(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加飾された部分を有する樹脂シートと、内面が成形面になる成形凹部を有するキャビティ型と同キャビティ型に前記樹脂シートを係止する係止部材とを備える金型と、を用いて意匠面が加飾された加飾成形品を製造する方法であって、
前記樹脂シートを、前記成形凹部を覆う既定の位置に位置決めするとともに、前記成形凹部の開口端に沿う方向において前記キャビティ型および前記係止部材によって挟持された部分と挟持されない部分とが並ぶ状態で前記キャビティ型に係止する第1工程と、
前記第1工程後に、前記樹脂シートを押圧して前記キャビティ型の成形面に近づく方向に変形させる第2工程と、
前記第2工程後に、前記樹脂シートを、前記成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周にわたって前記キャビティ型および前記係止部材によって挟持された状態で、前記キャビティ型に係止する第3工程と、
前記第3工程後に、前記樹脂シートを、真空吸引によって前記キャビティ型の成形面に密着させて成形する第4工程と、を備える加飾成形品の製造方法。
前記係止部材は、同係止部材と前記キャビティ型とによって前記樹脂シートが挟持された状態になったときに、前記成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周を囲む形状になるものであり、
前記キャビティ型は、前記係止部材に対向する面からの突出量を変更可能な態様で、前記成形凹部の開口周縁における前記係止部材に対向する部分に同成形凹部の開口端に沿う方向に間隔を置いて並ぶように設けられる係止ピン、を備えてなり、
前記第1工程においては、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの前記係止ピンの突出量が大きい状態で、前記係止ピンの先端と前記係止部材とによって前記樹脂シートを挟持することにより、同樹脂シートを前記キャビティ型に係止し、
前記第3工程においては、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの前記係止ピンの突出量が前記第1工程における突出量よりも小さい状態で、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面と同係止部材とによって前記樹脂シートを挟持することにより、同樹脂シートを前記キャビティ型に係止する請求項1に記載の加飾成形品の製造方法。
前記係止部材は、前記樹脂シートを介して前記係止ピンの先端が突き当たる位置に、同係止ピンの先端が出入する形状の凹部を有してなる請求項2または3に記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記製造方法では、真空吸引によるフィルムの成形を適正に行うために、真空吸引に先立ち、キャビティ型の成形凹部の開口周縁とフィルムとを密着させる。これにより、キャビティ型の成形面とフィルムとによって区画された空間は密閉された状態になる。そのため、この状態でフィルムをキャビティ型の成形面に近づけるべく同フィルムを押圧すると、フィルムにおける押圧されていない部分が膨らむなど、フィルムが意図しない形状に変形するおそれがある。こうしたフィルムの意図しない変形は、キャビティ型の成形面に対するフィルム(加飾模様層)の位置ずれを招く一因になるため、加飾成形品の意匠面における模様の形成位置の精度低下を招いてしまう。
【0007】
なお、こうした実情は、上述のようにインモールド成形によって加飾成形品を製造する製造方法に限らず、フィルムインサート成形や真空成形によって意匠面が加飾された加飾成形品を製造する製造方法など、フィルムなどの樹脂シートを用いた真空吸引によって加飾成形品の少なくとも一部を成形する製造方法においては概ね共通している。
【0008】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加飾成形品の意匠面における模様の形成位置の精度向上を図ることのできる加飾成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための加飾成形品を製造方法では、加飾された部分を有する樹脂シートと、内面が成形面になる成形凹部を有するキャビティ型と同キャビティ型に前記樹脂シートを係止する係止部材とを備える金型と、が用いられる。この製造方法は、前記樹脂シートを、前記成形凹部を覆う既定の位置に位置決めするとともに、前記成形凹部の開口端に沿う方向において前記キャビティ型および前記係止部材によって挟持された部分と挟持されない部分とが並ぶ状態で前記キャビティ型に係止する第1工程、を備える。また、前記樹脂シートを押圧して前記キャビティ型の成形面に近づく方向に変形させる第2工程と、前記樹脂シートを、前記成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周にわたって前記キャビティ型および前記係止部材によって挟持された状態で、前記キャビティ型に係止する第3工程と、前記樹脂シートを、真空吸引によって前記キャビティ型の成形面に密着させて成形する第4工程と、を備える。
【0010】
上記製造方法では、真空吸引による樹脂シートの成形に先立ち同樹脂シートを押圧してキャビティ型の成形面に近づく方向に変形させる際に、樹脂シートが、キャビティ型および係止部材によって挟持された状態で、同キャビティ型の成形凹部の開口を覆うように係止される。とはいえ、このときにはキャビティ型の成形凹部の開口周縁において同キャビティ型および係止部材によって樹脂シートが挟持されない部分があり、同部分ではキャビティ型と樹脂シートとが密着していない。そのため、樹脂シートを押圧して変形させる際に同樹脂シートとキャビティ型の成形面とによって区画される空間の内部圧力が上昇すると、キャビティ型と係止部材との間に樹脂シートが挟まれていない部分において同キャビティ型と樹脂シートとに隙間が生じるとともに、この隙間を介して上記空間の内部から外部に空気が排出されるようになる。したがって上記製造方法によれば、樹脂シートを押圧して変形させる際に、上記空間の内部を満たしている空気による影響を小さくして樹脂シートを所望の態様で変形させることができるため、キャビティ型の成形面に対する樹脂シートの位置ずれを小さくすることができる。
