特許第6474920号(P6474920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474920高圧反応器および超臨界アンモニア中のIII族窒化物結晶の成長方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474920
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】高圧反応器および超臨界アンモニア中のIII族窒化物結晶の成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20190218BHJP
   C30B 7/10 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C30B7/10
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-565179(P2017-565179)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公表番号】特表2018-517657(P2018-517657A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016039622
(87)【国際公開番号】WO2016210428
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月15日
(31)【優先権主張番号】62/184,674
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510123264
【氏名又は名称】シックスポイント マテリアルズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507194969
【氏名又は名称】ソウル セミコンダクター カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】橋本 忠朗
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/097906(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/020161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径より10倍を上回って大きい縦方向寸法を有する円筒形反応器を使用して、III族窒化物結晶を成長させる方法であって、
(a)前記円筒形反応器の縦方向に沿ってIII族元素を含有する培養成分を設置することと、
(b)各シードが前記培養成分に面するように、III族窒化物シード結晶を前記円筒形反応器の壁上または前記壁の近傍に設置することと、
(c)アルカリ金属またはハロゲン元素のいずれかを含有する鉱化剤を前記円筒形反応器の内側に設置することと、
(d)アンモニアを前記円筒形反応器内に充填することと、
(e)前記円筒形反応器を外部加熱器を用いて加熱し、超臨界アンモニアを生成することと、
を含み、前記円筒形反応器は、事実上均一温度において加熱される、方法。
【請求項2】
前記円筒形反応器は、前記培養成分および前記シード結晶を分離するための流量制限プレートを内側に有していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養成分およびシード結晶は両方とも、前記縦方向に沿って、前記反応器の長さの75%を上回って延在する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各シード結晶の底面の片側は、前記培養成分に面する、請求項1−3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つのシード結晶から近傍培養成分までの距離は、前記円筒形反応器内の全シード結晶に対して事実上同一である、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つのシード結晶から近傍培養成分までの距離は、つのシード結晶から近傍培養成分までの平均距離と10%差以内である、請求項1−5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養成分は、前記超臨界アンモニア中の溶解速度が前記シード結晶のものより高速であるように選択される、請求項1−のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養成分の総表面積は、前記シード結晶の総表面積より大きい、請求項1−のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養成分は、多結晶窒化ガリウムを含有する、請求項1−のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
シード結晶は、単結晶または結晶窒化ガリウムである、請求項1−のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記鉱化剤は、リチウム金属、ナトリウム金属、カリウム金属、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウムまたはヨウ化アンモニウムから選択される、請求項1−10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記III族窒化物は、窒化ガリウムである、請求項1−11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記円筒形反応器の前記縦方向寸法は、内径より15倍を上回って大きい、請求項1−12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記円筒形反応器の前記縦方向寸法は、内径より20倍を上回って大きい、請求項1−13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶を成長させる方法を用いて、III族窒化物のバルク結晶を成長させることと、
