(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474970
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】クリノスタット
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-121939(P2014-121939)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-1997(P2016-1997A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513070484
【氏名又は名称】株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】弓削 類
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕美
(72)【発明者】
【氏名】神野 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】春園 嘉英
【審査官】
市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−009852(JP,A)
【文献】
特開2010−193910(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/130845(WO,A1)
【文献】
特開2003−070458(JP,A)
【文献】
特開2000−334286(JP,A)
【文献】
特開昭62−294077(JP,A)
【文献】
特表2008−542789(JP,A)
【文献】
“新規のヒト間葉系幹細胞大量培養展示のお知らせ”, [online], 2014.2.25, 株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ, [2018.6.27 検索], インターネット<URL: http://www.spacebio-lab.com/pdfs/press%20140225.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動装置と、
x方向の軸心を有するx回転軸と、
前記x回転軸に取り付けられたx回転体と、
前記x回転体に取り付けられ、x方向と直交するy方向の軸心を有するy回転軸と、
前記y回転軸に取り付けられ、培養容器を収容するy回転体と、
前記回転駆動装置により回転される回転主軸と、
前記回転主軸の回転力を前記y回転軸に伝達する回転伝達機構と、
前記回転主軸と前記x回転軸との間で回転力を伝達するクラッチであって、前記回転主軸の一方の方向の回転を前記x回転軸へ伝達し、他方の方向の回転を切断するラチェット機構若しくはワンウェイクラッチと、
未分化維持培養の運転モード若しくは分化促進培養の運転モードを、前記回転駆動装置の回転を制御することにより切り替える制御装置とを有することを特徴とするクリノスタット。
【請求項2】
請求項1に記載のクリノスタットにおいて、
前記x回転軸は軸心にx方向の中空を有し、
前記回転主軸は、前記x回転軸の中空内に同心に配置されていることを特徴とするクリノスタット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養に用いられるクリノスタットに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医学においては、細胞を未分化のまま培養して増殖させ、適切な分化誘導をして生体への移植を行う。
多能性幹細胞は、無重力の状態において培養することで、分化を抑えた状態で増殖可能であることが知られている(未分化維持培養)。また、骨や軟骨などに分化させる場合、地球の重力加速度よりも大きい過重力において適当な培地と共に培養すると分化が促進されることも知られている(分化促進培養)。地上において、このような培養を行うために、無重力状態で多能性幹細胞を培養する重力分散型培養装置や、過重力状態で多能性幹細胞を培養する過重遠心培養装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、本体に取り付けられたモータにより外側フレームを回転し、外側フレームに取り付けられたモータによりさらに内側フレームを回転させて、内側フレームに同体に接続された培養容器を回転させる技術が開示されている。多能性幹細胞の分化を押さえて培養する場合には2軸回転させ、一方、分化を誘導する場合には、内側フレームの回転を止めた状態で外側フレームを回転させる1軸回転を行う。これにより、未分化維持培養と分化促進培養とを1つの装置により実現している。
また、特許文献2には、回転枠にモータを取り付けることによるモータ故障を回避するために、モータの固定枠に取り付けられたモータにより、2軸回転を実現して未分化維持培養を行うクリノスタットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-9852号公報
