(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474909
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】5−アルキルサリチルアルドキシム類の調製方法及びその利用
(51)【国際特許分類】
C07C 249/04 20060101AFI20190218BHJP
C07C 251/48 20060101ALI20190218BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20190218BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20190218BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20190218BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
C07C249/04
C07C251/48
C09D5/00 D
C09D5/08
C09D7/47
C23F11/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-541266(P2017-541266)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公表番号】特表2018-510846(P2018-510846A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】PL2016000021
(87)【国際公開番号】WO2016140587
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】P.411433
(32)【優先日】2015年3月2日
(33)【優先権主張国】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】514287591
【氏名又は名称】ポリテクニカ ワルシャワ
【氏名又は名称原語表記】POLITECHNIKA WARSZAWSKA
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ブイノヴスキ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シノラズキ、ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ウィシアルスキ、ジェルジー
(72)【発明者】
【氏名】クロリコヴスカ、アグニエスカ
(72)【発明者】
【氏名】ボルジロヴスキ、ジャセク
(72)【発明者】
【氏名】コジオロヴスキ、マルシン
(72)【発明者】
【氏名】ツァドロジュニー、ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルザク、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジエニス、クリストフ
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−43492(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104356025(CN,A)
【文献】
特開平7−291885(JP,A)
【文献】
Yingyong Huagong,2009年,Vol.38, No.8,pp.1159-1162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 249/04
C07C 251/48
C09D 5/00
C09D 5/08
C09D 7/47
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式1で表される5−アルキルサリチルアルドキシム類のライマー・チーマン反応を用いた調製方法であって、
【化1】
式1