【0011】
しかも、樹脂シートを押圧して変形させた後に同樹脂シートを真空吸引によってキャビティ型の成形面に密着させて成形する際には、樹脂シートが、キャビティ型の成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周にわたってキャビティ型および係止部材によって挟持された状態で係止される。そのため、このときには成形凹部の開口の周縁において同開口の周囲全周にわたって樹脂シートとキャビティ型と密着させることができ、樹脂シートとキャビティ型との隙間を介した上記空間の外部から内部への空気の流入を抑えることができる。これにより、真空吸引による樹脂シートの成形を適正に行うことができるため、キャビティ型の成形面に対する樹脂シートの位置ずれを小さくして同樹脂シートを所望の形状に形成することができる。
【0012】
そして、上記製造方法によれば、このようにして所望の形状に成形された樹脂シートを用いて加飾成形品を形成したり同樹脂シートを加飾成形品としたりすることにより、樹脂シートの模様を加飾成形品における所望の位置に精度良く配置することができるため、加飾成形品の意匠面における模様の形成位置の精度向上を図ることができる。
【0013】
上記製造方法において、前記係止部材を、同係止部材と前記キャビティ型とによって前記樹脂シートが挟持された状態になったときに、前記成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周を囲む形状になるものにする。また、前記キャビティ型を、前記係止部材に対向する面からの突出量を変更可能な態様で、前記成形凹部の開口周縁における前記係止部材に対向する部分に同成形凹部の開口端に沿う方向に間隔を置いて並ぶように設けられる係止ピン、を備えるものとする。そして、第1工程においては、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの前記係止ピンの突出量が大きい状態で、前記係止ピンの先端と前記係止部材とによって前記樹脂シートを挟持することにより、同樹脂シートを前記キャビティ型に係止することが好ましい。また、第3工程においては、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの前記係止ピンの突出量が前記第1工程における突出量よりも小さい状態で、前記キャビティ型の前記係止部材に対向する面と同係止部材とによって前記樹脂シートを挟持することにより、同樹脂シートを前記キャビティ型に係止することが好ましい。
【0014】
上記製造方法によれば、第1工程においては、キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの係止ピンの突出量が大きい状態になり、間隔を置いて設けられた係止ピンの先端と係止部材とによって樹脂シートが挟持される。これにより、係止ピンが設けられて樹脂シートが挟持される部分ではキャビティ型(詳しくは、係止ピンの先端)と樹脂シートとが密着して隙間が形成されないものの、係止ピンが設けられておらず樹脂シートが挟持されない部分では、キャビティ型の前記係止部材に対向する面と樹脂シートとが密着せずに隙間が形成されるようになる。そして、第2工程における樹脂シートの押圧に際しては、この隙間を介して前記空間内部の空気が排出されるようになる。
【0015】
しかも、第3工程においては、キャビティ型の前記係止部材に対向する面からの係止ピンの突出量が第1工程における突出量よりも小さい状態になり、上記成形凹部の開口端に沿う方向において同成形凹部の開口の周囲全周を囲む形状の係止部材とキャビティ型の前記係止部材に対向する面とによって樹脂シートが挟持される。そのため、上記成形凹部の開口の周縁において同開口の周囲全周にわたって樹脂シートとキャビティ型とを密着させて隙間をなくすことができ、第4工程における真空吸引に際して、樹脂シートとキャビティ型との隙間を介して上記空間の外部から内部に空気が流入することが抑えられる。
【0016】
上記製造方法において、前記キャビティ型を、前記突出量を大きくする方向に前記係止ピンを常時付勢するばね部材を有するものとする。そして、第1工程においては、前記キャビティ型と前記係止部材との相対位置を前記キャビティ型における前記係止部材に対向する面と同係止部材との間隔が前記樹脂シートの厚さよりも大きくなる位置にすることによって、前記係止ピンの突出量を大きい状態にすることが好ましい。また、第3工程においては、前記相対位置を前記キャビティ型における前記係止部材に対向する面と同係止部材との間隔が前記樹脂シートの厚さ以下になる位置にすることによって、前記係止ピンの突出量を前記第1工程における突出量よりも小さい状態にすることが好ましい。
【0017】
上記製造方法によれば、第1工程においては、キャビティ型における上記係止部材に対向する面と同係止部材との間隔が樹脂シートの厚さよりも大きくなるため、ばね部材の付勢力によって係止ピンが樹脂シートを介して係止部材に押し当てられて、同係止ピンの先端と係止部材とによって樹脂シートが挟持されるようになる。また、樹脂シートが挟持されていない部分では、同樹脂シートとキャビティ型とに隙間が形成されるようになる。
【0018】
しかも、第3工程においては、キャビティ型における上記係止部材に対向する面と同係止部材との間隔が樹脂シートの厚さ以下になるため、ばね部材の付勢力に抗して係止ピンが移動して、キャビティ型の上記係止部材に対向する面と同係止部材との間に樹脂シートが挟み込まれた状態になる。これにより、キャビティ型の上記係止部材に対向する面と同係止部材とによって樹脂シートが挟持されるようになる。
【0019】
上記製造方法において、前記係止部材は、前記樹脂シートを介して前記係止ピンの先端が突き当たる位置に、同係止ピンの先端が出入する形状の凹部を有することが好ましい。
