数5〜24を有しており、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルである。
【0158】
下記式(22)のカチオン形成モノマーの開環重合は、式(23)の繰り返し単位を有するポリカーボネートを生成する。
【0159】
【化50】
上記式中、
主鎖の原子5がラベルされており、
L
bが、少なくとも炭素数2の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
bに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
bが共に炭素数5〜24を有しており、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルである。
【0160】
カチオン生成モノマーは、下記式(24)を有する。
【0161】
【化51】
上記式中、
環の原子5がラベルされており、
L
cが、少なくとも炭素数2の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
cに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
cが共に炭素数5〜24を有しており、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルである。
【0162】
上記式(24)のカチオン形成モノマーの開環重合は、下記式(25)の繰り返し単位を有する初期ポリカーボネートを製造する。
【0163】
【化52】
上記式中、
主鎖の原子5がラベルされており、
L
cが、少なくとも炭素数2の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
cに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
cが共に炭素数5〜24を有しており、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
R″が、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルである。
【0164】
例示的なカチオン形成モノマーとしては、表1に記載の環状カーボネート・モノマーを挙げることができる。
【0166】
ROPのための親核開始剤は、概ね、アルコール、アミン、チオール、またはこれらの組み合わせを含む。1つのカチオン性ポリマー鎖を有する上述したカチオン性ポリマー(1腕カチオン性ポリマー)について、ROP開始剤は、1親核性で非ポリマー性の開始剤(例えば、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコールなど)を挙げることができる。いくつかの実施例では、ROP開始剤は、ステロイド、非ステロイドホルモン、ビタミン、および薬剤からなる群から選択される、生物学的に活性な化合物の共有結合形態を含むことができる。例えば1親核性ROP開始剤としては、コレステロール、アルファ−トコフェロール、およびエルゴカルシフェロールを挙げることができる。
【0167】
より具体的な1親核性ROP開始剤は、ステロイド基S′を含む。この開始剤は、下記式(26)の構造を有することができる。
【0168】
【化53】
上記式中、S′は、ステロイド基であり、L
eは、i)炭素数1〜約10で、ii)ROPのための親核開始基を有する1価基である。非限定的な、下記式(26)のROP開始剤の例としてはmChol−OPrOH、
【0169】
【化54】
およびChol−OTEG−OH
【0170】
【化55】
を挙げることができる。
上記の実施例において、S′は、コレステリルである。後述するカチオン性ポリマーの好適な製造方法を使用して、カチオン性ポリマーのS′−L′−*フラグメントは、ポリカーボネート主鎖に結合した場合のROP開始剤の残基である。Chol−OPrOHから得られるS′−L′−*フラグメントは、以下の通りである。
【0171】
【化56】
Chol−OTEG−OHから得られるS′−L′−*フラグメントは、以下の通りである。
【0173】
ROP開始剤は、単一または異なるROP開始剤との組み合わせでも使用することができる(例えば、異なるステロイド基、異なるL
e基のいずれかまたは両方を有する開始剤)。ROP開始剤は、立体特異的であっても良く、また非立体特異的であっても良い。
2腕カチオン性ポリマーのための二親核開始剤
【0174】
上述した2ポリマー鎖を有するカチオン性ポリマー(2腕カチオン性ポリマー)を形成するために使用されるROP開始剤は、二親核開始剤である。例示的な二親核ROP開始剤としては、エチレングリコール、ブタンジオール、1,4−ベンゼンジメタノール、およびBn−MPAを挙げることができる。
【0176】
ステロイド基を含む二親核ROP開始剤の例は、Chol−MPAである。
【0178】
上記式(20)の環状カーボネート・モノマーを使用して、開示したカチオン性ポリマーの製造方法を説明する。式(20)の環状カーボネート・モノマー、触媒、任意的な促進剤、1親核性ROP開始剤(任意的にステロイド基を含有する)、および溶媒を含む反応混合物を形成する。反応混合物を、激しく撹拌し、初期ポリマーを形成する。任意的に初期ポリマーを末端保護し、末端保護初期ポリマーとすることができる。得られたポリマーは、下記式(27)の構造を有する。
【0179】
【化60】
上記式中、
n′が、カチオン性カーボネート繰り返し単位の数であり、n′は5〜45の値を有し、
Z′が、1価のC
1〜C
15の第1末端基であり、
Z″が、1価の水素およびC
1〜C
15部分を含む基から選択される第2末端基であり、
L
aが、少なくとも炭素数3の2価結合基であり、
E′が、反応により、L
aに結合するカチオン性部分Q′(R
a)
u′を生成する置換基であって、Q′が、4価の正に帯電した窒素またはリンであり、u′が、1〜3の値を有し、それぞれのR
aが、1〜3価を有する独立したラジカルであり、それぞれのR
aが、炭素数1以上を有し、Q′(R
a)
u′およびL
aが共に炭素数6〜25を有しており、
それぞれのR′が、独立して水素、ハロゲン、メチル、エチルからなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのR″が、独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される1価ラジカルであり、
それぞれのtが、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
それぞれのt′が、独立して0〜2の値を有する正の整数であり、
tおよびt′が、t=0、t′=0であるカチオン性カーボネート繰り返し単位を含まない。
【0180】
Z′は、ROP開始剤の残基である。1実施形態では、Z′は、ステロイド部分を含むS′−L′基である。この実施例では、初期ポリマーのそれぞれのカーボネート繰り返し単位は、側鎖であるE′基を含む。
【0181】
ROPによって形成された初期ポリマーのリビング末端(酸素末端)は、反応性の水酸基(第2末端基がZ″=H)を有し、これは、ROPを開始させる能力を有する。リビング末端は、末端保護剤により処理することができ、これによって、さらなる鎖の成長を防止することができるとともに、鎖切断などの望ましくない副反応からポリマーを保護する第2末端基Z″が形成される。重合および末端保護は、同一の容器内で初期ポリマーを単離することなく発生する。末端保護剤としては、例えば、末端水酸基をエステルに変換する、カルボン酸無水物、カルボン酸クロリド、反応性エステル(例えば、p−ニトロフェニルエステル)といった材料を挙げることができる。1実施形態では、末端保護剤は、アシル化剤であり、第2末端基Z″が、アシル基である。他の実施形態では、アシル化剤は、無水酢酸であり、第2末端基Z″がアセチル基である。他の実施形態では、末端保護剤は、ステロイド基、ビタミンまたはこれらの組み合わせの共有結合形態を含む。
【0182】
初期ポリマー、末端保護された初期ポリマーのいずれかまたは両方は、化学的、熱的、光化学的のいずれか1つまたはこれらの組み合わせで処理されて、E′を正帯電のQ′(R
a)
u′基へと変換でき、これによってカチオン性ポリマーが形成される。例えばE′は、親電子性残基(例えば、クロリド、ブロミド、ヨード、スルホン酸エステルなど)とすることができ、この親電子性残基は、Lewis塩基(例えば、第4アミン、トリアルキルフォスフィンなど)と、親核置換反応して、第4アンモニウム基、ホスホニウム基のいずれかまたは両方を形成する。1実施形態においては、E′は、クロリド、ブロミド、ヨードのいずれかまたはこれらの組み合わせである。他の実施形態では、環状カーボネート・ポリマーは、式(22)の化合物であり、初期ポリマーは、式(23)の繰り返し単位を有する。他の実施形態では、環状カーボネート・モノマーは、式(24)の化合物であり、初期ポリマーは、式(25)の繰り返し単位を含む。
【0183】
また、想定するものは、正帯電のQ′基を含むカチオン性の環状カーボネート・モノマーを使用するカチオン性ポリマーの形成方法である。この実施例では、ROPは、リビング末端基(すなわち、後続するROP開始させることができる親核末端保護基)を有する初期カチオン性ポリマーを形成する。リビング末端ユニットは、末端保護することにより、所望されない副反応を防止することができる。
【0184】
親電子性E′基との親核置換反応により第4アミンを形成する第4アミンの非限定的な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソ−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル−イソ−プロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルメチルアミン、ジエチルペンチルアミン、ジエチルブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、N−(n−プロピル)イミダゾール、N−イソプロピルイミダゾール、N−(n−ブチル)イミダゾール、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0185】
親電子性のE′基との置換反応により第4ホスホニウム基を形成するための第4フォスフィンの非限定的な例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、エチルジメチルホスフィン、プロピルジメチルホスフィン、ブチルジメチルホスフィン、ペンチルジメチルホスフィン、ヘキシルへプチルジメチルホスフィン、ヘプチルジメチルホスフィン、オクチルジメチルホスフィン、メチルジエチルホスフィン、プロピルジエチルホスフィン、ブチルジエチルホスフィン、ペンチルジエチルホスフィン、ヘキシルジエチルホスフィン、ヘプチルジエチルホスフィン、オクチルジエチルホスフィン、ペンチルジプロピルホスフィン、ペンチルジブチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジペンチルブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、ヘキシルジプロキルホスフィン、ヘキシルジブチルホスフィン、シクロヘキシル−ジメチルホスフィン、シクロヘキシルジエチルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジヘキシル−ジエチルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジヘキシルエチルホスフィン、ジヘキシルプロピルホスフィン、ベンジルジメチルホスフィン、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0186】
ステロイドまたはビタミンの共有結合形態を担持する環状カーボネート・ポリマーの非限定的な例を、表2にリストする。
【0188】
開環重合は、ほぼ室温またはそれより高く、具体的には15℃〜200℃、より具体的には20℃〜80℃で行うことができる。好ましくは、ROPは、室温で行われる。反応時間は、溶媒、温度、攪拌速度、圧力および装置によって変化するものの、概ね1〜100時間で完結する。
【0189】
ROP反応は、好ましくは、溶媒中で行われる。非限定的な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフロリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または上述した溶媒の1つを含む組み合わせを挙げることができる。好適なモノマー濃度は、約0.1〜5モル/L、より好ましくは、約0.2〜4モル/Lである。
【0190】
ROP重合は、窒素またはアルゴンといった不活性な乾燥環境で行われ、その圧力は100MPa〜500MPa(1atom〜5atom)、より典型的には、100MPa〜200MPa(1atom〜2atom)で行われる。反応完結に際し、溶媒は、減圧によって除去することができる。