式中、RはC6−C16アルキル基であり、水−アルコール溶媒系に、p−アルキルフェノール、水酸化ナトリウム、クロロホルム及びヒドロキシルアミンを導入し、さらに使用する前記アルキルフェノールに対して、水酸化ナトリウム及びクロロホルムを化学量論量から100%超過までの量で用い、ヒドロキシルアミンを化学量論量から60%超過までの量で用い、前記反応を60〜75℃の温度で1.5〜4時間、その後20〜30℃の温度で行い、水相のpHが<7.0となるまで反応後混合物を酸性化し、次に、アルコール−水共沸混合物を未反応のクロロホルム混和物と留去し、残渣を中性C5−C10炭化水素溶媒と混合し、層を分離し、前記溶媒を有機相から留去する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ヒドロキシルアミンが、水溶液状で導入される
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシルアミンが、硫酸(IV)または塩酸ヒドロキシルアミンの苛性ソーダ液との反応による反応系で生じる
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応が、質量比が2:1〜3:1の水−アルコール溶媒混合物で行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒混合物において、C2−C4アルコールが用いられる
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中性炭化水素溶媒として、ヘキサン、C5−C10液体脂肪族炭化水素類の混合物、またはトルエンが用いられる
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの方法により調製され、5−アルキルサリチルアルドキシム類を主成分として含有する生成物の腐食防止剤としての利用。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかの方法により調製され、5−アルキルサリチルアルドキシム類を主成分として含有する生成物のペイント塗装の可塑性及び付着性を高める利用。
【請求項9】
濃度5〜30%の前記生成物の溶液が、C2−C4アルコール類、エーテル類、ケトン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類から選択された溶媒、または上記選択された溶媒の混合物において用いられる
請求項7または8に記載の利用。
【請求項10】
塗装系の塗布前にプライマ塗膜として用いられる前記生成物を、遊離した鉱物不純物を清掃した後の金属表面に直接塗布する
請求項8または9に記載の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アルキルサリチルアルドキシム類(5−アルキル−2−ヒドロキシ−ベンズアルドキシム類)の調製方法、及び反応生成物の防食剤としての応用に関する。
【背景技術】
【0002】
5−アルキルサリチルアルドキシム類は、水に不溶性の安定な鉄錯体を形成するため、効果的に金属腐食工程を阻害し、表面を疎水性にする。例えば、欧州特許第0178850号明細書(特許文献1)は、防食製剤を開示しており、ヒドロキシル基のオルト位にオキシム基を2つ有するアルドキシムを活性物質として含有する。オキシム類を金属表面に直接塗布して使用することができ、適当な有機溶媒の溶液状、または水性乳濁液状でも用いることができる。製剤中の溶媒としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族及び脂肪族炭化水素類、例えば、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、クロロホルムまたは1,1,1−トリクロロエタンを用いることができる。腐食の一般性を考慮して、この現象を防止するために用いられる製剤は、簡単に得られ、安価であることが重要である。
【0003】
アルドキシム類の公知の調製方法は、適当なアルデヒドのヒドロキシルアミンとの反応にある。公知の最も古い方法は、塩酸ヒドロキシルアミン[2][D.Stepniak−Biniakiewicz、A.Lukowski、Przem.Chem.、61、446−448、1982](非特許文献1)、[3][G.V.Jeffrey、Soc.Chem.Ind.London、3、2837−71、1974](非特許文献2)、[4][ポーランド特許第117888号](特許文献2)、[5][A.I.Vogel、Textbook of Practcal Oranic Chemistry/Preparatyka Organiczna、pp.692−693、Warszawa、Wydawnictwo Naukowo−Techniczne、1984](非特許文献3)または硫酸ヒドロキシルアミン[6][Toagosei Chemical Industry CO.LTD,英国特許第1310808号、1973](特許文献3)の水溶液、またはメタノール[1][D.Stepniak−Biniakiewicz、Pol.J.Chem.