特許第6474889号(P6474889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474889MIMO送信機の前処理フィルタを用いた伝送信号生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474889
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】MIMO送信機の前処理フィルタを用いた伝送信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20190218BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20190218BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20190218BHJP
【FI】
   H04B7/0456 100
   H04B7/06 910
   H04W16/28 130
【請求項の数】18
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-507653(P2017-507653)
(86)(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公表番号】特表2017-518002(P2017-518002A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】KR2015001498
(87)【国際公開番号】WO2015167117
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】61/984,853
(32)【優先日】2014年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159259
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 実
(72)【発明者】
【氏名】リ キルポム
(72)【発明者】
【氏名】カン チウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム キテ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘチン
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−42401(JP,A)
【文献】 特開2012−227878(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/033606(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0170627(US,A1)
【文献】 特開2009−060615(JP,A)
【文献】 特表2010−501136(JP,A)
【文献】 特開2007−110664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0456
H04B 7/06
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを含むMIMO(Multiple Input Multiple Output)送信機が伝送信号を生成する方法であって、
複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択するステップと、
前記基準REのチャネル情報に基づいて、前記REグループ内の前記複数のREが共有する共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成するステップと、
前記複数のREのそれぞれに対する伝送データに前記共用プリコーダを適用することによって、前記複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成するステップと、
前記複数のREのうち、前記基準RE以外のREの1次信号を各REのチャネル情報及び前記前処理フィルタを用いて補償することによって、2次信号を生成するステップと、
を含む、伝送信号生成方法。
【請求項2】
前記前処理フィルタは、前記1次信号を補償して前記2次信号を生成する過程の正確度を向上させるための行列である、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項3】
前記前処理フィルタは、前記基準REのチャネル情報に基づいて、ヤコビ(Jacobi)アルゴリズム、ガウス−ザイデル(Gauss−Siedel)アルゴリズム、SQRプリコンディショニング(SQR preconditioning)アルゴリズム、又は不完全コレスキー因数分解(incomplete Cholesky factorization)アルゴリズムを用いて生成される、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項4】
前記前処理フィルタは、前記基準REのチャネル情報を近似して対角行列を生成し、前記対角行列にヤコビアルゴリズムを適用して生成される、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項5】
前記2次信号は、前記1次信号に対して、前記前処理フィルタ及び前記各REのチャネル情報と共に、CG(conjugate gradient)アルゴリズム、ニュートン法(Newton method)アルゴリズム、又は最急降下法(steepest descent method)アルゴリズムを適用することによって生成される、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項6】
前記2次信号は、前記共用プリコーダの代わりに前記各REのチャネル情報を用いて計算した時の結果と前記1次信号との誤差が閾値未満になるまで前記補償過程を反復して行うことによって生成され、
前記補償過程を反復して行う最大の回数は、MIMOチャネル環境又はユーザ入力によって決定される、請求項5に記載の伝送信号生成方法。
【請求項7】
前記基準REに対する1次信号及び前記複数のREのうち前記基準RE以外のREに対する2次信号を変換して、伝送信号である3次信号を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項8】
前記3次信号は、前記複数のREのそれぞれのチャネル情報を反映する関数
【数1】
に基づいて生成され、
前記関数で、tは、前記基準REの1次信号(n=1の場合)又は前記基準RE以外のREの2次信号(n=2,3,…,N)を意味し、Nは、前記REグループ内のREの個数を意味する、請求項7に記載の伝送信号生成方法。
【請求項9】
前記共用プリコーダは、ZF(Zero Forcing)プリコーディング行列、規則化されたZF(regularized ZF)プリコーディング行列又はMMSE(Minimum Mean Square Error)プリコーディング行列の一部である、請求項1に記載の伝送信号生成方法。
【請求項10】
複数のアンテナを有し、前記複数のアンテナで送信する伝送信号を生成するMIMO(Multiple Input Multiple Output)送信機であって、
送信部と、
受信部と、
前記送信部及び前記受信部と接続して伝送信号を生成するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択し、
前記基準REのチャネル情報に基づいて、前記REグループ内の前記複数のREが共有する共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成し、
