【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本主題に従って、請求項1に記載の消火システムによって成し遂げられる。
【0008】
消火システムは、耐圧消火剤容器を含む。このタイプの消火剤容器は、例えば、加圧下にまたは加圧せずに消火剤、例えば水、を中に貯蔵しておけるスチールシリンダであり得る。スチールシリンダの内壁を腐食から保護するいわゆるライナをスチールシリンダ内に設けることが可能である。さらに、消火剤容器は、例えば、複合容器であり得、その複合容器は、例えばプラスチック複合材料、好ましくはプラスチック繊維複合材料から成る。このことに関してはタイプ4複合容器が特に適している。繊維複合材料は、例えばガラス繊維複合材料または炭素繊維複合材料であり得る。
【0009】
好ましくは少なくとも1つの開口部が消火剤容器に配置される。その開口部は、普通は出口としてボトルの首に設けられるが、好ましくは複合容器の場合、開口部は消火剤容器の他の任意の領域に設けられてもよい。開口部は、出口として構成され得るだけではなくて、本主題による開口部は入口であるか、または単に、加熱手段および/もしくはセンサを消火剤容器の中へ導入するサービス開口部としても形成されることが可能である。入口を介して消火剤容器の中に消火剤を導入することができ、あるいは、ツーボトルシステムの場合には、消火剤を消火剤容器の外へ排出するために推進ガスを消火剤容器の中へ推進させることができる。
【0010】
好ましくは開口部にパイプが配置される。開口部が出口であるときに、このパイプは好ましくは消火剤容器内においてライザーパイプとして形成され、このライザーパイプを介して消火剤容器から消火剤を排出することができる。ライザーパイプは、開口部においてアダプター部材の中に至り、消火剤容器の外で出口パイプに転換される。ライザーパイプと出口パイプとは1個の部材でも、数個の部材でもあり得る。アダプター部材は、パイプが容器の内部へ耐圧式に案内されるように、好ましくは開口部にあるパイプのシールとして構成され得る。
【0011】
本主題においては、消火剤は、消火剤自体が貯蔵されている場所で、すなわち消火剤に対して直接に、熱せられるのが一番良いということが分かっている。このことに関して、加熱システムを消火剤容器の内部に配置することが提案される。しかし、消火剤容器の耐圧性を最適化するためには、消火剤容器になるべく少ない開口部を設けるのが有利である。消火剤容器には、とにかく出口開口部が設けられるのであるから、その開口部に配置されるパイプに加熱手段を設け、これにより、その開口部を通して消火剤容器の内部へ案内される加熱手段およびパイプの二重パイプを作るのが好都合である。
【0012】
パイプおよび加熱手段が好ましくは1つのアセンブリを形成するように、加熱手段はパイプ上に直接配置される。平らな加熱手段は、パイプの側面上に配置され、少なくとも部分的にその側面の周りに係合する。加熱手段は、好ましくは、均一な基板において少なくとも1つの加熱抵抗器を案内する平らな部品として形成される。展開された状態において、加熱手段は、パイプの周りに巻き付けることのできる平らな部品であり得る。加熱手段を開口部に、特にアダプター部材によって、クランプすることができ、ひいては開口部をパイプおよび加熱手段に関して密封できるように、少なくとも加熱手段の内部の領域においては空隙が存在しないことが好ましい。
【0013】
加熱手段が加熱スリーブとして形成されるときには加熱手段をパイプ全周に巻き付けるのが有利であることが分かっている。加熱スリーブは、好ましくは中実材料から形成される平らな部品として形成され得る。中実材料の中で少なくとも1つの加熱抵抗器が加熱コイルとして案内され得る。
【0014】
1つの実施形態により、加熱スリーブがパイプ全周に係合することが提案される。特にパイプの縦軸に沿って部分的に、特に開口部の領域で、全周にわたって係合させれば、開口部が密封され得ることを保証することができる。さらに、周りに係合させれば、消火剤を熱するための加熱スリーブの表面を出来得る限り大きくすることができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、パイプの周りに巻かれる加熱ワイヤから加熱手段を形成することもできる。パイプは、好ましくはライザーパイプである。加熱手段を、パイプの側面の周りにワイヤ形加熱手段として巻くことができる。ワイヤ形加熱手段を少なくとも部分的にパイプの中に配置して固定することもできる。
【0016】
