(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、特許文献1に記載された熱交換器においては、一般流路からの第1の流体が、連通部における流動経路にて衝突し、連通部付近での第1の流体の流れが淀む可能性があった。そして、熱交換器において、淀みが発生すると、第1の流体の温度が上昇して、第1の流体が局所的に沸騰してしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱交換器において、連通部付近での第1の流体の淀みの発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
この熱交換器は、第1の流体が流動する流動経路を有し、隣接して配置される複数のプレートを備える。
【0008】
そして、プレートのそれぞれは、本体部と、連通部とを備える。本体部は、プレートの内部において第1の流体が流動する流動経路である一般流路を有する。連通部は、当該プレートから他のプレートへの流動経路である連通流路を有する。
【0009】
さらに、本発明の一側面においては、プレートそれぞれの連通部の連通流路における代表長さが、本体部の一般流路における連通流路への接続部分の代表長さよりも長くなるように形成されている。
【0010】
このような熱交換器によれば、一般流路から連通流路への第1の流体の流動をスムーズなものとすることができ、連通部の接続部分において淀みが発生することを低減できる。このため、本発明の一側面における熱交換器によれば、第1の流体の温度が上昇することを低減でき、第1の流体が局所的に沸騰することを低減できる。
【0011】
また、本発明の一側面において、連通部の代表長さを、連通部における一方の端部から他方の端部までの距離としてもよい。さらに、本体部の一般流路における連通流路への接続部分の代表長さを、連通部の一方の端部から他方の端部までに沿った方向における接続部分の一方の端部から他方の端部までの距離としてもよい。
【0012】
このような場合、本発明の一側面における連通部は、連通部における一方の端部及び他方の端部のうちの少なくとも一方が、接続部分の一方の端部及び他方の端部のうちの少なくとも一方よりも外側に位置するように形成されていてもよい。
【0013】
すなわち、本発明の一側面における熱交換器では、連通部における連通流路が接続部分よりも幅広に形成され、連通流路の端部が接続部分の端部よりも外側に位置していてもよい。
【0014】
このような熱交換器によれば、一般流路から連通流路への第1の流体の流動をよりスムーズなものとすることができ、連通部の接続部分において、淀みが発生することをより確実に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明における一例としての実施形態を図面と共に説明する。
<排気熱回収装置>
図1に示す排気熱回収装置1は、内燃機関140を有した移動体に搭載される。この排気熱回収装置1は、内燃機関140からの排気142を高温流体とし、内燃機関140の冷却液144を低温流体として熱交換することにより、排気142から熱を回収する。本実施形態における冷却液144は、冷却水であってもよいし、油液であってもよい。
【0017】
なお、本実施形態における排気142が、特許請求の範囲に記載された第2の流体の一例であり、本実施形態における冷却液144が、特許請求の範囲に記載された第1の流体の一例である。
【0018】
本実施形態の排気熱回収装置1は、排気部2と、シェル部材4と、熱交換部6(
図2参照)と、流入部8(
図2参照)と、弁10とを備えている。
排気部2は、内燃機関140からの排気142を下流側へと導く経路を形成する。シェル部材4は、排気部2の外側を覆う部材である。熱交換部6は、排気部2とシェル部材4との間に配置された熱交換器30(
図2参照)を有し、高温流体としての排気142と低温流体としての冷却液144との間で熱交換する。
【0019】
流入部8は、排気部2から熱交換部6へと排気142が流入する部位である。弁10は、排気142の流路を開放閉塞する弁であり、排気部2における排気142の流路に沿って流入部8よりも下流側に配置されている。
【0020】
図2に示すように、排気部2は、排気管12を備えている。排気管12は、両端が開口した円筒状の部材である。排気管12の上流側端部は、内燃機関140からの排気142が流入するエキゾーストパイプやエキゾーストマニホールドなどに接続されている。
【0021】
シェル部材4は、排気管14と、外殻部材20と、蓋部材22と、保持部材24とを備えている。
排気管14は、全体として円筒状の部材であり、一方の端部である上流端16が、排気管12の外径よりも大きな内径の開口を有している。その排気管14の上流端16における内部空間には、排気管12における上流端とは反対側の端部である排気下流端18が、シェル部材4と非接触な状態で配置される。
【0022】
外殻部材20は、排気管12の直径よりも大きな内径の円筒状の部材である。外殻部材20の下流側の端部は、排気管14の上流端16に接続されている。
蓋部材22は、排気管12における排気142の流路に沿った外殻部材20の上流側の開口を閉塞する。
【0023】
つまり、外殻部材20と蓋部材22と排気管12とにより、外殻部材20と蓋部材22と排気管12とに囲まれた、環状の空間である熱交換室28が形成される。
<熱交換器の構造>