【特許文献2】特許第4974283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術においては、外側フレーム、内側フレームそれぞれにモータを配置し、さらに内側フレームを回転させるモータは、外側フレームに取り付けられているため、外側フレームの回転半径が大きく、外形の寸法も大きくなる。通常、細胞培養は温度、湿度、二酸化炭素濃度を適切な条件に維持したインキュベータの中で行われる。各研究機関で使用されているインキュベータのサイズは、160〜170Lクラスが一般的である。特許文献1の装置を160〜170Lクラスのインキュベータに入れると、インキュベータ内の空間をほぼ占有してしまい、空いたスペースでディッシュなどを用いて細胞培養をすることができにくかった。
特許文献2の技術は、2軸回転の装置であるため、重力分散型培養専用であり、1軸回転をさせることができない。従って、過重遠心培養ができない。また、露出状態にある円板の弾性体を介して回転力を内側の回転体に伝達させるため、長期間使用すると摩耗し回転不良を引き起こす。
【0006】
本発明はクリノスタットを小型化して、クリノスタットが設置されるべきインキュベータ内を有効に利用できるようにし、かつ、未分化維持培養と分化促進培養を1台のクリノスタットで行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転駆動装置と、x方向の軸心を有するx回転軸と、
前記x回転軸に取り付けられたx回転体と、前記x回転体に取り付けられ、x方向
と直交するy方向の軸心を有するy回転軸と、前記y回転軸に取り付けられ、培養容器を収容するy回転体と、
前記回転駆動装置により回転される回転主軸と、前記回転主軸の回転力を前記y回転軸に伝達する回転伝達機構と、前記回転主軸と前記x回転軸との間で回転力を伝達するクラッチであって、前記回転主軸
の一方の方向の回転を前記x回転軸へ伝達し、他方の方向の回転を切断するラチェット機構若しくはワンウェイクラッチと、未分化維持培養の運転モード若しくは分化促進培養の運転モードを、前記回転駆動装置の回転を制御することにより切り替える制御装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
回転を制御するだけで、1台の回転駆動装置で、未分化維持培養(x回転体とy回転体を回転させる)と分化促進培養(x回転体を停止させたままy回転体を回転させる)ができ、かつ、回転駆動装置が1台となるため、クリノスタットの小型化が可能となり、クリノスタットがインキュベータ内を占有する容積が小さくなる。そのため、空いた空間で他の培養が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インキュベータに格納されたクリノスタットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、本実施例によるクリノスタット100は、固定フレーム23、回転駆動装置22、x回転体1、及び培養容器30を収容するy回転体3を有している。培養容器30には、細胞と培地とが封入される。クリノスタット100は、温度、湿度、二酸化炭素濃度を適切な条件に維持可能なインキュベータ200の内部に設置され、インキュベータ200の外側にクリノスタット100を制御する制御装置300を配置している。回転駆動装置22はステップモータであり、回転数の制御が制御装置300により可能である。制御装置300は、後述するように、未分化維持培養の運転モードと、分化促進培養の運転モードを、回転駆動装置22の回転を制御することにより切り替える。
【0011】
x回転体1は図中x方向の軸心を有するx回転軸2により回転可能であり、y回転体3はx回転体1内においてx軸と異なる方向のy方向の軸心を有するy回転軸4により回転可能である。よってy回転体3は、x回転軸2、y回転軸4により回転するので、クリノスタット100は2軸回転を実現可能となっている。尚、31は、培養容器30をy回転体3に収容したときに、培養容器30の脱落を防止するストッパである。
【0012】
図2は、クリノスタット100の断面を示す側面図である。x回転体1は、x回転軸2に取り付けられており、x回転軸2は、x回転軸支持軸受13を介して固定フレーム23に取り付けられている。y回転体3は、x回転軸2と平行ではないx回転軸2に取り付けられており、y回転軸4は、y回転軸支持軸受20を介してx回転体1に取り付けられている。本実施例では、x回転軸2とy回転軸4とは交差している。
【0013】
一方、回転主軸19は、固定フレーム23に固定されている回転駆動装置22により回転される。x回転軸2は中空となっており、回転主軸19と同心同軸である。一方、回転主軸19はx回転軸2内において、軸受21により支持されており、x回転軸2とは独立して回転できるようになっている。
【0014】
回転主軸19からy回転軸4までの回転伝達は、x回転体1上において、傘歯車14a、14b、伝達軸15a、プーリー16、18、タイミングベルトからなる回転力伝達機構40によりなされる。y回転軸4から上流に向けて説明すると、y回転軸4へは傘歯車14a、14bを介して回転力が伝達されている。傘歯車14bは、軸受15bに支持された伝達軸15aに取り付けられている。伝達軸15aはプーリー16が取り付けられている。プーリー16とプーリー18の間には、タイミングベルト17がかけ回されている。プーリー18は、回転主軸19に取り付けられており、
【0015】
