特許第6474888号(P6474888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474888自動車を少なくとも半自律的に操縦する方法、運転者支援システムおよび自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474888
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】自動車を少なくとも半自律的に操縦する方法、運転者支援システムおよび自動車
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20190218BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20190218BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20190218BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20190218BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60W30/06
   B60W40/02
   B60R99/00 322
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-506388(P2017-506388)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-526064(P2017-526064A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015067891
(87)【国際公開番号】WO2016020355
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】102014111122.2
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ、バリアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコル、バーゲマン
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203348(JP,A)
【文献】 特開2011−136662(JP,A)
【文献】 特開2006−273122(JP,A)
【文献】 特開2013−082376(JP,A)
【文献】 特表2011−522737(JP,A)
【文献】 特開2000−177513(JP,A)
【文献】 特開2014−137288(JP,A)
【文献】 特開2014−034287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/06
B60W 40/02 〜 40/06
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)と前記自動車(1)の周囲領域(7)にある少なくとも1つの物体(10、11)との相対位置が、前記自動車(1)のセンサデバイス(9)によって検出され、前記自動車(1)が前記少なくとも1つの物体(10、11)を通過して走行するための走行経路(12)が、前記検出された相対位置に基づいて決定され、前記決定された走行経路(12)に沿って走行している間の前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との距離を示す衝突距離が決定される、前記自動車(1)を少なくとも半自律的に操縦するための方法であって、
前記自動車(1)が前記走行経路(12)に沿って走行する前に、前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との間の不確定領域(a、a’)が決定され、前記衝突距離は、前記決定された不確定領域(a、a’)に応じて調整され、前記走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行は、前記調整された衝突距離に応じて制御され
前記不確定領域(a、a’)は、前記センサデバイス(9)のタイプ、前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との前記相対位置の検出中の前記自動車(1)の現行速度、および前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との前記検出された相対位置に、基づいて決定され
