特許第6475219号(P6475219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

特許6475219保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置
<>
  • 特許6475219-保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置 図000003
  • 特許6475219-保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置 図000004
  • 特許6475219-保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置 図000005
  • 特許6475219-保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置 図000006
  • 特許6475219-保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475219
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190218BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
   H01L21/302 101G
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-226036(P2016-226036)
(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-85374(P2018-85374A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−189425(JP,A)
【文献】 特開2005−033181(JP,A)
【文献】 特開平10−163303(JP,A)
【文献】 特開2013−185054(JP,A)
【文献】 特開平06−215927(JP,A)
【文献】 特開2014−009354(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0004400(US,A1)
【文献】 特開2015−088745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と第2の主面とを備えたセラミックス板と、
第3の主面と第4の主面とを備えた金属板と、
前記セラミックス板の第2の主面と前記金属板の第3の主面との間に配置されて、前記セラミックス板と前記金属板とを接合する接着剤層と、
を備えた保持部材において、
前記セラミックス板の内部には、通電により発熱するヒータ配線を備え、
前記接着剤層には、強磁性物質を含むことを特徴とする保持部材。
【請求項2】
前記強磁性物質は、軟磁性物質であることを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記強磁性物質のキュリー点は、100℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持部材。
【請求項4】
前記接着剤層は、前記強磁性物質以外に、他の無機誘電体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項5】
前記接着剤層中に、粒子状の強磁性物質が分散していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項6】
前記保持部材を厚み方向から見た平面視で、前記接着剤層は、前記強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、場所によって発熱状態が異なるように、前記強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項7】
前記平面視で、前記ヒータ配線を配置したヒータ領域と他の領域とについて、前記強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、前記他の領域における発熱状態が前記ヒータ領域における発熱状態より大となるように、前記強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されていることを特徴とする請求項6に記載の保持部材。
