特許第6475160号(P6475160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475160
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】頭蓋ドリルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A61B17/16
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-514593(P2015-514593)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-518751(P2015-518751A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】GB2013051451
(87)【国際公開番号】WO2013179053
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】1209772.1
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506396272
【氏名又は名称】レニショー ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ジル,スティーブン ストレトフィールド
(72)【発明者】
【氏名】フェンリー,カトリオナ
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−540202(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110874(WO,A1)
【文献】 特開昭57−099950(JP,A)
【文献】 米国特許第04821716(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0093841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16−17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋に穴をあけるための外科的ドリル要素、ここで、該外科的ドリル要素は、より狭い直径部およびより広い直径部を有する開口を頭蓋に形成するための輪郭を含む、ならびに
硬膜を貫通するための要素、ここで、該硬膜を貫通するための要素は、開口のより狭い直径部において密接な嵌め合いとなるように配置され、その結果、該硬膜を貫通するための要素が、開口のより狭い直径部との接触により硬膜を貫通するための所望の位置まで誘導される、
を含む、頭蓋ドリルシステム(cranial drilling system)。
【請求項2】
該硬膜を貫通するための要素が、実質的に平坦な外表面を有するスパイクである、請求項1記載の頭蓋ドリルシステム。
【請求項3】
該硬膜を貫通するための要素がさらなるドリル要素である、請求項1記載の頭蓋ドリルシステム。
【請求項4】
硬膜に穴をあけるためのスパイクおよび脳に穴をあけるためのさらなるドリル要素を含む、請求項1記載の頭蓋ドリルシステム。
【請求項5】
請求項1〜いずれか記載の頭蓋ドリルシステムおよび該頭蓋ドリルシステムを使用して形成された頭蓋中の開口内に配置するための植え込み可能な機器を含むキットであって、該頭蓋ドリルシステムが、植え込み可能な機器の輪郭に対応する輪郭を有する開口を形成するように配置される、キット。
【請求項6】
頭蓋に対して外科的機器を位置決定するための座標配置装置(coordinate positioning apparatus)および請求項1〜いずれか記載の頭蓋ドリルシステムを含む、神経外科的装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、頭蓋および脳に開口を形成する頭蓋ドリルシステム(cranial drill system)ならびに頭蓋および脳に開口を形成する方法に関する。本発明は、ガイドデバイス、カテーテルまたは電極などのデバイスと連結された頭蓋ポートなどの頭蓋ポートを受けるのに適した頭蓋の開口を形成するための頭蓋ドリルシステムへの特定の適用を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
植え込まれたカテーテルを介して脳実質内の特定の標的に治療剤を送達する必要がある多くの状況がある。さらに、これらの治療剤の多くは、脳の健常な部分に送達された場合、望ましくない副作用を引き起こす。脳機能の異常を治療する例としては、伝達を遮断するためのてんかん性病巣またはてんかん性経路へのγアミノ酪酸アゴニストの急性注入、および難治性の疼痛の治療のための、中脳水道周囲灰白質または視床標的へのアヘン剤または他の鎮痛薬の慢性送達が挙げられる。また、細胞傷害剤は、脳腫瘍に直接送達され得る。血液脳関門を通過しないために全身に送達できない治療剤を脳標的に送達するために実質内注入も使用され得る。例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、頭部損傷、脳卒中および多発性硬化症を有する患者の治療は、衰えたまたは損傷した神経細胞を保護および修復するための神経栄養因子の注入により実行され得る。神経栄養物質はまた、機能を回復するために、脳の損傷した領域または機能不全領域に移植された神経移植片を支持するために注入され得る。