熱交換室28に配置される熱交換器30は、複数のプレート32−1〜32−Nと、流入管34と、流出管36とを備えている。すなわち、熱交換器30は、いわゆるプレート積層型の熱交換器である。なお、ここでの符号Nは、プレート32の枚数を表す識別子であり、2以上の正の整数である。
【0024】
流入管34は、熱交換器30の外部からの冷却液144を1つのプレート32に流入する管である。流出管36は、1つのプレート32から熱交換器30の外部へと冷却液144を流出する管である。
【0025】
各プレート32は、冷却液144の流動経路を形成する部材であり、
図3に示すように、本体部38と、第1連通部40と、第2連通部41とを備える。本体部38は、プレート32の内部において第1の流体が流動する一般流路を形成する。第1連通部40及び第2連通部41は、当該プレート32から、当該プレート32に隣接する他のプレート32への連通流路を形成する。
【0026】
具体的に、各プレート32は、第1プレート板42と、第2プレート板62とを備えている。
第1プレート板42は、全体として、中心に円形の開口を有した円板状に形成された部材である。この第1プレート板42の周縁には、同一方向に突出した壁部が形成されている。以下、第1プレート板42においては、壁部が突出する面を内表面とし、壁部が突出する面とは反対側の面を外表面と称す。
【0027】
第2プレート板62は、中心に円形の開口を有した円板状に形成された部材である。この第2プレート板62の周縁には、同一方向に突出した壁部が形成されている。以下、第2プレート板62においては、壁部が突出する面を内表面とし、壁部が突出する面とは反対側の面を外表面と称す。
【0028】
各プレート32は、第1プレート板42の壁部の内面に、第2プレート板62の壁部の外面を係合させることで形成される。各プレート32は、第1プレート板42と第2プレート板62との内表面同士が非当接状態となるように形成される。
【0029】
これにより、プレート32の各々には、当該プレート32を構成する第1プレート板42の内表面と第2プレート板62の内表面との間に隙間が形成される。その隙間が冷却液144の流動経路、即ち、一般流路として機能する。そして、各プレート32は、互いに隣接するプレート32同士の外表面が隙間82を有する非当接状態となるように配置される。
【0030】
次に、第1プレート板42における第1連通部位46は、第1プレート板42に穿設された第1連通孔54の周縁から、壁部とは反対の方向へと立設する部位である。ここで第1連通孔54は、一般流路の代表長さDよりも長い直径の円形の開口である。そして、第1連通孔54は、第1プレート板42の径方向に沿った外側の周縁が、一般流路(即ち、第1本体部位44)の径方向に沿った外側の端部よりも外側に位置するように形成されている。
【0031】
第2連通部位48は、第1プレート板42に穿設された第2連通孔56の周縁から、壁部とは反対の方向へと立設する部位である。ここで第2連通孔56は、一般流路の代表長さDよりも長い直径DDの円形の開口である。ここで言う一般流路の代表長さDとは、一般流路における連通流路への接続部分の代表長さであり、プレート32の径方向に沿った一方の壁部から他方の壁部までの距離である。
【0032】
そして、第2連通孔56は、第1プレート板42の径方向に沿った外側の周縁が、一般流路(即ち、第1本体部位44)の径方向に沿った外側の端部よりも外側に位置するように形成されている。
【0033】
また、第2プレート板62における第3連通部位66は、第2プレート板62に穿設された第3連通孔74の周縁から、壁部とは反対の方向へと立設する部位である。ここで第3連通孔74は、一般流路の代表長さDよりも長い直径の円形の開口である。そして、第3連通孔74は、第2プレート板62の径方向に沿った外側の周縁が、一般流路(即ち、第2本体部位64)の径方向に沿った外側の端部よりも外側に位置するように形成されている。
【0034】
第4連通部位68は、第2プレート板62に形成された第4連通孔76の周縁から、壁部とは反対の方向へと立設する部位である。ここで第4連通孔76は、一般流路の代表長さDよりも長い直径の円形の開口である。そして、第4連通孔76は、第2プレート板62の径方向に沿った外側の周縁が、一般流路(即ち、第2本体部位64)の径方向に沿った外側の端部よりも外側に位置するように形成されている。
【0035】
そして、第2プレート板62に形成された第3連通部位66と、その第2プレート板62の外表面に対向する外表面を有した第1プレート板42に形成された第1連通部位46とが接合されることで、第2連通部41が形成される。この第2連通部41は、流入管34からの冷却液144を、第1プレート板42を有するプレート32の内部へと流動させる流路を形成する。すなわち、第1プレート板42に形成された第1連通孔54は、そのプレート32への冷却液144の流入口として機能する。
【0036】
また、第1プレート板42に形成された第2連通部位48と、その第1プレート板42の外表面に対向する外表面を有した第2プレート板62に形成された第4連通部位68とが接合されることで、第1連通部40が形成される。この第1連通部40は、その第1プレート板42を有するプレート32の内部からの冷却液144を、流出管36へと流動させる連通流路を形成する。すなわち、第1プレート板42に形成された第2連通孔56は、そのプレート32からの冷却液144の流出口として機能する。
【0037】