【請求項8】
前記平面視で、前記保持部材を厚み方向に貫通する貫通孔の周囲と他の領域とについて、前記強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、前記貫通孔の周囲における発熱状態が前記他の領域における発熱状態より大となるように、前記強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の保持部材。
【請求項9】
前記平面視で、前記保持部材の外周部分と他の領域とについて、前記強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、前記外周部分における発熱状態が前記他の領域における発熱状態より大となるように、前記強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項10】
前記接着剤層が複数層からなり、該複数層の少なくとも一層が前記強磁性物質を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれか1項に記載の保持部材が、吸着用電極を備えたことを特徴とする静電チャック。
【請求項12】
前記請求項1〜10のいずれか1項に記載の保持部材と、該保持部材に高周波電磁波を印加することが可能な高周波電極と、を備えたことを特徴とする半導体製造用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェハを固定して加熱する際に用いることができる、セラミックス板と金属板とを接着剤層によって接合した保持部材、及び保持部材を備えた静電チャック、並びに保持部材を備えた半導体製造用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造用装置では、半導体ウェハ(例えばシリコンウェハ)に対して、ドライエッチング(例えばプラズマエッチング)等の処理が行われている。このドライエッチングの精度を高めるためには、半導体ウェハを確実に固定しておく必要があるので、半導体ウェハを固定する固定手段として、静電引力によって半導体ウェハを固定する静電チャックが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の静電チャックでは、セラミックス板の内部に吸着用電極を有しており、その吸着用電極に電圧を印加した際に生じる静電引力を用いて、半導体ウェハをセラミックス板の上面(吸着面)に吸着させるようになっている。
【0004】
また、セラミックス板の内部には、半導体ウェハを加工する際に半導体ウェハを加熱するために、例えば線状の発熱パターンからなるヒータが配置されている。
なお、この種の静電チャックとしては、セラミックス板の下面(接合面)に、例えば樹脂材料や金属材料からなる接着剤層(ボンディング層)を介して、クーリングプレートとして機能する金属板が接合されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−165267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、発熱パターンは、セラミックス板内にて、例えば渦巻き状や蛇行状に配置されているので、セラミックス板を厚み方向から見た場合には(即ち平面視では)、発熱パターンが配置されている部分と配置されてない部分とでは、温度差が生じるという問題があった。
【0007】
つまり、ヒータに通電してセラミックス板を加熱する場合には、セラミックス板の平面方向において温度分布が生じ易く、いわゆる面内温度の均一性(即ち均熱性)を保つことは容易ではないという問題があった。
【0008】
そのため、均熱性が十分でない場合には、例えば静電チャックの吸着面に保持された半導体ウェハの加工に支障が生じることがあった。例えばエッチング加工を行う場合に、加工速度などにムラが生じる恐れがあった。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、平面方向における温度の均一性を高めることができる保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の第1局面は、第1の主面と第2の主面とを備えたセラミックス板と、第3の主面と第4の主面とを備えた金属板と、セラミックス板の第2の主面と金属板の第3の主面との間に配置されて、セラミックス板と金属板とを接合する接着剤層と、を備えた保持部材に関するものである。
【0011】