【0191】
好適さの点で劣るが、ROP重合のための触媒としては、金属酸化物として、例えばテトラメトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−iso−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−iso−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジ−iso−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタニウム、テトラ−iso−プロポキシチタニウム、テトラ−n−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−sec−ブトキシチタニウム、テトラ−t−ブトキシチタニウム、トリ−iso−プロポキシガリウム、トリ−iso−プロポキシアンチモン、トリ−iso−ブトキシアンチモン、トリメトキシボロン、トリ−iso−プロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリ−iso−ブトキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリ−t−ブトキシボロン、トリ−iso−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−iso−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−iso−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウムやテトラ−t−ブトキシゲルマニウムなど、ハロゲン化化合物として、例えば五塩化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチウム、塩化スズ(IV)、塩化カドミウムや三フッ化ホウ素ジエチルエーテルなど、アルキルアルミニウムとして、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウムやトリ−iso−ブチルアルミニウムなど、アルキル亜鉛として、例えばジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛やジイソプロピル亜鉛など、ヘテロポリ酸として、例えばリンングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸やこれらのアルカリ金属塩など、ジルコニウム化合物として、塩化ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムや硝酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0192】
好ましくは、開環重合に使用する触媒の化学式は、下記群から選択される金属のイオン性または非イオン性の形態を含まない。上記群は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマス、テルリウム、ポロニウムおよび周期表第3〜12族の金属からなる群から選択される金属を含む。周期表第3〜12族の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロタクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウムである。
【0193】
好適な触媒は、有機触媒であり、その化学式は上記の金属を含まない。開環重合のための有機触媒の例としては、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミンおよびベンジルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの第3アミン、ホスフィン、N−ヘテロ環状カルベン類(NHC)、二機能性アミノチオウレア類、ホスファゼン、アミジンおよびグアニジンが挙げられる。
【0194】
さらに特別な有機触媒は、N−ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシルチオウレア(TU)である。
【0196】
他のROP有機触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単供与水素結合触媒は、下記式(28)を有する。
【0197】
【化62】
上記式中、R
2は、水素または1〜20個の炭素を有する1価のラジカルを表し、例えばアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基またはこれらの組合せである。例示的な単供与性の水素結合触媒を表3に列挙する。
【0199】
二重供与性の水素結合触媒は、2つのHFP基を有し、式(29)によって表される。
【0200】
【化63】
上記式中、R
3は、1〜20個の炭素を含む2価のラジカル架橋基であり、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基やこれらの組合せなどがある。式(29)の二重水素結合触媒の代表例を、表4にリストする。特別な実施形態では、R
2は、アリーレン基または置換アリーレン基であり、HFP基は、芳香環上で互いにメタ位を占める。
【0202】
1実施形態では、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFABおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0203】
また、想定するのは、支持体に結合されたHFP含有基を含む触媒である。1実施形態では、支持体は、ポリマー、架橋されたポリマービーズ、無機物粒子または金属粒子を含む。HFP含有ポリマーは、公知の方法によって形成することができ、方法としては、HFP含有ポリマーの直接的な重合(例えば、メタクリレートモノマーである3,5−HFA−MA、またはスチリルモノマーである3,5−HFA−St)が挙げられる。直接的な重合(またはコモノマーによる重合)に付され得るHFP含有モノマー中の官能基としては、アクリレート、メタクリレート、アルファ、アルファ、アルファ−トリフルオロメタクリレート、アルファ−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテルおよび当分野で公知の他の基が挙げられる。連結基の例としては、C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基またはこれらの組合せが挙げられる。また、想定するのは、電荷をもつHFP含有基を含む触媒であり、該HFP含有基は、ポリマーまたは支持体表面の逆電荷をもつ部位に、イオン性会合によって結合する。
【0204】
ROP反応混合物は、少なくとも1種の有機触媒を含み、適切な場合にいくつかの有機触媒を共に含む。ROP触媒は、環状カルボニルモノマーに対して1/20〜1/40,000モルの割合で、好ましくは環状カルボニルモノマーに対して1/1,000〜1/20,000モルの割合で添加される。
ROP促進剤
【0205】
ROP重合は、任意選択の促進剤、具体的には窒素塩基の存在下で行うことができる。例示的な窒素塩基性促進剤を後段に列挙するが、ピリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(Me
2NCy),4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トランス1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン(Sp)、1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)またはそれらの組合せが挙げられ、これらを表5に示す。
【0208】
1実施形態では、促進剤は、2個またか3個の窒素を有し、それぞれがルイス塩基として、例えば(−)−スパルテインの構造で関与しうる。さらに強い塩基は、一般に重合速度を高める。
【0209】
触媒および促進剤は、同じ材料とすることができる。例えば、ある開環重合は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)のみを使用して、別の触媒または促進剤を存在させることなく行うことができる。
【0210】
触媒は、環状カルボニルモノマーの総モル数に基づいて、好ましくは約0.2〜20モル%、0.5〜10モル%、1〜5モル%または1〜2.5モル%の量で存在する。
【0211】
窒素塩基促進剤は、使用する場合、環状カルボニルモノマーの総モル数に基づいて、好ましくは0.1〜5.0モル%、0.1〜2.5モル%、0.1〜1.0モル%または0.2〜0.5モル%の量で存在する。先に述べたように、ある例では、特定の環状カルボニルモノマーに応じて、触媒および窒素塩基促進剤を同じ化合物とすることができる。
【0212】
開始基は、環状カルボニルモノマーの総モル数に基づいて、好ましくは0.001〜10.0モル%、0.1〜2.5モル%、0.1〜1.0モル%または0.2〜0.5モル%の量で存在する。
【0213】
特定の実施形態では、環状カルボニルモノマーの総モル数に基づいて、触媒は、約0.2〜20モル%の量で存在し、窒素塩基促進剤は、0.1〜5.0モル%の量で存在し、開始剤の求核性の開始基は、0.1〜5.0モル%の量で存在する。
【0214】
触媒は、選択的沈殿法によって除去することができ、また、固相に支持された触媒の場合には、単に濾過によって除去することができる。触媒は、カチオン性オリゴマーと残渣の触媒との総重量に基づき、0重量%(重量パーセント)〜約20重量%、好ましくは0重量%(重量パーセント)〜約0.5重量%の量で存在させることができる。カチオン性オリゴマーは、好ましくは残渣の触媒を含まない。
平均分子量
【0215】
カチオン性ポリマーは、約1500〜約50,000の、さらに具体的にはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定されるところ、約1500〜約30,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。カチオン性ポリマーの前駆体ポリマー、カチオン性ポリマーのいずれか1つまたはどちらも、1.01〜約2.0の、さらに好ましくは1.01〜1.30の、いっそう好ましくは1.01〜1.25の多分散性指数(PDI)を好ましくは有する。
【0216】
幾つかの例では、カチオン性ポリマーは、脱イオン水中で、単独でナノ粒子ミセルに自己会合することができる。カチオン性ポリマーは、約15mg/L〜45mg/Lの臨界ミセル濃度(CMC)を有することができる。
【0217】
このミセルは、約7mg/L〜約500mg/Lの微生物増殖に対する最小発育阻止濃度(MIC)を有する。幾つかの例では、MICは、CMCを下回るが、このことは、抗菌活性がカチオン性ポリマーの自己集合に依存しないことを示している。
【0218】
さらに開示されるものは、開示されるカチオン性ポリマーに細菌を接触させ、細菌を死滅させる方法である。
【0219】
後述する実施例では、下記の定義を適用する。
【0220】
HC50は、哺乳動物の赤血球細胞の50%を溶血させるカチオン性ポリマーの濃度(mg/Lにおいて)として定義される。HC50の値は、500mg/Lまたはそれ以上であることが望ましい。
【0221】
HC20は、哺乳動物の赤血球細胞の20%を溶血させるカチオン性ポリマーの濃度(mg/Lにおいて)として定義される。HC20の値は、500mg/Lまたはそれ以上であることが望ましい。
【0222】
最小発育阻止濃度(MIC)は、所与の微生物の増殖を24時間阻止するのに必要なカチオン性ポリマーの最小濃度(mg/L)として規定される。500mg/L未満のMICが望ましい。いっそう望ましくは、250mg/L未満のMICである。低いMICであるほど、高い抗菌活性を表す。
【0223】
最小殺菌濃度(MBC)は、所与の微生物を殺傷するのに必要なカチオン性ポリマーの最小濃度(mg/L)として規定される。低いMBCであるほど、高い抗菌活性を表す。
【0224】
HC50選択性は、HC50/MICの比として規定される。3以上のHC50選択性が望ましい。高いHC50選択性の値であるほど、微生物細胞に対する大きな活性と、哺乳類細胞に対する少ない毒性とを表す。同様に、HC20選択性が、HC20/MICの比として規定される。3以上のHC20選択性が望ましい。
【0225】
