【実施例】
【0080】
以下、下記の実施例を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。本実施例は、例証のために記載するに過ぎず、別段の明記がある場合を除き、限定を意図していない。したがって本発明は、本明細書に提供する教示の結果として自明となるありとあらゆる異形を包含する。
【0081】
[実施例1]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
APVパイロット規模限外ろ過プラントに、1つの6インチ50kDa膜(シンダー(Synder))を装着し、次に、ベースライン圧力が3.2〜3.4バール、膜間差圧が1.2〜1.4バールになるように安定させた。ラクトフェリン溶液(2mg/mL)を各2Lの6ロットに分割した。導電率(0、20、40、60、80または100mS
/cm)以外は同一である6つの実験において、2Lのラクトフェリン溶液をUF供給タンクに加え、170Lまで水をつぎ足し、塩化ナトリウム溶液を加えることによって指定の導電率に調節した。保持液は供給タンクに循環させ、透過液を収集した。取り除いた透過液は同じ導電率のダイアフィルトレーション溶液で置き換えた。純度はカチオン交換HPLCで評価した。
【0082】
塩濃度を増加させると透過液フラックスが増加することがわかった(
図1)。ラクトフェリン純度は95%(0mS
/cm)から98.4%(100mS
/cm)まで増加した(
図2)。透過する構成要素の濃度を
図3に示す。この図は、100mS
/cmにおいて、ラクトフェリンと総タンパク質の量が増加することを示している。純度の増加とフラックスの増加はどちらも、追加の塩化ナトリウムが本プロセスを改良すること、および本プロセスが最適に行われるには、少なくとも40mS
/cmの導電率が必要であることを示唆している。クロマトグラフィープラントから溶出させてUF4に収集されるラクトフェリン溶液は、96mS
/cmになるように意図されているので、80mS
/cm〜100mS
/cmの領域で起こるラクトフェリン純度の最適な増加は、さらなる処理を行わなくても、既存のプロセスと適合している。
【0083】
[実施例2]
塩はラクトフェリンを脱凝集させる
ラクトフェリン(タンパク質の百分率として95%ラクトフェリン)を水に溶解して10mg/mLにした。HPLCにスーパーデックス(Superdex)200 10/300GLカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))を装着し、緩衝液A(トリスHCl(pH7、1g/L))により、0.5mL/分の流量で平衡化した。緩衝液Bは1M塩化ナトリウムを含有するトリスHCl(1g/L)(pH7)であり、注入した試料は100μLであった。緩衝液Bの量は、0分と50分の間は0%とし、50分と90分の間は100%緩衝液Bに増加させ、次に90分から150分までは16%緩衝液Bに増加させた。以後の実験のそれぞれでは、0分から50分までと、90分から150分までの塩を、16%Bずつ増加させた。
【0084】
図4に示すように、ラクトフェリンは約28分の単一主要ピークに溶出し、その後に、それより小さなピーク(ラクトフェリン断片と非ラクトフェリンタンパク質を含むもの)がいくつか続く。0.48M NaClを含有していたクロマトグラフDは、典型的ラクトフェリンプロファイルの一例である。NaClを含有していなかったクロマトグラフAは、小さなラクトフェリンピークと、94分にある大きなピークの存在を示した。94分のピークは、50分に始まる高塩濃度が凝集していたラクトフェリンを解離させてカラムに含まれる樹脂内でのラクトフェリンの移動を可能にするまでは不溶であった、ラクトフェリンである。
【0085】
図4に示す結果は、塩が、95%ラクトフェリン粉末中に存在するタンパク質を解離させて(ただし解離するタンパク質がラクトフェリンであるとは限らない)個々のタンパク質をもたらし、それらが50kDa膜を通過することになることを裏付けている。これらの結果は、解離効果が生じるには0.32Mより高いNaCl濃度が必要であることを示している。
【0086】
この実験を液状試料で繰り返したところ、類似する結果が観察された。
【0087】
