特許第6474989号(P6474989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474989ドライフィルムおよびフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474989
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ドライフィルムおよびフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20190218BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20190218BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20190218BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G03F7/004 512
   G03F7/037
   G03F7/095
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-213208(P2014-213208)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-80920(P2016-80920A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
(72)【発明者】
【氏名】内山 強
(72)【発明者】
【氏名】小池 直之
(72)【発明者】
【氏名】笠間 美智子
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−293001(JP,A)
【文献】 特開2006−259700(JP,A)
【文献】 特開2012−078462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/037
G03F 7/095
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保護物と張り合わせるための接着面(a)と、前記接着面の反対側に位置する保護面(b)とを有するドライフィルムであって、
FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)のATR法(全反射法)で得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、ポリイミド由来のピークを、前記接着面(a)は有さず、前記保護面(b)は有し、かつ、
アルカリ可溶性であることを特徴とするドライフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミド由来のピークが、1785〜1765cm−1の範囲に観測されるピークである請求項1記載のドライフィルム。
【請求項3】
前記赤外線吸収スペクトルにおいて、アクリル由来のピークを、前記接着面(a)が有する請求項1または2記載のドライフィルム。
【請求項4】
前記アクリル由来のピークが、1420〜1400cm−1の範囲に観測されるピークである請求項3記載のドライフィルム。
【請求項5】
光照射によりパターニング可能である請求項1〜4のうちいずれか一項記載のドライフィルム。
【請求項6】
前記接着面(a)を有する接着層(A)と、前記保護面(b)を有する保護層(B)とを有し、
前記接着層(A)がアルカリ現像型樹脂組成物からなり、かつ、前記保護層(B)が、イミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂を含む樹脂組成物からなる請求項1〜5のうちいずれか一項記載のドライフィルム。
【請求項7】
フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部の少なくともいずれか一方に用いられる請求項1〜6のうちいずれか一項記載のドライフィルム。
【請求項8】
フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうち少なくともいずれか1つの用途に用いられる請求項1〜7のうちいずれか一項記載のドライフィルム。
【請求項9】
前記接着面および保護面の少なくともいずれか片面が、フィルムで支持または保護されてなる請求項1〜8のうちいずれか一項記載のドライフィルム。
【請求項10】
フレキシブルプリント配線基板上に、請求項1〜9のうちいずれか一項記載のドライフィルムからなる絶縁膜を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムに関し、特には、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜の形成に有用なドライフィルムおよびフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末の普及による電子機器の小型薄型化により、回路基板の小スペース化が必要となってきている。そのため、折り曲げて収納できるフレキシブルプリント配線板の用途が拡大し、かかるフレキシブルプリント配線板についても、これまで以上に高い信頼性を有するものが求められている。
【0003】
これに対し現在、フレキシブルプリント配線板の絶縁信頼性を確保するための絶縁膜として、折り曲げ部(屈曲部)には、耐熱性および屈曲性などの機械的特性に優れたポリイミドをベースとしたカバーレイを用い(例えば、特許文献1,2参照)、実装部(非屈曲部)には、電気絶縁性などに優れ微細加工が可能な感光性樹脂組成物を用いた混載プロセスが広く採用されている。
【0004】
すなわち、耐熱性および屈曲性などの機械的特性に優れるポリイミドをベースとしたカバーレイは、金型打ち抜きによる加工を必要とするため、微細配線には不向きである。そのため、微細配線が必要となるチップ実装部には、フォトリソグラフィーによる加工ができるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物(ソルダーレジスト)を部分的に併用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−263692号公報
【特許文献2】特開昭63−110224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、フレキシブルプリント配線板の製造工程では、カバーレイを張り合わせる工程とソルダーレジストを形成する工程との混載プロセスを採用せざるを得ず、コスト性と作業性に劣るという問題があった。