さらに、熱交換器30は、各プレート32の径方向に沿った内側の周縁と排気管12の外表面との間に隙間80が形成されるように配置される。熱交換器30は、各プレート32の径方向に沿った外側の周縁と外殻部材20の内表面との間に隙間84が形成されるように配置される。
【0038】
これにより、本実施形態の熱交換器30においては、隙間80,隙間82,隙間84を排気142が流れる。この排気142の流動方向は、熱交換器30の径方向に沿った方向となる。
【0039】
さらに、熱交換器30では、隙間80,隙間82,隙間84を流れる排気142を高温流体とし、各プレート32内を流動する冷却液144を低温流体として、熱交換が行われる。すなわち、熱交換器30が配置された熱交換室28が、熱交換部6として機能する。
【0040】
保持部材24は、熱交換室28に配置された熱交換器30を保持する。
導入部材88は、排気管12の外径よりも径の大きい円筒状の部材であり、一方の端部が保持部材24に接続されている。
【0041】
導入部材88において、保持部材24に接続された側とは反対側の端部は、拡径するディフューザ状に形成されている。
そして、導入部材88は、排気管12の排気下流端18との間に周方向に渡った開口が形成されるように配置される。この開口は、排気部2から熱交換部6へと排気142が流入する流入口として機能する。
【0042】
弁10は、少なくとも、弁体94と、弁座96とを備え、弁体94が弁座96と接触することで、排気部2(導入部材88)を閉塞する。
なお、本実施形態においては、導入部材88におけるディフューザ状の端部が、弁座96として機能する。ただし、本発明における弁座96は、これに限るものではなく、専用に設けられていても良い。
【0043】
弁座96には、メッシュ状に形成されたメッシュ部材100が取り付けられている。
なお、本実施形態における弁10は、内燃機関140の冷却液144の液温が、予め規定された規定温度よりも高い場合に開放される。一方、弁10は、内燃機関140の冷却液144の液温が規定温度よりも低い場合に閉塞される。
<実施形態の効果>
以上説明したように、熱交換器30においては、第2連通孔56が、一般流路の代表長さDよりも長い直径DDの円形の開口として形成されている。このため、第1連通部40における代表長さを直径DDとした場合、その第1連通部40の代表長さは、本体部38の一般流路における連通流路への接続部分の代表長さDよりも長くなる。
【0044】
このような熱交換器30によれば、一般流路から連通流路への冷却液144の流動をスムーズなものとすることができ、第1連通部40及び第2連通部41と本体部38との接続部分において淀みが発生することを低減できる。これにより、熱交換器30によれば、冷却液144の温度が上昇することを低減でき、冷却液144が局所的に沸騰してしまうことを低減できる。
【0045】
特に、熱交換器30では、第2連通孔56は、プレート32の径方向に沿った外側の周縁が、一般流路(即ち、本体部38)の径方向に沿った外側の端部よりも外側に位置するように形成されている。
【0046】
したがって、熱交換器30によれば、一般流路から連通流路への冷却液144の流動をよりスムーズなものとすることができ、第2連通部41の接続部分において、淀みが発生することをより確実に低減できる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、熱交換器30のプレート32の形状を円板状としていたが、本発明の熱交換器におけるプレートの形状は、円板状に限るものではなく、矩形状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
【0048】
また、本発明の熱交換器においては、第1連通孔54,及び第2連通孔56の各々は、プレート32の径方向に沿った軸方向中心の周縁が、一般流路(即ち、本体部38)の径方向に沿った軸方向中心側の端部よりも内側に位置するように形成されていてもよい。さらに、本発明の熱交換器においては、第3連通孔74,及び第4連通孔76の各々は、プレート32の径方向に沿った軸方向中心の周縁が、一般流路(即ち、本体部38)の径方向に沿った軸方向中心側の端部よりも内側に位置するように形成されていてもよい。
【0049】
すなわち、本発明の熱交換器においては、連通部における一方の端部及び他方の端部の少なくとも一方が、一般流路(即ち、本体部38)における接続部分の一方の端部及び他方の端部の少なくとも一方よりも外側に位置するように形成されていればよい。さらに、ここで言う「連通部における一方の端部及び他方の端部」とは、連通孔54,56,74,76の周縁に限らず、連通部40,41における径方向に沿った一方の壁部、及び他方の壁部であってもよい。
【0050】
なお、上記実施形態においては、排気下流端18と導入部材88との間の開口を、排気管12から熱交換部6への排気142の流入口として形成していたが、排気管12から熱交換部6への排気142の流入口は、排気管12自体に孔を穿設することで形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、熱交換器30の適用対象を排気熱回収装置1としていたが、熱交換器30の適用対象は、排気熱回収装置1に限るものではない。
なお、上記実施形態の構成の一部を省略した態様も本発明の実施形態である。また、上記実施形態と変形例とを適宜組み合わせて構成される態様も本発明の実施形態である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も本発明の実施形態である。