(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒形状のガイド部と、前記ガイド部の軸線に沿って移動して流体の流れを制御する弁を備えた移動部材と、前記移動部材に設けられるとともに前記ガイド部内に嵌合されたシール部と、を備え、前記ガイド部内における前記シール部の軸線方向の両側の空間の前記流体の差圧を前記移動部材に作用させる弁装置において、
前記シール部が、前記ガイド部の内周面に摺接するリム部と前記移動部材により保持される基部とからなるLパッキンと、前記Lパッキンの内側に配設されて前記リム部を前記ガイド部の内周面側に押圧する板ばねと、を備え、
前記板ばねは、前記移動部材に保持される基板部と、前記基板部の外周に放射状に形成されて前記Lパッキンの前記リム部を内側から押圧する複数枚の羽根部とから構成されるとともに、前記羽根部と前記基板部との境界の部分の第1曲げ部と、前記第1曲げ部より外側で前記リム部に当接する第2曲げ部とを有し、
前記羽根部が12枚乃至20枚であり、かつ、前記羽根部の幅が前記羽根部の間の隙間部の幅より大きく、n枚の前記羽根部の前記第2曲げ部の端点がなす2n角形の頂点により前記Lパッキンの前記リム部を押圧している
ことを特徴とする弁装置。
前記移動部材が、弁体と連結部とから構成され、前記Lパッキンの前記基部及び前記板ばねの前記基板部が、前記弁体と前記連結部とにより挟まれて、前記シール部が前記移動部材に挟持されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の弁装置は、いずれも円筒状のガイド部内で、弁を備えた移動部材を移動させるもので、かつ、移動部材に設けたシール部の両側の空間の流体の差圧を移動部材に作用させる構造である。そして、シール部が、ガイド部の内周面に摺接するものである。したがって、このような弁装置では、シール部におけるシール性を確保するとともに、ガイド部に対するシール部の摺動抵抗を移動部材の作動に支障のない程度にする必要がある。
【0008】
なお、特許文献2には、放射状に拡がった凸歯形状部を有する板バネが開示され、この凸歯形状部の弾性力によりパッキンのリム部をガイド孔の内周面に押圧するようにしている。しかしながら、この特許文献2における板バネの凸歯形状部の幅は、この凸歯形状部の間の隙間の幅より小さいため、パッキンのリム部に十分な弾性力を加えることが困難であり、シール性という点で改良の余地がある。また、板バネの押圧力が強すぎるとガイド孔に対するパッキンの摺動抵抗が大きくなって作動しなくなる虞がある。
【0009】
本発明は、ガイド部に沿って移動して流体の流れを制御する弁を備えた移動部材と、移動部材に設けられてガイド部内に嵌合されたシール部とを備えた弁装置において、ガイド部に対する、シール部のシール性と、摺動抵抗を最適化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の弁装置は、円筒形状のガイド部と、前記ガイド部の軸線に沿って移動して流体の流れを制御する弁を備えた移動部材と、前記移動部材に設けられるとともに前記ガイド部内に嵌合されたシール部と、を備え、前記ガイド部内における前記シール部の軸線方向の両側の空間の前記流体の差圧を前記移動部材に作用させる弁装置において、前記シール部が、前記ガイド部の内周面に摺接するリム部と前記移動部材により保持される基部とからなるLパッキンと、前記Lパッキンの内側に配設されて前記リム部を前記ガイド
部の内周面側に押圧する板ばねと、を備え、前記板ばねは、前記移動部材に保持される基板部と、前記基板部の外周に放射状に形成されて前記Lパッキンの前記リム部を内側から押圧する複数枚の羽根部とから構成されるとともに、前記羽根部と前記基板部との境界の部分の第1曲げ部と、前記第1曲げ部より外側で前記リム部に当接する第2曲げ部とを有し、前記羽根部が12枚乃至20枚であり、かつ、前記羽根部の幅が前記羽根部の間の隙間部の幅より大きく、n枚の前記羽根部の前記第2曲げ部の端点がなす2n角形の頂点により前記Lパッキンの前記リム部を押圧していることを特徴とする。
