(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6474928
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】自走台車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20190218BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20190218BHJP
【FI】
B61B13/00 K
H02M7/48 E
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-10401(P2018-10401)
(22)【出願日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】515328370
【氏名又は名称】ツチダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大林 英夫
(72)【発明者】
【氏名】谷本 壽
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−029418(JP,A)
【文献】
実開昭63−080276(JP,U)
【文献】
特開2007−004374(JP,A)
【文献】
特開2005−188033(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0137981(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61J 1/00
B61D 3/00
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を自走する自走台車であって、
前記レールは、2本1組の第1のレールと2本1組の第2のレールとが交差して交差部を形成し、前記交差部において前記第1のレールに分離部が形成され、前記分離部に前記第2のレールが配置されたものであり、
2本1組の前輪用車軸と、
前記前輪用車軸の両端に取り付けられた4輪の前輪と、
2本1組の後輪用車軸と、
前記後輪用車軸の両端に取り付けられた4輪の後輪とを備えており、
前記2本1組の前輪用車軸と前記2本1組の後輪用車軸の4本の車軸全てがモータで駆動され、前記4輪の前輪及び前記4輪の後輪の8輪の車輪全てが前記4本の車軸を介して前記モータで駆動され、
前記8輪の車輪は、1本の車軸の両端の2輪の車輪が前記分離部上にあるときに、残りの6輪の車輪が前記第1のレール上にあるように配置されており、
直流電源と、
前記直流電源からの直流を交流に変換するインバータとをさらに備えており、
前記モータは交流モータであり、前記2本1組の前輪用車軸を駆動する第1のモータと前記2本1組の後輪用車軸を駆動する第2のモータとを含んでおり、
前記第1のモータ及び前記第2のモータは単一の前記インバータで駆動されることを特徴とする自走台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差部を有するレール上を自走する自走台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄工所等において、重量物を吊り上げて搬送するクレーンと鉄材等を搭載して搬送させる台車とを併用する場合がある。この場合、クレーンと台車とはそれぞれ専用のレール上を走行することになるが、レールが交差する部分においては、例えば台車用のレールを分離させ、この分離部にクレーン用のレールを配置して、レール同士が干渉しないようにしている。
【0003】
このようなレール構造では、分離部を車輪が通過する際に、車輪が分離部に落ち込み、台車が振動したりレールが損傷するという問題があった。このことから特許文献1に記載の台車は、車輪が切欠き(分離部)上にあるときは、他の車輪はレール上にあるように車輪を配置して、車輪が分離部に落ち込むことがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−29418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の台車は、車輪の配置に着目したに留まり、車輪の駆動に着目したものではなかった。具体的には、特許文献1には、「切欠きのあるレールを走行する台車の全荷重を8個の車輪のうち6個の車輪で支持しなければならないので、かかる車輪構造を採用する台車は荷重が小さい方がよい。例えば、転炉工場内の直交レールに荷重の大きい受鋼台車と荷重の小さい作業台車を走らせる場合には、切欠きのないレールには荷重の大きい受鋼台車を走らせ、切欠きのあるレールには荷重の小さい台車を走らせればよい。」の記載がある。
【0006】
すなわち、特許文献1においては同文献記載の車輪配置について、荷重の大きい台車を走行させるときの問題を指摘するに留まり、車輪が切欠き上にあるときの走行性の低下の問題については指摘がなく、この問題を解決する構造についても何ら提案されていなかった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、分離部のあるレール上を走行させる自走台車において、安定した走行が可能な自走台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の自走台車は、レール上を自走する自走台車であって、前記レールは、2本1組の第1のレールと2本1組の第2のレールとが交差して交差部を形成し、前記交差部において前記第1のレールに分離部が形成され、前記分離部に前記第2のレールが配置されたものであり、2本1組の前輪用車軸と、前記前輪用車軸の両端に取り付けられた4輪の前輪と、2本1組の後輪用車軸と、前記後輪用車軸の両端に取り付けられた4輪の後輪とを備えており、前記2本1組の前輪用車軸と前記2本1組の後輪用車軸の4本の車軸全てがモータで駆動され、前記4輪の前輪及び前記4輪の後輪の8輪の車輪全てが前記4本の車軸を介して前記モータで駆動され、前記8輪の車輪は、1本の車軸の両端の2輪の車輪が前記分離部上にあるときに、残りの6輪の車輪が前記第1のレール上にあるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、8輪の車輪中の2輪が分離部上にあるときでも、他の6輪はレール上にあるので、自走台車は水平状態が損なわれることなく安定した姿勢を維持でき、かつ他の6輪全てがモータで駆動されるため、走行に十分な駆動力を維持できるので、自走台車の安定した走行が可能になる。