[実施例3]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
6つのビバセル250ユニット(ザルトリウス(Sartorius))に50kDa膜を装着した。それぞれに250mLラインまで1mg/mLラクトフェリン溶液を充填した。ただし、塩化ナトリウム濃度はそれぞれで異なっていた(0、1.5、3、4、5または6%NaCl)。セルを3バールまで加圧した。保持液および透過液の試料を収集し、カチオン交換HPLCで分析した。
【0088】
塩濃度を増加させると成長因子(代表例としてRNアーゼを使用)の移行が増加し、保持液中のラクトフェリンの純度が増加することがわかった(
図5および
図6)。
【0089】
[実施例4]
小分子を除去しラクトフェリン純度を増加させるためのラクトフェリンの限外ろ過
限外ろ過プラントに1つの6インチ50kDa膜(シンダー)を装着し、次に、ベースライン圧力が3.2〜3.4バール、膜間差圧が1.2〜1.4バールになるように安定させた。ラクトフェリン溶液(2mg/mL)を各2Lの6ロットに分割した。導電率(0、20、40または60mS
/cm)以外は同一である6つの実験において、2Lのラクトフェリン溶液をUF供給タンクに加え、170Lまで水をつぎ足し、塩化ナトリウム溶液を加えることによって指定の導電率に調節した。保持液は供給タンクに循環させ、透過液を収集した。取り除いた透過液は同じ導電率のダイアフィルトレーション溶液で置き換えた。純度はカチオン交換HPLCで評価した。
【0090】
ラクトフェリン純度は90.9%(0mS
/cm)から93.5%(60mS
/cm)まで増加した(
図7)。これは2.5%の純度増加を表す。ラクトフェリン純度の増加は成長因子(一例としてRNアーゼを使用)の選択的除去によって達成された(
図8)。
【0091】
[実施例5]
ラクトフェリン純度の増加を改善するための、限外ろ過を伴うまたは伴わない、二次カチオン交換クロマトグラフィーの使用
ストマッカーを使ってラクトフェリン粉末(40g、95.2%ラクトフェリン)を水(200mL)に溶解した。試料を収集し、カチオン交換HPLCで分析した。そのラクトフェリン溶液を、SPファストフロー(Fast Flow)樹脂(GEヘルスケア)を充填したカラム(50mmD×1000mmL)に適用した。結合したラクトフェリンを、0%塩化ナトリウムから5.8%(1M)塩化ナトリウムまでにわたる3Lの直線的勾配を使って、樹脂から溶出させた。主要ラクトフェリンピークを収集し、カチオン交換HPLCによって分析した。
【0092】
少量の主要ラクトフェリンピーク(5mL)を遠心式50kDa UFデバイス(ザルトリウス・ステディム(Sartorius Stedim))に入れ、水で初期体積の3倍(15mL)に希釈し、残っているラクトフェリンが1.5mLになるまで遠心し(8,000g×20分)、最後にカチオン交換HPLCで分析した。
【0093】
カチオン交換クロマトグラフィーと50kDa UFの併用により、98%タンパク質という要求純度を上回る98.9%の純度が得られたが、クロマトグラフィーだけ(97.8%)ではこの純度を得ることができなかった(
図9)。カチオン交換クロマトグラフィーにより、ラクトフェリンの純度は2.7%増加し、その後の50kDa UFステップにより、純度はさらに0.9%増加した。有望なことに、既に極めて純粋な物質でさえ、50kDa UFによって純度が増加した。50kDa UF単独でも試験してみる価値があるだろうと思われる。
【0094】
[実施例6]
ラクトフェリンの限外ろ過がラクトフェリン純度を十分に増加させることができるかどうかを決定するための最初の実験
ラクトフェリン粉末(1kg、純度96.3%タンパク質)を100Lの水に溶解した。そのラクトフェリン溶液を、1つのシンダー6.3インチ50kDa膜(BX−5XB−6338)を装着したAPV UFプラントに入れた。ラクトフェリン溶液とUFプラント中に存在する水の体積は合わせて180Lであり、塩化ナトリウムを加えたので導電率は58mS
/cmであった。透過液(100L)を10分で取り出した。水(100L)および塩を加えて121mS