【0011】
請求項2の弁装置は、請求項1に記載の弁装置であって、前記隙間部の幅[α′]と前記羽根部の幅[β]とが、
α′≦β≦2.1・α′
の関係にあることを特徴とする。
【0012】
請求項3の弁装置は、請求項1または2に記載の弁装置であって、前記第1曲げ部が前記羽根部の側部の直線部に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の弁装置は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弁装置であって、前記羽根部の付け根の間の前記隙間部の低部が円弧部となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の弁装置は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弁装置であって、前記羽根部の枚数が奇数枚であることを特徴とする。
【0015】
請求項6の弁装置は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弁装置であって、前記移動部材が、弁体と連結部とから構成され、前記Lパッキンの前記基部及び前記板ばねの前記基板部が、前記弁体と前記連結部とにより挟まれて、前記シール部が前記移動部材に挟持されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7の弁装置は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弁装置であって、前記シール部が、一対の前記板ばねと、一対の前記Lパッキンと、前記一対のLパッキンの間に介在される補強板とを備え、前記一対のLパッキンは、一対の前記リム部が前記軸線方向の互いに外側に向けて配置されるとともに、一対の前記基部により前記補強板を挟むようにして、前記シール部が前記移動部材に挟持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1または2の弁装置によれば、板ばねはn枚の羽根部により2n角形の頂点でLパッキンのリム部を押圧している。第2曲げ部の各端点は、Lパッキンのリム部の内面に対して、円周上の略均等に位置する押圧点となるとともに、羽根部の幅が隙間部の幅より大きくなり、かつ、羽根部の枚数が12枚乃至20枚であるので、羽根部の幅[β]を確保して、リム部に対して十分な押圧力を得ることができ、シール性を確保できる。
【0018】
請求項3の弁装置によれば、請求項1または2の効果に加えて、シール部の摺動時にLパッキンから抗力を受けても羽根部にねじり等の応力がかからず、繰り返し摺動しても耐久性を維持できる。
【0019】
請求項4の弁装置によれば、請求項1乃至3のいずれか一項の効果に加えて、隙間部の低部が円弧部となっているので、この隙間部から亀裂等が生じることもなく、板ばねの強度を確保することができる。
【0020】
請求項5の弁装置によれば、請求項1乃至4のいずれか一項の効果に加えて、羽根部の枚数が奇数枚であるので、羽根部が当接する位置と当接しない位置とが軸線に対して対称にならない3点支持構造となり、ガイド部内でシール部が傾き難く、均一にシールすることができる。
【0021】
請求項6の弁装置によれば、請求項1乃至5のいずれか一項の効果に加えて、シール部が弁体と連結部とにより挟持されているので、移動部材に対して、シール部を簡単な構造で保持することができる。
【0022】
請求項7の弁装置によれば、請求項1乃至6のいずれか一項の効果に加えて、シール部の一対のLパッキンにより、ガイド部の内周面と弁部材の外周面との間を確実にシールすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の弁装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の弁装置としての電動弁の弁閉状態の縦断面図、
