特許第6475163号(P6475163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475163乳汁からラクトフェリンを精製するための改良されたプロセスおよびその製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475163
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】乳汁からラクトフェリンを精製するための改良されたプロセスおよびその製品
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/34 20060101AFI20190218BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C07K1/34
   C07K14/79
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-534883(P2015-534883)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2015-536905(P2015-536905A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】AU2013001152
(87)【国際公開番号】WO2014056025
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】2012904391
(32)【優先日】2012年10月8日
(33)【優先権主張国】AU
(31)【優先権主張番号】2013204858
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】508351417
【氏名又は名称】マレー・ゴールバーン・コー−オペラティヴ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ブラウン
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/015037(WO,A1)
【文献】 特開平05−202098(JP,A)
【文献】 特開平11−021299(JP,A)
【文献】 特開昭62−019523(JP,A)
【文献】 特表2012−516319(JP,A)
【文献】 Tello-Montoliu, A. et al.,Angiogenin: a review of thepathophysiology and potential clinical applications,J. Thromb. Haemost.,2006年,Vol. 4,pp. 1864-1874
【文献】 Lu R.R. et al.,Isolation of lactoferrin from bovine colostrum by ultrafiltration coupledwith strong cation exchange chromatography on a production scale,Journal of Membrane Science,2007年,Vol. 297,pp. 152-161
【文献】 上野 宏 ほか,機能性食品素材としての鉄・ラクトフェリンの応用,ミルクサイエンス,2012年 8月 3日,Vol. 61,pp. 105-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
B01D 61/00−61/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳汁または乳汁画分をMWCO30kDから50kDのフィルターを使ったろ過に付して、ラクトフェリンを含む保持液画分と、30kD未満の分子量を有する成長因子および/またはRNアーゼを含む透過液画分とに、前記乳汁または乳汁画分を分離することを含む、ラクトフェリンおよび30kD未満の分子量を有する成長因子またはRNアーゼを含む乳汁または乳汁画分からラクトフェリンを精製するためのプロセスであって、30kD未満の分子量を有する成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、MWCO30kDから50kDのフィルターを使ったろ過中に、前記乳汁または乳汁画分を塩処理に付し、前記塩処理が、前記乳汁またはラクトフェリンを、MWCO30kDから50kDのフィルターを使ったろ過中は少なくとも0.2M NaClもしくはそれに相当する塩濃度または少なくとも20mS/cmの導電率に維持することを含み、前記ラクトフェリンを含む保持液画分が収集される、前記プロセス。
【請求項2】
30kD未満の分子量を有する成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、前記塩処理が、RNアーゼまたは成長因子のいかなる塊も脱凝集または脱会合させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
30kD未満の分子量を有する成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、前記塩処理が、いかなるRNアーゼまたは成長因子もフィルターから分離させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
フィルターが50kDのMWCOを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス
【請求項5】
塩処理が少なくとも4時間は継続される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス
【請求項6】
ろ過が温度50〜70℃で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、乳汁から目的のタンパク質を精製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業および医薬産業では、タンパク質および他の産物の供給源として、家畜の乳汁が長年にわたって使用されており、これらの産物を単離するための技法は種々知られている。乳汁は、主に水中の脂肪、ラクトースおよびタンパク質から構成されるコロイド懸濁液である。反芻動物および実験動物の場合、乳汁は、種に依存して、1リットルあたり平均30〜140グラムまたは約4〜17重量%のタンパク質を含有している。これらのタンパク質の大部分はカゼインであり、それらはミセルとして知られている超分子構造でカルシウムおよびリン酸との複合体を形成している。乳タンパク質のもう一つの主要なクラスはホエータンパク質であり、これは主にベータ−ラクトグロブリンおよびアルファ−ラクトアルブミンから構成されるが、ラクトフェリン、免疫グロブリン、および血清アルブミンも含んでいる。
【0003】
乳タンパク質は通常、膜ろ過技法ならびにイオン交換吸着手法を含むプロセスの組み合わせによって単離される。
【0004】
ラクトフェリンは、唾液、胆汁、気管支粘液、胃腸液、頸膣粘液、精液、および乳汁などの生体液中に天然に見出される80kDの鉄結合性糖タンパク質である。ラクトフェリンの最も濃厚な供給源は哺乳動物の乳汁および初乳である。ウシ脱脂乳中のラクトフェリンの濃度は、通常は小さく、脱脂乳の低温殺菌および他の前処理歴を含む因子に依存して、典型的には80〜200mg/mlである。乳汁中に存在するカゼインの沈殿後のウシホエー中のラクトフェリンの濃度は、ホエーの物理的および化学的前処理に依存して、典型的には、10〜100mg/mlである。
