(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持ベースと、この支持ベースに対して主旋回軸周りに旋回可能に連結された支持アームと、この支持アームに対して肘関節軸周りに回動可能に連結されたハンド保持アームと、このハンド保持アームに対して手首関節軸周りに回動可能に連結された少なくとも2つのハンドと、を備えたワーク搬送装置において、
上記支持ベースに対して上記支持アームを旋回させるための支持アーム用モータは、上記支持ベース内に配置されており、
上記支持アームに対して上記ハンド保持アームを回動させるためのハンド保持アーム用モータは、上記支持ベース内または上記支持アーム内に配置されており、
上記ハンド保持アームに対して上記少なくとも2つのハンドのそれぞれに対応してそれらを個別に回動させるための少なくとも2つのハンド用モータは、上記支持アーム内に配置され、
上記肘関節軸には、上記支持アームに対して上記ハンド保持アームを回動可能とするための関節軸と、上記少なくとも2つのハンドを個別に回動させるための動力を伝達する少なくとも2つの伝動軸とが同軸状に配置されており、
上記支持ベース、上記主旋回軸、上記支持アームおよび上記肘関節軸には、上記支持ベース内における上記支持アーム用モータが配置される領域および上記支持アーム内を気密保持する気密構造が設けられており、
上記支持アーム用モータの出力を減速する第1減速機構を有し、当該第1減速機構は、上記支持ベース内に配置されており、
上記ハンド保持アーム用モータの出力を減速する第2減速機構を有し、当該第2減速機構は、上記支持ベース内または上記支持アーム内に配置されており、
上記ハンド用モータの出力を減速する第3減速機構を有し、当該第3減速機構は、上記支持アーム内または上記ハンド保持アーム内に配置されていることを特徴とする、ワーク搬送装置。
上記肘関節軸において、上記関節軸は中空軸であり、上記同軸状の伝動軸は上記関節軸の内部に通挿されており、上記関節軸とこれを回動可能に支持する部材との間、上記伝動軸と上記関節軸との間、および上記伝動軸間には、気密シールが設けられている、請求項1に記載のワーク搬送装置。
上記支持アームは、相互に回動可能に連結された2またはそれ以上の支持アーム部材によって構成されており、最先端側の支持アーム部材に上記肘関節軸が位置している、請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク搬送装置。
上記ハンド保持アームは、相互に回動可能に連結された2またはそれ以上のハンド保持アーム部材によって構成されており、最先端側のハンド保持アーム部材に上記手首関節軸が位置している、請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【背景技術】
【0002】
図17に示すように、トランスファチャンバの周囲にプロセスチャンバが放射状に配置された処理システムにおいては、プロセスチャンバ間のワークの移送のためにトランスファチャンバ内に配置されるワーク搬送装置は、平面視においてワークを放射方向に直進移動させることができればよいため、たとえば特許文献1に示されているような、平行リンク機構を組み合わせた関節アーム式の搬送装置を用いることができる。このような搬送装置は、平行リンク機構のもつ機能により、少ない動力源により、ワークを保持するハンドの姿勢を維持しつつ、平面視においてこのハンドを直進移動させることができる。
【0003】
ところで、処理システムの占有面積を縮小してコンパクト化を図るため、
図18に示すように、トランスファチャンバTCを矩形とするとともに、その対向する長辺に沿って複数(図示例では2個)の矩形プロセスチャンバPCを配置したような新処理システムが提案されている。このような新処理システムでは、長辺に対するハンドの姿勢を同等に維持しつつ、この長辺に沿った2個のプロセスチャンバPC間のワーク移送を行う必要があるため、放射方向への直進移動が可能であるにすぎない特許文献1に示されるようなワーク搬送装置を採用することができない。
【0004】
図18に示すような処理システムにおいては、たとえば、特許文献2に示されるような搬送装置を用いることが考えられる。この特許文献2に示される搬送装置は、支持ベースに対して旋回可能な第1アームと、第1アームに対して旋回可能な第2アームと、第2アームに旋回可能なハンドを有して構成されている。そして、支持ベースに対する第1アームの旋回、第1アームに対する第2アームの旋回、および第2アームに対するハンドの旋回がそれぞれ独立して行われるため、ハンドの姿勢およびハンドの移動経路の設定の自由度が高く、それ故に特許文献2に示されるような搬送装置は、
図18に示すような処理システムにおいて、プロセスチャンバ間のワークの移送を行うことができる可能性がある。
【0005】
しかしながら、特許文献2に示される搬送装置は、真空環境に対応可能な構成とはなっておらず、実際において、たとえば、次世代有機ELパネル製造における処理システム等、真空環境でのパネル搬送が要求される場合に用いることができない。