図2は
図1の要部拡大図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。この実施形態の電動弁は、略円筒形状の弁ハウジング1を有しており、弁ハウジング1には弁室1Aが形成されている。また、弁ハウジング1には、側面から弁室1Aに連通する継手管11が取り付けられるとともに、下端部に弁座部材13が取り付けられている。弁座部材13の中央には円形の弁ポート13aが形成されるとともに、弁ポート13aの開口周囲にすり鉢状の着座面13bが形成されている。また、弁座部材13には弁ポート13aに連通するように弁室1Aの軸線X方向に継手管12が取り付けられている。
【0025】
弁室1A内には、弁ハウジング1の上端から内挿された中空多段円筒状の弁ガイド部材2が配設されている。この弁ガイド部材2は、軸線Xを中心軸として、弁ポート13a側に位置する小径で円筒形状のガイド部21と、ガイド部21より径の大きな中径円筒部22と、弁ハウジング1の上端に嵌め込まれた大径の取付け部23とが、一体に形成されたものである。ガイド部21内には「移動部材」としてのピストン状の弁部材3が軸線X方向に移動可能に配設されている。そして、弁部材3の一部が弁ガイド部材2内に収容されることにより、弁ガイド部材2の内空間が区画され、弁ガイド部材2内に弁部材3に対する背圧室2Aが形成されている。
【0026】
弁部材3は、全体として略円柱形状に形成されており、この弁部材3は、略円柱状の「弁」としての弁体3Aと後述のステッピングモータ7に連結する連結部3Bとを有している。弁体3Aは、着座面13bと対向する円柱形状の円柱部31と、円柱部31より径の小さなボス部32とを有している。そして、この弁体3Aには、その中央に連結穴3aが形成されている。連結部3Bは、弁体3Aの連結穴3aに嵌合する連結軸33と、ボス部32と同径で略円柱形状をしたボス部34とを有している。そして、弁体3Aと連結部3Bとは、ボス部32とボス部34との間に後述のシール部4を挟み込んだ状態で、固着されている。すなわち、弁体3Aの連結穴3a内に連結部3Bの連結軸33が嵌合され、連結軸33の下端部と円柱部31の下端部において溶接することにより、互いに固着されている。また、連結部3Bには、連結軸33の中央に弁ポート13a側から上方に延びる均圧路3bと、この縦の均圧路3bに連なって背圧室2Aに開口する均圧路3cとを有している。そして、この均圧路3b,3cは、弁ポート13aと背圧室2Aとを導通している。
【0027】
弁ガイド部材2の上部にはフランジ金具51によって支持部材5が固着されており、この支持部材5には軸線X方向に挿通孔52が形成されるとともに、挿通孔52と後述のケース72内とを導通する導通孔53が形成されている。挿通孔52には円筒状の弁ホルダ6が軸線X方向に移動可能に挿通され、この弁ホルダ6の下端部に弁部材3が固着されている。また、弁ホルダ6は、後述するステッピングモータ7のロータ軸71に係合している。すなわち、ロータ軸71の下端部のフランジ部71aが弁ホルダ6の上端の保持部61と共にワッシャ62を挟み込み、ロータ軸71の下端部に弁ホルダ6が回転可能に係合されている。これにより、弁ホルダ6及び弁部材3がロータ軸71によって回転可能に吊り下げた状態で支持されている。なお、弁ホルダ6内には、バネ受け63と連結部3Bのボス部34との間に圧縮コイルバネ64が配設されている。ロータ軸71には雄ねじ部71bが形成されており、この雄ねじ部71bは支持部材5に形成された雌ねじ部5aに螺合されている。これにより、ロータ軸71は回転に伴って軸線X方向に移動する。
【0028】