、54、1567−1571、1980](非特許文献4)溶液を、アルデヒドのメタノール[2](非特許文献1)またはエタノールなどアルコールの濃縮溶液に、主に反応混合物[5](非特許文献3)の沸点で、pHを5〜8の範囲に調整しながら、添加することにある。あるいは、有機溶媒を添加せず、調製したヒドロキシルアミン溶液に直接アルデヒドを導入して、30〜50℃の温度で、ヒドロキシルアミン安定剤、例えばSn(OH)
2[6](特許文献3)を添加し、合成を行っていた。合成を完了し、任意でアルコールを反応後混合物から留去すると、生成物はジエチルエーテル[1](非特許文献4)、[5](非特許文献3)またはベンゼンもしくはその誘導体[6](特許文献3)など、水と混和しない中性有機溶媒で抽出される。抽出物を塩酸または硫酸(VI)で洗浄した後、中性反応が得られるまで水で洗浄する。次に、溶媒を留去し、生成物を可能であれば、ヘキサン、ヘキサン−ベンゼン混合物[1](非特許文献4)またはクロロホルム−軽質ガソリン混合物[5](非特許文献3)から結晶化する。
【0004】
該当する5−アルキルサリチルアルドキシム類を製造するため、一般的にその手順は、その処理における最初のアルデヒド類を調製するための技術が必要である。多くの場合、純粋な5−アルキルサリチルアルデヒド類は高価であるか、または容易に購入できず、通常市販品ではない(研究試薬を除く)。
【0005】
5−アルキルサリチルアルデヒド類の主な合成方法の1つは、ライマー・チーマン反応であり、ほとんどの場合、試薬として水酸化ナトリウム、アルキルフェノール及びクロロホルム、溶媒として水−メタノール混合物が用いられる。標準的な手順によれば、該当するフェノールのメタノール溶液を水性NaOH溶液または懸濁液に導入した後、クロロホルムをメタノールの沸点[1](非特許文献4)で還流しながらゆっくり添加する。あるいは、該当するフェノール及びクロロホルムの全バッチを水性NaOH溶液または懸濁液に導入し、反応を加圧下、80〜88℃の温度[7][W.E.Smith、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー、米国特許第4324922号、1982](特許文献4)で行う。いずれの異なる方法においても、反応を終了すると、系全体を室温まで冷却し、未反応のNaOH及び反応で形成したNaClを水に溶解した後、反応後混合物を硫酸(VI)または塩酸で酸性化し、水相及び有機相の2層が得られる。分離した有機相を水で洗浄し、用いたフェノールに応じて形成されたアルデヒドを真空分留、または例えばヘキサンからの結晶化[1](非特許文献4)により精製する。第2段階では、このように得られたアルデヒドを上述の方法を用いてヒドロキシアミンとの縮合反応に付し、5−アルキルサリチルアルドキシムが得られる。
【0006】
上述の2段階合成には、第1段階、または5−アルキルサリチルアルデヒドの調製における収率が比較的低いという不都合があり、通常アルキルフェノールに対して35%を超えない。低収率及びアルキルフェノール類の低変換度は、反応系により基質と生成物が平衡に達した後、合成過程の阻害により引き起こされることは明らかである。このように作製されたアルデヒドのヒドロキシルアミンとの縮合収率が100%に近かったとしても、2段階工程:アルキルフェノール→アルデヒド→オキシムにおけるオキシム合成の最終収率(各段階の収率の積)が35%を超えないことを容易に計算でき、実際にはさらに低い場合がある。さらに、この方法を用いたアルデヒド類の合成は、重縮合生成物[4](特許文献2)を含む、多くの副生成物を形成する。また、出発アルデヒドを単離及び精製する必要性は、著しく不便である。
【0007】
