特許第6475101号(P6475101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475101電動歯ブラシ及び電動歯ブラシの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475101
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】電動歯ブラシ及び電動歯ブラシの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20190218BHJP
   A61C 17/34 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A61C17/22 B
   A61C17/34 H
   A61C17/34 K
   A61C17/22 F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-122897(P2015-122897)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2018-19732(P2018-19732A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2018年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590002611
【氏名又は名称】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀輝
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−28310(JP,A)
【文献】 特開2009−273621(JP,A)
【文献】 特表2010−526638(JP,A)
【文献】 特表2008−532619(JP,A)
【文献】 特表2002−515276(JP,A)
【文献】 特開2016−214854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/22
A61C 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に装着されるブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動部と、
前記ブラシユニットから光を出射する光出射部と、
前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、
前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知部と、
前記ブラシユニットの前記複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体の噴射タイミングを制御する液体噴射制御部と、を備え、
前記液体噴射制御部は、前記歯垢検知部により検知された歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させ、
前記駆動部は、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行う電動歯ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の電動歯ブラシであって、
前記液体を貯留するためのタンクと、
前記タンクに貯留された液体の種類を識別する液体識別部と、を更に備え、
前記駆動部は、前記液体の噴射が行われている間において、前記液体識別部により識別された液体が水以外である場合にのみ、前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行う処理を実施する電動歯ブラシ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電動歯ブラシであって、
前記第二の方向は、前記第一の方向と直交する方向である電動歯ブラシ。
【請求項4】
電動歯ブラシに装着されたブラシユニットから光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、前記ブラシユニットの複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、を備える電動歯ブラシの作動方法であって、
前記電動歯ブラシに装着されたブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動ステップと、
前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知ステップと、
前記歯垢検知ステップにより検知した歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させる液体噴射制御ステップと、を備え、
