特許第6475007号(P6475007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475007
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】バースト位相調整装置、および、方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20190218BHJP
   H04L 29/14 20060101ALI20190218BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H04L7/00 810
   H04L13/00 315A
   H04L25/02 301K
   H04L13/00 311
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-255161(P2014-255161)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-116161(P2016-116161A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平澤 良保
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−322765(JP,A)
【文献】 特開平10−178377(JP,A)
【文献】 特開平08−186555(JP,A)
【文献】 特開2011−071900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04L 5/14
H04L 25/02
H04L 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストパタンを生成するテストパタン生成部と、
送信信号の送信タイミングを生成するバーストタイミング生成部と、
前記送信タイミングに従って、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を生成し、前記テストパタンをデータ部とする前記送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号を前記通信対向装置へ送信し、前記通信対向装置から受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較するテストパタン照合部と、
前記比較の結果、前記データ部と前記テストパタンに不一致があった場合、前記受信信号の前記データ部と前記テストパタンの不一致の発生から終了までのエラー発生範囲の幅を計測し、前記エラー発生範囲の幅に基づいて位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信タイミングをずらす位相調整部と
を備えることを特徴とするバースト位相調整装置。
【請求項2】
前記位相調整部は、
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの後ろ寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より後ろの部分の幅と前記エラー発生範囲の幅とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを前にずらす
ことを特徴とする請求項1に記載のバースト位相調整装置。
【請求項3】
前記位相調整部は、
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの後ろ寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より後ろの部分の幅と、前記エラー発生範囲の幅と、前記受信信号と前記送信信号との間の位相差とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを前にずらす
ことを特徴とする請求項1に記載のバースト位相調整装置。
【請求項4】
前記位相調整部は、
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの前寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より前の部分の幅と、前記エラー発生範囲の幅と、前記送信信号と前記受信信号との間の位相差とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを遅らせる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のバースト位相調整装置。
【請求項5】
テストパタンを生成するテストパタン生成部と、
送信信号の送信タイミングを生成するバーストタイミング生成部と、
前記送信タイミングに従って、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を生成し、前記テストパタンをデータ部とする前記送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号を前記通信対向装置へ送信し、前記通信対向装置から受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較するテストパタン照合部と、