前記複数のREのそれぞれに対する伝送データに前記共用プリコーダを適用することによって、前記複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成し、
前記複数のREのうち、前記基準RE以外のREの1次信号を各REのチャネル情報及び前記前処理フィルタを用いて補償することによって、2次信号を生成する、送信機。
【請求項11】
前記前処理フィルタは、前記1次信号を補償して前記2次信号を生成する過程の正確度を向上させるための行列である、請求項10に記載の送信機。
【請求項12】
前記前処理フィルタは、前記基準REのチャネル情報に基づいて、ヤコビ(Jacobi)アルゴリズム、ガウス−ザイデル(Gauss−Siedel)アルゴリズム、SQRプリコンディショニング(SQR preconditioning)アルゴリズム、又は不完全コレスキー因数分解(incomplete Cholesky factorization)アルゴリズムを用いて生成される、請求項10に記載の送信機。
【請求項13】
前記前処理フィルタは、前記基準REのチャネル情報を近似して対角行列を生成し、前記対角行列にヤコビアルゴリズムを適用して生成される、請求項10に記載の送信機。
【請求項14】
前記2次信号は、前記1次信号に対して、前記前処理フィルタ及び前記各REのチャネル情報と共に、CG(conjugate gradient)アルゴリズム、ニュートン法(Newton method)アルゴリズム、又は最急降下法(steepest descent method)アルゴリズムを適用することによって生成される、請求項10に記載の送信機。
【請求項15】
前記2次信号は、前記共用プリコーダの代わりに前記各REのチャネル情報を用いて計算した時の結果と前記1次信号との誤差が閾値未満になるまで前記補償過程を反復して行うことによって生成され、
前記補償過程を反復して行う最大の回数は、MIMOチャネル環境又はユーザ入力によって決定される、請求項14に記載の送信機。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記基準REに対する1次信号及び前記複数のREのうち前記基準RE以外のREに対する2次信号を変換して、伝送信号である3次信号を生成する、請求項10に記載の送信機。
【請求項17】
前記3次信号は、前記複数のREのそれぞれのチャネル情報を反映する関数
【数2】
に基づいて生成され、
前記関数で、tは、前記基準REの1次信号(n=1の場合)又は前記基準RE以外のREの2次信号(n=2,3,…,N)を意味し、Nは、前記REグループ内のREの個数を意味する、請求項16に記載の送信機。
【請求項18】
前記共用プリコーダは、ZF(Zero Forcing)プリコーディング行列、規則化されたZF(regularized ZF)プリコーディング行列又はMMSE(Minimum Mean Square Error)プリコーディング行列の一部である、請求項10に記載の送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッシブMIMO環境で送信機の性能劣化を最小化しながらも、実装の複雑度及びメモリ要求量を減らす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多重アンテナ(Multiple Input Multiple Output:MIMO)システムは、多重送信アンテナと多重受信アンテナを利用する無線通信システムを意味する。MIMOシステムでは、ダイバーシチ方式を用いて、無線チャネルで発生するフェーディング影響を最小化したり、空間マルチプレクシング(spatial multiplexing)を用いて複数のストリームを同時に送信してスループット(throughput)を向上させることができる。送信アンテナの数がNであり、受信アンテナの数がNであれば、空間マルチプレクシング(SM)方式の場合、伝送可能な最大のストリームの数はmin(N,N)となる。特に、高SNR(high SNR)では通信容量(capacity)の勾配がmin(N,N)と表されることが既に知られている。通信容量は、与えられたチャネルで理論的に伝送可能な最大スループットを意味するので、送受信アンテナの数が同時に増加する場合、通信容量も増加する。
【0003】
非常に多い送受信アンテナを有するマッシブ(massive)MIMOシステムは、5Gを構成する技術の一つとして注目を受けている。多数の論文と実験において、マッシブMIMOシステムは、複数のアンテナを有する1つの基地局(分散アンテナシステム(distributed antenna system)を含む。)と1つのアンテナを有する複数の端末を仮定する。この場合、端末は、1つのアンテナを有するが、複数の端末が1つの基地局から同時にサービス受けることから、基地局と全端末とのチャネルをMIMOとして理解してもよい。全端末の数をKと定義すれば、前述した高SNR環境で通信容量の勾配はmin(N,K)と表現される。
【0004】
一方、理論的に無限大の送信アンテナを有する基地局が複数の端末にデータを同時に送信するとき、基地局の最適(optimal)送信アルゴリズムはMRT(maximal ratio transmission)アルゴリズムである。一方、複数の端末が基地局に送信したデータを1つの基地局が受信するとき、基地局の最適受信アルゴリズムはMRC(maximal ratio combining)アルゴリズムである。MRTとMRCが干渉を考慮しないため、有限のアンテナ数を有する場合に性能の劣化を示すといっても、アンテナの数が無限大である場合にはそのような干渉が消えるため、MRTとMRCは最適なソリューションになり得る。
【0005】
基地局はアンテナビームフォーミングを用いてビームを細く(sharp)させることができ、特定の端末にエネルギーを集中させることができる。これは、少ない電力で同量の情報を伝達できる一方で、周辺における他の端末には干渉をほとんど与えないため、干渉によるシステムの性能劣化を最小化する方法であるといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような一般的な技術の問題点を解決するために考案されたものであり、本発明の目的は、マッシブ(Massive)MIMO環境で送信機の性能を維持しながらも、伝送信号生成複雑度を最小化することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、通信環境によって送信機の目標性能を調節することによって伝送信号生成複雑度を能動的に調節することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、MIMO送信機が前処理フィルタを活用するようにすることによって、伝送信号を生成する過程の速度を向上させ、効率的な信号処理を可能にすることにある。
【0009】
本発明で遂げようとする技術的目的は以上で言及した事項に制限されず、言及していない他の技術的課題は、以下に説明する本発明の実施例から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって考慮されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するための伝送信号生成方法は、複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択するステップ、基準REのチャネル情報に基づいて、REグループ内の複数のREが共有する共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成するステップ、複数のREのそれぞれに対する伝送データに共用プリコーダを適用することによって、複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成するステップ、及び複数のREのうち、基準RE以外のREの1次信号を、各REのチャネル情報及び前処理フィルタを用いて補償することによって2次信号を生成するステップを含む。
