(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出対象物を蛍光させる励起波長を含む波長域の光を、遮光用フードが有する開口部を通して照射すると共に、前記検出対象物の蛍光の蛍光波長を含む可視波長領域の蛍光を撮像可能な撮像部に、前記照射により励起された前記検出対象物の蛍光を、前記開口部を通して入射し、
前記撮像部による撮像画像に基づき検出対象領域に存在する前記検出対象物を検出するようにした付着物検出方法であって、
前記撮像画像における当該撮像画像全体に占める前記開口部の比率を設定するステップと、
前記撮像画像の各画素の蛍光強度を当該撮像画像全体について積算して蛍光強度積算値を演算するステップと、
前記比率と前記蛍光強度積算値とから、前記検出対象領域の、前記撮像画像全体に対応した領域に相当する撮像画像当たりの蛍光強度の総和を推測するステップと、
予め設定した撮像画像当たりの蛍光強度の総和と前記検出対象物の量との対応を表す特性と、前記蛍光強度の総和とから、前記検出対象領域の、前記撮像画像全体に対応した領域に存在する前記検出対象物の量を検出するステップと、を備えることを特徴とする付着物検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
ここでは、本発明における付着物検出装置を、薬剤製造設備等を洗浄した後に、残留物を検出する残留物検出装置に適用した場合について説明する。なお、洗浄後の残留物を検出する場合に限るものではなく、単に付着物の有無を検出する場合等、付着物を蛍光させることで付着物の有無や付着物の量を検出する装置であっても適用することができる。
本発明を適用した残留物検出装置1は、
図1に示すように、遮光用フード2と、光照射部3と、撮像部4と、演算処理部5と、を備える。
【0014】
遮光用フード2は、ステンレス、アルミニウム等の遮光性の部材で形成され、例えば底面が正方形の中空の四角錐の上部を底面と平行な面で切断した形状に形成され、切断面が開口部2aとなる。この開口部2aの大きさは、光照射部3で照射された照射光が開口部2aを形成する遮光用フード2の側面部分(以後、開口部側面という。)で妨げられることなく検出対象領域に照射される大きさである。
【0015】
遮光用フード2は取り替え可能に構成され、例えば
図2に示すように、開口部2aが細長い長方形を有する遮光用フード2αに取り替えることができる。遮光用フード2αは、一端が開放されて開口部2aとなる中空に形成され、例えば底面が正方形であり、底面と平行な開口部2aが細長い長方形となるように、底面に連通する4つの側面で囲まれてなる。つまり、
図2に示す遮光用フード2αは、例えば直方体の容器の底面と側面とがなす角部に遮光用フード2αの開口部2aができるだけ接するように、遮光用フード2αの先端が細長くなっている。
【0016】
そのため、遮光用フード2αの開口部2aの大きさは、光照射部3で照射された照射光の一部が開口部側面で妨げられる大きさとなっている。
光照射部3は、照射部本体3aと、フィルタ(第一フィルタ)3bと、超高圧水銀ランプ等の光源3cと、光源3cと照射部本体3aとを接続する光ファイバ3dと、を備える。
【0017】
フィルタ3bは、照射部本体3aの照射面を覆うように配置される。フィルタ3bは、励起波長規定用のフィルタであって、検出対象の残留物の蛍光波長のみを通過させる特性を有する。
このフィルタ3bにより、光源3cとしての超高圧水銀ランプの発光する基線から最適な波長選択を行うようにしている。超高圧水銀ランプの基線としては、例えば紫外波長として313nmや、365nm等の波長を単独や混合として使用することができる。
【0018】
光源3cとして、紫外波長を利用する場合には、レーザ光源の利用も可能である。例えば、固体レーザであるYAGレーザの第3高調波である355nmや光励起半導体レーザの375nm等を利用する場合、光ファイバ3dで照射部本体3aに導光した後にはフィルタ3bの挿入は不要となる。
また、紫外線LEDは、昨今、光強度他の性能改善が見られ、波長365nmや375nmでの発光強度も向上しているため、光ファイバ3dでの導光無しに、直接遮光用フード2に光源3cを内蔵するようにしてもよい。このようにすることによって、可搬性、ハンドリング性が改善され、残留量測定作業をさらに効率化することができる。
【0019】