1994年、アルデヒドの困難な単離及び精製を除いた、適当な5−アルキルサリチルアルデヒド類のマグネシウム塩とヒドロキシルアミンとの反応により、これらの塩合成後の混合物において直接オキシムを調製する方法が開示された[8][D.Levin、Zeneca Limited、欧州特許出願公開第0584988号明細書、1994](特許文献5)。まず、適当なp−アルキルフェノールのマグネシウムとの塩を調製する。トルエン中のその混合物に、パラホルム(アルデヒド)を少しずつ添加し、同時に、これらの基質の反応において副生成物として形成するメタノールをトルエンとの共沸混合物の形で留去し、最初のp−アルキルフェノール塩のオルト位のホルミル化、及びトルエンに懸濁または溶解した該当する5−アルキルサリチルアルデヒドのマグネシウム塩の形成をもたらす。温度40〜45℃でのホルミル化直後、水性ヒドロキシルアミン(または、硫酸(VI)ヒドロキシルアミン)溶液を反応後混合物に導入して、オキシムマグネシウム塩が得られる。最後に、混合物を希硫酸(VI)で酸性化し、単離後水で洗浄した有機相からトルエンを留去して、粗生成物である該当する5−アルキルサリチルアルドキシムが得られ、任意で真空分留または結晶化により精製する。この方法により、「ワンポット」系において、出発アルキルフェノール類から高収率で所望の5−アルキルサリチルアルドキシム類を得ることができるが、全工程に時間、費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0178850号
【特許文献2】ポーランド特許第117888号
【特許文献3】英国特許第1310808号
【特許文献4】米国特許第4324922号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0584988号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.Stepniak−Biniakiewicz、A.Lukowski、Przem.Chem.、61、446−448、1982
【非特許文献2】G.V.Jeffrey、Soc、Chem.Ind.London、3、2837−71、1974
【非特許文献3】A.I.Vogel、Textbook of Practcal Oranic Chemistry/Preparatyka Organiczna、pp.692−693、Warszawa、Wydawnictwo Naukowa−Techniczne、1984
【非特許文献4】D.Stepniak−Biniakiewicz、Pol.J.Chem.、54、1567−1571、1980
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上記問題を解決することができる方法を提供することである。
【0011】
下式1で表される5−アルキルサリチルアルドキシム類の調製方法であって、
【0013】
式中、RはC6−C16アルキル基であり、水−アルコール溶媒系に、p−アルキルフェノール、水酸化ナトリウム、クロロホルム及びヒドロキシルアミンを導入し、さらに使用するアルキルフェノールに対して、水酸化ナトリウム及びクロロホルムを化学量論量(すなわち、水酸化ナトリウム4モル/アルキルフェノール1モル、クロロホルム1モル/アルキルフェノール1モル)から100%超過までの量、好ましくは50〜100%の超過で用い、ヒドロキシルアミンを化学量論量(すなわち、ヒドロキシルアミン1モル/アルキルフェノール1モル)から60%超過までの量で用い、反応を60〜75℃、好ましくは63〜71℃の温度で1.5〜4時間、その後20〜30℃の温度で行い、水相のpHが<7.0となるまで反応後混合物を酸性化し、次に、アルコール−水共沸混合物を未反応のクロロホルム混和物と留去し、残渣を中性C5−C10炭化水素溶媒と混合し、層を分離し、溶媒を有機相から留去する、ことにある調製方法。
【0014】
ヒドロキシルアミンを水溶液状、好ましくは約50%で導入する。これは、任意で硫酸(VI)または塩酸ヒドロキシルアミンと水酸化ナトリウムの濃縮)溶液との反応による反応系で生じ得る(NaOH2モル/硫酸(VI)ヒドロキシルアミン1モルまたは苛性アルカリ液1モル/塩酸ヒドロキシルアミン1モルの量で反応系に導入される)。
【0015】
反応は、質量比が2:1〜3:1の水−アルコール溶媒混合物において行うことが好ましい。アルコールとしては、好ましくはC2−C4アルコールが用いられ、好ましくはイソプロパノールである。飽和炭化水素としては、好ましくはヘキサン、C5−C10液体脂肪族炭化水素類の混合物、またはトルエンが用いられる。
【0016】