【0011】
前処理フィルタは、1次信号を補償して2次信号を生成する過程の正確度を向上させるための行列であってもよい。
【0012】
前処理フィルタは、基準REのチャネル情報に基づいて、ヤコビ(Jacobi)アルゴリズム、ガウス−ザイデル(Gauss−Siedel)アルゴリズム、SQRプリコンディショニング(SQR preconditioning)アルゴリズム、又は不完全コレスキー因数分解(incomplete Cholesky factorization)アルゴリズムを用いて生成されてもよい。
【0013】
前処理フィルタは、基準REのチャネル情報を近似して対角行列を生成し、対角行列にヤコビアルゴリズムを適用して生成されてもよい。
【0014】
2次信号は、1次信号に対して前処理フィルタ及び各REのチャネル情報と共に、CG(conjugate gradient)アルゴリズム、ニュートン法(Newton method)アルゴリズム、又は最急降下法(steepest descent method)アルゴリズムを適用することによって生成されてもよい。
【0015】
2次信号は、共用プリコーダの代わりに各REのチャネル情報を用いて計算した時の結果と1次信号との誤差が閾値未満になるまで補償過程を反復して行うことによって生成され、補償過程を反復して行う最大の回数はMIMOチャネル環境又はユーザ入力によって決定されてもよい。
【0016】
伝送信号生成方法は、基準REに対する1次信号及び複数のREのうち、基準RE以外のREに対する2次信号を変換して、伝送信号である3次信号を生成するステップをさらに含んでもよい。
【0017】
前記3次信号は、前記複数のREのそれぞれのチャネル情報を反映する関数
【数1】
に基づいて生成されてもよく、前記関数で、tは、前記基準REの1次信号(n=1の場合)又は前記基準RE以外のREの2次信号(n=2,3,…,N)を意味し、Nは、前記REグループ内のREの個数を意味する。
【0018】
共用プリコーダは、ZF(Zero Forcing)プリコーディング行列、規則化されたZF(regularized ZF)プリコーディング行列、又はMMSE(Minimum Mean Square Error)プリコーディング行列の一部であってもよい。
【0019】
上記の技術的課題を解決するための他の伝送信号生成方法は、複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択するステップ、基準REのチャネル情報に基づいてREグループ内の複数のREが共有する共用プリコーダを生成するステップ、複数のREのそれぞれに対する伝送データに共用プリコーダを適用することによって、複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成するステップ、複数のREのうち、基準RE以外のREのチャネル情報に基づいて、基準RE以外のREのそれぞれに適用する前処理フィルタを生成するステップ、及び基準RE以外のREの1次信号を各REの前処理フィルタ及びチャネル情報を用いて補償することによって2次信号を生成するステップを含む。
【0020】
上記の技術的課題を解決するためのMIMO送信機は、送信部、受信部、及び送信部及び受信部と接続して伝送信号を生成するプロセッサを備え、プロセッサは、複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択し、基準REのチャネル情報に基づいて、REグループ内の複数のREが共有する共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成し、複数のREのそれぞれに対する伝送データに共用プリコーダを適用することによって、複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成し、複数のREのうち、基準RE以外のREの1次信号を、各REのチャネル情報及び前処理フィルタを用いて補償することによって、2次信号を生成する。
【0021】
上記の技術的課題を解決するための他のMIMO送信機は、送信部、受信部、及び送信部及び受信部と接続して伝送信号を生成するプロセッサを備え、プロセッサは、複数のリソースエレメント(resource element;RE)を含むREグループから基準REを選択し、基準REのチャネル情報に基づいて、REグループ内の複数のREが共有する共用プリコーダを生成し、複数のREのそれぞれに対する伝送データに共用プリコーダを適用することによって、複数のREのそれぞれに対するプリコーディング信号である1次信号を生成し、複数のREのうち、基準RE以外のREのチャネル情報に基づいて、基準RE以外のREのそれぞれに適用する前処理フィルタを生成し、基準RE以外のREの1次信号を各REの前処理フィルタ及びチャネル情報を用いて補償することによって、2次信号を生成する。
【0022】
上述した一般的な説明及び後述する詳細な説明はいずれも例示的なものであり、請求される本発明のさらに詳細な説明を提供するためのものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例によれば次のような効果を期待することができる。
【0024】
第一に、RE間の相関関係が大きいほど送信機の信号生成複雑度が低減し、また、相関関係が小さい場合にも性能の損害無しで複雑度を減らすことができる。
【0025】
第二に、伝送信号生成の複雑度を必要によって調節することができるため、通信環境による適応的な性能調節が可能である。
【0026】
第三に、送信機が前処理フィルタを活用することによって、そうでない場合に比べて迅速で正確な伝送信号処理が可能になる。
【0027】
本発明の実施例から得られる効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及していない他の効果は、以下の本発明の実施例に関する記載から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に導出され理解されるであろう。すなわち、本発明を実施することに伴う意図しない効果も、本発明の実施例から、当該技術の分野における通常の知識を有する者にとっては導出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下に添付する図面は、本発明に関する理解を助けるためのものであり、詳細な説明と共に本発明に関する実施例を提供する。ただし、本発明の技術的特徴が特定の図面に限定されるものではなく、各図に開示する特徴を組み合わせて新しい実施例としてもよい。各図における参照番号(reference numerals)は、構造的構成要素(structural elements)を意味する。
図1】本発明と関連して、MIMO(Multiple Input Multiple Output)環境で受信ストリーム数による計算複雑度を示す図である。
図2】本発明と関連して、MIMO環境で受信ストリーム数によるメモリ要求量を示す図である。
図3】本発明と関連して、MIMO環境で同一セル内の端末間の干渉を示す図である。
図4】本発明と関連して、MIMO環境で隣接セル間の干渉を示す図である。
図5】本発明と関連して、端末に割り当てられるリソースブロック(Resource Block:RB)の構造を示す図である。
図6】本発明と関連して、複数のリソースエレメントが形成するREグループを示す図である。
図7】本発明と関連して、従来のMIMO送信機の動作手順を示す図である。
図8】本発明の一実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。
