(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る廃熱回収装置を示す概略構成図である。
図1に示すように、実施形態に係る廃熱回収装置1は、ランキンサイクル装置10と、低温熱源部20と、高温熱源部30と、制御部40と、を備えており、例えばトラックやバス等の車両に搭載されて用いられる。
【0015】
ランキンサイクル装置10は、例えば車両の廃熱を入熱として、当該廃熱に係る熱エネルギを運動エネルギに変換して動力として出力する。ランキンサイクル装置10は、その流路16において、作動媒体ポンプ11と、蒸発器12と、膨張機13と、凝縮器14と、リザーブタンク15と、を有している。ランキンサイクル装置10では、その流路16に作動媒体Mが循環される。作動媒体Mとしては、種々のものを用いることができ、ここでは、低沸点媒体であるR134aが用いられる。
【0016】
作動媒体ポンプ11は、作動媒体Mを送出(圧送)してランキンサイクル装置10の流路16に循環させるポンプである。作動媒体ポンプ11は、液相の作動媒体Mを圧縮すると共に、当該作動媒体Mを流路16における下流側の第1流路16aに送出する。作動媒体ポンプ11の動力源としては、例えばON−OFF制御で作動されるモータ等を用いることができる。作動媒体ポンプ11は、制御部40と電気的に接続されており、例えば作動媒体ポンプ11の作動状況(駆動又は停止)に係る信号を制御部40へ送信する。
【0017】
蒸発器12は、第1流路16aの下流側に設けられ、作動媒体ポンプ11で圧縮された作動媒体Mを蒸発(気化)させる熱交換器である。蒸発器12は、高温熱源部30の熱源流体Hが流通され、当該熱源流体Hにより液相の作動媒体Mを加熱して蒸発させる。蒸発器12では、蒸発した作動媒体Mが流路16における下流側の第2流路16bに流出する。
【0018】
膨張機13は、第2流路16bの下流側に設けられ、蒸発器12で蒸発した作動媒体Mが流入すると共に膨張することで回転され、動力を出力する。膨張機13としては、例えばタービン等が用いられる。膨張機13は、例えば機械出力を出力してもよく、例えば発電機が接続されて電気出力を出力してもよい。膨張機13では、膨張した作動媒体Mが流路16における下流側の第3流路16cに流出する。
【0019】
凝縮器14は、第3流路16cの下流側に設けられ、膨張機13でエネルギを回収された作動媒体Mを凝縮(液化)させる熱交換器である。凝縮器14は、低温熱源部20の冷却水(冷却媒体)Wが流通され、当該冷却水Wにより作動媒体Mを冷却して凝縮させる。凝縮器14では、冷却水Wにより作動媒体Mが冷却されることで作動媒体Mの圧力が変化し、作動媒体Mの飽和温度が当該圧力に応じた温度に変化する。凝縮器14では、凝縮された作動媒体Mが流路16における下流側の第4流路16dに流出する。
【0020】
リザーブタンク15は、第4流路16dの下流側に設けられ、凝縮器14で凝縮された作動媒体Mを貯留するタンクである。ここでのリザーブタンク15は、例えば作動媒体ポンプ11と一体的に設けられている。リザーブタンク15では、貯留された作動媒体Mが作動媒体ポンプ11に流入して第1流路16aに再び送出される。
【0021】
低温熱源部20は、その低温熱源用流路21に冷却水Wが循環され、当該冷却水Wが凝縮器14を流通することで作動媒体Mを冷却する。冷却水Wとしては、種々のものを用いることができ、ここでは、例えば不凍液を含む水が用いられる。低温熱源部20は、その低温熱源用流路21において、冷却水ポンプ(冷却媒体ポンプ)22と、低温熱源23と、水温センサ24と、を有している。
【0022】
冷却水ポンプ22は、冷却水Wを低温熱源用流路21に循環させるポンプである。冷却水ポンプ22の動力源としては、例えば連続的に出力が変化するように制御されるモータ等を用いることができる。冷却水ポンプ22は、動力源の出力に応じた流量(以下、単に「出力流量」ともいう)で冷却水Wを送出し、凝縮器14へ冷却水Wを流通させ、当該冷却水Wにより作動媒体Mを冷却させる。
【0023】
冷却水ポンプ22は、制御部40(後述)に電気的に接続されており、当該制御部40により出力流量が制御される。冷却水ポンプ22は、その出力流量の状態に応じて、駆動状態と停止状態とを有している。駆動状態としては、例えば、冷却水ポンプ22が通常運転とされて通常運転時の出力流量を出力している状態、及び冷却水ポンプ22が通常運転となりつつある状態(出力流量が所定の設定流量以上の流量で略一定とされている状態、並びに出力流量が増加されている状態)が含まれる。停止状態としては、例えば、冷却水ポンプ22が停止されて出力流量がない状態、及び冷却水ポンプ22が停止しつつある状態(出力流量が所定の設定流量未満の流量で略一定とされている状態、並びに出力流量が減少されている状態)が含まれる。
【0024】
低温熱源23は、冷却水Wを流通させて冷却する熱交換器である。ここでの低温熱源23は、例えばサブラジエータが採用され、車両が走行する際の走行風により冷却水Wを冷却する。
【0025】
水温センサ24は、低温熱源23により冷却された冷却水Wの温度T
