(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の各実施形態を以下の順序で説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
A.第1実施形態における鋳造用装置(金型)の構成:
B.第1実施形態における金型の使用方法:
C.第1実施形態における金型の製造方法:
D.第2実施形態における鋳造用装置(スプールブッシュ)の構成:
E.第2実施形態におけるスプールブッシュの製造方法:
F.第3実施形態における鋳造用装置(金型)の構成:
G.第3実施形態における金型の製造方法:
H.変形例:
【0019】
A.第1実施形態における鋳造用装置(金型)の構成:
図1は、本発明の第1実施形態における金型100の構成を示す断面図である。金型100は、入れ子110と、固定側主型120と、可動側主型130とを備えている。入れ子110は、鋳造製品の形状を構成する製品形状形成面110sを有している。固定側主型120は、製品形状形成面120sを有している。可動側主型130は、製品形状形成面130sと凹部130cとを有している。3つの製品形状形成面110s、120s及び130sは、後述の型組状態において鋳造製品を鋳造するための密閉空間を形成することができる。この密閉空間については後述する。金型100は、鋳造に使用される鋳造用装置である。
【0020】
入れ子110は、製品形状形成面110sを有する第1部品111と、可動側主型130の凹部130cに嵌合する外形面を有する第2部品112と、第1部品111と、第2部品112とを永久締結しているボルト113とを備えている。本実施形態では、3つの製品形状形成面110s、120s及び130sは、いずれもボルト113の軸方向から見ると、その軸心を中心とする円形状を有している。製品形状形成面110s、120s及び130sは、溶融金属接触面とも呼ばれる。
【0021】
入れ子110の製品形状形成面110sは、突部111pを有する。突部111pは、鋳造製品の外形仕様上の要求によって設けられた形状部分である。突部111pは、その形状に着目すると、注湯工程の際に高温となりやすく、冷却時には急冷されやすい性質を有している。突部111pは、溶融金属や冷却水に周囲を囲まれる一方、可動側主型130への熱伝導路が狭いからである。
【0022】
入れ子110は、上述の温度変化を緩和するための冷却水路114(冷却部とも呼ばれる。)を有する。冷却水路114は、ボルト113の軸方向から見て環状の循環する形状を有している。冷却水路114には、図示しない冷却水導入口と冷却水排出口とが連通している。冷却水路114は、第1部品111に形成されている環状の凹部の開口部を第2部品112で覆うことによって形成されている。冷却水路114は、第1部品111と第2部品112とを接合する溶接ビード110b(溶接部あるいは肉盛り部とも呼ばれる。)によって冷却水路114の外部から封止されている。
【0023】
固定側主型120、可動側主型130、第1部品111及び第2部品112は、いずれもSKD61その他の工具鋼で構成されている。溶接ビード110bは、SKD61に類似した組成の溶着金属が盛られた部分である。この肉盛り溶接は、ティグ溶加棒(たとえばDS−61G)を使用するTIG溶接によって形成される。可動側主型130と入れ子110は、複数の部品が組み合わせられることによって金型100の一方を構成している。
【0024】
溶接ビード110bは、その外表面の全体が可動側主型130の凹部130cの内面に接しており、溶融金属に露出しないように金型100が構成されている。溶接ビード110bは、溶融金属に露出しないので、溶接ビード110bが溶融金属に接することに起因するヒートサイクルを防止することができる。さらに、溶接ビード110bの外表面の全体が可動側主型130に接しているので、外表面と可動側主型130との間の顕著に効果的な熱のやりとりが可能となって、溶接ビード110bの外表面のみにおける部分的な過度の温度変化を抑制することができる。この結果、ヒートチェックやクラックを抑制することができる。
【0025】
B.第1実施形態における金型の使用方法:
図2は、第1実施形態における金型100の使用方法を示すフローチャートである。
図3A〜