図9】本発明の一実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。
図10】本発明の一実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。
図11】本発明と関連して、MIMO送信機が前処理フィルタを生成する一例を示す図である。
図12】本発明の他の実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。
図13】従来技術と本発明の実施例間の計算複雑度を比較したグラフである。
図14】本発明の一実施例に係る端末及び基地局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明で使われる用語は、本発明における機能を考慮するとともに、可能な限り現在広く使われる一般的な用語を選択したが、これは、当該分野に従事する技術者の意図、判例、又は新しい技術の出現などによって変更されてもよい。また、特定の場合には、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明の部分において詳しくその意味を記載するものとする。したがって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されなければならない。
【0030】
以下の実施例は、本発明の構成要素と特徴を所定の形態に結合したものである。各構成要素又は特徴は、別の明示的な言及がない限り、選択的なものとして考慮することができる。各構成要素又は特徴は、他の構成要素や特徴と結合しない形態で実施することもでき、一部の構成要素及び/又は特徴を結合して本発明の実施例を構成することもできる。本発明の実施例で説明する動作の順序は変更されてもよい。ある実施例の一部の構成や特徴は、他の実施例に含まれてもよく、他の実施例の対応する構成又は特徴に取って代わってもよい。
【0031】
図面に関する説明において、本発明の要旨を曖昧にさせ得る手順又は段階などは記述を省略し、当業者のレベルで理解可能な程度の手順又は段階も記述しないものとする。
【0032】
明細書の全体を通じて、ある部分がある構成要素を“含む(又は、備える)”としたとき、これは、特別に反対する記載がない限り、他の構成要素を除外するという意味ではなく、他の構成要素をさらに含み得るということを意味する。また、明細書に記載された“…部”,“… 器”,“モジュール”などの用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの結合によって実装することができる。また、“一つ(a又はan)”、“一(one)”,“前記(the)”及び類似の関連語は、本明細書及び以下の請求項において、本明細書に特別に指示されたり又は文脈によって明らかに反駁されない限り、単数及び複数の両意味で使われるものとする。
【0033】
本明細書で、本発明の実施例は、基地局と移動局との間におけるデータ送受信関係を中心に説明されている。ここで、基地局は、移動局と直接的に通信を行うネットワークの終端ノード(terminal node)としての意味がある。本文書で基地局によって行われると説明された特定動作は、場合によっては、基地局の上位ノード(upper node)によって行われてもよい。
【0034】
すなわち、基地局を含む複数のネットワークノード(network nodes)で構成されるネットワークにおいて移動局との通信のために行われる様々な動作は、基地局又は基地局以外のネットワークノードによって行われる。ここで、‘基地局’は、固定局(fixed station)、Node B、eNode B(eNB)、発展した基地局(Advanced Base Station、ABS)、又はアクセスポイント(access point)などの用語に言い換えてもよい。
【0035】
また、‘移動局(Mobile Station、MS)’は、UE(User Equipment)、SS(Subscriber Station)、MSS(Mobile Subscriber Station)、移動端末(Mobile Terminal)、発展した移動端末(Advanced Mobile Station、AMS)、又は端末(Terminal)などの用語に言い換えてもよい。
【0036】
また、送信端は、データサービス又は音声サービスを提供する固定及び/又は移動ノードを意味し、受信端は、データサービス又は音声サービスを受信する固定及び/又は移動ノードを意味する。このため、上りリンクでは移動局を送信端とし、基地局を受信端とすることができる。同様に、下りリンクでは移動局を受信端とし、基地局を送信端とすることができる。
【0037】
また、デバイスが‘セル’と通信を行うという記載は、デバイスが該当のセルの基地局と信号を送受信することを意味することができる。すなわち、デバイスが信号を送受信する実質的な対象は特定の基地局であるが、記載の便宜上、特定の基地局によって形成されるセルと信号を送信/受信すると記載してもよい。同様に、‘マクロセル’及び/又は‘スモールセル’という記載は、それぞれ、特定のカバレッジ(coverage)を意味してもよく、‘マクロセルをサポートするマクロ基地局’及び/又は‘スモールセルをサポートするスモールセル基地局’を意味してもよい。
【0038】
本発明の実施例は、無線接続システムであるIEEE 802.xxシステム、3GPPシステム、3GPP LTEシステム、及び3GPP2システムのうち少なくとも一つに開示された標準文書によって裏付けることができる。すなわち、本発明の実施例において説明していない自明な段階又は部分は、上記の文書を参照して説明することができる。
【0039】
また、本文書で開示している全ての用語は、上記の標準文書によって説明することができる。特に、本発明の実施例は、IEEE 802.16システムの標準文書であるP802.16e−2004、P802.16e−2005、P802.16.1、P802.16p及びP802.16.1b標準文書のうち一つ以上によって裏付けることができる。
【0040】
以下、本発明に係る好適な実施の形態を添付の図面を参照して詳しく説明する。添付の図面と共に以下に開示される詳細な説明は、本発明の例示的な実施の形態を説明するためのものであり、本発明が実施され得る唯一の実施の形態を示すためのものではない。
【0041】
また、本発明の実施例で使われる特定の用語は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、このような特定の用語の使用は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で他の形態に変更されてもよい。
【0042】
1. マッシブMIMOシステム
異種セルラーネットワーク(Heterogeneous cellular network:HetNet)は、1つのマクロセル及び複数のスモールセルで定義される。マクロセル基地局は、スモールセルでカバーできない範囲に位置している端末をサポートする役割を担う。このため、マクロセル基地局は同時に多数の端末にサービスを提供可能でなければならない。
【0043】
理論的に、端末が単一ストリームを受信する条件下で、基地局は自身のアンテナの数だけの端末にサービスを提供することができる。これによって、マクロセル基地局は、多数のアンテナ(M個)を有するマッシブMIMO基地局であることを仮定する。このとき、1つの基地局がK個の端末を同時にサポートする場合、基地局からみた受信アンテナの数はK個となり、基地局と端末間のチャネルは、M×K行列で表現することができる。
【0044】