前記III族窒化物のバルク結晶からII族窒化物ウエハをスライスすることと
を含む、III族窒化物ウエハを生産する方法
【請求項16】
アモノサーマル成長プロセスにおいてIII族窒化物を成長させるための高圧反応器であって、
(a)チャンバを画定し、縦軸および前記縦軸と平行な内側側壁を有する、円筒形反応器本体と、
(b)前記円筒形反応器本体の縦軸の大部分に沿って延在する、培養成分容器と、
(c)前記円筒形反応器本体の内側側壁に隣接し、前記円筒形反応器本体の縦軸の大部分に沿って延在する、1つまたはそれを上回るシード保定器と、
を備える、高圧反応器
【請求項17】
前記シード保定器は、前記円筒形反応器本体の円周の周囲に分散され、シードを前記円筒形反応器本体の円周および縦軸の大部分に位置させる、請求項16に記載の高圧反応器。
【請求項18】
前記反応器本体は、前記チャンバ内にバッフルを有していない、請求項16または請求項17に記載の高圧反応器。
【請求項19】
前記培養成分容器は、複数の積載可能バスケットを備える、請求項1618のいずれか1項に記載の高圧反応器。
【請求項20】
前記培養成分容器および前記シード保定器は、前記反応器の円筒形本体の外部に位置付けられる、同一加熱器によって加熱されるように位置付けられる、請求項1619のいずれか1項に記載の高圧反応器。
【請求項21】
前記III族窒化物結晶は、転位密度約10cm−2を有する、請求項1に記載の方法
【請求項22】
前記III族窒化物結晶は、転位密度約10cm−2を有し、ある量の鉱化剤を含有する、請求項1に記載の方法
【請求項23】
前記III族窒化物結晶は、バルク結晶である、請求項21または請求項22に記載の方法
【請求項24】
III族窒化物結晶を成長させる方法であって、
(a)III族元素から形成される培養成分を超臨界アンモニア中に溶解させることと、
(b)前記超臨界アンモニアを使用して、溶解された培養成分を複数のIII族窒化物シードに移送することと、
(c)同時に、前記溶解された培養成分を前記複数のIII族窒化物シード上に堆積させることであって、前記培養成分は、前記培養成分の溶解と堆積との間に温度差を提供せずに、溶解および堆積される、ことと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記溶解された培養成分の移送機構は、主に、前記培養成分の近傍と前記シードの近傍との間の前記超臨界アンモニア中の濃度勾配に起因して、前記超臨界アンモニアを通して拡散される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
超臨界アンモニアの対流は、前記培養成分溶解と前記培養成分堆積との間の温度差の欠如のため、低減される、請求項24または請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2015年6月25日に出願され、本願と同一の発明の名称および発明者を有する米国出願第62/184,674号に対する優先権の利益を主張するものであり、該出願は、以下に完全に記載されているのと同然にその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、以下の米国特許出願に関連している。
【0003】
PCT特許出願第US2005/024239号,出願日2005年7月8日,発明者Kenji Fujito,Tadao HashimotoおよびShuji Nakamura,発明の名称”METHOD FOR GROWING GROUP III−NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA USING AN AUTOCLAVE”,代理人管理番号30794.0129−WO−0l(2005−339−1);
【0004】
米国特許出願第11/784,339号,出願日2007年4月6日,発明者Tadao Hashimoto,Makoto Saito,およびShuji Nakamura,発明の名称”METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS”,代理人管理番号30794.179−US−U1(2006−204),該出願は,米国仮特許出願第60/790,310号,出願日2006年4月7日,発明者Tadao Hashimoto,Makoto Saito,およびShuji Nakamura,発明の名称”A METHOD FOR GROWING LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS IN SUPERCRITICAL AMMONIA AND LARGE SURFACE AREA GALLIUM NITRIDE CRYSTALS”,代理人管理番号30794.179−US−P1(2006−204)の35 U.S.C. Section 119(e)のもとでの利益を主張するものである;
【0005】
米国特許出願第60/973,602号,出願日2007年9月19日,発明者Tadao HashimotoおよびShuji Nakamura,発明の名称”GALLIUM NITRIDE BULK CRYSTALS AND THEIR GROWTH METHOD”,代理人管理番号30794.244−US−P1(2007−809−1);