上記製造方法によれば、第1工程において係止ピンの先端と係止部材とによって樹脂シートを挟持させる際に、樹脂シートを変形させつつ係止部材の凹部に係止ピンの先端が進入するようになる。これにより、係止ピンの先端と係止部材(詳しくは、その凹部の底)とによって樹脂シートが挟持されるようになることに加えて、樹脂シートの変形した部分が係止ピンの外面や凹部の内面に係合するようになる。そのため、係止ピンの外面や凹部の内面と樹脂シートとが係合しない場合と比較して、キャビティ型に対する樹脂シートの位置がずれることを好適に抑えることができ、第2工程における樹脂シートの位置ずれを好適に抑えることができる。
【0020】
上記製造方法において、前記第2工程に先立ち、前記樹脂シートを加熱する加熱工程を更に備えることが好ましい。
キャビティ型に係止された樹脂シートは、第2工程において押圧されることによって伸び、さらに第4工程において真空吸引されることによっても伸びる。上記製造方法によれば、第2工程において樹脂シートが押圧される前に同樹脂シートが加熱されるため、この加熱によって樹脂シートは軟化して伸びやすくなる。そのため、樹脂シートは第2工程における押圧と第4工程における真空吸引とによって無理なく伸びて、キャビティ型の成形面に密着させられるようになる。特に、キャビティ型の成型凹部が深く、樹脂シートを成形面に密着させるために大きく伸ばす必要がある場合には、上記樹脂シートを加熱して軟化させることが有効である。
【0021】
上記製造方法において、前記金型をコア型を備えるものとし、前記樹脂シートを、基材フィルム上に加飾模様層が形成されてなるものとする。そして、型締め状態の前記金型内において前記フィルムと前記コア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を成形するとともに、前記フィルムの加飾模様層を前記成形品本体の意匠面に固着させることが好ましい。
【0022】
上記製造方法によれば、成形品本体の意匠面が加飾模様層により加飾された加飾成形品であって、意匠面における加飾模様層の形成位置の精度が高い加飾成形品を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、加飾成形品の意匠面における模様の形成位置の精度向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、加飾成形品の製造方法を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0026】
初めに、本実施形態の製造方法によって得られる加飾成形品の概略構成について説明する。
図1および
図2(a)に示すように、加飾成形品11は、例えば、自動車用の内装品として具体化されるものであり、成形品本体12と加飾模様層13とを備えている。成形品本体12は、樹脂材料を用い射出成形を行なうことによって形成される。成形品本体12の表層部には溝(溝部14)が形成されている。成形品本体12の外表面の一部は意匠面15を構成しており、上記溝部14の内壁面もまた意匠面15の一部を構成している。
【0027】
図2(a)および
図2(b)に示すように、加飾模様層13は、成形品本体12の意匠面15に形成されて、同意匠面15を加飾(装飾)している。加飾模様層13は、互いに接した状態で隣り合う2種類の模様部16,17によって構成されており、両模様部16,17の境界部分18を、上記溝部14の内壁面に位置させた状態で、成形品本体12の意匠面15の略全面にわたって形成されている。
【0028】
上記加飾成形品11の製造には、以下に示す樹脂シートとしてのフィルム20および金型30が用いられる。
図3に示すように、フィルム20の主要部は、樹脂材料によって長尺状に形成された基材フィルム21によって構成されている。この基材フィルム21は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。基材フィルム21の樹脂材料としては、熱可塑性の樹脂材料であれば任意のものを使用することができる。本実施形態では、こうした樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられている。なお、基材フィルム21は、単層からなるものであってもよいし、積層構造を有するものであってもよい。
【0029】
基材フィルム21上には、上記加飾模様層13が、グラビア印刷等の印刷、蒸着等によって、基材フィルム21の長さ方向に一定間隔毎に剥離可能に形成されている。加飾模様層13における模様部16,17は、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、金属調模様、幾何学模様、抽象模様等からなる。また、この模様部16,17には、文字、記号等が含まれてもよい。なお、上記基材フィルム21上であって、加飾模様層13とは異なる箇所には、位置決め用のマーク(図示略)が印刷等によって加飾模様層13毎に形成されている。
【0030】
上記フィルム20は、基材フィルム21が内側になるとともに加飾模様層13が外側になるように巻回されてロール22にされている。フィルム20のロール22は、金型30の上方近傍に配置されている。また、金型30の下方近傍には、加飾模様層13の剥離された基材フィルム21を巻き取るための巻取り装置23が配置されている。
【0031】
金型30は、コア型31およびキャビティ型32を備えている。本実施形態では、コア型31が固定型になっており、キャビティ型32が水平方向(
図3における左右方向)に移動してコア型31に接近および離間する可動型になっている。
【0032】
コア型31における上記キャビティ型32側の部分には、同キャビティ型32側へ突出する成形突部33が設けられている。この成形突部33の表面と、コア型31の上記キャビティ型32側の端面31aにおける成形突部33の周りの部分とによって、コア面34が構成されている。コア型31には、一端が成形突部33の先端面に開口するスプルーゲート35が形成されている。
【0033】
これに対し、キャビティ型32における上記コア型31側の部分には成形凹部36が設けられており、同成形凹部36の一部には、上記成形品本体12の溝部14を成形するための突条部37が成形突部33に向けて突設されている。そして、この突条部37の表面を含む成形凹部36の内壁面によって成形面38が構成されている。
