(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理システムは、例えば、フッ素系のガスと半導体ウェハや液晶基板等の被加工物をプラズマ処理装置のチャンバー内に封入し、そのチャンバー内の一対の電極に高周波電源から高周波電力を供給して放電させ、その放電によりガスのプラズマを発生させて被加工物に薄膜形成処理やエッチング処理を行うシステムである。
【0003】
従来、プラズマ処理システム用の高周波電源として、高周波の出力周波数よりも低周波のパルス変調制御信号により高周波電源の出力をパルス変調して高周波をパルス出力する高周波電源が知られている。この高周波電源では、
図12に示すように、例えば、パルス変調制御信号PSのハイレベルの期間だけ高周波vが出力されるように高周波電源の出力がパルス変調される。
【0004】
例えば、特開2013−135159号公報には、
図13に示す高周波電源が開示されている。
【0005】
図13に示す高周波電源100は、直流電源(図示省略)の直流出力を高周波に変換するフル・ブリッジ型の正弦波インバータ102を備える。正弦波インバータ102からトランス103を介して出力される高周波は、ローパスフィルタ104によって高調波が除去されて負荷に出力される。
図13では、高周波電源100と負荷との間に整合器200が設けられているので、高周波電源100から出力される高周波は、整合器200を介して負荷に出力される。
【0006】
正弦波インバータ102には発振器101からパルス信号(13.56MHzの2相スイッチングパルス)が入力され、正弦波インバータ102は、そのパルス信号により正弦波インバータ102内の2組のスイッチング素子が交互にオン・オフ動作することによって直流を高周波に変換する。
【0007】
高周波電源100から出力される高周波の特性(振幅や周波数等)とその高周波のパルス出力は、電源制御部105によって制御される。電源制御部105は、発振器101のパルス信号の生成動作を制御することによって正弦波インバータ102で生成される高周波の特性を制御する。また、電源制御部105は、主制御部108から入力されるパルス変調制御信号PSに基づいて、正弦波インバータ102内の各スイッチング素子へのパルス信号の入力を制御することにより正弦波インバータ102の高周波のパルス出力を制御する。
【0008】
なお、RFパワーモニタ106は、トランス103の二次側に生じる進行波電力(トランス103から出力端側に進行する電力)と反射波電力(出力端からトランス103側に進行する電力)をモニタするためのものである。RFパワーモニタ106で検出された進行波電力と反射波電力は電源制御部105に入力され、パルス信号の生成制御に利用される。また、RFパワーモニタ106で検出された進行波電力と反射波電力は主制御部108に入力され、モニタ表示に利用される。
【0009】
高周波電源100からはパルス変調制御信号PSのハイレベル期間にだけ高周波vが出力される。高周波電源100は、一般に特性インピーダンス(例えば、50Ω)に対して効率良く電力が供給できるように設計されるため、負荷のインピーダンス変動により高周波電源100の出力端から負荷側を見たインピーダンス(以下、「負荷インピーダンス」という。)が特性インピーダンスに整合しない値になっている状態では、パルス変調制御信号PSがハイレベルからローレベルに反転したタイミングで高周波vは直ちにゼロにならず、振動しながら減衰していく現象が生じる。
【0010】
図14は、
図15に示す回路構成で高周波電源Gからパルス出力される進行波電圧v
fを計測した出力停止時の波形を示す図である。
図15に示す回路構成は、高周波電源Gに方向性結合器DC(特性インピーダンス50Ωで設計されている)を介して反射係数Γが0.99で位相ψが0°の負荷DLを接続し、高周波電源Gから周波数13.56MHzの高周波電圧v
outをデューティ比50%、周波数10kHz(周期100μs)のパルス信号でパルス出力させる構成である。
図14の例では、パルス出力停止時に高周波電圧v
outの振動が凡そ28μs持続することが分かる。
【0011】
高周波vの出力停止時に高周波vが直ちにゼロにならず、振動状態が発生すると、プラズマ処理装置におけるプラズマ処理に悪影響を与えるので、
図13に示す高周波電源100には、残留高周波除去回路107が設けられている。残留高周波除去回路107は、抵抗Rとスイッチング素子107aの直列回路で構成され、ローパスフィルタ104の出力端に並列に接続されている。
【0012】