前記比較の結果、前記データ部と前記テストパタンに不一致があり、前記不一致が発生している箇所に片寄りがある場合、前記比較結果から位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信タイミングをずらす位相調整部と、
前記不一致が発生している箇所に片寄りがない場合に、前記送信信号の送信レベルを上げる減衰部と
を備えることを特徴とするバースト位相調整装置。
【請求項6】
通信対向装置を折り返し状態にし、
テストパタンをデータ部とする送信信号を前記通信対向装置へ送信し、
前記通信対向装置から受信した受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較し、
前記データ部と前記テストパタンに不一致があった場合、前記受信信号の前記データ部と前記テストパタンの不一致の発生から終了までのエラー発生範囲の幅を計測し、前記エラー発生範囲の幅に基づいて位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信信号の送信タイミングをずらす
ことを特徴とするバースト位相調整方法。
【請求項7】
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの後ろ寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より後ろの部分の幅と前記エラー発生範囲の幅とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを前にずらす
ことを特徴とする請求項6に記載のバースト位相調整方法。
【請求項8】
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの後ろ寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より後ろの部分の幅と、前記エラー発生範囲の幅と、前記受信信号と前記送信信号との間の位相差とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを前にずらす
ことを特徴とする請求項6に記載のバースト位相調整方法。
【請求項9】
前記エラー発生範囲が前記テストパタンの前寄りのとき、前記送信信号のうち前記データ部より前の部分の幅と、前記エラー発生範囲の幅と、前記送信信号と前記受信信号との間の位相差とを加算した値に基づく量を前記位相調整量とし、
前記位相調整量に従って、前記送信タイミングを遅らせる
ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載のバースト位相調整方法。
【請求項10】
通信対向装置を折り返し状態にし、
テストパタンをデータ部とする送信信号を前記通信対向装置へ送信し、
前記通信対向装置から受信した受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較し、
前記データ部と前記テストパタンに不一致があり、前記不一致が発生している箇所に片寄りがある場合、前記比較結果から位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信信号の送信タイミングをずらし、
前記不一致が発生している箇所に片寄りがない場合に、前記送信信号の送信レベルを上げる
ことを特徴とするバースト位相調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の独立した送受信タイミングを持つISDN回線のバースト位相調整装置、および、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11にISDN(Integrated Services Digital Network)網の運用が開始された当初のシステムの構成例と、複数のISDN回線の送受信のタイミング例を示す。
【0003】
複数あるISDN回線の送受信のタイミングは局で決められており、ISDN回線A、ISDN回線B、ISDN回線Cの送信と受信の信号は同じ時刻に行われる。そのため、各ISDN回線間にて信号の漏話による干渉は発生するが、これらの干渉は各ISDN回線の送信信号同士の間か、受信信号同士の間のみでしか発生しない。
【0004】
送信信号同士の間での送信パワーの差分や受信信号同士の間での受信パワーの差分は小さいため、信号の漏話による干渉の影響は小さい。
【0005】
なお、TTC(情報通信技術委員会)標準JT-G961に従うISDN回線の送受信は、図11のように、2.5ms周期で繰り返される。この送受信のタイミングをバーストタイミング、あるいは、バースト位相と呼ぶ。
【0006】
図12にISDN網の現在ある新たな運用方法のシステムの構成例と、複数のISDN回線のバーストタイミングの例を示す。
【0007】
現在ある新たな運用方法は、運用コストの低減を目的にして、ISDN網の代わりに回線費用の安価なIP(Internet Protocol)網を利用する方法である。
【0008】
このような構成の場合、IP網は非同期システムであるため、ISDN網と同期のとれたバーストタイミング情報をIP網から生成することができない。