【0003】
電極などのカテーテル以外の機器を脳実質内に直接挿入することも公知である。例えば、種々の外科的手法において、深部脳刺激(DBS)電極を含む刺激電極および障害誘発電極(stimulating and lesioning electrode)が使用される。神経組織の特定の領域を刺激することまたは該領域に障害を誘発すること(lesion)を望む外科医は、所望の電流が送達され得るように電極の末端を標的部位に導き(target)得る。
【0004】
上述の方法は、できる限り正確に、必要とされる部位を標的化することを頼りにするものである。挿入される機器のわずかな設置のミス(misplacement)は、重大な病的状態または治療の失敗を引き起こすことがあり得る。例えば、機能障害を治療するための脳の標的は、通常深い位置にあり、小さな体積を有する。パーキンソン病を治療するための所望の標的は、視床下核に位置し、直径3〜4mmであるか、または直径3〜4mm、長さ5〜6mmの卵形である。淡蒼球(globus palladus)または視床内の標的などの他の標的は、通常、大きさ(larger)は1〜2mm以下である。かかる小さな標的について、1mmほどの小さな最適には及ばない(sub-optimal)設置は、治療の有効性を低減するだけでなく、脱力、感覚の変化、話し方の悪化および複視などの望ましくない副作用を誘発することもあり得る。脳の特定の領域において外傷を最小化することも望ましく、例えば、中脳(視床下核、黒質および脚橋核(pedunculor-pontine nucleus)を含む)は、電極またはカテーテルの通過による外傷を最小化することが重要となる脳の重要な領域である。
【0005】
したがって、脳の他の領域の外傷を最小限にしつつ、外科医によって確認された(例えばx線または磁気共鳴画像化を使用して)標的に向かって機器を正確に誘導することを可能にする試みにおいて、以前に、種々の定位的なデバイスおよび方法が開発されている。従来のシステムの例は、EP1509153、US6609020およびUS6328748に示される。
【0006】
GB2357700には、ガイドデバイスのチューブを脳内に伸長しつつ、頭蓋に形成された穴に固定されるポート(ヘッド)を含むガイドデバイスが開示される。ガイドデバイスを頭蓋内に挿入するために、最初に、定位フレームの誘導の下で、頭蓋に穴が開けられる(drill)。しばしば、ポートは、脳内に挿入されるカテーテル/電極/ガイドチューブよりも大きい直径を有する。そのため、該ポートを受けるために、大きくされた直径部分を有する段のある(stepped)形態を有する開口をあけることが望ましい。例えばWO2011/110874に記載されるように、かかる段のある形態をあけるためのデバイスは公知である。
【0007】
所望の標的にガイドデバイスを挿入するために硬膜に穴が開けられる(perforate)。メスまたはWO2009/047494に記載されるようなデバイスを用いて、外科医はこれをなし得る。
【0008】
硬膜に穴をあける(pucture)ためのWO2011/110874に開示されるものなどのメスまたはスパイク(spike)の使用、および脳内への、特に脳のより稠密な部分を通過したガイドロッド、ガイドチューブ、カテーテルなどのプローブのその後の挿入により、元の位置から脳がずれることが生じ得、プローブが標的を外すことが起こり得る。
【0009】
さらに、これらの別々の機器を使用して頭蓋および硬膜内に開口を形成する間に、開口は、互いに対して正確に配置されなくなり得る。これは、定位フレーム中の遊びが配置の誤りを生じ得るので、開口の形成の間に機器を配置するために定位フレームを使用する場合さえもあてはまる。これは、ポートと一体化したカテーテルなどの植え込み可能な機器の挿入を妨げ得る。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明の第1の局面によると、脳内に穴をあけるための1つ以上の外科的ドリル要素を含む頭蓋ドリルシステムが提供される。
【0011】
脳に開口をあけること(drilling out)は、硬膜の貫通の際、およびその後の脳内へのガイドロッド、ガイドチューブ、カテーテル、電極等のプローブの挿入の際に、脳が押しのけられる程度を低減し得る。これは、プローブ/植え込み可能な機器のより正確な設置をもたらし得る。
【0012】