主制御部108は、パルス変調制御信号PSのローレベル期間にスイッチング素子107aをオン動作させる制御信号を出力し、パルス変調制御信号PSがローレベルになると、ローパスフィルタ104の出力端に流れている高周波v(進行波と反射波の合成波)を、抵抗Rを介してグランドにバイパスさせ、負荷(プラズマ処理装置)に出力させないようにする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。特に、プラズマ処理システムに適用される高周波電源を例に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る高周波電源の内部構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示す高周波電源1は、後述するように、パルス出力停止時に高周波電圧のレベルを制御して当該高周波電圧が振動しながら停止する現象を抑制する機能を備える。高周波電源1は、高周波信号を生成し、その高周波信号をD級アンプからなるパワーアンプで増幅して出力する構成である。1個のパワーアンプではパルス出力停止時から数μsの間に出力電圧のレベルを制御することは困難であるから、高周波電源1では、2個のパワーアンプと両パワーアンプの出力電力を合成する電力合成回路を設け、パルス出力停止時に2個のパワーアンプに入力される2つの高周波電圧v
a,v
bの位相差θと各高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aの2つのパラメータを制御することにより負荷に出力される高周波電圧v
outの振動を抑制するようにしている。
【0030】
高周波電源1は、AC−DC変換部2、DC−DC変換部3、DC−RF変換部4、RF合成部5、フィルタ回路6、電力検出部10、PWM信号生成部7、高周波信号生成部8及び制御部9を含む構成である。DC−RF変換部4とRF合成部5を含む部分は負荷に高周波電力を出力する高周波生成部Uを構成している。DC−RF変換部4には同一構成の2つのDC−RF変換部4A,4Bが設けられ、第1のDC−RF変換部4Aから出力される電力P
Aと第2のDC−RF変換部4Bから出力される電力P
BがRF合成部5で合成されて高周波電源1の出力端に接続される負荷(プラズマ処理装置。図示省略)に出力される。
【0031】
AC−DC変換部2は、商用電源からDC−DC変換部3への入力電圧(直流電圧)V
ccを生成する回路ブロックである。AC−DC変換部2は、例えば、4個の半導体整流素子をブリッジ接続した整流回路で商用電源から入力される商用電圧を整流し、平滑回路で整流後のレベルを平滑化して直流電圧V
ccを生成する周知の電源回路で構成される。
【0032】
DC−DC変換部3は、AC−DC変換部2から入力される直流電圧V
ccを任意の電圧値の直流電圧V
dcに変換してDC−RF変換部4に入力する回路ブロックである。DC−DC変換部3は、出力電圧V
dcを変化させることにより高周波電源1が出力する進行波電力P
fを制御する機能を果たす。
【0033】
DC−DC変換部3は、例えば、
図2に示す、インバータに整流回路を組み合わせた周知のDC−DCコンバータで構成される。
図2の回路例は、4個の半導体スイッチ素子Q
Aをブリッジ接続したブリッジ回路からなるインバータ301にトランスT1を介して整流回路302を接続した回路である。整流回路302は、4個の半導体整流素子D
Aをブリッジ接続し、その一対の出力端に平滑用のコンデンサCを並列に接続した回路である。整流回路302の一対の出力端は、DC−DC変換部3の出力端a,a’にそれぞれ接続されている。半導体スイッチ素子Q
Aには、バイポーラトランジスタ、電界効果型トランジスタ、IGBT等が用いられ、半導体整流素子D
Aにはダイオードが用いられる。
【0034】
DC−DC変換部3では、PWM信号生成部7によって生成されるPWM信号S
PWMでインバータ301の4個の半導体スイッチ素子Q
Aのオン・オフ動作が制御されることにより、DC−DC変換部3の出力端a,a’から出力される直流電圧V
dcのレベルが制御される。
【0035】
DC−RF変換部4は、DC−DC変換部3から入力される直流電力を予め設定された高周波電力に変換する回路ブロックである。高周波電力の周波数は、2.0MHzや13.56MHzなどのプラズマ処理用に規定された周波数である。DC−RF変換部4内には同一構成の2つのDC−RF変換部4A,4Bが設けられている。
【0036】
第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bは、
図3に示すハーフ・ブリッジ型のD級アンプで構成される。同図に示すD級アンプは、一対の電源端子b,b’の間に2つの同一タイプの半導体スイッチ素子Q
Bの直列回路を接続し、2つの半導体スイッチ素子Q
Bの接続点nと出力端子cとの間に出力回路401を接続した構成である。出力回路401は、直流カット用のコンデンサと、コンデンサとリアクトルのL型回路とを縦属接続したフィルタ回路である。トランスT2は、一対の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を行うドライブ回路を構成している。トランスT2は、一次巻線に高周波電圧vが入力され、一方の二次巻線(