【0009】
図12の例の場合、ISDN網であるISDN回線Aのバーストタイミング情報と、IP網を基に生成されたISDN回線BとISDN回線Cのバーストタイミング情報とは位相が同期していない。そのため、ISDN回線Aの受信と、ISDN回線BとISDN回線Cの送信とが重なり、信号の漏話による干渉が発生する。
【0010】
一般に、受信信号の受信パワーは、伝搬ロスがあるため、送信信号の送信パワーより小さい。そのため、受信タイミングに他の回線の送信タイミングが重なると、干渉の影響が大きくなる。また、送受信は2.5ms周期で行われるため、漏話による干渉も2.5ms周期で発生することになる。
【0011】
このように、互いにバーストタイミングが同期していない独立した回線が隣接している場合、他の回線との間で信号の漏話による干渉が発生するおそれがある。
【0012】
特許文献1および特許文献2には、このような漏話による干渉を低減する方法が開示されている。この方法では、まず、漏話の有無と漏話のバーストタイミングを抽出し、漏話のバーストタイミングを基準として、回線のバーストタイミングを設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平04-014940号公報
【特許文献2】特開平03-270441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1および特許文献2の方法では、検出できる漏話のパワー(信号レベル)は、漏話を検出している局あるいは加入者宅の受信感度(最低受信レベル)までであるため、受信感度以下のパワーの漏話を検出することができない。そのため、漏話を検出できない場合であっても、漏話による干渉が発生している可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することを可能にするバースト位相調整装置、および、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の問題を解決するために、本発明のバースト位相調整装置は、テストパタンを生成するテストパタン生成部と、送信信号の送信タイミングを生成するバーストタイミング生成部と、前記送信タイミングに従って、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を生成し、前記テストパタンをデータ部とする前記送信信号を生成する送信信号生成部と、前記送信信号を前記通信対向装置へ送信し、前記通信対向装置から受信信号を受信する送受信部と、前記受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較するテストパタン照合部と、前記比較の結果、前記データ部と前記テストパタンに不一致があった場合、前記比較結果から位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信タイミングをずらす位相調整部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のバースト位相調整方法は、通信対向装置を折り返し状態にし、テストパタンをデータ部とする送信信号を前記通信対向装置へ送信し、前記通信対向装置から受信した受信信号から前記データ部を抽出して前記テストパタンと比較し、前記データ部と前記テストパタンに不一致があった場合、前記比較結果から位相調整量を決定し、前記位相調整量に従って前記送信信号の送信タイミングをずらすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバースト位相調整装置、および、方法により、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態のバースト位相調整装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の第一の実施形態のバースト位相調整装置の動作例を示す図である。
図3】本発明の第一の実施形態のバースト位相調整装置のOCUでの実現例を示す図である。
図4】本発明の第一の実施形態のOCUの動作状態の例を示す図である。
図5】本発明の第一の実施形態の送受信タイミングの例を示す図である。
図6】本発明の第一の実施形態の位相調整の例の概要を示す図である。
図7】本発明の第二の実施形態のバースト位相調整装置の構成例を示す図である。
図8】本発明の第二の実施形態のバースト位相調整装置のOCUでの実現例を示す図である。
図9】本発明の第二の実施形態のバースト位相調整装置の動作例を示す図である。
図10】本発明の第三の実施形態のバースト位相調整装置のOCUでの実現例を示す図である。
図11】ISDNシステムの送受信タイミングの例を示す図である。
図12】IP回線を含むISDNシステムの送受信タイミングの例を示す図である。
図13】TTC標準JT-G961のフレーム構成と送受信タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施の形態について、具体例を用いて説明する。
【0021】
まず、図1に本実施形態のバースト位相調整装置の構成例を示す。テストパタン生成部11、送信信号生成部12、送受信部13、テストパタン照合部14、位相調整部15およびバーストタイミング生成部16により構成される。