この保持部材は、セラミックス板の内部に、通電により発熱するヒータ配線を備えており、接着剤層には、強磁性物質を含んでいる。
このように、本第1局面では、セラミックス板と金属板とを接合する接着剤層に、強磁性物質を含んでいるので、接着剤層の外部より、高周波電磁波を印加することにより、強磁性物質を発熱させることができるので、その周囲の接着剤層、ひいては接着剤層に隣接するセラミックス板を加熱することができる。
【0012】
詳しくは、強磁性物質に高周波電磁波が通過すると、強磁性物質の表面には高周波電磁波により磁力線(即ち磁界)が発生し、その磁力線を打ち消すように渦電流が発生する。そして、この渦電流と強磁性物質との抵抗によって生じるジュール熱によって、強磁性物質が発熱する。例えば、微細な強磁性物質が接着剤層に均一に分散している場合に、その接着剤層に均一に高周波電磁波が照射されると、接着剤層全体が均一に発熱する。
【0013】
このように、本第1局面では、高周波電磁波の印加によって強磁性物質を発熱させて接着剤層を加熱することができるので、ヒータ配線以外の部分でも、セラミックス板の温度を上昇させることができる。
【0014】
しかも、ヒータ配線自体は、高周波電磁波を反射するので、仮に接着剤層中に均一に強磁性物質が分散している場合でも、平面視(即ちセラミックス板を厚み方向から見た場合)にてヒータ配線が設けられている領域では、接着剤層中の強磁性物質の発熱は抑制される。一方、ヒータ配線以外の領域では、高周波電磁波の印加が妨害されにくいので、強磁性物質はヒータ配線の領域に比べて十分に発熱する。
【0015】
つまり、ヒータ配線がある場合には、ヒータ配線の発熱による温度分布と、強磁性物質の発熱による温度分布とでは、温度分布の高低の状態が逆となるので、セラミックス板(従って保持部材)の平面方向における温度の均一性が高いという効果がある。なお、平面方向とは、セラミックス板の厚み方向とは垂直のセラミックス板が広がる方向である。
【0016】
(2)本発明の第2局面では、強磁性物質として、軟磁性物質を用いることができる。
本第2局面は、強磁性物質として好適な材料を例示している。
軟磁性物質は、硬磁性物質とは異なり、外部磁界がなければ磁力が発生しない又は磁力が発生しにくい。また、外部磁界がなくなれば磁力も消失する。そのため、例えば強磁性物質が粒子状である場合には、粒子の分散性に優れており、ひいては接着剤中における分散性に優れている。また、例えば保持部材が静電チャックに用いられる場合には、静電チャックに異物が吸着されにくいという利点がある。
【0017】
(3)本発明の第3局面では、強磁性物質のキュリー点は、100℃以上である。
本第3局面では、強磁性物質のキュリー点は100℃以上であるので、100℃以上の高いキュリー点に到るまで、強磁性物質(従って接着剤層)の温度を制御することが可能である。
【0018】
(4)本発明の第4局面では、接着剤層は、強磁性物質以外に、他の無機誘電体を含む。
本第4局面は、接着剤層に含まれる物質を例示している。ここでは、強磁性物質以外に、他の無機誘電体を含むので、例えば強度に優れる、所定の熱伝導率に調整されている、塗工の際に塗工しやすい粘度に調整されているなどという利点がある。
【0019】
(5)本発明の第5局面では、接着剤層中に、粒子状の強磁性物質が分散している。
本第5局面では、接着剤層中に粒子状の強磁性物質が分散しているので、接着剤層の全体を容易に加熱できる。
【0020】
このように、強磁性物質が接着剤層中に均一に分散している場合には、照射される高周波電磁気の強度が同じときに、接着剤層において均一な発熱が可能であるとともに、接着面での均一な接着力と熱伝達の特性が得られるという利点がある。
【0021】
(6)本発明の第6局面では、保持部材を厚み方向から見た平面視で、接着剤層は、強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、場所によって発熱状態が異なるように、強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されている。
【0022】
接着剤層においては、例えば強磁性物質を多く配置した部分や、発熱能力が大きな種類の強磁性物質を配置した部分では、他の部分に比べて温度が上昇し易い。なお、発熱能力とは、例えば強磁性物質の添加量等の他の条件が同じ場合の単位体積当たりの発熱量である(以下同様)。
【0023】
従って、例えばセラミックス板において、温度が低下し易い場所や温度が上昇し難い場所に、強磁性物質を多く配置したり発熱能力が大きな種類の強磁性物質を配置することによって、セラミックス板の温度を容易に均一化できる。