本発明はまた、本発明に記載の方法により得られる生成物の腐食防止剤としての応用、また、ペイント塗装の可塑性及び付着性を高めることを含む。濃度30%までの溶媒における粗オキシムは、鉱物不純物の除去後、金属表面の塗装のため、さらに精製することなく用いることができる。溶媒としては、被覆防食系の塗布前に鋼表面の浸透のため、低級C2−C4アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族及び脂肪族炭化水素類が用いられ、例えばエタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、クロロホルム、ヘキサンまたは1,1,1−トリクロロエタン、任意でこれらの溶媒の混合物が用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による5−アルキルサリチルアルドキシム類の調製方法は、1段階工程である。適当な5−アルキルサリチルアルデヒドのナトリウム塩は、ライマー・チーマン型の反応において形成し、発生した状態で、水−アルコール培地においてヒドロキシルアミンと縮合して、フェノール塩特性を有するオキシムナトリウム塩が得られる。後者は反応後混合物の酸性化後、それ自体を該当するオキシムに変形させる(スキーム1)。ヒドロキシルアミンは、水溶液状で導入され、任意に硫酸(VI)/塩酸ヒドロキシルアミンの苛性ソーダ液との反応による反応系で生じる。生成物中のオキシム類含有量は、通常60〜75%であり、純粋な生成物当たりで計算した形成収率は50〜85%である。
【0019】
形成するアルデヒド塩からオキシム塩への直接的な変形は、適用した手順を用いて可能であることがわかっており、同時に、予想外にも多くの好ましい効果をもたらす。つまり、アルデヒド縮合または重合の特性を有する副反応を制限し、アルデヒド合成を促進し、出発アルキルフェノールの変換度を増すことである。結果として、オキシム合成の全工程が、十分な選択性及び収率で速やかに起こる。反応生成物は、完成した腐食防止剤であり、反応混合物から分離する必要がない。
【0020】
本発明により得られた生成物溶液を金属表面に塗布した後に形成する層は、腐食した鋼基板に遊離した錆を除去した後、並びに鋼ブラシで拭いた後のチョーク塗装に対して、典型的なラッカー塗装の優れた付着性を与える。本生成物の応用により、例えば大抵の塗料を用いる場合に必要であるサンドブラスト、研削、化学エッチングなど、鋼表面の完全清掃のための高価で、一般的に技術的に難しく、環境に有害な手順を排除することができる。
【実施例】
【0021】
本発明によるオキシム類の調製及び応用方法を、以下の実施例により説明する。
【0022】
実施例1、2−ヒドロキシ−5−ノニル−ベンズアルドキシムの調製
容量0.25lの反応フラスコで、混合、冷却しながら、水酸化ナトリウム0.85モル(34.0g)を水54.0gに溶解した。その後、約40℃の温度で、イソプロパノール23.0g中のp−ノニルフェノール(C
15H
24O)0.1モル(22.0g)をフラスコに導入した。同時に、60℃の水12.5g中の硫酸(VI)ヒドロキシルアミン(SHA)0.075モル(12.5g)の溶液を調製した。65℃に加熱した反応フラスコの中身に、激しく撹拌しながら、クロロホルム0.175モル(20.8g)を0.5時間かけて滴加し、同時に、65〜68℃の範囲内に温度を維持しながら(反応は発熱を伴う)、調製したSHA溶液を添加した。これらの試薬を滴加後、反応の撹拌を上記温度で約1.5時間継続した。反応の進行をTLC(クロロホルム/ヘキサン4:1)により、クロマトグラフ的に制御して、開始アルキルフェノールのスポットの減少を観察した(総反応時間:約2時間)。その後、反応後混合物を室温まで冷却し、次に、混合、冷却しながら、水相のpHが<7.0になるまで35%硫酸(VI)を少しずつ添加した。80〜95℃で、イソプロパノールの水との共沸混合物を、未反応クロロホルムの混和物とフラスコから留去した。
【0023】
蒸留後残渣を約35℃の温度まで冷却した後、ヘキサン30g(約44.0ml)と共に0.25時間混合した。相分離後、上(有機)相を水で洗浄した。ヘキサンを有機溶液から留去した。蒸留後の残渣は粗生成物である油性黄茶色粘性液体状の2−ヒドロキシ−5−ノニル−ベンズアルドキシム(m=26.5g)により構成される。
【0024】
元素分析で測定した窒素含有量に基づき、主成分であるオキシムのおおよその量を計算し、64.2%に等しかった。出発p−ノニルフェノールに対する収率:64.8%。
【0025】
実施例2、2−ヒドロキシ−5−ノニル−ベンズアルドキシムの調製
手順は実施例1の通りであり、さらに以下の試薬、水45.0g中の水酸化ナトリウム0.7モル(28.0g)、イソプロパノール23.0g中のp−ノニルフェノール(C
15H
24O)0.1モル(22.0g)、及び室温で50%水溶液状のヒドロキシルアミン0.15モル(4.95g)、並びにクロロホルム0.175モル(20.8g)を用いた。硫酸(VI)及びヘキサンの消費量は、実施例1と同様である。