例示的な細菌としては、グラム陽性のStaphylococcus epidermidis(S.epidermidis)、グラム陽性のStaphylococcus aureus(S.aureus)、グラム陰性のEscherichia coli(E.coli)、グラム陰性のPseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、グラム陽性のCandida albicans(C.albicans)、グラム陽性のメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、グラム陽性のバンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)、グラム陰性のAcinetobacter baumannii(A.baumannii)、グラム陰性の酵母Cryptococcus neoformans(C.neoformans)およびグラム陰性のKlebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)が挙げられる。
【0226】
一般に、カチオン性ポリマーは、5〜約45のDPを有し、ここで、カチオン性のカーボネート・サブユニットの側鎖L
a−Q′(R
a)
u’基の75%を超える分が8個またはそれ以下の炭素を含有したポリマーは、グラム陰性、グラム陽性のいずれかまたは両方の細菌および真菌に対して弱い活性を有していた。さらに、低いDP(<10)では、カチオン性ポリマーのHC50、HC20のいずれか1つまたはどちらの値も、概ね500mg/Lを下回るが、このことは、殺生物特性の傾向を示している。さらに高いHC50、HC20のいずれか1つまたはどちらの値(500mg/L以上)とも、概して、約10〜約45のDPが好ましい。さらに後述する実施例では、カチオン性カーボネート・サブユニットの側鎖基の少なくとも約25%が13個以上の炭素を含有し、DPが約10〜約30であった場合に、カチオン性ポリマーは、グラム陰性、グラム陽性のいずれかまたは両方である微生物および真菌に対して、高い活性(MC<500mg/L)を有していた。高められた阻害有効性およびさらに低い赤血球毒性(さらに高いHC50値)は、ステロイド末端基Z′を使用することによって得られる。溶血選択性(HC50/MIC)も上昇する。Z′基、Z″基、Z
c基およびC′基は、抗菌活性、溶血選択性をさらに調整し、第2の機能(例えば細胞認識能、細胞膜透過性の増強など)を付与するために使用することができる。
【0227】
実施例は、またアルファ−トコフェロール(ビタミンE化合物)カーボネート繰り返し構造単位、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)繰り返し構造単位のいずれか1つまたは両方が10モル%以下では、また、カチオン性カーボネート・サブユニットの25%〜100%が10〜25個の炭素を含む場合に、MICを低下させる(すなわち、微生物に対する毒性を増加させる)か、HC50値を増加させる(すなわち、哺乳類の赤血球に対する毒性を低下させる)かのいずれかまたは両方について有効である。
【0228】
幾つかの場合、カチオン性ポリマーで培養したヒト皮膚繊維芽細胞の細胞生存性は、75%を超えた。
【0229】
低い平均質量、高い抗菌活性、および低い細胞毒性は、上述したカチオン性ポリマーを、傷治療、乾癬治療、抗菌剤、および家庭および病院の表面や医療用機器の滅菌といった、広範な医療使用および家庭使用に対して高く魅力的なものとする。1実施形態では、細菌を死滅させる医薬用組成物は、開示するカチオン性ポリマーの1または2以上を含む。医薬用組成物は、溶液、粉末、錠剤、ペースト剤、または軟膏の形態とすることができる。医薬用組成物は、水を含むことができ、カチオン性ポリマーの濃度は、カチオン性ポリマーの臨界ミセル濃度を下回る。医薬用組成物は、注射することや、適時的に投与することのいずれかまたはその両方を行うことができる。
【0230】
後述する実施例は、カチオン性ポリマーの製造および特性を示す。
【実施例】
【0231】
実施例で使用した材料を、表6にリストする。
【0232】
【表6】
【0233】
本開示において、Mnは、数平均分子量であり、Mwは、重量平均分子量であり、MWは、1分子の分子量である。
【0234】
特に断らない限り、すべての材料は、シグマ−アルドリッチ、TCIまたはメルクから購入した。すべての溶媒は、分析グレードであり、Ficher ScienceまたはJ.T. Bakerから購入し、受領したものを使用した。グローブボックスへの移動する前に、モノマーおよび他の試薬(例えば、開始剤、モノマーなど)を、高真空下のフリーズ・ドライにより、よく乾燥させた。
【0235】
N−ビス(3,5−トリフロロメチル)フェニル−N′−シクロヘキシルチオウレア(TU)をR.C.Pratt、B.G.G.Lohmeijer、D.A.Long、P.N.P.Lundberg、A.Dove、H.Li、C.G.Wade、R.M.Waymouth、およびJ.L.Hendrick、Macromolecules、2006、39(23)、7863−7871によって報告されるように製造し、CaH
2上、乾燥THF中で撹拌して乾燥させ、フィルタし、真空下で溶媒を除去した。
【0236】
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)をCaH
2上で撹拌し、グローブボックスに移送する前に真空蒸留した。
臨界ミセル濃度(CMC)の測定
【0237】
カチオン性ポリマーのそれぞれの臨界ミセル濃度(CMC)をプローブとしてピレンを使用した蛍光分光法により見積もった。0.616マイクロモルのピレンを含有する種々の濃度(0.25〜2000mg/L)でMHB II中の水10%v/vの溶液の系列を調整した。一晩放置した後、室温で、溶液の励起スペクトルを325nm〜360nm、発光波長を390nm、バンド幅1nmとして、蛍光分光光度計(Hitachi F02500)を使用して記録した。I339に対するI335の強度比を、ポリマー濃度の関数としてプロットした。CMC値は、屈曲点での曲線への接線と、低濃度のポイントにおける垂直方向の接線との交点から得た。
I.モノマー合成
【0238】
MTC−OH(MW 160.1)の製造
【0239】
【化64】
【0240】
MTC−OHは、R.C.Prattら、Chemical Communication、2008、114−116の方法によって調整することができる。
【0241】
MTC−C6H5(MW 326.2)の製造
【0242】
【化65】
【0243】
100mLの丸底フラスコに、bis−MPA(5.00g、37mmol、MW134.1)、bis−(ペンタフロロフェニル)カーボネート(PFC、31.00g、78mmol、MW 394.1)、およびCsF(2.5g、16.4mmol)を投入し、70mLのテトラヒドロフラン(THF)で洗浄した。最初に反応は不均一系であったが、1時間後には透明な均一溶液が形成され、それを20時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をメチレン黒ライドに再溶解した。溶液を約10分静置し、その時点でペンタフロロフェノール副生物が析出し、これを定量的に回収した。このペンタフロロフェノール副生物は、
19FNMRにおいてペンタフロロフェノールの特徴的な3ピークを示し、GCMSでは、質量184の単一のピークを示した。濾過物を重炭酸ナトリウム、水で抽出し、MgSO
4で乾燥した。溶媒を真空中で蒸発させ、生成物を再結晶(酢酸エチル/ヘキサン混合物)させて、MTC−C6F5を白色結晶粉末として得た。GCMSは、質量326g/molの単一のピークを有した。C
12H
7F
5O
5の計算した分子量は、同定された構造と一致した。
1H-NMR (400MHz in CDCl
3): delta 4.85 (d, J = 10.8Hz, 2H, CH
aH
b), 4.85 (d, J = 10.8Hz, 2H, CH
aH
b), 1.55 (s, 3H, CCH
3).
【0244】
MTC−BnCl(MW 298.7)の製造
【0245】
【化66】
【0246】
フラスコにMTC−C6F5(10g、30.6mmol)、p−クロロメチルベンジルアルコール(4.8g、30.6mmol)、PROTONSPONGE(2g、9.3mmol)およびTHF(30mL)を投入した。反応混合物を12時間撹拌し、その後、直接シリカゲルカラムに投入した。生成物をジエチルエーテルを溶離液として使用して分離し、7.45g(81%)の白色結晶粉末を単離した。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, 22° C): delta 7.40 (dd, 4H, C
6H
4), 5.24 (s, 2H, -OCH
2C
6H
4), 4.73 (d, 2H, -CH
2OCOO), 4.60 (s, 2H, -CH
2Cl), 4.22 (d, 2H, -CH
2OCOO), 1.35 (s, 3H, -CH
3).
【0247】
MTC−PrCl(MW 236.65)の製造
【0248】
【化67】
【0249】
(8.82g、55mmol)をオキサリルクロライドを使用して標準手順でMTCOClに変換した。乾燥した250mLの丸底フラスコに撹拌棒を装着し、生成した中間体を乾燥メチレンクロライド150mLに溶解した。窒素流通下、添加ファネルを装着し、そこで、3−クロロプロパノール(4.94g、4.36mL、52.25mmol)、ピリジン(3.95g、4.04mL、55mmol)、および乾燥メチレンクロライド(50mL)を混合した。氷浴を使用してフラスコを0℃に冷却し、上部にある溶液を、30分の時間をかけて滴下して加えた。形成した溶液を、氷浴から取り出す前に、さらに30分撹拌し、その溶液を、窒素下でさらに16時間撹拌した。粗生成物であるMTC−PrClを直接シリカゲルカラムに投入し、生成物を100%メチレンクロリドで溶離して分離した。生成物のフラクションを除去し、溶媒を蒸発させて、オフホワイトの油状物を得、それを静置して結晶化させた、収率11g(85%)。
1H-NMR (CDCl
3) delta: 4.63 (d, 2H, CH
2), 4.32 (t, 2H, CH
2), 4.16 (d, 2H, CH
2), 3.55 (t, 2H, CH
2), 2.09 (m, 2H, CH
2), 1.25 (s, 3H, CH
3).
【0250】
5−メチル−5−(3−ブロモプロピル)オキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTC−PrBr)、(MW 281.10)の製造
【0251】
【化68】
【0252】
MTCOPrBrを、3−ブロモ−1−プロパノールをアルコールとして使用し、45mmolスケールでMTCOPrClの手順により製造した。生成物をカラムクロマトグラフィーで生成し、続いて再結晶して白色結晶(6.3g、49%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): delta 4.69 (d, 2H; CH
2OCOO), 4.37 (t, 2H; OCH
2), 4.21 (d, 2H; CH
2OCOO), 3.45 (t, 2H; CH
2Br), 2.23 (m, 2H; CH
2), 1.33 (s, 3H; CH
3).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): delta 171.0, 147.3, 72.9, 63.9, 40.2, 31.0, 28.9, 17.3.
【0253】
MTC−C6Cl(MW 278.09)の製造
【0254】
【化69】
【0255】
フラスコに、MTC−C6F5(6.6g、20.1mmol)、6−クロロ−1−ヘキサノール(2.5g、18.3mmol)、PROTON SPONGE(3.9g、18.3mmol)およびテトラヒドロフラン(THF)(8mL)を投入した。反応混合物を12時間撹拌し、過剰の酢酸アンモニウムを添加した。反応混合物をさらに3時間撹拌し、その後、直接シリカゲルカラムに投入した。生成物を、ヘキサン/酢酸エチルを溶離液として分離して油状物(4.2g、57%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, 22° C): delta 4.72 (d, 2H, -CH
2OCOO), 4.23 (d, t 4H, -CH
2OCOO, -OCH
2CH
2), 3.57 (t, 2H, -OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Cl), 1.84 (m, 2H,-OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Cl), 1.76 (m, 2H, -OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Cl), 1.45 (m, 2H,-OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Cl), 1.39 (m, 2H, -OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Cl), 1.35 (s, 3H, - CH
3).