【0006】
【特許文献1】特開2011−101912号公報
【特許文献2】特開2012−161858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、真空環境においてワーク搬送が可能であるとともに、ワークの搬送経路の設定自由度を拡大することができ、かつ、占有面積を縮小して処理システムのコンパクト化が可能であり、ワークの高速搬送が可能なワーク搬送装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
本発明により提供されるワーク搬送装置は、支持ベースと、この支持ベースに対して主旋回軸周りに旋回可能に連結された支持アームと、この支持アームに対して肘関節軸周りに回動可能に連結されたハンド保持アームと、このハンド保持アームに対して手首関節軸周りに回動可能に連結された少なくとも2つのハンドと、を備えたワーク搬送装置において、上記支持ベースに対して上記支持アームを旋回させるための支持アーム用モータは、上記支持ベース内に配置されており、上記支持アームに対して上記ハンド保持アームを回動させるためのハンド保持アーム用モータは、上記支持ベース内または上記支持アーム内に配置されており、上記ハンド保持アームに対して上記ハンドを回動させるためのハンド用モータは、上記支持アーム内に配置され、上記肘関節軸には、上記支持アームに対して上記ハンド保持アームを回動可能とするための関節軸と、上記ハンドを回動させるための動力を伝達する少なくとも2つの伝動軸とが同軸状に配置されており、上記支持ベース、上記主旋回軸、上記支持アームおよび上記肘関節軸には、上記支持ベース内における上記支持アーム用モータが配置される領域および上記支持アーム内を気密保持する気密構造が設けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施形態では、上記肘関節軸において、上記関節軸は中空軸であり、上記同軸状の伝動軸は上記関節軸の内部に通挿されており、上記関節軸とこれを回動可能に支持する部材との間、上記伝動軸と上記関節軸との間、および上記伝動軸間には、気密シールが設けられている。
【0011】
好ましい実施形態では、上記気密シールは、磁性流体シールである。
【0012】
好ましい実施形態では、上記支持アーム用モータの出力を減速する第1減速機構を有し、当該第1減速機構は、上記支持ベース内に配置されており、上記ハンド保持アーム用モータの出力を減速する第2減速機構を有し、当該第2減速機構は、上記支持ベース内または上記支持アーム内に配置されており、上記ハンド用モータの出力を減速する第3減速機構を有し、当該第3減速機構は、上記支持アーム内または上記ハンド保持アーム内に配置されている。
【0013】
好ましい実施形態では、上記少なくとも2つのハンドは、上記ハンド保持アームに対し、1つの上記手首関節軸周りに同軸状に回動可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、上記支持アームは、相互に回動可能に連結された2またはそれ以上の支持アーム部材によって構成されており、最先端側の支持アーム部材に上記肘関節軸が位置している。
【0015】
好ましい実施形態では、上記ハンド保持アームは、相互に回動可能に連結された2またはそれ以上のハンド保持アーム部材によって構成されており、最先端側のハンド保持アーム部材に上記手首関節軸が位置している。
【0016】
上記構成を有する本発明のワーク搬送装置によれば、支持ベースに対して支持アームが、支持アームに対してハンド保持アームが、ハンド支持アームに対して2つ以上のハンドが、独立して旋回もしくは回動可能であるので、複数のプロセスチャンバ間のワークの搬送をより効率的に行うことができ、しかも、占有面積を縮小して、処理システムのコンパクト化および処理の高速化を図ることができる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1ないし
図6は、本発明の第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aを示す。このワーク搬送装置10Aは、固定ベース100と、支持ベース200と、支持アーム300と、ハンド保持アーム400と、2つのハンド510,520とを有する。このワーク搬送装置10Aは、たとえば、真空環境で行う処理システムにおけるトランスファチャンバ内に設置される。
【0021】
図3に良く表れているように、固定ベース100は、支持ベース200を昇降可能に収容保持している。支持ベース200は、その上部が固定ベース100の天井板101に設けた開口102から突出するようにして、上下方向ガイド(図示略)によって昇降移動可能に支持される。また、この支持ベース200は、昇降用モータ103の回転がベルト・プーリ伝動機構104を介して伝達されるボールねじ機構105によって昇降させられる。
【0022】