【0005】
ラクトフェリンには、鉄代謝、免疫機能、および胚発生の調節を含む複数の生物学的役割があると考えられている。ラクトフェリンは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌ならびに酵母を含む真菌など、ある範囲の病原体に対する抗微生物活性を有する。ラクトフェリンの抗微生物効果は、病原体の成長に不可欠な鉄に結合するその能力に基づいている。また、ラクトフェリンは、いくつかのウイルスの複製を阻害し、抗生物質およびリゾチームに対する一部の細菌の感受性を、細菌膜上のリポ多糖のリピドA構成要素への結合によって増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳汁、特に牛乳から、ラクトフェリンを精製して純度を改善するための改良された方法を提供することが、本発明の好ましい実施形態の目的である。
【0007】
本明細書において引用する参考文献は、全ての特許または特許出願を含めて、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。本明細書ではいくつかの先行技術刊行物に言及するが、この言及が、それらの文書のいずれかが当技術分野における共通一般知識の一部を形成しているとの自白を構成するわけではないことは、明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様は、乳汁をろ過に付して、ラクトフェリンを含む保持液画分と、成長因子および/またはRNアーゼを含む透過液画分とに、前記乳汁を分離することを含む、乳汁からラクトフェリンを精製するためのプロセスであって、成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、ろ過前および/またはろ過中に、前記乳汁を塩処理に付す、前記プロセスを提供する。
【0009】
カットオフが30kDまたは50kDである膜ろ過を使って乳汁からラクトフェリンを精製する際に、本発明者らは、ラクトフェリン保持液に成長因子およびRNアーゼが混入することを見出した。これらの成長因子およびRNアーゼは30kD未満の分子量を有するので、膜を通過して透過液に入り、保持液ラクトフェリン画分中の不純物としては存在しないはずである。したがって、保持液中に成長因子およびRNアーゼが見つかったことは意外であった。ラクトフェリン画分のさらなる精製を目指して、本発明者らは、ろ過前に大量の塩を乳汁に加えると成長因子およびRNアーゼが保持液から除去され、よってラクトフェリンがさらに精製されることを見出した。塩条件下では成長因子およびRNアーゼが透過液中に見出された。
【0010】
理論に束縛されることは望まないが、通常の条件下では乳汁中のRNアーゼおよび成長因子が、凝集その他の形で、個々の分子量より大きな塊を形成していると、本発明者らは提唱する。塩処理はRNアーゼおよび成長因子を脱凝集または脱会合させると提唱する。
【0011】
したがって代替的一形態において、第1態様のプロセスは、乳汁をろ過に付して、ラクトフェリンを含む保持液画分と、成長因子および/またはRNアーゼを含む透過液画分とに、前記乳汁を分離することを含む、乳汁からラクトフェリンを精製するためのプロセスであって、成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、ろ過前および/またはろ過中に、RNアーゼまたは成長因子のいかなる塊も脱凝集または脱会合させることができる塩処理に前記乳汁を付す、前記プロセスを提供する。
【0012】
理論に束縛されることは望まないが、もう一つの選択肢として、イオン強度が低い条件下では、タンパク質凝集物が膜と会合した状態になることにより、膜の孔径より小さな見かけ上の孔径を有する層が形成され、それが、乳汁中のRNアーゼおよび成長因子の膜通過を妨げているのかもしれないと、本発明者らは提唱する。塩処理は、タンパク質層の形成を防止するか、またはタンパク質層を除去することで、あらゆるRNアーゼおよび成長因子が膜を通過して透過液に入ることを可能にすると提唱する。
【0013】
したがって代替的一形態において、第1態様のプロセスは、乳汁を膜ろ過に付して、ラクトフェリンを含む保持液画分と、成長因子および/またはRNアーゼを含む透過液画分とに、前記乳汁を分離することを含む、乳汁からラクトフェリンを精製するためのプロセスであって、成長因子および/またはRNアーゼが前記透過液に流入するように、ろ過前および/またはろ過中に、いかなるRNアーゼまたは成長因子も膜から分離させることができる塩処理に前記乳汁を付す、前記プロセスを提供する。
【0014】
第2態様は、第1態様のプロセスから得られるラクトフェリンを提供する。
【0015】
一実施形態では、第2態様のラクトフェリンをさらなる精製に付す。
【0016】
第3態様は、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗微生物剤または抗炎症剤としての、がん、特に固形腫瘍が関与するものを含む増殖性障害を処置するための、悪性新生物および過剰増殖性疾患を処置するための、骨形成を促進することによって骨障害を処置するための、ウイルス感染症または微生物感染症を処置するための、角膜創傷処置のための、免疫を増強するための、B細胞性非ホジキンリンパ腫を処置するための、敗血症性ショックを処置するための、大腸菌、レンサ球菌およびクロストリジウムを減少させると同時にビフィズス菌数を改善することによって腸の健康状態を改善するための、IBDを処置するための、免疫および疾患に対する抵抗性を促進するための、全身性炎症を管理するための、臓器移植拒絶および移植片対宿主病を防止するための、母体および胎児の健康状態を改善するための、神経細胞の健康状態および乳児の腸発生を改善するための、子癇前症、早期分娩、妊娠糖尿病、流産、子宮内胎児死亡、早産、低出生体重、胎盤早期剥離および子宮内発育遅延などといった妊娠関連合併症、特に低鉄血症または鉄欠乏性貧血を有する女性におけるものの可能性を低減するための、鉄欠乏および貧血、特に妊婦におけるものを処置するための、早産新生児における新生児敗血症の防止のための、創傷治癒のための、バイオフィルム形成を促進するための、歯周炎を含む口腔感染症を処置するための、糖尿病性潰瘍を処置するための、膿疱性線維症の処置における、痛みの低減における、タンパク尿症・アルブミン尿症(proteinalbinuria)を処置するための、皮膚細胞の成長を促進するための、放射線防護剤としての、尿路感染症の処置における、変性関節疾患の処置における、糖尿病の処置における、呼吸障害の処置における、循環コレステロール、血管炎、アテローム性動脈硬化および心血管疾患の低減における、および当業者に知られるラクトフェリンの他の全ての用途における、第2態様のラクトフェリンの使用を提供する。
【0017】
代替的一形態において、第3態様は、第3態様において提案したように使用するための、または第3態様において提案したように使用するための医薬品の製造において使用するための、第1態様のプロセスから得られるラクトフェリンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】導電率が増加するに連れて、50kDa膜を横切る透過液フラックスが増加することを示す図である。
図2】塩化ナトリウムの存在量を増加させて限界ろ過を行うと、低分子量夾雑物(一例としてRNアーゼを使用)の透過が増加することによって、保持されるラクトフェリンの純度が増加することを示す図である。