前記駆動ステップでは、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行う電動歯ブラシの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシ及び電動歯ブラシの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速に振動するブラシを歯にあてることによって歯磨き(歯垢除去)を行うタイプの電動歯ブラシが知られている。このような電動歯ブラシでは、ブラシユニットを一方向だけでなく複数方向に振動させることで、効率的なブラッシングを実現するものが知られている(例えば特許文献1−3参照)。
【0003】
また、電動歯ブラシでは、ブラシユニットに孔部を設け、この孔部から口内に水を噴射する機能を有するものも提案されている(例えば特許文献4、5参照)。
【0004】
また、電動歯ブラシでは、歯に付着した歯垢及び歯石、歯の齲蝕等を検知するための手段をブラシユニットに設けたものが提案されている(例えば特許文献6〜8参照)。
【0005】
特許文献6には、光センサと光源をブラシユニットに設け、光源から発した光の反射光を光センサで検出し、検出した反射光量に基づいて齲蝕等を検知してユーザに知らせる電動歯ブラシが記載されている。
【0006】
特許文献7、8には、ブラシユニットにおいて多数のブラシで囲まれる領域内に光出射用と受光用の孔部を設け、この孔部に光を導入する光源と、この孔部に入射した光を検出する光センサとを本体部に設けた電動歯ブラシが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−028310号公報
【特許文献2】特開2009−219756号公報
【特許文献3】特開2009−240759号公報
【特許文献4】特開2006−006570号公報
【特許文献5】特開2002−238662号公報
【特許文献6】特表2008−532619号公報
【特許文献7】特表2002−515276号公報
【特許文献8】特表2013−531534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4,5に記載された電動歯ブラシは、歯に対し水を当てて、この水により歯垢の除去を補助するものである。例えば、歯垢分解能力のある液体や水を歯に当てながらブラッシングを行うことで歯垢の除去を行うことを想定すると、液体がブラシ付近に滞留することが好ましい。
【0009】
しかし、特許文献1〜3に記載された電動歯ブラシのように、ブラシユニットが複数方向に振動可能なものにおいては、ブラシユニットの振動方向によっては液体が撒き散らされやすく、液体が口の中に瞬時に広がってしまう場合がある。この結果、歯垢除去効果を十分に発揮できない場合がある。
【0010】
特許文献1〜3は、口内に液体を噴射することのできる機能についての記載はなく、このような課題については考慮されていない。また、特許文献4,5は、ブラシヘッドを複数方向に振動させるものではなく、このような課題については考慮されていない。特許文献6〜8は、口内に液体を噴射したり、ブラシヘッドを複数方向に振動させたりすることの記載はなく、このような課題については考慮されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、歯垢除去効果を高めることのできる電動歯ブラシ及び電動歯ブラシの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電動歯ブラシは、本体部に装着されるブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動部と、前記ブラシユニットから光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知部と、前記ブラシユニットの前記複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、前記液体の噴射タイミングを制御する液体噴射制御部と、を備え、前記液体噴射制御部は、前記歯垢検知部により検知された歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させ、前記駆動部は、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行うものである。
【0013】
本発明の電動歯ブラシの作動方法は、電動歯ブラシに装着されたブラシユニットから光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、前記ブラシユニットの複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、を備える電動歯ブラシの作動方法であって、前記電動歯ブラシに装着されたブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動ステップと、前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知ステップと、前記歯垢検知ステップにより検知した歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させる液体噴射制御ステップと、を備え、前記駆動ステップでは、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行うものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、歯垢除去効果を高めることのできる電動歯ブラシ及び電動歯ブラシの作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を説明するための電動歯ブラシ100をブラシ押し当て方向からみた概略構成を示す平面図である。