一方、基地局が端末にサービスを提供するために選択するプリコーディング方法の代表として、MRT(Maximum Ratio Transmission)方式とZF(Zero Forcing)方式を挙げることができる。MRT方式の場合、複雑度は低いが、端末に干渉を誘発するので、受信端では性能が減少する。一方、ZF方式は、端末に干渉を与えないが、アンテナの数が多くなる場合には複雑度が急増する。アンテナの数が無限大に増加する場合、MRT方式の短所である干渉誘発が消え、ZF方式と同じ性能を示し得るという点が証明されたが、有限のアンテナ数では、MRT方式よりもZF方式が常に良い性能を有する。したがって、マッシブMIMO環境で既存のZF方式と類似の性能を有しながらも、一層小さい複雑度で動作する新しい送信機プリコーディング方式が必要である。
【0045】
次に、以下では、上述した問題点と関連して、従来のMIMO送信機の動作アルゴリズムを説明する。図6は、本発明と関連して、複数のREが形成するREグループを示す図である。図7は、本発明と関連して、従来のMIMO送信機の動作手順を示す図である。
【0046】
図6は、図5のRBの一部分であり、複数のREで構成されるREグループを示している。図6で、縦軸/横軸はそれぞれ周波数軸/時間軸を意味する。REグループ内のREのチャネルは互いに相関関係を有することができる。各REの陰影が濃いほど、中心REとの相関関係が大きく、逆に、低いほど相関関係が小さい。
【0047】
図7に示すように、従来のMIMO送信機の場合、このようなRE間の相関関係を考慮せず、図7のように各REごとにプリコーダを計算して生成した(710)。すなわち、RB内でl番目のREのMIMOチャネルをHと定義するとき、各REの送信データSは、次の数式1のようにプリコーディング過程を経て送信される。
【0048】
【数2】
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
MIMO送信機の場合、最大送信アンテナ数だけのストリーム(N=N)を複数の端末に送信することができる。したがって、システムのスループットは基地局アンテナの数に線形的に比例して増加するが、上記複雑度はストリームの数の3乗(O(N))に比例して急増する。このため、送信ストリームの数が多い場合、上述したプリコーディング方式では複雑度問題が発生する。
【0052】
以下ではREグループ内でRE間の相関関係を用いて、既存アルゴリズムと同じ性能を提供しながらも、一層小さい複雑度で動作するMIMO送信機の動作アルゴリズムを提案する。
【0053】
2. 提案するMIMO送信機の動作アルゴリズム
以下では、図8を参照して、性能を維持しながらも少ない複雑度で動作するMIMO送信機の動作アルゴリズムを提案する。図8は、本発明の一実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。図8では、REグループの中から基準REを選択し、基準REのチャネルに基づいて決定された送信フィルタ(すなわち、プリコーディング行列又はプリコーダ)をREグループ内に共有する実施例を説明する。
【0054】
提案する送信機動作アルゴリズムは、大きく、ステージ1(880)、ステージ2(890)の2段階で構成される。ステージ1(880)では、共用プリコーダを用いて1次信号を生成する過程が行われ、ステージ2(890)では、1次信号に対する補償過程を経て最終送信信号が生成される。以下、各ステージ別に具体的に説明する。
【0055】
まず、図8で、Pは、基準REのMIMOチャネルに基づいて生成されたプリコーダを表し(810)、REグループ内のl番目のREがPを共用プリコーダとして用いて(820)生成した信号
【数5】
を1次信号と定義する(830)。一方、「基準RE」は、REグループ内で任意の基準によって選択するREであり、REグループ内の順序や位置にかかわらずに決定することができる。基準REは、REグループ内で他のREとの相関関係が最も大きいREとすることができる。
【0056】
一方、このような1次信号は、補償過程を経て(842,844)2次信号tになり(850)、2次信号はRE自身のチャネルに関連した関数f(t,H)がさらに適用されて(862,864,866)、実際伝送信号である3次信号に変換される(870)。すなわち、図8で、ステージ1(880)は、REグループ内のREが共用プリコーダを活用する段階を意味し、ステージ2(890)は、各REが自身の固有チャネルに関する情報を活用する段階を意味する。
【0057】
一方、図8で、Nはグループ内に属したREの個数を意味し、プリコーダは、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Square Error)、又は規則化されたZFプリコーダを意味したり、又は各プリコーダを構成する特定ターム(term)を表す。
【0058】
各段階を具体的に説明する。規則化されたZF方式を取り上げると、REグループ内の基準REのプリコーダは、数式3によって定義される。
【0059】
【数6】
【0060】
【数7】
【0061】
共用プリコーダPが決定されると、REグループ内で基準RE以外のREは、Pを用いてそれぞれ1次信号を生成する。次いで、基準REの1次信号は、自身の固有チャネル情報を用いて生成された信号であるので、補償過程は不要である。すなわち、基準REの1次信号を直ちに2次信号として用いることができる。一方、基準RE以外のREの1次信号は、自身のチャネル情報ではなく共用プリコーダを用いて生成される。したがって、2次信号は、このような誤差に対する補償過程を経て生成される。
【0062】
次に、ステージ2における補償過程を説明する。REに対する補償過程を2番目のREを取り上げて説明すると、2番目のRE自身のチャネルH2と共用プリコーダに基づく1次信号
【数8】
から、2番目のREの2次信号を、次の数式4のように表現することができる。
【0063】
【数9】
【0064】
上記の数式4による補償過程は、CG(Conjugate Gradient)アルゴリズム、ニュートン法(Newton method)アルゴリズム、最急降下法(steepest descent method)アルゴリズムなどの様々な数値解析アルゴリズムによって行うことができる。次の数式5は、CGアルゴリズムを用いた補償過程の実施例を説明する。
【0065】
【数10】
【0066】
【数11】
【0067】
一方、補償過程における反復回数を制限して、2次信号を生成するためにかかる最大時間を制限してもよい。すなわち、提案するMIMO送信機アルゴリズムが特定のREの2次信号を生成するためにかかる時間が非常に大きいと、全体処理時間に影響を与えることになる。したがって、2次生成信号を生成するためにかかる時間を特定範囲内に制限する必要がある。例えば、補償過程の反復回数を制限すると、提案された方式が2次信号を生成するためにかかる最大時間を制限することができる。しかし、制限された反復回数内で補正が十分になされない場合、補償された2次信号tと自身のチャネル情報を用いて直接生成された信号Pとの誤差が大きくなり、性能が劣化しうる。
【0068】
【数12】
【0069】
以上では1次信号に補償過程を適用して2次信号を生成する実施例を説明したが、これとは違い、RE間の相関関係によって補償過程を省略してもよい。すなわち、基準REに隣接するREに対して、共用プリコーダによって1次信号が検出されると、REのチャネル相関関係が所定閾値以上である場合には補償過程を省略し、1次信号を2次信号として決定することができる。
【0070】
【数13】
【0071】
図9は、本発明の他の実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。図9では、REグループ内の全チャネルを用いて共用プリコーダを決定する実施例を説明する。
【0072】
図9で、REグループ内の全REのチャネル情報に基づいて新しいチャネル行列を定義し、次の数式6のように表現される。
【0073】
【数14】
【0074】