図3】50kDa UF膜からの透過液におけるラクトフェリン(●)、低分子量タンパク質(一例としてRNアーゼを使用、◆)およびタンパク質(▲)の濃度を示す図である。
図4】塩化ナトリウムの濃度を増加させて行ったラクトフェリンのサイズ排除HPLC分析を示す図である。この図は、濃度を増加させることによって大きな粒子が脱凝集することを示している。最初の50分間での塩化ナトリウム濃度、すなわちA、0M NaCl;B、0.16M NaCl;C、0.32M NaClおよびD、0.48M NaClが、4つのクロマトグラフ間の重要な相違である。
図5】塩化ナトリウム(0、1.5、3、4,5、または6%NaCl)の存在下で行われた、ビバセル(Vivacell)装置に収容された50kDa膜によるラクトフェリン溶液の限外ろ過を示す図である。この図は、塩化ナトリウムの存在下で、50kDa膜が、RNアーゼおよび他の成長因子の移行を選択的に許すことを示している。A:透過液試料;B:透過液試料。
図6】塩化ナトリウム(0、1.5、3、4,5、または6%NaCl)の存在下で行われた、ビバセル装置に収容された50kDa膜によるラクトフェリン溶液の限外ろ過を示す図である。この図は、塩化ナトリウムの存在下で、50kDa膜が、RNアーゼおよび他の成長因子の移行を選択的に許すことを示している。A:透過液試料;B:透過液試料。
図7】導電率を増加させて限外ろ過を行うと、保持されるラクトフェリンの純度が増加することを示す図である。
図8】観察されたラクトフェリン純度の増加が、夾雑成長因子、例えばRNアーゼの移行の増加によるものであることを示す図である。成長因子の移行は、0mS/cmと20mS/cmの間で急速に増加する。
図9】ラクトフェリン出発物質、主要カチオン交換クロマトグラフィーピーク、および50kDa UFでさらに精製した物質中のラクトフェリン純度を示す図である。目標ラクトフェリン純度は98%である。
図10】50kDa膜による処理中のラクトフェリン純度の増加を例証する図である。カチオンHPLCで分析した液状の試料を灰色で示し、カチオン交換HPLCで分析した粉末状の試料を黒色で示す。
図11】塩化ナトリウムを含有するラクトフェリン溶液を限外ろ過によって処理する場合、膜の分子量カットオフを増加させると、透過液に入るタンパク質の量を増加させることができ(−▲−)、タンパク質(…●…)およびラクトフェリン(−■−)の保持が改善されることを例証する図である。結果は、表示の多孔度を有するザルトリウス・ステディム(Sartorius Stedium)のビバセル250UF膜を使って、6%塩化ナトリウムを含有する2mg/mLラクトフェリン溶液の分離を試験することによって得た。
図12】膜のフラックスは分子量カットオフと共に増加するが(シンダー・フィルトレーション(Synder Filtration)から得たデータ、水を25℃および3.4バールで処理)、30kDaと50kDaとでは顕著に相違しないことを例証する図である。
図13】塩化ナトリウムを含有するラクトフェリン溶液を限外ろ過によって処理する場合、膜の分子量カットオフを増加させると、膜の多孔度が50kDaになるまでは、純度が増加することを例証する図である。結果は、表示の多孔度を有するザルトリウス・ステディムのビバセル250UF膜を使って、6%塩化ナトリウムを含有する2mg/mLラクトフェリン溶液の分離を試験することによって得た。
図14】従来の5kDa膜または新しい50kDa膜のいずれかを装着したUF7による処理に起因するラクトフェリン純度の増加を例証する図である。プロットした値は平均であり、バーは95%信頼区間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、乳汁からラクトフェリンを精製するための改良された方法または乳汁をラクトフェリンに関して濃縮するための改良された方法を提供する。
【0020】
本発明者らは、効率よく濃縮ラクトフェリンを調製することを可能にするプロセスの必要性を認識していた。
【0021】
ラクトフェリンに関して本明細書において使用する用語「精製された」または「濃縮された」は、保持液中に存在するラクトフェリンタンパク質:総タンパク質比が、ろ過ステップ前の乳汁中に存在する比との比較で増加していることを意味する。ある画分が濃縮されたまたは精製されたとみなされるには、その画分が、ろ過ステップ前の乳汁より少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、28、または30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、98、または99%w/w高いラクトフェリン含有量を有するべきである。
【0022】
第1態様のプロセスは、ラクトフェリン保持液の純度を、100%純粋にまで増加させようとするものである。
【0023】
本明細書において使用する用語「画分」は、部分精製された乳汁の一部を指す。
【0024】
「効率のよい」という用語の使用は、タンパク質を濃縮するために現在使用されている方法と比較した場合に安価で迅速なプロセスを意味すると解釈される。
【0025】
本明細書に言う乳汁には、全乳、スキムミルク、バターミルク、ホエー(酸ホエーまたはチーズ/レンネット処理ホエーなど)またはホエー派生物(ホエータンパク質濃縮物またはホエータンパク質アイソレートフロースルーなど)、および初乳が含まれる。これには乳汁画分、例えばカチオン交換クロマトグラフィーなどの精製ステップに付された画分も含まれる。そのような画分には、乳塩基性タンパク質および濃縮ラクトフェリン画分が含まれる。
【0026】
乳汁が、例えばウシ、ヒツジ、スイギュウ、ヤギ、およびシカなどの反芻動物、ヒトなどの霊長類を含む非反芻動物、およびブタなどの単胃動物などといった任意の泌乳動物から入手しうることは、当業者には明白であるだろう。本発明のプロセスではウシの全乳に由来するスキムミルクを使用することが好ましい。
【0027】
第1態様のプロセスにおいて使用されるろ過は、膜ろ過を含む。一実施形態において、膜は、25kD、30kD、35kD、40kD、45kD、50kD、55kD、60kD、65kD、70kDまたは75kDのサイズカットオフを有する。カットオフは、好ましくは、30kD以上かつ50kD以下である。
【0028】
ろ過は、限外ろ過もしくはダイアフィルトレーションまたはその両方を伴いうる。
【0029】
第1態様のプロセスにおいて使用される塩処理は、乳汁のイオン強度が少なくとも0.2M(1.1%)NaCl相当になるように、十分な塩の添加を伴う。一実施形態では、イオン強度が、ラクトフェリン純度の必要な増加を得るのに必要な期間にわたって、少なくともこのレベルに維持される。この期間は、乳汁供給物質および所望する純度増加に依存して、少なくとも10分、15分、20分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間またはそれ以上でありうる。
【0030】
もう一つの選択肢として、第1態様の方法において使用される塩処理は、乳汁の導電率が少なくとも20mS/cmになるように、十分な塩の添加を伴う。一実施形態では、導電率がろ過ステップ中は一貫して少なくともこのレベルに維持される。
【0031】