【0010】
前記本発明の自走台車においては、直流電源と、前記直流電源からの直流を交流に変換するインバータとをさらに備えており、前記モータは交流モータであり、前記2本1組の前輪用車軸を駆動する第1のモータと前記2本1組の後輪用車軸を駆動する第2のモータとを含んでおり、前記第1のモータ及び前記第2のモータは単一の前記インバータで駆動されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、直流モータ駆動式に比べて、電気回路が簡素化されるので低コストになり、かつ制御系を安定して動作させることができるとともに、第1及び第2の2つのモータは単一のインバータで駆動されるので、簡単な構成で2つのモータの回転数を合わせることができ、走行が安定する。このことは、分離部のあるレール上を自走台車を走行させる場合に有利になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は前記のとおりであり、8輪の車輪中の2輪が分離部上にあるときでも、他の6輪はレール上にあるので、自走台車は水平状態が損なわれることなく安定した姿勢を維持でき、かつ他の6輪全てがモータで駆動されるため、走行に十分な駆動力を維持できるので、自走台車の安定した走行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自走台車の外観斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自走台車の駆動機構を示す拡大斜視図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る自走台車の駆動系を示す概略平面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自走台車の正面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る自走台車の側面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る自走台車のモータ駆動の回路図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る自走台車が走行するレールの配置を示す斜視図。
【
図8】本発明の一実施形態に係る自走台車がレール上を走行中の状態を示す側面図。
【
図9】
図8の状態から自走台車の走行が進んだ状態を示す側面図。
【
図10】
図9の状態から自走台車の走行が進んだ状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。最初に
図1を参照しながら、自走台車1の概要について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自走台車1の外観斜視図である。自走台車1は、2本1組のレール2上を走行する。基台に2本1組の前輪用車軸4a、4bが取り付けられている。前輪用車軸4aの両端には前輪5aが取り付けられており、前輪用車軸4bの両端には前輪5bが取り付けられている。同様に、基台に2本1組の後輪用車軸6a、6bが取り付けられている。後輪用車軸6aの両端には後輪7aが取り付けられており、後輪用車軸6bの両端には後輪7bが取り付けられている。
【0015】
基台3には2個のモータが搭載されており、2本1組の前輪用車軸4a、4bは、一方のモータ8aで駆動され、2本1組の後輪用車軸6a、6bは、他方のモータ8bで駆動される。
図2は、自走台車の駆動機構を示す拡大斜視図であり、
図1のA部の拡大図である。
図3は自走台車1の駆動系を示す概略平面図である。
図2において、モータ8aのシャフト9には2個のギア10、11が取り付けられている。前輪用車軸4a、4bにはそれぞれギア12a、12bが取り付けられている。ギア10とギア12aとの間にはチェーン13aが架け渡されており、ギア11とギア12bとの間にはチェーン13bが架け渡されている。
【0016】
ギア10の回転はチェーン13aを介してギア12aに伝達され、前輪用車軸4aが回転駆動され、ギア11の回転はチェーン13bを介してギア12bに伝達され、前輪用車軸4bが回転駆動される。この駆動機構は、前輪側(
図1のA部)と後輪側(
図1のB部)で共通であり、
図3において、前輪側のモータ8aの駆動に伴って、2本1組の前輪用車軸4a、4bが駆動され、4個の前輪5a、5bが全て駆動され、後輪側のモータ8bの駆動に伴って、2本1組の後輪用車軸6a、6bが駆動され、4個の後輪7a、7bが全て駆動される。すなわち、モータ8a、8bの駆動に伴って、前輪5a、5b及び後輪7a、7bの8輪全てが駆動される。
【0017】
図4は自走台車1の正面図を示しており、
図5は自走台車1の側面図を示している。
図4に示したように、前輪用車軸4aの両端の前輪5aはそれぞれレール2上にある。
図5に示したように、前輪5a、5b及び後輪7a、7bはレール2上にある。
図4及び
図5では、すべての車輪は図示されていないが、8輪全てがレール2上にあり、前記のとおり8輪全てがモータ8a、8bで駆動されて、自走台車1は、レール2上をレールの長手方向に沿って走行する。
【0018】
図1及び