前記自動車(1)の前記周囲領域(7)においてさらなる物体がさらに検知され、前記さらなる物体の現行位置が、前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との間に決定された前記不確定領域(a、a’)内にあるか確認されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自動車(1)と前記少なくとも1つの物体(10、11)との前記相対位置は、前記走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行中、継続的に検出され、前記不確定領域(a、a’)は、前記検出された相対位置に応じて調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衝突距離は、前記自動車(1)の外寸および所定の安全距離(S)に基づいてさらに調整されることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記調整された衝突距離に達したときの前記自動車(1)と前記検出された走行経路(12)の終点との距離を示す残り距離(14)が検出されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出された走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行の速度プロファイルが、前記検出された残り距離(14)に応じて決定されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行を示すモデルが決定され、前記衝突距離は、前記決定されたモデルに応じてさらに調整されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出された走行経路(12)に沿った走行中の前記自動車(1)の現行位置が決定され、前記残り距離(14)は、前記自動車(1)の前記決定された現行位置に基づいて調整されることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記自動車(1)が前記走行経路(12)に沿って走行する間に走行方向の変更を少なくとも1回行うようにする前記走行経路(12)が検出され、前記走行方向の変更が実行される前記走行経路(12)の地点からの距離が検出されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出された走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行の速度プロファイルが、前記走行方向の変更が実行される前記地点からの前記検出された距離に応じてさらに決定されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調整された衝突距離に応じて前記走行経路(12)に沿った前記自動車(1)の走行を制御するために、前記自動車(1)のステアリングシステム、ブレーキシステムおよび/または駆動エンジンへの介入がなされることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記走行経路(12)に沿った走行中、前記自動車(1)は、並列駐車のための駐車スペースまたは縦列駐車のための駐車スペースに入ることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された運転者支援システム(2)。
【請求項13】
請求項12に記載の運転者支援システム(2)を備えた自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車と自動車の周囲領域にある少なくとも1つの物体との相対位置が、自動車のセンサデバイスによって検出され、自動車が少なくとも1つの物体を通過して走行するための走行経路が、検出された相対位置に基づいて決定され、自動車と決定された走行経路に沿った走行中の少なくとも1つの物体との距離を示す衝突距離が決定される、自動車を少なくとも半自律的に操縦する方法に関する。また、本発明は、運転者支援システムと、このような運転者支援システムを備えた自動車とに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の運転時、特に自動車を駐車スペースに駐車するさいに運転者を支援する運転者支援システムへの関心が特に高まっている。駐車スペースの検出や駐車スペースが空いているかどうかの検出を行うセンサを用いて、駐車プロセス中の運転者支援を行いうる運転者支援システムが従来からすでに知られている。このようなシステムにおいて、運転者は、縦列駐車中および並列駐車中のいずれの場合も支援を受けることができる。また、駐車プロセス中に半自律的に自動車を移動させることができる運転者支援システムが知られている。この場合は、運転者支援システムが自動車の操舵を行い、運転者がアクセルペダルおよびブレーキを作動させる。また、自動車の自律操縦を可能にする運転者支援システムがすでに知られている。
【0003】
この点に関して、独国特許出願公開第102011086210(A1)号明細書には、運転操縦の実行中に自動車が移動する運転路を決定する、運転操縦中の自動車の運転者を支援するための方法が開示されている。この方法では、運転操縦が自動的または半自動的に行われる。運転路内に物体があれば、自動車は停止される。物体が運転路からなくなるとすぐに、運転操縦は再開される。この方法は、例えば、自動車を駐車するためにも使用することができる。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第102010023164(A1)号明細書に、自動車の運転者支援システムを用いて自動車の周囲にある物体の存在を自動車の運転者に警告するための方法が記載されている。同文献では、自動車に対する物体の相対位置が、センサデバイスのデータに基づいて決定される。また、自動車の予測運転経路または予測運転路が検出される。この方法は、例えば、駐車スペースに駐車するさいに適用することができる。
【0005】