【0006】
米国特許出願第11/977,661号,出願日2007年10月25日,発明者Tadao Hashimoto,発明の名称”METHOD FOR GROWING GROUP III− NITRIDE CRYSTALS IN A MIXTURE OF SUPERCRITICAL AMMONIA AND NITROGEN, AND GROUP III−NITRIDE CRYSTALS GROWN THEREBY”,代理人管理番号30794.253−US−U1(2007−774−2);
【0007】
米国特許出願第61/067,117号,出願日2008年2月25日,および第12/392,960号,出願日2009年2月25日,発明者Tadao Hashimoto,Edward Letts,Masanori Ikari,発明の名称”METHOD FOR PRODUCING GROUP III−NITRIDE WAFERS AND GROUP III−NITRIDE WAFERS”,代理人管理番号62158−30002.00またはSIXPOI−003;
【0008】
米国特許出願第61/058,900号,出願日2008年6月4日,および第12/455,760号,出願日2009年6月4日,発明者Edward Letts,Tadao Hashimoto,Masanori Ikari,発明の名称”METHODS FOR PRODUCING IMPROVED CRYSTALLINITY GROUP III−NITRIDE CRYSTALS FROM INITIAL GROUP III−NITRIDE SEED BY AMMONOTHERMAL GROWTH”,代理人管理番号62158−30004.00またはSIXPOI−002;
【0009】
米国特許出願第61/058,910号,出願日2008年6月4日,第12/455,683号,出願日2009年6月4日(現在では米国特許第8,236,267号),発明者Tadao Hashimoto,Edward Letts,Masanori Ikari,発明の名称”HIGH−PRESSURE VESSEL FOR GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS AND METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS USING HIGH−PRESSURE VESSEL AND GROUP III NITRIDE CRYSTAL”,代理人管理番号62158−30005.00またはSIXPOI−005;
【0010】
米国特許出願第61/131,917号,出願日2008年6月12日,第12/456,181号,出願日2009年6月12日(現在では米国特許第8,357,243号),発明者Tadao Hashimoto,Masanori Ikari,Edward Letts,発明の名称”METHOD FOR TESTING III− NITRIDE WAFERS AND III−NITRIDE WAFERS WITH TEST DATA”,代理人管理番号62158−30006.00またはSIXPOI−001;
【0011】
米国特許出願第61/106,110号,出願日2008年10月16日,第12/580,849号,出願日2009年10月16日,発明者Tadao Hashimoto,Masanori Ikari,Edward Letts,発明の名称”REACTOR DESIGN FOR GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS AND METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS”,代理人管理番号SIXPOI−004;
【0012】
米国特許出願第61/694,119号,出願日2012年8月28日,発明者Tadao Hashimoto,Edward Letts,Sierra Hoff,発明の名称”GROUP III NITRIDE WAFER AND PRODUCTION METHOD”,代理人管理番号SIXPOI−015;
【0013】
米国特許出願第61/705,540号,出願日2012年9月25日,発明者Tadao Hashimoto,Edward Letts,Sierra Hoff,発明の名称”METHOD OF GROWING GROUP III NITRIDE CRYSTALS”,代理人管理番号SIXPOI−014;
【0014】
全て、以下に完全に記載される場合と同様に、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0015】
(技術分野)
本発明は、超臨界アンモニア中におけるIII族窒化物の成長方法と、本方法によって成長されたIII族窒化物結晶に関する。高圧反応器が、超臨界アンモニア中においてIII族窒化物のバルク結晶を成長させるために使用される。III族窒化物結晶は、発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)等の光電子素子ならびにトランジスタ等の電子素子を含む、種々の素子のための半導体ウエハを生産するために使用される。より具体的には、III族窒化物は、ガリウムを含む。
【0016】
(既存技術の説明)
(注記:本特許出願は、括弧内の数字、例えば、[x]を用いて示されるように、いくつかの刊行物および特許を参照する。これらの刊行物および特許の一覧は、「参考文献」と題された節に見出され得る。)
【0017】