【0007】
これに対し、ソルダーレジストとしての絶縁膜またはカバーレイとしての絶縁膜を、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジストおよびカバーレイの双方に適用することが検討されているが、双方の要求性能を十分満足できる材料は、未だ実用化には至っていなかった。特に、フレキシブルプリント配線板においては、折り曲げに対する耐久性が最も重要な特性の一つであるため、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジストおよびカバーレイとして適用可能であって、折り曲げに対する耐久性に優れた素材の実現が求められていた。
【0008】
また、作業性の改良の点から、連続工程に適しており、溶剤乾燥が不要なドライフィルムの形態で、そのような絶縁膜を形成することが求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜としての要求性能を満足し、折り曲げ部と実装部との一括形成プロセスにも適した構造体の形成が可能なドライフィルムを提供することにあり、また、その硬化物を保護膜、例えば、カバーレイまたはソルダーレジストとして有するフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アルカリ現像による折り曲げ部と実装部との一括形成を目的として、従来カバーレイに用いられているポリイミドにアルカリ溶解性基を導入しても、現像性が悪いため、現像残渣が生じたり、短時間での現像が困難であった。また、ポリイミドは軟化点が高すぎるため、ドライフィルムとしたときにラミネート性に問題があった。
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、被保護物と貼りあわせるための接着面と、前記接着面の反対側に位置する保護面とを有するドライフィルムにおいて、保護面側は耐熱性、耐折れ性および難燃性等に優れるイミド構造を有することで絶縁膜としての要求特性を満足でき、接着面側は接着性を優先するためにイミド構造を有しないドライフィルムとすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のドライフィルムは、被保護物と張り合わせるための接着面(a)と、前記接着面の反対側に位置する保護面(b)とを有するドライフィルムであって、
ATR法(全反射法)によるFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、イミド由来のピークを、前記接着面(a)は有さず、前記保護面(b)は有し、かつ、アルカリ可溶性であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のドライフィルムにおいては、前記イミド由来のピークが、1785〜1765cm−1の範囲に観測されるピークであることが好ましい。また、本発明のドライフィルムにおいては、前記赤外線吸収スペクトルにおいて、アクリル由来のピークを、前記接着面(a)が有することが好ましい。本発明のドライフィルムにおいては、前記アクリル由来のピークが、1420〜1400cm−1の範囲に観測されるピークであることが好ましい。
【0014】
本発明のドライフィルムは、光照射によりパターニング可能であることが好ましい。また、本発明のドライフィルムは、前記接着面(a)を有する接着層(A)と、前記保護面(b)を有する保護層(B)とを有し、前記接着層(A)がアルカリ現像型樹脂組成物からなり、かつ、前記保護層(B)が、イミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。本発明のドライフィルムは、フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうち少なくともいずれか一方に好適に用いることができ,具体的には、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうち少なくともいずれか1つの用途に用いることが有用である。
【0015】
また、本発明のドライフィルムは、前記接着面および保護面の少なくとも片面が、フィルムで支持または保護されてなることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルプリント配線基材上に、上記本発明のドライフィルムをラミネートし、光照射によりパターニングして、現像液によりパターンを一括して形成してなる絶縁膜を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明において「パターン」とは、パターン状の硬化物、すなわち、絶縁膜を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜としての要求性能を満足し、折り曲げ部と実装部との一括形成プロセスにも適した構造体の形成が可能なドライフィルムおよびフレキシブルプリント配線板を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のドライフィルムの一例の模式図である。
図2】本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図3】本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の他の例を模式的に示す工程図である。
図4】ATR法によるFT−IRで得られた、実施例1、2および比較例2のドライフィルムの接着面(a)ならびに比較例2のドライフィルムの保護面(b)の赤外線吸収スペクトルである。
図5】ATR法によるFT−IRで得られた、実施例1および比較例1のドライフィルムの保護面(b)ならびに比較例1のドライフィルムの接着面(a)の赤外線吸収スペクトルである。
図6】ATR法によるFT−IRで得られた、実施例2のドライフィルムの保護面(b)の赤外線吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(ドライフィルム)