【0024】
更に、温度の均一化だけではなく、強磁性物質の配置や種類などを調節することにより、所望の箇所の温度を選択的に上昇させることができるので、セラミックス板の平面方向における温度調節も可能である。
【0025】
(7)本発明の第7局面では、平面視で、ヒータ配線を配置したヒータ領域と他の領域とについて、強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、他の領域における発熱状態がヒータ領域における発熱状態より大となるように、強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されている。
【0026】
ヒータ領域とは異なる他の領域は、ヒータ領域に比べてヒータ配線による温度上昇が少ないので、他の領域には、ヒータ領域よりも接着剤層による発熱状態が大となるように、強磁性物質を多く配置したり発熱能力が大きな種類の強磁性物質を配置する。これにより、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化できる。
【0027】
(8)本発明の第8局面では、平面視で、保持部材を厚み方向に貫通する貫通孔の周囲と他の領域とについて、強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、貫通孔の周囲における発熱状態が他の領域における発熱状態より大となるように、強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されている。
【0028】
セラミックス板の貫通孔の周囲は、他の領域に比べて温度が低くなり易いので、貫通孔の周囲には、他の領域よりも接着剤層による発熱状態が大となるように、強磁性物質を多く配置したり発熱能力が大きな種類の強磁性物質を配置する。これにより、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化できる。
【0029】
(9)本発明の第9局面では、平面視で、保持部材の外周部分と他の領域とについて、強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、外周部分における発熱状態が他の領域における発熱状態より大となるように、前記強磁性物質の種類及び配置状態の少なくとも一方が設定されている。
【0030】
セラミックス板の外周部分は、他の領域に比べて温度が低くなり易いので、外周部分の周囲には、他の領域よりも接着剤層による発熱状態が大となるように、強磁性物質を多く配置したり発熱能力が大きな種類の強磁性物質を配置する。これにより、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化できる。
【0031】
(10)本発明の第10局面では、接着剤層が複数層からなり、複数層の少なくとも一層が強磁性物質を含んでいる。
本第10局面は、接着剤層が複数層からなる場合を例示している。
【0032】
(11)本発明の第11局面は、第1〜第10局面のいずれかの保持部材が、吸着用電極を備えた静電チャックである。
本第11局面の静電チャックは、上述した保持部材を備えているので、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化することができる。
【0033】
これにより、静電チャックの吸着面に保持された例えば半導体ウェハの温度も容易に均一化できるので、例えばエッチング等の加工を行う場合に、加工速度にムラが生じる等の不具合を抑制することができる。
【0034】
(12)本発明の第12局面は、第1〜第10局面のいずれかの保持部材と、保持部材に高周波電磁波を印加することが可能な高周波電極と、を備えた半導体製造用装置である。
【0035】
本第12局面の半導体製造用装置は、上述した保持部材を備えているので、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化することができる。
例えばプラズマによるエッチング加工を行う際に、半導体製造用装置の高周波電極から保持部材に対して高周波電磁波を印加することによって、セラミックス板の平面方向における温度を容易に均一化できる。そのため、例えばエッチング加工を行う場合に、加工速度にムラが生じる等の不具合を抑制することができる。
【0036】
<以下に、本発明の各構成について説明する>
・第1の主面及び第2の主面とは、セラミックス板の厚み方向における一方の表面及び他方の表面を示し、第3の主面及び第4の主面とは、金属板の厚み方向における一方の表面及び他方の表面を示している。