なお、これらレーザやLEDの使用波長や必要となる光強度は、検出するべき薬剤の励起波長特性に応じて適切に選択すればよい。
フィルタ3bが設けられた照射部本体3aは、遮光用フード2又は2αの4つの側面のうちの一つの面である取り付け面2bに設けられ、少なくとも照射部本体3aの照射面が遮光用フード2、2α内に位置するように設けられる。また、照射光が開口部2aを通して、残留物の検出対象領域に照射されるように配置される。
【0020】
撮像部4は、撮像部本体4aと、撮像部本体4aの撮像信号を処理し演算処理部5に送信する撮像処理部4bと、撮像部本体4aの撮像面に設けられたフィルタ(第二フィルタ)4cと、を備える。
撮像部本体4aは、撮像素子等から形成される。撮像素子としては、微弱蛍光検出に好適な高感度素子を用いる必要があり、素子数としては、電子倍増機能を持つ2000画素以上の2次元EMCCD(Electron Multiplying CCD)や、高感度な次世代イメージセンサを備えたs−CMOS(scientific CMOS)カメラなどを適用することができる。
【0021】
フィルタ4cは、検出対象の残留物の励起波長のみを通過させる特性を有する。
撮像処理部4bは、例えば中空の直方体状の収容部4dに、撮像部本体4aが収容部4dよりもはみ出るように配置される。この状態で遮光用フード2、2αを、撮像部本体4aを覆うように収容部4dに取り付けることによって、検出対象領域に生じた蛍光が開口部2aを通して、遮光用フード2内の撮像部本体4aにフィルタ4cを介して入射されるように位置決めされる。
【0022】
また、収容部4dには、グリップ4eが固定されており、持ち運び可能に形成されている。このグリップ4eにより一体に移動される、遮光用フード2又は2α、収容部4d、フィルタ3bが設けられた照射部本体3a、フィルタ4cが設けられた撮像部本体4a、及び撮像処理部4bからなる部分を携帯部という。
また、例えばグリップ4eには、図示しない起動スイッチ、照射スイッチ、及び撮像スイッチ等が設けられている。
【0023】
例えば起動スイッチをオンオフ操作することにより、携帯部に含まれる照射部本体3a、撮像部本体4a、撮像処理部4b等の各部が動作可能な状態となり、また、停止状態となる。
照射スイッチを操作することにより、照射部本体3aから光照射が行われる。撮像スイッチを操作することにより、撮像部4による撮像が行われる。
【0024】
図3は、残留薬剤の、励起波長と蛍光波長との関係を示す図である。
図3に示すように、残留薬剤の励起光の強度は、紫外領域の励起波長λeで最大となり、蛍光の強度は、可視領域の蛍光波長λfで最大となる。なお、
図3において、横軸は波長、縦軸は光強度である。したがって、検出対象の残留薬剤の励起波長λe及び蛍光波長λfに相当する波長の光のみを通過させる、フィルタ3b及びフィルタ4cを設け、励起波長及び蛍光波長に合わせた条件で蛍光量を高感度に撮像することで、より高精度に、薬剤の残留物量を検出することができる。
【0025】
撮像部4により得られた撮像画像は、撮像処理部4bから演算処理部5に送信される。
演算処理部5は、入力した撮像画像から残留物量を検出する。
ここで、検出対象領域の、撮像画像に相当する領域における薬剤残留量と、撮像画像における蛍光強度の総和との関係を表す蛍光強度特性は、
図4に示すように略比例関係となる。なお、
図4において、横軸は薬剤残留量、縦軸は蛍光強度の総和である。
【0026】
また、遮光用フード2が取り付けられているときに得られる撮像画像は、撮像画像全体が、検出対象領域の蛍光状態を反映した画像となる。これに対し、遮光用フード2αは開口部2aが細長いため、開口部側面により照射光の一部の通過が妨げられる。そのため、遮光用フード2αが取り付けられているときに得られた撮像画像は、撮像画像のうち、開口部2aを通して入射された蛍光に相当する部分は検出対象領域の蛍光状態を反映した画像となるが、それ以外の部分は検出対象領域の蛍光状態を反映していない画像となる。なお、以後、検出対象領域の蛍光状態を反映した部分を有効領域という。
【0027】
演算処理部5は、
図4に示す蛍光強度特性と、有効領域の大きさとに基づいて、残留物量を検出する。
予め、
図4に示す蛍光強度特性を設定しておく。
図4に示す蛍光強度特性は、例えば次の手順で取得する。