図3Cは、第1実施形態における金型100の使用方法を示す工程図である。金型100は、鋳造物を生産するために以下に示す方法で使用される。
【0026】
ステップS11では、型組工程が実行される。型組工程は、鋳造物が取り出され、冷却が完了した状態(
図3A参照)となっている固定側主型120と可動側主型130とで型を形成するための工程である。型組工程では、入れ子110を有する可動側主型130を移動させて固定側主型120、入れ子110及び可動側主型130のそれぞれが有する3つの製品形状形成面110s、120s及び130sで鋳造製品を鋳造するための密閉空間(
図3B参照)を形成する。
【0027】
ステップS12では、注湯工程が実行される。注湯工程は、高温の溶融金属が金型に圧入される工程である。溶融金属には、たとえばアルミニウム合金が使用される。これにより、製品形状形成面110s、120s及び130sは、いずれも高温状態となる一方、溶融金属が固化してアルミダイカスト製品(図示せず)が鋳造されることになる。凝固が完了すると、処理が次の工程に進められる。
【0028】
ステップS13では、型開き工程が実行される。型開き工程は、可動側主型130を移動させて固定側主型120から離し、アルミダイカスト製品(図示せず)を取り出し可能とする工程である。ステップS14では、アルミダイカスト製品の取り出しが実行される。これにより、金型100によるアルミダイカスト製品の製造工程は完了する。アルミダイカスト製品の製造工程は、金型100を使用しない次の工程に進められる。
【0029】
ステップS15では、入れ子110、固定側主型120及び可動側主型130に対して噴霧装置190を使用して離型剤の塗布が行われる(
図3C参照)。離型剤には、本実施形態では、ダイカスト用水溶性離型剤(たとえばTX−2400やGL−3700)が使用される。離型剤の塗布は、製品形状形成面110s、120s及び130sに対して、ダイカスト用水溶性離型剤を噴霧することによって行われる(
図3C参照)。冷却が完了すると(ステップS16)、アルミダイカスト製品が最終製品でない場合には型組工程(ステップS10)に処理を戻すことができる(ステップS17)。最終製品である場合には処理が終了する。
【0030】
ダイカスト用水溶性離型剤は、製品形状形成面110s、120s及び130sに離型皮膜を形成する一方、その水分の蒸発によって製品形状形成面110s、120s及び130sを急速に冷却することができる。これにより、鋳造工程のサイクルタイムの短縮化を実現することができる。
【0031】
製品形状形成面110s、120s及び130sの急速冷却は、熱疲労の問題を大きくし、ヒートチェックやクラックの原因となっている。具体的には、本願発明者の知見によれば、注湯工程によって高温状態となった製品形状形成面110s、120s及び130sが、ダイカスト用水溶性離型剤の水分の蒸発によって急冷され収縮する過程でヒートチェックやクラックの原因となっている。表面が急激に収縮することにより、表面部分と内側部分との間に熱膨張差が発生してひずみが生じるからである。
【0032】
本実施形態では、特に、製品形状形成面110sが有する突部111pは、その形状に着目すると、注湯工程の際に高温となりやすい性質を有している。突部111pは、溶融金属に周囲を囲まれる一方、可動側主型130への熱伝導路が狭いからである。しかしながら、本実施形態では、突部111pの内部に冷却水路114が形成されているので、突部111pが過度に高温状態となることを抑制することができる。さらに、突部111pは、注湯工程(ステップS12)から型開き工程(ステップS13)まで継続し、それから離型剤の塗布(ステップS15)までの間にも冷却水路114によって冷却することができるので、離型剤の塗布による冷却に起因するヒートチェックやクラックを効果的に抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、冷却水路114は、溶接ビード110bによって封止されている。一般的な技術常識では、溶接補修した部分のダイカスト金型における型寿命は、非溶接部と比較して著しく低下すると考えられている(たとえばダイカスト用金型の寿命対策:日原政彦著、日刊工業新聞社)。しかしながら、本実施形態では、溶接ビード110bは、少なくとも以下の理由により型寿命の要因とはなり難い。他の理由については後述する。