【0256】
MTC−C8Cl(MW 306.12)の製造
【0257】
【化70】
【0258】
フラスコにMTC−C6F5(6.6g、20.mmol)、6−クロロ−1−オクタノール(2.5g、18.3mmol)、PROTON SPONGE(3.9g、18.3mmol)およびTHF(8mL)を投入した。反応混合物を12時間撹拌し、過剰の酢酸アンモニウムを添加した。反応混合物をさらに3時間撹拌し、その後、シリカゲルカラムに直接添加した。生成物は、ヘキサン/酢酸エチルを使用して単離して油状物(4.2g、57%)を得た。H NMR (400 MHz, CDCl
3, 22° C): delta 4.72 (d, 2H, -CH
2OCOO), 4.23 (d, t 4H, -CH
2OCOO, -OCH
2CH
2), 3.57 (t, 2H, -OCH
2CH
2(CH
2)
3CH
2CH
2CH
2Cl), 1.84 (m, 2H, -OCH
2CH
2(CH
2)
3CH
2CH
2CH
2Cl), 1.76 (m, 2H, -OCH
2CH
2(CH
2)
3CH
2CH
2CH
2Cl), 1.45 (m, 2H, -OCH
2CH
2(CH
2)
3CH
2CH
2CH
2Cl), 1.35 (br, 9H, -CH
3, OCH
2CH
2(CH
2)
3CH
2CH
2CH
2Cl).
【0259】
Chol−MTCの製造
【0260】
【化71】
製造は、3ステップを含む:1)コレステリルクロロホルメートChol−Clを、2−ブロモエチルアミンヒドロブロミドと、ジクロロメタン中でトリエチレンアミン(TEA)と反応させてカルバメートChol−Brを形成する;2)Chol−Brと、酸ジオールbisMPAとをジメチルホルムアミド(DMF)/KOHで塩基触媒反応させ、ジオールエステル化Chol−MPAを形成する;3)トリホスゲンを使用したChol−MPaの環化により、環状カーボネート・モノマーであるChol−MTCを全収率約26%で形成する。各3ステップの詳細手順を以下に提示する。
1HNMRおよび
13CNMRを、中間体および環状カーボネート・モノマーの構造を確認するために使用した。
【0261】
1)Chol−Brの製造。マグネチック撹拌棒を装着した500mL丸底フラスコに、コレステロールクロロホルメート(25.0g、55.7mmol、1.0当量)、および2−ブロモエチルアミンヒドロブロミド(12.9g、63.0mmol、1.1当量)を、ジクロロメタン(200mL)中に懸濁させ、懸濁物を氷浴中で冷却した。この懸濁物に、トリエチルアミン(TEA)(18.0mL、13.6g、129.1mmol、2.3当量)のジクロロメタン(100mL)の溶液を1時間かけて滴下して添加した。この反応混合物を浴中でさらに1時間保った後、室温まで温めた。反応を、その後さらに14時間進行させ、その後、ジクロロメタンを真空中で除去し、得られた固体を酢酸エチルおよびヘキサンの1:1混合物(300mL)中に懸濁させた。有機層を、飽和食塩水(100mL)、脱イオン水(50mL)で2回、飽和食塩水(100mL)で1回洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を真空除去して青みがかった黄色の固体(29.1g、97.4%)を得た。粗生成物は、
1HNMRにより十分な純度を有することが決定され、さらなる生成は行わなかった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, delta, ppm): 5.38 (コレステロールのCH=C), 5.03 (側鎖のNHCOO), 4.50 (コレステロールのCH-OCONH), 3.58 (BrCH
2CH
2NH), 2.45 - 0.6 (コレステロールの残りのプロトン).
【0262】
2)Chol−MPAの製造。マグネチック撹拌棒を装着した500mLフラスコに、KOH(85%、2.0g、30.3mmol、1.1当量)、bis−MPA(4.20g、31.3mmol、1.1当量)、およびジメチルホルムアミド(DMF)(200mL)の混合物を投入して1.5時間、100℃で加熱した。均一な溶液が形成され、Chol−Br(15.0g、28mmol、1.0当量)を熱い溶液に添加した。撹拌を続けて16時間加熱し、ほとんどのDMFを減圧下で除去して油状の半固体を得、これをその後2:1酢酸エチル:ヘキサン混合物(300mL)に溶解した。
有機溶液を飽和食塩水(100mL)および脱イオン水(100mL)の混合物で洗浄した。得られた水層を酢酸エチルを使用して抽出し(3×100mL)、洗浄プロセス中に失ったChol−MPAを回収した。混ぜ合わせた有機層を、飽和食塩水(80mL)、脱イオン水(20mL)混合物で洗浄した。混ぜ合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、溶媒を真空除去して、粗生成物を、青みがかったワックス状固体(16.5g)として得た。この粗生成物をシリカを充填剤とし、溶離液をヘキサンから酢酸エチルのグラジエントとしたフラッシュカラム・クロマトグラフィーにより精製し、最終生成物であるChol−MPAをワックス状の白色固体として得た(10.7g、64.8%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, delta, ppm): 5.35 ( コレステロールのCH=C および 側鎖のNHCOO), 4.47 (コレステロールのCH-OCONH), 4.26 (CH
2CH
2NHCOO), 3.88 and 3.72 (CH
2OH) 3.45 (CH
2CH
2NHCOO), 3.34 (OH), 2.50 - 0.60 (コレステロールの残りのプロトンおよびbis−MPAのCH
3).
【0263】
3)Chol−MTCの製造。マグネチック撹拌棒を装着した500mL丸底フラスコでChol−MPA(10.1g、17.1mmol)、1.0当量)を、無水ジクロロメタン(150mL)に溶解した。ピリジン(8.2mL、8.0g、101.5mmol、5.9当量)を添加し、この溶液をドライアイス−アセトン浴(−78℃)で冷却した。この冷却した反応混合物にトリホスゲン溶液(50mLジクロロメタンに溶解した)(2.69g、9.06mmol、トリホスゲンの官能基当量基準で1.9当量)を、1時間で滴下して添加した。1時間後、−78℃から反応混合物を室温まで温め、2時間後、反応混合物を、塩化アンモニウム飽和水溶液(50mL)を添加することによってクエンチした。有機層を1.0N HCL(20mL)および飽和食塩水(80mL)で2℃洗浄し、Na
2SO
4を使用して乾燥させた。溶媒を真空除去して粗生成物をわずかに黄味がかった固体として得た。粗生成物をさらに、クロロホルム:酢酸エチル(4:1)混合物を溶離液とするシリカ充填剤のフラッシュカラム・クロマトグラフィーによって生成して最終生成物であるChol−MTCをサックス状の白色固体(6.8g、65%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, delta, ppm): 5.35 ( コレステロールのCH=C), 4.95(NHCOO), 4.86 and 4.27 (CH
2OCOOCH
2), 4.47 (コレステロールのCH-OCONH), 4.27 (CH
2CH
2NHCOO), 3.45 (CH
2CH
2NHCOO), 2.40 - 0.60 (コレステロールの残りのプロトンおよび環状カーボネート・モノマーのCH
3).
【0264】
MTC−VitD2の製造。
【0265】
【化72】
【0266】
MTC−OH(3.08g、19.3mmol)を数滴のDMFとともに無水THF(50mL)に溶解した。オキザリルクロリド(3.3mL、39.4mmol)をその後滴下して添加し、揮発分を真空で除去した後、反応混合物を1時間窒素還流下で撹拌した。得られたオフホワイトの固体を65℃に2〜3分加熱していかなる残留試薬および溶媒を除去し、アシルクロリド中間体MTC−Clを残した。固体を乾燥ジクロロメタン(50mL)に再溶解し、氷浴を使用して0℃に冷却した。乾燥ジクロロメタン(50mL)中のエルゴカルシフェノール(ビタミンD2)(7.65g、19.3mmol)の溶液および乾燥トリメチルアミン(3mL、21.6mmol)を続けて30分かけて滴下して添加した。混合物を室温まで温め、さらに18時間撹拌した。溶媒を除去した後、粗生成物を得、これをシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーにより精製した。
ジクロロメタンを最初に溶離液として使用し、徐々に極性を高め、最終的に酢酸エチル5%とした。得られた固体を、MeOHで洗浄し、所望する生成物を高純度の白色固体として得た(5.20g、50%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): delta 6.20 (d, 1H, J = 11.2 Hz, VitD2-C=CH
2), 6.01 (d, 1H, J = 11.2 Hz, VitD2-C=CH
2), 5.21 (t, 2H, J = 6.0 Hz, VitD2-C=CH), 5.08 (オーバーラッピングピーク, ブロード s, 2H, VitD2-C=CH, CH(O-MTC)), 4.86 (s, 1H, VitD2-C=CH), 4.66 (d, 2H, J = 12.4 Hz, MTC-CH
2), 4.17 (d, 2H, J = 12.8 Hz, MTC-CH
2), 1.20-2.90 (オーバーラッピングピーク, 24H, VitD2), 1.02 (d, 3H, J = 6.4 Hz, VitD2-CH
3), 0.91 (d, 3H, J = 6.8 Hz, VitD2-CH
3), 0.84 (t, 6H, J = 6.4 Hz, VitH
3), 0.55 (s, 3H, MTC-CH
3).
【0267】
MTC−VitEモノマーの製造
【0268】
【化73】
【0269】
MTC−OH(3.08g、19.3mmol)を無水THF(50mL)に数滴のDMFと共に溶解した。オキザリルクロリド(3.3mL、39.4mmol)をその後滴下して添加し、反応混合物を真空下で揮発分を除去した後、窒素を流しながら撹拌した。得られたオフホワイトの固体を65℃に2〜3分加熱していかなる残留試薬および溶媒を除去し、アシルクロリド中間体MTC−Clを残した。固体を乾燥ジクロロメタン(50mL)に再溶解し、氷浴を使用して0℃に冷却した。乾燥ジクロロメタン(50mL)中のアルファ−トコフェロール(ビタミンE)(8.30g、19.3mmol)の溶液および乾燥トリメチルアミン(3mL、21.6mmol)を続けて30分かけて滴下して添加した。混合物を室温まで温め、さらに18時間撹拌した。溶媒を除去した後、粗生成物を得、これをシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーにより精製した。
ヘキサンを最初に溶離液として使用し、徐々に極性を高め、最終的に酢酸エチル50%とした。ジクロロメタン/酢酸エチル(4:1)を使用して第2のクロマトグラフィー分離を行い、高い純度の所望する生成物を、白色固体として得た(6.05g、53%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): delta 4.92 (d, 2H, J = 10.8 Hz, MTC-CH
2), 4.34 (d, 2H, J = 10.8 Hz, MTC-CH
2), 2.59 (d, 2H, J = 6.7 Hz, テトラヒドロピラノ-CH
2), 2.09 (s, 3H, Ar-CH
3), 2.00 (s, 3H, Ar-CH
3), 1.96 (s, 3H, Ar-CH
3), 1.70-1.90 (m, 2H), 1.00-1.60 (オーバーラッピングピーク, 27H), 0.80-0.90 (m, 12H, 4 × CH
3 水油性テールのもの).