数式6で、NはREグループ内のRE個数を表す。wは、各チャネル行列に対する重み値であり、w=1の場合、Hは、全チャネル行列の平均と定義される。上記チャネル行列に基づいて全グループ内に共有される共用プリコーダは、数式7のように定義される。
【0075】
【数15】
【0076】
【数16】
【0077】
すなわち、図9の実施例では、全REのチャネルに基づいて共用プリコーダPAが計算され(910)、共用プリコーダを用いて全REに対する1次信号が生成される(920,930)。図9では、1番目のRE(すなわち、基準RE)に対しても共用プリコーダを経て1次信号が生成されるという点が、図8と異なり、このため、1番目のREに対しても1次信号に対する補償過程を経て2次信号が生成される(940)。それ以外には、図8で説明した過程を図9にも類似に適用することができる。
【0078】
以上の図8及び図9では、MIMO送信機が共用プリコーダを用いてREグループに対する伝送信号を生成する方法を説明した。以下の図10乃至図13では、MIMO送信機が共用プリコーダに対して前処理フィルタを生成し、それを活用して伝送信号を生成する実施例を説明する。
【0079】
図10は、本発明の一実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。
【0080】
本発明の一実施例に係るMIMO送信機は、図6で説明したように、チャネル間の相関関係が相対的に大きい複数のREを一つのREグループ(Nのサイズを有する)に設定する。MIMO送信機はREグループの中から基準REを選択し、基準REのチャネルに基づいて共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成する。共用プリコーダはREグループ内の全REに共有されて各REの1次信号を生成するために用いられ、前処理フィルタは各REの固有チャネルと共に1次信号を補償して2次信号を生成する過程で用いられる。続いて、2次信号は、各RE自身のチャネル情報に基づく関数が適用され、最終伝送信号である3次信号に変換される。
【0081】
図7で説明したMIMO送信機の場合、伝送信号を生成する過程でレイヤ数が大きいと図1のような複雑度の問題が発生する。このような複雑度を減らすために、提案するMIMO送信機は、伝送プリコーダを直接計算してREグループ内のREの伝送信号を生成するに代え、数値解析アルゴリズム(例えば、CG(Conjugate Gradient)アルゴリズム)を用いる。
【0082】
以下、Vは、REグループ内の1番目のREのMIMOチャネルに基づいて生成された「前処理フィルタ(又は、加速フィルタ)」を意味する。上述した数値解析アルゴリズムは反復計算過程を通じて解を探し、各反復の都度に計算される解が正確な解答に近づく。このような反復計算過程で前処理フィルタVを活用する場合、MIMO送信機は少ない反復数(すなわち、速い速度で)だけでも所望の伝送信号を生成することができる。
【0083】
しかしながら、上述したように、所望の解を探すための速度を十分に速くするための前処理フィルタを生成することも、高い複雑度を要求する。したがって、REグループ内で全REに対してそれぞれ前処理フィルタを求める計算複雑度を下げるために、特定のRE(例えば、上述した1番目のRE)で前処理フィルタを生成し、これをREグループ内の他のREが共有して使用することができる。すなわち、REグループ内のREの伝送信号を生成する過程において数値解析アルゴリズムは、REグループの全体に対して同一の前処理フィルタを活用する。上述した特定のRE(又は、1番目のRE)を、上述したように、「基準RE」と定義することができ、これは単に前処理フィルタを計算する基準となるREを意味し、REグループ内でREの順序やインデックスとは関係がない。
【0084】
したがって、グループ内のRE間のチャネル相関関係が大きい場合、提案するMIMO送信機は、一つの基準REから前処理フィルタV及び共用プリコーダPを生成し(1010)、共用プリコーダPをREグループ内で共有して1次信号を生成する(1020,1030)。共用プリコーダPを用いてl番目のREでプリコーディングされた信号
【数17】
が1次信号となる。
【0085】
続いて、MIMO送信機は、基準RE以外のREに対して前処理フィルタVを用いた数値解析アルゴリズムを適用して2次信号tを生成する(1040,1050,1060)。基準REに対しては自身のチャネル情報を用いたプリコーダから1次信号が生成されたため、基準REの1次信号は即ち2次信号となる。最後に、MIMO送信機はREグループ内におけるREの2次信号のそれぞれに各自のチャネル情報を反映する関数f(t,H)を適用する過程を経て(1070,1080,1090)、最終伝送信号である3次信号を生成する(1100)。
【0086】
図10で、ステージ1は、共用プリコーダPを用いて1次信号を生成する過程を意味し、ステージ2は、1次信号を自身のチャネル情報を用いて処理することによって伝送信号を生成する過程を意味する。
【0087】
次の数式8は、1次信号を補償する過程で行われる数値解析アルゴリズムの例示を説明する。数値解析アルゴリズムの例示としてCGアルゴリズム、ニュートン法(Newton method)アルゴリズム、最急降下法(steepest descent method)アルゴリズムなどを活用できることは前述しており、数式8ではCGアルゴリズムの例を説明する。
【0088】
【数18】
【0089】
数式5と比較して、数式8では前処理フィルタVがCGアルゴリズムに追加されていることが分かる。数式8で、V以外の他の過程には、数式5で説明した内容を同一又は類似に適用することができる。
【0090】
一方、以下ではMIMO送信機が前処理フィルタVを生成する具体的な実施例について説明する。
【0091】
第一の実施例によれば、前処理フィルタを、ヤコビ(Jacobi)方式、ガウス−ザイデル(Gauss−Siedel)方式、SQRプリコンディショニング(SQR preconditioning)方式、不完全コレスキー因数分解(incomplete Cholesky factorization)方式などの様々なアルゴリズムによって生成することができる。
【0092】
まず、基準RE(1番目のRE)のMIMOチャネルに基づいて任意の行列Aを次の数式9のように定義することができる。
【0093】
【数19】
【0094】
数式9で、行列Aは、正定値行列(positive definite matrix)であり、対称性を有するので、次の数式10のように分解することができる。
【0095】
【数20】
【0096】
数式10で、Lは下三角行列(lower triangular matrix)であり、Dは対角行列(diagonal matrix)である。数式10で、上述した様々な方式のうち、3つの方式による前処理フィルタVを定義することができる。
【0097】
【数21】
【0098】
上述した方式のうち、ガウス−ザイデル方式及びSQRプリコンディショニング方式は、実際の逆行列を計算して前処理フィルタVを明確に表現することができる。しかし、逆行列を求める計算複雑度を減らすためには、Vを正確に計算することに代え、次の数式11による後退代入(back substitution)過程を通じてVを計算してもよい。
【0099】
【数22】
【0100】
数式11で、Vが下三角行列であれば、数式6の解であるXを数式11の右側の式から順次に計算することができる。
【0101】
【数23】
【0102】
【数24】
【0103】
不完全コレスキー因数分解方式は、完全コレスキー因数分解(complete Cholesky factorization)方式に比べて少ない複雑度でAを分解することができるが、近似された下三角行列が定義される。不完全コレスキー因数分解方式の場合、前処理フィルタVは次の数式13のように定義される。
【0104】
【数25】
【0105】
数式13による前処理フィルタVも、逆行列を直接計算して正確に表現してもよく、後退代入過程によって計算及び表現してもよい。