本発明のドライフィルムは、被保護物と張り合わせるための接着面(a)と、前記接着面の反対側に位置する保護面(b)とを有するドライフィルムであって、ATR法(全反射法)によるFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、イミド由来のピークを、前記接着面(a)は有さず、前記保護面(b)は有し、かつ、アルカリ可溶性である点に特徴を有する。ポリイミドは耐折れ性に優れるものの軟化点が高いために、ポリイミドを含有するドライフィルムはラミネート性に劣るものであったが、詳しいメカニズムは明らかではないが、本願発明のドライフィルムは、接着面側にはイミドを含有しないことによりラミネート性が改善されるだけでなく、接着面側にはイミドを含有せずとも耐折り曲げ性にも優れる。
【0020】
本発明のドライフィルムは、例えば図1に示すように、前記接着面(a)を有する接着層(A)と、前記保護面(b)を有する保護層(B)とを積層することにより形成することができる。尚、ドライフィルムの厚さが薄い場合や層間の界面が馴染んでいる場合には、接着層(A)と保護層(B)を外観上は判別しにくいが、ATR法によるFT−IR等により、ドライフィルムの接着面(a)および保護面(b)を分析することにより、積層構造体であることを判別することができる。
【0021】
前記イミド由来のピークは1785〜1765cm−1、1735〜1705cm−1、1400〜1360cm−1、740〜720cm−1の範囲に現れるが、中でも1785〜1765cm−1のピークが最も観測し易い。
【0022】
本発明のドライフィルムは、前記赤外線吸収スペクトルにおいて、現像性と光反応性の向上のために配合されるアクリル由来のピークを、前記接着面(a)が有することが好ましい。接着面側に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることによって、光硬化性が向上し、高精細なパターンを形成し易くなる。前記アクリル由来のピークは、1650〜1610cm−1、1420〜1400cm−1、825〜795cm−1の範囲に現れるが、中でも1420〜1400cm−1のピークが最も観測し易い。
【0023】
また、本発明のドライフィルムは、前記赤外線吸収スペクトルにおいて、難燃剤由来のピークを、前記接着面(a)は有し、前記保護面(b)は有さないことが好ましい。難燃剤が接着面側に含まれ、保護面側に含まれない場合には、硬化塗膜の柔軟性および難燃性が向上する。難燃剤由来のピークは特に限定されないが、例えば、3630〜3605cm−1、3535〜3510cm−1、3450〜3425cm−1、3380〜3355cm−1のそれぞれの範囲に特異的なピークが観測される。
【0024】
本発明のドライフィルムにおいて、FT−IRのATR法による赤外線吸収スペクトル測定は、前記イミド由来のピークを判別することができれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0025】
以下、前記接着面(a)を有する接着層(A)および前記保護面(b)を有する保護層(B)について詳述する。
【0026】
(保護層(B))
保護層(B)は、イミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。例えば、イミド環またはイミド前駆体骨格を有するカルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤および熱反応性化合物を含む光硬化性熱硬化性樹脂組成物を使用することができる。
【0027】
(イミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂)
前記イミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂は、フェノール性水酸基またはカルボキシル基のうち1種以上のアルカリ溶解性基と、イミド環またはイミド前駆体骨格とを有するものである。このアルカリ溶解性樹脂へのイミド環またはイミド前駆体骨格の導入には公知慣用の手法を用いることができる。例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分および/またはイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。イミド化は熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して製造することができる。
【0028】
ここで、カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体を含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0029】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミン、カルボン酸を有するジアミン、フェノール性水酸基を有するジアミンなどを用いることができるが、これらのアミンに限定されるものではない。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0030】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネートおよびその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類およびその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0031】
以上説明したようなイミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂は、アミド結合を有していてもよい。これはイソシアネートとカルボン酸を反応させて得られるアミド結合であってもよく、それ以外の反応によるものでもよい。さらにその他の付加および縮合からなる結合を有していてもよい。
【0032】
このようなアルカリ溶解性基とイミド環またはイミド前駆体骨格とを有するアルカリ溶解性樹脂の合成においては、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。かかる有機溶媒としては、原料であるカルボン酸無水物類、アミン類、イソシアネート類と反応せず、かつこれら原料が溶解する溶媒であれば問題はなく、特にその構造は限定されない。特に、原料の溶解性が高いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性溶媒が好ましい。
【0033】