さらに、加熱スリーブは、少なくとも開口部の領域と消火剤容器の内部とにおいてパイプの周りに係合することができる。加熱スリーブが消火剤容器の内部でパイプの周りに係合すれば、有効加熱表面が最大となる。加熱スリーブが開口部の領域でパイプの周りに係合するならば、前述のように、消火剤容器を加熱スリーブと開口部の内周との間で気密におよび/または液密に密封することができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、パイプは、加熱手段を伴う二重壁パイプを形成することができる。加熱手段はパイプの周りに配置された外側パイプであり得、好ましくはパイプとその外側パイプとの間に環状のスペースが形成される。外側パイプは好ましくは金属性であり、少なくとも1つの、好ましくは2つの加熱抵抗器がパイプと外側パイプとの間の環状スペース内において案内される。加熱抵抗器は好ましくはパイプと外側パイプとの間の環状スペースにおいて巻かれる。
【0018】
1つの実施形態により、環状スペース内の加熱抵抗器により満たされない容積を非電導性材料で満たすことが提案される。ここで好ましくは非伝導性金属合金または金属酸化物、特にマグネシウム合金もしくは酸化マグネシウムまたはそれぞれの合金の酸化物が適している。
【0019】
1つの実施形態により、加熱手段を平らな基本体から形成することが提案され、この基本体の中には少なくとも1つの加熱抵抗器が配置されている。加熱手段は好ましくは中実材料の平らな部分から形成され、その材料の中を加熱抵抗器が案内される。この目的のために、加熱抵抗器を基本体の中実材料に埋め込むことができる。基本体の中実材料は好ましくは非導電性である。
【0020】
1つの実施形態により、加熱手段が金属性加熱スリーブであることが提案される。加熱スリーブは金属性であるから、スリーブと開口部の内周との間の開口部を特に容易に密封することができる。なぜならば、開口部に配置されたライザーパイプを従来密封していたのと同じ方法で例えば圧縮嵌め(compression fitting)またはOリングを用いて金属性加熱スリーブを適宜密封することができるからである。
【0021】
スリーブは、特に非伝導性金属合金または非伝導性金属酸化物から、例えばマグネシウム成分を伴って、形成される。加熱抵抗器は、好ましくは加熱スリーブの材料の中に配置され、好ましくは加熱スリーブの材料に埋め込まれて全周にわたり加熱スリーブの材料により係合される。
【0022】
加熱スリーブまたは加熱抵抗器および加熱スリーブの材料は、好ましくは、破壊されずに塑性変形され得る材料から形成される。特に、その塑性変形能は、加熱スリーブを破壊させずにパイプの周囲に巻き付け得るような塑性変形能である。従って、パイプまたはパイプの半径が、加熱スリーブの材料により可能にされる最小曲げ半径を決定する。加熱スリーブは好ましくはパイプの周りに曲げられまたは巻かれる。加熱スリーブをパイプの周りに巻くことに加え、パイプを消火剤容器の中で曲げることができる。従って、パイプと共に、加熱スリーブも消火剤容器の内部で曲げることができる。好ましくは、パイプは消火剤容器の外壁の方向に曲げられる。
【0023】
前述のように、特に開口部が出口開口部であるならば、普通、消火剤容器内にライザーパイプを設ける。このことに関して、1つの実施形態によれば、パイプはライザーパイプである。
【0024】
1つの実施形態により、加熱手段を少なくとも開口部の領域および消火剤容器の内部においてパイプ上に配置することが提案される。加熱手段を開口部の領域に配置すれば密封が容易となり、加熱手段を消火剤容器の内部に配置すれば加熱手段は消火剤に直接作用し得るようになる。
【0025】
1つの実施形態により、好ましくは消火剤出口である開口部にバルブを配置することが提案される。特に、消火剤容器の内部のパイプまたはライザーパイプはアダプター部材を介してバルブの中に至る。パイプはバルブを介して開閉され得る。加熱手段は、パイプに沿ってバルブから開口部を介して消火剤容器の内部へ延びることができる。従って加熱手段はバルブから開口部を介して消火剤容器の内部へ延びる。加熱抵抗器は、消火剤容器の外で、特にバルブまたはアダプター部材の領域で、電気的に接続され得る。
【0026】
加熱手段は、好ましくは、まず初めに、加熱が行われるべき領域での電気抵抗より小さい電気抵抗を有する給電線を有するように形成される。従って、加熱手段は好ましくは給電線領域と加熱領域とを有し、両方の領域が好ましくはパイプ上に同じ方法で、しかし異なる電気抵抗を有するように、配置される。給電線領域は、好ましくは、パイプ長さの最大10%、特に最大15%、容器の内部へ延びる。このことは、容器が100%未満、特に約90%の充填度で充填されるに過ぎないとき、特に好ましい。従って、加熱装置は、上側領域、すなわち作動中消火剤と接触しない上側領域、が熱せられないように、構成されるべきである。給電線領域での電気的接続は最小限の電力損失を有するべきである。