【0106】
本発明の実施例に係る前処理フィルタVは、上述した4つの方式の他にも様々な方式によって計算して定義することができる。例えば、「Iterative Methods for Sparse Linear Systems」のような文献に紹介された様々な方式及びアルゴリズムを、前処理フィルタVを計算する過程に活用することができる。
【0107】
一方、数式9におけるAは共用プリコーダPと逆行列関係にある(P=A−1)。前処理フィルタVを生成する第二の実施例では、このようなPとの関係を用いて前処理フィルタVを生成する実施例を説明する。第二の実施例で、MIMO送信機はA行列に基づいて下記の3つの方法によって前処理フィルタVを定義することができる。
【0108】
第一に、前処理フィルタVとしては共用プリコーダPの逆行列をそのまま用いることができる。すなわち、共用プリコーダPが前処理フィルタVになってもよい。本実施例は数式14のように表現され、MIMO送信機は、共用プリコーダPが計算されるとそれをそのまま前処理フィルタとして用いる。共用プリコーダと前処理フィルタとが同一であることから、MIMO送信機はVをさらに計算する必要がなく、Vを計算して保存するために要求されるメモリも不要になる。
【0109】
【数26】
【0110】
第二に、MIMO送信機は、完全コレスキー因数分解(complete Cholesky factorization)方式によってAを分解して前処理フィルタVを計算することができる。このような過程は下記の順序に従って3段階を経て行われる。
【0111】
【数27】
【0112】
後退代入演算過程が用いられると、ii)過程で下三角行列Lの逆行列を求める過程は省略されてもよい。すなわち、第二の方式ではP、Vを適用する際に後退代入演算過程を用いて複雑度を軽減させることができ、この場合、前処理フィルタV及び共用プリコーダPを生成する全過程において主要複雑度はi)過程で発生する。
【0113】
一方、iii )過程は、
【数28】
過程の近似を通じてスパース(sparse)前処理フィルタ(行列の大部分の要素が0である行列)を生成する過程である。このような過程は、前処理フィルタがスパースフィルタである場合、数値解析アルゴリズムの反復ごとに発生する計算複雑度が大幅に減るためである。
【0114】
最後に、第三の方法として、不完全コレスキー因数分解方式によって前処理フィルタVを計算することができる。このような過程は、下記の順序に従って3段階を経て行われる。
【0115】
【数29】
【0116】
第二の方法で、前処理フィルタV及び共用プリコーダPを生成する過程の主要複雑度は、i)過程で発生する。したがって、第三の方法ではi)過程で完全コレスキー因数分解を用いる代わりに不完全コレスキー因数分解を用いて
【数30】
を計算する。
【0117】
【数31】
に基づいて前処理フィルタV及び共用プリコーダPを計算する場合、第二の実施例とは違い、基準REに対しても補償過程を経て2次信号を計算しなければならない。これは、P自体が近似された逆行列であって、基準REに対しても誤差が発生しうるためである。結果的に、上述した3つの方法のうち第三の方法は、共用プリコーダ及び前処理フィルタの生成に最も少ない複雑度が要求されるが、補償過程において各反復回数は最も多く要求されうる。
【0118】
上述した実施例は単なる例示に過ぎず、これらの方法の他にも、様々な方法によって前処理フィルタ及び共用プリコーダを定義することができる。
【0119】
前処理フィルタを生成する第三の実施例として、前処理フィルタVをREのMIMOチャネルの特性を用いて生成することができる。上述した第一の実施例によってAを計算するためには、行列X行列の演算
【数32】
過程が要求される。このような演算過程の計算複雑度を改善するために、第三の実施例ではREのMIMOチャネルを活用して少ない複雑度でAを計算する。
【0120】
具体的に説明すると、基準REにおいて
【数33】
を次の数式15の対角行列Zに近似することができる。
【0121】
【数34】
【0122】
数式15の近似過程は、送信アンテナの数(N)が多くなり、チャネル要素間の相関関係が小さいほど正確になる。このような近似過程は、マッシブMIMO環境におけるチャネル特徴によって非対角行列成分(off−diagonal term)を0に近似できるという点に基づく。上述した近似過程によって、行列Aを数式16の対角行列と定義することができる。
【0123】
【数35】
【0124】
次いで、数式10のAを対角成分だけで表現できるため、数式16のAに対して第一の実施例で説明したヤコビ方式を適用して前処理フィルタVを計算することができる。第三の実施例では、近似過程における誤差が大きい場合、数値解析アルゴリズムの反復回数が減る量は大きくないだろう。すなわち、所望の解答に収束する速度が大幅に増加することはないだろう。
【0125】
上述した第三の実施例では、REのMIMOチャネル特性を用いて前処理フィルタVを生成する実施例を説明した。一方、このようにREのMIMOチャネル特性を活用して前処理フィルタVを生成する更に他の実施例も可能であり、図11を参照して説明する。図11は、本発明と関連して、MIMO送信機が前処理フィルタを生成する一例を示す図である。
【0126】
【数36】
【0127】
図12は、本発明の更に他の実施例に係るMIMO送信機の動作手順を示す図である。以上の図10及び図11では、前処理フィルタVを生成する様々な実施例と、VをREグループ内に共有してMIMO送信機が伝送信号を生成する実施例を説明した。これに対し、図12では、前処理フィルタがREグループ内で共有されず、各RE別に異なった前処理フィルタが生成される実施例を説明する。
【0128】
図12の実施例で、MIMO送信機は基準REのチャネルに基づいて共用プリコーダP及び前処理フィルタVを生成する(1210)。Pは、REグループ内のREに共有されて1次信号を生成するために活用される(1220,1230)。一方、1次信号に対する補償過程に先立ち、MIMO送信機はそれぞれのREの固有チャネルに基づいて前処理フィルタを生成する(1242,1244)。すなわち、2番目のREに対してはH2に基づいてV2を計算し(1242)、N番目のREに対してはHNに基づいてVNを計算する(1244)。
【0129】
それぞれのREに対して固有の前処理フィルタを生成する過程には、前述した図10及び図11における実施例を適用することができる。次に、MIMO送信機はそれぞれのREに対して生成された固有の前処理フィルタを用いて数値解析アルゴリズムに基づく補償過程を行う(1252,1254)。補償過程を経て生成された2次信号(1260)は、自身のチャネル情報を反映する過程を経て(1270,1280,1290)、最終伝送信号である3次信号に変換される(1300)。
【0130】
図12の実施例によれば、各REごとに前処理フィルタが生成されるため、更なる複雑度が要求される。しかし、RE間のチャネル相関関係が低い場合、図10及び図11の方式によって前処理フィルタを共有する実施例は、補償過程の反復回数が増加する。これによって、図12の固有の前処理フィルタを活用する実施例が、全体複雑度及び計算過程にかかる時間を減らす上で一層効果的である。
【0131】
さらに、後退代入演算過程を仮定するヤコビ、ガウス−ザイデル、SQRプリコンディショニング方式によって前処理フィルタを生成する場合、前処理フィルタを計算する過程で発生する複雑度の増加を最小化することができ、MIMO送信機に大きな負担とならない。一方、サイズNの下三角逆行列を後退代入過程で処理する場合、複雑度はNよりも小さい。
【0132】
図13は、従来技術と本発明の実施例間の計算複雑度を比較したグラフである。図13は、図6のREを従来技術による方法と提案した方法によって処理したとき、要求される全計算複雑度を示している。
【0133】