II.開始剤合成
【0270】
Bn−MPA、ジオール開始剤の製造
【0271】
【化74】
【0272】
2,2−Bis(メチロイル)プロピオン酸(Bis−MPA)、KOH、DMF、およびベンジルブロミド(BnBr)を共に100℃に15時間加熱して、ベンジルエステルBn−MPAを62%収率で得た。
【0273】
Chol−OMeS中間体(MW 464.7)の製造
【0274】
【化75】
【0275】
コレステロール(10g、25.8mmol、MW 386.35)を、乾燥クロロホルム(CH
3Cl)(15mL)およびピリジン(15mL)に溶解した。反応混合物をその後、窒素中でパージし、迅速に撹拌した。メシルクロリド(3mL、38.8mmol)をその後滴下して加えた。反応混合物を4時間、室温で撹拌し、次いでMeOH(600mL)中で析出させた。濾過物を真空濾過により回収し、9.6g(80%)を得た。
【0276】
Chol−OPrOH(MW 444.7)の製造
【0277】
【化76】
【0278】
Chol−OMes(1g、2.15mmol)を1,4−ジオキサン(10mL)および1,3−プロパンジオール(4g、53.8mmol)中に懸濁させた。反応混合物を脱気し、窒素でパージし、110℃に加熱した。1時間後、反応混合物を室温まで冷却し、MeOH/H
2O(4:1)で析出させた。生成物を、さらにカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、ワックス状のオフホワイトの物質0.72g(75%)を得た。
【0279】
Chol−OTEG−OH(MW518.8)の製造
【0280】
【化77】
【0281】
Chol−OMes(1g、2.15mmol)を1,4−ジオキサン(10mL)およびトリエチレングリコール(8g、53.8mmol)に懸濁させた。反応混合物を脱気し、窒素でパージして110℃に加熱した。1時間後、反応混合物を室温まで冷却し,MeOH/H
2O(4:1)で析出させた。生成物をさらにカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、ワックス状の明るい茶色の物質0.92g(83%)を得た。
III.開環重合
【0282】
後述する反応ダイアグラムにおいて、略号Z
1およびZ
2は、カチオン性ポリマーのステロイド残基を参照するために使用する。
【0283】
【化78】
星印を付した結合は、カチオン性ポリマーの主鎖に結合するポイントを示す。Z
1およびZ
2残基は、またカチオン性ポリマーを形成するために使用する開始剤の残基である。
【0284】
実施例10の製造を例示する。このカチオン性ポリマーは、スキーム1の反応シーケンスに従って製造された。
【0285】
【化79】
【0286】
パート1.イナートなグローブボックス内で、Chol−OPr−OH(0.179g、0.4mmol)、TU(0.04g、0.1mmol)、MTC−BnCl(0.6g、2mmol)、ジクロロメタン(DCM)(3g)および撹拌バーをバイアルに充填した。反応混合物を撹拌し、重合をDBU(20マイクロリットル、0.15mmol)を添加して開始させた。15分後、過剰のアシルクロリドを添加して反応をクエンチし、IP−1をアセチル化して、停止させ、IP−2を形成した。アセチル化された中間体ポリマーIP−2を、イソプロパノールで析出させ、白色のワックス状ポリマーとして0.73g(94%)を得た。このポリマーを
1HNMR(CDCl
3)およびGPC(THF、37℃)を使用して特徴づけした。完全な重合が、ブロードなマルチプレットの出現(6H, 4.2 ppm)に伴う、カーボネートのダブレット(2H, -OCOOCH
2-, 4.7 ppm)の消失により確認され、両方とも新規に形成された直鎖カーボネートメチレン(-CH
2OCOOCH
2-)およびベンジルエステルによるものであった。分子量は、GPCにより確認され、PDIが1.2で2.6kDaであることが見いだされた。平均重合度(DP)は、コレステリルメチルシフト積分値(3H, 0.87 ppm)のベンジルクロリドのシグナル(2H, 5.0 ppm)に対する比をとって計算し、GPCの値を良好に一致した。
【0287】
パート2.トリメチレンアミン(TMA)でのIP−2の4級化によるCP−1の形成。バイアルにアセチル化したポリマーIP−2(0.3g、0.15mmol)、アセトニトリル(4mL)および撹拌バーを充填した。反応混合物をその後、ドライアイス/アセトン浴(−78℃)に置き、過剰のTMAガスを撹拌した溶液を通過させてバブルさせた。バイアルをその後、シールし、撹拌しながら室温まで温めた。4時間後、ジメチルエーテル(5mL)を加えて生成物であるポリマーを析出させた。反応バイアルをその後、10分遠心分離し、上澄みをデカンテーションした。生成物を過剰のジエチルエーテルによって洗浄し、高真空下で乾燥させ、0.32g(94%)の半透明のワックス状物質を得た。4級化を、
1HNMRを使用して確認した。診断的なTMA(9H, 3.2 ppm)に起因する化学シフトが出現し、ベンジルアンモニウムのシグナル(2H, 5.0 ppm)と共に存在し、完全な変換を確認した。
【0288】
トリメチルホスフィン(TMP)でのIP−2の4級化による実施例11の形成は代表的なものである。
【0289】
【化80】
【0290】
シュレンクチューブにIP−2(0.3g、0.15mmol)、アセトニトリル(4mL)、および撹拌バーを充填した。反応混合物をその後、3Xの冷凍/ポンプ/融解サイクルで脱ガスした。機密シリンジを使用してTMP(0.6mL)を加え、その溶液を室温で撹拌した。4時間後、シュレンクチューブを減圧して過剰のTMPを除去し、次いでエーテル(5mL)を加えた。析出物を回収し、過剰のエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥させて0.34g(95%)を得た。4級化は、
1HNMRを使用して確認された。診断的なTMP(9H, 3.3 ppm)に起因する化学シフトが出現し、ベンジルアンモニウムのシグナル(2H, 5.1 ppm)と共に存在し、完全な変換を確認した。
【0291】
実施例1〜27。カチオン性ポリマーを、上述した一般的な重合および4級化手法により、コレステロール(Chl−OH)、Chol−OPr−OH、またはChol−OTEG−OHのいずれかをROPのためのステロイド開始剤とし、MTC−BnClまたはMTC−PrClのいずれかを環状カーボネート・モノマーとし、TMAまたはTMPのいずれかを4級化剤として使用して製造した。
【0292】
表7は、コレステロール−ベースの開始剤を使用して製造されたカチオン性ホモポリマー、それらの重合度(DP)、
1HNMRにより測定したn′、臨界ミセル濃度(CMC)、およびカチオン性の繰り返し単位のカチオン性側鎖の全炭素数をリストする。
【0293】
【表7】
B.4−メチルベンジルアルコール開始剤により製造したカチオン性ポリマー
【0294】
実施例28〜41。カチオン性ポリマーを、上述した一般的な重合および4級化手法により、4−メチルベンジルアルコール(4−MeBnOH)を開始剤とし、MTC−BnClまたはMTC−PrClのいずれかを環状カーボネート・モノマーとし、種々のアミン4級化剤を使用して製造した。
【0295】
表8は、4−MeBnOHを使用して製造されたカチオン性ホモポリマー、それらの重合度(DP)、4級化剤、臨界ミセル濃度(CMC)、およびカチオン性の繰り返し単位のカチオン性側鎖の全炭素数をリストする。
【0296】
【表8】
C.側鎖にアルファ−トコフェロール部分を有するMTC−VitEカチオン性のランダム・コポリマー
【0297】
実施例42〜50。ランダムなカチオン性コポリマーを、MTC−PrBrおよびMTC−BnClを、カチオン性繰り返し単位の前駆体とし、MTC−VitEを親油性コモノマーとし、ベンジルアルコールを開催剤とし、DBU/チオ尿素を触媒として使用して製造した。4級化は、トリメチルアミンまたはN−置換イミダゾールによって行った。反応シーケンスをスキーム2に示す。
【0298】
【化81】
【0299】
実施例50は例示的なものである。グローブボックス中で、マグネチック攪拌バーを含む20mLのバイアル中に、MTC−BnCl(608.8mg、2.04mmol、30当量)、MTC−VitE(40.0mg、68マイクロモル、1.0当量)およびTU(25.2mg、68マイクロモル、1.0当量)を、ジクロロメタン(3mL)に溶解した。この溶液に、BnOH(7.0マイクロリットル、69マイクロモル、1.0当量)、続いてDBU(10.2マイクロリットル、68マイクロモル、1.0当量)を加え、重合を開始させた。反応混合物を室温で20分撹拌し、過剰(〜20mg)の安息香酸を添加してクエンチした。混合物をその後氷冷メタノール(50mL)内で析出させ、−5℃で30分遠心分離を行った。得られた半透明の油状物を、真空下で乾燥させ、フォーム状の白色固体を得た。中間体のGPC分析を行い、ポリマーをさらに生成をすることなく使用した。ポリマーを続いてアセトニトリルに溶解し、テフロン(登録商標)−プラグ密封可能チューブに移し、0℃に冷却した。トリメチルアミンを添加して4級化プロセスを開始した。反応混合物を密封したチューブ内で室温下、18時間撹拌した。反応途中で、油状物質の析出が観測された。この混合物を乾燥するまで真空に排気し、フリーズ−ドライを行い、最終的に白色のぱりぱりしたフォーム状の個体を得た。最終的なポリマーを、
1HNMRで特徴づけ、最終組成および純度を決定した。
【0300】
表9に、MTC−VitEおよびBnOH開始剤により製造したカチオン性のランダム・コポリマー、それらの重合度(DP)、4級化剤、CMC、および核カチオン性繰り返し単位の全炭素数をリストする。
【0301】
【表9】
【0302】
表10に、MTC−VitEを使用して製造したカチオン性のランダム・コポリマーの分析特性をリストする。
【0303】
【表10】
【0304】
C.側鎖にエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)部分を有するMTC−VitD2で製造したカチオン性ポリマー
【0305】
実施例52〜54。実施例54は、代表的なものである。マグネチック撹拌バーを含む20mLのバイアルにMTC−BnCl(500.0mg、1.67mmol、3.0当量)、MTC−VitD2(30.0mg、56マイクロモル、1.0当量)およびTU(20.6mg、56マイクロモル、1.0当量)を、ジクロロメタン(3mL)に溶解した。この溶液に、BnOH(5.8マイクロリットル、56マイクロモル、1,0当量)、続いてDBU(8.3マイクロリットル、566マイクロモル、1.0当量)を加えて重合を開始させた。反応混合物を室温で20分撹拌し、過剰(〜30mg)の安息香酸を添加してクエンチした。混合物をその後、氷冷したメタノール(50mL)で析出し、−5℃で30分遠心分離した。得られた半透明の油状物を、真空中でフォーム状の白色の固体を得た。中間体ポリマーのGPC分析を行い、ポリマーを更なる生成を行うことなく使用した。ポリマーを続いて、アセトニトリル中に溶解し、テフロン(登録商標)−プラグ密封チューブに移し替え、0℃に冷却した。トリメチルアミンを添加して4級化プロセスを開始した。反応混合物を密封したチューブ内で室温下、18時間撹拌した。反応途中で、油状物質の析出が観測された。この混合物を乾燥するまで真空に排気し、フリーズ−ドライを行い、最終的に白色のぱりぱりしたフォーム状の個体を得た。最終的なポリマーを、