(1)溶接ビード110bは、冷却水路114の封止に使用されている故に過度に高温状態となることはない。
(2)溶接ビード110bは、製品形状形成面110sを形成しておらず(鋳造製品を鋳造するための密閉空間(
図3B参照)に露出しておらす)、過度に高温とならず離型剤の塗布に起因する急激な温度低下にも晒されない。
(3)溶接ビード110bは、可動側主型130に接しているので熱的な境界部を構成せず、過度に大きな熱勾配が発生しない。
【0034】
よって、第1実施形態の構成を有する金型100は、金型100の耐久性の劣化を抑制しつつ冷却流路140の製造に溶接加工を利用し、適切な冷却流路を実現することによって長い寿命を有する金型100を実現することができる。
【0035】
C.第1実施形態における金型の製造方法:
図4は、第1実施形態における金型100の製造方法を示すフローチャートである。
図5A乃至
図5Cは、第1実施形態における金型100の製造方法を示す工程図である。金型100は、上述の構成を実現するために以下に示す方法で製造される。ステップS21では、各部品の機械加工が行われる(
図5A参照)。特に、入れ子110を構成する第1部品111及び第2部品112の各部品は、いずれもSKD61の焼き入れ前の材料を機械加工することによって製造される。
【0036】
第1部品111の外周には、肉盛り溶接のための凹状の形状を有する凹部111wが形成されている。第2部品112の外周には、肉盛り溶接のための凹状の形状を有する凹部112wが形成されている。
【0037】
ステップS22では、各部品の組み立てが行われる。具体的には、入れ子110を構成する第1部品111と第2部品112とが組み合わせられ、組み合わせられた第1部品111と第2部品112とがボルト113によって締結される。これにより、第1部品111と第2部品112の周囲に渡って、溶接ビード110bが形成されるための断面が半円形状を有する凹部111w、112wが形成される(
図5B参照)。
【0038】
ステップS23では、溶接加工が行われる。溶接加工は、前述のようにティグ溶加棒(たとえばDS−61G)を使用するTIG溶接によって溶接ビード110b(
図1、
図5C参照)を形成することによって行われる。溶接ビード110bは、第1部品111と第2部品112とにも適宜溶け込み、傾斜金属を構成している。
【0039】
ただし、ティグ溶加棒(たとえばDS−61G)は、SKD61に類似した組成の溶着金属で肉盛り部を形成し、溶接補修と異なり、第1部品111と第2部品112とが焼き入れ前の状態なので、熱処理を含めて極めてなだらかな傾斜を有する傾斜金属を構成している。これにより、第1部品111と第2部品112とが組み合わせられ、ボルト113によって締結され、そして溶接された入れ子110の半製品が製造される。
【0040】
ステップS24では、入れ子110の半製品の熱処理(焼き入れ)が行われる。入れ子110は、十分な靱性と剛性とを有することになる。この際に、第1部品111、第2部品112及び溶接ビード110bは、いずれも焼き入れ前の状態において、一体的に焼き入れがなされるので、溶接ビード110bは、第1部品111及び第2部品112と極めて近い物性を有することになる。これにより、溶接ビード110bと母材としての第1部品111及び第2部品112との間に物性的な境界が殆ど生じないので、その境界に起因して発生する熱疲労を効果的に抑制することができる。
【0041】
ステップS25では、仕上げ加工が行われる。仕上げ加工は、溶接ビード110bの外形形状を可動側主型130の凹部130cに嵌合する形状とするための機械加工を含む。仕上げ加工は、さらに、熱変形を生じさせている入れ子110と、可動側主型130との間の適切な嵌合状態を実現するための外表面の全体的な機械加工や表面処理が含まれる。さらに、固定側主型120、可動側主型130及び入れ子110の間の適切な嵌合状態を実現するための機械加工や表面処理が含まれる。
【0042】
ステップS26では、金型100の検査が行われる。この検査には、冷却水路114の耐圧検査やX線検査等が含まれる。このような工程によって、第1実施形態の構成を有する金型100を製造することができる。
【0043】