図3では上側の二次巻線)から高周波電圧vと同相の高周波電圧v’を出力し、他方の二次巻線(
図3では下側の二次巻線)から高周波電圧vと逆相の高周波電圧−v’を出力する。高周波電圧v’は一方の半導体スイッチ素子Q
B(
図3では上側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力され、高周波電圧−v’は他方の半導体スイッチ素子Q
B(
図3では下側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力される。トランスT2の一次巻線に入力される高周波電圧vは、2.0MHzや13.56MHzなどのプラズマ処理用に規定された周波数fの正弦波電圧である。
【0037】
第1のDC−RF変換部4Aの電源端子bと電源端子b'は、それぞれ第2のDC−RF変換部4Bの電源端子bと電源端子b'に接続され、電源端子bと電源端子b’の間にDC−DC変換部3の出力端子a,a'から出力される直流電圧V
dcが供給される。一対の半導体スイッチ素子Q
BにはNチャネル型のMOSFETが用いられるが、バイポーラトランジスタ等の他の種類のトランジスタを用いることができる。また、一対の半導体スイッチ素子Q
BをNチャネル型とPチャネル型を組み合わせたコンプリメンタリ型にしてもよい。この場合は、トランスT2の二次巻線は一つでよく、高周波電圧v’をそれぞれNチャネル型のMOSFETとPチャネル型のMOSFETのゲートに入力すればよい。
【0038】
第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの各トランスT2の一次巻線に入力される高周波電圧v
a,v
b(添え字のa,bはそれぞれ第1DC−RF変換部4Aと第2のDC−RF変換部4Bに対応することを示す。以下、同じ。)は、高周波信号生成部8で生成される。高周波信号生成部8は、v
a=A・sin(2πf・t+φ
a)、v
b=A・sin(2πf・t+φ
b)で表わされる高周波電圧v
a,v
bを生成する。高周波電圧v
aの初期位相φ
aはゼロに固定されており、高周波電圧v
bの初期位相φ
bは可変である。高周波信号生成部8は、制御部9から入力される位相差θ=φ
b−φ
aの情報に基づいて高周波電圧v
bの初期位相φ
b(=θ)を変化させる。位相差θの変化のさせ方については後述する。なお、初期位相φ
bをゼロに固定して、初期位相φ
aを可変としてもよいし、初期位相φ
a、φ
bとも可変としてもよい。例えば、初期位相φ
aを0°から−90°まで変更可能とし、初期位相φ
bを0°から90°まで変更可能として、位相差θ=90°の場合はφ
a=−45°、φ
b=45°を設定するようにしてもよい。
【0039】
第1のDC−RF変換部4Aでは、高周波電圧v
a=A・sin(ω・t)がトランスT2の一次巻線に入力されると、トランスT2の一方の二次巻線から同相の高周波電圧v
a’=A’・sin(ω・t)が出力され、トランスT2の他方の二次巻線から逆相の高周波電圧−v
a’=−A’・sin(ω・t)が出力される。同相の高周波電圧v
a’は、一方の半導体スイッチ素子Q
B(
図3では上側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力され、逆相の高周波電圧−v
a’は、他方の半導体スイッチ素子Q
B(
図3では下側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力される。2つの半導体スイッチ素子Q
Bは、Nチャネル型MOSFETであるから、一方の半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波電圧v
a’のハイレベル期間にオン動作をし、他方の半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波電圧−v
a’のハイレベル期間にオン動作をする。すなわち、2つの半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波電圧v
a’の半周期毎に交互にオン・オフ動作を繰り返す。
【0040】
2つの半導体スイッチ素子Q
Bが交互にオン・オフ動作を繰り返すことによって接続点nの電圧v
nはv
a’>0の期間に「V
dc」となり、v
a’≦0の期間に接地レベルとなるように矩形波状に変化し、その矩形波が出力回路401で直流分とスイッチングノイズが除去されて出力端子c,c’から高周波電圧v
aを増幅した高周波電圧v
PA=V・sin(ω・t)が出力される。
【0041】
第2のDC−RF変換部4Bでは、入力される高周波電圧v
bが高周波電圧v
aに対して位相差θを有する高周波電圧v
PB=V・sin(ω・t+θ)となる点が異なるだけで、上述した第1のDC−RF変換部4Aと同様の動作を行う。
【0042】