一般に、乳汁は、0.2M NaCl相当より大幅に低いイオン強度または20mS/cmより大幅に低い導電率を有するだろうから、塩処理は、乳汁のイオン強度または導電率を所望のレベルまで増加させるために、塩の添加を伴う。しかし状況によっては、例えば乳汁がカチオン交換に付された画分である場合には、乳汁が、少なくとも0.2M NaCl相当でありうるイオン強度を有するか、または導電率が20mS/cm以上であるだろう。一般に、カチオン交換からの画分は塩を除去するための処理に付される(例えば水を使ったダイアフィルトレーション)。しかし、第1態様のプロセスでは、塩処理が、乳汁のイオン強度をろ過ステップ中は少なくとも0.2M(1.1%)NaCl相当に維持するための処理であるか、または乳汁の導電率をろ過ステップ中は少なくとも20mS/cmに維持するための処理である。
【0032】
本明細書において「導電率」とは、電流を伝導する物質の能力である。導電率は、一般に、例えばハック・センスイオン5(Hach Sension 5)などの導電率計を使って測定される。導電率を測定するための適切な代替手段は、当業者にはわかるであろう。ナトリウムイオン濃度と導電率の間には概して線形の関係がある。
【0033】
塩処理に使用される塩に制約はなく、当業者であればNaClの代替物を知っているであろう。例えば、塩化物、クエン酸、リン酸、酢酸、硫酸、重炭酸、水酸化物、イミダゾール、またはマレイン酸の可溶性のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩またはリチウム塩など、任意の可溶性無毒性緩衝剤を使用することができる。トリズマ(Trizma)、HEPESまたはトリシンなどの合成両性イオン緩衝剤も使用することができる。
【0034】
ラクトフェリンからのRNアーゼおよび成長因子の分離を可能にするために、乳汁のイオン強度は、ろ過ステップ前に、少なくとも0.2M(1.1%)NaCl相当またはそれ以上でなければならない。一実施形態では、1.1%の塩、1.5%の塩、2%の塩、2.5%の塩、3%の塩、3.5%の塩、4%の塩、4.5%の塩、5%の塩、5.5%の塩、6%の塩またはそれ以上を加えることによって、乳汁のイオン強度を増加させる。もう一つの実施形態では、乳汁のイオン強度を、0.2M、0.22M、0.24M、0.26M、0.28M、0.30M、0.32M、0.34M、0.36M、0.38M、0.40M、0.42M、0.44M、0.46M、0.48M、0.50M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M NaCl相当またはそれ以上まで増加させる。もう一つの実施形態では、導電率が、20mS/cm、30mS/cm、40mS/cm、50mS/cm、60mS/cm、70mS/cm、80mS/cm、90mS/cm、100mS/cm、110mS/cm、120mS/cmまたはそれ以上である。
【0035】
好ましい一実施形態では、塩処理が、ろ過ステップ前に乳汁への0.2〜0.5M NaClまたはKClの添加を伴う。
【0036】
一実施形態では、塩処理が4〜10度で行われる。
【0037】
一実施形態では、塩処理が10〜30度で行われる。
【0038】
一実施形態では、塩処理が30〜50度で行われる。
【0039】
一実施形態では、塩処理が50〜70度で行われる。
【0040】
一実施形態では、塩処理が20度未満で行われる。
【0041】
もう一つの実施形態では、塩処理が50度以上で行われる。というのも、50度を上回る温度では大腸菌群が低減するからである。ただし、ラクトフェリンはおよそ70度で変性するので、60度以上で塩処理を行うと、収量の減少が起こりうる。
【0042】
一実施形態では、ろ過ステップが4〜10度で行われる。
【0043】
一実施形態では、ろ過ステップが10〜30度で行われる。
【0044】
一実施形態では、ろ過ステップが30〜50度で行われる。
【0045】
一実施形態では、ろ過ステップが50〜70度で行われる。
【0046】
一実施形態では、塩処理が大気圧で行われる。
【0047】
一実施形態では、ろ過ステップが、膜あたり2.5バール未満、さらに言えば2.0バール未満、またさらに言えば1.5バール未満、理想的には1.0〜1.4バールの膜間差圧で行われる。ただし、0.0〜1.0バールの圧力でもなんとか作動するであろうが、膜貫通フラックスは低下する。
【0048】
「処置する」または「処置」とは、治療的処置と予防的または防止的措置の両方を指し、その目的は、ある状態、疾患または障害を防止し、寛解させ、低減し、もしくは減退(軽減)させ、または改善することである。
【0049】
本明細書において「処置する」または「処置」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトにおける、ある状態の任意の処置または防止を包含する。
【0050】
「防止する」、「防止」、「防止的」または「予防的」とは、ある状態、疾患、障害、または表現型(異常または症状を含む)の発生を避けること、またはその発生を妨害し、その発生から防御し、もしくはその発生から保護することを指す。防止を必要とする対象は、その状態を発生させやすい対象でありうる。
【0051】
「寛解させる」または「寛解」という用語は、ある状態、疾患、障害、または表現型(異常または症状を含む)の減少、低減または排除を指す。処置を必要とする対象は、既にその状態にあるか、またはその状態に陥りやすいか、またはその症状を防止すべき対象でありうる。
【0052】
本明細書において使用する用語「維持する」は、ある状態を処置前レベルで持続させることを指す。
【0053】
第2態様のラクトフェリンは、医薬組成物、獣医用組成物または栄養補助食品組成物として、または食品として提供することができる。
【0054】
医薬組成物は、ヒトへの投与に適したものである。獣医用組成物は、動物への投与に適したものである。一般にそのような組成物は精製されたラクトフェリンを含有するか、最低でも、組成物の全ての構成要素が検証可能であるだろう。
【0055】
前記医薬組成物または獣医用組成物は、1つ以上の担体と、場合によっては他の治療剤とを含みうる。各担体、希釈剤、佐剤および/または賦形剤は「許容できる」ものであるだろう。
【0056】
「許容できる」とは、生物学的にも他の面でも望ましくないものではない物質、すなわちその物質は選ばれた活性剤と共に個体に投与することができ、その際、望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、その物質を含有する医薬組成物または獣医用組成物の他の構成要素のいずれかと有害な形で相互作用することもないことを意味する。また、ここに提供される新規化合物の「許容できる」塩またはエステルは、生物学的にも他の面でも望ましくないものではない塩またはエステルである。
【0057】
本明細書において「担体」とは、薬剤を対象に送達するための、許容できる溶媒、懸濁剤または媒体である。担体は液状であっても固形であってもよく、想定した予定の投与方法に応じて選択される。各担体は、生物学的にも他の面でも望ましくないものではないという意味で、すなわち有害反応を何もまたは実質的に引き起こすことなく担体を薬剤と共に対象に投与することができるという意味で、「許容できる」ものでなければならない。
【0058】
前記医薬組成物または獣医用組成物は、通常の許容できる無毒性の担体、佐剤、および媒体を含有する製剤として、経口投与、外用投与、または非経口投与することができる。
【0059】
本明細書において使用する非経口という用語には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、結膜下、腔内、経皮および皮下注射、肺もしくは鼻腔への投与のためのエアロゾル、または注入(例えば浸透圧ポンプによるもの)による投与が含まれる。