さらに回転主軸19の回転は、歯車5を介して歯車6に伝達されるようになっている。歯車6は、x回転軸駆動補助軸10を中心に軸受12に支持されて回転するようになっている。クラッチ9は、歯車6とx回転軸駆動補助軸10との間に設けられており、歯車6の回転をx回転軸駆動補助軸10に伝達し、或いは抑止する。x回転軸駆動補助軸10には、歯車7が取り付けられており、x回転軸2に取り付けられた歯車8に回転を伝達する。x回転軸駆動補助軸10は、x回転軸駆動補助軸支持軸受11を介して固定フレーム23に取り付けられている。すなわち、クラッチ9は、回転主軸19の回転をx回転軸2に伝達するか否かを切り替えている。
【0016】
図3は、クラッチ9を説明する図である。クラッチ9は、一方の方向のみに回転を伝達するラチェット機構若しくは、ワンウェイクラッチであって、本実施例においては、回転板24、ストッパ26、支点ピン28およびスプリング29を有している。
【0017】
回転板24はガンギ車状の形をしており、外周には引っ掛かり部25が数カ所設けられている。回転板24はx回転軸駆動補助軸10に固定されており、回転板24が回転すると、x回転軸駆動補助軸10も一緒に回転する。
【0018】
ストッパ26は、歯車6と支点ピン28で連結されており、ストッパ26は支点ピン28を中心に回転可能となっている。スプリング29は歯車6とストッパ26の間に取り付けられており、ストッパ26は、スプリング29によって、常に回転板24に押し付けられる方向に力を受けている。歯車6が回転すると、ストッパ26、支点ピン28およびスプリング29も一緒に回転する。
【0019】
次に、クラッチ9の動作について説明する。
歯車6が図面上で反時計方向に回転すると、歯車6とともにストッパ26、支点ピン28およびスプリング29は反時計方向に回転する。その際、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、スプリング29の力で回転板24に押し付けられながら回転する。回転を続けると、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、回転板24側の引っ掛かり部25に接触する。さらに回転を続けると、歯車6の回転力がストッパ26を介して回転板24およびx回転軸駆動補助軸10に伝わり、回転板24およびx回転軸駆動補助軸10は反時計方向に回転する。
【0020】
歯車6が図面上で時計方向に回転すると、歯車6とともにストッパ26、支点ピン28およびスプリング29は時計方向に回転する。その際、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、スプリング29の力で回転板24に押し付けられながら回転する。回転を続けると、ストッパ26は回転板24によって、支点ピン28を中心に歯車6側に回転させるような力を受ける。ストッパ26は、スプリング29を押し縮めながら歯車6側に回転するため、回転板24側の引っ掛かり部25とストッパ26側の引っ掛かり部27は引っ掛かることはない。よって、歯車6が時計方向に回転を続けても、回転板24およびx回転軸駆動補助軸10は回転しない。
【0021】
未分化維持培養の運転モードを行う場合は、培養容器30をy回転体3に搭載した後、制御装置300により回転駆動装置22を歯車6が
図2の図面で反時計方向に回転する方向に運転する。回転駆動装置22の回転は、回転主軸19、プーリー18、タイミングベルト17、プーリー16、伝達軸15b、傘歯車14a、14bによってy回転軸4およびy回転体3に伝えられ、y回転軸4およびy回転体3は回転する。
【0022】
また、回転駆動装置22の回転は、回転主軸19に取り付けられた歯車5を介して歯車6に伝えられる。歯車6が図面上で反時計方向に回転すると、歯車6とともにストッパ26、支点ピン28およびスプリング29は反時計方向に回転する。その際、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、スプリング29の力で回転板24に押し付けられながら回転する。回転を続けると、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、回転板24側の引っ掛かり部25に接触する。さらに回転を続けると、歯車6の回転力がストッパ26を介して回転板24およびx回転軸駆動補助軸10伝わり、回転板24およびx回転軸駆動補助軸10は反時計方向に回転する。x回転軸駆動補助軸10が回転すると、歯車7および歯車8を介してx回転軸2およびx回転体1が回転する。
【0023】
培養容器30は、任意の姿勢で回転され、培養容器30に作用する重力加速度は、培養容器30の全方向に作用する。一定の時間が経過すると、培養容器30に作用している重力加速度は、培養容器30の全方向に均一に作用することになり、重力加速度の時間平均値は、培養容器30の全方向に対して0となる。よって、未分化維持培養では、宇宙環境に近い模擬微小重力環境を得ることができる。このような模擬微小重力環境下で細胞培養を行うと、細胞は未分化を維持したまま培養することができる。
【0024】
分化促進培養の運転モードを行う場合は、培養容器30をy回転体3に搭載した後、図示しない制動機構でx回転体1は任意の位置に停止させたまま、制御装置300により回転駆動装置22を歯車6が