以上説明したようなフェノール性水酸基またはカルボキシル基のうち1種以上のアルカリ溶解性基とイミド環またはイミド前駆体骨格を有するアルカリ溶解性樹脂は、フォトリソグラフィー工程に対応するために、その酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好適には60〜150mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が20mgKOH/g以上の場合、アルカリに対する溶解性が増加し、現像性が良好となり、さらには、光照射後の熱硬化成分との架橋度が高くなるため、十分な現像コントラストを得ることができる。また、この酸価が200mgKOH/g以下の場合には、特に、後述する光照射後のPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程でのいわゆる熱かぶりを抑制でき、プロセスマージンが大きくなる。
【0034】
また、このアルカリ溶解性樹脂の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、質量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、さらに2,000〜50,000がより好ましい。この分子量が1,000以上の場合、露光・PEB後に十分な耐現像性と硬化物性を得ることができる。また、分子量が100,000以下の場合、アルカリ溶解性が増加し、現像性が向上する。
【0035】
(熱反応性化合物)
熱反応性化合物としては、環状(チオ)エーテル基などの熱による硬化反応が可能な官能基を有する公知慣用の化合物を用いることができる。特に分子中にエポキシ基を2個有する2官能エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0036】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知慣用のものを用いることができ、特に、後述する光照射後のPEB工程に用いる場合には、光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤が好適である。なお、このPEB工程では、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用してもよい。
【0037】
光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、後述する熱反応性化合物の重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
このような光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤としては、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。中でも、オキシムエステル化合物、α−アミノアセトフェノン化合物が好ましく、オキシムエステル化合物がより好ましい。α−アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。
【0038】
α−アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成するものであればよい。
【0039】
オキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。
【0040】
このような光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の光重合開始剤の配合量は、好ましくはアルカリ溶解性樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは、0.1〜30質量部である。0.1質量部以上の場合、光照射部/未照射部の耐現像性のコントラストを良好に得ることができる。また、40質量部以下の場合、硬化物特性が向上する。
【0041】
(接着層(A))
接着層(A)はアルカリ現像型樹脂組成物を用いて形成することができる。前記アルカリ現像型樹脂組成物としては、フェノール性水酸基およびカルボキシル基のうち1種以上の官能基を含有し、アルカリ溶液で現像可能な樹脂を含む組成物であればよく、光硬化性樹脂組成物でも熱硬化性樹脂組成物でも用いることができる。好ましくは、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物を含む樹脂組成物が挙げられ、公知慣用のものが用いられる。
【0042】
具体的には例えば、従来からソルダーレジスト組成物として用いられている、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤と、熱反応性化合物とを含む光硬化性熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、カルボキシル基含有ウレタン樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、光塩基発生剤および熱硬化成分を含む樹脂組成物を用いることもできる。ここで、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤、光塩基発生剤としては、公知慣用の化合物が用いられ、また、熱反応性化合物としては、環状(チオ)エーテル基などの熱による硬化反応が可能な官能基を有する公知慣用の化合物が用いられる。
【0043】
本発明において、接着層(A)は(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーとしては、公知のものを用いることができる。
【0044】
本発明において、接着層(A)は難燃剤を含有することが好ましい。難燃剤としては、公知慣用の難燃剤を用いることができる。公知慣用の難燃剤としてはリン酸エステル及び縮合リン酸エステル、リン元素含有(メタ)アクリレート、フェノール性水酸基を有するリン含有化合物、環状フォスファゼン化合物、ホスファゼンオリゴマー、ホスフィン酸金属塩等のリン含有化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル等のハロゲン化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト様化合物などの層状複水酸化物が挙げられる。
【0045】
以上説明したような接着層(A)および樹脂保護層(B)において用いる樹脂組成物には、必要に応じて以下の成分を配合することができる。
【0046】
(高分子樹脂)