【0060】
前記医薬組成物または獣医用組成物は、錠剤、水性懸濁剤もしくは油性懸濁剤、口中錠、トローチ剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として、経口投与することができる。経口使用のための組成物は、医薬的に洗練されていて服用しやすい調製物を生産するために、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤の群から選択される1つ以上の薬剤を含有しうる。適切な甘味料には、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンなどがある。適切な崩壊剤には、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸または寒天などがある。適切な香味剤には、ハッカ油、冬緑油、サクランボ香味料、オレンジ香味料またはラズベリー香味料などがある。適切な保存剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムなどがある。適切な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクなどがある。適切な遅延剤には、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどがある。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の医薬上許容できる賦形剤と混合された薬剤を含有しうる。
【0061】
これらの賦形剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム、(2)造粒剤および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプンまたはアルギン酸、(3)結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム、および(4)潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであることができる。これらの錠剤は素錠であってもよいし、消化管における崩壊と吸収を遅らせることによって長期間にわたって持続的作用を提供するために、既知の技法でコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延物質を使用することができる。
【0062】
非経口投与用の調製物には、滅菌された水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳液または懸濁液、例えば食塩水および緩衝媒質などがある。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルなどがある。静脈内媒体は、水分および栄養補給剤、電解質補給剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)などがある。保存剤および他の添加剤、例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤、成長因子および不活性ガスなども、存在してよい。
【0063】
前記医薬組成物または獣医用組成物は、治療機能を補足、追加、または強化する他の活性化合物も含有しうる。前記医薬組成物または獣医用組成物は、容器、梱包、またはディスペンサーに、投与のための説明書と一緒に含めることもできる。
【0064】
前記医薬組成物または獣医用組成物は1回で投与するか、間隔をおいて、例えば1日1回、週に1回、および月に1回投与することができる。
【0065】
投薬スケジュールは、活性剤の半減期または対象の状態の重症度に応じて調節することができる。
【0066】
一般に、前記医薬組成物または獣医用組成物は、投与後、最大限長く、活性剤の循環レベルが最大になるように、ボーラス投与として投与される。ボーラス投与後に持続注入も使用することができる。
【0067】
第2態様のラクトフェリンは、栄養補助食品組成物または食品に入れて提供してもよい。
【0068】
本明細書において使用する用語「栄養補助食品」は、食品から、この場合は乳製品から、単離または精製された食用に適した製品であって、経口投与された場合に、生理的利益を有するか、保護をもたらすか、急性または慢性の疾患または傷害を減弱させることが実証されているものを指す。したがって栄養補助食品は、飲食用調製物またはサプリメントの形態で、単独で、食用に適した食品または飲料と混合されて、存在しうる。
【0069】
栄養補助食品組成物は、可溶性粉末、液状物、またはそのまま飲める調合物の形態をとりうる。あるいは、栄養組成物は、食品として固形であってもよく、例えばそのまま食べることができるバーまたは朝食用シリアルの形態であることができる。さまざまなフレーバー、繊維、甘味料、および他の添加剤も存在しうる。
【0070】
栄養補助食品は、好ましくは、許容できる官能特性(例えば許容できる匂い、味および口当たり)を有し、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B11、B12、ビオチン、C、D、E、HおよびKならびにカルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛および鉄の少なくとも1つから選択されるビタミンおよび/またはミネラルを、さらに含みうる。
【0071】
栄養補助食品組成物は通常どおりに生産することができる。例えば前記組成物は、タンパク質と他の添加剤とを一つに配合することによって調製することができる。使用するのであれば、乳化剤を配合物に含めることができる。追加のビタミンおよびミネラルをこの時点で加えてもよいが、通常は、熱分解を避けるために後で加えられる。
【0072】
粉末栄養補助食品組成物の生産を望む場合は、前記タンパク質を粉末の形態で追加の構成要素と混合することができる。粉末は約5重量%未満の水分量を有するべきである。次に水、好ましくは逆浸透処理に付された水を混和して、液状混合物を形成させることができる。
【0073】
すぐに消費できる液状物の形態で栄養補助食品組成物を提供したい場合は、細菌負荷量を低減するために、その組成物を加熱することができる。液状の栄養補助食品組成物の生産を望む場合、その液状混合物は、好ましくは、適切な容器に無菌的に充填される。容器の無菌充填は当技術分野において一般に利用することができる技法を使って行うことができる。この類の無菌充填を行うための適切な装置は市販されている。
【0074】
好ましくは、栄養補助食品組成物は、1つ以上の医薬上許容できる担体、希釈剤または賦形剤も含む。栄養補助食品組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝剤、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストランなどの糖質、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤、EDTAなどのキレート剤、佐剤および保存剤も含みうる。
【0075】
栄養補助食品は、人工栄養乳、特に乳児に投与するための母乳化調製乳でありうる。
【0076】
食品として提供される場合、第2態様のラクトフェリンは、食品サプリメント、栄養調合物、スポーツ栄養サプリメントまたは人工栄養乳の形態をとることができる。一実施形態では、食品は動物飼料である。
【0077】