【0034】
キャビティ型32の成形面38は、フィルム20を所定の形状に形成するための賦形面としての機能と、溶融樹脂を、所定の形状を有する成形品本体12に成形するための賦形面としての機能とを有している。この成形面38には、キャビティ型32に形成された多数の微細な真空吸引孔(図示略)が開口している。そして、これら真空吸引孔は真空ポンプ(図示略)に接続されている。
【0035】
図3および
図4に示すように、キャビティ型32には、係止部材としてのクランプ39が設けられている。クランプ39は、同クランプ39とキャビティ型32(あるいは後述する係止ピン41の先端)とによってフィルム20を挟持することにより、フィルム20をキャビティ型32に係止する。クランプ39は、同クランプ39とキャビティ型32とによってフィルム20が挟持された状態になったときに、キャビティ型32の成形凹部36の開口端に沿う方向において同成形凹部36の開口の周囲全周を囲む形状になるように形成されている。具体的には、クランプ39は、長方形状の4つの辺をなすように延びる環状に形成されている。
【0036】
クランプ39の上記キャビティ型32に対向する部分には、キャビティ型32の成形凹部36の開口端に沿う方向に間隔を置いて並ぶように、複数の凹部40(本実施形態では、16個)が設けられている。各凹部40は断面円形状に形成されている。
【0037】
また、キャビティ型32には、同キャビティ型32の上記クランプ39に対向する面(端面32a)に接近するように同クランプ39を移動させたり、同端面32aから離間するようにクランプ39を移動させたりするための駆動機構(図示略)が設けられている。
【0038】
図5および
図6に示すように、キャビティ型32には、その成形凹部36の開口周縁における上記クランプ39に対向する部分に、同成形凹部36の開口端に沿う方向に間隔を置いて並ぶように、複数(本実施形態では、16個)の係止ピン41が設けられている。これら係止ピン41は、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aからの突出量を変更可能な態様で設けられている。
【0039】
詳しくは、キャビティ型32の成形凹部36の開口周縁における上記クランプ39に対向する部分には、金型30の型締め方向(
図5および
図6における左右方向)において断面円形状で延びる収容孔43や、同収容孔43の内部と外部とを連通する連通孔44が設けられている。上記係止ピン41は、円柱形状に形成されており、収容孔43の内部に金型30の型締め方向において移動可能な状態で収容されている。また係止ピン41は、先端が連通孔44を介して収容孔43の外部に突出する態様で設けられている。さらに収容孔43の内部には、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aからの係止ピン41の突出量を大きくする方向に同係止ピン41を常時付勢する付勢部材としてのスプリング45が設けられている。そして、各係止ピン41は、その先端を押圧することにより、スプリング45の付勢力に抗して、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aからの突出量が小さくなる方向に移動させることが可能になっている。
【0040】
図3に示すように、上記キャビティ型32では、クランプ39によってフィルム20を同キャビティ型32に係止する際に、係止ピン41の先端がフィルム20を間に挟んでクランプ39に突き当たるようになっている。クランプ39に設けられる複数の凹部40は、フィルム20を介して係止ピン41の先端が突き当たる位置にそれぞれ配置されている。係止ピン41の先端形状と凹部40の形状とは、それぞれ係止ピン41の先端が凹部40に出入することの可能な形状が定められている。
【0041】
さらに、
図3に示すように、金型30の近傍には、キャビティ型32およびコア型31とは別に設けられた可動部材50が、上下方向及び水平方向へ移動可能に配置されている。
【0042】
可動部材50のキャビティ型32側の面には、通電により発熱するヒータ51が設けられている。ヒータ51はフィルム20を加熱して軟化させるためのものである。
また可動部材50のキャビティ型32側の面には、上記ヒータ51と異なる位置に、キャビティ型32の成形面38(詳しくは、突条部37)に向けて突出する押圧部52が設けられている。この押圧部52は、コア型31側(図中における矢印A方向)から見た押圧部52の先端部分の形状と、同じくコア型31側から見たキャビティ型32の突条部37の形状とがほぼ一致するように形成されている。そのため、キャビティ型32に近づくように可動部材50を移動させて、同可動部材50の押圧部52によってフィルム20を押圧することにより、フィルム20を突条部37に対して同突条部37の全長にわたって押付けることができるようになっている。
【0043】
(作用)
次に、本実施形態の作用として、加飾成形品11を製造する方法を
図7〜
図15にしたがって説明する。
【0044】
本実施形態では、第1工程、加熱工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、離型工程を経て加飾成形品11が製造される。以下、それら工程を各別に説明する。
<第1工程>
先ず、第1工程では、
図7に示すように、金型30が型開きされた状態で巻取り装置23(
図3参照)が作動させられて、フィルム20(詳しくは、直後においてキャビティ型32に係止される部分)がキャビティ型32とクランプ39との間に送り出される。この巻取り装置23の作動は、フィルム20の加飾模様層13が既定の位置まで移動したところで停止される。すなわち、加飾模様層13の上記キャビティ型32に対する位置決めが行なわれる。既定の位置としては、フィルム20における加飾模様層13が上記キャビティ型32の成形凹部36を覆うようになる位置が予め定められている。この位置決めは、例えば、上述した位置決め用のマークがセンサによって検出されることをもって行なわれる。なお、フィルム20は、基材フィルム21がキャビティ型32側に位置するとともに加飾模様層13がコア型31側に位置するように配置されている。