高分子樹脂は、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に、公知慣用のものを配合することができる。このような高分子樹脂としては、セルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマー、ポリビニルアセタール系、ポリビニルブチラール系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系バインダーポリマー、ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。この高分子樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
(無機充填剤)
無機充填材は、硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために配合することができる。このような無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、無定形シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ノイブルグシリシャスアース等が挙げられる。
【0048】
(着色剤)
着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの公知慣用の着色剤を配合することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0049】
(有機溶剤)
有機溶剤は、樹脂組成物の調製のためや、基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために配合することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0050】
(エチレン性不飽和結合を有する化合物)
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知の単官能、2官能、多官能のものを用いることができる。
【0051】
(その他成分)
必要に応じてさらに、メルカプト化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、公知慣用のものを用いることができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0052】
また、保護層(B)は、硬化塗膜の柔軟性の観点から、後述の難燃剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0053】
本発明のドライフィルムにおいて、接着層(A)は、銅回路への追従性の観点より、保護層(B)よりも厚い方が好ましい。
【0054】
本発明のドライフィルムは、フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうち少なくともいずれか一方、好適には双方に用いることができ、これにより、折り曲げに対する十分な耐久性を備えるフレキシブルプリント配線板を、コスト性および作業性を向上しつつ得ることができる。具体的には、本発明のドライフィルムは、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうち少なくともいずれか1つの用途に用いることができる。
【0055】
本発明のドライフィルムは、その少なくとも片面を、フィルムで支持または保護されていてもよい。ドライフィルムの製造は、例えば、保護層(B)を構成する樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その塗布層を乾燥し、キャリアフィルム上に保護層(B)を形成する。同様にして、該保護層(B)上に、接着層(A)を構成する樹脂により、接着層(A)を形成し、本発明のドライフィルムを得ることができる。塗膜強度の観点から、各層間の界面は、馴染んでいてもよい。キャリアフィルム上にドライフィルムを形成した後、さらに、ドライフィルムの表面に剥離可能なカバーフィルムを積層してもよい。また、カバーフィルム上にドライフィルムを形成した後、ドライフィルムの表面に剥離可能なキャリアフィルムを積層してもよい。
【0056】
樹脂組成物の塗布方法は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の公知の方法でよい。また、乾燥方法は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、および、ノズルより支持体に吹き付ける方法等、公知の方法でよい。キャリアフィルムとしては、2〜150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、乾燥塗膜との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0057】
(配線板の製造方法)
本発明においては、フレキシブルプリント配線基板上に、本発明のドライフィルムをラミネートし、光照射によりパターニングして、現像液によりパターンを一括して形成して絶縁膜を形成することで、フレキシブルプリント配線板を得ることができる。本発明によれば、前記赤外線吸収スペクトルにおいて、イミド由来のピークを、前記接着面(a)は有さず、前記保護面(b)は有するドライフィルムを用いたことで、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜としての要求性能を満足し、折り曲げ部と実装部との一括形成プロセスにも適したフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜を提供することが可能となった。
【0058】
以下に、本発明のドライフィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を製造する方法の一例として、保護層(B)が、アルカリ溶解性樹脂と光重合開始剤と熱反応性化合物とを含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなり、かつ、接着層(A)が、アルカリ溶解性樹脂と熱反応性化合物とを含み、光重合開始剤を含まないアルカリ現像型樹脂組成物からなる場合に関して、図2の工程図に手順を示す。すなわち、導体回路を形成したフレキシブル配線基板上に本発明のドライフィルムをラミネートして層を形成する工程(積層工程)、当該層に活性エネルギー線をパターン状に照射する工程(露光工程)、および、当該層をアルカリ現像して、パターン化された層を一括形成する工程(現像工程)を含む製造方法である。また、必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光硬化や熱硬化(ポストキュア工程)を行い、パターン化された層を完全に硬化させて、信頼性の高いフレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0059】