図2図1に示す電動歯ブラシ100のA−A線の断面模式図である。
図3図1に示す電動歯ブラシの本体部の内部構成を示すブロック図である。
図4図1に示す電動歯ブラシ100の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための電動歯ブラシ100をブラシ押し当て方向からみた概略構成を示す平面図である。
【0018】
この電動歯ブラシ100は、内部にバッテリや電気制御系を含む把持部10、及び、把持部10に固定されたステム11を有する本体部と、ステム11に対して着脱可能なブラシユニット20と、を備える。
【0019】
ブラシユニット20は、複数のブラシ22と、液体噴射用の孔部21と、透明窓23と、を備える。各ブラシ22は、多数の毛を束ねたものである。
【0020】
孔部21は、ブラシ22で囲まれた領域に配置されている。
【0021】
透明窓23は、ブラシユニット20の筐体に設けられた孔部に透明樹脂や透明ガラス等の透光性部材を嵌め込んで形成されたものである。透明窓23は、ブラシユニット20の複数のブラシ22が形成される表面において、複数のブラシ22が形成された領域よりもブラシユニット20先端側に配置されている。透明窓23の位置は一例であり、図1に示した位置には限定されない。透明窓23は、ブラシ22が形成された面よりもブラシ22の伸びる方向に光を出射可能に配置されていればよい。
【0022】
図2は、図1に示す電動歯ブラシ100のA−A線の断面模式図である。
【0023】
ブラシユニット20は、中空部20aを有する先端部が閉じた筒状の筐体で構成されている。中空部20aにステム11が嵌合されることで、本体部にブラシユニット20が装着される。
【0024】
ステム11は、先端(把持部10側とは反対側の端部)が閉じた筒状の筐体で構成されている。ステム11は、内部の先端に形成された軸受12と、軸受12に一端が挿入された偏心軸13と、錘14と、基板15と、基板15に形成された発光素子24と、基板15に形成された受光素子25(図1参照)と、筐体に設けられた透明窓23aと、導水管27と、を備える。
【0025】
把持部10は、ステム11内から伸びる導水管27と接続されたバルブ28と、バルブ28に接続されたポンプ29と、ポンプ29に接続されたタンク30と、タンク30に液体を注ぐための液体供給口31と、液体供給口31を閉じるためのキャップ32と、ステム11内の偏心軸13と連結されたモータMと、を備える。
【0026】
偏心軸13の他端は把持部10に内蔵されたモータMの回転軸に連結されている。モータMの回転軸が回転することで、偏心軸13が回転する。
【0027】
錘14は、軸受12の近傍において偏心軸13に固定されている。この錘14により、偏心軸13の重心は、その回転中心からずれている。なお、偏心軸13と軸受12の間には微小なクリアランスが設けられている。
【0028】
モータMの回転軸の回転に伴って偏心軸13も回転するが、偏心軸13は錘14によって重心がずれているために、回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸13の先端が軸受12の内壁に対して衝突を繰り返し、ステム11とこれに装着されたブラシユニット20とを高速に振動させることとなる。
【0029】
このように、偏心軸13の旋回運動によってブラシユニット20が振動される駆動原理の場合、ブラシユニット20はモータMの回転軸に垂直な面内を2次元的に振動し得る。
【0030】
電動歯ブラシ100は、モータMの回転速度を制御することで、ステム11及びブラシユニット20をブラシ22の押し当て方向に振動させる動作と、ステム11及びブラシユニット20を、モータMの回転軸に垂直な面内におけるブラシ22の押し当て方向と交差(好ましくは直交)する方向に振動させる動作とを切り替えることが可能になっている。なお、ブラシ22の押し当て方向は各ブラシ22の伸びる方向と一致している。また、ブラシ22の押し当て方向とモータMの回転軸の伸びる方向とは直交している。
【0031】
図2に示すように、ステム11の筐体において、ブラシユニット20の筐体の透明窓23と対向する部分には、透明窓23と略同じ大きさの透明窓23aが形成されている。透明窓23aは、ステム11の筐体に設けられた孔部に透明樹脂や透明ガラス等の透光性部材を嵌め込んで形成されたものである。図1に示した発光素子24と、受光素子25とは、この透明窓23aと対向する位置の基板15上に配置されている。
【0032】
発光素子24は、LED(Light Emitted Diode)やレーザダイオード等で構成されている。発光素子24は、検出対象とする歯垢を検知するために必要な青色の波長域の光(以下、B光という)を出射するものが用いられる。発光素子24から出射されたB光は、透明窓23a及び透明窓23を通って、ブラシユニット20の外部に出射される。発光素子24と透明窓23aと透明窓23は、ブラシユニット20から光を出射する光出射部として機能する。