wを計測するセンサである。水温センサ24は、例えば、低温熱源用流路21における冷却水ポンプ22と凝縮器14との間に設けられている。水温センサ24は、制御部40と電気的に接続されており、例えば検出した冷却水Wの温度T
wに関する信号を制御部40へ送信する。
【0026】
制御部40は、作動媒体ポンプ11の作動状況及び水温センサ24の検出値に基づいて、冷却水ポンプ22の出力流量を制御する。制御部40は、例えば、冷却水ポンプ22が駆動状態であって、凝縮器14における作動媒体Mの飽和温度が作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの温度よりも低下する温度逆転が予測されるとき、冷却水ポンプ22の出力流量を第1減少率で減少させ、冷却水ポンプ22が停止状態であって温度逆転が予測されるとき、冷却水ポンプ22の出力流量を第1増加率で増加させる。
【0027】
高温熱源部30は、その高温熱源用流路31において熱源流体Hを循環させて蒸発器12を流通させることにより、ランキンサイクル装置10の作動媒体Mを加熱する。熱源流体Hとしては、種々のものを用いることができ、ここでは、例えば不凍液を含む水が用いられる。高温熱源部30は、高温熱源32と、ポンプ33と、を高温熱源用流路31上に有している。
【0028】
高温熱源32は、熱源流体Hを流通させて加熱する熱源である。ここでの高温熱源32は、例えば車両に搭載されたエンジンが利用され、エンジンでの燃焼等により生じた廃熱により熱源流体Hを加熱する。ポンプ33は、熱源流体Hを高温熱源用流路31に循環させるポンプである。ポンプ33の動力源としては、例えば上記エンジンが出力する動力等を用いることができる。
【0029】
次に、廃熱回収装置1における制御部の処理について、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)を参照しつつ説明する。
図2(a)は、制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
図2(a)に示すように、本実施形態では、例えば冷却水ポンプ22が駆動状態であって作動媒体ポンプ11が停止されて過渡運転となる場合、以下に詳説するように、制御部40により冷却水ポンプ22の出力流量を減少させる動作が実施される。
【0030】
すなわち、作動媒体ポンプ11からの信号に基づいて作動媒体ポンプ11が停止されたか否かが判定される(S1)。S1において、作動媒体ポンプ11が停止されたと判定される場合、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量が第1減少率で減少される(S2)。ここでの第1減少率は、例えば通常運転時の出力流量の10%の流量が1秒当たりに減少する減少率とされている。上記S2の処理により、冷却水ポンプ22は停止状態とされる。そして、作動媒体ポンプ11からの信号に基づいて作動媒体ポンプ11が駆動されたか否かが判定される(S3)。
【0031】
上記S3において、作動媒体ポンプ11が駆動されたと判定されない場合、S2へ移行され、冷却水ポンプ22の出力流量が第1減少率で引き続き減少される。上記S3において、作動媒体ポンプ11が駆動されたと判定される場合、冷却水ポンプ22の出力流量が所定流量で更に減少される(S4)。ここでの所定流量は、例えば通常運転時の出力流量の50%の流量とされている。その後、
図2(c)に示すように、制御部40により冷却水ポンプ22の出力流量を増加させる動作が実施される。
【0032】
図2(b)は、制御部の他の動作を説明するためのフローチャートである。
図2(b)に示すように、例えば冷却水ポンプ22が駆動状態であって冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下した場合、以下のように、制御部40により冷却水ポンプ22の出力流量を減少させる動作が実施される。
【0033】
すなわち、水温センサ24からの信号に基づいて冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下したか否かが判定される(S5)。S5において、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下したと判断される場合、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量が第1減少率で減少される(S6)。ここでの第1減少率は、例えば上記S2と同じ減少率とされている。上記S6の処理により、冷却水ポンプ22は停止状態とされる。そして、水温センサ24からの信号に基づいて冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなったか否かが判定される(S7)。
【0034】
上記S7において、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなったと判定されない場合、S6へ移行され、冷却水ポンプ22の出力流量が第1減少率で引き続き減少される。上記S7において、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなったと判定される場合、冷却水ポンプ22の出力流量が所定流量で更に減少される(S8)ここでの所定流量は、例えば通常運転時の出力流量の50%の流量とされている。その後、