【0026】
粗生成物である2−ヒドロキシ−5−ノニル−ベンズアルドキシム31.7gが得られ、主成分であるオキシムのおおよその量は68.9%に等しかった。出発p−ノニルフェノールに対する収率:82.9%。
【0027】
実施例3、2−ヒドロキシ−5−ドデシル−ベンズアルドキシムの調製
手順は実施例2の通りであり、さらに以下の試薬、脱塩水45.0g中の水酸化ナトリウム0.7モル(28.0g)、p−ドデシルフェノール(C
18H
30O)0.1モル(26.3g)、及び室温で50%水溶液状のヒドロキシルアミン0.15モル(4.95g)、並びにクロロホルム0.175モル(20.8g)を用いた。総反応時間:2.5時間。硫酸(VI)及びヘキサンの消費量は、実施例1と同様である。
【0028】
粗生成物である油性黄茶色粘性液体状の2−ヒドロキシ−5−ドデシル−ベンズアルドキシム31.1gが得られ、主成分であるオキシムのおおよその含有量は62.5%に等しかった。出発p−ドデシルフェノールに対する収率:63.6%。
【0029】
実施例4
PN−EN ISO8501規格に従って、St3グレードまで清掃(ブラシで清掃、約50%の表面に錆が残存)した鋼板6枚の表面に、実施例1により調製した粗オキシムをイソプロパノールで希釈(約10%溶液)した製剤Aを塗布し、室温で4時間乾燥後、約5.5g粗オキシム/m鋼表面を含有する層が得られた。その後、50μm厚のエポキシドプライマ塗膜、100μm厚の中間層エポキシド塗膜、及び60μm厚のポリウレタン上塗り塗膜からなる塗装系を塗布した。同じ方法で調製したが製剤Aは未使用の次の鋼板6枚に、同じ塗装系を塗布した。塗膜乾燥後、各系列の板3枚の板中央に交差角30°の交差切り目を入れた。
【0030】
板すべてを塩水噴霧室に置き、ISO9227規格により試験して、塗膜の損傷を確認した(30±2℃の温度で3%塩化ナトリウム溶液を用いて噴霧)。表1及び2に、塩水噴霧室における1440時間試験後の塗膜損傷を示し、PN−EN ISO4628規格により評価した(I:製剤A未使用板、II:製剤A使用板、X:交差切れ目を有する板)。
【0031】
(表1)
表1:製剤A未使用板の塩水噴霧室における試験結果
【0032】
(表2)
表2:製剤A使用板の塩水噴霧室における試験結果
Ri1:表面0.05%に錆のある錆度。錆度は、Ri0からRi5で示す。
【0033】
ふくれ、割れ及び剥離は、0〜5段階の密度及びサイズ(0が最低密度及び最小サイズ)(括弧内の値)で定義する。わかるように、製剤A未使用板の切り目の無い試料にわずかな腐食、及び切り目付近にふくれと、切り目のある板に腐食がある。製剤A使用板の両タイプでは、損傷は生じなかった。
【0034】
実施例5
PN−EN ISO8501規格に従って、St3グレードまで清掃(ブラシで清掃、約50%の表面に錆が残存)したS215鋼板(以前はSt3)3枚の表面に、実施例1により調製した粗オキシムをイソプロパノールで希釈(10%溶液)した製剤Aを塗布し、室温で4時間乾燥後、約5.5g粗オキシム/m鋼表面を含有する層が得られた。その後、50μm厚のエポキシドプライマ塗膜、及び100μm厚の中間層エポキシド塗膜からなる塗装系を塗布した。同じ方法で調製したが製剤Aは未使用の次の鋼板3枚に、同じ塗装系を塗布した。塗膜乾燥後、インピーダンス分光法による調査、及びISO16276規格に記載のプルオフ法による塗装付着性試験を行った。板を湿度室に置き、ISO規格に記載の耐食性試験を1440時間行った。湿度室から板を取り出した後、外観を評価し、インピーダンス分光法試験を繰り返した。周波数0.1Hzにおけるインピーダンスモジュールの対数値は、塗装のバリア性能を示す。値が6を超えると、バリア性能を証明する。値が高いほど、優れたバリア性能となる。裸眼で確認できる損傷は、試験板のいずれにも見出されなかった。ボディ系におけるインピーダンススペクトルについて、周波数0.1Hzにおけるインピーダンスモジュールの以下の対数値が得られた。
−湿度室試験前:8〜10(すべての板)
−湿度室試験後:
・8〜10(製剤A使用板)
・7〜10(製剤A未使用板)
【0035】
プルオフ法により測定した塗装付着性の値は、
−湿度室試験前:7〜9MPa(すべての板)
−湿度室試験後:7〜9MPa(製剤A使用板)、4〜5MPa(製剤A未使用板)
であった。
【0036】
得られた結果は、湿度室における曝露後、製剤Aを使用した系のより優れたバリア性能、並びに同じ曝露後のより優れた付着性を証明する。