【0022】
テストパタン生成部11は、テストパタンを生成する部分である。
【0023】
バーストタイミング生成部16は、送信信号の送信タイミング(バーストタイミング)を生成する部分である。
【0024】
送信信号生成部12は、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を生成し、また、テストパタン生成部11で生成したテストパタンをデータ部とする送信信号を生成する部分である。ここで、折り返し状態とは、受信したデータを折り返し送信データとして送信する状態のことを指す。このとき、送信信号生成部12で生成する送信信号は、バーストタイミング生成部16で生成したバーストタイミングに従って生成される。
【0025】
送受信部13は、送信信号生成部12で生成した送信信号を通信対向装置に向けて送信し、また、通信対向装置からの受信信号を受信する部分である。
【0026】
テストパタン照合部14は、送受信部13で受信した受信信号からデータ部を抽出し、テストパタン生成部11で生成したテストパタンと抽出したデータ部を比較する部分である。送信信号生成部12で、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を送信しているため、送信信号で送信したテストパタンは、通信対向装置において、通信対向装置が送信する信号のデータ部に挿入されて折り返される。そのため、干渉の影響がなければ、テストパタン生成部11で生成したテストパタンと受信信号のデータ部は一致する。干渉の影響があった場合、テストパタンとデータ部に不一致が発生する。
【0027】
位相調整部15は、テストパタン照合部14での比較結果から、位相調整量を決定し、位相調整量に従ってバーストタイミング生成部16で生成するバーストタイミングを調整する部分である。テストパタンとデータ部の不一致が発生してから終了するまでのエラー発生範囲を計測し、テストパタンとデータ部に不一致が発生しないバーストタイミングとなるように、位相調整量を決定する。
【0028】
このように本実施形態のバースト位相調整装置を構成することで、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、干渉を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0029】
次に、図2を用いて、本実施形態のバースト位相調整装置の動作の例について説明する。
【0030】
まず、ステップS101では、通信対向装置を折り返し状態にするための制御を行う。すなわち、通信対向装置を折り返し状態にするための送信信号を生成して通信対向装置へ送信する。
【0031】
ステップS102では、テストパタン生成部11で生成したテストパタンをデータ部とする送信信号を生成し、送受信部13経由で通信対向装置へ送信する。
【0032】
ステップS103では、送受信部13が通信対向装置から受信した受信信号のデータ部を抽出してテストパタンと比較し、不一致箇所を検出する。
【0033】
ステップS104では、ステップS103での比較の結果、不一致(エラー)がなければ、ステップS105へ移行する。不一致があった場合は、ステップS106へ移行する。
【0034】
ステップS105では、ステップS101で設定した折り返し状態を解除し、位相調整動作を終了する。
【0035】
ステップS106では、ステップS103での比較結果から位相調整量を決定し、バーストタイミング生成部16で生成するバーストタイミングを調整する。そして、ステップS101に戻る。ステップS101に戻ることにより、ステップS103での受信データとテストパタンとの比較の結果に不一致がなくなるまで、バーストタイミングを調整することになる。
【0036】
このように本実施形態のバースト位相調整装置を動作させることで、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0037】
次に、図3を用いて、以上で説明したバースト位相調整装置をOCU(局内回線終端装置:Office Channel Unit)で実現する場合の例について説明する。
【0038】
図3は、本実施形態のバースト位相調整装置の機能を有したOCUにおけるISDN終端部分の機能構成例である。
【0039】
図1のテストパタン生成部11、送受信部13、位相調整部15、バーストタイミング生成部16は、それぞれ、図3のテストパタン生成部105、送受信分離トランス101、位相調整部114、バーストタイミング生成部117に相当する。また、送信信号生成部12は、フレーム重畳部103およびドライバー102に相当する。テストパタン照合部14は、レシーバー111、受信データ抽出部110、テストパタン照合部108に相当する。
【0040】
OR115と位相調整SW116は、OR115と位相調整SW116とに入力された情報からOCUの動作の状態を決定するための情報を生成し出力する。OCUにはデータ通信状態、テスト状態、位相調整状態の3種類の動作の状態がある。
【0041】