図5に示したように、自走台車1は、充電器20、バッテリ21及び制御盤22を搭載しており、図示されていないがインバータ23及びD/Aコンバータ24(
図6参照)を搭載している。これらの電装品により、モータ8a、8bが駆動される。
図6は、モータ駆動の回路図を示している。この回路は、交流モータを直流電源であるバッテリで駆動させるものである。
【0019】
以下、数値例を示しながら説明する。
図6において、バッテリ21は充電器20で充電され、交流100Vが直流24Vに変換される。バッテリ21からの直流24VはD/Aコンバータ24で単相交流200Vに変換される。この単相交流200Vは、インバータ23で3相交流200Vに変換される。モータ8a、8bは交流モータであり、いずれも単一のインバータ23で駆動される。インバータ23により、モータ8a、8bを駆動する3相交流200Vの周波数を変えることもできる。
【0020】
この構成によれば、電源はバッテリ21の直流電源であるため、給電ケーブルが不要となる。このため、低コストで製造が可能になるとともに、動作範囲の制約がなくなり、ケーブルの切断等による運転時の故障もなくなる。また、直流モータ駆動式に比べて、電気回路が簡素化されるので低コストになり、かつ制御系を安定して動作させることができる。
【0021】
さらに、
図6の回路では、2つのモータ8a、8bは単一のインバータ23で駆動されるので、簡単な構成で2つのモータ8a、8bの回転数を合わせることができ、走行が安定する。このことは、後に説明するとおり、本実施形態のように分離部のあるレール上を自走台車を走行させる場合に有利になる。
【0022】
以下、自走台車1の走行について具体的に説明する。
図7は、自走台車1が走行するレールの配置を示す斜視図である。
図7において、2本1組の第1のレール2と2本1組の第2のレール25とが交差して交差部を形成し、交差部において第1のレール2に分離部26が形成され、分離部26に第2のレール25が配置されている。
【0023】
図7のレール配置では、分離部26が形成されている第1のレール2と、分離部26が形成されていない第2のレール25とが交差している。後に説明するとおり、本実施形態に係る自走台車1は、分離部26が形成されている第1のレール2上の走行に適している。分離部26が形成されていない第2のレール25については、例えば、重量物を吊り上げて搬送するクレーンが走行する。第1のレール2と第2のレール25とのレール間隔が同一であれば、自走台車1は、第1のレール2と第2のレール25との両方を走行させることも可能である。
【0024】
図8は、第1のレール2上を走行中の自走台車1の側面図である。本図では図示していないが、自走台車1の基台3には搬送物である鉄材等が搭載される。
図8の状態では、前輪5a、5bと後輪7a、7bの全てが第1のレール2上にあり、8輪全てが第1のレール2上にある。前記のとおり8輪全てが2つのモータ8a、8bで駆動され、自走台車1は矢印a方向に進んでいく。
【0025】
図9は、
図8の状態から自走台車1の走行が進んだ状態を示している。本図の状態では、前輪5aが分離部26上にある。他方、第2のレール25の上端は第1のレール2の上端よりも下側にあり、前輪5aのフランジ部15(
図4参照)が第2のレール25に乗り上がらないようになっている。これに加えて、前輪5a以外の前輪5bと後輪7a、7bの計6輪は第1のレール2上にあり、自走台車1は水平状態が損なわれることなく安定した姿勢で矢印a方向に走行を継続することができる。
【0026】
図9の状態では、自走台車1の車輪の8輪中2輪が第1のレール2上にないため、自走台車1の駆動力が低下する。しかしながら、依然として6輪は第1のレール2上にあり、かつ6輪全てがモータ8a、8bで駆動されるため、走行に十分な駆動力を維持した状態で、自走台車1の安定した走行が可能になる。
【0027】
図10は、
図9の状態から自走台車1の走行が進んだ状態を示している。本図の状態では、前輪5aが分離部26上を通過しており、8輪全てが第1のレール2上にあり、安定した姿勢及び十分な駆動力を確保した状態で走行が可能になる。
【0028】
図10の状態から自走台車1の走行が進行すると(矢印a方向)、前輪5bが分離部26上にある状態となり、続いて後輪7aが分離部26上にある状態となり、後輪7bが分離部26上にある状態となる。いずれの場合も、
図9の状態と同様に、依然として6輪は第1のレール2上にあり、かつ6輪全てがモータ8a、8bで駆動されるため、走行に十分な駆動力を維持した状態で、自走台車1の走行が可能になる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記実施形態は一例であり適宜変更してもよい。例えば、
図1のA部及びB部に示したモータ8a、8bによる駆動機構は一例であり、8輪の車輪全てがモータで駆動されるものであればよい。このため、
図2においてチェーン13a、13bに代えてギアを用いてもよく、車軸4a、4bのそれぞれについて専用のモータを設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 自走台車
2 第1のレール
3 基台
4a,4b 前輪用車軸
5a,5b 前輪
6a,6b 後輪用車軸
7a,7b 後輪
8a,8b モータ
21 バッテリ(直流電源)
23 インバータ
25 第2のレール
26 分離部
【要約】
【課題】分離部のあるレール上を走行させる自走台車において、安定した走行が可能な自走台車を提供する。
【解決手段】交差部に分離部が形成されたレール2上を自走する自走台車1であって、2本1組の前輪用車軸4a、4bと、この両端に取り付けられた4輪の前輪5a、5bと、2本1組の後輪用車軸6a、6bと、この両端に取り付けられた4輪の後輪7a、7bとを備えており、4本の車軸全てがモータ8a、8bで駆動され、8輪の車輪全てが4本の車軸を介してモータ8a、8bで駆動され、8輪の車輪は、1本の車軸の両端の2輪の車輪が分離部上にあるときに、残りの6輪の車輪がレール2上にあるように配置されている。
【選択図】
図1