1HNMRで特徴づけ、最終組成および純度を決定した。
【0306】
表11に、MTC−VitD2により製造したカチオン性のランダム・コポリマー、それらの重合度(DP)、4級化剤、CMC、および各カチオン性繰り返し単位の全炭素数をリストする。
【0307】
【表11】
【0308】
表12は、MTC−VitD2を使用して製造したカチオン性のランダム・コポリマーの分析特性を示す。
【0309】
【表12】
【0310】
実施例55〜63。カチオン性ポリマーの系列をBn−MPA、ジオール開始剤を使用して製造した。実施例60の製造は、代表的なものである。
【0311】
【化82】
【0312】
MTCOPrCl(501mg、2.1mmol)、Bn−MPA(4.7mg、0.02mmol、開始剤)、およびTU(37.2mg、0.1mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液をDBU(15.2mg、0.1mmol)を含むバイアルに移し、室温で重合を開始させた([M]
0/[I]
0 = 100)。2時間後、無水酢酸(72.4mg、0.71mmol)を混合物に添加し、当該混合物を48時間撹拌した(変換率〜95%)。溶液をその後冷却したメタノール中で2度析出させ、析出物を遠心分離し、真空中で乾燥させた。収率:466mg(93%)、GPC(THF):Mn 12200g/mol、PDI 1.17、
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): delta 7.39-7.29 (m, 5H; Ph), 5.16 (s, 2H; PhCH
2), 4.38-4.19 (br, 350H; CH
2OCOO, OCH
2 ポリマー), 3.64-3.55 (m, 117H; CH
2Cl polymer), 2.15-2.07 (m, 114H; CH
2 ポリマー), 2.06 (s, 6H; OCH
3 アセチル末端), 1.27 (br, 169H; CH
3 ポリマー)。初期ポリマーをバイアルに添加し、MeCNに溶解した。バイアルを−78℃に冷却し、TMAガスを添加した。バイアルをその後50℃に加熱し、一晩撹拌し、反応を完結させた。反応混合物をその後ジエチルエーテル中で析出させた。ポリマーを、再度溶解し、ジエチルエーテルで析出させた。無水酢酸をアセチルクロリドで置換した。
【0313】
表13は、Bn−MPAモノマーを使用して製造したカチオン性コポリマー、重合度(DP)、4級化剤、CMCおよび各カチオン性繰り返し単位の全炭素数をリストする。
【0314】
【表13】
IV.生物学的測定
最小発育阻止濃度(MIC)の測定
【0315】
Staphylocpccus epidermidis(S.epidermidis)(ACC No.12228)、Staphylococcus aureus(S.aureus)(ATCC No.29737)、Escherichia coli(E.coli)(ATCC No.25922)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)(ATCC No.9027)、およびCandida albicans(C.albicans、真菌)(ATCC No.10231)、メチシリン耐性Spaphylococcus aureus(MRSA)(臨床的に分離され、ウェイミン・ファン、チェジャン大学、中国、により提供された)、バンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)(臨床的に分離され、ウェイミン・ファン、チェジャン大学、中国、により提供された)、Acinetobacter baumannii(A,baumannii)(臨床的に分離され、ウェイミン・ファン、チェジャン大学、中国により提供された)、Cryptococcus neoformans(C.neoformans)(臨床的に分離され、ウェイミン・ファン、チェジャン大学、中国、により提供された)、Klebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)(臨床的に分離され、ウェイミン・ファン、チェジャン大学、中国により提供された)を、凍結乾燥した形態から再生させた。
最近サンプルをMuller Hinton培地(MHB II)、37℃、300rpmの一定振とうの下で培養した。ポリマーのMICは、すでに報告してある培地微量希釈法を使用して測定した。種々の濃度のポリマーを含む100マイクロリットルのMHB IIまたはトリプティックソイブロス(TSB)を96ウェルの組織培養プレートの各ウェル内に配置した。等容量の細菌懸濁物(3×10
5CFU/ml)、ここで、CFUは、コロニー形成ユニットであり、を、各ウェルに添加した。混合する前に、細菌サンプルをまず一晩播種して細菌を成長フェーズに入らせた。細菌溶液の濃度を、マイクロプレート・リーダ(TECAN、スイス)上で600nmの波長において約0.07の初期光学濃度(OD)に調整した。これは、MxFarkland1溶液(3×10
8CFU/ml)の濃度に相当する。この細菌溶液をさらに1000倍に希釈して初期量、3×10
5CFU/mlを達成した。96穴プレートをインキュベータ中、37℃、300rpmの一定振とう下で18時間保持した。MICを、裸眼およびマイクロプレート・リーダ(TECAN、スイス)で細菌成長が全く観測されない抗菌性ポリマーの濃度として決定した。細菌細胞を含有する培地のみを、ネガティブ・コントロールとして使用し、それぞれの試験を6回繰り返して行った。
【0316】
下記の表において、より低いMICおよびより高いHC50(またはHC20)が望ましい。太文字の実施例は、各系列において1つまたはそれ以上の細菌に対して最高の活性を示し(MICが最低)、赤血球細胞に対する最低の毒性(高いHC50値)を示す。“カチオン性側鎖全炭素数”としてラベルを付けたカラムは、カチオン性繰り返し単位の第4窒素基または第4リン酸基が担持するカチオン性側鎖の炭素数である。
【0317】
表14は、S.epidermidis、S.aureus、E.coli、Paeruginosa、およびC.albicans(真菌)に対する、コレステリル開始カチオン性ポリマー(実施例1−27)のMIC(mg/L)値およびHC50(mg/L)値をリストする。
【0318】
表15は、S.epidermidisおよびS.aureus、E.coli、Paeruginosa、およびC.albicans(真菌)に対する、4−メチルベンジルアルコール開始カチオン性ポリマー(実施例28−41)のMIC(mg/L)値およびHC50(mg/L)値をリストする。
【0319】
表16は、表14の試験(実施例28〜41)の続きであり、試験を、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)、Acinetobacter baumannii(A.baumannii)、Cryptcoccus neoformans(C.neoformans)、およびKlebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)について行ったものである。
【0320】
表17は、MTC−VitEコモノマー(アルファ−トコフェリル側鎖部分を有する親油性モノマー)で製造したランダムなカチオン性コポリマーについて、S.aureus、E.coli、Paeruginosa、およびC.albicans(真菌)に対する、MICおよびHC20を示す(実施例42〜51)。表17は、また、ランダムなカチオン性コポリマーについてのS.aureusおよびE.coliに対するMTC−VitD2コモノマー(ビタミンD2側鎖部分を有する親油性モノマー)のMICおよびHC20を示す(実施例52〜54)。
【0321】
表18は、S.epidermidis、S.aureus、E.coli、Paeruginosa、およびC.albicans(真菌)に対する、ジオール開始カチオン性ポリマー(実施例55−63)のMIC(mg/L)値およびHC50(mg/L)値をリストする。
【0322】
【表14】
【0323】
【0324】
【表15】
【0325】
【表16】
【0326】
【表17】
【0327】
【表18】
【0328】
より低いMIC(500mg/L以下)および高いHC50またはHC20(500mg/L以下)は、好ましい特性を示す。HC20は、HC50よりも赤血球細胞毒性のより鋭敏な尺度を与える。すなわち、HC20が1000を有する場合、HC50の値は、より高いこともある。HC選択性(HC50/MIC)またはHC20/MIC)の値が3以上であることがまた好ましい。
【0329】
表14のコレステリル含有“全カチオン性”ポリマーについては、TMP4級化剤で形成されたものは、他の特性は同程度(例えば実施例20と、実施例21、実施例12と、実施例13とを比較する)であったが、概ねTMAで形成されたカチオン性ポリマーよりも活性がより高かった。また、他の特性は同様であったものの(例えば実施例8と、実施例10、および実施例9と実施例11とを比較する)、環状カーボネート・モノマーMTC−BnClで形成したカチオン性ポリマーが、MTC−PrClのものに比較してより高い活性が観測された。重合度(DP)は、20〜30が、DPが5〜10のものよりも概ね好ましかった。P.aeruginosaは、概ね耐性を示したが、コレステロールで開始したコレステリル末端基(実施例4〜7)DP20〜30を有するカチオン性ポリマーに対しては良好な応答性を示した。
【0330】
コレステリル含有末端基の抗菌活性に対する陽性の効果は、さらに実施例4〜6(表14)、実施例28および40(表15)および実施例42および43(表17)を比較することにより立証される。実施例28および実施例40は、4−メチルベンジル末端基(4−MeBnOH開始剤から形成される)を有し、実施例42および43は、ベンジルオキシ末端基(BnOH開始剤から形成される)を有する。
【0331】
表15は、より小さな末端基(すなわち、炭素数15未満の)を有するカチオン性ポリマーは、概ね抗菌活性が弱いことを示しており、これが嵩高いQ′置換基(R