窒化ガリウム(GaN)およびその関連III族窒化物合金は、LED、LD、マイクロ波電力トランジスタ、ならびにソーラー・ブラインド型光検出器等の種々の光電子および電子素子のための重要な材料である。現在、LEDは、ディスプレイ、インジケータ、汎用照明において広く使用されており、LDは、データ保管用ディスクドライブにおいて使用されている。しかしながら、これらの素子の大部分は、GaN基板が、これらのヘテロエピタキシャル基板と比較して、高価であるため、サファイアおよび炭化ケイ素等の異種基板上にエピタキシャル成長される。III族窒化物のヘテロエピタキシャル成長は、著しく欠陥があるまたはさらに亀裂がある膜を生じさせ、汎用電灯もしくは高電力マイクロ波トランジスタのための高輝度LED等の高性能光学および電子素子の実現を妨害する。
【0018】
へテロエピタキシによって生じるあらゆる基本問題を解決するために、バルクIII族窒化物結晶インゴットからスライスされた結晶III族窒化物ウエハを利用することが不可欠である。素子の大部分に関して、結晶GaNウエハは、ウエハの伝導性を制御することが比較的に容易であって、GaNウエハが、素子層と最小格子/熱不整合を提供するであろうため、好ましい。しかしながら、高融点および高温における高窒素蒸気圧のため、GaN結晶インゴットを成長させることは困難である。現在、市販のGaN基板の大部分は、水素化物気相エピタキシ(HVPE)と呼ばれる方法によって生産される。HVPEは、気相法のうちの1つであって、転位密度を10cm−2未満に低減させることが困難である。
【0019】
転位密度が10cm−2未満の高品質GaN基板を得るために、アモノサーマル成長と呼ばれる方法が、開発されている[1−6]。最近は、10cm−2未満の転位密度を有する高品質GaN基板は、アモノサーマル成長によって得られることができる。アモノサーマル成長の高圧反応器は、極端な温度および圧力条件に起因して、Ni−Cr系超合金を用いて構築されなければならない。Ni−Cr超合金反応器の最大直径は、構築材料、その特性、高圧および高温、ならびに合金内の化学物質の化学的侵襲性によって限定される。高圧反応器のチャンバ直径は、したがって、かなり小さい最大値に限定される。1つの反応器内で同時に成長される結晶の数を増加させるために、反応器の長さは、延長されなければならない。しかしながら、反応器の長さが延長される場合、反応器が、反応器の条件および構築材料に関する限界に起因して、閉鎖またはバッチ反応器であるため、かつ化学物質移送が、反応器内の自然対流によるため、培養成分と培養成分から最も遠いシード結晶との間の距離は、大きすぎ、結晶成長が生じることができなくなるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、高圧反応器と、III族窒化物結晶を超臨界アンモニア中で成長させる方法とを開示する。従来のアモノサーマル法と異なり、高圧反応器のチャンバを培養成分領域および成長領域に分割するためのバッフルが存在しない。半径方向寸法より長い縦方向寸法を有する、円筒形高圧反応器が、使用される。培養成分は、円筒形の中心の周囲において、円筒形の縦軸に沿って設置され、シード結晶は、反応器壁上またはそこから若干離れて設置され、超臨界アンモニア、ガリウム、および添加剤の溶液が、シード結晶の両面に接触することを可能にする。言い換えると、シード結晶は全て、任意の高さにおいて、培養成分に面している。反応器は、反応器の温度が事実上均一となるように、外部加熱器によって加熱される。言い換えると、成長環境は、縦方向に沿った温度差が殆どまたは全く存在せず、反応器の内側の対流が最小限にされるように制御される。結晶成長は、従来の実践と対照的に、平衡条件の近傍で生じる。この従来と異なる構成および成長方法論を用いることで、1つのバッチ内で成長される結晶の数は、高圧反応器の長さを延長することによって、著しく増加されることができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
内径より10倍大きい縦方向寸法を有する円筒形反応器を使用して、III族窒化物結晶を成長させる方法であって、
(a)前記円筒形反応器の縦方向に沿ってIII族要素を含有する培養成分を設置するステップと、
(b)各シードが前記培養成分に面するように、III族窒化物シード結晶を前記円筒形反応器の壁上またはその近傍に設置するステップと、
(c)アルカリ金属またはハロゲン元素のいずれかを含有する鉱化剤を前記円筒形反応器の内側に設置するステップと、
(d)アンモニアを前記円筒形反応器内に充填するステップと、
(e)前記円筒形反応器を外部加熱器を用いて加熱し、超臨界アンモニアを生成するステップと、
を含む、方法。
(項目2)
前記円筒形反応器は、前記培養成分および前記シード結晶を分離するための流量制限プレートを内側に有していない、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記培養成分およびシード結晶は両方とも、前記縦方向に沿って、前記反応器の長さの75%を上回って延在する、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
各シード結晶の底面の片側は、前記培養成分に面する、項目1−3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記1つのシード結晶から前記最近傍培養成分までの距離は、前記円筒形反応器内の全シード結晶に対して事実上同一である、項目1−4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記1つのシード結晶から前記最近傍培養成分までの距離は、前記1つのシード結晶から前記最近傍培養成分までの平均距離と10%差以内である、項目1−5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記円筒形反応器は、事実上均一温度において加熱される、項目1−6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記培養成分は、前記超臨界アンモニア中の溶解速度が前記シード結晶のものより高速であるように選択される、項目1−7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記培養成分の総表面積は、前記シード結晶の総表面積より大きい、項目1−8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記培養成分は、多結晶窒化ガリウムを含有する、項目1−9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