【0033】
受光素子25は、光を電気信号に変換するフォトダイオード等の光電変換素子で構成されている。
【0034】
受光素子25は、赤色の波長域の光(以下、R光という)を検出し、検出した光量に応じた信号を出力する光電変換素子により構成されている。受光素子25は、R光を透過するカラーフィルタと可視光に感度を持つフォトダイオードを組み合わせたものや、R光だけを検出することのできるフォトダイオード等により構成される。
【0035】
歯に付着する歯垢にB光が照射されると、この歯垢においてR光が励起される。つまり、B光の反射光としてR光が発生する。受光素子25は、発光素子24から出射されたB光が歯垢で反射して得られるR光を検出するために設けられている。
【0036】
受光素子25は、光照射部から出射されたB光の反射光を検出する反射光検出部として機能する。
【0037】
基板15は、発光素子24と受光素子25とに電気的に接続された配線が形成されるものであり、例えばフレキシブル基板が用いられる。基板15は把持部10内部にまで延びており、基板15に形成された配線は、把持部10に内蔵される後述する制御部50と電気的に接続される。
【0038】
タンク30は、液体供給口31から投入された液体を溜める。液体は、例えば水、歯垢分解効果のある洗浄液、等である。
【0039】
ポンプ29は、タンク30に溜められた液体を吸い上げてバルブ28に供給する。
【0040】
バルブ28は、ステム11内から伸びた導水管27の基端に連結されており、導水管27に供給する液体の供給量及び供給圧力と、導水管27への液体の供給タイミングと、を制御する。
【0041】
導水管27は、液体を通すことのできる管状の部材で構成される。ステム11の筐体のうち、ブラシユニット20の孔部21と対向する部分には、孔部21aが設けられている。導水管27の先端は、この孔部21aに嵌め込まれている。この構成により、導水管27の先端から噴射された液体は、ブラシユニット20の孔部21を通って、ブラシユニット20の外部に噴射される。
【0042】
ポンプ29とバルブ28と導水管27と孔部21aと孔部21は、ブラシユニット20から流体を噴射する流体噴射部として機能する。孔部21の断面形状を変化させることで、ブラシユニット20から噴射させる液体の噴射方向を変えることができる。この噴射方向は、ブラシ22の押し当て方向とのなす角度が90度未満となる方向にするのが好ましく、ブラシ22の押し当て方向(ブラシ22の伸びる方向)と同じであることが特に好ましい。
【0043】
図3は、図1に示す電動歯ブラシ100の本体部の電気的構成を示すブロック図である。
【0044】
電動歯ブラシ100の本体部は、モータMと、報知部60と、制御部50と、ポンプ29と、バルブ28と、を備える。
【0045】
制御部50は、モータMを制御することで、ブラシユニット20をブラシ22の押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、ブラシユニット20を、第一の方向とは異なる第二の方向(ここでは、モータMの回転軸に垂直な面内においてブラシ22の押し当て方向と交差する方向)に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動部として機能する。制御部50は、第一の駆動と第二の駆動の切り替えを、モータMの回転軸の回転速度を変更することにより行う。
【0046】
なお、第二の方向が、第一の方向に垂直な面内における任意の方向(例えばモータMの回転軸の伸びる方向)となるように、制御部50がブラシユニット20を振動させる構成としてもよい。
【0047】
制御部50は、例えば、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う。このように、ブラシユニット20の振動方向を自動的に切り替えることで、ブラシ22の毛先が施療部に対して様々な角度から当たるため、単一方向の刷掃に比べてより優れた歯垢除去効果を得ることができる。
【0048】
制御部50は、基板15を介して発光素子24を駆動し、発光素子24からG光を発光させる制御を行う。
【0049】
制御部50は、受光素子25により検出された反射光に基づいて、歯に付着している歯垢を検知する歯垢検知処理を行う。歯垢検知処理は、受光素子25で検出されるR光の光量(検出信号レベル)に基づいて周知の方法により行う。制御部50は、歯垢検知部として機能する。
【0050】
制御部50は、歯垢検知結果に基づいて、孔部21からの液体噴射タイミングを制御する。制御部50は、流体噴射制御部として機能する。
【0051】
報知部60は、スピーカーやLED等のデバイスを用いて、電動歯ブラシ100の使用者に報知を行う。報知部60は、制御部50からの指令にしたがって、音を鳴らしたり、LEDを光らせたりして、使用者に報知を行う。
【0052】
報知する内容は、制御部50で演算された歯垢量としている。例えば、報知部60は、歯垢量が非常に少ない状態であればLEDを緑色に光らせ、歯垢量が多い状態であればLEDを赤色に光らせる等して歯垢量を報知し、効果的な歯磨きを支援する。
【0053】
以上のように構成された電動歯ブラシ100の動作を説明する。
【0054】
図4は、図1に示す電動歯ブラシ100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0055】