図2(c)に示すように、制御部40により冷却水ポンプ22の出力流量を増加させる動作が実施される。
【0035】
図2(c)は、制御部の更に他の動作を説明するためのフローチャートである。
図2(c)に示すように、例えば冷却水ポンプ22が停止状態であって作動媒体ポンプ11が駆動される場合(例えば上記S4又はS8の後)、温度逆転が予測されるとして、以下のように、制御部40により冷却水ポンプ22の出力流量を増加させる動作が実施される。すなわち、冷却水ポンプ22の出力流量が第1増加率で増加される(S9)。ここでの第1増加率は、例えば通常運転時の出力流量の10%の流量が1秒当たりに増加する増加率とされている。上記S9の処理により、冷却水ポンプ22は駆動状態とされる。上記S9の後、冷却水ポンプ22の出力流量が通常運転時の出力流量と等しいか否かが判定される(S10)。
【0036】
上記S10では、冷却水ポンプ22の出力流量が通常運転時の出力流量と等しいと判定されない場合、S9へ移行され、冷却水ポンプ22の出力流量が第1増加率で引き続き増加される。一方、上記S10において、冷却水ポンプ22の出力流量が通常運転時の出力流量と等しいと判定される場合、冷却水ポンプ22が通常運転に至ったとして、処理が終了される。
【0037】
次に、本実施形態に係る廃熱回収装置の動作例について説明する。
図3(a)は、実施形態に係る廃熱回収装置の動作例を示すタイミングチャートであり、
図3(b)は、実施形態に係る廃熱回収装置の他の動作例を示すタイミングチャートである。まず、
図3(a)を参照しつつ、廃熱回収装置1の動作例として、冷却水ポンプ22が一定の出力流量とされる駆動状態であって、作動媒体ポンプ11が停止された後に再度駆動される例を説明する。
【0038】
図3(a)に示すように、時刻t
1までの時間において、作動媒体ポンプ11及び冷却水ポンプ22が一定の出力流量(通常運転時の出力流量Q
m0及びQ
c0)で駆動されており、凝縮器14における作動媒体Mの飽和温度(以下、単に「飽和温度T
ms」ともいう)は、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの温度(以下、単に「温度T
m」ともいう)よりも、例えばランキンサイクル効率を考慮して予め設定された所定温度だけ高い温度とされている。
【0039】
時刻t
1において、作動媒体ポンプ11が停止されると、制御部40により作動媒体ポンプ11が停止されたと判定されると共に、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1減少率で減少されるように制御される。そして、制御部40により、作動媒体ポンプ11が再度駆動される時刻t
2に至るまで、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1減少率で引き続き減少されるように制御される。これにより、例えば凝縮器14内における作動媒体Mの過剰な冷却による温度逆転が回避され、飽和温度T
msは、温度T
mよりも高い状態を保ったまま、時刻t
2に至る。
【0040】
時刻t
2において、作動媒体ポンプ11が駆動されると、制御部40により作動媒体ポンプ11が駆動されたと判定されると共に、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが所定流量で更に減少された後、第1増加率で増加されるように制御される。そして、制御部40により、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが通常運転時の出力流量Q
c0と等しいと判定される時刻t
3に至るまで、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1増加率で引き続き増加されるように制御される。
【0041】
このように、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる前に、当該出力流量Q
cを所定流量で更に減少させることにより、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる時点において冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが少なくされる。その結果、当該出力流量Q
cの増加によって凝縮器14内における作動媒体Mが過剰に冷却されて温度逆転が生じるのが抑制され、飽和温度T
msは、温度T
mよりも高い状態を保ったまま、時刻t
3に至る。
【0042】
次に、
図3(b)を参照しつつ、廃熱回収装置1の他の動作例として、冷却水ポンプ22が一定の出力流量とされる駆動状態であって、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下する例を説明する。
【0043】
図3(b)に示すように、時刻t
1までの時間において、作動媒体ポンプ11及び冷却水ポンプ22が一定の出力流量Q
m0及びQ
c0で駆動されており、飽和温度T
msは、温度T