なお、本実施形態では、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bをハーフ・ブリッジ型のアンプで構成しているが、フル・ブリッジ型やプッシュ・プル型のアンプで構成してもよい。
【0043】
RF合成部5は、DC−RF変換部4から出力される2つの高周波電力P
A,P
Bを合成する回路ブロックである。RF合成部5は、例えば、
図4に示す伝送トランスT3と抵抗Rとからなるハイブリッド回路によって構成される。ハイブリッド回路は、1つのサム・ポートN
Sと2つの入力ポートN
A,N
Bを有し、入力ポートN
Aに入力される交流電圧と入力ポートN
Bに入力される交流電圧に位相差があると、入力電力のうち位相差に応じた一部の電力を抵抗Rで熱消費し、残りの電力を出力する機能を有する。
【0044】
図4に示すように、第1のDC−RF変換部4Aから出力される高周波電圧v
PAは、一方の入力ポートN
Aに入力され、第2のDC−RF変換部4Bから出力される高周波電圧v
PBは、他方の入力ポートN
Bに入力され、サム・ポートN
Sから高周波電圧v
PCが出力される。
【0045】
サム・ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」の場合(RF合成部5と負荷とがインピーダンス整合をしている場合)のサム・ポートN
Sから出力される高周波電流i
PCと高周波電圧v
PCは、高周波電圧v
PA,v
PBをそれぞれv
PA=V・sin(ω・t)、v
PB=V・sin(ω・t+θ)とすると、下記のようになる。
【0046】
抵抗Rの両端の電圧v
Rは、
v
R=v
PA−v
PB=V・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)] …(1)
であり、入力ポートN
A,N
Bから伝送トランスT3に流れ込む電流i
A,i
Bと抵抗Rを流れる電流i
Rは、
i
A=v
PA/R
o=V・sin(ω・t)/R
o…(2)
i
B=v
PB/R
o=V・sin(ω・t+θ)/R
o…(3)
i
R=v
R/(2・R
o)
=V・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(4)
である。
【0047】
従って、伝送トランスT3の一次巻線と二次巻線に流れる電流i
LA,i
LBは、
i
LA=i
A−i
R=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(5)
i
LB=i
B+i
R=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(6)
で表わされ、サム・ポートN
Sから出力される高周波電流i
PCと高周波電圧v
PCは、
i
PC=i
LA+i
L2=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/R
o…(7)
v
PC=i
PC・(R
o/2)
=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/2
=V・[sin{(ω・t+θ/2)−θ/2}+sin{(ω・t+θ/2)+θ/2}]/2
=V・[sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)−cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)
+sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)+cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)]/2
=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)…(8)
となる。
【0048】
(8)式で示されるように、RF合成部5から出力される高周波電圧v
PCのレベルは、位相差θによって変化する。その変化はcos(θ/2)の関数で表わされるから、位相差θをゼロから±π(±180[deg])まで単調に変化させると、高周波電圧v
PCのレベルが単調減少することが分かる。なお、θ=0では、v
PC=V・sin(ω・t)=v
PA=v
PBとなり、θ=±180[deg]では、v
PC=0となる。
【0049】
なお、上記の説明は、サム・ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」の場合の例であるが、サム・ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」ではない場合でも同様の傾向があり、位相差θをゼロから±π(±180[deg])の範囲で変化させることにより、出力電圧v
PCのレベルを「V」からゼロまで単調に減少させることができる。
【0050】