該システムは、第1のドリル要素および第2のドリル要素を使用して形成される開口の相対的な位置を協同して画定するように配置される第1のドリル要素および第2のドリル要素を含み得る。開口は、頭蓋内の開口および脳内の開口を含み得る。該ドリル要素は、開口が互いに実質的に同一中心に形成されるように配置され得る。
【0013】
頭蓋ドリルシステム(cranial drilling system)は、脳に穴をあけるための第1のドリル要素および頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素を含み得、第2のドリル要素は、第1のドリル要素の直径よりも大きな直径を有する少なくとも部分を有する。このように、該ドリルシステムは、脳内に開口をあけるため、および植え込み可能な機器を保持するための開口を頭蓋内にあけるための両方に使用され得る。
【0014】
第1のドリル要素および第2のドリル要素の一方を用いて穴をあけることが、第2のドリル要素および第1のドリル要素のもう一方への連結により誘導されるように、第1のドリル要素および第2のドリル要素は連結され得るかまたは連結可能である。かかる配置は、脳内の開口に対する頭蓋内の開口の正確な配置を補助し得る。
【0015】
第1のドリル要素は、第2のドリル要素の遠位端から伸長し得るので、第1のドリル要素は、第2のドリル要素が頭蓋に穴を開け得る前に、頭蓋に穴をあける必要がある。かかる配置において、第2のドリル要素は、第1のドリル要素との連結により、第1のドリル要素を使用して形成された開口に関連する位置に誘導され得る。第1および第2の要素の両方を使用して穴をあけることは、共通の軸の回転により連続したプロセスで達成され得、この意味において「一工程」プロセスを含む。このように、脳内の開口および頭蓋内のより大きな直径の開口は、頭蓋/脳からドリル要素の1つを除去/取り外す必要なく、穴を開けられ得る。連続様式の複数の穴あけ特徴(drilling multiple features)は、該特徴を生じる性質を高めることにより、脳脊髄液(CSF)の漏れを低減し得る。
【0016】
第1のドリル要素および第2のドリル要素は、第1のドリル要素が第2のドリル要素の遠位端から伸長する長さが、変更され得るように連結され得る。この方法において、該システムは特定の標的に適合され得る。
【0017】
第1のドリル要素は、第1のドリル要素を用いて脳内に穴をあけることが、第2のドリル要素との連結により誘導されるように、第2のドリル要素に連結され得るか連結可能である。これを達成するために、第2のドリル要素は、第1のドリル要素を受けるために第2のドリル要素を通る通路を有し得、第1のドリル要素は、第1のドリル要素が第2のドリル要素の遠位端から突き出ない引っ込んだ位置および、第1のドリル要素が第2のドリル要素の遠位端から伸長する伸長された位置から、該通路内を移動可能である。かかる配置において、第1のドリル要素は、第2のドリル要素との連結により、第2のドリル要素を使用して形成された開口に関連する位置へと誘導され得る。かかる配置により、硬膜の貫通に由来する脳脊髄液(CSF)の放出が、第2のドリル要素を使用してより大きな直径の開口が頭蓋内に形成された後まで遅延されることが可能になり得る。
【0018】
頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素は、より狭い直径部およびより広い直径部を有する頭蓋内の開口を形成する輪郭(profile)を含み得る。
【0019】
第1のドリル要素は、開口のより狭い直径部内に密接な嵌め合い(close fit)となるように配置され得る。一態様において、第2のドリル要素は、第2のドリル要素の遠位端から伸長する先導(pilot)ドリル要素を含み、第1のドリル要素は先導ドリル要素を使用して形成された先導穴内に密接な嵌め合いとなるように配置される。この方法において、第1のドリル要素により穴をあけることは、第1のドリル要素を先導穴に適合させることにより誘導され得る。
【0020】
第2のドリル要素は、より狭い直径部とより広い直径部の間に1、2またはそれ以上の段のある転位(stepped transition)を有する開口を頭蓋内に形成するための輪郭を含み得る。この方法において、該開口は、カテーテルまたはガイドチューブのポートなどの植え込み可能な機器の、対応して形作られた部分を支持し得る。
【0021】
第2のドリル要素は、第2の要素を用いて穴をあける際に、第1のドリル要素により形成された開口内に伸長し得、該開口内に密接な嵌め合いとなるガイドを含み得る。
【0022】
頭蓋ドリルシステムは、第1および/または第2のドリル要素を、定位フレームおよび/またはロボットなどの座標配置装置(coordinate positioning apparatus)に連結するためのマウントを含み得る。
【0023】
第1のドリル要素は、脳の軟膜内に伸長するのに十分な長さを有し得る。第1のドリル要素は、10mmより長い長さを有し得る。この方法において、該ドリル要素は、脳内の標的に到達するのに十分な長さを有し得る。ドリル要素は、2つの縦溝を含み得るねじれドリル(twist drill)を含み得る。