弁ハウジング1の上部には、ステッピングモータ7が取り付けられている。ステッピングモータ7は、前記ロータ軸71、ケース72、マグネットロータ73、ステータコイル74で構成されている。ケース72内には、外周部を多極に着磁されたマグネットロータ73が回転可能に設けられ、このマグネットロータ73にはロータ軸71が固着されている。なお、ケース72の天井部にはマグネットロータ73の突起73aに連動してマグネットロータ73の回転を規制する回転ストッパ機構8が設けられている。また、ケース72の外周には、ステータコイル74が配設されており、ステッピングモータ7は、ステータコイル74にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ73を回転させる。
【0029】
以上の構成により、ステッピングモータ7の駆動により、マグネットロータ73及びロータ軸71が回転し、ロータ軸71の雄ねじ部71bと支持部材5の雌ねじ部5aとのネジ送り機構により、ロータ軸71が軸線X方向に移動する。これにより、弁部材3が軸線X方向に移動し、弁部材3は弁ガイド部材2のガイド部21にガイドされて、この弁部材3が着座面13bに対して離座/着座する。これにより、弁ポート13aが開閉される。そして、弁部材3の軸線X方向の位置(リフト量)に応じて弁ポート13aの開度が制御され、弁ポート13aを流れる流体の流量が制御される。このように、弁部材3がガイド部21にガイドされるとき、シール部4はガイド部21のガイド面21aに沿って摺動する。
【0030】
この実施形態の電動弁は、流体(冷媒)が継手管11から流入して継手管12から流出する第1の流れ(
図1の実線の矢印の流れ)と、流体が継手管12から流入して継手管11から流出する第2の流れ(
図1の破線の矢印の流れ)との、2通りの流れの制御に用いられる。継手管11に連通する弁室1Aの圧力は、弁部材3の円柱部31とガイド部21とのクリアランスを介してガイド部21内のシール部4の下方の空間に導入される。また、継手管12に連通する弁ポート13aの圧力は、弁部材3の均圧路3b,3cを介して背圧室2A(シール部4の上方の空間)に導入される。シール部4は、このシール部4の下方の空間と背圧室2Aとの間をシールしている。
【0031】
そして、第1の流れのときは、弁ポート13aの低圧が均圧路3b,3cを介して背圧室2Aに導入される。また、第2の流れのときは、弁ポート13a側の高圧が均圧路3b,3cを介して背圧室2Aに導入される。したがって、弁部材3に対して弁ポート13aと背圧室2Aとの両側から同じ圧力が作用する。これにより、流体の高圧と低圧との差圧による力は弁部材3に対して軸線X方向で相殺され、圧力バランスが保たれる。
【0032】
このように、実施形態の電動弁は、円筒形状のガイド部21と、ガイド部21の軸線Xに沿って移動する弁部材3(移動部材)と、弁部材3に設けられるとともにガイド部21内に嵌合されたシール部4とを備えている。また、弁部材3が備えている円柱部31(弁)は、弁ポート13aの開度を制御することで流体の流量、すなわち、流体の流れを制御している。そして、この電動弁は、ガイド部21内におけるシール部4の軸線X方向の両側の空間の流体の差圧を弁部材3に作用させる弁装置である。
【0033】
図2に示すように、シール部4は、薄手の金属板からなる一対の第1実施例の板ばね41,41と、フッ素樹脂、例えばPTFE、PFA製の一対のLパッキン45,45と、金属板からなる円環状の補強板46とで構成されている。そして、Lパッキン45,45の間に補強板46を挟み込んで、Lパッキン45,45の内側に板ばね41,41が嵌め込まれている。また、板ばね41、Lパッキン45、補強板46は、それぞれ中央に開口を有しており、その開口に連結部3Bの連結軸33が貫通され、弁部材3の弁体3A側のボス部32と連結部3B側のボス部34とで、板ばね41,41を押さえ付けるようにして、シール部4が弁部材3に取り付けられている。
【0034】
Lパッキン45は、切削加工により形成されており、円環状の基部45aと、基部45aの外周からこの基部45aと略直角となる方向(軸線X方向)に立設されたリム部45bとで構成されている。リム部45bはガイド部21のガイド面21aに押圧されて摺接する部分であり、このシール部4とガイド面21aとの間をシールする。基部45aは板ばね41と補強板46(及びボス部32またはボス部34)によって挟み込まれる部分である。