支持ベース200はまた、筒状の外郭壁201と、底板202と、後記する第1真空シールユニット250とで囲まれた空間S2を有する。固定ベース100は、筒状外郭壁106と、底板107と、天井板101と、上記支持ベース200の底板202と、天井板101と上記支持ベース200の底板202との間に介装したジャバラ部材108とで囲まれた空間S1を有する。これらの空間S1,S2は、連通しており、かつ、トランスファチャンバ外の大気圧が導入されるが、第1真空シールユニット250およびジャバラ部材108により、トランスファチャンバTC内の真空圧から遮断される。
【0023】
支持ベース200の内部には、支持アーム300を鉛直方向に延びる主旋回軸X1周りに旋回させるための支持アーム用モータ220およびこの支持アーム用モータ220の回転を減速する第1減速機221と、ハンド保持アーム400を後記する肘関節軸X2周りに回動させるためのハンド保持アーム用モータ230およびこのハンド保持アーム用モータ230の回転を減速する第2減速機231とが収容されている。第1減速機221および第2減速機231は、たとえば、遊星歯車機構を内蔵した公知の構造のものを用いることができる。
【0024】
支持アーム300は、第1真空シールユニット250を介して支持ベース200に対して主旋回軸X1周りに旋回可能に支持されている。第1真空シールユニット250は、支持ベース200側の筒状軸(図示略)に対して支持アーム300側の筒状軸(図示略)を回転可能に支持するとともに、これらの筒状軸間に、たとえば、磁性流体シールからなる第1シール構造(図示略)を施したものとして構成される。本実施形態においてこの第1真空シールユニット250は、主旋回軸X1に沿って上下方向に貫通する中空部251を有しており、この中空部251を介して第2減速機231の出力部によって回転させられる第1伝動軸232が支持アーム300内に延出させられている。
【0025】
支持アーム300は、水平方向に延び気密構造を有するケース301を有する。この支持アーム300内には、2つのハンド510,520を後記する手首関節軸X3周りに回動させるための2つのハンド用モータ310,320と、各ハンド用モータ310,320の回転を減速する2つの第3減速機311,321とが収容されている。2つの第3減速機311,321の各出力部には、プーリ322(減速機311の出力軸に設けられるプーリは図に表れず。以下同じ)が設けられている。なお、第3減速機311,321もまた、たとえば、遊星歯車機構を内蔵した公知の構造のものを用いることができる。
【0026】
支持アーム300の先端部300aとハンド保持アーム400の基端部400aとの間には、支持アーム300に対してハンド保持アーム400を肘関節軸X2周りに回動可能に連結するとともに、2つのハンド510,520を回動させるための動力を伝達する、肘関節軸X2と同軸状の第2、第3伝動軸354,356を含む第2真空シールユニット350が設けられている。
【0027】
第2真空シールユニット350は、
図6に詳示するように、支持アーム300側の筒軸部351の内側にハンド保持アーム400側の筒軸部352(関節軸)を回動可能に支持するとともに、これら筒軸部351,352の間に第2シール構造353を施し、ハンド保持アーム400側の筒軸部352の内側に中空状の第2伝動軸354を回転可能に支持するとともに、これら筒軸部352と第2伝動軸354の間に第3シール構造355を施し、第2伝動軸354の中空部に中実状の第3伝動軸356を回転可能に支持するとともに、これら第2伝動軸354と第3伝動軸356の間に第4シール構造357を施して構成される。第3伝動軸356が中実状であることから、第2、第3、第4シール構造353,355,357の作用により、支持アーム300の内部空間S3は、気密シールされる。なお、第2、第3、第4シール構造353,355,357は、たとえば、磁性流体シールとするのが適当である。
【0028】
これにより、固定ベース100の内部空間S1、支持ベース200の内部空間S2、および支持アーム300の内部空間S3が連通状となるとともに、気密シールされ、トランスファチャンバTCの真空圧から遮断される。
【0029】
支持アーム300の内部空間S3において、第1伝動軸232に設けたプーリ233とハンド保持アーム400側の筒軸部352に設けたプーリ361間に無端ベルト362が掛け回される。これにより、支持ベース200内に設けたハンド保持アーム用モータ230の回転出力が第1減速機231、第1伝動軸232ないし上記したベルト・プーリ伝動機構360を介してハンド保持アーム400側の筒軸部352に伝えられ、支持アーム300に対して肘関節軸X2を中心としてハンド保持アーム400を回動させることができる。
【0030】
また、支持アーム300の内部において、ハンド用モータ310,320にそれぞれ付属する第3減速機311,321に付属するプーリ312,322と、第2伝動軸および第3伝動軸354,356の下端に設けられたプーリ364,366間には、それぞれ、無端ベルト365,367が掛け回されて、ベルト・プーリ伝動機構371,372が形成される。これにより、ハンド用モータ310,320の回転動力により、第2伝動軸および第3伝動軸354,356を独立して回転させることができる。