まず、遮光用フード2を取り付けた状態で、全体に残留物が存在する領域に対して光照射及び撮像を行うことにより撮像画像を得る。この撮像画像の蛍光強度の総和を演算し、撮像画像に相当する領域に存在する残留物の量を計測する。これにより、蛍光強度の総和と残留物量との比例係数が求まる。この比例係数を求めたときの、光照射における光強度を励起光強度とする。そして、求めた比例係数を有する比例特性を蛍光強度特性とし、励起光強度を、残留物検出時の照射光の強度として所定の記憶領域に記憶しておく。光照射部3では、照射光強度を励起光強度として照射を行う。
【0028】
なお、撮像画像の蛍光強度の総和は、撮像画像の各画素の蛍光強度を積算し、得られた積算値を撮像画像の蛍光強度の総和として設定すればよい。また、後述の、撮像画像当たりの蛍光強度積算値の演算方法と同様の手順で演算してもよい。
次に、
図1に示すように、遮光用フード2の開口部側面が照射光の通過を妨げず、得られた撮像画像全体が、検出対象領域の蛍光状態を反映した有効領域である場合の、残留物量の検出方法を説明する。
【0029】
まず、得られた撮像画像について、撮像画像に含まれる画素毎の蛍光強度の積算値を求める。以後、この撮像画像から得られる画素毎の蛍光強度の積算値を、蛍光強度積算値という。そして、撮像画像全体が有効領域である場合には、得られた蛍光強度積算値を、撮像画像の強度の総和とする。
そして、
図4に示す蛍光強度特性から、得られた蛍光強度の総和に対応する薬剤残留量を取得する。これにより、撮像画像に対応する検出対象領域当たりの残留物量が得られる。
【0030】
次に、
図2に示すように、遮光用フード2αの開口部側面が照射光の一部の通過を妨げ、得られた撮像画像の一部が有効領域であり、他の部分が検出対象領域の蛍光状態を反映していない場合の、残留物量の検出方法を説明する。
まず、得られた撮像画像について、蛍光強度積算値を求める。つまり、撮像画像に含まれる画素毎の蛍光強度を積算し、撮像画像当たりの蛍光強度積算値を求める。
【0031】
ここで、撮像画像の一部のみが有効領域である場合、非有効領域は、開口部側面によって照射光の一部の通過が妨げられた領域であり、撮像時は、遮光用フード2αの開口部2aを検出対象領域に押しつけた状態で撮像するため、非有効領域は有効領域に比較して光強度は小さく略零となる。つまり、撮像画像当たりの蛍光強度積算値は、有効領域に含まれる各画素の蛍光強度を積算した有効領域当たりの蛍光強度積算値と同等の値を表すことになる。
【0032】
したがって、検出対象領域の、撮像画像全体に対応する領域において、残留物が略一様に残存していると仮定すると、撮像画像全体において有効領域の占める比率がわかれば、有効領域当たりの蛍光強度積算値から、撮像画像当たりの蛍光強度積算値を推測することができることになる。そして、このようにして得た撮像画像当たりの蛍光強度積算値の推測値を、撮像画像の強度の総和とし、この撮像画像の強度の総和に対応する薬剤残留量を、
図4に示す蛍光強度特性から取得することにより、撮像画像に対応する検出対象領域当たりの残留物量を得ることができる。
【0033】
ここで、演算処理部5では、撮像画像当たりの蛍光強度積算値を、次の手順で演算する。
まず、光照射を行わない状態で撮像を行い、そのときの撮像画像について、画素毎にその蛍光強度を積算し、撮像画像当たりの蛍光強度積算値(非照射時の蛍光強度積算値という。)を演算する。
【0034】
次に、同じ撮像箇所について、光照射部3から光照射を行い、そのときの撮像画像を得る。この撮像画像について、画素毎にその蛍光強度を積算し、撮像画像当たりの蛍光強度積算値(照射時の蛍光強度積算値という。)を演算する。そして、非照射時の蛍光強度積算値と照射時の蛍光強度積算値との差分を、撮像画像当たりの蛍光強度積算値とする。
このように、非照射時の蛍光強度積算値と、照射時の蛍光強度積算値との差分を取ることで、撮像画像当たりの蛍光強度積算値の検出精度をより向上させることができる。
【0035】
なお、ここでは、撮像画像当たりの蛍光強度積算値を、非照射時の蛍光強度積算値と照射時の蛍光強度積算値との差分から求める場合について説明したが、残留物の検出精度として高い精度が要求されない場合等には、照射時の蛍光強度積算値をそのまま、撮像画像当たりの蛍光強度積算値として用いてもよい。
撮像画像全体における有効領域の占める比率は、例えば、予め遮光用フード2、2α毎に検出し、所定の記憶領域に記憶しておき、遮光用フード2及び2αのいずれを用いるかを、利用者がピン設定、又は入力操作等を、演算処理部5で行うこと等により行えばよいが、ここでは、次の手順で行う。
【0036】