シード結晶は、単結晶または高配向性多結晶窒化ガリウムである、項目1−10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記鉱化剤は、リチウム金属、ナトリウム金属、カリウム金属、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウムまたはヨウ化アンモニウムから選択される、項目1−11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記III族窒化物は、窒化ガリウムである、項目1−12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記円筒形反応器の前記縦方向寸法は、内径より15倍を上回って大きい、項目1−13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記円筒形反応器の前記縦方向寸法は、内径より20倍を上回って大きい、項目1−14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
項目1−15のいずれかに記載の方法によって成長される、III族窒化物のバルク結晶。
(項目17)
項目16におけるIII族窒化物のバルク結晶から生産される、III族窒化物ウエハ。
(項目18)
アモノサーマル成長プロセスにおいてIII族窒化物を成長させるための高圧反応器であって、
(a)チャンバを画定し、縦軸および前記縦軸と平行な内側側壁を有する、円筒形反応器本体と、
(b)前記円筒形反応器本体の縦軸の大部分に沿って延在する、培養成分容器と、
(c)前記円筒形反応器本体の内側側壁に隣接し、前記円筒形反応器本体の縦軸の大部分に沿って延在する、1つまたはそれを上回るシード保定器と、
を備える、高圧反応器
(項目19)
前記シード保定器は、前記円筒形反応器本体の円周の周囲に分散され、シードを前記円筒形反応器本体の円周および縦軸の大部分に位置させる、項目18に記載の高圧反応器。
(項目20)
前記反応器本体は、前記チャンバ内にバッフルを有していない、項目18または項目19に記載の高圧反応器。
(項目21)
前記培養成分容器は、複数の積載可能バスケットを備える、項目18−20のいずれか1項に記載の高圧反応器。
(項目22)
前記培養成分容器および前記シード保定器は、前記反応器の円筒形本体の外部に位置付けられる、同一加熱器によって加熱されるように位置付けられる、項目18−21のいずれか1項に記載の高圧反応器。
(項目23)
アモノサーマル法によって形成され、転位密度約10cm−2を有する、窒化ガリウム結晶。
(項目24)
転位密度約10cm−2を有し、ある量の鉱化剤を含有する、窒化ガリウム結晶。
(項目25)
前記結晶は、バルク結晶である、項目23または項目24に記載の結晶。
(項目26)
III族窒化物結晶を成長させる方法であって、
(a)III族元素から形成される培養成分を超臨界アンモニア中に溶解させるステップと、
(b)前記超臨界アンモニアを使用して、溶解された培養成分を複数のIII族窒化物シードに移送するステップと、
(c)同時に、前記溶解された培養成分を前記複数のIII族窒化物シード上に堆積させるステップであって、前記培養成分は、前記培養成分の溶解と堆積との間に温度差を提供せずに、溶解および堆積される、ステップと、
を含む、方法。
(項目27)
前記溶解された培養成分の移送機構は、主に、前記培養成分の近傍と前記シードの近傍との間の前記超臨界アンモニア中の濃度勾配に起因して、前記超臨界アンモニアを通して溶解される、項目26に記載の方法。
(項目28)
超臨界アンモニアの対流は、前記培養成分溶解と前記培養成分堆積との間の温度差の欠如のため、低減される、項目26または項目27に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、類似参照番号が全体を通して対応する部品を表す図面を参照する。
【0022】
図1図1は、従来のアモノサーマル成長構成の断面の概略図である。図中、各番号は、以下を表す。101.高圧反応器本体102.蓋103.クランプ104.ガスケット105.下側ゾーンのための加熱器106.上側ゾーンのための加熱器107.バッフル108.培養成分バスケット109.培養成分110.シード結晶112.閉じ込めセル113.排出弁114.排出ライン115.弁操作デバイス
【0023】
図2図2は、本発明における反応器構成の一実施例の断面図である。図中、各番号は、以下を表す。201.高圧反応器本体202.蓋203.クランプ204.ガスケット205.加熱器208.培養成分バスケット209.培養成分210.シード結晶212.閉じ込めセル213.排出弁214.排出ライン215.弁操作デバイス
【発明を実施するための形態】
【0024】
(従来の方法の限界)