また、前記保護層(B)において、光塩基発生剤としての機能を有する光重合開始剤を用いるか、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用する場合は、図3の工程図に示す手順に従い、フレキシブルプリント配線板を製造することもできる。すなわち、導体回路を形成したフレキシブル配線基板上に本発明のドライフィルムをラミネートして層を形成する工程(積層工程)、当該層に活性エネルギー線をパターン状に照射する工程(露光工程)、当該層を加熱する工程(加熱(PEB)工程)、および、当該層をアルカリ現像して、パターン化された層を形成する工程(現像工程)を含む製造方法である。また、必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光硬化や熱硬化(ポストキュア工程)を行い、パターン化された層を完全に硬化させて、信頼性の高いフレキシブルプリント配線板を得ることができる。特に、保護層(B)においてイミド環またはイミド前駆体骨格含有アルカリ溶解性樹脂を用いた場合には、この図3の工程図に示す手順を用いることが好ましい。
【0060】
以下、図2または図3に示す各工程について、詳細に説明する。
[積層工程]
この工程では、導体回路2が形成されたフレキシブルプリント配線基板1に、本発明のドライフィルムをラミネート(積層)することによって、アルカリ溶解性樹脂等を含むアルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層3(接着層(A))と、樹脂層3上の、アルカリ溶解性樹脂等を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層4(保護層(B))と、からなる積層構造体を形成する。
【0061】
[露光工程]
この工程では、活性エネルギー線の照射により、樹脂層4に含まれる光重合開始剤をネガ型のパターン状に活性化させて、露光部を硬化する。露光機としては、直接描画装置、メタルハライドランプを搭載した露光機などを用いることができる。パターン状の露光用のマスクは、ネガ型のマスクである。
【0062】
露光に用いる活性エネルギー線としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるレーザー光または散乱光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく光重合開始剤を活性化させることができる。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、通常は、100〜1500mJ/cmとすることができる。
【0063】
[PEB工程]
この工程では、露光後、樹脂層を加熱することにより、露光部を硬化する。この工程により、光塩基発生剤としての機能を有する光重合開始剤を用いるか、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用した組成物からなる保護層(B)の露光工程で発生した塩基によって、保護層(B)を深部まで硬化できる。加熱温度は、例えば、80〜140℃である。加熱時間は、例えば、10〜100分である。当該PEB工程による硬化は、例えば、熱反応によるエポキシ樹脂の開環反応であるため、光ラジカル反応で硬化が進行する場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。
【0064】
[現像工程]
この工程では、アルカリ現像により、未露光部を除去して、ネガ型のパターン状の絶縁膜、特には、カバーレイおよびソルダーレジストを形成する。現像方法としては、ディッピング等の公知の方法によることができる。また、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液、または、これらの混合液を用いることができる。
【0065】
[ポストキュア工程]
なお、現像工程の後に、さらに、絶縁膜に光照射してもよく、また、例えば、150℃以上で加熱してもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0067】
<イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂の合成>
撹拌機、窒素導入管、分留環および冷却環を取り付けたセパラブル3つ口フラスコに、3,5−ジアミノ安息香酸を12.2g、2,2’−ビス[4―(4―アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを8.2g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を30g、γ−ブチロラクトンを30g、4,4’−オキシジフタル酸無水物を27.9g、トリメリット酸無水物を3.8g加え、窒素雰囲気下、室温、100rpmで4時間撹拌した。次いで、トルエンを20g加え、シリコン浴温度180℃、150rpmでトルエンおよび水を留去しながら4時間撹拌して、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂溶液を得た。その後、固形分が30質量%となるようにγ−ブチロラクトンを添加した。得られた樹脂溶液は、固形分酸価86mgKOH/g、Mw10000であった。
【0068】
<イミド由来のピークを有しない樹脂組成物(α1)の調整>
下記成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、調製した。
酸変性エポキシアクリレート樹脂 100質量部
(日本化薬(株)社製、ZFR−1401H)
酸変性エポキシアクリレート樹脂 60質量部
(日本化薬(株)社製、PCR−1170H)
トリメチロールプロパンEO変性アクリレート 24質量部
(東亜合成(株)社製、アロニックスM350
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 28質量部
(三菱化学(株)製、E1001)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 18質量部