図4は、テスト起動信号112と位相調整SW116とOR115の状態と、OCUの3種類の動作の状態であるデータ通信状態、テスト状態、位相調整状態との関係を表したものである。テスト起動信号112の状態に関わらず、位相調整SW116が有効のとき、OCUは位相調整状態となり、位相調整SW116が無効でテスト起動信号112が有効のとき、OCUはテスト状態となる。テスト起動信号112と位相調整SW116のいずれも無効のとき、OCUはデータ通信状態となる。
【0042】
ISDN回線113は送受信分離トランス101と接続し、送受信分離トランス101では、ISDN回線113の信号を送信信号と受信信号に分離する。
【0043】
テストパタン生成部105は、テストパタンを生成する部分である。
【0044】
送信側切替104は、データ通信状態のときには下りデータ106を、また、テスト状態のときと位相調整状態のときにはテストパタン生成部105が生成して出力したテストパタンを送信データとしてフレーム重畳部103へ出力する。
【0045】
フレーム重畳部103は、テスト状態のときと位相調整状態のとき、通信対向相手であるDSU(加入者回線終端装置:Digital Service Unit)を折り返し状態にするための送信フレームを生成する。また、バーストタイミング生成部117で生成したバーストタイミングを元にして、送信データに送信フレームを重畳し、ドライバー102へ出力する。
【0046】
ドライバー102は、入力された信号をD/A変換して送信信号として送受信分離トランス101へ出力する。
【0047】
受信信号はレシーバー111にてA/D変換され、A/D変換された信号は受信データ抽出部110へ入力される。受信データ抽出部110は、入力された信号の各受信フレームのデータ部を特定して受信データを抽出し、受信側切替109へ出力する。
【0048】
受信側切替109は、データ通信状態のときには受信データを上りデータ107へ出力し、また、テスト状態のときと位相調整状態のときには受信データをテストパタン照合部108へ出力する。
【0049】
テストパタン照合部108は入力された受信データをテストパタンと照合して、受信データの誤り(受信データとテストパタンの不一致)発生を検出し、検出した結果を位相調整部114へ出力する。
【0050】
位相調整部114は、位相調整状態のときに、テストパタン照合部108によって検出された受信データの誤り発生の開始から終了までのビット数と誤り発生位置を計測し、ビット数とバーストタイミング情報から、位相調整量を決定する。位相調整量の決定方法については後述する。
【0051】
バーストタイミング生成部117は、位相調整状態のときに、バーストタイミングを位相調整部114で決定した位相調整量分だけずらし、新たなバーストタイミングとして生成し、出力する。そして、位相調整状態終了後、データ通信状態においても、位相調整状態で新たに生成したバーストタイミングを出力する。
【0052】
このように本実施形態のOCUを構成することで、OCUの送信信号とDSUが折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0053】
次に、本実施形態のバースト位相調整装置をOCUで実現する場合の動作の例について説明する。
【0054】
図5は、2つの独立したISDN回線上の信号を示したものである。A回線とB回線は2つの独立したISDN回線で、B回線のOCUは本実施形態のバースト位相調整装置として機能している。
【0055】
図5(a)は位相調整が行われていない状態のISDN回線上の信号であり、図5(b)は本実施形態の位相調整が行われた状態のISDN回線上の信号である。
【0056】
図5(a)の状態では、A回線の送信信号とB回線の受信信号が重なるαの部分で信号の漏話による干渉が発生するおそれがある。干渉が発生するおそれのあるαの部分は、ISDN回線のバースト周期が2.5msと一定であることから2.5ms毎に発生する。
【0057】
位相調整状態のとき、まず、フレーム重畳部103は、DSUを折り返し状態にするための送信信号を生成し出力する。DSUはDSUを折り返し状態にするための信号を受信すると、受信信号を送信信号へ折り返す状態になる(図2のS101)。
【0058】
次に、OCUはISDN回線への送信信号にテストパタンを挿入してDSUへ送信する(図2のS102)。そして、OCUは送信信号に挿入したテストパタンと、DSUにて折り返されてもどってきたOCUの受信信号に含まれる受信データとを比較して誤り発生を検出する(図2のS103)。
【0059】
誤り発生を検出しなかった場合には、DSUの折り返し状態を解除するために、DSUを折り返し状態にするための送信信号を生成して出力することを停止する(図2のS105)。DSUはDSUを折り返し状態にするための信号の受信が停止すると、受信信号を送信信号へ折り返す状態を解除する。そして、OCUは、位相調整状態を終了する。
【0060】
誤り発生を検出した場合には、OCUは誤り発生の開始から終了までのビット数を計測して位相調整量を決定する(図2のS106)。OCUは決定した位相調整量の時間分だけ位相をずらした新たなバーストタイミングに従って通信を行う。
【0061】
OCUは位相の調整が完了すると、誤りが検出されなくなるまで位相調整動作を繰り返す。そして、位相調整後、データ通信状態において、位相調整状態で調整したバーストタイミングに従って通信を行う。
【0062】