本製造工程によれば、入れ子110を構成する第1部品111及び第2部品112の各部品は、いずれもSKD61の焼き入れ前の材料を機械加工する工程から製造が開始され、第1部品111と第2部品112とを溶接して接合した後に一体的に焼き入れが行われる。さらに、溶接加工では、SKD61に類似した組成の溶着金属で肉盛り部が形成されるので、溶接ビード110bと母材としての第1部品111及び第2部品112との間に物性的な境界が殆ど生じない。この結果、その境界に起因して発生する熱疲労を効果的に抑制することができる。
【0044】
D.第2実施形態における鋳造用装置(スプールブッシュ)の構成:
図6は、第2実施形態におけるダイカスト鋳造機用スプールブッシュ200(以下、単にスプールブッシュと呼ぶ。)の構成を示す説明図である。スプールブッシュ200は、溶融金属を流通させて金型(たとえば金型100)に注湯(供給)するための部品である。スプールブッシュ200は、図面の上下方向を中心軸とし、中空部分を有する円筒形状を有している。スプールブッシュ200は、鋳造に使用される鋳造用装置である。
【0045】
スプールブッシュ200は、インサートライナー210と、ブッシュ本体220と、アウターライナー230と、ボルト213とを備える。インサートライナー210の内面には、溶融金属を押圧するプランジャ(図示せず)が通過するプランジャ孔200hが形成されている。なお、インサートライナー210は交換部品である。プランジャ孔200hの内面は、溶融金属接触面とも呼ばれる。
【0046】
スプールブッシュ200は、以下のように構成されている。ボルト213は、インサートライナー210とブッシュ本体220とを締結している。アウターライナー230及びブッシュ本体220は、2つの溶接ビード200b1,200b2(溶接部とも呼ばれる。)によって永久締結されている。2つの溶接ビード200b1,200b2は、それぞれスプールブッシュ200の中心軸を中心とする環状に形成されている。
【0047】
スプールブッシュ200は、冷却水路224(冷却部とも呼ばれる。)を有している。冷却水路224は、アウターライナー230の内面と、ブッシュ本体220の外径面に形成されている冷却溝220g(
図8参照)とによって形成されている。冷却水路224は、それぞれスプールブッシュ200の中心軸を中心とする環状に形成され、部分的にスプールブッシュ200の中心軸方向に連通している。冷却水路224には、図示しない冷却水導入口と冷却水排出口とが連通している。これにより、冷却水路224は、循環経路として構成されているので、金属溶湯を速やかに凝固させて鋳造のサイクルタイムを短縮することができる。
【0048】
2つの溶接ビード200b1,200b2は、運用時に溶融金属に露出しないようにスプールブッシュ200が構成されている。2つの溶接ビード200b1,200b2は、溶融金属に露出しないので、2つの溶接ビード200b1,200b2が溶融金属に接することに起因するヒートサイクルを防止することができる。
【0049】
E.第2実施形態におけるスプールブッシュの製造方法:
図7は、第2実施形態におけるスプールブッシュ200の製造方法を示すフローチャートである。
図8は、第2実施形態におけるスプールブッシュ200の製造方法を示す工程図である。
図9は、第2実施形態におけるブッシュ本体220とアウターライナー230の組み付け状態(溶接前)を示す工程図である。スプールブッシュ200は、上述の構成を実現するために以下に示す方法で製造される。ステップS21aでは、ブッシュ本体220とアウターライナー230の機械加工が行われる(
図8参照)。これらの各部品は、第1実施形態と同様に、いずれもSKD61の焼き入れ前の材料を機械加工することによって製造される。
【0050】
アウターライナー230の上端の内周と下端の外周には、それぞれ肉盛り溶接のための凹状の形状を有する凹部230w1と凹部230w2とが形成されている。ブッシュ本体220の上端の外周と下端の内周には、それぞれ肉盛り溶接のための凹状の形状を有する凹部220w1と凹部220w2とが形成されている(
図9参照)。
【0051】