図2の図面で時計方向に回転する方向に運転する。y回転軸4の軸心の方向は、水平に対して垂直でなくても良く、また垂直でも良い。回転駆動装置22の回転は、回転主軸19、プーリー18、タイミングベルト17、プーリー16、伝達軸15a、傘歯車14a、14bによってy回転軸4およびy回転体3に伝えられ、y回転軸4およびy回転体3が回転する。回転駆動装置22の回転数は、一定の回転数でも良いし、培養途中で変えても良い。
【0025】
また回転駆動装置22の回転は、回転主軸19に取り付けられた歯車5を介して歯車6に伝えられる。歯車6が図面上で時計方向に回転すると、歯車6とともにストッパ26、支点ピン28およびスプリング29は時計方向に回転する。その際、ストッパ26の先端にある引っ掛かり部27は、スプリング29の力で回転板24に押し付けられながら回転する。回転を続けると、ストッパ26は回転板24によって、支点ピン28を中心に歯車6側に回転させるような力を受ける。ストッパ26は、スプリング29を押し縮めながら歯車6側に回転するため、回転板24側の引っ掛かり部25とストッパ26側の引っ掛かり部27は引っ掛かることはない。よって、歯車6が時計方向に回転を続けても、回転板24およびx回転軸駆動補助軸10は回転しない。x回転軸駆動補助軸10が回転しないため、x回転軸駆動補助軸10、歯車7、歯車8、x回転軸2およびx回転体1も回転しない。
【0026】
培養容器30はy回転軸4を中心に回転し、回転半径と、角速度の2乗に比例した遠心力が回転半径方向に作用する。培養容器には、この遠心力と重力加速度の合力が作用することになる。地球の重力加速度の3倍程度の合力を発生させるためには、y回転体3をおよそ100〜200回転/分程度で高速回転させる。
【0027】
本実施例によれば、制御装置300により回転駆動装置22の回転方向を変えるだけで、クリノスタット100を未分化維持培養用の装置にしたり、分化促進培養用の装置にしたりすることができるという効果がある。また、x回転体1とy回転体3の回転に対して、固定位置にある回転駆動装置22が1つで回転力を与えることができるので、クリノスタットの小型化が可能となり、クリノスタットがインキュベータ内を占有する容積を小さくできる。そのため、空いた空間で他の培養が可能となる。
【0028】
図4は、クラッチ9をクラッチ90により置き換えた他の実施例を示している。
分化促進培養を行うには、重力加速度と遠心力とによる適当な合力を得るためにy回転体3を回転させる速度は決まってくるが、未分化維持培養により模擬微小重力環境を再現するには、早く回転させる必要はないことが出願人の実験で分かってきた。例えば、10回転/分以下の低速回転数でx回転体1とy回転体3とを回転させれば良く、回転速度の差は少なくとも1桁相違する。
【0029】
クラッチ90は、このような回転数の差を利用して、歯車6の回転が遅いときには回転力をx回転軸駆動補助軸10に伝達し、歯車6の回転が早いときにはx回転軸駆動補助軸10への回転力の伝達を遮断する。クラッチ90は、x回転軸駆動補助軸10と同心に固定された円筒91、円筒91の側面に対向した制動片92、制動片92を歯車6から円筒91に案内する案内路93及び制動片92を円筒91の側面に押しつけるように付勢するバネ94とを有している。
【0030】
未分化維持培養を行う場合は、培養容器30をy回転体3に搭載した後、制御装置300により低い回転速度で回転駆動装置22を回転させる。制動片92は、バネ94に押しつけられた状態であり、円筒91と歯車6とは相対的に固定されるため、歯車6の回転はx回転軸駆動補助軸10へ伝達され、x回転体1とy回転体3とが回転する。
【0031】
分化促進培養を行う場合は、培養容器をy回転体3に搭載した後、制御装置300により回転駆動装置22を高速に回転させる。制動片92は、遠心力によりバネ94を押し縮め、制動片92は円筒91の側面との制動を保てなくなり、x回転体1には回転駆動装置22の回転力は伝達しなくなる。遠心力は角速度の2乗で関係するため、制御装置300に対して未分化維持培養の時の回転数に対して少なくとも1桁相違させて分化促進培養の回転数を設定しておけば、クラッチ90が所望のとおり作動することができる。y回転体3の回転によるジャイロ効果により、y回転体3のy回転軸4の軸方向は、ほぼ一定の方向に維持される。
【0032】
上記実施例においては、回転主軸19の回転をy回転軸1に伝達するために、傘歯車14a、14b、プーリー16,18、タイミングベルト17による回転力伝達機構40を用いているが、これ以外の周知の伝達要素を組み合わせた回転力伝達機構を用いても良い。例えば、タイミングベルト17の代わりに歯車を用いて回転主軸19の回転を伝達軸15aへ伝達しても良く、また、傘歯車14a、14bの代わりに冠歯車やねじ歯車を用いても良い。または、回転主軸19とy回転軸4の間をフレキシブルシャフトでつないでも良い。また、x回転体1の内側で、y回転体2を回転させたが、逆でも良い。
【符号の説明】
【0033】
1:x回転体
2:x回転軸
3:y回転体
4:y回転軸
5−8:歯車
9,90:クラッチ
10:x回転軸駆動補助軸
11−13,20,21:.軸受
14a、14b:傘歯車
15a:伝達軸
16,18:プーリー
17:タイミングベルト
19:回転主軸
22:回転駆動装置
23:固定フレーム
24:回転板
25,27:引っ掛かり部
26:ストッパ
28:支点ピン
29:スプリング
30:培養容器
40:回転力伝達機構
91:円筒
92:制動片
93:案内路
94:バネ
100:クリノスタット
200:インキュベータ
300:制御装置