(三菱化学(株)製、jER828)
水酸化アルミニウム 30質量部
(昭和電工(株)社製、ハイジライトH−42M)
アルキルフェノン系光重合開始剤 10質量部
(BASF社製、イルガキュア379)
合計 270質量部
【0069】
<イミド由来のピークを有する樹脂組成物(β1)の調整>
下記成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、調製した。
上記で合成したイミド環を有するアルカリ溶解性樹脂 233質量部
酸変性エポキシアクリレート樹脂 60質量部
(日本化薬(株)社製、PCR−1170H)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 4質量部
(三菱化学(株)製、E1001)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 35質量部
(三菱化学(株)製、jER828)
オキシム系光重合開始剤 5質量部
(BASFジャパン社製、OXE−02)
合計 337質量部
【0070】
<イミド由来のピークを有する樹脂組成物(β2)の調整>
下記成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、調製した。
上記で合成したイミド環を有するアルカリ溶解性樹脂 233質量部
酸変性エポキシアクリレート樹脂 60質量部
(日本化薬(株)社製、PCR−1170H)
トリメチロールプロパンEO変性アクリレート 10質量部
(東亜合成(株)社製、アロニックスM350
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 4質量部
(三菱化学(株)製、E1001)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 35質量部
(三菱化学(株)製、jER828)
オキシム系光重合開始剤 5質量部
(BASFジャパン社製、OXE−02)
合計 347質量部
【0071】
<ドライフィルムの作製>
キャリアフィルム上に、表1に示す保護層を構成する樹脂組成物を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、保護層(B)を形成した。保護層(B)の表面に、表1に示す接着層を構成する樹脂組成物を乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布した。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、接着層(A)を形成し、ドライフィルムを作製した。
【0072】
<FT−IRのATR法による赤外線吸収スペクトル測定>
上記で得たドライフィルムのFT−IR測定をPerkinElmer社製Spectrum100を用いて行った。測定はATR測定用ユニットDura Sample IRIIのプリズムに上記ドライフィルムの被測定面を直接接触させ、赤外光を入射することで行った。
【0073】
<イミド由来のピークの有無の判定>
上記で得た赤外線吸収スペクトルにおいて、1785〜1765cm−1の範囲にピークが有るものを「○」、無いものを「×」と判定した。
【0074】
<アクリル由来のピークの有無の判定>
上記で得た赤外線吸収スペクトルにおいて、1420〜1400cm−1の範囲にピークが有るものを「○」、無いものを「×」と判定した。
【0075】
<アルカリ現像性(パターニング)および折り曲げ性評価>
上記で得たドライフィルムをフレキシブルプリント配線板に真空ラミネーターを用いて60℃でラミネートした後、ORC社製のHMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)にて、露光量500mJ/cmで、ネガ型のパターン状に光照射した。次いで、90℃で60分間加熱処理を行った。その後、30℃・1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行い、アルカリ現像性の可否を評価した。
【0076】
次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃/60分間熱処理を行い、パターン状の硬化塗膜が形成された評価基板を得た。得られた評価基板を用いてはぜ折りを行い、硬化塗膜にクラックが入る手前の回数を記録した。3回以上折り曲げられた場合を○、折り曲げ回数が2回以下であった場合を×とした。
【0077】
<ラミネート性評価>
上記で得たドライフィルムを、ニチゴーモートン社製フィルム搬送加圧式真空ラミネータ(CPV−300)を用いて、ドライフィルムの接着面(b)が銅張積層板と接触するように、下記の条件で真空ラミネートを行い、空隙の有無を確認した。得られた結果を、下記の表1中に示す。
ラミネート温度:60℃
真空度:4hPa
真空引き時間:30秒
ラミネート加圧力:0.3MPa
ラミネート加圧時間:25秒
【0078】
<はんだ耐熱性評価>
上記で得た評価基板に、ロジン系フラックスを塗布し、予め260℃に設定したはんだ槽に20秒(10秒×2回)浸漬し、硬化塗膜の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。得られた結果を、下記の表1中に示す。
◎:10秒×2回浸漬しても膨れ・剥がれがなかった。
○:10秒×1回浸漬しても膨れ・剥がれがなかったが、10秒×2回浸漬すると膨れ・剥がれが生じた。
×:10秒×1回浸漬すると膨れ・剥がれが生じた。
【0079】
<鉛筆硬度評価>
上記で得た評価基板に対して、JIS K5400に準拠して、硬化塗膜の鉛筆硬度を評価した。得られた結果を、下記の表1中に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
上記表1に示す評価結果から明らかなように、実施例のドライフィルムは、アルカリ現像性に優れ、またその硬化塗膜ははんだ耐熱性等の絶縁膜としての要求性能を満足するものであった。一方、接着面と保護面の両方にイミド由来のピークを有する比較例1のドライフィルムはアルカリ現像性に劣るものであった。また、接着面と保護面のいずれにもイミド由来のピークを有しない比較例2のドライフィルムは、はんだ耐熱性等に劣るものであった。
【符号の説明】
【0082】
a 接着面
b 保護面
A 接着層
B 保護層
1 フレキシブルプリント配線基板
2 導体回路
3 樹脂層
4 樹脂層
5 マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6