従来のアモノサーマル法では、内径より約10倍大きい縦方向寸法を有する、円筒形高圧反応器が、使用される。従来のアモノサーマル成長の構成は、図1に示される。高圧反応器は、本体101と、蓋102と、クランプ103と、ガスケット104とから成り、垂直構成にあって、すなわち、円筒形反応器は、地面に対して垂直に立設される。高圧反応器のチャンバは、主に、上側領域および下側領域に分割され、流量制限バッフル107を伴う。高圧反応器は、外部加熱器を用いて加熱される。加熱器は、少なくとも2つの領域に分裂される。上側ゾーン106のための加熱器は、上側領域のための温度を制御し、下側ゾーン105のための加熱器は、下側領域のための温度を制御する。対流を向上させるために、下側領域のための温度は、典型的には、上側領域のものより高く設定される。システムは、随意に、閉じ込めセル112を装備し、これは、アンモニアガスの遠隔放出を可能にし、排出弁113と、排出ライン114と、弁操作デバイス115とを伴う。
【0025】
バッフルによって生成される領域のうちの1つは、培養成分を提供するため専用であって、他の領域は、結晶化のため専用である。これらの機能が行われる領域は、超臨界アンモニアの酸性度に依存する。例えば、アルカリ系鉱化剤がアンモニアに添加されると、超臨界アンモニアは、塩基性になる。アンモニア塩基性溶液中では、GaN等のIII族窒化物は、逆行溶解度を有する。その結果、培養成分109および培養成分を含有する任意のバスケット108は、従来の反応器の上側領域内に設置され、シード結晶110は、従来の反応器の下側領域内に設置される。逆に言えば、ハロゲン化アンモニウムがアンモニアに添加される場合、超臨界アンモニアは、酸性となり、III族窒化物は、酸性溶液中で正常溶解度を呈する。したがって、培養成分109は、従来の反応器の下側領域内に設置され、シード結晶110は、従来の反応器の上側領域内に設置される。
【0026】
III族窒化物の結晶は、400〜600℃の温度範囲および10,000〜60,000psiの圧力範囲において、シード結晶上に成長される。高温および極端な高圧に起因して、高圧反応器は、典型的には、Ni−Cr系超合金を用いて構築される。Ni−Cr超合金の大径ビレットを生産することは困難であるため、ビレット最大直径は、限定され、これは、高圧反応器のチャンバの直径を限定する。1つの反応器内で同時に成長される結晶の数を増加させるために、高圧反応器の長さを延長させることが必要である。しかしながら、反応器長が長すぎる場合、培養成分と培養成分から最も遠いシード結晶との間の距離が、大きくなりすぎて、前駆体がシード結晶の表面に到達することができない。したがって、培養成分から最も遠い結晶の成長レートは、最も遠い結晶への培養成分欠乏および不良対流循環に起因して、非常に小さいまたはゼロにさえなる。これは、従来のアモノサーマル成長の基本的限界である。従来のアモノサーマル反応器では、縦方向寸法は、典型的には、内径の約10倍である。したがって、従来の方法を用いると、内径より10倍、15倍、または20倍を上回って大きい縦方向寸法を有する反応器を用いて結晶を成長させることは、非常に困難である。
【0027】
(本発明の技術説明)
従来のアモノサーマル法の限界を克服するために、本発明は、培養成分を反応器内の全シード結晶に対して十分に近接して位置させる。図2に示されるように、高圧反応器は、本体201と、蓋202と、クランプ203と、ガスケット204とから成る。従来のアモノサーマル法と異なり、培養成分209は、縦方向に沿って、反応器の中心の周囲に位置する。シード結晶210は、シードの底面が培養成分に面するように、壁の近傍またはその上に設定される。培養成分およびシード結晶は両方とも、縦方向に沿って、反応器の長さの75%を上回って延在することができる。本構成を用いると、事実上全シード結晶が、培養成分から類似距離に位置する。したがって、1つのシード結晶から最近傍培養成分までの距離は、1つのシード結晶から最近傍培養成分までの平均距離と10%差以内である。培養成分は、シード結晶に対して十分に近接するため、対流は、必要とされない。培養成分は、濃度勾配に起因して、シードに拡散することができる。したがって、従来のアモノサーマル法における培養成分ゾーンとシードゾーンとの間の温度差を提供する、バッフルは、排除される。また、反応器は、反応器の全長が可能な限り均一な温度を達成するように加熱される。反応器は、所望に応じて、垂直に、水平に、または対角線上に設置されることができる。
【0028】
III族窒化物の結晶は、400〜600℃の温度範囲および10,000〜60,000psiの圧力範囲において、シード結晶上に成長される。極端な高温および高圧に起因して、高圧反応器は、典型的には、Ni−Cr系超合金から構築される。Ni−Cr超合金の大径ビレットを生産することが困難であるため、ビレット最大直径は、限定され、これは、高圧反応器内のチャンバの直径を限定する。1つの反応器内で同時に成長される結晶の数を増加させるために、反応器長は、本明細書に提供される新しい反応器内では、全シード結晶のための成長レートに影響を及ぼすことなく、延長されることができる。
【0029】
図2に示されるように、多結晶GaNおよび/または金属Gaの小片等の培養成分が、超臨界アンモニアが容器にアクセスことを可能にする、相互にまたは他の容器もしくは複数の容器上に積載され得る、複数のバスケット208内に保持されることができる。シード結晶は、開放フレームまたはサセプタプレート等の中実プラットフォーム上に設置されることができる。開放フレームの場合、シード結晶の両側が、成長の間、超臨界アンモニア溶液に暴露される。シードは、図2に描写されるように、シードの主要表面(底面)が反応器の半径と略垂直になるように、反応器の内周の周囲に位置付けられてもよい。しかしながら、培養成分からの距離に起因して、培養成分と反対のシードの主要表面上の成長レートは、培養成分に面するシードの主要表面上より低速である。シードは、当然ながら、シード縁が直接培養成分に面し、シードの主要表面が反応器の半径と略平行に位置付けられ、シードの主要表面が反応器の縦軸と略平行および/またはシードの主要表面が反応器の縦軸と垂直のいずれかとなるように、位置付けられてもよい。シード結晶が中実サセプタプレート上に搭載されると、シード結晶の片側が、直接プレートに触れ、したがって、結晶は、培養成分に面する暴露された底面上でのみ成長する。