【0035】
板ばね41は、SUS等の金属板のプレス加工により形成されており、略円環状の基板部41aと、基板部41aの外周からこの基板部41aと略直角となる方向(軸線X方向)に立設された羽根部41bとで構成されている。羽根部41bはLパッキン45のリム部45bを内側から押圧する部分である。基板部41aはLパッキン45の基部45aとボス部32またはボス部34によって挟み込まれる部分である。
【0036】
図3は第1実施例の板ばね41の展開状態の平面図、
図4は第1実施例の板ばね41とLパッキン45の組み付け状態を示す平面図及び一部断面図であり、
図4(B)は
図4(A)におけるA−A断面である。図に示すように、板ばね41は、基板部41aの外周に12枚の羽根部41bを有している。この羽根部41bは基板部41aの外周に放射状に形成されており、それぞれ隣接する羽根部41b,41bの間に12個の隙間部41cを有している。そして、
図3に示す第1折り曲げ線と第2折り曲げ線で羽根部41bをそれぞれ折り曲げることにより、羽根部41bと基板部41aとの境界の部分の第1曲げ部41b1と、この第1曲げ部41b1より外側の第2曲げ部41b2とが形成されている。なお、
図3は展開状態を示しているが、第1曲げ部41b1と第2曲げ部41b2を太実線で図示してある。
【0037】
図4に示す板ばね41の組み付け状態では、組み付け前の状態から第1曲げ部41b1の箇所がさらに曲がるようにして、当該板ばね41の弾性復元力に抗して板ばね41はLパッキン45内に組み付けられている。そして、
図4(A)に示すように、第2曲げ部41b2の両端の端点P,PがLパッキン45のリム部45bの内面に当接されている。また、第1曲げ部41b1はLパッキン45のリム部45bより内側(軸線X側)で基部45a上に位置している。
【0038】
ここで、
図3に示すように、隙間部41cにおける隣接する2つの第2曲げ部41b2,41b2の端点P,Pの距離を「隙間部41cの幅」とし、第2曲げ部41b2の長さを「羽根部41bの幅」とする。そして、この第1実施例では、隙間部41cの幅[α1]と羽根部41bの幅[β1]とは、
α1=0.77mm、
β1=1.15mm=1.5・α1
であり、
α1≦β1≦1.5・α1
の関係にある。すなわち、羽根部41bの幅[β1]と隙間部41cの幅[α1]は略同程度となっている。さらに、羽根部41bは第1曲げ部41b1で折り曲げられているので、
図4の状態では、隙間部41cの幅は[α1]より僅かに小さな[α1′]となる。もちろん[β1]は変化しない。
【0039】
この折り曲げられた状態でも、隙間部41cの幅[α1′]と羽根部41bの幅[β1]とは略同程度となっている。この第1実施例では、
α1′=0.58mm、
β1=1.15mm=1.98・α1′
であり、
α1′≦β1≦2.1・α1′
の関係にある。
そして、各第2曲げ部41b2の端点Pは、24角形の24個の頂点となって、Lパッキン45のリム部45bの内面に当接している。これにより、12枚の羽根部41bは、このリム部54bを内側から略均等に半径方向外側に押圧する。すなわち、板ばね41は周回りに略均等な位置にある24個の多数点でリム部54bを押圧する。
【0040】
図5は第2実施例の板ばね42の展開状態の平面図、
図6は第2実施例の板ばね42とLパッキン45の組み付け状態を示す平面図及び一部断面図であり、
図6(B)は
図6(A)におけるA−A断面である。なお、以下の第2実施例の板ばね42及び第3実施例の板ばね43と第1実施形態の板ばね41との違いは、羽根部の枚数と羽根部の幅(第2曲げ部の長さ)であり、その他の構造は第1乃至第3実施例で共通である。例えば、第1折り曲げ線の位置(中心からの半径)は、第1乃至第3実施例で同一である。
【0041】
この第2実施例の板ばね42は、基板部42aの外周に15枚の羽根部42bを有している。この羽根部42bは基板部42aの外周に放射状に形成されており、それぞれ隣接する羽根部42b,42bの間に15個の隙間部42cを有している。そして、