さらに、独国特許出願公開第102008027779(A1)号明細書には、駐車スペースに駐車するさいに車両の運転者を支援するための方法が記載されている。この場合、駐車対象となりうる駐車スペースが測定され、駐車経路が算出される。駐車スペースの形状は、駐車プロセス中も継続して検出され、駐車プロセスを開始する前に検出された駐車スペースの形状と比較される。2つの駐車スペースの形状が互いに異なる場合、存在するずれが評価され、適切であれば、駐車経路の修正および/または算出がなされる。
【0006】
さらに、独国特許出願公開第102009040373(A1)号明細書には、車両を少なくとも半自律的な駐車プロセスを実行するための方法が開示されている。ここで、駐車プロセスの開始前に駐車支援システムのセンサデバイスによって駐車スペースの候補が検知され、駐車スペースにおける最終位置に到達するために駐車プロセス中に車両が走行することになる駐車経路が、検知された駐車スペースに応じて決定される。また、駐車プロセスの開始後、駐車スペースの境界を定める物体からの車両の距離が検知されるたびに、複数の距離のうちの少なくとも1つについての所定の補正基準が満たされると、駐車経路が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011086210(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102010023164(A1)号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102008027779(A1)号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102009040373(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明により解決される課題は、自動車の少なくとも半自律的な操縦が、高信頼性および高快適性で実行可能である方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明により、独立請求項に記載された特徴をそれぞれ備えた運転者支援システムおよび自動車が提供される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、本願明細書および図面に係る主題である。
【0010】
本発明に係る方法は、自動車の少なくとも半自律的な操縦を行うためのものである。この場合、自動車と自動車の周囲領域にある少なくとも1つの物体との相対位置が、自動車のセンサデバイスによって検出される。さらに、自動車が少なくとも1つの物体を通過して走行するための走行経路が、検出された相対位置に基づいて決定され、決定された走行経路に沿って走行している間の自動車と少なくとも1つの物体との距離を示す衝突距離が決定される。また、走行経路に沿った自動車の走行前に、自動車と少なくとも1つの物体との間の不確定領域が決定される。さらに、走行経路に沿った自動車の走行前に、衝突距離は、決定された不確定領域に応じて調整される。最後に、走行経路に沿った自動車の走行は、調整された衝突距離に応じて制御される。
【0011】
本発明は、自動車を少なくとも半自律的に操縦するための方法において、これまで知られてきた方法では、自動車の操縦が運転者にとって不快な方法でなされるという問題が生じうるという認識に基づいてなされたものである。このような問題が生じる理由として、自動車の長手方向の案内について、通常、始点から終点までの走行経路が決定されるということが挙げられる。運転者支援システムは、この状況において、例えば、速度は最大であるが、所定の加速値は超えないように終点までの速度プロファイルを算出する。さらに、従来技術によれば、速度プロファイルを決定するために、走行経路における自動車の運転中、衝突距離、すなわち、自動車と物体との距離が考慮される。衝突距離は、衝突予測距離(DTC:Distance to Collision)とも呼ばれる。また、走行経路の終点が決定されうる。そして、走行経路に沿った運転中に物体からの距離が変更されると、運転者支援システムが自動車を減速させる事態が引き起こされうる。
【0012】
本発明によれば、自動車と少なくとも1つの物体との間の不確定領域が決定されるような構成が提供される。この不確定領域は、特に、少なくとも1つの物体に対して自動車の相対位置を決定している間の空間的な不確定性を表すものである。この不確定領域は、走行経路に沿った自動車の運転前に決定される。なお、不確定領域は、物体に対する自動車の相対位置を検知したすぐ後に決定されまたは予め規定されてもよい。少なくとも1つの物体が、例えば、駐車スペースの境界を定めるものであれば、不確定領域は、駐車スペースを測定したすぐ後に決定されてもよい。したがって、不確定領域は、自動車が物体を通過し、または駐車スペースの中に入る前に決定される。少なくとも1つの物体の位置および/または外寸を決定している間の空間的な不確定性も、不確定領域に考慮されてもよい。さらに、不確定領域の決定中、自動車の位置を決定している間の空間的な不確定性を考慮することもできる。自動車の位置は、例えば、走行距離計によって決定される。このような状況において、物体または物体の位置が検知された後、走行距離計測中に累積誤差が生じうる。不確定領域を決定している間に、自動車と物体との相対位置の決定中に空間的な不確定性が、物体および/または自動車の位置が周囲のマップにおいて引き続き処理されるセンサモデルに基づいて決定されることにより生じうるということを考慮することもできる。