/cmの導電率を得た。透過液(100L)を10分で取り出した。次に、水ダイアフィルトレーション(400Lの透過液)によって、ラクトフェリン保持液の導電率を1300μSに低下させた。次にラクトフェリン保持液を凍結乾燥した(48時間、1ミリバール、40℃)。液状試料はMGCにおいてカチオン交換HPLCで分析し、粉末試料は外部の試験所により、カチオン交換HPLCで分析された(粉末の形態で分析した試料の方が正確であると考えるべきである)。
【0095】
50kDa膜を装着したUFプラント内で十分なダイアフィルトレーションを行えば、ラクトフェリンの純度を約2%(タンパク質ベース)増加させることができる。最終純度の結果は98.1%(タンパク質ベース)であった(
図10)。これは、本プロセスに見込みがあり、さらなる開発に値することを示している。
【0096】
[実施例7]
膜性能に対する膜の分子量カットオフの効果
膜の分子量カットオフ(MWCO)は膜性能に対して最も重要な影響を及ぼす。膜の孔径が増加するに連れて、膜が通過を許すタンパク質は大きくなり(
図11)、フラックスは増加する(
図12)。膜には混合物中の構成要素を分離する能力があるが、それは、1つまたはいくつかの構成要素が膜のMWCOより小さく、かつ1つまたはいくつかの構成要素が膜のMWCOより大きい場合に限る。理想的な分離には、一般に、少なくとも2桁の分子量の差が必要である(すなわち28Daの水および58Daの塩化ナトリウムは78kDaのラクトフェリンからほぼ完全に分離することができる)が、それほど大きなサイズの差異が存在しなくても、ある程度の分離は可能である。目的がラクトフェリン溶液の純度を増加させることであるなら、50kDa膜が利用可能な最善の選択肢であると思われる(
図13)。
【0097】
[実施例8]
限外ろ過膜
UF4
タイプ:スパイラル型ポリエーテルスルホン(PES) MWCO:30kDa
ブランド:シンダー 型番:MK2B−6338
【0098】
UF4として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.カチオン交換カラムから溶出したラクトフェリンを濃縮し、かつ
2.ラクトフェリン溶出塩を、クロマトグラフィープロセスで再利用するために6%塩タンクに再循環した。
【0099】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−塩化ナトリウム(バッチあたり2,000kg)は、ラクトフェリン製造プロセスでは、かなりのコスト(バッチあたり$1,200)であり、塩化ナトリウムを再循環させることができれば、生産コストが劇的に低減する。
−塩化ナトリウムを再循環させることによって環境の損壊が低減される。有機固形物を除去するためのレオンガタ(Leongatha)における3次処理後に、塩化ナトリウム含有流出液は海洋排水口を利用して処分され、生成する廃棄物の量を低減するためにあらゆる手段を講じなければならない。塩再循環プロセスにより、必要な塩の量は80%低減する。これは、環境に放出される塩化ナトリウムの量が、バッチあたり8,000kg低減すること(3分の2がUF4によるもの)を意味する。
【0100】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は、大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスが可能になる。
−PESは本質的に親水性の膜であり、迅速かつ完全に濡れて、優れた流速と高いスループットとを持つ迅速ろ過をもたらす。PES膜はタンパク質結合性も極めて低く、標的タンパク質結合の可能性を最小限にするが、それは、高い収量、安定した膜貫通フラックスおよび一貫した見かけの膜多孔度を意味する。
【0101】
MWCOの理由づけ:
−30kDa膜は、収穫されたラクトフェリンをうまく保持し(膜を通るタンパク質の移行は、存在するタンパク質の0.6%である)、鍵となる夾雑物、特にRNアーゼが膜を通過することを許すことによって、純度を増加させる。
−塩化ナトリウム(58Da)が30kDa膜では保持されないのに対し、ラクトフェリン(80kDa)は保持される。そのため、低い濃度(0.1%タンパク質)でカラムから溶出するラクトフェリンを、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、3%タンパク質まで濃縮することができる。