まず、利用者は、残留物検出装置1を起動した際に初期設定操作として、利用する遮光用フード2又は2αを収容部4dに取り付けた状態で、開口部2aを空中に向けて撮像を行う。演算処理部5では、このようにして得られた初期設定用の撮像画像を用いて比率を検出する。
ここで、このようにして得られた初期設定用の撮像画像は、遮光用フード2が取り付けられている場合には、撮像画像全体が周囲の明るさに応じた光強度を有する画像となる。
【0037】
一方、遮光用フード2αが取り付けられている場合には、
図5に示すように、撮像画像F1の一部(
図5中の領域a1)が周囲の明るさに応じた光強度を有する画像となり、他の部分(
図5中の領域a2)は遮光用フード2αの開口部側面により照射光の一部の通過が妨げられるため、光強度がより低い値となる。
したがって、撮像画像を二値化することで、光強度の高い領域は周囲の明るさに応じた光強度を有する有効領域、光強度の低い領域は開口部側面により照射光の一部の通過が妨げられた非有効領域とみなすことができる。
【0038】
以上から、演算処理部5では、まず初期設定用の撮像画像に対し二値化を行う。次に、光強度の高い領域、すなわち有効領域の画素数と、撮像画像全体の画素数とを求める。そして、これら撮像画像全体の画素数と有効領域の画素数との比を求め、これを撮像画像全体における有効領域の占める比率とする。
次に、本発明の動作を、
図6に示す、演算処理部5の処理手順の一例を示すフローチャートを伴って説明する。
【0039】
利用者は、まず、検出対象領域の形状にあわせて遮光用フード2、2αのいずれかを収容部4dに取り付ける。例えば
図1に示すように検出対象領域が平坦である場合には、得られる撮像画像の有効領域がより広い、開口部2aが正方形の遮光用フード2を取り付ける。逆に、
図2に示すように検出対象領域が角部等の場合には、角部のより奥に開口部2aが届くように、開口部2aが細長い形状である遮光用フード2αを取り付ける。
【0040】
次に起動スイッチを操作し、初期設定操作を行う。つまり、開口部2aを空中に向けた状態で撮像スイッチを操作し、初期設定用の撮像画像を撮像する。
得られた初期設定用の撮像画像は、撮像処理部4bから演算処理部5に送信される。
演算処理部5では、撮像処理部4bから初期設定用の撮像画像を取得すると(ステップS2)、二値化する(ステップS4)。そして、撮像画像全体の画素数と、二値化により蛍光強度の高い領域に分類された領域の画素数とを検出する。そして、これらの比を撮像画像全体における有効領域の占める比率とし、所定の記憶領域に記憶する(ステップS6、比率設定部)。
【0041】
例えば、
図1に示すように、開口部側面によって照射光の通過が妨げられない場合には、得られた撮像画像は全面が光強度の高い領域つまり有効領域となり、撮像画像全体における有効領域の占める比率は「1」となる。
一方、
図2に示すように、開口部側面によって照射光の一部の通過が妨げられる場合には、得られた撮像画像は
図5に示すように、一部が光強度の高い領域となり、他の部分は光強度の低い領域となる。そのため、比率は、「光強度の高い領域の画素数/撮像画像全体の画素数」となる。
【0042】
そして、ステップS8に移行し、ステップS6で求めた比率を用いて残留物の検出処理を行う。
図7は、ステップS8で実行される残留物の検出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
例えば、遮光用フード2が取り付けられた残留物検出装置1を用いて
図1に示すように平坦な検出対象領域に対して残留物の検出を行う場合には、利用者は、検出対象領域に対して正方形の開口部2a全体が接触するようにし、光照射を行わずに撮像スイッチを操作して非照射時の撮像画像を得る。次に、開口部2aの位置はそのままで、照射スイッチを操作して光照射を行った後、撮像スイッチを操作して照射時の撮像画像を得る。
【0043】
非照射時の撮像画像及び照射時の撮像画像は、撮像部4から演算処理部5に送信される。このとき、光照射部3による光照射は、蛍光強度特性を求めたときの励起光強度を、照射光強度として行う。
演算処理部5では、非照射時及び照射時の撮像画像を入力すると(ステップS12)、入力された非照射時及び照射時の撮像画像それぞれについて、非照射時の蛍光強度積算値及び照射時の蛍光強度積算値を演算し、これらの差分をとる。この差分値を撮像画像当たりの蛍光強度積算値とする(ステップS14、積算値演算部)。