【0030】
反応器は、シード結晶を、反応器のチャンバに面する側壁の円周の周囲に完全に、かつ反応器の長さの大部分または全部に沿って垂直に分散させることができる。本発明の反応器は、したがって、反応器の長さを従来の反応器長を越えて延長させる前にさえ、従来の反応器内に設置され得るものより多くのシードを反応器内に設置することを可能にする。
【0031】
全シード上で同一特性を有する結晶を得るために、反応器に沿った温度差を最小限にすることが望ましい。しかしながら、これは、加熱器が、1つのゾーンまたは一体型であるべきであることを必ずしも意味しない。むしろ、反応器に沿って複数の加熱ゾーンを有し、反応器に沿って均一温度を得ることが有用である。反応器の均一加熱を用いると、超臨界アンモニアの対流は、最小限にされる。詳細な成長機構は、よく解明されていないが、III族窒化物(特に、エピタキシャルなGaN)結晶成長は、培養成分と新しい結晶が成長するシード結晶との間の温度差がない平衡条件の近傍下で成長する。結晶は、培養成分とシードとの間の前駆体濃度の差異によって生じる、拡散駆動質量移送を通して成長し得る。前駆体濃度の差異は、培養成分とシード結晶との間の異なる溶解速度によって生じ得、これは、培養成分とシード結晶との間の異なる表面積によって生じ得る。
【0032】
反応器はまた、反応器の各端部に面して(例えば、反応器が蓋を両端に有するとき、反応器の各端における蓋に面して)位置付けられる加熱器を有してもよい。本構成は、反応器の全長に沿ってより均一温度を提供し、シードが、そうでなければ反応器の中央部分より低温となるであろう、反応器の端部により近接して設置されることを可能にすることができる。
【0033】
対流は、本発明では最小限にされることができるため、乱流アンモニア流によって生じる結晶成長変動は、最小限にされることができる。これは、本方法において成長されるIII族窒化物のより優れた結晶品質につながり得る。GaN等のIII族窒化物の転位密度は、好ましくは、約10cm−2またはそれ未満まで低減され、亀裂形成もまた、好ましくは、低減および最小限にされる。
【0034】
反応器は、例えば、単結晶III族窒化物または多結晶III族窒化物を成長させるために使用されることができる。反応器はまた、他の化合物、結晶、または遷移金属窒化物等のその他を形成するためにも使用されることができる。
(実施例)
【実施例1】
【0035】
(従来のアモノサーマル構成におけるGaNの成長)
2インチを上回る内径を有し、時効硬化性Ni−Cr超合金から作製される、円筒形高圧反応器が、開口部を両端に有する。蓋は、別のタイプの時効硬化性Ni−Cr超合金から作製される。ガスケットは、99%を上回るNi含有量を有する、Ni系合金から作製される。反応器のチャンバは、バッフルプレートを用いて、2つの領域に分割される。培養成分として使用される多結晶GaNは、ニッケルメッシュから作製される2つのバスケット内に保持される。各バスケット内の多結晶GaNの総量は、約600gである。これらのバスケットは、上部バッフルプレートの上方に設置される。底部バッフルプレートの下方には、シードフレームのいくつかの層が存在する。各層は、単結晶GaNの少なくとも1つのシード結晶を有する。鉱化剤として使用される約400gのナトリウムが、破裂板を装備する、カプセル内に含有される。加熱後、アンモニア圧力が増加すると、破裂板は、破壊し、ナトリウムは、アンモニアと混合する。これらの成分の装填後、反応器は、シールされ、真空化され、アンモニアで充填される。アンモニアの総量は、約7kgである。次いで、反応器は、バックエッチング条件まで加熱され、シード結晶の上部表面を除去する。バックエッチングの間、培養成分ゾーンのための温度は、約400℃に設定され、これは、シードゾーンのものより約50℃高い。GaN結晶成長は、約550℃において、4日間にわたって実施される。シード領域のための温度は、培養成分領域のための温度より約30℃高く設定される。成長後、結晶厚が、測定され、成長レートが、計算される。フレームの上部に位置するシード上のGaNの成長レートは、約113ミクロン/日であって、フレームの中間に位置するシード上の成長レートは、約104ミクロン/日であって、フレームの底部に位置するシード上の成長レートは、約64ミクロン/日である。これは、培養成分ゾーンから供給される前駆体が、アンモニア流がシードフレームの各層を通して通過するにつれて消費され、底部においてシード結晶に到達すると枯渇されることを示す。
【実施例2】
【0036】
(ナトリウム鉱化剤を用いた本発明)
2インチを上回る内径を有し、時効硬化性Ni−Cr超合金から作製される、円筒形高圧反応器が、開口部を両端に有する。蓋は、別のタイプの時効硬化性Ni−Cr超合金から作製される。ガスケットは、99%を上回るNi含有量を有する、Ni系合金から作製される。反応器の長さは、直径の10倍を上回る。培養成分として使用される多結晶GaNは、ニッケルメッシュから作製される10個のバスケット内に保持される。各バスケット内の多結晶GaNの総量は、約600gである。これらのバスケットは、反応器の中心線に沿って積載される。シードサセプタは、片側が反応器の湾曲壁に嵌合し、他側が平坦に成形される、長いスラブである。6つのサセプタが、内壁の円形全体を充填する、すなわち、各サセプタは、反応器の内円の1/6を被覆する。スラブの長さは、反応器の長さと略同一であって、これは、反応器の総長の75%を上回る。