【0037】
・セラミックス板とは、セラミックスを主成分とする板であり、そのセラミックスとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、イットリア(酸化イットリウム)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられる。
【0038】
・金属板とは、金属単体又は合金からなる板であり、その金属としては、アルミニウムやアルミニウム合金が挙げられる。
・接着剤層は、接着剤中に、同一又は種類の異なる各種の強磁性物質を含有する層である。この接着剤としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの各種の接着剤(例えば熱硬化型接着剤)を採用できる。
【0039】
・強磁性物質(即ち強磁性体)とは、磁性体のうち、磁界により強く磁化され、磁石となる物質である。磁化された強磁性物質は、結晶内の隣り合った磁性原子の磁気モーメントが平行に並ぶことで外部に強い磁性を示すものである。強磁性物質には、具体的には、鉄、コバルト、ニッケルまたそれらの合金、フェライトなどがある。フェライトは、酸化鉄を主成分とした磁性を示すセラミックスの総称であり、その結晶構造および結合する元素によって性質が変化する。
【0040】
・強磁性物質は、さらに硬磁性物質と軟磁性物質の2種類に分類できる。
硬磁性物質(硬磁性体)は、外部磁界によって磁化された後、外部磁界を取り去っても磁化を残す物質である。
【0041】
一方、軟磁性物質(軟磁性体)は、外部磁界を取り去ると磁化を失って、元の状態に戻る物質である。この軟磁性物質としては、例えば、鉄、フェライトなどが挙げられる。
フェライトのうち、硬磁性体の特徴を示すものを特にハードフェライト、軟磁性体の特徴を示すものを特にソフトフェライトと呼ぶこともある。ハードフェライトには、BaO・6FeやSrO・6Feがある。ソフトフェライトには、MnO・Fe、ZnO・Fe、NiO・Fe、CuO・Feなどがある。
【0042】
フェライトは、結晶構造では、スピネルフェライト、六方晶フェライト、ガーネットフェライトの3つに分類され、六方晶フェライトの多くはハードフェライトに、スピネルフェライトの多くはソフトフェライトに分類される。
【0043】
・粒子状の強磁性物質としては、例えば、アスペクト比(最長の寸法/最短の寸法)が1〜30の範囲の粒子状の物質が挙げられる。
・なお、使用する強磁性物質が同じ場合(但し高周波電磁波など他の条件が同じ場合)には、使用する量(例えば単位体積当たりの重量%)が多いほどの発熱量が多くなる。また、同じ条件(例えば周波数や印加時間など)で高周波電磁波が印加された場合でも、強磁性物質の種類が異なれば、その発熱能力は異なる。すなわち、その周波数における鉄損の値が大きい強磁性物質の方が発熱能力が高い。なお、発熱量は、高周波電磁波の印加時間に比例する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】第1実施形態の静電チャックを一部破断して示す斜視図である。
図2】第1実施形態の静電チャックのセラミックス板の平面視において、ヒータ配線の配置状態を模式的に示す説明図である。
図3】第1実施形態の半導体製造用装置を示す説明図である。
図4】第1実施形態の静電チャックのセラミックス板及び接着剤層の平面視において、ヒータ配線及び強磁性粒子の配置状態を模式的に示す説明図である。
図5】第1実施形態の静電チャックの接着剤層の平面視において、強磁性粒子の配置状態等を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明の保持部材及び静電チャック並びに半導体製造用装置の実施形態について説明する。
[1.第1実施形態]
ここでは、第1実施形態として、例えば半導体ウェハを吸着保持できる静電チャックを例に挙げる。
[1−1.静電チャックの構成]
まず、第1実施形態の静電チャックの構成について、図1に基づいて説明する。
【0046】
図1に示す様に、第1実施形態の静電チャック1は、図1の上側にて被加工物である半導体ウェハ3を吸着保持して加熱する装置(即ち保持部材)であり、セラミックス板5と金属板7とが接着剤層9により接合されたものである。
【0047】
なお、セラミックス板5は、その厚み方向おける各表面として、図1の上方の第1の主面S1と図1の下方の第2の主面S2とを備えている。金属板7は、その厚み方向における各表面として、図1の上方の第3の主面S3と図1の下方の第4の主面S4とを備えている。