RF合成部5は、ハイブリッド回路と同様の機能を果たすものであれば、他の回路であってもよい。例えば、特開2008−28923号公報に記載の高周波電力合成器や実開平4−48715号公報に記載の出力合成回路を用いることができる。
【0051】
フィルタ回路6は、例えば、2つのコンデンサと1つのリアクトルのπ型回路で構成されるローパスフィルタ(LPF)である。フィルタ回路6は、RF合成部5から出力される高周波電圧v
PC及び高周波電流i
PCの高調波を除去して基本波成分を負荷側に出力する機能を果たす。なお、フィルタ回路6は、ローパスフィルタ(LPF)であれば、コンデンサとリアクトルのπ型回路に限定されるものではない。
【0052】
電力検出部10は、高周波電源1が出力する進行波電力P
fを検出するものである。電力検出部10は、方向性結合器を含み、その方向性結合器から高周波電圧v
outに含まれる進行波電圧v
fと反射波電圧v
rを検出する。そして、電力検出部10は、進行波電圧v
fを進行波電力P
fに変換して制御部9に出力する。
【0053】
PWM信号生成部7は、三角波比較法によりDC−DC変換部3の駆動を制御するPWM信号S
PWMを生成し、そのPWM信号S
PWMをDC−DC変換部3に出力する。PWM信号生成部7は、例えば、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザー(Direct Digital Synthesizer)で構成されるキャリア信号発生回路と、コンパレータ等のレベル比較器で構成されるPWM信号生成回路を含む。PWM信号生成部7は、例えば、キャリア信号発生回路で発生した鋸波のキャリア信号C
cと制御部9から入力される制御指令値C
oのレベルをレベル比較器で比較してC
c≦C
oの期間をパルス幅とするPWM信号S
PWMを生成する。
【0054】
高周波信号生成部8は、第1のDC−RF変換部4A内の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を制御する高周波電圧v
aと第2のDC−RF変換部4B内の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を制御する高周波電圧v
bを生成し、高周波電圧v
aを第1のDC−RF変換部4Aに出力し、高周波電圧v
bを第2のDC−RF変換部4Bに出力する。
【0055】
高周波信号生成部8は、制御部9から入力される振幅A、周波数f、位相差θに基づいて高周波電圧v
a,v
bを生成して出力する。後述する制御部9は、出力制御信号S
cに基づいて、位相差θおよび振幅Aを変化させる。出力制御信号S
cは、高周波電圧v
a,v
bよりも周波数の低い(周期の長い)所定の周波数でデューティ比が50%のパルス信号であり、高周波信号生成部8が生成する高周波電圧v
a,v
bをパルス出力させるためのものである。制御部9は、出力制御信号S
cのハイレベル期間に振幅Aを所定の値とし、ローレベル期間に振幅Aを0にする。出力制御信号S
cのローレベル期間に振幅Aが0になるので、高周波信号生成部8から出力される高周波電圧v
a,v
bは0になり、パルス出力になる。ただし、本実施形態では、後述する様に、出力制御信号S
cがハイレベル期間からローレベル期間に切り替わるときにすぐに振幅Aを0にするのではなく、高周波電圧v
a,v
bの位相差を制御する位相差制御を行った後に、振幅Aを0にするレベル制御を行う。出力制御信号S
cの周波数が、例えば、10kHzの場合、高周波信号生成部8は、高周波電圧v
a,v
bを100μ秒間隔で50μ秒間だけパルス出力する。なお、出力制御信号S
cのデューティ比は50%に限定されるものではなく、任意の値に設定することができる。
【0056】
高周波信号生成部8には、
図5に示すように、正弦波の高周波電圧v
aを発生する第1の高周波発生回路8aと、制御部9から入力される位相差θを用いて高周波電圧v
aに対して位相差θを有する正弦波の高周波電圧v
bを発生する第2の高周波発生回路8bと、が含まれる。第1の高周波発生回路8a及び第2の高周波発生回路8bもダイレクト・ディジタル・シンセサイザーで構成される。
【0057】
第1の高周波発生回路8aには、高周波電圧v
aの振幅A、周波数f及び初期位相φ
a(=0)の情報が制御部9から入力される。周波数fは、上述したようにプラズマ処理システムに規定された2.0MHz、13.56MHz等の周波数である。初期位相φ
aは任意の値に設定可能であるが、本実施形態では、「0」に設定されている。第2の高周波発生回路8bにも高周波電圧v
bの振幅A、周波数f及び初期位相φ
bの情報が入力されるが、θ=φ
b−φ
a、φ
a=0より、制御部9から出力される位相値θが初期位相φ
bの情報として入力される。φ
a≠0に設定した場合は、制御部9から出力される位相差θに初期位相φ
aを加算した値(θ+φ
a)が初期位相φ
bの情報として入力される。振幅A及び周波数fの情報は、第1の高周波発生回路8aに入力される振幅A及び周波数fの情報と同一である。