本明細書の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、「を含む(comprise)」という用語またはその異形(例えば「comprises」または「comprising」)は、明示した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を含意するが、他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の除外を含意するわけではない。
【0078】
本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数態様を包含することにも、注意しなければならない。
【0079】
明快になるように、理解の一助となるように、本発明をいくらか詳しく説明したが、本明細書に開示した発明概念の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および改変を、本明細書に記載する実施形態および方法に加えうることは、当業者には明らかであるだろう。
【実施例】
【0080】
以下、下記の実施例を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。本実施例は、例証のために記載するに過ぎず、別段の明記がある場合を除き、限定を意図していない。したがって本発明は、本明細書に提供する教示の結果として自明となるありとあらゆる異形を包含する。
【0081】
[実施例1]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
APVパイロット規模限外ろ過プラントに、1つの6インチ50kDa膜(シンダー(Synder))を装着し、次に、ベースライン圧力が3.2〜3.4バール、膜間差圧が1.2〜1.4バールになるように安定させた。ラクトフェリン溶液(2mg/mL)を各2Lの6ロットに分割した。導電率(0、20、40、60、80または100mS/cm)以外は同一である6つの実験において、2Lのラクトフェリン溶液をUF供給タンクに加え、170Lまで水をつぎ足し、塩化ナトリウム溶液を加えることによって指定の導電率に調節した。保持液は供給タンクに循環させ、透過液を収集した。取り除いた透過液は同じ導電率のダイアフィルトレーション溶液で置き換えた。純度はカチオン交換HPLCで評価した。
【0082】
塩濃度を増加させると透過液フラックスが増加することがわかった(図1)。ラクトフェリン純度は95%(0mS/cm)から98.4%(100mS/cm)まで増加した(図2)。透過する構成要素の濃度を図3に示す。この図は、100mS/cmにおいて、ラクトフェリンと総タンパク質の量が増加することを示している。純度の増加とフラックスの増加はどちらも、追加の塩化ナトリウムが本プロセスを改良すること、および本プロセスが最適に行われるには、少なくとも40mS/cmの導電率が必要であることを示唆している。クロマトグラフィープラントから溶出させてUF4に収集されるラクトフェリン溶液は、96mS/cmになるように意図されているので、80mS/cm〜100mS/cmの領域で起こるラクトフェリン純度の最適な増加は、さらなる処理を行わなくても、既存のプロセスと適合している。
【0083】
[実施例2]
塩はラクトフェリンを脱凝集させる
ラクトフェリン(タンパク質の百分率として95%ラクトフェリン)を水に溶解して10mg/mLにした。HPLCにスーパーデックス(Superdex)200 10/300GLカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))を装着し、緩衝液A(トリスHCl(pH7、1g/L))により、0.5mL/分の流量で平衡化した。緩衝液Bは1M塩化ナトリウムを含有するトリスHCl(1g/L)(pH7)であり、注入した試料は100μLであった。緩衝液Bの量は、0分と50分の間は0%とし、50分と90分の間は100%緩衝液Bに増加させ、次に90分から150分までは16%緩衝液Bに増加させた。以後の実験のそれぞれでは、0分から50分までと、90分から150分までの塩を、16%Bずつ増加させた。
【0084】
図4に示すように、ラクトフェリンは約28分の単一主要ピークに溶出し、その後に、それより小さなピーク(ラクトフェリン断片と非ラクトフェリンタンパク質を含むもの)がいくつか続く。0.48M NaClを含有していたクロマトグラフDは、典型的ラクトフェリンプロファイルの一例である。NaClを含有していなかったクロマトグラフAは、小さなラクトフェリンピークと、94分にある大きなピークの存在を示した。94分のピークは、50分に始まる高塩濃度が凝集していたラクトフェリンを解離させてカラムに含まれる樹脂内でのラクトフェリンの移動を可能にするまでは不溶であった、ラクトフェリンである。
【0085】
図4に示す結果は、塩が、95%ラクトフェリン粉末中に存在するタンパク質を解離させて(ただし解離するタンパク質がラクトフェリンであるとは限らない)個々のタンパク質をもたらし、それらが50kDa膜を通過することになることを裏付けている。これらの結果は、解離効果が生じるには0.32Mより高いNaCl濃度が必要であることを示している。
【0086】
この実験を液状試料で繰り返したところ、類似する結果が観察された。
【0087】
[実施例3]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
6つのビバセル250ユニット(ザルトリウス(Sartorius))に50kDa膜を装着した。それぞれに250mLラインまで1mg/mLラクトフェリン溶液を充填した。ただし、塩化ナトリウム濃度はそれぞれで異なっていた(0、1.5、3、4、5または6%NaCl)。セルを3バールまで加圧した。保持液および透過液の試料を収集し、カチオン交換HPLCで分析した。
【0088】
塩濃度を増加させると成長因子(代表例としてRNアーゼを使用)の移行が増加し、保持液中のラクトフェリンの純度が増加することがわかった(図5および図6)。
【0089】
[実施例4]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
限外ろ過プラントに1つの6インチ50kDa膜(シンダー)を装着し、次に、ベースライン圧力が3.2〜3.4バール、膜間差圧が1.2〜1.4バールになるように安定させた。ラクトフェリン溶液(2mg/mL)を各2Lの6ロットに分割した。導電率(0、20、40または60mS/cm)以外は同一である6つの実験において、2Lのラクトフェリン溶液をUF供給タンクに加え、170Lまで水をつぎ足し、塩化ナトリウム溶液を加えることによって指定の導電率に調節した。保持液は供給タンクに循環させ、透過液を収集した。取り除いた透過液は同じ導電率のダイアフィルトレーション溶液で置き換えた。純度はカチオン交換HPLCで評価した。
【0090】
ラクトフェリン純度は90.9%(0mS/cm)から93.5%(60mS/cm)まで増加した(図7)。これは2.5%の純度増加を表す。ラクトフェリン純度の増加は成長因子(一例としてRNアーゼを使用)の選択的除去によって達成された(図8)。
【0091】
[実施例5]
ラクトフェリン純度の増加を改善するための、限外ろ過を伴うまたは伴わない、二次カチオン交換クロマトグラフィーの使用