【0024】
第1のドリル要素の先端の先端角は、90°未満、80°未満、70°未満、好ましくは約60°であり得る。鋭い先端は、頭蓋および硬膜の貫通を補助し、頭蓋および硬膜の表面からのドリル要素の逸れ(deflection)の可能性を低減し、脳の逸れを低減すると考えられる。
【0025】
ドリル要素は、ステンレス鋼またはチタンなどの生体不活性物質で作製され得る。
【0026】
本発明の第2の局面によると、本発明の第1の局面の頭蓋ドリルシステム、および該頭蓋ドリルシステムを用いて形成された頭蓋内の開口内に配置するための植え込み可能な機器を含むキットが提供され、第2のドリル要素は、植え込み可能な機器の輪郭に対応する輪郭を有する開口を形成するように配置される。
【0027】
本発明の第3の局面によると、頭蓋に対して外科的機器を配置するための座標配置装置および本発明の第1の局面の頭蓋ドリルシステムを含む、神経外科的装置が提供される。
【0028】
座標配置装置は、定位フレームまたはロボットであり得る。
【0029】
本発明の第4の局面によると、患者の脳に穴をあける工程を含む手術の方法が提供される。
【0030】
該方法は、患者を画像化する工程、画像から標的を同定する工程および同定された標的に基づいて脳に穴をあける工程を含み得る。
【0031】
該方法は、頭蓋ドリル要素を使用して頭蓋に開口をあける工程、ここで頭蓋ドリル要素は頭蓋内に残る;さらなるドリル要素を使用して脳に穴をあける工程を含み得、さらなるドリル要素は、頭蓋ドリル要素に関してさらなるドリル要素の位置決定を強制するために頭蓋ドリル要素と連結される。
【0032】
該方法は、頭蓋ドリル要素を使用して先導穴および頭蓋に先導穴よりも大きな直径を有する開口をあける工程、次いでさらなるドリル要素を使用して脳に穴をあける工程を含み、さらなるドリル要素は、該先導穴を通って挿入される。該方法は、脳に穴をあける前に、先導穴を通ってスパイクにより硬膜に穴をあける工程を含み得る。
【0033】
本発明の第5の局面によると、頭蓋に穴をあけるための外科的ドリル要素、ここで、該外科的ドリル要素は、より狭い直径部およびより広い直径部を有する開口を頭蓋に形成する輪郭を含み;および硬膜を貫通するための要素ここで該要素は、開口のより狭い直径部において、締りばめなどの密接な嵌め合いとなるように配置される;を含む頭蓋ドリルシステムが提供される。該要素は、ドリルの縦溝を有することなく、実質的に平坦な外表面を有するさらなるドリル要素またはスパイクであり得る。一態様において、該ドリルシステムは、硬膜に穴をあけるためのスパイクおよび脳に穴をあけるためのさらなるドリル要素を含む。
【0034】
本発明の第6の局面によると、頭蓋を通して形成される穴に配置される誘導要素および硬膜を貫通するための貫通要素を含む頭蓋ドリルシステムが提供され、該誘導要素は、その中に貫通要素を受けるための通路または溝(channel)を有し、その結果、該貫通要素は、硬膜を貫通するために誘導要素に対して移動可能である。
【0035】
この方法において、頭蓋と誘導要素の境界面を通る誘導要素は、硬膜が頭蓋中の穴に関連する所望の位置で貫通され得るように、頭蓋に形成された穴に対して貫通要素を位置決定するための手段を提供する。
【0036】
誘導要素は、頭蓋を通して穴をあけるためのドリル(dill)要素を含み得る。したがって、該ドリルは最初に、頭蓋を通して穴を形成するために使用され、次いで硬膜を貫通するために使用される貫通要素を誘導するためのガイドとして使用される。
【0037】
代替的に、誘導要素は、穴を形成するために使用されるドリル要素とは別個の要素であり得る。かかる態様において、頭蓋に穴をあけるために使用されるドリル要素は、穴から除去され、別箇の誘導要素は穴に挿入され、穴と誘導要素の嵌合により配置される。所望の配置を達成するために、ドリル要素は、より狭い直径部およびより広い直径部を有する開口を頭蓋に形成する輪郭を含み得、誘導要素は、ドリル要素の輪郭に対応する輪郭を含み得る。
【0038】
貫通要素(piercing element)は、貫通要素が誘導要素の遠位端から突き出ない引っ込んだ位置および、貫通要素が誘導要素の遠位端から伸長する伸長された位置から、通路または溝内を移動可能であり得る。貫通要素は、誘導要素を頭蓋中に配置する間に誘導要素内に保持され得るか、または誘導要素が頭蓋内に配置された後に、通路もしくは溝内に挿入可能であり得る。例えば、通路または溝は、貫通要素が誘導要素の近位末端部に挿入され得、かつ通路または溝を通って、誘導要素の遠位端から突き出るように移動し得るように、誘導要素を通って伸長し得る。
【0039】
貫通要素は、実質的に平坦な外表面を有するスパイクであり得る。代替的に、貫通要素は、ドリル要素であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の第1の態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図2図2A〜2Dは、図1に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