【0058】
第1の高周波発生回路8aは、振幅A、周波数f及び初期位相φ
aの情報を用いてA・sin(2πf・t)で表わされる高周波電圧v
a(ディジタル信号。
図6のv
a参照)を発生する。同様に、第2の正弦波発生回路8bは、振幅A、周波数f及び制御指令値θの情報を用いてA・sin(2πf・t+θ)で表わされる高周波電圧v
b(ディジタル信号。
図6のv
b参照)を発生する。
【0059】
制御部9は、高周波電源1が出力する進行波電力P
fと、第1,第2の高周波発生回路8a,8bで生成される2つの高周波電圧v
a,v
bを制御するとともに、高周波電圧v
PA,v
PBのパルス出力を制御する回路ブロックである。制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えるマイクロコンピュータによって構成される。CPUがROMに記憶された所定の制御プログラムを実行することにより、高周波電源1が出力する進行波電力P
f、2つの高周波電圧v
a,v
bの位相差θおよび振幅A、出力制御信号S
cの周期等が制御される。
【0060】
制御部9は、高周波電源1から負荷に出力される高周波電力(進行波電力P
f)を制御する。従って、制御部9には、制御目標の目標出力電力P
fsが入力される。ユーザは、目標出力電力P
fsを、入力装置(図示省略)を操作して手動で入力したり、予め設定したプログラムにより自動で入力させたりすることができる。
【0061】
制御部9は、電力検出部10から入力される進行波電力P
fの検出値と目標出力電力P
fsの偏差ΔP(=P
fs−P
f)を演算し、その偏差ΔPに基づいて当該偏差ΔPをゼロにするための制御指令値C
oを生成して、PWM信号生成部7に出力する。PWM信号生成部7は、制御指令値C
oに基づいてPWM信号S
PWMを生成し、DC−DC変換部3に出力する。DC−DC変換部3は、PWM信号S
PWMに基づいて出力電圧V
dcを調整することで、進行波電力P
fを制御する。これにより、進行波電力P
fが目標出力電力P
fsになるように、フィードバック制御される。
【0062】
本実施形態に係る高周波電源1は、
RF合成部5からパルス出力される高周波電圧v
PCの出力停止時の制御方法に特徴を有する。以下では、高周波電圧v
PCの出力停止時の制御内容について説明する。
【0063】
本発明に係る高周波電源1では、出力制御信号S
Cの各パルスの立下りタイミングt
Lに同期して直ちに第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの駆動を停止してRF合成部5から出力される高周波電圧v
PCを停止させるのではなく、位相差θを0から−180[deg]まで単調に減少させる位相差制御を行ってRF合成部5から出力されている高周波電圧v
PCのレベルを減少させた後、高周波信号生成部8から出力される高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aを減少させることで、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bから出力される高周波電圧v
PA,v
PBの各レベルVを0まで単調に減少させるレベル制御を行って、高周波電圧v
PCの出力を停止させる。
【0064】
図7は、出力停止時の位相差制御に用いる特性とレベル制御に用いる特性の一例を示す図である。
【0065】
図7の横軸は経過時間を示し、左側の縦軸は高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aを示し、右側の縦軸は位相差θを示している。タイミングt
Lは、出力制御信号S
Cの各パルスの立下りタイミングであり、横軸の経過時間の基準時点(時刻0の時点)となっている。実線で示す特性(イ)は位相差θの制御特性であり、点線で示す特性(ロ)は、高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aの制御特性である。
【0066】
実線で示す位相差制御特性(イ)は、出力制御信号S
Cの立下りタイミングt
Lから数μ秒以内の時間(
図7では凡そ2μ秒)で位相差θを0[deg]から−180[deg]まで単調に減少させる場合の特性である。点線で示すレベル制御特性(ロ)は、位相差制御が終了した後の数μ秒(
図7では凡そ2μ秒)遅れた所定のタイミングt
Dで高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aを急速に(
図7では凡そ1μ秒経過後に)ゼロに減少させる特性である。なお、位相差制御特性(イ)では位相差θを0[deg]から−180[deg]まで単調に減少させているが、位相差制御特性を0[deg]から+180[deg]まで単調に増加させる特性としてもよい。
【0067】