図6は、図5(a)において、A回線の送信信号とB回線の受信信号が重なるαの部分で信号の漏話による干渉が発生し、B回線の受信信号のデータに誤りが発生した場合の、テストパタン照合部108での誤り検出結果を示したものである。B回線の受信信号のデータに誤りが発生したことは、テストパタン照合部108にて、DSUへ送信したテストパタンとDSUにから折り返されてもどってきたテストパタンとを比較することによって検出される。
【0063】
位相調整部114は、テストパタン照合部108にて検出された誤り発生の開始から終了までのビット数を計測して干渉が発生する範囲を特定し、干渉が発生しなくなるように、位相調整量を決定する。
【0064】
位相調整量の決定は、最終的に、干渉が発生しないバーストタイミングとなるように行う。たとえば、位相調整量をある所定の値に常時固定し、テストパタンと受信データに不一致がなくなるまで繰り返し位相調整を行う方法などにより、実現が可能である。
【0065】
しかし、位相調整量を常時固定して不一致がなくなるなで位相調整を繰り返す方法では、位相調整が終了するまでに時間がかかってしまう。
【0066】
また、位相調整量は、なるべく干渉を受ける回線とバーストタイミングを合わせるように決定することが望ましい。A回線とB回線の送信信号の送出期間を合わせた長さは、A回線とB回線のバーストタイミングが合っているときに最小になる。A回線とB回線の送信信号の送出期間が短いほど、A回線とB回線以外の他の回線へ干渉を与える可能性が小さくなる。そのため、位相調整量の決定は、バーストタイミングをなるべく合わせるように行うことが望ましい。
【0067】
たとえば、次のように位相調整量を決定することで、B回線の送受信タイミングをA階層の送受信タイミングにほぼ合わせることができる。
【0068】
干渉の発生範囲がテストパタンの後ろ寄りであった場合、図5(a)のように、受信フレームの後ろ寄りの部分が干渉を受けていると考えることができる。後ろ寄りであるかどうかは、たとえば、テストパタンの最終ビットから所定の範囲に干渉が発生しているかどうかを判断する等の方法によって検出できる。
【0069】
TTC標準JT-G961のフレームは図13(a)のように構成され、「20個の(2B+D)スロット」の部分がデータ部である。干渉の発生範囲がテストパタンの後ろ寄りであった場合、このデータ部の後ろ寄り部分の干渉の発生が検出されたことになる。データ部の後ろ寄り部分で干渉が発生しているため、フレームの後ろ寄り部分で干渉が発生していると推定でき、この場合、データ部の後ろに続くパリティビット(図13(a)の「P」で示した部分)にも干渉が発生していると推定できる。そのため、干渉が発生した範囲のビット数(図5中の「α」で示した部分のビット数)に、パリティビット(図5中の「β」で示した部分)のビット数「1」を加えた分だけ位相を前にずらす。このようにすることで、干渉が発生しないようにB回線の送受信タイミングをずらすことが可能となる。
【0070】
さらに、干渉がDSUの受信信号で発生しているとすると、DSUの送受信位相差分の位相(図5中の「γ」で示した部分のビット数)もずらすことで、B回線の送受信タイミングをA回線の送受信タイミングに合わせることができる。TTC標準JT-G961のフレームは図13(b)のタイミングで送受信される。DSUの送受信位相差は、図13(b)の「6〜7bit」の部分に該当する。そのため、計測したビット数(図5のα)に、パリティビット数の1(図5のβ)と、送受信位相差ビット数の6.5(図5のγ)とを加算したビット数の分の時間を位相調整量として決定することで、A階層とB階層の送受信タイミングをほぼ合わせることができる。
【0071】
たとえば、計測されたテストパタンの誤りが20ビットであった場合、誤り20ビット+フレームの最終ビット1ビット+送受信位相差6.5ビット=27.5ビットが計算され、27.5ビットに相当する時間が位相調整量として決定される。バーストタイミング生成部117は27.5ビット分に相当する時間の分だけ早めたバーストタイミングを生成し出力する。
【0072】
なお、DSUおよびOCUでの受信信号には、CRC(Cyclic Redundancy Check)が付加されている。通常、OCUにて、CRC演算の結果、エラーがあると判断した場合には、装置故障や接続ミス等と判断し、DSUとの送受信を停止する、あるいは、障害表示手段により障害を保守担当者へ通知する、といった処理を行う。DSUでは、折り返し状態のとき、受信した信号のデータ部分を送信信号のデータ部分として送信する。このとき、送信信号のCRCの部分については、受信した信号のCRCをそのまま挿入するのではなく、生成した送信信号に対して改めて正しいCRCを付加する。干渉がOCUの受信信号で発生した場合には、CRC演算の結果、エラーがあると判断されるため、正常な送受信を行うことができない状態となる。そのため、正常に送受信を行っている状態で受信データにテストパタンとの不一致が発生した場合、DSUの受信信号で干渉が発生していると判断することができる。
【0073】
また、干渉の発生範囲がテストパタンの前寄りの場合には、計測したビット数にフレームワードとCLチャネル分の16ビットと送受信位相差39.5ビットを加えた位相分だけバーストタイミングを遅らせることで、タイミングをほぼ合わせることができる。ただし、干渉の発生範囲が受信フレームの前寄りである場合には、受信フレームのフレームワードにも干渉が発生してフレーム同期が取れなくなり、正常な通信ができなくなる可能性がある。また、CRC部分にも干渉が発生した場合にも、正常な通信ができなくなる。そのため、DSUとの通信が正常に成立している場合、干渉の発生範囲は、多くの場合、受信フレームの後ろ寄りとなる。