a基)で補うことができる。この実施形態では、Q′は、窒素である。実施例37は、例示的なものである。実施例37は、MTC−BnCl開始した4−MeBuOHであって、ジメチルブチルアミン(炭素数6)およびジメチルベンジルアミン(炭素数9)の1:1モル比で4級化したホモポリマーである。実施例37は、他の特性は同様(表14の実施例37と実施例24を比較する)なものの、コレステリル含有ポリマーに匹敵するか、またはこれらよりも高い活性および高いHC50を有する。実施例37のHC50選択性(HC50/MIC)はまた、P.aeruginosaに対して>8、S.aureusに対して、>128と優秀である。ジメチルブチルアミン/ジメチルベンジルアミン混合物は、全炭素数15〜18を有するカチオン性カーボネート繰り返し単位をそれぞれ生成する。実施例37は、また、MRSA、VRE、A.baumannii、C.neoformansおよびK.pneumoniae(表16)に対して活性度が高い。
【0332】
より小さな末端基は、また親油性コモノマーを使用することによって任意に、4級化剤(例えば、炭素原子数3を超える組み合わせを有するR
a基を有する4級アンモニウム基)で補うことができる。これは、表17の実施例42(MTC−PrCBr、DP30、親油性コモノマーを有しないもの)と、実施例45、47および48(MTC−PrBrに約3モル%〜約5モル%のMTC−VitE、DP30)の比較にもみられる。アルファ−トコフェロールの分子式は、C
29H
50O
2であり、エルゴカルシフェノールの分子式は、C
28H
44Oである。具体的には、炭素数20以上の生物学的活性/適合性の材料の結合形態を有する親水性コモノマーは、抗菌活性、赤血球剤棒毒性のいずれかまたは両方を制御するために微量で使用することができることを示している。
コレステリル含有ポリマーの殺細胞効果
【0333】
MIC試験と同様に、種々の濃度(0、MIC、2.0MIC)のポリマーを含有する100マイクロリットルのMHBIIを96ウェル組織培養プレートの各ウェルに充填した。等容量の細菌懸濁液(3×10
5CFU/ml)、(ここで、CFUは、コロニー形成ユニットを言う)を各ウェルに追加した。混合前に細菌サンプルをまず一晩播種して細菌を成長フェーズに入らせた。細菌溶液の濃度を、マイクロプレート・リーダ(TECAN、スイス)上で600nmの波長において約0.07の初期光学濃度(OD)に調整した。これは、McFarkland1溶液(3×10
8CFU/ml)の濃度に相当する。この細菌溶液をさらに1000倍に希釈して初期量、3×10
5CFU/mlを達成した。96穴プレートをインキュベータ中、37℃、300rpmの一定振とう下で18時間保持した。それぞれのサンプルをその後、10倍に希釈し、lysogeny(LB)培地寒天平板培地に播種した。プレートをその後一晩培養し、コロニー形成ユニットをカウントした。水を10%v/vで含有する細菌を含むサンプルを、対照群とした。
【0334】
図1Aおよび
図1Bは、S.aureusのコロニー形成ユニット/mL間の関係を、それぞれ実施例13および実施例23(表14)の濃度の関数として示すグラフである。両方のケースにおいて、CFUは、カチオン性ポリマーの濃度が31mg/Lでゼロとなった。
コレステリル含有ポリマーの溶血活性
【0335】
新鮮なウサギ赤血球細胞またはラット赤血球細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で25×希釈し、実験で使用するための約4%v/vの懸濁液を得た。赤血球細胞の懸濁液(300マイクロリットル)を、それぞれ等容量(300マイクロリットル)のPBS中のポリマー溶液を含有するチューブに添加した(最終的なポリマー濃度は、3.9〜500mg/Lであった。)。チューブをその後、37℃1時間培養し、その後、1000×gで5分遠心分離した。上澄み液のアリコット(100マイクロリットル)を96穴プレートの各ウェルに移し、マイクロプレート・リーダ(TECAN、スイス)を使用して576nmにおけるヘモグロビン放出を分析した。PBS中で培養した赤血球細胞懸濁液をネガティブ対照群とした。0.1%v/vのTriton X−100で分析した赤血球細胞の吸光度を、100%溶血のポジティブ対照群とした。溶血%は、下記式を使用して計算した。
【0336】
【数1】
データを、4回繰り返して平均±標準偏差として表現する。
【0337】
図2A〜2Cは、実施例10、11、20、21(
図2A)、実施例8、9、18、19(
図2B)、実施例12、13、22、23(
図2C)のコレステリル含有カチオン性ポリマー濃度の関数とした、ウサギ赤血球細胞の%溶血を示すグラフである。低い%溶血が好ましい。DP5(
図2Aおよび
図2B)を有するカチオン性ポリマーの%溶血は、3.9mg/Lから62.5mg/Lの濃度で25%よりも低く、開始剤残基において−OPr−O−基−よりも−OTEG−O−基を有するカチオン性ポリマーで、より低い溶血が観測された。
図2Aおよび
図2Bと、
図2Cとを比較すると、またDP5に比較してDP10を有するカチオン性ポリマーでより低い%溶血が観測された。DP10のカチオン性ポリマーについては、約125mg/L(
図2C)まで、約15%よりも低い溶血が観測された。4級化剤をTMAからTMPに変えた実施例12、13、22、23(
図2C)では、カチオン性ポリマーの溶血活性は、顕著に変化しなかった。
【0338】
ヒト皮膚繊維芽(HDF)細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、ピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100mg/mLのストレプトマイシンを補給したDMEM成長培養液に保持し、5%CO
2、95%加湿した空気の雰囲気下、37℃で培養した。ポリマーの細胞毒性を標準的なMTTアッセイプロトコルを使用して検討した。HDF細胞を、1.5×10
4セル/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種し、一晩付着させた。ポリマーをまず高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードの水に溶解し、DulbeccoModifiedEagle(DMEM)培養液で系列的に希釈して、各条件について、水濃度が10%v/vの3.9〜500mg/Lのポリマー濃度を達成した。100マイクロリットルのポリマー溶液を各ウェル内の細胞に追加し、プレートを37℃で18時間培養した。次いで、100マイクロリットルの成長培養液と、10マイクロリットルのMTT溶液(PBS中、5mg/ml)を各ウェルに加えて細胞を、製造者の指示に従って37℃で4時間培養した。各ウェル内に得られたフォルマザン結晶を、150マイクロリットルのジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、成長培養液を除去して波長550nmおよび690nmでマイクロプレート分光光度計を使用して決定した。相対細胞生存率を、[(A
550-A
690)サンプル/(A
550-A
690)対照群] × 100%として表現した。
【0339】
図3A〜3Fは、HDF細胞の%生存率を、コレステリル含有カチオン性ポリマーの濃度の関数として示したグラフである。所与の濃度で、より高い細胞生存率の値が好ましい。この系列における種々の曲線を比較すると、細胞生存率には、TMPよりもTMAを使用することが好ましいことを見て取ることができる(
図3Aの実施例10と実施例11、
図3Bの実施例20と実施例21、
図3Dの実施例18と実施例19)。より高い細胞生存%にはまた、CholOPr−OHよりもChol−OTEG−OHを使用することが好ましい。これは実施例10(
図3A)、と実施例20(
図3B)および実施例8(
図3C)と、実施例18(
図3D)とを比較することによって見て取ることができる。より高い%細胞生存率には、DP5よりもDP10が好ましい。これは、実施例10(
図3A)と、実施例12(
図3E)、実施例11(
図3A)と、実施例13(
図3E)を比較することによって見て取ることができる。実施例20(
図3B)および実施例18(
図3D)は、広い濃度範囲で最も高い細胞生存性を有する(それぞれ、125mg/Lおよび150mg/Lに至るまで80%の%生存率である)。
アルファ−トコフェロールおよびエルゴカルシフェノール(ビタミンD2)の抗菌性および溶血性の検討
【0340】
ビタミンE部分(MTC−VitE)を含有するカチオン性ポリマーを、上記に示した溶液中で種々の系統の細菌に対して試験した。表17は、抗菌性、選択性および溶血性の結果を示す。概略的には、アルファ−トコフェロール部分の導入は、ほとんどの細菌に対して阻止効果を増加させる。MTC− MTC−Brおよびトリメチルアミン(TMA)で4級化して製造したカチオン性コポリマーについては、MICの値は、S.aureusおよびE.coliに対し、MTC−ViEの添加によるものについては減少した(実施例42と実施例44〜46との比較)。S.aureusについての選択性は、ラットの赤血球細胞(TBCs)に対しては、MIC/H20による尺度では、実施例45においては16よりも大きかった(>10000/63)。4級化剤をトリメチルアミンからメチルイミダゾールに変更した場合(実施例47)またはエチルイミダゾールに変更した場合(実施例48)、E.coliに対するMIC値は、63mg/L(実施例42の1000から)に減少した。実施例48は、実施例47と比較すれば、哺乳動物のRBCsに対して高い溶血毒性を有するが、治療濃度では、顕著な溶血を誘発するものではない。MTC−VitEポリマーは、すべて、C.albicans、特にメチルイミダゾールで4級化した実施例47では顕著な活性を示す。
【0341】
MTC/VitE/MTC−BnCl(実施例49から51)で製造したカチオン性ポリマーについては、S.aureusおよびE.coliに対する効果は、より増大した。実施例49〜51のMICは、S.aureusに対しては31mg/Lであり、対照群のポリマー(実施例43、MTC−VitEなし)は、S.aureusに対して125mg/LのMICを有した。この実施例では、重合度(DP)の程度は、細菌の抑制について顕著な相違を与えることはなかった。しかしながら、E−coliに対しては、実施例51(MTC−VitE/MTC−BnCl比が、1:30、MIC=31mg/L)実施例49(MTC−VitE/MTC−BnCl比が、1:10、MIC=63mg/L)よりも、より効果があった。
【0342】
真菌C.albicansに対する活性は、MCT−PrBrから製造したビタミンEを含有するカチオン性ポリマー(実施例44〜48)については、ビタミンE部分を含まない対照サンプル(実施例42)に比較して増大した。しかしながら、真菌C.albicansに対する活性は、ビタミンEを含有するMTC−BnClで製造したカチオン性ポリマー(実施例49〜51)では、ビタミンE部分を有しない対照サンプル(実施例43)に比較して減少した。これは、ビタミンEを含有するポリマーの酵母培地に対する限られた溶解性によるものであろう。それ以外のポリマーは、S.aureusおよびE.coliに対して抑制剤としての可能性を有していた。ポリマーのほとんどは、また、良好な選択性を示した。HC20/MIC値は、S.aureusおよびE.coliに対して約4〜約30であった。