自動車と物体との間の決定された衝突距離は、自動車が走行経路に沿って走行する前に不確定領域に対して調整される。さらに、自動車は、調整された衝突距離に応じて検出された走行経路に沿って操縦される。このようにして、自動車の動きは、物体との衝突が起こらない可能性が高いことが想定される領域において制御されうる。このようにして、自動車と物体との衝突距離が所定の最小値に届かずに、ある状況下において、自動車の速度や加速度が急に減速する状況を招きうる事態を回避することも可能となる。したがって、運転者が不快に感じることのない、走行経路に沿った少なくとも半自律的な操縦が可能となる。上記方法は、特に、自動車の駐車および/または操縦のためのものでありうる。
【0013】
不確定領域は、センサデバイスのタイプ、自動車と少なくとも1つの物体との相対位置の検出中の自動車の現行速度および/または自動車と少なくとも1つの物体との検出された相対位置に基づいて決定されることが好ましい。センサデバイスは、自動車と物体との間の距離が検知されうる少なくとも1つの距離センサを備えうる。さらに、センサデバイスは、少なくとも1つの物体の外寸を決定するように構成されうる。センサデバイスは、例えば、少なくとも1つの超音波センサ、少なくとも1つのカメラ、少なくとも1つのレーダセンサおよび/または少なくとも1つのレーザセンサを含みうる。測定精度、例えば、物体の位置および/または寸法の検知中の測定精度は、センサの構成に応じてさまざまである。これらの測定精度は、不確定領域の決定中、考慮されうる。さらに、物体に対する自動車の相対位置および/または相対速度は、物体の検知中に考慮されうる。したがって、不確定領域は、特に高信頼性に決定されうる。
【0014】
一実施形態において、自動車と少なくとも1つの物体との相対位置は、走行経路に沿った自動車の走行中、継続的に検出され、不確定領域は、検出された相対位置に応じて調整される。検出された走行経路に沿った走行中、運転者支援システムは、通常、少なくとも1つの物体を示す比較的精度の高い情報を受け取る。例えば、物体の位置および/または物体の外寸は、自動車が物体に接近するにつれより高精度に決定されうる。したがって、不確定領域は、この情報に基づいて継続的に調整されうる。
【0015】
衝突距離は、自動車の外寸および所定の安全距離に基づいてさらに調整されることが好ましい。自動車と少なくとも1つの物体との間の衝突距離を決定している間、自動車の外寸が考慮されえ、このような外寸は、例えば、運転者支援システムのメモリユニットに格納されたであってもよい。自動車と物体との相対位置を決定している間、自動車の外寸に安全距離が追加されうる。このようにして、不確定領域の他にも、衝突距離を決定するさいに安全距離を考慮することも可能である。
【0016】
さらなる改良において、調整された衝突距離に到達したときの自動車と検出された走行経路の終点との距離を示す残り距離が検出される。特に、残り距離は、衝突距離に到達した自動車と走行経路の終点との間に最短距離となる。本明細書において、走行経路は、自動車に対する物体の相対位置に基づいて検出されることが好ましい。したがって、不確定領域は、走行経路を決定する間に考慮されない。しかしながら、調整された衝突距離は、不確定領域に基づいて決定される。したがって、終点からの残り距離は、少なくとも1つの物体との衝突の危険性がないように決定されうる。
【0017】
さらに、検出された走行経路に沿って自動車が走行するための速度プロファイルが、検出された残り距離に応じて決定されることが好ましい。残り距離は、不確定領域および/または安全距離を考慮して決定されることから、走行経路に沿って自動車が移動している間、物体と衝突する危険性がないことを高確率で想定することができる。したがって、走行経路に沿った速度プロファイルは、自動車の乗員が安全かつ快適な走行と感じられるものになるように決定されうる。
【0018】
走行経路に沿った自動車の走行を示すモデルが決定されることが好ましく、衝突距離は、決定されたモデルに応じてさらに調整される。モデルを用いることで、自動車を少なくとも半自律的に操縦しても、ある状況下では、決定された走行経路に正確に沿って移動するわけではない事態を考慮することが可能となる。モデルは、特に、自動車の動きを示す動的モデルでありうる。したがって、モデルを用いて走行経路からの自動車のずれを考慮し、衝突距離の測定中に使用することができる。このようにして、走行経路に沿って移動中の自動車の相対位置を正確に決定することができる。
【0019】
さらなる改良において、検出された走行経路に沿った走行中の自動車の位置が決定され、残り距離が自動車の決定された位置に基づいて調整される。自動車の位置は、例えば、走行距離計によって決定されうる。この目的のために、自動車の少なくとも1つの車輪の回転数および/または走行経路に沿って自動車が移動している間の操舵角が検知されうる。このようにして、残り距離を高信頼性に検出することができる。
【0020】
さらに、自動車が走行経路に沿って走行する間に走行方向の変更を少なくとも1回行うようにする走行経路が決定され、走行方向の変更が実行される走行経路上の地点からの距離が検出されることが好ましい。特に、駐車プロセス中、走行経路は、走行経路に沿った移動中、自動車が走行方向の変更を、すなわち、後進から前進またはその逆への変更を行うようにする走行経路が決定されうる。上述した変更実行地点を出力することにより、走行経路に沿った自動車の移動を正確に決定することが可能となる。