【0048】
この静電チャック1は、平面視(即ち厚み方向(図1の上下方向)から見た場合)で、円盤形状の装置である。また、セラミックス板5は、吸着用電極11やヒータ配線13等を備えたセラミックヒータであり、金属板7は、セラミックス板5と同軸に接合されている。
【0049】
なお、静電チャック1には、静電チャック1を厚み方向に貫通するように、リフトピンが挿入されるリフトピン孔15や、半導体ウェハ3を冷却するために吸着面1a側(図1上方)に冷却用ガスを供給する冷却用ガス孔(図示せず)等が設けられている。
【0050】
次に、静電チャック1の各構成について、詳細に説明する。
<セラミックス板>
図1に示すように、セラミックス板5は、例えば外径φ310mm×厚み5mmの円盤形状であり、その内部には、図1の上方より、吸着用電極11、ヒータ配線13等が、順番に配置されている。なお、セラミックス板5の内部には、図示しないが、吸着用電極11やヒータ配線13と電気的に接続される内部配線層やビア等が配置されている。
【0051】
セラミックス板5は、複数のセラミック層(図示せず)が積層されて一体となったものであり、そのセラミックスからなる部分(即ちセラミックス部)5aは、絶縁体(誘電体)である。なお、セラミックス部5aは、例えば純度92%や99.8%のアルミナを主成分とするセラミックス焼結体である。
【0052】
<金属板>
金属板7は、例えば外径φ310mm×厚み5mmの円盤形状であり、例えばA1050やA6061のアルミニウム合金からなる金属板である。
【0053】
この金属板7には、図示しないが、セラミックス板5(従って半導体ウェハ3)を冷却するために、冷却用流体(冷媒)が流される流路(冷却路)が設けられている。
<接着剤層>
接着剤層9は、例えば外径φ300mm×厚み0.3mmの円盤形状であり、例えばシリコーン系の熱硬化型接着剤(例えば信越化学工業製のKE−1056)に、粒子状の強磁性物質(例えば軟磁性物質である平均粒径10μmの鉄)が添加されたものである。なお、以下では、粒子状の強磁性物質を強磁性粒子と称することもある。
【0054】
つまり、接着剤層9には、全体にわたって、強磁性粒子である鉄の粒子が均一に分散している。
ここで、接着剤としては、上述したシリコーン樹脂以外に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などからなる各種の接着剤を選択できる。なお、耐熱性が高い点からは、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。また、異なる材料を接着した際に生じる熱応力を緩和・吸収するためには、比較的柔らかいアクリル樹脂やシリコーン樹脂を用いることができる。
【0055】
シリコーン樹脂としては、縮合硬化型と付加硬化型とがあり、いずれも使用できる。縮合硬化型は、硬化阻害物質がないため、被着体によらず使用できるが、副生成物が発生する。付加硬化型は、窒素化合物、りん化合物、硫黄化合物など、硬化阻害が生じる可能性があり、被着体の種類や洗浄度に注意を要するが、副生成物が発生しないので、比較的大きい部分を接着する場合に好ましい。
【0056】
強磁性粒子の配合量は、樹脂100重量部に対して5重量部(即ち約5重量%)から400重量部(即ち約80重量%)であることが好ましい。5重量部より少ないと、目的とする発熱効果が少ない。一方、400重量部を超えると、配合材料の流動性が著しく低下し、シート化や印刷などにより塗布することが困難になり、また、接着性や硬化後の接着剤層9の柔軟性が低下し、接着剤層9としての機能が低くなる。
【0057】
また、強磁性粒子の分散性の改善や密着性の改善のために、必要に応じて表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、シランカップリング剤などがあり、適宜使用できるが、強磁性粒子の表面に絶縁被膜を形成しないものがよい。絶縁被膜を形成すると、後述するように、粒子間渦電流の発生による発熱効率の上昇の可能性を消失してしまうためである。
【0058】
強磁性粒子のキュリー温度は、100℃以上であることが好ましい。これは、静電チャック1は100℃以上で使用されることが多く、その温度領域で強磁性物質の磁性特性を維持する必要があるからである。
【0059】
ここで、強磁性粒子を発熱させる場合の損失等について説明する。