図13で、グラフに円形が表示された曲線は、従来技術によってREグループ内の全REに対するプリコーダを生成する場合の計算複雑度を示す。星形、四角形、三角形が表示された曲線は、16個のREを含むREグループで共用プリコーダ及び前処理フィルタを生成して共有する場合の計算複雑度を示す。
【0134】
これら3つの場合は、1次信号を2次信号で補償する過程の反復回数において差異があり、反復回数が{1,2}である場合は、16個のREの半分のREは1回、残り半分のREは2回の反復が行われることを表す。図示の実施例から、提案されたMIMO送信機の伝送信号生成方法は、送信ストリーム数が多いほどより多くの複雑度利得を有することが分かる。
【0135】
以上で提案した実施例によれば、REグループ内で全てのRE間の相関関係が1である場合、共用プリコーダPだけによっても正確な伝送信号が生成される。したがって、この場合にはPだけを用いても性能低下がないため、計算複雑度は1/N(NはREグループ内のRE個数)と減る。
【0136】
REグループ内のRE間の相関関係が1よりも小さい場合、共用プリコーダPを用いて推定された1次信号の誤差は前処理フィルタVを用いて補償される。RE間の相関関係が大きいほど、前処理フィルタを用いた数値解析アルゴリズムの補償過程は迅速に行われる(すなわち、反復回数が減る)。このとき、前処理フィルタを適用する補償過程は、適用しない場合に比べて計算複雑度は増加しうるが、この増加分よりも大幅に反復回数が減る。結果として、提案されたMIMO送信機は、RE間の相関関係を最大限に用いて性能低下を最小化しながらも複雑度を減少させることができる。
【0137】
計算複雑度をさらに減らそうとする場合、MIMO送信機は前処理フィルタを活用した補償過程で誤差による性能劣化を甘受する代わりに、計算複雑度を減らすことができ、計算複雑度と性能間のトレードオフを提供することができる。
【0138】
また、提案された方式によれば、基準RE以外のREに対しては逆行列を直接計算せず、全ての演算が行列Xベクトル演算によって行われる。逆行列演算は分散処理が容易でないが、行列Xベクトル演算は並列化しやすいため、分散処理方式を容易に適用することができる。これによって、全処理時間を大幅に減らすことができる。
【0139】
3.装置構成
図14は、本発明の一実施例に係る端末及び基地局の構成を示すブロック図である。
【0140】
図14で、端末100及び基地局200はそれぞれ、無線周波(RF)ユニット110,210、プロセッサ120,220、及びメモリ130,230を含むことができる。図14では、端末100と基地局200間の1:1通信環境を示しているが、複数の端末と基地局200間に通信環境が構築されてもよい。また、図14に示す基地局200は、マクロセル基地局にもスモールセル基地局にも適用することができる。
【0141】
各RFユニット110,210はそれぞれ、送信部111,211及び受信部112,212を含むことができる。端末100の送信部111及び受信部112は、基地局200及び他の端末と信号を送信及び受信するように構成し、プロセッサ120は、送信部111及び受信部112と機能的に接続して、送信部111及び受信部112が他の機器と信号を送受信する過程を制御するように構成することができる。また、プロセッサ120は、送信する信号に対する各種処理を行った後に送信部111に送信し、受信部112が受信した信号に対する処理を行う。
【0142】
必要な場合、プロセッサ120は、交換されたメッセージに含まれた情報をメモリ130に格納させることができる。このような構造により、端末100は、以上で説明した本発明の様々な実施の形態の方法を実行することができる。
【0143】
基地局200の送信部211及び受信部212は、他の基地局及び端末と信号を送信及び受信するように構成し、プロセッサ220は、送信部211及び受信部212と機能的に接続して送信部211及び受信部212が他の機器と信号を送受信する過程を制御するように構成することができる。また、プロセッサ220は、送信する信号に対する各種処理を行った後に送信部211に送信し、受信部212が受信した信号に対する処理を行うことができる。必要な場合、プロセッサ220は、交換されたメッセージに含まれた情報をメモリ230に記憶させることができる。このような構造により、基地局200は、前述した様々な実施の形態の方法を実行することができる。
【0144】
端末100及び基地局200のプロセッサ120,220はそれぞれ、端末100及び基地局200における動作を指示(例えば、制御、調整、管理など)する。それぞれのプロセッサ120,220は、プログラムコード及びデータを格納するメモリ130,230と接続してもよい。メモリ130,230は、プロセッサ120,220に接続して、オペレーティングシステム、アプリケーション、及び一般ファイル(general files)を格納する。
【0145】
本発明のプロセッサ120,220は、コントローラ(controller)、マイクロコントローラ(microcontroller)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、マイクロコンピュータ(microcomputer)などと呼ぶこともできる。一方、プロセッサ120,220は、ハードウェア(hardware)又はファームウェア(firmware)、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせによって実装することができる。ハードウェアを用いて本発明の実施例を実装する場合には、本発明を実行するように構成されたASIC(application specific integrated circuit)、DSP(digital signal processor)、DSPD(digital signal processing device)、PLD(programmable logic device)、FPGA(field programmable gate array)などをプロセッサ120,220に具備することができる。
【0146】
一方、上述した方法は、コンピュータで実行可能なプログラムとして作成することができ、コンピュータ読み取り可能媒体を用いて上記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピュータで実装することができる。また、上述した方法で用いられたデータの構造は、コンピュータ読み取り可能媒体に様々な手段によって記録されてもよい。本発明の様々な方法を実行するための実行可能なコンピュータコードを含む格納デバイスを説明するために使用可能なプログラム格納デバイスは、搬送波(carrier waves)又は信号のように一時的な対象を含むものとして理解してはならない。上記コンピュータ読み取り可能媒体は、磁気記憶媒体(例えば、ROM、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光学的読み取り媒体(例えば、CD−ROM、DVDなど)のような記憶媒体を含む。
【0147】
本願発明の実施例に関連した技術の分野における通常の知識を有する者にとって、上述した本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な変形が可能であることは明らかである。したがって、開示された方法は、限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮しなければならない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明ではなく特許請求の範囲によって定められ、特許請求の範囲と同等範囲内における差異点はいずれも本発明の範囲に含まれるものとして解釈しなければならない。
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