【0044】
次いで、初期設定用の撮像画像から得た比率から、撮像画像当たりの蛍光強度の総和を推測する(ステップS16、総和推測部)。この場合、遮光用フード2が取り付けられており比率は「1」であるため、ステップS14で求めた蛍光強度の総和がそのまま、撮像画像全体の蛍光強度の総和の推測値となる。
そして、得られた撮像画像全体の蛍光強度の総和の推測値と、所定の記憶領域に記憶している蛍光強度特性とから、残留物量を推測する(ステップS18、検出対象物量検出部)。そして、得られた残留物量を、例えば図示しない表示装置に表示する等の処理を行う。
図7の処理を、撮像画像が入力される都度行う。
【0045】
続いて、
図2に示すように、容器の角部の残留物検出を行う場合には、利用者は、起動スイッチをオフ状態として、携帯部の各部を停止させた後、遮光用フード2に替えて遮光用フード2αを取り付ける。
そして、再度起動スイッチをオン状態として携帯部の各部を起動させる。
そして、再度、初期設定操作を行い、初期設定用の撮像画像を撮像する。
【0046】
演算処理部5では、
図6の処理を再度初めから実行し、初期設定用の撮像画像が入力されると(ステップS2)、二値化処理(ステップS4)及び比率演算(ステップS6)が行われる。
次に、利用者は、
図2に示すように、細長い開口部2aを角部に沿わせ、開口部2aが角部のできるだけ奥に位置するようにし、光照射を行わずに撮像スイッチを操作して非照射時の撮像画像を得た後、開口部2aの位置はそのままで、照射スイッチを操作し光照射を行った後、撮像スイッチを操作して照射時の撮像画像を得る。
【0047】
演算処理部5では、ステップS6で新たに求めた比率を用いて、
図7に示すフローチャートにしたがって残留物の検出処理を行う。
遮光用フード2αが取り付けられている場合、二値化処理後の初期設定用の撮像画像は、光強度の高い領域a1と、光強度の低い領域a2とが混在するため、比率は、「光強度の高い領域の画素数/撮像画像全体の画素数」となる。
【0048】
また、非照射時及び照射時の撮像画像から得られる、撮像画像当たりの蛍光強度積算値は、撮像画像の一部である有効領域当たりの蛍光強度積算値を示すことになる。したがって、撮像画像当たりの蛍光強度積算値(つまり、撮像画像の一部当たりの蛍光強度積算値)を、比率倍することにより、撮像画像当たりの蛍光強度積算値相当の、撮像画像当たりの蛍光強度の総和の推測値を得ることができる。
【0049】
つまり、遮光用フード2αの開口部側面により、照射光の一部の通過が妨げられるため、撮像画像当たりの蛍光強度積算値は、検出対象領域の、撮像画像全体に相当する領域の蛍光強度の総和を表すものではなく、検出対象領域の一部の蛍光強度の総和を表すものであるが、撮像画像当たりの蛍光強度積算値と比率とから得られる撮像画像当たりの蛍光強度の総和の推測値は、検出対象領域の、撮像画像全体に相当する領域全体の蛍光強度の総和相当の値を表すことになる。
【0050】
したがって、遮光用フード2αが取り付けられている場合に、検出対象領域の一部の蛍光強度の総和を表す撮像画像当たりの蛍光強度積算値を、そのまま、撮像画像当たりの蛍光強度の総和であると誤認識し、実際とは異なる撮像画像当たりの蛍光強度の総和、すなわち実施よりも小さめの値に出力される蛍光強度の総和を用いて、残留物量の検出が行われることにより、残留物量の検出精度が低下することを回避することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態においては、遮光用フード2と遮光用フード2αとを交換可能に形成されている。
ここで、正方形の開口部2aを有する遮光用フード2を用いて、角部の検出を行った場合、開口部2aと検出対象との間に隙間が生じ、外部光が撮像部4に入射されるため、得られる撮像画像は、残留物の蛍光による蛍光成分と外部光の成分との和となり、誤差を含むため、残留物の量の検出精度が低下する可能性がある。
【0052】
遮光用フード2αは開口部2aが細長く、より角部の奥に開口部2aを位置させることができ、その分、外部からの光が遮光用フード2α内に入りにくい。したがって、検出対象領域の形状に適した形状の開口部2aを有する遮光用フード2又は遮光用フード2αを用いて残留物の検出を行うことによって、得られる撮像画像に含まれる外部の光成分による誤差を低減することができ、すなわち、残留物の量の検出精度の低下を抑制することができる。
【0053】