【0102】
UF5
タイプ:スパイラル型ポリエーテルスルホン(PES) MWCO:5kDa
ブランド:シンダー 型番:MT2B−6338
【0103】
UF5として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.カチオン交換カラムから溶出した非ラクトフェリンタンパク質を濃縮し、かつ
2.クロマトグラフィープロセスで再利用するために、2.5%塩を2.5%塩タンクに再循環した。
【0104】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−塩化ナトリウム(バッチあたり2,000kg)は、ラクトフェリン製造プロセスでは、かなりのコスト(バッチあたり$1,200)であり、塩化ナトリウムを再循環させることができれば、生産コストが劇的に低減する。
−塩化ナトリウムを循環させることによって環境の損壊が低減される。有機固形物を除去するためのレオンガタにおける3次処理後に、塩化ナトリウム含有流出液は海洋排水口を利用して処分され、生成する廃棄物の量を低減するためにあらゆる手段を講じなければならない。塩再循環プロセスにより、必要な塩の量は80%低減する。これは、環境に放出される塩化ナトリウムの量が、バッチあたり8,000kg低減すること(3分の1がUF5によるもの)を意味する。
【0105】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は、大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスが可能になる。
−PESは本質的に親水性の膜であり、迅速かつ完全に濡れて、優れた流速と高いスループットとを持つ迅速ろ過をもたらす。PES膜はタンパク質結合性も極めて低く、標的タンパク質結合の可能性を最小限にするが、それは、高い収量、安定した膜貫通フラックスおよび一貫した見かけの膜多孔度を意味する。
【0106】
MWCOの理由づけ:
−5kDa膜は非ラクトフェリン不純物を保持し、以後のラクトフェリン溶出中にそれらがクロマトグラフィープロセスに戻ってラクトフェリンに混入することを防止する。タンパク質混合物は、さらに小さいタンパク質を数多く含有するので(その多くは成長因子である)、さらに小さな膜が必要である。
−塩化ナトリウム(58Da)が5kDa膜では保持されないのに対し、ラクトペルオキシダーゼ(80kDa)、免疫グロブリン(150〜420kDa)および成長因子(5〜17kDa)は保持される。そのため、低い濃度(0.1%タンパク質)でカラムから溶出するタンパク質を、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、3%タンパク質まで濃縮することができる。
【0107】
MF6
タイプ:セラミックチューブ(アルミナ) MWCO:0.8μm
ブランド:ポール(Pall) 型番:メンブラロックス(Membralox)GP19
【0108】
MF6として知られている精密ろ過プラントを使って
1.ラクトフェリン溶液中に存在する微生物の数を低減し、かつ
2.不溶物を除去した。
【0109】
膜タイプの理由づけ:
−セラミック膜は洗浄剤に対する耐性が高く、微生物の完全な除去を保証するために激しく洗浄することができる。これらは、夾雑物が膜を通過することを許しうる、裂けることがない非常に頑丈な膜でもある。
【0110】
MWCOの理由づけ:
−不溶物の低減(清澄度の増加)および微生物汚染の低減
−本プラントは、タンパク質が妥当な体積および固形物濃度で膜を通過することを可能にするために、0.22μmではなく0.8μmである。主な原材料(脱脂乳)は事前に低温殺菌されているので、フィルターを完全な微生物除去ステップにしようとはしていない。
【0111】
UF7
タイプ:スパイラル型ポリフッ化ビニリデン(PVDF) MWCO:50kDa
ブランド:シンダー 型番: BN4B−6338
【0112】
UF7として知られている限外ろ過プラントを使って、
1.非ラクトフェリンタンパク質を低減することによってラクトフェリン純度を増加させ、かつ
2.塩化ナトリウムおよび残存ラクトースを除去することによってタンパク質を>95%固形分に増加させた。
【0113】