ステップS22aでは、各部品220,230の仮組み立てが行われる。具体的には、ブッシュ本体220とアウターライナー230とが組み合わせられる。この際、ブッシュ本体220とアウターライナー230の上端に渡って、溶接ビード200b1(溶接部あるいは肉盛り部とも呼ばれる。)が形成されるための断面が半円形状を有する凹部220w1、230w1が形成される。さらに、ブッシュ本体220の下部とアウターライナー230の下端に渡って、溶接ビード200b2が形成されるための断面が半円形状を有する凹部220w2、230w2が形成される。
【0052】
ステップS23aでは、各部品220,230の熱処理(焼き入れ)が行われる。本実施形態では、各部品220,230が分解された状態で溶接加工の前に熱処理が行われる。この理由は、各部品220,230の形状においては、組み合わせた状態で熱処理を行うと、熱処理で発生する内部応力が過大となるからである。
【0053】
ステップS24aでは、溶接加工が行われる。ただし、溶接加工の前に仕上げ機械加工が行われ、各部品220,230の組み立てが行われる。これにより、熱処理後(製品時)における内部応力が過大となることはない。溶接加工は、前述のようにティグ溶加棒(たとえばDS−61G)を使用するTIG溶接によって溶接ビード200b1,200b2(
図6参照)を形成することによって行われる。溶接ビード200b1,200b2は、ブッシュ本体220とアウターライナー230とにも適宜溶け込み、傾斜金属を構成している。これにより、スプールブッシュ200の半製品が製造される。
【0054】
ステップS25では、第1実施形態と同様に、仕上げ加工が行われる。仕上げ加工は、ブッシュ本体220の内面形状を交換部品であるインサートライナー210の外面形状に嵌合する形状とするための機械加工を含む。ステップS26では、第1実施形態と同様に、金型100の検査が行われる。ステップS27では、ブッシュ本体220の内側にインサートライナー210が挿入され、両者がボルト213によって締結される。
【0055】
本製造工程によれば、ブッシュ本体220とアウターライナー230の各部品は、いずれも、SKD61に類似した組成の溶着金属で肉盛り部が形成されるので、熱疲労を効果的に抑制することができる。
【0056】
第2実施形態のダイカスト鋳造機用スプールブッシュ200によれば、冷却水路224を使用して金属溶湯を速やかに凝固させて鋳造のサイクルタイムを短縮することができる。さらに、Oリング等を使用すること無く、熱疲労が効果的に抑制された溶接ビード200b1,200b2によって冷却水路224を構成することができるので、スプールブッシュ200の耐久性を高めることができる。
【0057】
F.第3実施形態における鋳造用装置(金型)の構成:
図10Aは、第3実施形態における金型300の構成の一部を示す断面図である。金型300は、図示される凸部を有し、その内部に冷却流路310,320,330(冷却部とも呼ばれる。)を有している。2本の直線状の冷却流路310,330は、金型300の製品形状形成面300sの近傍に向かって平行に伸びている。一方、直線状の冷却流路320は、2本の冷却流路310,330の双方と連通している。これにより、3本の直線状の冷却流路310,320及び330は、相互に連通しており、循環路を形成している。製品形状形成面300sは、溶融金属接触面とも呼ばれる。
【0058】
冷却流路320は、溶接ビード300b1,300b2によって両端が封止されている。これにより、冷却流路320の両端には、それぞれ円柱流路320c1,300c2が形成される。円柱流路320c1の一端は、溶接ビード300b1によって封止され、その他端が上記循環路に接続されている。一方、円柱流路320c2の一端は、溶接ビード300b2によって封止され、その他端が上記循環路に接続されている。
【0059】
円柱流路320c1,300c2は、いずれも一端が溶接ビード300b1,300b2によって封止されているので、通例の流体力学的見地によればよどみを形成し冷却が期待できない。しかしながら、本願発明者の解析によれば、蒸発による冷却水の噴出と流入が一定のサイクルで行われることから(他の技術分野において、いわゆるポンポン船の原理として知られている。)、常識に反して高い冷却能力を有することが見いだされた。
【0060】
G.第3実施形態における金型の製造方法:
図10Bは、第3実施形態における金型300の機械加工後の状態(溶接前)を示す工程図である。
図11は、第3実施形態における金型300の製造方法を示すフローチャートである。金型300は、上述の構成を実現するために以下に示す方法で製造される。