図5に示す第1折り曲げ線と第2折り曲げ線で羽根部42bをそれぞれ折り曲げることにより、
図6(B)に示すように、羽根部42bと基板部42aとの境界の部分の第1曲げ部42b1と、この第1曲げ部42b1より外側の第2曲げ部42b2とが形成されている。また、板ばね42はLパッキン45内に組み付けられ、
図6(A)に示すように、第2曲げ部42b2の両端の端点P,PがLパッキン45のリム部45bの内面に当接されている。また、第1曲げ部42b1はLパッキン45のリム部45bより内側(軸線X側)で基部45a上に位置している。
【0042】
この第2実施例の板ばね42は、
図5に示すように、隙間部42cの幅[α2]と、羽根部42bの幅[β2](第2曲げ部42b2の長さ)とは、
α2=0.76mm、
β2=0.93mm=1.22・α2
であり、
α2≦β2≦1.5・α2
の関係にある。すなわち、羽根部42bは略[β2]の幅を有し、隙間部42cは略[α2]の幅を有している。そして、この羽根部42bの幅と隙間部42cの幅は略同程度となっている。さらに、羽根部42bは第1曲げ部42b1で折り曲げられているので、
図6の状態では、隙間部42cの幅は[α2]より僅かに小さな[α2′]となる。
【0043】
この折り曲げられた状態でも、隙間部42cの幅[α2′]と羽根部42bの幅[β2]とは略同程度となっている。この第2実施例では、
α2′=0.45mm、
β2=0.93mm=2.07・α2′
であり、
α2′≦β2≦2.1・α2′
の関係にある。
そして、各第2曲げ部42b2の端点Pは、30角形の30個の頂点となって、Lパッキン45のリム部45bの内面に当接している。これにより、15枚の羽根部42bは、このリム部45bを内側から略均等に半径方向外側に押圧する。すなわち、板ばね42は周回りに略均等な位置にある30個の多数点でリム部45bを押圧する。
【0044】
図7は第3実施例の板ばね43の展開状態の平面図、
図8は第3実施例の板ばね43とLパッキン45の組み付け状態を示す平面図及び一部断面図であり、
図8(B)は
図8(A)におけるA−A断面である。
【0045】
この第3実施例の板ばね43は、基板部43aの外周に20枚の羽根部43bを有している。この羽根部43bは基板部43aの外周に放射状に形成されており、それぞれ隣接する羽根部43b,43bの間に20個の隙間部43cを有している。そして、
図7に示す第1折り曲げ線と第2折り曲げ線で羽根部43bをそれぞれ折り曲げることにより、
図8(B)に示すように、羽根部43bと基板部43aとの境界の部分の第1曲げ部43b1と、この第1曲げ部43b1より外側の第2曲げ部43b2とが形成されている。また、板ばね43はLパッキン45内に組み付けられ、
図8(A)に示すように、第2曲げ部43b2の両端の端点P,PがLパッキン45のリム部45bの内面に当接されている。また、第1曲げ部43b1はLパッキン45のリム部45bより内側(軸線X側)で基部45a上に位置している。
【0046】
この第3実施例の板ばね43は、
図7に示すように、隙間部43cの幅[α3]と、羽根部43bの幅[β3](第2曲げ部43b2の長さ)とは、
α3=0.51mm、
β3=0.63mm=1.24・α3
であり、
α3≦β3≦1.5・α3
の関係にある。すなわち、羽根部43bは略[β3]の幅を有し、隙間部43cは略[α3]の幅を有している。そして、この羽根部43bの幅と隙間部43cの幅は略同程度となっている。さらに、羽根部43bは第1曲げ部43b1で折り曲げられているので、
図8の状態では、隙間部43cの幅は[α3]より僅かに小さな[α3′]となる。
【0047】
この折り曲げられた状態でも、隙間部43cの幅[α3′]と羽根部43bの幅[β3]とは略同程度となっている。この第3実施例では、
α3′=0.40mm、
β3=0.63mm=1.58・α3′
であり、
α3′≦β3≦2.1・α3′