【0045】
そして、
図8(a)および
図8(b)に示すように、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔がフィルム20の厚さよりも大きくなる位置(第1係止位置)まで、クランプ39が移動される。
【0046】
クランプ39の移動後においては、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔がフィルム20の厚さよりも大きくなる。そのため、同端面32aとクランプ39とによってフィルム20が挟み込まれた状態にはならず、スプリング45の付勢力によって係止ピン41の上記端面32aからの突出量が大きい状態(
図8に示す状態)になり、同係止ピン41の先端がフィルム20を介してクランプ39に押し当てられるようになる。このときフィルム20は、係止ピン41が設けられている部分ではキャビティ型32(詳しくは、係止ピン41の先端)とクランプ39とによって挟持されるものの、係止ピン41が設けられていない部分ではキャビティ型32とクランプ39とによって挟持されない。このように第1工程では、フィルム20が、キャビティ型32の成形凹部の開口端に沿う方向において同キャビティ型32およびクランプ39によって挟持された部分と挟持されない部分とが並ぶ状態で、キャビティ型32に係止される。そして、係止ピン41の先端とクランプ39とによってフィルム20が挟持されていない部分では、同フィルム20とキャビティ型32の端面32aとに隙間が形成される。
【0047】
また本実施形態では、第1工程において係止ピン41の先端とクランプ39とによってフィルム20を挟持させる際に、フィルム20を変形させつつクランプ39の凹部40に係止ピン41の先端が進入するようになる。これにより、係止ピン41の先端とクランプ39(詳しくは、その凹部40の底)とによってフィルム20が挟持されるようになることに加えて、フィルム20の変形した部分が係止ピン41の外面や凹部40の内面に係合するようになる。そのため、係止ピン41の外面や凹部40の内面とフィルム20とが係合しない場合と比較して、キャビティ型32に対してフィルム20の位置がずれることを好適に抑えることができる。
【0048】
<加熱工程>
その後の加熱工程では、
図9に示すように、可動部材50のヒータ51によってフィルム20を加熱するべく同可動部材50が移動される。具体的には、金型30が型開きされた状態のままで、可動部材50のヒータ51の高さとキャビティ型32の成形凹部36の高さとが一致する位置まで可動部材50が待機位置(
図3に示す位置)から下方に移動させられる。このときヒータ51は通電されて発熱しており、このヒータ51によってフィルム20が加熱される。こうしたヒータ51による加熱によってフィルム20は軟化して伸びやすくなる。
【0049】
<第2工程>
その後の第2工程では、可動部材50(
図3参照)の押圧部52によってフィルム20を押圧するべく同可動部材50が移動される。具体的には、先ず、可動部材50の押圧部52の先端部分の高さとキャビティ型32の突条部37の高さとが一致する位置まで可動部材50が待機位置(
図3に示す位置)から下方に移動させられる。その後、可動部材50がキャビティ型32側(
図3における左方向)へ移動させられる。
【0050】
この移動に伴って押圧部52がキャビティ型32側へ移動し、フィルム20が、両模様部16,17の境界部分18において、押圧部52の先端部分によってキャビティ型32側へ押圧される。このときには基材フィルム21が伸びるとはいえ、基材フィルム21は押圧部52によって押圧されているために同押圧部52に対して動きにくい。加飾模様層13についても同様であり、このとき加飾模様層13の境界部分18は押圧部52に対して動きにくい。このようにして押圧部52によって押圧されることにより、上記フィルム20は同押圧部52に対する位置を保持しつつ伸びて成形面38に近づく。そして、
図10に示すように、フィルム20はキャビティ型32の成形面38の一部(詳しくは、突条部37)に押付けられる。
【0051】
第2工程においては、フィルム20が、係止ピン41の先端とクランプ39とによって挟持された状態で、同キャビティ型32の成形凹部36の開口を覆うように係止されている。とはいえ、キャビティ型32の成形凹部36の開口周縁において同キャビティ型32およびクランプ39によってフィルム20が挟持されない部分があり、同部分ではキャビティ型32(詳しくは、その端面32a)とフィルム20とが密着していない。そのため、フィルム20を押圧して変形させる際に同フィルム20とキャビティ型32の成形面38とによって区画される空間46の内部圧力が上昇すると、キャビティ型32とクランプ39との間にフィルム20が挟まれていない部分において同キャビティ型32とフィルム20とに隙間が生じる。そして、この隙間を介して上記空間46の内部から外部に空気が排出されるようになる。したがって第2工程では、フィルム20を押圧して変形させる際に、上記空間46の内部を満たしている空気による影響を小さくしてフィルム20を所望の態様で変形させることができ、キャビティ型32の成形面38に対するフィルム20の位置ずれを小さくすることができる。
【0052】
また本実施形態では、フィルム20を押圧する工程(第2工程)に先立ち、フィルム20がヒータ51によって加熱されており、同フィルム20が軟化して伸びやすくなっている。そのため、フィルム20は押圧部52による押圧によって無理なく伸びて、キャビティ型32の成形面38に密着させられるようになる。本実施形態では、キャビティ型32の成形凹部36が深く、フィルム20を成形面38に密着させるために大きく伸ばす必要があるため、フィルム20を加熱して軟化させることが有効である。
【0053】
<第3工程>
その後の第3工程では、
図11(a)および
図11(b)に示すように、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔がフィルム20の厚さ(詳しくは、第3工程において上記端面32aとクランプ39との間に挟持される前の基材フィルム21の厚さT)よりも小さくなる位置(第2係止位置)まで、クランプ39が移動される。