【0031】
ハンド保持アーム400は、水平方向に延びるケース410を有する。このケース410は、支持アーム300のケース301と異なり、気密構造とする必要はない。ハンド保持アーム400の先端部には、手首関節軸X3を中心として、2つのハンド510,520が同軸状に回動可能に支持されている。具体的には、下側の第2ハンド520から延びる中空支軸521がケース410の上壁411を貫通するようにしてこの上壁411に対して回転可能に支持され、上側の第1ハンド510から延びる中実支軸511が上記中空支軸521内を通挿されるようにして当該中空支軸521に対して回動可能に支持されている。中空支軸521の下端に設けたプーリ522と上記第3伝動軸356の上端に設けたプーリ541との間に無端ベルト542が掛け回され、中実支軸511の下端に設けたプーリ512と上記第2伝動軸354の上端に設けたプーリ551との間に無端ベルト552が掛け回される。符号421,422は、各無端ベルト542,552に接触してこれら無端ベルト542,552にテンションを付与するテンションプーリである。
【0032】
これにより、上側の第1ハンド510は、ハンド用モータ310の回転出力が、第3減速機311、プーリ、無端ベルト365、プーリ364、第2伝動軸354、プーリ551、無端ベルト552、プーリ512を介して中実支軸511に伝達される回転力により、手首関節軸X3を中心として回動させられる。下側の第2ハンド520は、ハンド用モータ320の回転出力が、第3減速機321、プーリ322、無端ベルト367、プーリ366、第3伝動軸356、プーリ541、無端ベルト542、プーリ521を介して中空支軸521に伝達される回転力により、手首関節軸X3を中心として回動させられる。
【0033】
使用において、本実施形態のワーク搬送装置10Aは、たとえば、有機EL基板に対してプロセス処理を行うシステムにおけるトランスファチャンバTCに設置される。具体的には、このワーク搬送装置10Aは、固定ベース100の天井板101がトランスファチャンバTCの底面の一部を構成し、支持アーム300、ハンド保持アーム400およびハンド510,520がトランスファチャンバTCの内部に位置するように設置される。上記したように、固定ベース100の内部空間S1、支持ベース200の内部空間S2および支持アーム300の内部空間S3は互いに連通状となっているとともに気密封止されているので、これらの内部空間は、トランスファチャンバTC内が真空環境となっても、大気圧に保持することができる。それ故、これらの空間に昇降用モータ103、支持アーム用モータ220、第1減速機221、2つのハンド用モータ310,320、第2、第3減速機231,311,321を問題なく配置することができる。
【0034】
昇降用モータ103の作動により、支持ベース200およびこれに連結される支持アーム300、ハンド保持アーム400ないし2つのハンド510,520までの構成を鉛直方向に昇降させることができる。支持アーム用モータ220の作動により、支持ベース200に対して支持アーム300を主旋回軸X1周りに旋回させることができる。ハンド保持アーム用モータ230の作動により、支持アーム300に対してハンド保持アーム400を肘関節軸X2周りに回動させることができる。また、ハンド用モータ310,320の作動により、ハンド保持アーム400に対して2つのハンド510,520を手首関節軸X3周りに回動させることができる。
【0035】
上記から明らかなように、支持ベース200に対して支持アーム300を旋回させるための動力伝達経路、支持アーム300に対してハンド保持アーム400を回動させるための動力伝達経路、および、2つのハンド510,520をハンド保持アーム400に対して回動させるための動力伝達経路は互いに独立して構成されている。したがって、支持ベース200に対する支持アーム300の旋回、支持アーム300に対するハンド保持アーム400の回動、および、ハンド保持アーム400に対する2つのハンド510,520の回動を独立して制御することにより、主旋回軸X1に対する2つのハンド510,520の移動経路、および、ハンド510,520の姿勢の選択自由度が高まる。したがって、
図18に示す処理システムのように、トランスファチャンバTCの中心に対して各プロセスチャンバPCの長手中心軸CLがずれているような場合においても、問題なく、ハンド510,520を各プロセスチャンバの長手中心線に沿って差し入れ、かつ、引き出すといった動作が可能となる。また、平面視における支持アーム300に対するハンド保持アーム400の回動角度、およびハンド保持アーム400に対する2つのハンド510,520の回動角度を適切に選択することにより、このワーク搬送装置10Aにおける支持アーム300より上位の構成部材の最小旋回半径を縮小することができ、このワーク搬送装置10A自体のトランスファチャンバTC内での占有面積を縮小することができる。
【0036】