シード結晶は、上部から底部までアレイ内のサセプタの平坦表面に対して固定される。サセプタが反応器の内壁上に固定されると、各シードから最も近い培養成分までの距離は、任意の高さにおいて事実上一定となる、すなわち、培養成分から各シードまでの距離は、培養成分からシード結晶までの平均距離と誤差10%以内である。培養成分の総表面積は、シード結晶の総表面積より1桁を上回って大きい。鉱化剤として使用される約300gのナトリウムが、破裂板を装備する、カプセル内に含有される。カプセルは、反応器の底部等の任意の便宜的場所に位置する。加熱後、アンモニア圧力が増加すると、破裂板は、破壊し、ナトリウムは、アンモニアと混合する。これらの成分の装填後、反応器は、シールされ、真空化され、アンモニアで充填される。アンモニアの総量は、約4kgである。次いで、反応器は、均一に加熱される。漸増の間、GaN培養成分およびシードは両方とも、アンモニア中に溶解し、これは、シード結晶のバックエッチングを提供する。温度が成長温度に到達すると、反応器は、4日間にわたって一定温度に維持される。成長後、各シード上のGaNの成長レートが、評価される。最上シードに関する成長レートは、約89ミクロン/日であって、最下シードに関する成長レートは、約92ミクロン/日である。シードは全て、場所にかかわらず、類似成長レートを示す。
【実施例3】
【0037】
(塩化アンモニウム鉱化剤を用いた本発明)
GaNは、実施例2におけるナトリウム鉱化剤の代わりに塩化アンモニウム鉱化剤を代用することによって成長されることができる。溶解度の温度依存は、酸性鉱化剤と反対であるが、GaNは、実施例2に見出されるものと同一反応器構成を用いて成長する。同一反応器構成は、したがって、超臨界溶液が酸性である、アモノサーマル法のためと、溶液が塩基性である方法のためとに使用されることができる。成長機構は、あまり分かっていないが、GaNは、培養成分面積とシード面積との間の前駆体濃度の差異に伴って成長し得る。成長レートは、実施例2に類似し、塩基性溶液のために構成されるまたは酸性溶液のために構成される従来のアモノサーマル反応器において成長が生じる方法と対照的に、シード場所に伴って変化しない。
【0038】
(利点および改良点)
従来のアモノサーマル法では、培養成分およびシード結晶は、バッフルを用いて垂直に分離される。反応器長が延長される場合、培養成分から最も遠いシード結晶までの距離は、離れすぎ、結晶成長をもたらすことができない。一方、本発明では、III族窒化物結晶は、反応器の長さが延長される場合でも、反応器内の全シード結晶のための類似成長レートを維持しながら、超臨界アンモニア中で成長されることができる。HVPE等のIII族窒化物の他のバルク結晶成長法と比較して、アモノサーマル法における成長レートは、非常に低い。したがって、反応器内の1つのバッチ内で成長される結晶の数を増加させることが重要である。本発明を用いると、反応器長は、全シード結晶のための成長レートを損なうことなく、延長されることができる。
【0039】
(可能性として考えられる修正)
好ましい実施形態は、ナトリウムまたは塩化アンモニウム鉱化剤を説明するが、リチウム金属、カリウム金属、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、フッ化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択される他の鉱化剤も、本発明の目的を損なうことなく、使用されることができる。
【0040】
好ましい実施形態は、窒化ガリウムを説明するが、本発明はまた、窒化アルミニウム、窒化インジウム、窒化ガリウムアルミニウム、または他の合金等の他のIII族窒化物にも適用されることができる。
【0041】
好ましい実施形態は、シード結晶を保持するために、シードサセプタを説明するが、結晶を吊架するためのシードフレーム等の他の構造も、使用されることができる。
【0042】
反応器は、円筒形形状を有し、時効硬化性Ni−Cr系超合金から作製されることができる。反応器は、時効硬化性Ni−Cr系超合金から作製される少なくとも1つの蓋を一端に有するが、各端に1つずつ、2つの蓋を有してもよい。蓋は、そのNi含有量が時効硬化性Ni−Cr系超合金より高い、Ni系金属から作製されるガスケットでシールされることができる。
【0043】
参考文献
【0044】
以下の参考文献は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
[1]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第6,656,615号)
[2]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第7,132,730号)
[3]R. Dwilinski, R. Doradzinski, J. Garczynski, L. Sierzputowski, Y. Kanbara(米国特許第7,160,388号)
[4]K. Fujito, T. Hashimoto, S. Nakamura(国際特許出願第PCT/US2005/024239号、第WO07008198号)
[5]T. Hashimoto, M. Saito, S. Nakamura(国際特許出願第PCT/US2007/008743号、第WO07117689号。また、第US20070234946号、2007年4月6日に出願された米国出願第11/784,339号も参照)
[6]D’ Eyelyn(米国出願第7,078,731号)
【0045】
上記の参考文献はそれぞれ、本明細書に完全に記載される場合と同様に、特に、アモノサーマル法を使用した作製方法およびこれらの窒化ガリウム基板の使用方法の説明に関して、参照することによって全体として組み込まれる。
図1
図2