電動歯ブラシ100の電源がオンされてブラッシング開始操作がなされると、制御部50は、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う駆動を開始する(ステップS1)。これにより、歯に押し当てられたブラシユニット20は、第一の方向への振動と第二の方向への振動とを交互に繰り返し、歯に付着した歯垢がブラシ22により除去される。
【0056】
制御部50は、第一の駆動と第二の駆動を交互に行っている間、所定タイミングで発光素子24を発光させる。発光素子24から発せられたB光は透明窓23からブラシユニット20外部に出射される(ステップS2)。制御部50は、この発光素子24の発光直後に、受光素子25の検出信号を取得する。
【0057】
制御部50は、受光素子25で検出されたB光の光量(受光素子25の検出信号レベル)に基づいて、歯に付着している歯垢量を検知する(ステップS3)。
【0058】
制御部50は、歯垢検知処理によって算出した歯垢量が閾値を超えていて、歯垢があると判断した場合(ステップS4:YES)には、第一の駆動を禁止し、第二の駆動のみでブラシユニット20を駆動する(ステップS5)。
【0059】
制御部50は、歯垢検知処理によって算出した歯垢量が閾値以下であり、歯垢がないと判断した場合(ステップS4:NO)にはステップS8に処理を移行する。
【0060】
ステップS5において第二の駆動でブラシユニット20が駆動されている状態で、制御部50は、バルブ28とポンプ29を制御して、所定の供給量及び所定の圧力で、タンク30内の液体を導水管27に供給し、導水管27の先端から液体を噴射させる(ステップS6)。
【0061】
制御部50は、バルブ28を閉じて、液体の噴射を終了させると、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う駆動を再開する(ステップS7)。
【0062】
ステップS7の後、制御部50は、ブラッシング開始操作がなされてから所定時間が経過していれば(ステップS8:YES)、ブラッシング動作を終了する。一方、制御部50は、ブラッシング開始操作がなされてから所定時間が経過していなければ(ステップS8:NO)、ステップS2に処理を戻す。
【0063】
以上のように、電動歯ブラシ100では、歯垢量が閾値を超えている場合には、孔部21から液体が噴射される。また、この液体が噴射されている期間は、ブラシユニット20が第二の方向にのみ振動する。複数のブラシ22が歯面に当てられている状態では、ブラシユニット20が第二の方向に振動することで、孔部21から噴射された液体がブラシ22同士の隙間から外部に漏れにくくなる。つまり、複数のブラシ22の間で液体が滞留して、この液体がブラシユニット20の振動に同期して振動することになる。このため、歯に付着した歯垢を、振動する液体と、振動するブラシユニット20とで除去することができ、歯垢除去効果を高めることができる。
【0064】
特に、タンク30に入れる液体として、歯垢を分解する作用を持つ液体を用いた場合には、この液体が、歯と複数のブラシとの間の隙間に滞留することで、歯に付着した歯垢の分解を進めることができ、歯垢除去効果を高めることができる。
【0065】
また、タンク30に入れる液体として、歯垢に吸着しR光を増強する作用を持つ液体を用いた場合には、後の歯垢検知処理において歯垢検知精度を高めることができる。
【0066】
なお、制御部50は、孔部21から流体が噴射されていない期間は、第一の駆動のみを行ったり、第二の駆動のみを行ったりしてもよい。例えば、ブラシ圧を検出できるようにしておき、制御部50が、ブラシ圧が高いときは第二の駆動を行い、ブラシ圧が低いときは第一の駆動を行ってもよい。
【0067】
または、電動歯ブラシ100の姿勢を検出できるようにしておき、制御部50が、検出された姿勢に応じて、第一の駆動だけを行うのか、第二の駆動だけを行うのか、第一の駆動と第二の駆動を組み合わせて行うのか、を選択してもよい。
【0068】
制御部50は、タンク30に貯留されている液体の種類を識別し、識別した液体の種類が水以外の液体のときにのみ、図4に示した処理を行い、識別した液体の種類が水であるときには、図4のステップS5における駆動方法の選択を特に制限しない処理を行う構成とするのがよい。
【0069】
例えば、液体の種類に対応したボタンを把持部10に設けておく。制御部50は、どのボタンが押されているかによって、液体の種類を識別する。または、タンク30を着脱可能なカートリッジにしておき、このカートリッジに識別情報を記憶したタグを設けておく。そして、制御部50は、把持部10に装着されたカートリッジのタグから識別情報を読み出すことで、液体の種類を識別する。この場合、制御部50は、液体識別部として機能する。
【0070】
孔部21から噴射される液体が水の場合、この水が複数のブラシ22の間に滞留することで、歯垢除去効果は得られる。しかし、孔部21から噴射される液体が水以外の液体(歯垢分解作用のある口内洗浄液等)の場合の方が、歯垢除去効果は大きい。また、孔部21から噴射される液体が水の場合には、この水が複数のブラシ22の間で滞留するよりも、勢いよく歯に当てられることの方が、歯垢除去効果が大きい場合があると考えられる。
【0071】