上述したように、位相差θを0[deg]から−180[deg]まで単調に減少させると、RF合成部5から出力されている高周波電圧v
PCのレベルは、「V」から0に単調に減少する。従って、
図7に示す特性によれば、出力制御信号S
Cの各パルスの立下りタイミングt
Lに同期して所定の時間だけ(
図7の例では凡そ2μ秒だけ)位相差制御により高周波電圧v
PCのレベルを「V」から0に減少させた後、所定のタイミングt
D(
図7の例では凡そ2μ秒遅れたタイミング)でレベル制御により第1,第2の高周波信号発生回路8a,8bでの高周波電圧v
a,v
bの出力を停止させて(すなわち、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bでの高周波電圧v
PA,v
PBの出力を停止させて)、立下りタイミングt
Lから所定の時間T
E(
図7の例では、凡そ5μ秒)が経過した時点t
Eで高周波電圧v
PCの出力を完全に停止させる制御が行われる。
【0068】
図7の位相差制御特性(イ)とレベル制御特性(ロ)は、一例であって、高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aと位相差θを減少させる時間や波形は、それぞれ単調に減少する波形で、位相差制御を開始した後にレベル制御を開始する関係を満たすものであれば、任意に設定することができる。また、
図7では、高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aと位相差θを連続的に減少させているが、ステップ状に多段階に減少させるものでもよい。
【0069】
制御部9は、高周波信号生成部8に出力する出力制御信号S
cがローレベルに反転するタイミングt
Lに同期して、高周波信号生成部8に出力する位相差θの情報を
図7の実線で示す位相差制御特性(イ)で0から−180[deg]まで減少させ、その後は、出力制御信号S
cが次にハイレベルになるまで、θ=−180[deg]を保持する。そして、出力制御信号S
cが次にハイレベルになると、高周波信号生成部8に出力する位相差θをθ=0[deg]に変更する。
【0070】
また、制御部9は、タイミングt
Lから予め設定された時間T
Dだけ遅れたタイミングt
Dで高周波信号生成部8に出力する高周波電圧v
a,v
bの振幅Aの情報を
図7の点線で示すレベル制御特性(ロ)で0になるまで減少させ、その後は、出力制御信号S
cが次にハイレベルになるまで、A=0を保持する。そして、出力制御信号S
cが次にハイレベルになると、高周波信号生成部8に出力する振幅Aを所定の値に変更する。
【0071】
図8は、
図15に示す回路構成の高周波電源Gに本実施形態に係る高周波電源1を用いた場合の進行波電圧を計測した波形を示す図である。測定条件は、
図14の場合と同様で、負荷DLは反射係数Γが0.99で位相ψが0°の全反射負荷であり、高周波電源Gの出力周波数は13.56MHz、出力制御信号S
cはデューティ比50%、周波数10kHz(周期100μs)のパルス信号である。
【0072】
従来の高周波電源(上記の位相差制御とレベル制御をしない場合)では、
図14に示したように、高周波電源Gから出力される高周波電圧v
outには、出力制御信号S
cの各パルスがローレベルに反転するタイミングt
Lから凡そ28μsに亘って振動しながら減衰する現象が生じたが、本実施形態に係る高周波電源1を用いた場合(上記の位相差制御とレベル制御をした場合)は、
図8に示されるように、タイミングt
Lからの振動現象を凡そ8μsに大幅に短縮できることが分かった。
【0073】
また、従来の高周波電源では、タイミングt
Lから高周波電圧v
outが振動しながら減衰する包絡線の波形が先窄まりに湾曲した三角形状となるが、本実施形態に係る高周波電源1では、タイミングt
Lから凡そ2μs後に高周波電圧v
outのレベルが凡そ1/10に急減した後、そのレベルで振動が凡そ6μs生じる波形となっており、包絡線の波形で見れば、振動現象は生じないと見なせるレベルになることが分かった。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る高周波電源1によれば、DC−RF変換部4に第1のDC−RF変換部4Aと第2のDC−RF変換部4Bを設けるとともに、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの高周波電力P
A,P
Bを合成するRF合成部5を設け、RF合成部5からパルス出力される高周波P
Cを停止するとき、各パルス出力の出力停止時(t=0)から所定の時間が経過するまで第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bに入力される高周波電圧v
a,v
bの位相差θを0[deg]から−180[deg]まで単調減少させてRF合成部5から出力される高周波電圧v
PCのレベルを減少させた後、高周波電圧v
a,v
bの各振幅Aを単調に減少させてRF合成部5からの高周波電圧v