の関係にある。
そして、各第2曲げ部43b2の端点Pは、40角形の40個の頂点となって、Lパッキン45のリム部45bの内面に当接している。これにより、20枚の羽根部43bは、このリム部45bを内側から略均等に半径方向外側に押圧する。すなわち、板ばね43は周回りに略均等な位置にある40個の多数点でリム部45bを押圧する。
【0048】
以下、各実施例の[β1,β2,β3]を[β]、[α1′,α2′,α3′]を[α′]とする。各実施例の板ばね41,42,43は、n枚の羽根部41b,42b,43bにより、2n角形の頂点でLパッキン45のリム部45bを押圧している。すなわち、第2曲げ部41b2,42b2,43b2の各端点P,Pは、Lパッキン45のリム部45bの内面に対して、円周上の押圧点となっている。そして、α′≦β≦2.1・α′とすることで、各押圧点は、円周上において略均等に位置し、これにより、シール性が確保される。すなわち、端点P,Pの間隔(多角形の辺の長さ)が極端に大きくなると、この端点P,Pの中央の位置でリム部45bがガイド面21aから浮いて漏れを生じる可能性があるが、各実施例では、このようなことを防止できている。
【0049】
また、各実施例では、羽根部の幅[β]は隙間部の幅[α′]に対して、
β>α′
となっている。すなわち、羽根部41b,42b,43bの幅は隙間部41c,42c,43cの幅より広くなっている。このように、α≦βで、かつ、羽根部の枚数を12枚乃至20枚とすることで、羽根部の幅[β]を確保して、リム部45bに対して十分な押圧力(弾性力)を得ることができ、シール性を確保できる。
【0050】
また、例えば第1実施例について説明すると、
図9に示すように、板ばね41において、基板部41a及び羽根部41bと、隙間部41cとの境界線は、円弧部と直線部とで構成されている。そして、第1曲げ部41b1は、円弧部から外れて直線部に形成されている。したがって、摺動時にLパッキン45から抗力を受けても羽根部41bにねじり等の応力がかからず、繰り返し摺動しても耐久性を維持できる。さらに、隙間部41cの低部(羽根部41b,41bの付け根の間)が円弧部となっているので、この隙間部41cから亀裂等が生じることもなく、板ばね41の強度を確保することができる。
【0051】
また、第2実施例の板ばね42のように羽根部の枚数を奇数枚とすると、羽根部42bが当接する位置と当接しない位置とが軸線Xに対して対称にならない3点支持構造となる。すなわち、羽根部42bがリム部45bを押圧する力はリム部45bの多少の弾性変形により端点Pから第2曲げ部42b2の中側にも多少分散するので、軸線Xに対する複数の羽根部42bによる当接位置が対称にならず、ガイド部21内でシール部4が傾き難く、均一にシールすることができる。
【0052】
また、実施形態では、シール部4を、弁体3Aと連結部3Bとにより挟持されているので、「移動部材」としての弁部材3に対して、シール部4を簡単な構造で保持することができる。
【0053】
また、Lパッキン45は、シール部4において背合わせ状に一対設けられている。そして、このLパッキン45のリム部45b内が高圧となるとき、この高圧の圧力はリム部45bをガイド面21aに押しつけるように作用するため、シール部4は前記第1の流れの時も第2の流れのときも、このシール部4の両側の空間を確実にシールする。
【0054】
以上の実施例では、羽根部が12枚、15枚、20枚の場合について説明したが、12枚乃至20枚の範囲であれば何枚でも、各実施例と同様な作用効果が得られる。
【0055】
以上の実施形態では電動弁に本発明を適用した例について説明したが、例えば特許文献2に記載の温度膨張弁におけるシール部、あるいは、特許文献3の四方切換弁における、ピストンの菊ばね及びLパッキンに対して、各実施例の板ばね41,42,43及びLパッキン45を適用し、それぞれ本発明の弁装置を構成することもできる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。