【0021】
検出された走行経路に沿った自動車の走行の速度プロファイルは、変更実行地点から検出された距離に応じてさらに決定されることが好ましい。走行経路上の変更実行地点からの自動車の距離は、走行方向の変更が実行される場所に達すると、出力される。自動車の乗員にとって快適かつ安全な運転感覚が得られるように、この距離に基づいて、現行位置から変更実行地点までの速度プロファイルが検出されうる。
【0022】
さらなる実施形態において、自動車の周囲領域にさらなる物体がさらに検知されると、さらなる物体の現行位置が不確定領域内にあるか確認される。自動車の移動中、さらなる物体が、センサデバイスで検出または検知されうる。このようなさらなる物体は、例えば、自動車と少なくとも1つの物体との間を移動している歩行者でありうる。また、さらなる物体は、以前に検知されたことがない物体である場合もある。さらなる物体が不確定領域内になければ、自動車の動きは調整されうる。あるいはまたはさらに、走行経路が調整されうる。このようにして、自動車は安全に操縦されうる。
【0023】
さらに、好適には、調整された衝突距離に応じて走行経路に沿って自動車の走行を制御するために、ステアリングシステム、ブレーキシステムおよび/または駆動エンジンへの介入がなされる。走行経路に沿って自動車を移動させるために、例えば、自動車の運転者支援システムがステアリング介入を行うことも可能である。この場合、運転者支援システムは、自動車の横方向の案内を行う。運転者は、アクセルペダルおよびブレーキを継続して作動させる。また、運転者支援システムは、走行経路に沿った自動車を操縦するために、自動車のブレーキおよび/または駆動エンジンをさらに作動させるようにすることも可能である。この場合、運転者支援システムは、自動車の長手方向の案内を行う。
【0024】
さらなる実施形態において、走行経路に沿った走行中、自動車は、並列駐車の目的で駐車スペース内に移動し、または縦列駐車の目的で駐車スペース内に移動する。この場合、少なくとも1つの物体が駐車スペースの境界を定める。この駐車スペースは、自動車を並列駐車させるためのものでありうる。この代わりに、駐車スペースは、自動車を縦列駐車させるためのものでありうる。このようにして、運転者は、自動車の駐車中に支援されうる。また、自動車を駐車スペースから出すために、自動車が走行経路に沿って操縦されるようにすることも可能である。
【0025】
本発明に係る運転者支援システムは、本発明に係る方法を実行するように構成される。運転者支援システムは、物体の位置を検出するセンサデバイスを備えることが好ましく、センサデバイスは、少なくとも1つの超音波センサ、少なくとも1つのカメラ、少なくとも1つのレーダセンサおよび/または少なくとも1つのレーザセンサを有する。このようにして、センサデバイスまたは対応する距離センサを用いて物体に対する相対位置を高信頼性に決定することが可能である。
【0026】
本発明に係る自動車は、本発明に係る運転者支援システムを備える。自動車は、特に、乗用車として具体化される。
【0027】
本発明に係る方法に関して提示する実施形態およびその利点は、本発明に係る運転者支援システムおよび本発明に係る自動車にも同様に当てはまる。
【0028】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面および図面の説明に見出されうる。上述した記載に明示したすべての特徴または特徴の組み合わせならびに図面の説明において以下に明示され、および/または、図面にのみ示されたすべての特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ明治した組み合わせにおいてのみではなく、他の組み合わせまたは単独でも用いられうる。
【0029】
以下、好ましい例示的な実施形態に基づいて添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る自動車の概略図を示す。
図2】自動車の周囲領域にある2つの物体およびそれぞれの不確定領域の概略図を示す。
図3図2に示す2つの物体に対する自動車の動きを示す。
図4】さらなる実施形態における図2に示す2つの物体に対する自動車の動きを示す。
図5】自動車が走行方向の変更を実行する場合の2つの物体に対する自動車の動きを示す。
図6】自動車の周囲領域における第2の物体およびさらなる物体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車を示す。自動車1は、本発明の例示的な実施形態における乗用車として具体化されたものである。自動車1は、運転者支援システム2を備える。運転者支援システム2は、例えば、自動車1の制御ユニットによって形成される制御デバイス3を備える。さらに、運転者支援システム2は、センサデバイス9を備える。
【0032】
本発明の例示的な実施形態において、センサデバイス9は、8個の距離センサ4を備える。本実施形態では、自動車1の前方領域5に4個の距離センサ4が配置され、自動車1の後方領域6に4個の距離センサ4が配置される。距離センサ4は、特に、自動車1の周囲領域7にある物体12を検知するように構成される。さらに、距離センサ4は、自動車1の周囲領域7にある少なくとも1つの物体10、11からの距離を決定するように構成される。距離センサ4は、例えば、超音波センサ、レーダセンサ、レーザスキャナ、カメラ等として具体化されうる。また、例えば、自動車1の外側の側部領域にさらなる距離センサが配置されるようにすることも可能である。