図3図3は、本発明の第2の態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図4図4A〜4Dは、図3に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
図5図5は、本発明の第3の態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図6図6A〜6Dは、図5に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
図7図7は、本発明の第4の態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図8図8A〜8Bは、図7に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
図9図9は、定位フレームに取り付けられた、本発明の頭蓋ドリルシステムの概略図である。
図10図10は、脳内に植え込まれた機器の断面図である。
図11図11は、本発明のさらなる態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図12図12A〜12Dは、図11に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
図13図13は、本発明のさらに別の態様の頭蓋ドリルシステムを示す。
図14図14A〜14Dは、図13に示す頭蓋ドリルシステムを使用した神経外科の方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
態様の説明
図1を参照すると、脳に穴をあけるための第1のドリル要素102および頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素104を含む頭蓋ドリルシステム100が示される。
【0042】
第2のドリル要素104は、第2の近位部108よりも狭い直径を有する第1の遠位部106を有する段のある輪郭を有する。第2の部分108はまた、第1のドリル要素102の直径よりも大きい直径を有する。第2のドリル要素104の段のある輪郭は、脳内に挿入されるポートおよびカテーテルなどの、植え込まれる植え込み可能な機器の輪郭と適合する。
【0043】
ドリル要素102および104は、マウント(この態様においてはドリルシステム100(図9における501))を外科的ドリルに取り付けるためのねじ山111を有する共通シャフト110に対する共通の軸に沿って整列して連結される。典型的には、これは、ドリルシステム100を、定位ガイドフレーム502に保有されるロッド505に取り付けることにより達成され、該定位ガイドフレーム502を通って、外科的ドリル501からの推進力が伝達され得る。しかしながら、ドリルシステム100はまた、ロボット末端エフェクターに取り付けられ得、このことおよびドリルシステムの位置決定により穴あけのための回転が提供され得る。
【0044】
この態様において、第1のドリル要素102は、第2のドリル要素104およびシャフト110を通る通路(示さず)内に伸長し、グラブねじ112により定位置に固定される。しかしながら、他の固定デバイスを使用して、第1のドリル要素102を定位置に固定し得ることが理解される。グラブねじ112から第1のドリル要素102を解放することにより、第1のドリル要素102が第2のドリル要素104の遠位端から伸長する長さが、脳内の意図とする標的に適切なように変更され得る。
【0045】
第2のドリル要素104とシャフト110の間の境界面114は、使用において、頭蓋の表面と嵌合して、ドリルシステムが脳内に挿入される深さを制限し得る接合部(abutment)を提供する。
【0046】
第1のドリル要素102は、先端116で約60°の先端角度を有する、ステンレス鋼製のねじれドリルである。この態様において、単一の縦溝118が示される。しかしながら、ねじれドリルが、2つの縦溝などの複数の縦溝を含み得ることが理解される。
【0047】
第2のドリル要素104も、頭蓋内の切削のための1つ以上の縦溝118を含む。
【0048】