【0027】
1つの実施形態により、パイプと加熱手段とを、両者が互いに直に接しているように、据え付けることが提案される。「互いに直に接している」という表現は、特にパイプと加熱手段との間に空隙が存在しないことを意味する。好ましくは、加熱手段とパイプの側面との間に、加熱手段をパイプに接着または張り付けることにより密封効果を生じさせる接着剤が設けられる。
【0028】
消火流体が漏れないようにして、消火剤容器を消火流体で満たし、さらに、消火剤容器内にガス圧を確立できるようにするためには、開口部を密封することが必要である。パイプ自体は好ましくはバルブによって密封される。加熱スリーブの外壁は、消火剤容器の開口部に対して密封されなければならない。1つの実施形態により、この密封は好ましくは液密および/または気密である。
【0029】
1つの実施形態により、加熱手段は、パイプと共に、二重壁シリンダを形成する。加熱手段は、その側面上で開口部においてシールを通って案内される。このことにより、消火剤容器がそのシールにおいて液密および/または気密に密封されるように、加熱手段の側面と開口部または開口部の内周との間のシールが可能になる。
【0030】
すでに言及したように、加熱手段は好ましくは加熱抵抗器である。1つの実施形態により、この加熱抵抗器に消火剤容器の外で電気接続を与えることができるので、この電気接続を介して加熱抵抗器に電力を供給することができる。
【0031】
目的達成のために、消火システムも提案され、このシステムでは、加熱手段は、互いに独立して接続され得る少なくとも2つの加熱回路を有する。互いに独立して接続可能な2つの加熱回路の結果として、それぞれの環境条件に依存して消火剤を加熱し得ることが分かっている。ここで、普通は、正常作動時に消火剤が冷えることを比較的小さな電源によって防止することができる。凝固点のあたりの周囲温度で消火剤が冷えるのを防ぐために50Wから数百Wの加熱電力を用いれば十分であり得る。
【0032】
周囲温度に自動的に適合させられる様々な発熱量を加熱手段に供給することも提案される。
【0033】
しかし、例えば鉄道車両において、好ましくは移動式消火装置が比較的長い時間にわたって静止している間、消火剤を非常に低い温度で液体状態に保つことはもはや不可能である。そのとき消火剤は凍結し、消火システムを速やかに作動可能にし得るように急速に解凍されなければならない。この目的のために、第2加熱回路をオンに切り替えまたは電気エネルギーを供給することができ、その第2加熱回路を第1加熱回路より大きな電力で作動させることができる。さらに、環境条件に適合させてケースバイケースで電気加熱エネルギーを供給することができる。
【0034】
特に、それらの加熱回路を、異なる線断面積の加熱抵抗器を用いて作動させることができる。小さい方の線断面積を有する加熱抵抗器をより小さな電力向けに構成することができ、それに対応する抵抗率の故にこの加熱抵抗器は比較的小さな電力を用いた場合にも電気エネルギーを効率よく加熱エネルギーに変換することができる。より大きな線断面積の加熱抵抗器を有する加熱回路は、高速加熱処置のために使用され得る。この場合、より小さな線断面積を有する加熱導体における電流強度は大きすぎて、その加熱導体は破壊されてしまうであろう。従って、より大きな電流強度向けに構成されている第2加熱回路。
【0035】
2つの加熱回路は、互いに独立して接続され得るけれども、できる限り大きな発熱量を達成するように同時に電力を供給されてもよい。
【0036】
1つの実施形態により、加熱回路がそれぞれ少なくとも1つの加熱抵抗器を持つことが提案される。加熱抵抗器は、好ましくは発熱量および/または線断面積にそれぞれ適合した抵抗率を有する加熱ワイヤである。線断面積は、特に、好ましくは2つの加熱抵抗器について異なるアンペア容量に関連する。
【0037】
1つの実施形態により、第1加熱抵抗器が第2加熱抵抗器より小さい抵抗率を持つことが提案される。より小さい電気抵抗を有する加熱抵抗器は、より大きな電流を伝導し、好ましくはより大きな電力で作動させられる。従って、熱出力に変換される加熱抵抗器を介しての電力損失は、この加熱抵抗器においては、より大きな抵抗率を有する加熱抵抗器においてよりも大きい。
【0038】
2つの加熱抵抗器は、好ましくは、それぞれ自身に加えられる電気発熱量または電力に関して、それらの加熱抵抗器の融点が好ましくは互いに異なるように、構成される。異なる加熱抵抗器により、発熱量をそれぞれの発熱量に、特にそれぞれに供給される電力に、適合させることが可能である。
