特許第6475178号(P6475178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475178
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】電気駆動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20190218BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B60L3/00 N
   B60L9/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-47435(P2016-47435)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-163751(P2017-163751A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】龍澤 直樹
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−239268(JP,A)
【文献】 特開2012−244708(JP,A)
【文献】 特開2014−33340(JP,A)
【文献】 特開2010−178399(JP,A)
【文献】 特開2012−208095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00−5/42,9/00−9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側のトロリー線とグランド側のトロリー線とにより電気的な閉回路が形成された給電設備から電力を受けて走行する電気駆動車両であって、
前記高圧側のトロリー線と接触する第1のすり板と、
前記グランド側のトロリー線と接触する第2のすり板と、
前記第2のすり板の下方に設置され、前記第2のすり板の全体と前記第2のすり板の周囲にある前記グランド側のトロリー線の一部とを撮影範囲とするカメラと、
運転を支援する情報を表示するモニタと、
前記モニタの表示を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記カメラで撮影した画像データを入力として、前記グランド側のトロリー線と前記第2のすり板の基準位置との相対距離を演算する相対距離演算部と、
前記電気駆動車両を示す第1のシンボル画像の上に、前記相対距離演算部にて演算された前記相対距離を反映した前記グランド側のトロリー線と前記第2のすり板を示す第2のシンボル画像を合成して俯瞰画像データを生成すると共に、当該俯瞰画像データを前記モニタに出力する俯瞰画像データ生成部であり、所定の操作を受けて、前記第1のシンボル画像の表示サイズをそのままとして、当該第1のシンボル画像の上に、拡大した前記第2のシンボル画像を合成して前記俯瞰画像データを生成する俯瞰画像データ生成部と、を有することを特徴とする電気駆動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記第1のシンボル画像は、前記電気駆動車両の少なくとも車幅全体を示す画像であることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項3】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記俯瞰画像データ生成部は、所定の操作を受けて、拡大した前記第2のシンボル画像を縮小し、前記第1のシンボル画像の上に、当該縮小した前記第2のシンボル画像を合成して前記俯瞰画像データを生成することを特徴とする電気駆動車両。
【請求項4】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記コントローラは、
前記第2のすり板の画像パターンを複数記憶する画像パターン記憶部を有し、
前記相対距離演算部は、前記カメラで撮影した画像データと前記画像パターン記憶部に記憶されている前記複数の画像パターンのそれぞれとのマッチング処理を行い、
前記マッチング処理の結果、前記カメラで撮影した画像データと最もマッチ度の高い前記画像パターンを用いて前記相対距離を演算することを特徴とする電気駆動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉱山等においてトロリー線から電力を受けて走行する電気駆動車両に関し、特に、電気駆動車両の運転を支援するための情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トロリー線が設置された鉱山において電気駆動によりダンプトラックを走行させる場合、ダンプトラックに昇降可能に設けられた集電装置のすり板がトロリー線から外れないようにダンプトラックを運転することが求められる。