このような事情から、制御部50は、タンク30にある液体が水以外の液体であれば、歯垢除去効果を最大とするため、図4のように、液体を複数のブラシ22の間に滞留させる制御を行うのがよい。また、制御部50は、タンク30にある液体が水であれば、歯垢除去効果を最大とするため、水が複数のブラシ22の間に滞留せず、かつ、勢いよく歯に当たるように、液体が噴射されている期間においては、第二の駆動を禁止し、ブラシユニット20を第一の方向に振動させる第一の駆動のみを行うのがよい。このような構成により、孔部21から噴射する液体に応じて最適な歯垢除去効果を得ることができる。
【0072】
電動歯ブラシ100では、発光素子24をブラシユニット20の筐体外周面(ブラシ22が形成される面と同一面)に設けてもよい。この場合は、発光素子24が光出射部として機能する。また、受光素子25をブラシユニット20の筐体外周面に設けてもよい。図1の構成によれば、消耗品であるブラシユニット20は、既製品に対して透明窓23と孔部21を追加するだけですむため、製造コストを極力抑えることができる。
【0073】
上述した第二の方向は、第一の方向と直交する方向とするのが好ましい。このようにすることで、孔部21から噴射される液体が複数のブラシ22の間に滞留しやすくなり、歯垢除去効果をより高めることができる。
【0074】
本実施形態の制御部50が行う各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、当該プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non−transitory)記録媒体に記録される。
【0075】
このような「コンピュータ読取可能な記録媒体」は、たとえば、CD−ROM(Compact Disc−ROM)等の光学媒体や、メモリカード等の磁気記録媒体等を含む。また、このようなプログラムを、ネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0077】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0078】
開示された電動歯ブラシは、本体部に装着されるブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動部と、前記ブラシユニットから光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知部と、前記ブラシユニットの前記複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、前記液体の噴射タイミングを制御する液体噴射制御部と、を備え、前記液体噴射制御部は、前記歯垢検知部により検知された歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させ、前記駆動部は、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行うものである。
【0079】
開示された電動歯ブラシは、前記液体を貯留するためのタンクと、前記タンクに貯留された液体の種類を識別する液体識別部と、を更に備え、前記駆動部は、前記液体の噴射が行われている間において、前記液体識別部により識別された液体が水以外である場合にのみ、前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行う処理を実施するものである。
【0080】
開示された電動歯ブラシは、前記第二の方向は、前記第一の方向と直交する方向であるものを含む。
【0081】
開示された電動歯ブラシの作動方法は、電動歯ブラシに装着されたブラシユニットから光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光の反射光を検出する反射光検出部と、前記ブラシユニットの複数のブラシで囲まれる部分から液体を噴射する液体噴射部と、を備える電動歯ブラシの作動方法であって、前記電動歯ブラシに装着されたブラシユニットを前記ブラシユニットに設けられた複数のブラシの押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、前記ブラシユニットを前記第一の方向と異なる第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動ステップと、前記反射光検出部により検出された反射光に基づいて歯垢を検知する歯垢検知ステップと、前記歯垢検知ステップにより検知した歯垢量が閾値を超える場合に前記液体を噴射させる液体噴射制御ステップと、を備え、前記駆動ステップでは、前記液体の噴射が行われている間は前記第一の駆動を禁止して前記第二の駆動のみを行うものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、特に家庭用の電動歯ブラシに適用して利便性が高く、有効である。
【符号の説明】
【0083】
100 電動歯ブラシ
10 把持部
11 ステム
13 偏心軸
14 錘
15 基板
20 ブラシユニット
21 孔部
22 ブラシ
23,23a 透明窓
24 発光素子
25 受光素子
27 導水管
28 バルブ
30 タンク
50 制御部
M モータ
図1
図2
図3
図4