強磁性粒子に電磁波が照射された時に失われるエネルギー損失、いわゆる鉄損は、主としてヒステリシス損と渦電流損との合計からなり、ヒステリシス損は周波数に比例し、渦電流損は周波数の2乗に比例する。よって、高周波数域では、効率の良い発熱のためには、渦電流損の増加が有効である。渦電流損には、粒子内渦電流損と粒子間渦電流損とがあるが、本第1実施形態では、粒子間がシリコーン樹脂によって絶縁されているため、渦電流は流れにくいので、粒子間渦電流損は発生しにくい。従って、渦電流損は、主に粒子内渦電流損に限定される。
【0060】
次に、強磁性粒子の粒子径と鉄損との関係について説明する。
ヒステリシス損は、強磁性粒子の粒子径が小さい方が大きい傾向にある。これは、強磁性粒子の界面が磁壁の移動を阻害することが、ヒステリシス損の原因であるためである。従って、粒子径が小さい方がヒステリシス損が大きく好ましい。
【0061】
渦電流損は、粒子間が絶縁されている場合には、粒子径にはあまり依存しない。表面に絶縁被膜が形成されている場合は、粒子間渦電流が流れないので、粒子間渦電流損は発生しない。しかし、絶縁被膜が形成されておらず、かつ粒子が部分的に凝集している場合は、粒子間渦電流が流れ、粒子間渦電流損が生じる。すなわち、絶縁被膜の状態に大きく依存する。
【0062】
従って、接着剤層9(詳しくは強磁性粒子)の発熱によるセラミックス板5の均熱化という目的に対しては、粒子径が小さいため凝集し易く、表面に絶縁被膜が形成されてない粒子が好ましい。表面が絶縁被膜で覆われておらず、粒子の充填量が多かったり、凝集していたりして、粒子同士が接触している場合、粒子間渦電流が流れ、粒子間渦電流損が発生する、この場合、発熱の効率が高くなり効果的である。粒子間渦電流損を効果的に発生させるために、強磁性粒子は、接着剤層9の平坦性や伸びに影響しない程度に凝集していることが好ましい。
【0063】
この絶縁被膜としては、りん酸系被膜や耐熱樹脂被膜、酸化マグネシム被膜などがあり、これらが形成されている場合には、予め鉄粉を絶縁被膜の耐熱温度である500〜600℃以上に加熱して、絶縁被膜を除去することが好ましい。
【0064】
なお、接着剤層9には、強磁性粒子の他に、非磁性粒子(例えば無機誘電体)を含んでいてもよい。非磁性粒子としては、例えば、通常充填材として使用される、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化けい素などが挙げられる。
【0065】
<吸着用電極>
吸着用電極11は、例えば平面形状が円形の電極から構成されている。この吸着用電極11とは、静電チャック1を使用する場合には、直流高電圧が印加され、これにより、半導体ウェハ3を吸着する静電引力(吸着力)を発生させ、この吸着力を用いて半導体ウェハ3を吸着して固定する静電電極である。
【0066】
なお、吸着用電極11については、これ以外に、周知の各種の構成、例えば単極性や双極性の電極などを採用できる。なお、吸着用電極11は、例えばタングステンやモリブデン等の導電材料からなる。
【0067】
<ヒータ配線>
ヒータ配線13は、電圧が印加されて電流が流れると発熱する抵抗発熱体、例えばタングステンやモリブデン等の金属材料からなる抵抗発熱体である。
【0068】
このヒータ配線13は、図2に示すように、セラミックス板5の内部において、同一平面上にて、例えば渦巻き状に形成されている。なお、図2では、ヒータ配線13の平面形状を、リフトピン孔15等の貫通孔などは省略して模式的に示してある。
[1−2.静電チャックの製造方法]
次に、静電チャック1の製造方法について説明する。
【0069】
(1)セラミックス板5の原料として、例えば、主成分であるAlに、MgO、CaO、SiOの各粉末を所定混合して、ボールミルで湿式粉砕した後、脱水乾燥する。
(2)次に、この粉末に溶剤等を加え、ボールミルで混合して、スラリーとする。
【0070】
(3)次に、このスラリーを用いて、各セラミック層に対応する各アルミナグリーンシートを形成する。
(4)また、前記アルミナグリーンシート用の原料粉末中にタングステン粉末を混ぜて、スラリー状にして、メタライズインクとする。
【0071】
(5)そして、吸着用電極11、ヒータ配線13等を形成するために、前記メタライズインクを用いて、アルミナグリーンシート上の所定箇所に、各パターンを印刷する。
(6)次に、各アルミナグリーンシートを熱圧着し、積層シートを形成する。
【0072】
(7)次に、熱圧着した積層シートを、所定の形状(例えば円盤形状)にカットする。
(8)次に、カットした積層シートを、還元雰囲気にて、1400〜1600℃の範囲(例えば1550℃)にて5時間焼成(本焼成)し、アルミナ質焼結体を作製する。
【0073】