すり板がトロリー線から外れないようにすり板の上下方向における位置を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、「集電部を下方からカメラで撮影し、カメラで取得された画像を解析することにより集電部とトロリー線の位置関係を算出し、その算出結果に基づいて集電部を上昇または降下させる構成」が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−94952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、路面が舗装された市街地を走行するトロリーバスを前提としており、トロリーバスがトロリー線から左右方向に外れる状況は起こりにくい。そのため、すり板の上下方向の位置を調整することができれば十分である。しかし、鉱山では路面の状態が必ずしも良好とは言えず、運転手はダンプトラックがトロリー線から左右方向に外れないようにするために、前方の状況を目視するだけでなく、前方上方のトロリー線とダンプトラックとの左右方向の相対位置についても目視確認しながらハンドル操作を行う必要があり、運転手の負担は大きい。
【0005】
そこで、運転手への負担を軽減するために、例えば特許文献1で記載されているカメラで取得したすり板とトロリー線の画像をモニタに表示することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、すり板とトロリー線とを下方からカメラで撮影しているため、撮影した画像をそのままモニタに表示したのでは運転手がトロリー線と車両本体との位置関係を把握しにくいといった課題がある。
【0006】
また、特許文献1では、2本のトロリー線で閉回路を構成しているため、一方のトロリー線が高圧側、他方のトロリー線がグランド側である。この構成では、高圧側のトロリー線からのノイズの影響を受けて、カメラの画像精度が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば鉱山等においてトロリー線から電力を受けて走行する電気駆動車両において、運転を支援するための情報を分かり易く、かつ、正確に表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、高圧側のトロリー線とグランド側のトロリー線とにより電気的な閉回路が形成された給電設備から電力を受けて走行する電気駆動車両であって、前記高圧側のトロリー線と接触する第1のすり板と、前記グランド側のトロリー線と接触する第2のすり板と、前記第2のすり板の下方に設置され、前記第2のすり板の全体と前記第2のすり板の周囲にある前記グランド側のトロリー線の一部とを撮影範囲とするカメラと、運転を支援する情報を表示するモニタと、前記モニタの表示を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記カメラで撮影した画像データを入力として、前記グランド側のトロリー線と前記第2のすり板の基準位置との相対距離を演算する相対距離演算部と、前記電気駆動車両を示す第1のシンボル画像の上に、前記相対距離演算部にて演算された前記相対距離を反映した前記グランド側のトロリー線と前記第2のすり板を示す第2のシンボル画像を合成して俯瞰画像データを生成すると共に、当該俯瞰画像データを前記モニタに出力する俯瞰画像データ生成部であり、所定の操作を受けて、前記第1のシンボル画像の表示サイズをそのままとして、当該第1のシンボル画像の上に、拡大した前記第2のシンボル画像を合成して前記俯瞰画像データを生成する俯瞰画像データ生成部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トロリー線から電力を受けて走行する電気駆動車両の運転手に対して、運転を支援するための情報を分かり易く、かつ、正確に表示することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉱山の全体構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
図3図2に示すダンプトラックの正面図である。
図4図2に示すダンプトラックの内部構成を示す図である。
図5図2に示すダンプトラックの運転室の内部を示す斜視図である。
図6】モニタの表示を制御するコントローラのブロック図である。
図7】カメラの撮影範囲を示す図である。
図8】カメラで撮影された画像領域abcdの画像情報を示す図である。
図9】パターンマッチング処理の手順を示すフローチャートである。
図10】モニタに表示する俯瞰画像の具体例を示す図である。
図11】俯瞰画像のうち右すり板の部分を拡大表示した例を示す図である。
図12】俯瞰画像のうち右すり板の部分を拡大表示した例を示す図である。