【0343】
実施例49〜51(MTC−BnClから製造した)ビタミンEを含有するカチオン性ポリマーの溶血活性を
図4に示す(棒グラフ)。RBCsを使用した溶血分析は、上述したカチオン性ポリマーの溶液中の毒性を検査するために使用した。毒性は低く、すべてのポリマーは、500ppmを超えるHC50を有していた。このため、より関連するHC20の値を表17に示している。表17に示されるように、MTC−PrBrで製造した(TMAで4級化した)カチオン性ポリマーは、ラットRBCsに対して無視できる程度の溶血毒性を示したが、MTC−BnClで製造したカチオン性ポリマーは、より大きな溶血を示した。ポリマーの両方の系列において、親油性ポリマーの量が増加すると、溶血が徐々に増加する。すなわち、溶血%は、実施例44>実施例45>実施例46(図示せず)であり、溶血%は、実施例49>実施例50>実施例51(
図4)である。この傾向は、また、イミダゾールで4級化したMTC−PrBrから製造したポリマーについても見られる(実施例47および48、図示せず)。実施例47(メチルイミダゾールで4級化した)は、そのエチル類似体である実施例48(図示せず)に比較して毒性が低い。この観測は、親油性の割合が高くなるにつれて毒性が増加する知見と一致する。
【0344】
ペンダントビタミンD2部分を含む実施例52〜54の溶血活性は、
図5に示す(棒グラフ)。これらのポリマーは、また非溶血性であった(HC20の値は、1000mg/L以上)。
ビタミンE機能化ポリマーの時間−殺菌
【0345】
S.aureusおよびE.coliを、抗菌特性の機序を検討するために、実施例51(MTC−VitE/MTC−BnCl、1:30の比)で処理した。コロニーカウント・アッセイを、S.aureusおよびE.coliに対して実施した。
図6Aおよび
図6Bの棒グラフにみられるように、両方の細菌系統について約100%の殺菌効果を、MIC濃度における18時間の処理後に達成し、これは、殺菌機序を支持する。
【0346】
また、時間−殺菌実験を、機序を確認するために行った。S.aureusおよびE.coliをリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)若しくはMICまたは2.0MIC濃度で処理した。生存するコロニーを、異なった時間ポイントで18時間の間カウントした。
図7Aおよび
図7Bのグラフに示すように、MIC濃度の実施例51で18時間処理した後にS.aureusの生存するコロニーは、僅かであった。致死的濃度(2.0MIC)では、生存するS.aureusおよびE.coliのコロニーは、6時間後で全く観測されず、E.coliについては4時間で全く観測されなかった。これらの結果は、カチオン性ポリマーが効果的に細菌の成長を抑制するのではなく、細菌を死滅させることを示す。
ジオール開始(BnMPA)カチオン性ポリマーの抗菌性および溶血性の検討
【0347】
二親核開始剤BnMPA(表18)を使用して形成したポリマーに関し、より親油性のMTC−C8Clに基づくカチオン性ポリマー(実施例55、57、58)は、概ねより抗菌活性を示したが、より大きな赤血球毒性を示示した(HC50値が低い)。より親油性の低いMTC−PrClに基づくカチオン性ポリマー(実施例56)は、より低い抗菌活性、およびより低い溶血活性(HC50値が大きい)を有していた。MTC−C8ClとMTC−PrClの混合物を使用して希釈して製造したカチオン性ポリマー(実施例59〜61)は、MTC−C8Clホモポリマー(実施例57、表18)に比較してMTC−PrClの75mol%に至るまで同等の抗菌活性、およびより高いHC50を示した。実施例59〜61は、また、MTC−C8Clホモポリマーに比較して、より低い溶血活性(
図8、グラフ)、およびより低い細胞毒性(
図9、グラフ)を示した。さらに、実施例59〜61のMIC値は、S.EpidermidisおよびE.coliのCMC(表13)よりも低い。この観測は、CMCは、抗菌活性に必須ではないことを示す。電荷と、親油性とをバランスさせる本方法は、高い抗菌活性および最小の哺乳動物細胞に対する細胞毒性を有するカチオン性ポリマーを提供する。
抗菌活性の機序
【0348】
カチオン性ポリマーの細菌毒性の機序をさらに、共焦点顕微鏡およびフィールド・エミッション電子顕微鏡(FE−SEM)を使用して検討した。S.aureusおよびE.coliを、実施例51のカチオン性ポリマー(MTC−VitE/MTC−BnCl(1:30)、TMAで4級化)で、FITC−ラベル100Kデキストランの存在下で短時間処理し(0分、10分および20分)、その後、乾燥し、共焦点顕微鏡を使用して観測した。
図10に示す写真に示されるように、実施例51の不存在下では、全く緑色の蛍光は、細菌細胞には観測されなかった。しかしながら、カチオン性ポリマーで10分処理した後には、フルオレッセイン・イソチオシアネートでラベルした(FITCラベル)デキストラン分子のS.aureusおよびE.coli細胞への取り込みが、明らかに観測され、これは細菌細胞膜に細孔が形成されたことを示す。FITCラベル化デキストランの取り込みは、20分の培養に際し、S.aureusおよびE.coliの両方においてより明確となった。このことは、カチオン性ポリマーで細胞膜との相互作用が長くなった後には細胞膜がより激しく損傷を受けることを示す。細菌細胞の形態的な変化を、より長時間スケールにおいてカチオン性ポリマーにより処理した後にFE−SEMによって観測した。
図11の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像に示されるように、致死濃度(100mg/L)の実施例51で2時間処理したところ、ネガティブPBS対照群と比較し、S.aureus(
図11、左側、a1およびa2)およびE.coli(
図11中、b1およびb2)に対し、顕著な細胞膜損傷を与えた。同様の現象がまた、500mg/Lの実施例47(MTC−VitE.MTC−PrBr(1:30)、メチルイミダゾールで4級化)による処理後にC.albicans(
図11右側、c1およびc2)についても観測された。これらの結果は、カチオン性ポリマーが、細菌および酵母の細胞膜と相互作用して、細孔を形成し、これが結局は細菌および酵母の細胞膜の破壊を生じさせることを示す。
ジオール開始カチオン性ポリマー(Bn−MPA)と、モノオール開始カチオン性ポリマー(BnOHおよび4−MeBnOH)との比較
【0349】
ジオール開始剤およびモノオール開始剤の効果およびMTC−BnClで製造したカチオン性ポリマーの末端保護を、実施例43(モノオール開始剤BnOH、表17)および実施例62、63(ジオール開始剤Bn−MPA、表18)を下記表19として再掲載して示すことができる。実施例42および56は、MTC−PrBrおよびMTC−PrClからそれぞれ製造され、また表19に再掲載されている。
【0350】
【表19】
【0351】
実施例43と、62とを比較すると、ジオール(Bn−MPA)開始カチオン性ポリマー62は、実施例43のモノオール(BnOH)開始カチオン性ポリマーよりも、S.aureusおよびE.coliに対してより活性であり、ポリマーの他の特性は同一であった。どちらのポリマーもP.aeruginosaに対しては有効ではなかった。2つのポリマーは、等しくC.albicansに対して有効であった。各ポリマーは、赤血球に対して非毒性であった。
【0352】
末端保護基だけが相違するカチオン性ポリマー(実施例62、63)を比較すると、実施例63の末端保護ポリマーは、非末端保護ポリマーである実施例62よりも、S.aureusおよびE.coliに対し、より活性ではなかった。どちらのポリマーもP.aeruginosaに対しては有効ではなかった。両方のポリマーは、等しくC.albicansに対して有効であった。各ポリマーは、赤血球細胞に対して非毒性であった。
【0353】
MTC−Pr/Br(実施例42および56)を使用して製造したカチオン性ポリマーは、S.aureus、E.coli、P.aeruginosa、およびS.albicansに対して活性が弱いか、または不活性であり(各微生物に対してMIC 500mg/L以上)、各カチオン性ポリマーは、赤血球細胞に対して非毒性であった(HC>1000mg/L)。
【0354】
モノオールと、ジオールとで開始したカチオン性ポリマーに関する他の相違は、重合度(DP)に依存したRBC毒性依存性に関して観測された。MTC−C8Clを使用して製造したジオール開始カチオン性ポリマーは、DPの減少につれて、HC50の値を増加させた(RBC毒性を減少)。これは、表18の実施例55(HC50 250〜500、DP15)、実施例57(HC50 250、DP30)および実施例58(HC50 125〜250、DP60)を比較することによって見て取ることができる。これらのジオール開始ポリマーの抗菌活性は、DPが5〜30に増加するにつれて、概ねHC50の値を増加させることが示された(RBC毒性を低下させる)。これは、表14の実施例10、12、14、表14の実施例20、22、24、26を比較することによっても見て取れる。これらの結果は、開始剤フラグメントの一およびタイプが、カチオン性ポリマーの抗菌活性、選択性のいずれかまたは両方の特性に影響することを示す。このことは、モノオール開始およびジオール開始のカチオン性ポリマーが同一の数およびタイプのカチオン性繰り返し単位を共有しても、有用で異なりかつ、価値ある抗菌特性を有することを可能とする。
【0355】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのみに使用され、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形態“a”、“an”、および“the”は、文脈が明らかに他を示さない限り、同様に複数形態を含むことを意図する。さらに本明細書における用語“含む”または“含んでいる”、またはそれら両方は、記述された特徴、整数、ステップ、操作、要素、またはコンポーネント、またはこれらの如何なる組み合わせの存在を規定するものであって1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネントまたはそれらのグループやこれらの如何なる組み合わせを排除するものではない。可能な値の範囲を表現するために2つの数値限定XおよびY(例えば、濃度XppmからYppm)を使用する場合、他のことが記述されない限り、値は、X,Y、またはXとYの間の如何なる数とすることができる。
【0356】
本発明の記述は、例示および説明の目的のために提示されたのであって、本発明を開示された形態に終止させるものであるとか、本発明を制限するものとかを意図するものではない。実施形態は、本発明の原理、実際的な適用を、当業者が本発明を理解することを可能とするため最適に説明するべく選択され、記述されたものである。