【0054】
クランプ39の移動後においては、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔が上記厚さTよりも小さくなる。そのため、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する部分に係止ピン41が設けられているとはいえ、このとき係止ピン41の先端がフィルム20を介してクランプ39によって押圧されて、同係止ピン41がスプリング45の付勢力に抗して収容孔43内に進入するようになる。このとき上記端面32aからの上記係止ピン41の突出量が第1工程における突出量よりも小さい状態(
図11に示す状態)になる。これにより、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間にフィルム20が挟み込まれた状態になって、キャビティ型32の端面32aとクランプ39とによってフィルム20が挟持されるようになる。そのため、フィルム20が、キャビティ型32の成形凹部36の開口端に沿う方向において同成形凹部36の開口の周囲全周にわたってキャビティ型32およびクランプ39に密着した状態になる。これにより、キャビティ型32の成形面38とフィルム20とによって区画された空間46が密閉される。
【0055】
このように第3工程では、フィルム20が、キャビティ型32の成形面38とフィルム20とによって区画された空間46を密閉した状態で、キャビティ型32に係止される。なお第3工程では、可動部材50が、押圧部52によってフィルム20を押圧した状態のままで保持される。
【0056】
<第4工程>
その後の第4工程では、真空ポンプによる真空吸引が開始されて上記空間46の内部が減圧される。この減圧により、フィルム20はキャビティ型32側へ引き込まれて伸びる。そして、
図12に示すように、フィルム20は、成形面38に密着させられて同成形面38に倣った形状に賦形(予備成形)される。
【0057】
本実施形態では、このときキャビティ型32の成形凹部36の開口の周縁において同開口の周囲全周にわたってフィルム20とキャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aとが密着している。そのため、フィルム20とキャビティ型32との隙間を介してフィルム20とキャビティ型32の成形面38とによって区画された空間46の外部から内部に空気が流入することを抑えることができる。これにより、真空吸引によるフィルム20の成形を適正に行うことができるため、キャビティ型32の成形面38に対するフィルム20の位置ずれを小さくして同フィルム20を所望の形状に形成することができる。
【0058】
また、このとき可動部材50は、押圧部52によってフィルム20を押圧した状態のままで保持されている。そのため、フィルム20のうちの上記押圧部52によってキャビティ型32の成形面38に押付けられている箇所、すなわち隣り合う模様部16,17の境界部分18は、その箇所から動くことが規制される。したがって、単にフィルム20がキャビティ型32の成形面38に近づけられた状態、すなわちフィルム20が成形面38に押し付けられない状態で真空吸引された場合とは異なり、フィルム20の全面が成形面38に密着するまでに境界部分18が押圧部52に対して動いて同フィルム20の位置がずれることが起こりにくい。
【0059】
さらに本実施形態では、フィルム20を真空吸引によって成形する第4工程に先立ち、フィルム20がヒータ51によって加熱されており、同フィルム20が軟化して伸びやすくなっている。そのため、フィルム20は第4工程における真空吸引によって無理なく伸びて、キャビティ型32の成形面38に密着させられるようになる。
【0060】
<第5工程>
続いて、第5工程では、フィルム20が成形面38に密着されると、可動部材50が金型30の外部の待機位置(
図3に示す位置)へ退避させられる。そして、
図13に示すように、金型30の型締めが行なわれる。この型締めは、コア型31がキャビティ型32側(
図3における左方向)へ移動させられることにより行なわれる。型締めにより、フィルム20のうちキャビティ型32の成形面38に密着した部分と、コア型31のコア面34との間にキャビティ48が形成される。
【0061】
その後、
図14に示すように、スプルーゲート35を通じて溶融樹脂49がキャビティ48(
図13参照)に射出される。そして、溶融樹脂49が冷却されることで、溝部14を有する成形品本体12が成形される。この成形の過程で、溶融樹脂49の熱、射出の圧力等により、フィルム20の基材フィルム21から加飾模様層13が剥離する。本実施形態では、キャビティ型32の成形面38に対するフィルム20の位置ずれが小さい。そのため、加飾模様層13は、隣り合う模様部16,17の境界部分18が、成形品本体12における予め定められた形成予定箇所(溝部14の内壁面)に位置するように、成形品本体12の意匠面15に対して高い位置精度で転写(固着)されるようになる。この転写により、加飾模様層13を加飾成形品11における所望の位置に精度良く配置することができるため、同加飾成形品11の意匠面における模様の形成位置の精度向上を図ることができる。本実施形態では、このようにして成形品本体12の意匠面が加飾模様層13により加飾された加飾成形品11であって、意匠面における加飾模様層13の形成位置の精度が高い加飾成形品を製造することができる。
【0062】
<離型工程>
その後の離型工程では、
図15に示すように、コア型31がキャビティ型32から離間する側に移動させられることで金型30の型開きが行なわれる。そして、金型30から上記加飾成形品11が取り出される。また、このときには、次サイクルの加飾成形品11の製造に備えて、クランプ39がキャビティ型32の同クランプ39に対向する端面32aから離間した位置に移動させられる。そして、巻取り装置23(