図13】俯瞰画像のうち右すり板の部分を拡大表示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る電気駆動車両の代表例であるダンプトラックが走行する鉱山の全体構成を示す図である。図1に示すように、発電所60は変電所61に交流電力を供給し、変電所61は供給された交流電力をトランスで降圧し、整流器で整流してトロリー線17に直流電力を供給する。各ダンプトラック1は、車両本体3に取り付けられた集電装置4L,4Rを介してトロリー線17から受電し、その電力で駆動装置であるモータ、インバータを駆動して、車両本体3に設けられた車輪(後輪)7L,7Rを回転させる。こうして、ダンプトラック1は鉱山の坂道を走行する。なお、図1において符号62は柱である。
【0012】
次に、ダンプトラック1の全体構成について説明する。図2は本発明の実施形態に係るダンプトラックの側面図、図3はダンプトラックの正面図、図4はダンプトラックの内部構成図である。ダンプトラック1は、前輪および後輪7L,7Rが設けられた車両本体3と、車両本体3の後方に設けられ、土砂等を積載するための荷台(ベッセル)9と、車両本体3の前方左側に設けられた運転室2と、集電装置4L,4R等を備えて構成される。
【0013】
集電装置4Lは、高圧側のトロリー線17Lに下方から接触する左すり板5L(第1のすり板)と、左すり板5Lを昇降可能に支持する枠体6Lとを備える。同様に、集電装置4Rは、グランド側のトロリー線17Rに下方から接触する右すり板5R(第2のすり板)と、右すり板5Rを昇降可能に支持する枠体6Rとを備える。なお、左すり板5Lと右すり板5Rとは絶縁体を介して連結している。
【0014】
また図4に示すように、ダンプトラック1は、車両本体3に、ディーゼルエンジン(ENG)41と、発電機(G)42と、整流器43と、インバータ44,45と、電動機(M)46,47と、減速ギア48,49と、車輪7L,7Rと、チョッパ52と、回生用抵抗器53と、集電装置4L,4Rと、電磁接触器56と、リアクトル57と設けて構成されている。
【0015】
本実施形態に係るダンプトラック1は、ディーゼルモードとトロリーモードの2つの走行モードで走行することができる。ディーゼルモードでは、ディーゼルエンジン41が発電機42を駆動し、発電機42は三相交流電力を出力する。整流器43は発電機42の出力する三相交流電力を整流して直流電力に変換して、インバータ44およびインバータ45に直流電力を供給する。
【0016】
インバータ44は整流器43から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機46に供給することで電動機46を駆動する。インバータ45は整流器43から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機47に供給することで電動機47を駆動する。電動機46は減速ギア48を介して車輪7Lに接続されており、電動機46がインバータ44に駆動されることで車輪7Lが回転する。電動機47は減速ギア49を介して車輪7Rに接続されており、電動機47がインバータ45に駆動されることで車輪7Rが回転する。
【0017】
次に、トロリーモードで走行する時の動作を説明する。高圧側のトロリー線17Lは集電装置4L、電磁接触器56、リアクトル57を介してインバータ44およびインバータ45の直流回路に接続される。電磁接触器56をONすることでトロリー線17L側からインバータ44およびインバータ45に直流電力が供給される。インバータ44およびインバータ45は集電装置4Rを介してグランド側のトロリー線17Rと接続される。これにより、2つのトロリー線17L,17Rにより電気的に閉回路が形成されている。
【0018】
インバータ44はトロリー線17L側から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機46に供給することで電動機46を駆動する。インバータ45はトロリー線17L側から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機47に供給することで電動機47を駆動する。ディーゼルモードと同様に、電動機46がインバータ44に駆動され、電動機47がインバータ45に駆動されることで車輪7Lおよび車輪7Rが回転する。
【0019】
以上のように、ディーゼルモードにおいてはディーゼルエンジン41で発電機42を駆動し、その発電機42が発電する電力を用いて電動機46,47を駆動することでダンプトラック1は走行し、トロリーモードにおいてはトロリー線17から供給される電力を用いて電動機46,47を駆動することでダンプトラック1は走行する。
【0020】
さらに、本実施形態に係るダンプトラック1では、車両本体3の前方にカメラ8を設けている。カメラ8は、グランド側のトロリー線17Rと接触する右すり板5Rの全体とその周囲にあるトロリー線17Rの一部とを下方から撮影することができる位置に設置されている。すなわち、カメラ8の撮影範囲は右すり板5R全体を含む四角形abcdの範囲である(図7参照)。ここで、左すり板5Lではなく右すり板5Rをカメラ8で撮影するようにしたのは、左すり板5Lは高圧側のトロリー線17Lと接触しているため、カメラ8で撮影する画像の精度がノイズの影響により悪くなる可能性があるからである。なお、カメラ8は、トロリーモードに切り替わると自動的に電源がONとなって撮影を開始するよう設定されている。