【0039】
既に言及したように、2つの加熱回路を各場合に異なる発熱量、特に異なる電力で、作動させることができる。このことに関して、第1加熱抵抗器を第1電圧源に接続し、第2加熱抵抗器を第2電圧源に接続するのが得策である。それらの電圧源の少なくとも1つは好ましくは直流電圧源である。
【0040】
既に言及したように、本主題による消火システムは特に消火流体を様々な状況において加熱するのに適するので、加熱抵抗器に異なる電圧が供給されるように電圧源を異なる電圧で作動させるのが有利である。このことに関して、電圧は好ましくは直流電圧である。
【0041】
消火流体の特定の温度を長時間にわたって維持するために低い直流電圧、例えば24Vまたは110Vの直流電圧が適する。110Vの直流電圧は解凍目的にも使用することができ、24Vは液体状態を保つために使用することができる。両方の電圧が例えば蓄電池から供給され得る。第2直流電圧は好ましくは車載供給システムの電圧供給であり得る。特に、第2直流電圧は380Vまたは400Vであり得る。この高い方の電圧は、例えば加熱エネルギーを制御するために、パルス状に供給され得る。
【0042】
加熱回路は、好ましくは加熱手段の共通ハウジングに封入される。特に、加熱回路は加熱スリーブ内に配置される。加熱手段は、消火剤容器の中におよび/または消火剤容器上に配置され得る。特に、加熱スリーブは、消火剤容器の中でライザーパイプ上に配置され得る。加熱スリーブを消火剤容器の外側面上に配置することができ、特に加熱スリーブを加熱マットの形で消火剤容器の周りに巻くことも可能である。
【0043】
加熱手段を、単に消火剤容器の開口部の領域でアダプターまたはアダプター頭部上に配置することもできる。加熱手段を単に消火剤容器の外側に配置する場合、熱輸送をより良くするためにパイプの、特にライザーパイプの、改善された熱伝導率を用いることができる。この理由から、金属材料、好ましくはステンレススチール製のライザーパイプより大きな熱伝導率を有する銅材料、からライザーパイプを形成することも提案される。アダプター頭部だけに加熱手段を配置することは、独立であると見なされるべきであるが、本明細書に記載されるように、他の全ての特徴と組み合わされてもよい。
【0044】
1つの実施形態により、少なくとも1つの温度センサを消火剤容器の中または消火剤容器上に配置することが提案される。温度センサにより、消火剤容器の温度および/または消火剤の温度を検出することが可能である。温度センサにより測定された温度を評価することにより、加熱手段のスイッチングオンを制御することができる。
【0045】
この理由から、1つの実施形態により、制御手段が少なくとも1つの温度センサにより検出された温度に依存して加熱抵抗器への電圧印加を制御することが提案される。例えば、或る限界温度より下がったならば加熱回路をオンに切り替え、その第1限界温度より高い第2限界温度を超えたならば加熱回路をまたオフに切り替えるように、ヒステリシスを制御手段にプログラムすることができる。
【0046】
消火システムに、好ましくは高圧水霧システムに用いるために、消火剤容器は耐圧性でなければならない。ここで、特に5バール、好ましくは50バール、特に100バールの耐圧性が可能である。
【0047】
1つのさらなる態様は消火システムを作動させる方法である。この方法においては、消火剤容器のおよび/または消火剤容器内の消火剤の少なくとも1つの温度が記録される。測定された温度が第1限界温度より下がると、初めに第1加熱回路だけが起動される。測定された温度が、第1限界温度より低い第2限界温度より下がると、第2加熱回路が起動される。第2加熱回路を、第1加熱回路に加えてまたは第1加熱回路の代わりに、起動させることができる。
【0048】
ヒステリシス制御を形成することにより、第2限界温度を超えると、第2加熱回路は初めは、第2限界温度より高い第3限界温度に到達するまで、起動したままであり、その後に初めて第2加熱回路は停止される。第1限界温度より高い第4限界温度を超えて初めて第1加熱回路が停止されるように、第1限界温度についてまたは第1加熱回路についてヒステリシス制御を確立することもできる。
【0049】
加熱回路が起動されると、加熱回路は各々電圧を加えられる。特に、それらの電圧のうちの1つは鉄道車両の車載供給システムであり得る。
【0050】
消火剤を様々な温度で使用するために、第1加熱回路を第2加熱回路より小さな発熱量で作動させることは有意義である。
【0051】
次に、実施形態を示す図面を参照して本主題をより詳しく記載する。