ストマッカーを使ってラクトフェリン粉末(40g、95.2%ラクトフェリン)を水(200mL)に溶解した。試料を収集し、カチオン交換HPLCで分析した。そのラクトフェリン溶液を、SPファストフロー(Fast Flow)樹脂(GEヘルスケア)を充填したカラム(50mmD×1000mmL)に適用した。結合したラクトフェリンを、0%塩化ナトリウムから5.8%(1M)塩化ナトリウムまでにわたる3Lの直線的勾配を使って、樹脂から溶出させた。主要ラクトフェリンピークを収集し、カチオン交換HPLCによって分析した。
【0092】
少量の主要ラクトフェリンピーク(5mL)を遠心式50kDa UFデバイス(ザルトリウス・ステディム(Sartorius Stedim))に入れ、水で初期体積の3倍(15mL)に希釈し、残っているラクトフェリンが1.5mLになるまで遠心し(8,000g×20分)、最後にカチオン交換HPLCで分析した。
【0093】
カチオン交換クロマトグラフィーと50kDa UFの併用により、98%タンパク質という要求純度を上回る98.9%の純度が得られたが、クロマトグラフィーだけ(97.8%)ではこの純度を得ることができなかった(図9)。カチオン交換クロマトグラフィーにより、ラクトフェリンの純度は2.7%増加し、その後の50kDa UFステップにより、純度はさらに0.9%増加した。有望なことに、既に極めて純粋な物質でさえ、50kDa UFによって純度が増加した。50kDa UF単独でも試験してみる価値があるだろうと思われる。
【0094】
[実施例6]
ラクトフェリンの限外ろ過がラクトフェリン純度を十分に増加させることができるかどうかを決定するための最初の実験
ラクトフェリン粉末(1kg、純度96.3%タンパク質)を100Lの水に溶解した。そのラクトフェリン溶液を、1つのシンダー6.3インチ50kDa膜(BX−5XB−6338)を装着したAPV UFプラントに入れた。ラクトフェリン溶液とUFプラント中に存在する水の体積は合わせて180Lであり、塩化ナトリウムを加えたので導電率は58mS/cmであった。透過液(100L)を10分で取り出した。水(100L)および塩を加えて121mS/cmの導電率を得た。透過液(100L)を10分で取り出した。次に、水ダイアフィルトレーション(400Lの透過液)によって、ラクトフェリン保持液の導電率を1300μSに低下させた。次にラクトフェリン保持液を凍結乾燥した(48時間、1ミリバール、40℃)。液状試料はMGCにおいてカチオン交換HPLCで分析し、粉末試料は外部の試験所により、カチオン交換HPLCで分析された(粉末の形態で分析した試料の方が正確であると考えるべきである)。
【0095】
50kDa膜を装着したUFプラント内で十分なダイアフィルトレーションを行えば、ラクトフェリンの純度を約2%(タンパク質ベース)増加させることができる。最終純度の結果は98.1%(タンパク質ベース)であった(図10)。これは、本プロセスに見込みがあり、さらなる開発に値することを示している。
【0096】
[実施例7]
膜性能に対する膜の分子量カットオフの効果
膜の分子量カットオフ(MWCO)は膜性能に対して最も重要な影響を及ぼす。膜の孔径が増加するに連れて、膜が通過を許すタンパク質は大きくなり(図11)、フラックスは増加する(図12)。膜には混合物中の構成要素を分離する能力があるが、それは、1つまたはいくつかの構成要素が膜のMWCOより小さく、かつ1つまたはいくつかの構成要素が膜のMWCOより大きい場合に限る。理想的な分離には、一般に、少なくとも2桁の分子量の差が必要である(すなわち28Daの水および58Daの塩化ナトリウムは78kDaのラクトフェリンからほぼ完全に分離することができる)が、それほど大きなサイズの差異が存在しなくても、ある程度の分離は可能である。目的がラクトフェリン溶液の純度を増加させることであるなら、50kDa膜が利用可能な最善の選択肢であると思われる(図13)。
【0097】
[実施例8]
限外ろ過膜
UF4
タイプ:スパイラル型ポリエーテルスルホン(PES) MWCO:30kDa
ブランド:シンダー 型番:MK2B−6338
【0098】
UF4として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.カチオン交換カラムから溶出したラクトフェリンを濃縮し、かつ
2.ラクトフェリン溶出塩を、クロマトグラフィープロセスで再利用するために6%塩タンクに再循環した。
【0099】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−塩化ナトリウム(バッチあたり2,000kg)は、ラクトフェリン製造プロセスでは、かなりのコスト(バッチあたり$1,200)であり、塩化ナトリウムを再循環させることができれば、生産コストが劇的に低減する。
−塩化ナトリウムを再循環させることによって環境の損壊が低減される。有機固形物を除去するためのレオンガタ(Leongatha)における3次処理後に、塩化ナトリウム含有流出液は海洋排水口を利用して処分され、生成する廃棄物の量を低減するためにあらゆる手段を講じなければならない。塩再循環プロセスにより、必要な塩の量は80%低減する。これは、環境に放出される塩化ナトリウムの量が、バッチあたり8,000kg低減すること(3分の2がUF4によるもの)を意味する。
【0100】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は、大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスが可能になる。
−PESは本質的に親水性の膜であり、迅速かつ完全に濡れて、優れた流速と高いスループットとを持つ迅速ろ過をもたらす。PES膜はタンパク質結合性も極めて低く、標的タンパク質結合の可能性を最小限にするが、それは、高い収量、安定した膜貫通フラックスおよび一貫した見かけの膜多孔度を意味する。
【0101】
MWCOの理由づけ:
−30kDa膜は、収穫されたラクトフェリンをうまく保持し(膜を通るタンパク質の移行は、存在するタンパク質の0.6%である)、鍵となる夾雑物、特にRNアーゼが膜を通過することを許すことによって、純度を増加させる。
−塩化ナトリウム(58Da)が30kDa膜では保持されないのに対し、ラクトフェリン(80kDa)は保持される。そのため、低い濃度(0.1%タンパク質)でカラムから溶出するラクトフェリンを、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、3%タンパク質まで濃縮することができる。
【0102】
UF5
タイプ:スパイラル型ポリエーテルスルホン(PES) MWCO:5kDa
ブランド:シンダー 型番:MT2B−6338
【0103】
UF5として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.カチオン交換カラムから溶出した非ラクトフェリンタンパク質を濃縮し、かつ
2.クロマトグラフィープロセスで再利用するために、2.5%塩を2.5%塩タンクに再循環した。
【0104】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−塩化ナトリウム(バッチあたり2,000kg)は、ラクトフェリン製造プロセスでは、かなりのコスト(バッチあたり$1,200)であり、塩化ナトリウムを再循環させることができれば、生産コストが劇的に低減する。
−塩化ナトリウムを循環させることによって環境の損壊が低減される。有機固形物を除去するためのレオンガタにおける3次処理後に、塩化ナトリウム含有流出液は海洋排水口を利用して処分され、生成する廃棄物の量を低減するためにあらゆる手段を講じなければならない。塩再循環プロセスにより、必要な塩の量は80%低減する。これは、環境に放出される塩化ナトリウムの量が、バッチあたり8,000kg低減すること(3分の1がUF5によるもの)を意味する。