【0033】
さらに、自動車1は、駆動デバイス8を備える。駆動デバイス8は、自動車1の動力伝達系路を作動するように働きうる。特に、自動車1の駆動エンジンおよび/またはブレーキシステムが、駆動デバイス8で作動されうる。また、自動車1のステアリングシステムが駆動デバイス8によって作動されるようにすることも可能である。制御デバイス3は、データを伝送するために距離センサ4に接続される。明確にするために、対応するデータラインが示していない。さらに、制御デバイス3は、データを送信するために駆動デバイス8に接続される。
【0034】
自動車1の周囲7にある少なくとも1つの物体10、11は、距離センサ4で検知されうる。さらに、物体10、11からの距離が決定されうる。この目的のために、例えば、距離センサ4の少なくとも1つを用いて信号が放出されてもよく、物体から反射された信号は、再度受信されうる。物体10、11からの距離は、制御デバイス3によって信号の通過時間に基づいて決定されうる。運転者支援システム2は、自動車1の現行位置をさらに検出しうる。この目的のために、衛星支援された位置決定システムの信号を考慮してもよい。さらに、自動車1の現行位置は、走行距離計によって決定されうる。この目的のために、例えば、自動車1の少なくとも1つの車輪の回転数および/または自動車の操舵角が検出されうる。物体10、11に対する自動車1の相対位置は、自動車1の現行位置と、自動車1と物体10、11との距離とに基づいて検出されうる。
【0035】
さらに、制御デバイス3は、自動車1の走行経路12を算出するように構成され、この走行経路12は、自動車1が物体10、11を通過するさいに衝突せずに移動する経路を示す。この目的のために、例えば、制御デバイス3のメモリユニットに格納されたものなどの自動車1の外寸も考慮してもよい。運転者支援システム2によって、自動車1は、走行経路12に沿って半自律的に移動されうる。この場合、ステアリングは、運転者支援システム2によって実行される。また、運転者は、アクセルペダルおよびブレーキを作動させる。この代わりとして、自動車1は、走行経路12に沿って自律的に移動されうる。この状況において、運転者支援システム2は、自動車1の駆動およびブレーキを制御する。
【0036】
運転者支援システム2および制御デバイス3は、走行経路12に沿って、すなわち、走行経路12の始点から終点まで走行するための速度プロファイルを決定するようにさらに構成される。自動車1が走行経路12に沿って移動されると、自動車1は少なくとも1つの物体10、11に接近しうる。この場合、自動車1と物体10、11との間の衝突距離をしきい値と見なしうる。衝突距離は、走行経路12に沿った走行中に物体10、11と衝突する危険性がある自動車1の領域と少なくとも1つの物体10、11との距離を示す。衝突距離のしきい値に達していなければ、自動車1は運転者支援システム2によって自動的に減速されうる。これにより、運転者が走行経路12に沿った走行に不快や危険を感じないようにすることができる。
【0037】
図2は、自動車1の周囲領域7に位置する第1の物体10および第2の物体11の平面図を示す。2つの物体10、11は、例えば、駐車スペースの境界を定めるものであってもよい。物体10、11の外寸は、制御デバイス3によって距離センサ4のセンサデータに基づいて決定される。物体10、11が距離センサ4で検知される場合、通常、測定誤差が生じる。これらの測定誤差は、距離センサ4の種類や測定法に起因しうる。さらに、物体10、11に対する自動車1の位置は、物体10、11の検知中に有用でありえ、および/または、自動車1の現行速度は、物体10、11の検知中に有用でありうる。自動車1と物体10、11との間のそれぞれ不確定領域a、a’を考慮することによって、これらの影響を及ぼす要因が考慮される。不確定領域aまたはa’は、いわば物体10、11の境界を定めるものでありうる。第1の物体10に対する不確定領域aにより、第1の安全物体10’が得られる。第2の物体11に対する不確定領域a’により、第2の安全物体11’が得られる。不確定領域aは、自動車1が走行経路12に沿って操縦される前に決定される。衝突距離は、不確定領域a、a’と、安全物体10’および11’’とに基づいて調整される。そして、自動車1が物体10、11を通過するさいに移動する走行経路12は、調整された衝突距離に基づいて決定されうる。
【0038】
さらに、さらなる実施形態によれば、不確定領域a、a’または安全物体10’、11’が、走行経路12に沿った自動車1の走行中に調整される。これは、図3に示されている。自動車1が、時間tに応じて物体10、11の方へ移動すると、物体10、11は、距離センサ4によってより高精度に検知されうる。その結果、それに応じて、不確定領域a、a’または安全物体10’、11’を調整することができるようになる。これにより、調整された不確定領域bおよびb’または調整された安全物体10’’および11’’が得られる。図3に、調整された安全物体10’’および11’’が点線で示されている。調整された安全物体10’’および11’’は、安全物体10’および11’とより比較的小さな空間範囲を有し、この空間範囲は、2つの物体10および11間にあり、自動車1に対して後退していることが明らかである。この理由は、自動車1が物体10、11に接近するまでこの領域をより高精度に検知できないためであり、したがって、調整された不確定領域bまたはb’を不確定領域a、a’より小さくなるように選択することもできる。