mよりも、例えばランキンサイクル効率を考慮して予め設定された所定温度だけ高い温度とされている。
【0044】
時刻t
1において、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下すると、制御部40により、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下したと判定されると共に、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1減少率で減少されるように制御される。そして、制御部40により、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなったと判定される時刻t
4に至るまで、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1減少率で引き続き減少されるように制御される。これにより、例えば凝縮器14内における作動媒体Mの過剰な冷却による温度逆転が回避され、飽和温度T
msは、温度T
mよりも高い状態を保ったまま、時刻t
4に至る。
【0045】
時刻t
4において、冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなると、制御部40により冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下しなくなったと判定されると共に、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが所定流量で更に減少された後、第1増加率で増加されるように制御される。そして、制御部40により、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが通常運転時の出力流量Q
c0と等しいと判定される時刻t
5に至るまで、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが第1増加率で引き続き増加されるように制御される。
【0046】
このように、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる前に、当該出力流量Q
cを所定流量で更に減少させることにより、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる時点において冷却水ポンプ22の出力流量Q
cが少なくされる。その結果、当該出力流量Q
cの増加によって凝縮器14内における作動媒体Mが過剰に冷却されて温度逆転が生じるのが抑制され、飽和温度T
msは、温度T
mよりも高い状態を保ったまま、時刻t
5に至る。
【0047】
ここで、従来の廃熱回収装置の動作例として、
図3(a)の例において作動媒体ポンプ11が停止された際、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを減少しない(通常運転時の出力流量Q
c0で保持する)場合、及び冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを即時停止する場合について、
図4(a)及び
図4(b)を参照しつつ説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、例えば時刻t
1において、作動媒体ポンプ11が停止されても冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを減少しない場合、流路16における作動媒体Mの循環が停止される一方で、凝縮器14内における作動媒体Mの冷却は継続される。その結果、凝縮器14内における作動媒体Mが過剰に冷却されることとなり、飽和温度T
msが温度T
mよりも低くなる温度逆転が発生する。温度T
mは、例えば自然放熱等により徐々に低下するが、飽和温度T
msよりも高い状態のまま、時刻t
2に至る。
【0049】
時刻t
2では、作動媒体ポンプ11が駆動され、流路16における作動媒体Mの循環が開始される。しかし、温度逆転が生じているため、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの沸騰や、作動媒体ポンプ11でのキャビテーションが生じる。その結果、作動媒体ポンプ11により作動媒体Mが十分に圧送されなくなり、作動媒体ポンプ11の出力流量Q
mが通常運転時の出力流量Q
m0(指示流量)よりも低い状態で、時刻t
6に至る。時刻t
6において、例えば蒸発器12で加熱された作動媒体Mが凝縮器14に到達し、凝縮器14内における作動媒体Mの過剰な冷却が解消され、温度逆転が解消される。
【0050】
また、
図4(b)に示すように、例えば時刻t
1において、作動媒体ポンプ11が停止されるのと同時に冷却水ポンプ22も停止される場合、流路16における作動媒体Mの循環が停止されると共に、低温熱源用流路21における冷却水Wの循環も停止され、凝縮器14内における作動媒体Mの冷却が停止される。ここで、流路16における作動媒体Mの循環が停止された直後には、蒸発器12において液相の作動媒体Mが残留している場合がある。この場合、蒸発器12における加熱は停止されないことから、残留する液相の作動媒体Mが全て蒸発され、液相の作動媒体Mがなくなるまで、蒸発器12の下流側へ作動媒体Mが流出する。その結果、加熱された作動媒体Mが凝縮器14及びリザーブタンク15に到達し、飽和温度T