PCの出力を完全に停止させるようにしたので、各パルス出力の出力停止時に、負荷に出力されている高周波電圧v
out及び高周波電流i
outが振動しながら減衰するという現象を好適に抑制することができる。
【0075】
上記実施形態では、
図7で位相差制御が終了すると、その状態を数μs保持した後にレベル制御を開始していたが、位相差制御が終了すると同時に、または、終了する直前にレベル制御を開始するようにしてもよい。これらの場合でも、レベル制御を開始するときには、位相差制御によって出力が低下しているので、パルス出力停止時における振動現象の抑制効果を奏することができる。
【0076】
上記実施形態では、位相差制御において、位相差θを0[deg]から−180[deg]まで減少(または、180[deg]まで増加)させる場合について説明したが、これに限られない。位相差θが±180[deg]に近づけば出力は低下する。出力が例えば10%に低下(90%減)したところで位相差制御を停止して、レベル制御を行うようにしてもよい。つまり、位相差θを±180[deg]に変化させることに限定されず、所定の値(例えば、±170[deg])まで変化させるようにしてもよい。
【0077】
上記実施形態では、RF合成部5を
図4に示すハイブリッド回路とした場合について説明したので、位相差制御において、位相差θをゼロから±π(±180[deg])に変化させているが、これに限られない。位相差制御における位相差θの変化は、RF合成部5の構成によって異なる。位相差制御においては、高周波電圧v
PCが減少するように位相差θを変化させればよい。
【0078】
上記実施形態では、高周波生成部Uを1個だけ設ける構成だったが、
図9に示すように、高周波生成部Uを複数個設け、各高周波生成部Uの出力電力を1つのRF合成部5’で合成する構成にしてもよい。高周波生成部Uを2N個設ける構成では、
図10に示すように、(2N−1)個のRF合成部5’を、隣り合う2つの高周波生成部Uの出力電力を合成し、更に隣り合う2つの出力電力を合成する構成を繰り返して1つの出力電圧v
PCFを出力するように結合する構成でもよい。
【0079】
図11は、高周波生成部Uを2個設け、各高周波生成部Uの出力電力をRF合成部で合成する構成にした場合の構成例を示す図である。
【0080】
図11の回路構成では、各高周波生成部U内の第1のDC−RF変換部4Aに高周波信号生成部8からそれぞれ高周波電圧v
a=A・sin(ω・t)が入力され、各高周波生成部U内の第2のDC−RF変換部4Bに高周波信号生成部8からそれぞれ高周波電圧v
b=A・sin(ω・t+θ)が入力される。一方の高周波生成部U(
図11では上段の高周波生成部U)から出力される出力電圧と他方の高周波生成部U(
図11では下段の高周波生成部U)から出力される出力電圧とは同一(位相およびレベルが同一)となり、両出力電圧を「v
PC」とし、RF合成部5’の回路構成をRF合成部5と同じ構成(
図4)にした場合、RF合成部5’の出力電圧を「v
PCF」と表記すると、出力電圧v
PCFは、(8)式より、
v
PCF=v
PC=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)
で表され、位相差θを0[deg]から−180[deg]まで減少させると、出力電圧v
PCFのレベルが「V」からゼロに単調に減少する。
【0081】
図11に示す構成でも
図1に示す構成と同様に、出力電圧v
outの出力停止時に発生する振動現象を防止若しくは抑制する効果を奏する。高周波生成部Uを3個以上設ける場合も同様である。
【0082】
上記のように、本発明は、2つの高周波電力を合成する高周波生成部Uを備え、負荷にパルス出力している高周波電圧を停止するときに、高周波生成部Uに入力する2つの高周波電圧の位相差を0[deg]から−180[deg]に変化させた後、2つの高周波電圧のレベルをゼロに漸減させる処理をすることによってパルス出力の各出力停止時に発生する振動現象を抑制若しくは防止することを要旨とするから、プラズマ処理システム用の高周波電源に限定されるものではない。
【0083】
また、本発明は、高周波電圧をパルス出力させる場合だけでなく、連続出力させる場合の出力停止時にも適用でき、周波数帯もプラズマ処理システムに適用される周波数帯に限定されるものではなく任意の周波数帯に適用できる。
【0084】
また、上記実施形態では、DC−RF変換部4A,4Bとしてフル・ブリッジ回路構成のパワーアンプについて説明したが、ハーフ・ブリッジ回路やプッシュ・プル回路や1個の半導体スイッチ素子でスイッチングを行う回路構成等の他のタイプのスイッチングアンプを用いることができる。また、本発明は、リニアアンプを用いて高周波電力を生成する回路構成でも適用することができる。
【0085】
上記実施形態では、負荷に出力される高周波電圧v
outの波形を正弦波形としたが、台形波やデッドタイムを有する矩形波でもよい。