このように、本実施形態においては、検出対象領域の形状に適した形状の遮光用フード2又は2αを用いて、残留物の検出を行うことができるため、検出対象領域の形状と遮光用フードの先端部の形状とが適合しないことによって、検出精度が低下することを抑制することができる。さらに、遮光用フード2、2αを交換した場合には、得られる撮像画像の有効領域に見合った、有効領域と撮像画像の全体領域との比率を自動的に演算し、この比率を用いて、撮像画像当たりの蛍光強度の総和の推測値を求め、これに基づき残留物量の検出を行っている。
【0054】
そのため、利用者は、いずれの遮光用フードを取り付けたかを、スイッチや、ピン設定等の手動によって演算処理部5に対して通知する必要はなく、その分、利用者の手間を省くことができると共に、利用者の通知し忘れや、通知ミス等によって、誤った比率に基づき、残留物量の演算が行われることを防止することができる。
なお、上記実施形態においては、開口部2aの形状の異なる2つの遮光用フードを設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、開口部2aが遮光用フード2の開口部2aよりも小さく、例えば直方体の容器の四隅部分の奥まで開口部2aを押し込むことの可能な形状を有する遮光用フード等を備えていてもよく、検出対象の形状に合った形状の遮光用フードを設けても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、装着された遮光用フード2及び2αに応じて自動的に、比率を切り替える場合について説明したが、スイッチや、ピン設定等の手動によって、演算処理部5に対して通知するようにしてもよく、初期設定操作を行うことにより自動的に比率を設定する機能と、利用者が手動で設定する機能との両方を備えておき、いずれかの機能によって、演算処理部5に通知するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、遮光用フード2及び2αを交換する場合について説明したが、例えば、遮光用フード2、2αや収容部4d等を含む携帯部単位で交換するようになっていてもよい。
また、上記実施形態においては、撮像画像の全体領域に占める有効領域の比率を求め、撮像画像当たりの蛍光強度積算値と比率とから、撮像画像当たりの蛍光強度の総和を推測する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、初期設定用の撮像画像から、有効領域を抽出し、有効領域についてのみ蛍光強度積算値を求め、有効領域当たりの蛍光強度積算値と比率とから、撮像画像当たりの蛍光強度積算値を演算するようにしてもよい。有効領域は、例えば、初期設定用の撮像画像を二値化処理し、エッジ検出を行うことにより光強度の高い領域を抽出し、これを有効領域とすればよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、遮光用フード2と遮光用フード2αとを交換することによって、検出対象領域の形状に適した開口部2aを用いて残留物検出を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、遮光用フード2の少なくとも先端部を、手で容易にその形状を変更することの可能な素材で形成する。例えば遮光用フード2αのように細長い形状の開口部2aにおいて、開口部2aの幅を押し潰すことにより、開口部2aをより細くすることができるようにする。これによって、検出対象領域の形状に合わせて、開口部2aを検出対象領域に接触させることができ、より確実に外部からの光の入射を防止することができる。
【0058】
そして、このように利用者が開口部2aを変形させた場合であっても、上述のように、起動時に初期設定用の撮像画像を得ることによって、撮像画像における、撮像画像全体に占める有効領域の比率を求めている。そのため、開口部2aがどのような形状に変形された場合であっても、開口部2aの形状に応じた比率を求めることができ、この比率を用いることによって、開口部2aが変形された場合であっても適切に撮像画像当たりの蛍光強度の総和の推測値を求めることができる。したがって、開口部2aが変形したとしても、残留物量の検出精度の低下が生じることなく、残留物量の検出を行うことができる。
【0059】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。