【0021】
次に、ダンプトラック1の運転室2の内部について説明する。図5はダンプトラック1の運転室2の内部を示す斜視図である。図5に示すように、運転室2には、ダンプトラック1の操舵操作を行うハンドル21、計器類などを表示するコンソール22、運転を支援するための情報を表示するモニタ24等が備えられている。モニタ24は、運転手の目線に合う高さ位置でピラー23に取り付けられており、以下に説明するように、トロリーモード中にダンプトラック1の右すり板5Rとトロリー線17Rとの相対位置を示す俯瞰画像が表示される。
【0022】
図6は、モニタ24の表示制御を行うコントローラ30のブロック図である。コントローラ30は、右すり板5Rの幅寸法データが記憶されたすり板寸法記憶部31と、右すり板5Rの画像パターンが複数記憶されたすり板画像記憶部(画像パターン記憶部)32と、右すり板5Rの中心(基準位置)とトロリー線17Rとの相対距離を演算する画像演算部33と、ダンプトラック1のシンボル画像上の車幅のピクセル数が記憶されたシンボル寸法記憶部34と、俯瞰画像の生成に用いる各種シンボル画像のデータが記憶されたシンボル画像記憶部35と、モニタ24に表示する俯瞰画像データを生成する合成俯瞰画像生成部36と、を有している。
【0023】
画像演算部(相対距離演算部)33による右すり板5Rとトロリー線17Rとの相対距離D_mの算出方法について図7および図8を用いて説明する。図7はカメラの撮影範囲を示す図、図8はカメラで撮影された画像領域abcdの画像情報を示す図である。
【0024】
画像演算部33は、カメラ8が撮影している画像領域abcd(図7)の画像データを入力する。そして、図8に示すように、画像演算部33は、直線検出により画像領域abcdの中の直線L1−L2(トロリー線17R)を得る。また、画像演算部33は、すり板画像記憶部32から入力される右すり板5Rの画像パターンを用いて、パターンマッチング手法により画像領域abcdの中の右すり板5Rに相当する領域efghを検出する。
【0025】
画像演算部33は、右すり板5Rの領域efghのうち車両本体3の前方側の辺e−hと直線L1−L2の交点pと、辺e−hの中点iとの間の取り込み画像上の相対距離ピクセル数D_p_iを演算する。画像演算部33は、相対距離D_mを求めるために、すり板寸法記憶部31に記憶されている右すり板5Rの幅寸法データB_mを入力する。そして、画像演算部33は、取り込み画像上の相対距離ピクセル数D_p_iに右すり板5Rの幅寸法データB_mを乗算し、右すり板5R(辺e−h)の画像上のピクセル数B_pで除算する。すなわち、D_m=D_p_i×B_m÷B_pの式により、画像演算部33は相対距離D_mを演算する。そして、画像演算部33は、演算した相対距離D_mを合成俯瞰画像生成部36に出力する。
【0026】
ここで、鉱山に設置されているトロリー線はたるみが大きいため、右すり板5Rはトロリー線17Rと常に接触するために上下方向に大きく移動する。一方、カメラ8の位置は固定されている。そのため、画像領域abcdの中における右すり板5Rの領域efghの大きさは、右すり板5Rの上下方向の位置に応じて異なる(拡大または縮小する)。そこで、本実施形態では、すり板画像記憶部32に右すり板5Rの異なる画像パターンを複数記憶しておき、画像演算部33は、異なる画像パターンの中からパターンマッチング処理を行って、最もマッチ度の高い画像パターンの画像上のピクセル数B_pを用いて相対距離D_mの演算を行っている。
【0027】
このパターンマッチング処理の手順について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。画像演算部33は、カメラ8で撮影した画像データを取得する(S1)。次いで、画像演算部33は、すり板画像記憶部32に記憶されている右すり板5Rの画像パターン1,2,3を読み込む(S2)。次いで、画像演算部33は、右すり板5Rの画像パターン1,2,3の各々とカメラ8で撮影した画像データとの間でマッチング処理を行い、各画像パターン1,2,3とのマッチ度を図示しないRAMに保存する(S3)。次いで、画像演算部33は、最もマッチ度が高いすり板の画像パターンにおける右すり板5Rの辺e−hの画像上のピクセル数B_pを用いて相対距離D_mを演算する(S4)。
【0028】
このようなマッチング処理を行うことで、鉱山のようにトロリー線17がたるんだ状態ですり板5L,5Rの高さ位置が大きく変動する場合であっても、正確に相対距離D_mを演算することができる。勿論、右すり板5Rの上下方向の移動量が大きくない場合には、すり板画像記憶部32に記憶する画像パターンは代表的な1つのパターンであっても良い。
【0029】