また、独立して回動可能なハンド510,520が2つ設けられているので、たとえば、所定のプロセスチャンバに次に装填するべき未処理ワークを第2ハンド520に載せ、当該プロセスチャンバに干渉しないように第2ハンド520を退避回動させたまま、第1ハンド510を当該プロセスチャンバに差し入れ、処理済ワークを受け取って引き出し、第1ハンド510を退避回動させた状態で、上記第2ハンド520を当該プロセスチャンバに差し入れて未処理ワークを当該プロセスチャンバに装填する、といった一連の動作を行うことにより、当該プロセスチャンバからの処理済ワークの取り出しおよび未処理ワークの装填を効率よく行うことができる。
【0037】
上記のような作動が可能となる結果、ワーク搬送装置10Aを設ける処理システムの占有面積を縮小して、処理システムのコンパクト化を図ることができる。
【0038】
図7ないし
図9は、本発明の第2の実施形態に係るワーク搬送装置10Bを示す。これらの図において、第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aと同一または同等の部材または部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0039】
このワーク搬送装置10Bは、ハンド保持アーム400に対して3つのハンド(第1、第2、第3ハンド510,520,530)を同軸状に回動させるようにしている。そのために、支持アーム300内には、3つのハンド用モータ310,320,330および各モータ310,320,330に付属する第3減速機311,321,331が設けられる。また、第2真空シールユニット350は、支持アーム300に対してハンド保持アーム400を肘関節軸X2周りに回動可能に連結するとともに、3つのハンド510,520,530を回動させるための動力を伝達する、肘関節軸X2と同軸状の第2、第3、および第4伝動軸354,356,358を含むように構成される。
【0040】
ハンド保持アーム400の先端部には、手首関節軸X3を中心として、3つのハンド510,520,530が同軸状に回動可能に支持されている。3つのハンド510,520,530から延びる支軸は、同軸状となって相互に回転可能とされている。3つのハンド510,520,530は、3つのハンド用モータ310,320,330の回転出力により、支持アーム300内のベルト・プーリ伝動機構、第2、第3、および第4伝動軸354,356,358ないしハンド保持アーム400内のベルト・プーリ伝動機構を経て、独立して回動させられる点は、第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aと近似している。
【0041】
このワーク搬送装置10Bについても、ワーク搬送装置10Aについて上述したのと同様の利点を享受することができるが、独立して回動させられるハンドが3つ設けられているため、プロセスチャンバ間のワーク搬送をより効率よく行うことができる。
【0042】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るワーク搬送装置10Cを示す。この図において、第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aと同一または同等の部材または部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0043】
このワーク搬送装置10Cは、ハンド保持アーム用モータ230およびこれに付属する第2減速機231が支持アーム300内に設けられている。これに伴い、第2減速機231の出力部に設けたプーリ233とハンド保持アーム400側の筒軸部352(関節軸)に設けたプーリ361間に無端ベルト362が掛け回される。これにより、ハンド保持アーム用モータ230の回転が第2減速機231ないしベルト・プーリ伝動機構360を介してハンド保持アーム400に伝えられ、支持アーム300に対して肘関節部軸X2を中心としてハンド保持アーム400を回動させることができる。
【0044】
このワーク搬送装置10Cについても、ワーク搬送装置10Aについて上述したのと同様の利点を享受することができる。
【0045】
図11ないし
図13は、本発明の第4の実施形態に係るワーク搬送装置10Dを示す。この図において、第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aと同一または同等の部材または部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0046】
このワーク搬送装置10Dは、支持アーム300に対して肘関節軸X2を中心として回動可能に連結されているハンド保持アーム400が、二股状に分かれており、二股状に分かれたアーム部400A,400Bの各先端部に対し、それぞれ1つのハンド510,520が手首関節軸X3周りに回動可能に連結されている。ハンド保持アーム400内における各ハンド510,520への動力伝達は、第1の実施形態と同様のベルト・プーリ伝動機構によって行われる。
【0047】