より広いラクトフェリン製造プロセス内でのプロセスの理由づけ:
−フェリチンOB(Ferritin OB)製造向けのラクトフェリンは、標準ラクトフェリンより高いラクトフェリン純度を有する。その高純度は、歴史的に使用されてきた5kDa膜の代わりに50kDa膜を使用することによって得られる(
図14)。
【0114】
膜タイプの理由づけ:
−スパイラル膜は大きな膜面積を得る比較的安価な方法であり、これにより、設置面積の小さなプラントでの高いフラックスと相対的に短いプロセス時間が可能になる。
−親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜は膜貫通フラックスが高く、タンパク質に対するアフィニティが低い。これらの理由から、膜孔を詰まらせるタンパク質はほとんどないので、プロセスの継続期間中はフラックスが高く保たれ、収量が高く保たれる。
【0115】
MWCOの理由づけ:
−50kDa膜は、ラクトフェリンを保持したまま非ラクトフェリンタンパク質(RNアーゼ、成長因子)の移行を改善することができるので、その使用は、これより小さな膜(歴史的には5kDa膜)より好ましい。非ラクトフェリンタンパク質の移行の増加は、ラクトフェリン純度の向上をもたらす(純度の平均増加量は1.8%タンパク質、P<0.001)。さらなる詳細は、「Increasing Lactoferrin Purity by Diafiltration with Salt Solution in an Ultrafiltration Plant Fitted with 50 kDa Membranes」(JR0010)から入手することができる。
−塩化ナトリウム(58Da)が50kDa膜では保持されないのに対し、ラクトフェリン(80kDa)は保持される。そのため、低い濃度(3%タンパク質)でカラムから溶出するラクトフェリンを、相応の塩濃度増加やタンパク質の喪失を伴わずに、>20%タンパク質まで濃縮することができる。
−水を除去することによって総固形分が増加し、それゆえに凍結乾燥器の固形分スループットが最大になる。
【0116】
[実施例9]
50kDa UFによってラクトフェリンの純度を増加させうることを確認するための完全に商業的規模での試行
この変更の有効性の比較が可能になるように、クロマトグラフィープロセスからのバッチを半分に分割した。半分に分けたうちの一方を、5kDa膜を装着したUF7により、塩ダイアフィルトレーションなしで処理し、他方を、50kDa膜を装着したUF7と塩ダイアフィルトレーションとによって処理した。
【0117】
UF7中に存在する5kDa膜を実施例1および実施例6で使用したものと同じシンダー50kDa膜で置き換えることによって、定型的な商業規模プロセスに変更を加えた。塩ダイアフィルトレーションステップも商業的プロセスに追加した。ダイアフィルトレーション溶液に使用した塩は、150kgの塩化ナトリウムを3000kgの水に加えることによって調製した。
【0118】
表1に提示する結果は、50kDa UF膜と追加の塩化ナトリウムダイアフィルトレーションステップとが、ラクトフェリン純度を2.4%(タンパク質ベース)増加させうることを示している。最終ラクトフェリン純度は97.8%(タンパク質ベース)であった。これは98.0%(タンパク質ベース)という目標純度に近い。タンパク質の組成は、その他の点では類似していたことから、本プロセスに負の効果はないことが示唆される。
【表1】
【0119】
要約すると、商業的規模の試行により、元となるUF4溶液より純度が1.1%高い98.0%(タンパク質ベース)のラクトフェリン純度を有する粉末が生産された。本プロセスは、ここでも、完全に商業的な規模でうまく機能することが示された。
【0120】
50kDa膜を装着したUFプラントにおける塩溶液によるラクトフェリン溶液のダイアフィルトレーションは、ラクトフェリンの純度を、首尾よく1%〜2.4%(タンパク質ベース)増加させることがわかった。これにより、98%(タンパク質ベース)のラクトフェリン純度を有する製品を生産することができる。このプロセスが最適なレベルで機能するには、5%〜6%の塩化ナトリウム濃度が必要であると思われるが、カチオン交換カラムからラクトフェリンを溶出させるために6%塩化ナトリウムが使用されるので、これは好都合である。