【0074】
このように本実施形態のOCUを動作させることで、OCUの送信信号とDSUが折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0075】
次に、本実施形態の効果について、具体的な数値例を示して説明する。
【0076】
回線Aと回線Bの送信信号の量は共に6V0-Pである。回線間の漏話量が60dBであった場合、回線Aの送信信号の量6V0-Pが回線Bへ漏話する量Xは以下のように計算できる。
【0077】
ISDN回線における最大線路長での線路損失は50dBであるため、回線Bの最小の受信信号の量Yは以下のように計算できる。
【0078】
回線Aと回線Bとのバーストタイミングが合っていない場合、回線Bの受信時、回線Bの0.018V0-Pの主信号に対して、回線Aから0.006V0-Pの漏話の影響を受けることになる。この時のSN比は、以下のように計算できる。
【0079】
回線Aと回線Bとのバーストタイミングを合わせると、回線Aの送信と回線Bの送信と、また、回線Aの受信と回線Bの受信とを同じ時刻に行うことになる。この場合の回線Aによる回線Bへの漏話の影響は、回線Aの送信が回線Bの送信へ漏話する場合、あるいは、回線Aの受信が回線Bの受信へ漏話する場合である。
【0080】
回線Aの送信が回線Bの送信へ漏話する場合では、回線Aの送信信号の量6V0-Pが回線Bへ漏話する量Xは0.006V0-Pであるので、この時のSN比は、以下のように計算できる。
【0081】
回線Aの受信が回線Bの受信へ漏話する場合では、回線Aの受信信号の量0.018V0-Pが回線Bへ漏話する量ZとそのときのSN比は、以下のように計算できる。
【0082】

【0083】
このように、バーストタイミングを合わせることにより、漏話の影響によるSN比は9.5dBから60dBへ大きく改善し、漏話による干渉の影響を低減することができる。
【0084】
以上で説明したように、本発明の第一の実施形態では、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0085】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。
【0086】
図7に本実施形態のバースト位相調整装置20の構成例を示す。第一の実施形態の構成例(図1)に対して、減衰部27を追加している。テストパタン生成部11、送信信号生成部12、送受信部13、テストパタン照合部14、位相調整部15およびバーストタイミング生成部16は、第一の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0087】
減衰部27は、入力された送信信号の出力レベルを低下させて、低下させた送信信号を送受信部13へ出力する部分である。送信信号の出力レベルを低下させることにより通信対向装置での受信レベルも低下し、その結果、通信対向装置における受信信号は漏話による干渉の影響を受けやすい状態になる。つまり、図1のバースト位相調整装置10に対して減衰部27を追加することにより、干渉する可能性があるバーストタイミングを検出しやすくなる。
【0088】
図8に、本実施形態のバースト位相調整装置をOCUで実現した場合の構成例を示す。第一の実施形態の構成例(図3)に対して、減衰部218と出力切替219を追加している。他の構成要素については、第一の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0089】
減衰部218は、図7の減衰部27に相当し、入力された送信信号の出力レベルを低下させる部分である。
【0090】
出力切替219は、データ通信状態のときとテスト状態のときにはドライバー102から入力された送信信号を、また、位相調整状態のときには減衰部218から入力された送信信号を送受信分離トランス101へ出力する。
【0091】
このように本実施形態のバースト位相調整装置を構成することにより、第一の実施形態と同様に、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0092】
さらに、本実施形態では、送信信号の出力レベルを低下させることにより通信対向装置での受信レベルも低下し、その結果、通信対向装置における受信信号は漏話による干渉の影響を受けやすい状態になる。そのため、干渉する可能性があるバーストタイミングを検出しやすくすることが可能になる。
【0093】
次に、図9に本実施形態のバースト位相調整装置20の動作の例を示す。図2に対して、ステップS201を追加している。
【0094】
ステップS201では、減衰部27を有効にして、以降の位相調整動作で送信する送信信号を減衰するようにする。その後、ステップS101以降は図2と同様のため説明を省略する。
【0095】
以上で説明したように、本発明の第二の実施形態では、第一の実施形態と同様に、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0096】