図3参照)によりフィルム20が所定長さだけ巻き取られる(送り出される)ことにより、加飾成形品11の製造のための1サイクルが終了する。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)第2工程において、フィルム20を押圧して変形させる際に、上記空間46の内部を満たしている空気による影響を小さくしてフィルム20を所望の態様で変形させることができ、キャビティ型32の成形面38に対するフィルム20の位置ずれを小さくすることができる。しかも、第4工程において、真空吸引によるフィルム20の成形を適正に行うことができるため、キャビティ型32の成形面38に対するフィルム20の位置ずれを小さくして同フィルム20を所望の形状に形成することができる。したがって、加飾模様層13を加飾成形品11における所望の位置に精度良く配置することができ、同加飾成形品11の意匠面における模様の形成位置の精度向上を図ることができる。
【0064】
(2)第1工程では、係止ピン41の先端とクランプ39とによってフィルム20を挟持することにより、同フィルム20をキャビティ型32に係止した。そのため、係止ピン41が設けられてフィルム20が挟持される部分では同係止ピン41の先端とフィルム20とが密着して隙間が形成されない。ただし、係止ピン41が設けられておらずフィルム20が挟持されない部分では、キャビティ型32の前記クランプ39に対向する端面32aとフィルム20とが密着せずに隙間が形成されるようになる。そして、その後の第2工程におけるフィルム20の押圧に際しては、この隙間を介して前記空間46内部の空気が排出されるようになる。
【0065】
しかも、第3工程では、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39とによってフィルム20を挟持することにより、同フィルム20をキャビティ型32に係止した。そのため、キャビティ型32の成形凹部36の開口の周縁において同開口の周囲全周にわたってフィルム20とキャビティ型32とを密着させて隙間をなくすことができ、その後の第4工程における真空吸引に際して、フィルム20とキャビティ型32との隙間を介して上記空間46の外部から内部に空気が流入することが抑えられる。
【0066】
(3)キャビティ型32に、クランプ39に対向する端面32aからの突出量を大きくする方向に係止ピン41を常時付勢するスプリング45を設けた。そして、第1工程では、キャビティ型32とクランプ39との相対位置を同キャビティ型32における前記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔がフィルム20の厚さよりも大きくなる第1係止位置にすることによって、係止ピン41の突出量が大きい状態にした。これにより、スプリング45の付勢力によって係止ピン41がフィルム20を介してクランプ39に押し当てられて、同係止ピン41の先端とクランプ39とによってフィルム20が挟持されるようになる。また、フィルム20が挟持されていない部分では、同フィルム20とキャビティ型32とに隙間が形成されるようになる。
【0067】
また、第3工程では、キャビティ型32とクランプ39との相対位置を同キャビティ型32の端面32aとクランプ39との間隔がフィルム20の厚さよりも小さくなる第2係止位置にすることによって、係止ピン41の突出量が第1工程における突出量よりも小さい状態にした。これにより、スプリング45の付勢力に抗して係止ピン41が移動して、キャビティ型32の端面32aとクランプ39との間にフィルム20が挟み込まれた状態になり、キャビティ型32の端面32aとクランプ39とによってフィルム20が挟持されるようになる。
【0068】
(4)クランプ39における前記フィルム20を介して係止ピン41の先端が突き当たる位置に、同係止ピン41の先端が出入する形状の凹部40を形成した。そのため、キャビティ型32に対するフィルム20の位置がずれることを好適に抑えることができ、第2工程におけるフィルム20の位置ずれを好適に抑えることができる。
【0069】
(5)第2工程に先立ち、フィルム20を加熱するようにした。そのため、フィルム20は第2工程における押圧と第4工程における真空吸引とによって無理なく伸びて、キャビティ型32の成形面38に密着させられるようになる。
【0070】
(6)成形品本体12の意匠面15が加飾模様層13により加飾された加飾成形品11であって、意匠面15における加飾模様層13の形成位置の精度が高い加飾成形品11を製造することができる。
【0071】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・上記実施形態とは逆に、キャビティ型32を固定型によって構成し、コア型31を可動型によって構成してもよい。
【0072】
・キャビティ型32およびコア型31の一方を固定型によって構成し、他方を、上下方向に移動させることによって上記固定型に対して接近および離間する可動型によって構成してもよい。
【0073】
・キャビティ型32の成形面38において前記押圧部52によってフィルム20が押付けられる箇所を、上記突条部37とは異なる箇所にしてもよい。そうした箇所には、成形面38における平坦な箇所が含まれる。要は、前記押圧部52によってフィルム20が押付けられる箇所は、同押圧部52の先端部分によって押圧されたフィルム20を受け止めることができる箇所であればよい。
【0074】
・加飾模様層13は、1種類の模様部によって構成されてもよいし、3種類以上の模様部によって構成されてもよい。
・第3工程において、第2係止位置までクランプ39を移動させることに代えて、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔がフィルム20の厚さ(詳しくは、前記厚さT)と等しくなる位置までクランプ39を移動させるようにしてもよい。
【0075】
クランプ39の移動後においては、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間隔が上記厚さTと等しくなる。そのため、キャビティ型32における上記クランプ39に対向する部分に係止ピン41が設けられているとはいえ、このとき係止ピン41の先端がフィルム20を介してクランプ39によって押圧されて、同係止ピン41がスプリング45の付勢力に抗して収容孔43内に進入するようになる。このとき上記端面32aからの上記係止ピン41の突出量が第1工程における突出量よりも小さい状態(