次に、図10に示す俯瞰画像の具体例を参照しながら、合成俯瞰画像生成部36による俯瞰画像の生成処理について説明する。合成俯瞰画像生成部36は、ダンプトラック1の全体を示す第1のシンボル画像70の車幅に相当するピクセル数S_pがシンボル寸法記憶部34から入力される。合成俯瞰画像生成部36は、俯瞰画像上におけるトロリー線Tと右すり板の中心Uとの相対距離ピクセル数D_p_oを求めるため、画像演算部33から入力された相対距離D_mに第1のシンボル画像上の車幅に相当するピクセル数S_pを乗算し、ダンプトラック1の幅寸法S_m(図3参照)で除算する。すなわち、D_p_o=D_m×S_p÷S_mの式により、合成俯瞰画像生成部36は相対距離ピクセル数D_p_oを演算する。
【0030】
そして、右すり板5Rのシンボル画像の中心Uから相対距離ピクセル数D_p_oだけ離れた位置にトロリー線17Rを模した直線Tを描いて構成される第2のシンボル画像71を、第1のシンボル画像70上に合成する。こうして、ダンプトラック1の右すり板5Rとトロリー線17Rとの位置関係を示す俯瞰画像が生成される。合成俯瞰画像生成部36にて生成された俯瞰画像データはモニタ24に出力され、図10に示すような俯瞰画像がモニタ24に表示される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、トロリー線17Rが右すり板5R上を左右方向に移動すると右すり板5Rとトロリー線17Rとの相対距離D_mが変化するため、モニタ24に表示されるトロリー線17Rの位置を示す直線Tが右すり板5Rに対して左右方向に移動する。この際、モニタ24に表示される情報は、ダンプトラック1全体とトロリー線17Rとを上方から俯瞰したシンボル画像であるため、運転手はダンプトラック1とトロリー線17Rとの位置関係を容易に把握することができる。よって、トロリーモードで走行している間の運転手への操作負担を軽減することができる。
【0032】
また、グランド側のトロリー線17Rと右すり板5Rとをカメラ8で撮影する構成としているため、ノイズの影響が少ない。よって、高圧側のトロリー線17Lと左すり板5Lとをカメラ8で撮影する場合と比べて相対距離D_mを精度良く演算することができる。その結果、より正確な俯瞰画像を生成することができる。つまり、本実施形態によれば、ダンプトラックとトロリー線との位置関係の情報が正確である(信頼性が高い)。
【0033】
ここで、本実施形態では、ダンプトラック1全体を示す第1のシンボル画像70はそのままで、右すり板5Rとトロリー線17Rを示す第2のシンボル画像71を拡大して表示することができる構成となっている。例えば、モニタ24の図示しない操作ボタンを操作することにより、第2のシンボル画像71の拡大/縮小表示が可能となっている。
【0034】
俯瞰画像の拡大表示の具体例を図11図13に示す。図11は、右すり板5Rと直線Tを示す第2のシンボル画像71aをダンプトラック1の車幅に相当する大きさに拡大した図である。図11に示すように、拡大表示に伴って中心Uと直線Tとの間の距離がD_p_o_2に拡大される。図12は、右すり板5Rと直線Tを示す第2のシンボル画像71bをダンプトラック1の車幅の2倍程度の大きさに拡大した図である。図12に示すように、拡大表示に伴って中心Uと直線Tとの間の距離がD_p_o_3に拡大される。図13は、右すり板5Rと直線Tを示す第2のシンボル画像71cをダンプトラック1の車幅の3倍程度の大きさに拡大した図である。図13に示すように、拡大表示に伴って中心Uと直線Tとの間の距離がD_p_o_4に拡大される。このように、本実施形態によれば、運転手の好みに応じて右すり板5Rの部分のシンボル画像を拡大表示することで、トロリー線(直線T)と右すり板5Rとの位置関係をより一層把握し易くなる。
【0035】
なお、上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。例えば、モニタ24に右すり板5Rの部分のシンボル画像を拡大・縮小表示させる機能は必ずしも搭載しなくても良い。また、ダンプトラック1の全体を示す第1のシンボル画像70をモニタ24に表示する例を挙げたが、トロリー線17Rと右すり板5Rとの相対距離をダンプトラック1の車幅との関係で容易に把握するためには、少なくともダンプトラック1の前方の車幅全体を示すシンボル画像であれば良い。例えば、ダンプトラック1の前半分の俯瞰画像をモニタ24に表示する構成としても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 ダンプトラック(電気駆動車両)
3 車両本体
4L,4R 集電装置
5L 左すり板(第1のすり板)
5R 右すり板(第2のすり板)
6L,6R 枠体
8 カメラ
17L 高圧側のトロリー線
17R グランド側のトロリー線
24 モニタ
30 コントローラ
31 すり板寸法記憶部
32 すり板画像記憶部(画像パターン記憶部)
33 画像演算部(相対距離演算部)
34 シンボル寸法記憶部
35 シンボル画像記憶部
36 合成俯瞰画像生成部(俯瞰画像データ生成部)
70 第1のシンボル画像
71,71a,71b,71c 第2のシンボル画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13