ms及び温度T
mが共に微増しつつ、時刻t
2に至る。
【0051】
時刻t
2では、作動媒体ポンプ11及び冷却水ポンプ22が駆動され、流路16における作動媒体M及び低温熱源用流路21における冷却水Wの循環が開始される。しかし、通常運転時に比べて飽和温度T
ms及び温度T
mが上昇しているため、冷却水Wが流通される凝縮器14における作動媒体Mが冷却されると、飽和温度T
msが温度T
mよりも先に低下して温度逆転が発生する。その結果、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの沸騰や、作動媒体ポンプ11でのキャビテーションが生じる。その結果、作動媒体ポンプ11により作動媒体Mが十分に圧送されなくなり、作動媒体ポンプ11の出力流量Q
mが通常運転時の出力流量Q
m0(指示流量)よりも低い状態で、時刻t
6に至る。時刻t
6において、例えば蒸発器12で加熱された作動媒体Mが凝縮器14に到達すると共に、凝縮器14で冷却された作動媒体Mがリザーブタンク15に到達し、温度逆転が解消されることとなる。
【0052】
以上、本実施形態に係る廃熱回収装置1によれば、冷却水ポンプ22が駆動状態であって作動媒体ポンプ11が停止されたとき、又は、冷却水ポンプ22が駆動状態であって冷却水Wの温度T
wが所定温度勾配以上で低下したとき、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1減少率で減少させ、冷却水ポンプ22が停止状態であって冷却水ポンプ22及び作動媒体ポンプ11が駆動されるとき、温度逆転が予測されるとして、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる。これにより、例えば凝縮器14内における作動媒体Mの過剰な冷却による温度逆転が回避され、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの沸騰や作動媒体ポンプ11でのキャビテーションの発生が抑制され、作動媒体ポンプ11により作動媒体Mが適切に循環されて、ランキンサイクル装置10が安定して運転されることが可能となる。その結果、廃熱回収効率の低下を抑制することが可能となる。
【0053】
また、制御部40により、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる前に、当該出力流量Q
cを所定流量で更に減少させる。これにより、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる時点において冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを少なくできる。その結果、当該出力流量Q
cの増加によって凝縮器14内における作動媒体Mが過剰に冷却されて温度逆転が生じるのを抑制することが可能となる。
【0054】
なお、従来の廃熱回収装置では、ランキンサイクル効率を犠牲にしてサブクールを大きくとることにより、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの沸騰や作動媒体ポンプ11でのキャビテーションを回避していた。この点、本実施形態に係る廃熱回収装置1によれば、サブクールを小さくしてランキンサイクル効率の高効率化が追及されても、例えば作動媒体ポンプ11の過渡運転時等に、作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの沸騰や作動媒体ポンプ11でのキャビテーションが生じることなく、ランキンサイクル装置10が安定して運転されることが可能となる結果、廃熱回収効率の低下を抑制することが可能となる。
【0055】
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させる前に、当該出力流量Q
cを所定流量で更に減少させる処理を有していたが、当該処理を有していなくてもよい。要は、冷却水ポンプ22が駆動状態であって、凝縮器14における作動媒体Mの飽和温度T
msが作動媒体ポンプ11に流入する作動媒体Mの温度T
mよりも低下する温度逆転が予測されるとき、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1減少率で減少させ、冷却水ポンプ22が停止状態であって温度逆転が予測されるとき、冷却水ポンプ22の出力流量Q
cを第1増加率で増加させるものであればよい。
【0057】
また、リザーブタンク15は、作動媒体ポンプ11と一体的に設けられていたが、互いに別体として設けられていてもよい。また、水温センサ24は、低温熱源用流路21における冷却水ポンプ22と凝縮器14との間に設けられていたが、低温熱源用流路21における低温熱源23よりも下流側であって凝縮器14よりも上流側であれば、その他の箇所に設けられていてもよい。