【0061】
ステップS31では、ドリル加工が行われる(
図10B参照)。本実施例では、SKD61の焼き入れ前の型母材350を機械加工することによって製造される。直径6mmのドリルで3本の穴が形成されている。3本の穴は、2本の製品形状形成面300sに向かってその近傍まで掘られる穴310、330と、1本の貫通穴320とを含んでいる。このような構成により、金型300の内部に循環路を形成することができる。
【0062】
ドリル加工は、穴開け用のドリル(図示せず)によって穴310、330を形成するための穴開け加工と、開けられた穴の最凹部310c、330c(
図10B参照)を丸めて丸められた最凹部310r、330r(
図10A参照)とするための丸め加工とを含んでいる。丸め加工は、先端が丸められた専用の工具で行われる。丸め加工を行うのは、耐久性を高めるためである。
【0063】
ステップS32では、凹部形成加工が行われる。凹部形成加工は、貫通穴320の両端部に肉盛り溶接用の凹部300w1,300w2を形成する加工である。凹部300w1,300w2(
図10B参照)は、それぞれ肉盛り溶接の溶接ビード300b1,300b2(溶接部あるいは肉盛り部とも呼ばれる。)の直径Dが穴径の2倍、本実施形態では、12mmとなるように半球状の凹部として形成されている(
図10A参照)。
【0064】
なお、本願発明者の解析によれば、直径Dが大きくなると、冷却流路の耐圧性が大きくなる一方、溶接に起因する耐久性の低下が顕著となる。逆に、直径Dが小さくなると、冷却流路の耐圧性が低下する一方、溶接に起因する耐久性の低下が小さくなる。よって、溶接ビード300b1,300b2の直径Dは、円柱流路320c1,300c2の軸方向から見て穴径の1.5倍〜2倍が最も好ましいが、穴径の1倍〜2.5倍も好ましい。
【0065】
ただし、その範囲外でも実現可能である。耐久性の観点からは、溶接ビード300b1,300b2は、溶融金属に対する露出が円柱流路320c1,300c2の内面を構成する溶接ビード300b1,300b2の面積に対して所定の比率以下となるように構成されていれば十分な冷却を実現することができる。所定の比率は、運用形態(溶融金属の温度や金型の形状)に応じて定めることができる。
【0066】
ステップS33では、溶接加工が行われる。溶接加工は、前述のようにティグ溶加棒(たとえばDS−61G)を使用するTIG溶接によって溶接ビード300b1,300b2を形成することによって行われる。溶接ビード300b1,300b2は、型母材350にも適宜溶け込み、傾斜金属を構成している。これにより、金型300の半製品が製造される。
【0067】
ステップS34では、金型300の半製品の熱処理(焼き入れ)が行われる。本実施形態においても、溶接ビード300b1,300b2と型母材350との間に物性的な境界が殆ど生じないので、その境界に起因して発生する熱疲労を効果的に抑制することができる。
【0068】
ステップS35では、仕上げ加工が行われる。ステップS36では、金型300の検査が行われる。この検査には、冷却水路310,320,330の耐圧検査やX線検査等が含まれる。このような工程によって、第3実施形態の構成を有する金型300を製造することができる。
【0069】
本製造工程によれば、第1実施形態や第2実施形態と同様に、溶接ビード300b1,300b2と型母材350との間に物性的な境界が殆ど生じない。さらに、円柱流路320c1,300c2では、蒸発による冷却水の噴出と流入が一定のサイクルで行われるので、溶接ビード300b1、300b2を効果的に冷却することが可能である。加えて、溶接ビード300b1,300b2は、溶融金属に対する露出が円柱流路320c1,300c2の内面を構成する溶接ビード300b1,300b2の面積に対して所定の比率以下となって十分に冷却できるように構成されている。これにより、300b2の境界に起因して発生する熱疲労を効果的に抑制することができる。
【0070】
H.変形例:
上述の実施形態では、この肉盛り溶接は、ティグ溶加棒を使用するTIG溶接によって形成されているが、他の溶接方法でも良い。ただし、TIG溶接によれば、高品質で美しい溶接ビード(肉盛り部)が得られ、あらゆる金属の溶接に適用できる点で好ましい。