【0039】
運転者支援システム2は、物体10、11の一方と衝突する危険性があるかを判定しうる。この目的のために、運転者支援システム2は、衝突距離を決定する。衝突距離の算出中、不確定領域a、a’または調整された不確定領域b、b’がそれぞれ考慮される。したがって、運転者支援システム2は、自動車1と物体10、11の一方とが衝突しない可能性が高い領域を示す残り距離14を検出することもできる。残り距離14は、特に、最短衝突距離に達したときの自動車1の位置と走行経路12の終点との最短距離を示す。したがって、残り距離14は、不確定領域a、a’または調整された不確定領域b、b’に応じて検出される。しかしながら、走行経路12は、物体10、11に基づいて検出される。
【0040】
図4は、さらなる例示的な実施形態を示す。この場合、自動車1は、2つの物体10、11の間を後進している。この場合、自動車1の外寸に加え、安全距離Sが考慮される。ここで、安全距離Sは、自動車1が矩形20であると見なされるように選択される。安全距離Sは、衝突距離および/または残り距離14の算出中に不確定領域a、a’に加えて考慮される。
【0041】
残り距離14は、走行経路12に応じて決定される。走行経路12に沿って自動車1が移動している間、ずれが生じうる。このようなずれは、例えば、自動車1のステアリングシステムが、運転者支援システム2により予め規定された操舵角に追従していないことにより生じうる。このずれを考慮するために、自動車1の動的モデルが使用されうる。この状況において、例えば、走行距離計により決定される自動車1の現在検出された位置に合わせて走行経路12が予測されるということによって残り距離14が算出されるようにすることも可能である。これにより、走行経路13が予想または調整され、その走行経路13に基づいて残り距離14が決定される。
【0042】
図5は、2つの物体10、11の間を自動車1が後進するさらなる例示的な実施形態を示す。2つの物体10、11は、例えば、駐車スペースの境界を定めるものであってもよい。この場合、走行経路12は、走行経路12に沿った走行中、自動車1が走行方向の変更を実行するように決定される。さらに、2つの物体10、11の位置が修正され、その結果、調整された境界線16が生成される。物体10、11が新しく測定されると、元々計画されていた走行経路12に沿った走行が物体10、11のいずれかとの衝突をもたらさないが、走行中の目標位置が走行経路12に沿って到達しえないという問題が生じうる。この場合、走行経路12の変更が必要になる。
【0043】
図5に示す例示的な実施形態において、運転者支援システム2が、運転操縦の持続時間を短縮するために、計画よりも早く走行方向の変更を実行する場合もある。これは、走行経路12に沿ったさらなる走行に衝突が起きない場合に実行されうる。この場合、自動車1の現行位置と、走行方向の変更が起きる走行経路12上の地点との距離が、運転者支援システム2によって出力されうる。ここで、自動車1の駆動デバイスは、自動車1が変更実行地点まで移動するか、または衝突の危険性がないならば走行経路12にさらに沿って移動するように運転者支援システム2によって作動されうる。自動車1はできるだけ早期に停止すべきであるが、快適性は保たれるべきである。自動車1は、調整された走行経路13で移動しうる。本実施例において、走行経路上の残り距離14および調整された走行経路13上の残り距離17は同じである。
【0044】
走行経路12に沿った自動車1の走行中、自動車1の周囲領域7におけるさらなる物体が、距離センサ4で検知される場合もある。これは、例えば、歩行者や他の道路利用者が、自動車1と第1の物体10および/または第2の物体11との間に位置する場合などである。また、さらなる物体が後の時点でしか検知されない場合もある。
【0045】
これらのさらなる物体は、対応する特徴に割り当てられうる。これは、第2の物体11の例を用いて、図6に概略的に明示されている。この状況において、不確定領域a’内に位置するさらなる物体と、不確定領域a’外に位置するさらなる物体との間の区別がなされる。不確定領域a’内に位置するさらなる物体は、複数の特徴18を形成するようにグループ化される。不確定領域a’外に位置するさらなる物体は、特徴19を形成するようにグループ化される。この状況において、さらなる物体からの衝突距離が検出されるように設けることも可能である。少なくとも1つのさらなる物体が不確定領域a’外に位置すれば、さらなる物体からの衝突距離は、速度プロファイルの検出中に考慮されうる。
【0046】
上述した例示的な実施形態において、駆動デバイス8は、残り距離14の最小値が、走行経路12に沿った速度プロファイルを検出するために使用されるように動力伝達系路を作動させうる。物体10、11の一方と自動車1との間にさらなる物体が位置していなければ、運転者支援システム2は、速度プロファイルを決定するために残り衝突距離を用いうる。走行経路12に沿った走行中、不確定領域a、a’および/または安全距離Sが衝突距離の決定中に考慮されるため、衝突距離は任意の比較的小さな値に達しない。このようにして、自動車1は、車両の乗員が走行を快適かつ安全に感じるように走行経路12に沿って操縦されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6