図11に示す状態)になる。これにより、キャビティ型32の上記クランプ39に対向する端面32aと同クランプ39との間にフィルム20が挟み込まれた状態になって、キャビティ型32の端面32aとクランプ39とによってフィルム20が挟持されるようになる。そのため、フィルム20が、キャビティ型32の成形凹部36の開口端に沿う方向において同成形凹部36の開口の周囲全周にわたってキャビティ型32およびクランプ39に密着した状態になる。これにより、キャビティ型32の成形面38とフィルム20とによって区画された空間46が密閉される。
【0076】
・押圧部52を、キャビティ型32の突条部37にフィルム20を押し当てるものでなく、変形前におけるフィルム20の位置と成形面38との間の位置までフィルム20を変形させるものに変更してもよい。押圧部52の形状は、フィルム20を押圧して同フィルム20をキャビティ型32の成形面38に近づく方向に変形させることの可能な形状であれば、任意の形状に変更することができる。また、フィルム20を押圧する押圧部として、コア型31のコア面34を用いること等も可能である。要は、フィルム20を押圧して同フィルム20をキャビティ型32の成形面38に近づく方向に変形させることの可能な形状のものであれば、フィルム20を押圧する押圧部として用いることができる。このようにしても、上記(1)〜(6)に記載の効果と同様の効果が得られる。
【0077】
・上記実施形態の製造方法は、意匠面に溝部が形成されていない加飾成形品を製造する方法にも適用することができる。
・伸びやすいフィルムを採用したり、成形凹部36が浅いキャビティ型32を採用したりするなどして、第2工程や第4工程においてフィルム20を無理なく伸ばすことができるのであれば、加熱工程を省略してもよい。
【0078】
・クランプ39の凹部40を省略して、同クランプ39の前記キャビティ側の面を平坦に形成してもよい。
・
図16に示すように、各収容孔43の内部のスプリング45(
図3参照)を省略して、各収容孔43に各別に流体ポンプ47を接続するようにしてもよい。このようにしても、流体ポンプ47を作動させて各収容孔43に対する流体(空気やオイルなど)の給排を行うことにより、キャビティ型32の端面32aからの係止ピン41の突出量を大きくしたり、同突出量を小さくしたりすることができる。
【0079】
・フィルム20をキャビティ型32に係止するクランプとして、第1工程では上記キャビティ型32に対向する部分に凸部が一体形成された第1クランプを用い、第3工程では同凸部が形成されていない第2クランプを用いるようにしてもよい。この場合には、キャビティ型32に設けられた係止ピン41、収容孔43、スプリング45を省略する。例えば、
図17(a)および
図17(b)に示すように、第1クランプ61を、長方形状の4つの辺をなすように延びる環状のクランプ本体62と、同クランプ本体62の上記キャビティ型32に対向する部分に間隔を置いて並ぶように突設される複数(本実施形態では16個)の凸部63とによって構成することができる。また、
図18(a)および
図18(b)に示すように、第2クランプ64を、長方形状の4つの辺をなすように延びる環状に形成することができる。なお、第2クランプ64には凸部が形成されない。
【0080】
このようにしても、第1工程では、第1クランプ61の凸部63の先端とキャビティ型32(
図3参照)の上記第1クランプ61に対向する端面32aとによってフィルム20を挟持することにより、同フィルム20をキャビティ型32に係止することができる。このとき凸部63が設けられてフィルム20が挟持される部分ではキャビティ型32の上記第1クランプ61に対向する端面32aとフィルム20とが密着して隙間が形成されない。ただし、凸部63が設けられておらずフィルム20が挟持されない部分では、キャビティ型32の上記第1クランプ61に対向する端面32aとフィルム20とが密着せずに隙間が形成されるようになる。そして、その後の第2工程におけるフィルム20の押圧に際しては、この隙間を介して前記空間46内部の空気が排出されるようになる。
【0081】
しかも、第3工程では、キャビティ型32の端面32aと第2クランプ64とによってフィルム20を挟持することにより、同フィルム20をキャビティ型32に係止することができる。そして、このときキャビティ型32の成形凹部36の開口の周縁において同開口の周囲全周にわたってフィルム20とキャビティ型32とを密着させて隙間をなくすことができ、その後の第4工程における真空吸引に際して、フィルム20とキャビティ型32との隙間を介して上記空間46の内部に空気が流入することが抑えられる。
【0082】
・係止ピン41、収容孔43、およびスプリング45をキャビティ型32に設けることに代えて、
図19(a)および
図19(b)に示すように、係止ピン71、収容孔72、およびスプリング73をクランプ70に設けるようにしてもよい。このようにしても、前記(1)〜(3)に記載の効果に準じた効果が得られる。
【0083】
・上記加飾成形品の製造方法は、加飾模様層13を成形品本体12に転写するインモールド成形によって加飾成形品11を製造する製造方法に限らず、基材フィルムと加飾模様層とからなるフィルムを成形品本体に一体形成するフィルムインサート成形によって加飾成形品を製造する製造方法にも適用することができる。また、基材フィルムと加飾模様層とからなる樹脂シートを真空成形によって成形することによって加飾成形品を製造する製造方法にも、上記実施形態にかかる製造方法は適用可能である。要は、樹脂シートを真空吸引によってキャビティ型の成形面に密着させて成形する工程と、同工程に先立ち、樹脂シートを押圧してキャビティ型の成形面に近づく方向に変形させる工程とを備える製造方法であれば、上記加飾成形品の製造方法は適用することができる。
【0084】
・上記加飾成形品の製造方法は、自動車用の内装品を製造する製造方法に限らず、自動車における各種樹脂成形品を製造する製造方法にも適用可能である。また、上記製造方法は、自動車以外の分野、例えば家電部品、雑貨品、日用品等における各種樹脂成形品を製造する場合にも適用可能である。