さらに、本実施形態では、送信信号の出力レベルを低下させることにより通信対向装置での受信レベルも低下し、その結果、通信対向装置における受信信号は漏話による干渉の影響を受けやすい状態になる。そのため、干渉する可能性があるバーストタイミングを検出しやすくすることが可能になる。
【0097】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について説明する。
【0098】
本実施形態のバースト位相調整装置の構成例は、図7と同様である。本実施形態では、減衰部27での減衰量を可変とする。
【0099】
図10に、本実施形態のバースト位相調整装置をOCUで実現した場合の、ISDN終端部分の機能構成例を示す。図8に対し、減衰部318を複数とし、SW320を追加している。
【0100】
減衰部318では、ドライバー102からの出力を減衰させ、SW320では、複数の減衰部318からの出力を選択する。
【0101】
位相調整状態のOCUにおいて送信信号の出力レベルを低下させることは、DSUでの受信レベルも低下させ、その結果、DSUにおける受信信号は漏話による干渉の影響を受けやすい状態になる。
【0102】
DSUにおける受信レベルが低くなるほど、DSUの受信信号は漏話による干渉の影響を受けやすくなり、受信信号がDSUで受信可能な最小の受信レベルのときに漏話による干渉の影響は最大になる。
【0103】
OCUは減衰部318によって、OCUの送信信号の送信レベルを、DSUでの受信信号がDSUで受信可能な最小の受信レベルになるように設定することが可能となる。
【0104】
次に、図10のOCUでの動作の例について説明する。動作の流れは図9と同様であるが、ステップS201について、第二の実施形態とは異なる動作を行う。
【0105】
ステップS201では、まず、OCUは、送信信号の送信レベルを最小の状態にして送信を行う。このときDSUではDSUで受信可能な最小の受信レベルよりも低いレベルの受信信号を受信しているため、DSUは正常に通信を行うことができない。
【0106】
次に、OCUは、送信信号の送信レベルを最小の状態よりも高いレベルへ変更して送信を行う。この状態でDSUが正常に通信を行うことができなかった場合には、OCUは送信信号の送信レベルをさらに高いレベルへ変更して送信を行う。そして、DSUが正常に通信を行うことができる状態になるまでOCUの送信信号の送信レベルを高いレベルへ変更する。
【0107】
DSUが正常に通信を行うことができる状態になったとき、OCUは送信信号の送信レベルを変更することを停止し、停止したときの送信レベルに固定してステップS101へ移行する。このようにして、OCUの送信信号の送信レベルを、DSUでの受信信号がDSUで受信可能な最小の受信レベルになるように設定する。
【0108】
ただし、DSUで受信可能な最小の受信レベルになるようにOCUの送信信号の送信レベルを設定したとき、DSUにおいて、受信レベルが低いことによるエラーが発生する可能性がある。この影響を避ける方法としては、たとえば、以下の2つの方法が考えられる。
【0109】
第一の方法は、隣接する他回線の送受信を停止することが可能な場合、他回線の送受信を停止し、つまり、漏話が発生しない状態とし、その状態で上述の方法でエラーが発生しない最小の送信レベルを決定する方法である。漏話が発生しない状態で、DSUとの送受信でエラーが発生しない最小の送信レベルを決定し、その後、停止した他回線の送受信を開始し、位相調整を行う。このようにすることで、位相調整時に発生するエラーを、漏話による干渉のみにすることができる。
【0110】
第二の方法は、テストパタンのエラー発生箇所に片寄りがあるかどうかを検出し、片寄りがない場合には、受信レベルが低いことによるエラーと判断して、さらに送信信号の送信レベルを上げる方法である。エラーの片寄りの検出方法としては、たとえば、8ビット単位など所定のビット数の範囲でのエラーの有無を確認し、エラーなしの状態が所定の回数連続した場合に片寄りがあると判断する方法などが考えられる。
【0111】
以上で説明したように、本発明の第三の実施形態では、第一、第二の実施形態と同様に、送信信号と通信対向装置が折り返した受信信号を比較して干渉を検出し、干渉が発生しないようにバーストタイミングを調整することが可能になる。また、実際の受信信号の干渉を検出するため、漏話パワーが低い場合でも、漏話の影響を受けて干渉が発生していれば、漏話を検出することができる。そのため、バーストタイミングが合っていない複数のISDN回線において、各ISDN回線間の信号の漏話による干渉を、漏話パワーが低い場合であっても検出して低減することが可能になる。
【0112】
さらに、本実施形態では、送信信号の出力レベルを通信対向装置が受信できる最小の受信レベルに設定することができる。そのため、第二の実施形態よりさらに、干渉する可能性があるバーストタイミングを検出しやすくすることが可能になる。
【0113】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0114】
10、20 バースト位相調整装置
11 テストパタン生成部
12 送信信号生成部
13 送受信部
14 テストパタン照合部
15 位相調整部
16 バーストタイミング生成部
27 減衰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13