このワーク搬送装置10Dについても、ハンド保持アーム400に対して2つのハンド510,520が回動可能に連結されていることから、第1の実施形態に係るワーク搬送装置10Aについて上述したのと同様の利点を享受することができる。
【0048】
図14ないし
図16は、本発明の第5の実施形態に係るワーク搬送装置10Eを示す。このワーク搬送装置10Eは、第2の実施形態に係るワーク搬送装置10Bの変形例であり、
図14ないし
図16において、第2の実施形態に係るワーク搬送装置10Bと同一または同等の部材または部分には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0049】
このワーク搬送装置10Eは、ハンド保持アーム400を、肘関節軸X2周りに回動する第1ハンド保持アーム400Cと、当該第1ハンド保持アーム400Cの先端に対して回動可能に連結された第2ハンド保持アーム400Dに分割し、第2ハンド保持アーム400Dの先端部において手首関節軸X3周りに2つのハンド510,520を回動可能に連結して構成されている。
【0050】
すなわち、第2、第3および第4伝動軸354,356,358によって第1ハンド保持アーム400C内に導入された3系統の動力伝達経路の1つを第1ハンド保持アーム400Cに対する第2ハンド保持アーム400Dの回動に用い、残りの2つを第2ハンド保持アーム400Dに対するハンド510,520の回動に用いている。本実施形態の場合、第1ハンド保持アーム400C内において、第4伝動軸358の上端に設けたプーリ541と、第2ハンド保持アーム400Dと一体的な支軸412に設けたプーリ413との間に無端ベルト414が掛け回され、第3伝動軸356の上端に設けたプーリ551と、上記支軸412を軸方向に貫通するとともに当該支軸412と同軸状の支軸415に設けたプーリ416との間に無端ベルト417が掛け回される。さらに、第2伝動軸354の上端に設けたプーリ561と、上記支軸415を軸方向に貫通するとともに当該支軸415と同軸状の支軸418に設けたプーリ419との間に無端ベルト420が掛け回される。そして、第2ハンド保持アーム400D内において、上記支軸415に設けたプーリ430と、ハンド510と一体的な支軸511に設けたプーリ512との間に無端ベルト552が掛け回され、上記支軸418に設けたプーリ432と、ハンド520と一体的な支軸521に設けたプーリ522との間に無端ベルト553が掛け回される。本実施形態の場合、支持アーム300内に配置され、第1ハンド保持アーム400Cの内部に向けて動力を伝達するための3つのモータ310,320,330のうち、符号330で示されるモータは、第1ハンド保持アーム400Cに対して第2ハンド保持アーム400Dを回動させるためのモータとして機能し、符号310,320で示されるモータは、第2ハンド保持アーム400Dに対してハンド510,520を回動させるためのモータとして機能することになる。
【0051】
このワーク搬送装置10Eにおいては、
図15に示すように、支持アーム300、第1ハンド保持アーム400C、第2ハンド保持アー400Dムおよびハンド510,520(
図15、
図16において、このハンド520は、ハンド510の下方に隠れている)を折り畳んだ状態において、最小の旋回半径を達成しつつ、
図16に示すように、主旋回軸X1に対してハンド510,520をより遠方まで延ばすことができるとともに、ハンド510,520の移動経路の選択自由度をより高めることができる。
【0052】
もちろん、この発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0053】
たとえば、支持アーム300として、気密性を保持した複数の支持アーム部材を相互に回動可能に連結したような構成とすることも可能である。すなわち、支持ベース200に対して第1の支持アームを主旋回軸X1周りに旋回可能に接続し、この第1の支持アームに対して第2の支持アームを回動可能に接続し、支持ベース200、第1の支持アーム、および第2の支持アームを相互に連通させるとともに、これらの内部の圧力を大気圧に維持することが可能なように気密性を保持し、第2の支持アームに対して気密性を保持しないハンド保持アーム400を肘関節軸X2周りに回動可能に接続し、このハンド保持アーム400に対してハンド510,520を第2の支持アーム先端の手首関節軸X3周りに回動可能に接続する、といった構成としてもよい。この場合、支持ベース200に対し支持アーム300を旋回可能とするための構成として、所定の第1真空シールユニット250が採用され、第2の支持アームに対してハンド保持アーム400を回動可能とするための構成として、所定の第2真空シールユニット350が採用されることになる。
【0054】
また、ハンド用モータ310,320の出力を減速する第3減速機321としては、入力側のプーリに対して出力側のプーリを大径とし、これらのプーリ間に無端ベルトを掛け回したような、ベルト・プーリ伝動機構を採用することも可能であり、かかる形式の減速機とする場合、この第3減速機321は、内部に真空圧が作用するハンド保持アーム400内に形成することが可能となる。