【0105】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は、大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスが可能になる。
−PESは本質的に親水性の膜であり、迅速かつ完全に濡れて、優れた流速と高いスループットとを持つ迅速ろ過をもたらす。PES膜はタンパク質結合性も極めて低く、標的タンパク質結合の可能性を最小限にするが、それは、高い収量、安定した膜貫通フラックスおよび一貫した見かけの膜多孔度を意味する。
【0106】
MWCOの理由づけ:
−5kDa膜は非ラクトフェリン不純物を保持し、以後のラクトフェリン溶出中にそれらがクロマトグラフィープロセスに戻ってラクトフェリンに混入することを防止する。タンパク質混合物は、さらに小さいタンパク質を数多く含有するので(その多くは成長因子である)、さらに小さな膜が必要である。
−塩化ナトリウム(58Da)が5kDa膜では保持されないのに対し、ラクトペルオキシダーゼ(80kDa)、免疫グロブリン(150〜420kDa)および成長因子(5〜17kDa)は保持される。そのため、低い濃度(0.1%タンパク質)でカラムから溶出するタンパク質を、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、3%タンパク質まで濃縮することができる。
【0107】
MF6
タイプ:セラミックチューブ(アルミナ) MWCO:0.8μm
ブランド:ポール(Pall) 型番:メンブラロックス(Membralox)GP19
【0108】
MF6として知られている精密ろ過プラントを使って
1.ラクトフェリン溶液中に存在する微生物の数を低減し、かつ
2.不溶物を除去した。
【0109】
膜タイプの理由づけ:
−セラミック膜は洗浄剤に対する耐性が高く、微生物の完全な除去を保証するために激しく洗浄することができる。これらは、夾雑物が膜を通過することを許しうる、裂けることがない非常に頑丈な膜でもある。
【0110】
MWCOの理由づけ:
−不溶物の低減(清澄度の増加)および微生物汚染の低減
−本プラントは、タンパク質が妥当な体積および固形物濃度で膜を通過することを可能にするために、0.22μmではなく0.8μmである。主な原材料(脱脂乳)は事前に低温殺菌されているので、フィルターを完全な微生物除去ステップにしようとはしていない。
【0111】
UF7
タイプ:スパイラル型ポリフッ化ビニリデン(PVDF) MWCO:50kDa
ブランド:シンダー 型番: BN4B−6338
【0112】
UF7として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.非ラクトフェリンタンパク質を低減することによってラクトフェリン純度を増加させ、かつ
2.塩化ナトリウムおよび残存ラクトースを除去することによってタンパク質を>95%固形分に増加させた。
【0113】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−フェリチンOB(Ferritin OB)製造向けのラクトフェリンは、標準ラクトフェリンより高いラクトフェリン純度を有する。その高純度は、歴史的に使用されてきた5kDa膜の代わりに50kDa膜を使用することによって得られる(図14)。
【0114】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスと相対的に短いプロセス時間が可能になる。
−親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜は膜貫通フラックスが高く、タンパク質に対するアフィニティが低い。これらの理由から、膜孔を詰まらせるタンパク質はほとんどないので、プロセスの継続期間中はフラックスが高く保たれ、収量が高く保たれる。
【0115】
MWCOの理由づけ:
−50kDa膜は、ラクトフェリンを保持したまま非ラクトフェリンタンパク質(RNアーゼ、成長因子)の移行を改善することができるので、その使用は、これより小さな膜(歴史的には5kDa膜)より好ましい。非ラクトフェリンタンパク質の移行の増加は、ラクトフェリン純度の向上をもたらす(純度の平均増加量は1.8%タンパク質、P<0.001)。さらなる詳細は、「Increasing Lactoferrin Purity by Diafiltration with Salt Solution in an Ultrafiltration Plant Fitted with 50 kDa Membranes」(JR0010)から入手することができる。
−塩化ナトリウム(58Da)が50kDa膜では保持されないのに対し、ラクトフェリン(80kDa)は保持される。そのため、低い濃度(3%タンパク質)でカラムから溶出するラクトフェリンを、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、>20%タンパク質まで濃縮することができる。
−水を除去することによって総固形分が増加し、それゆえに凍結乾燥器の固形分スループットが最大になる。
【0116】
[実施例9]
50kDa UFによってラクトフェリンの純度を増加させうることを確認するための完全に商業的規模での試行
この変更の有効性の比較が可能になるように、クロマトグラフィープロセスからのバッチを半分に分割した。半分に分けたうちの一方を、5kDa膜を装着したUF7により、塩ダイアフィルトレーションなしで処理し、他方を、50kDa膜を装着したUF7と塩ダイアフィルトレーションとによって処理した。
【0117】
UF7中に存在する5kDa膜を実施例1および実施例6で使用したものと同じシンダー50kDa膜で置き換えることによって、定型的な商業規模プロセスに変更を加えた。塩ダイアフィルトレーションステップも商業的プロセスに追加した。ダイアフィルトレーション溶液に使用した塩は、150kgの塩化ナトリウムを3000kgの水に加えることによって調製した。
【0118】
表1に提示する結果は、50kDa UF膜と追加の塩化ナトリウムダイアフィルトレーションステップとが、ラクトフェリン純度を2.4%(タンパク質ベース)増加させうることを示している。最終ラクトフェリン純度は97.8%(タンパク質ベース)であった。これは98.0%(タンパク質ベース)という目標純度に近い。タンパク質の組成は、その他の点では類似していたことから、本プロセスに負の効果はないことが示唆される。
【表1】
【0119】
要約すると、商業的規模の試行により、元となるUF4溶液より純度が1.1%高い98.0%(タンパク質ベース)のラクトフェリン純度を有する粉末が生産された。本プロセスは、ここでも、完全に商業的な規模でうまく機能することが示された。
【0120】
50kDa膜を装着したUFプラントにおける塩溶液によるラクトフェリン溶液のダイアフィルトレーションは、ラクトフェリンの純度を、首尾よく1%〜2.4%(タンパク質ベース)増加させることがわかった。これにより、98%(タンパク質ベース)のラクトフェリン純度を有する製品を生産することができる。このプロセスが最適なレベルで機能するには、5%〜6%の塩化ナトリウム濃度が必要であると思われるが、カチオン交換カラムからラクトフェリンを溶出させるために6%塩化ナトリウムが使用されるので、これは好都合である。
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