使用において、最初に治療される標的は、脳内で確認される(identified)。これは、CTスキャンを用いるなどで脳を画像化して、画像503から治療される脳内の位置を確認することにより達成され得る。ドリルシステムが挿入される頭蓋上の確認された位置から標的部位までの測定された距離に基づいて、第1のドリル要素102の長さが設定される。ここで図2A〜2Dを参照すると、ドリルシステム100は、頭蓋を通って脳内へと連続した(1工程)プロセスで開口をあけることを可能にする。最初に、定位フレーム502またはロボットを使用して所望のように位置決定された第1のドリル要素102を使用して、頭蓋151内に開口150が開けられる。ドリルシステムが患者の頭部内に徐々に挿入されると、第1のドリル要素102は、硬膜152と接触する。最初に、硬膜は、図2Bに示されるように、第1のドリル要素102によりわずかに下向きに湾曲され得る(deflected)が、鋭い60°の先端116がすぐに硬膜を貫通する。ドリルシステムの挿入が継続され、第1のドリル要素102が脳155内に進入する際、第2のドリル要素104は、第1のドリル要素102との連結のために頭蓋と接触するように誘導され、第1のドリル要素102により頭蓋に開けられた開口よりも大きな直径を有する開口をあけることが開始される。このことは図2Cに示される。穴あけは、接合部114が頭蓋の表面と嵌合するまで続く。この点で、第1のドリル要素102は、設定された長さおよび画像からの測定に基づいて、脳155内の意図とする位置に到達するはずである。
【0049】
ドリルシステム100が取り外され、薬物または電気刺激などの治療を送達するために、カテーテル600(図10に示す)または他の植込み可能な機器が脳155内の開口154に挿入され得る。該機器は、第2のドリル要素104を使用して形成された開口153に対応する輪郭を有する近位端に、ポート601またはプラグを含み得る。このポートまたはプラグは、脳内への機器の挿入時に開口153に挿入される。
【0050】
ここで図3を参照すると、本発明の別の態様に従った頭蓋ドリルシステム200は、脳に穴をあけるための第1のドリル要素202および頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素204を含む。2つのドリル要素は、図1に関して記載されるドリル要素と同様であり、対応する部分を参照するために、200番台(in the series 200)であるが同様の参照番号が使用されている。
【0051】
この態様において、第1のドリル要素202は、通路220を通ってボディ部210の後部から挿入され得、先端216がドリル要素204の遠位端から突き出るように、通路を通って押し出され得る。ボディ部210の近位端と接触するように、第1のドリル要素202のシャフト上にストッパ222が備えられ、第2のドリル要素204の遠位端から突き出し得る第1のドリル要素202の長さが制限される。第1のドリル要素202上のストッパ222の位置は、グラブねじ212を緩め、第1のドリル要素202に沿ってストッパをスライドさせることにより調整され得る。ボディ部210と第1のドリル要素202のそれぞれをドリルと連結するために、ボディ部210と第1のドリル要素202のそれぞれに別々のマウント211aおよび211bが提供される。
【0052】
ここで図4A〜4Dを参照すると、使用において、画像503から標的を確認し、第1のドリル要素202上の位置までストッパ222を移動させて、その結果、第1のドリル要素がボディ部210に完全に挿入される場合、第1のドリル要素が所望の距離脳155内に突き出る。次いで、第2のドリル要素を使用して頭蓋151に開口153をあける(図4Aおよび4B)。第1のドリル要素102は、ドリルに連結され、頭蓋151に取り付けられたままの第2のドリル要素204から突き出るように、通路220内に挿入される。第1のドリル要素202は、硬膜152に穴を開け(puncture)、脳155に穴をあける(drill)(図14Cおよび4D)ために使用され、その位置は第2のドリル要素204を通る通路220により誘導される。ストッパ222がボディ部210の近位端に嵌合するまで、穴あけを続ける。
【0053】
脳155内に開口154が形成されると、カテーテル600などの機器が開口154に植え込まれる。
【0054】
図5に示される態様において、ドリルシステム300は、脳に穴をあけるための第1のドリル要素302および頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素304を含む。2つのドリル要素302、304は、図1および3に関して記載されるドリル要素と同様であり、対応する部分を参照するために、300番台であるが同様の参照番号が使用されている。しかしながら、以前の態様とは異なり、ドリルシステムは、物理的連結/嵌合なしで使用される2つの機器を含む。
【0055】
第1のドリル要素302は、脳155に開口をあけるための1つ以上の縦溝318を有する遠位端を含み、近位端では、ドリル302が脳内に挿入された深さを測定するための目盛322を含む。
【0056】
第2のドリル要素304は、その遠位端に、第1のドリル要素302と実質的に同じ直径を有する先導ドリル324を含む。
【0057】
使用において、最初に第2のドリル要素を使用して、頭蓋151に開口153をあける。この開口153は、第1のドリル要素302の後の挿入を誘導するための先導穴153aを含む。開口153が開けられると、第2のドリル要素が取り外され、開口153に第1のドリル要素302が挿入される。第1のドリル要素302と、開口153aの側壁との接触は、硬膜152を貫通して脳155内に進入するための所望の位置まで第1のドリル要素302を誘導する。外科医は、第1のドリル要素302の測定目盛322から、標的に到達したかどうかを確認し得る。
【0058】
図7に示されるさらなる態様は、脳に穴をあけるための第1のドリル要素402および頭蓋に穴をあけるための第2のドリル要素404を含む頭蓋ドリルシステム400を示す。2つのドリル要素402、404は、図1、3および5に関して記載されるドリル要素と同様であり、対応する部分を参照するために、400番台であるが同様の参照番号が使用されている。図5に示される態様と同様に、該ドリルシステムは、物理的連結/嵌合なしで使用される2つの機器を含む。
【0059】
第1のドリル要素は、脳155内に開口をあけるための1つ以上の縦溝418を有する遠位端を含み、近位端では、ドリル402が脳内に挿入された深さを測定するための目盛422を含む。
【0060】
第2のドリル要素404は、遠位端に、第1のドリル要素402と実質的に同じ直径を有するガイド426を含む。
【0061】
使用において、最初に第1のドリル要素402を使用して、頭蓋151に開口を開け(drill)、硬膜152に穴を開け(puncture)、脳に開口154をあける(drill)。外科医は、第1のドリル要素402上の測定目盛422から、標的に到達したかどうかを確認し得る。次いで第1のドリル要素402を取り外し、開口154に対して第2のドリル要素404を配置するために、頭蓋中の開口に第2のドリル要素404のガイド426を挿入する。次いで、第2のドリル要素404を使用して、輪郭が型取られた開口153を開け、ここで、ガイド426と、第1のガイド要素402を用いて以前に形成された開口の側壁を接触させて、ドリル要素404の挿入を誘導する。
【0062】
図9は、患者の頭蓋504上に頭蓋ドリルシステム500を配置するために使用される定位フレーム502を含む神経学的装置の典型的な配置を示す。ドリルシステム500に連結されたドリル501が示される。ドリルシステム500は、図1〜8に関して上述されたシステムのいずれか1つであり得る。
【0063】
図10は、植え込み可能な機器を示し、この例ではガイドチューブ602を通して、頭蓋ドリルシステムを使用して形成された開口にカテーテル600が挿入される。次いで、カテーテル600を使用して、標的領域604に薬物を送達し得る。第2のドリル要素により頭蓋内に形成された段のある輪郭は、対応する輪郭を有するポート601を受ける。
【0064】
図11および12A〜図12Dに本発明のさらなる態様を示す。この態様は、図3に示される態様と同様であり、対応する特徴について1000番台であるが同様の参照番号が使用されている。この態様は、第1のドリル要素202が、硬膜1152を貫通するためのスパイク1202に置き換えられている点で図3に示される態様と異なる。該スパイク1202は、ドリル要素の縦溝を有さない平坦なシャフト1218および先端1216を含む。使用において、ドリル要素1204を使用して頭蓋に穴を開け、次いで、スパイク1202を硬膜1152上の所望の位置に誘導するためのガイドとして、通路1220を使用する。次いで、図12Dに示されるように、スパイク1202をさらに挿入して硬膜を貫通する。スパイク1202が脳1155に進入する前にスパイク1202を取り外して、他の機器を使用して脳の貫通が達成されてもよい。
【0065】
図13図5と同様の配置を示すが、第1のドリル要素302が、硬膜を貫通するためのスパイク1302で置き換えられている。スパイク1302は、先導ドリル1324を使用して開けられた先導穴において密接な嵌め合いとなるように配置される。かかる配置は、脳に穴をあけることに由来する利点のいくつかを有さないことがあるが、頭蓋中に形成された先導穴により誘導されたスパイクを用いて硬膜に穴をあけることの利点を有することがある。
【0066】
さらに、図11および13に示される態様のいずれかにおいて、第1のドリル要素に加えて、硬膜に穴をあけるためのスパイクが提供されてもよい。かかるシステムを用いると、スパイクは、先導穴において密接な嵌め合いであり得、先導穴に挿入されて硬膜に穴を開け得る。次いで、スパイクを取り外し、先導穴に第1のドリル要素を挿入して脳に穴をあける。
【0067】
図11に示される態様の変形として、スパイクを誘導するための別箇の誘導要素が提供され得る。かかる態様において、頭蓋に特定の輪郭をあけるためのドリル要素が提供される。別箇の誘導要素は、ドリル要素を使用して形成された穴の輪郭と対応する輪郭を有する部分を含むので、穴との嵌合により、穴に正確に配置され得る。次いで、誘導要素によりスパイクを挿入して硬膜を貫通(penetrate)する。
【0068】
本明細書に規定される本発明から逸脱することなく、記載された態様に対して種々の変更および改変がなされ得ることが理解されよう。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
図13
図14