(9)そして、焼成後に、アルミナ質焼結体に対して、例えば吸着面1a側に周知の必要な加工を行って、セラミックス板5を作製する。
(10)これとは別に、金属板7を製造する。具体的には、例えば円盤形状に打ち抜いたアルミニウム合金の金属板に対して、切削加工等を行うことにより、所定厚みの金属板7を形成する。
【0074】
(11)次に、下記のようにして、接着剤層9となる強磁性粒子を含む接着剤を作製しておき、その接着剤を用いて、セラミックス板5と金属板7とを接合して一体化する。
詳しくは、上述のような接着剤(例えばシリコーン樹脂)100重量部に対して、例えば5〜400重量部の強磁性粒子(例えば鉄)を添加して混合する。この混合の際には、公知の装置を用いることができる。具体的には、攪拌羽根による攪拌・混練、ニーダー、バンバリー型混合機、三本ロールなどを用いることができる。
【0075】
この混合の際には、強磁性粒子が接着剤中に均一に分散するように、十分に混合する。なお、均一に分散できたかどうかの評価は、例えば接着剤の場所によって、比熱、密度、熱拡散率などの特性に変化がないことによって確認できる。
【0076】
次に、この強磁性粒子を含む接着剤を、セラミックス板5の金属板7側の接合面(即ち第2の主面S2)又は金属板7のセラミックス板5側の接合面(即ち第3の主面S3)、或いはその両方に塗布して、シート状の塗布層を形成する。なお、シート化のための塗工には、公知の装置を用いることができる。具体的には、ロールコータ、ドクターブレード、ナイフコーター、バーコーターなどを用いることができる。
【0077】
次に、塗布層を挟んで、セラミックス板5と金属板7とを貼り合わせ、接着剤が硬化する温度に加熱して硬化させて、セラミックス板5と金属板7とを接合して一体化する。 その後、必要な後加工などを行って、静電チャック1が完成する。
[1−3.半導体製造用装置]
次に、半導体製造用装置について説明する。
【0078】
図3に示すように、半導体製造用装置21は、チャンバー(筐体)23内に、静電チャック1が配置されたものであり、チャンバー23には、静電チャック1の下方及び上方に、電源25より高周波の電力が印加される一対の高周波電極(即ちRF電極)27、29が配置されている。
【0079】
この高周波電極27、29により、静電チャック1(詳しくは接着剤層9中の強磁性粒子)に高周波電磁波が印加される。高周波電磁波としては、周波数が100MHz以下の範囲(例えば1kHz〜100kHz)の範囲の電磁波を採用できる。つまり、この周波数域で発熱する磁気特性を持つ強磁性粒子として、例えば鉄粉等を採用できる。
[1−4.効果]
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0080】
・第1実施形態の静電チャック1では、セラミックス板5の内部に、通電により発熱するヒータ配線13を備えており、セラミックス板5と金属板7とを接合する接着剤層9には、強磁性粒子が均一に分散して配置されている。
【0081】
そのため、接着剤層9の外部より、高周波電磁波を印加することによって、強磁性粒子を発熱させることができる。これにより、強磁性粒子の周囲の接着剤層9、ひいては接着剤層9に隣接するセラミックス板5等を加熱することができる。
【0082】
このように、本第1実施形態では、高周波電磁波の印加によって強磁性粒子を発熱させて接着剤層9を加熱することができるので、ヒータ配線13以外の部分でも、セラミックス板5の温度を上昇させることができる。
【0083】
しかも、ヒータ配線13自体は、高周波電磁波を反射するので、ヒータ配線13が設けられているヒータ領域R1(図2参照)では、接着剤層9中の発熱は抑制されるが、ヒータ領域R1以外の他の領域R2(図2参照)では、強磁性粒子はヒータ領域R1に比べて十分に発熱する。
【0084】
つまり、本第1実施形態では、ヒータ配線13による温度分布と、強磁性粒子の発熱による温度分布とは逆となるので、セラミックス板5の平面方向における温度の均一性が高いという効果がある。
【0085】
・第1実施形態では、強磁性粒子として、軟磁性粒子である例えば鉄を用いるので、外部磁界がなければ磁力が発生しない。そのため、粒子自体が分散性に優れ、ひいては接着剤中における分散性に優れている。また、静電チャック1に異物が吸着されにくいという利点がある。
【0086】
・第1実施形態では、強磁性粒子である鉄のキュリー点は100℃以上であるので、100℃以上の高いキュリー点に到るまで、強磁性粒子(従って接着剤層9)の温度を制御することが可能である。
【0087】
・第1実施形態では、接着剤層9中に強磁性粒子が均一に分散しているので、均一な発熱が可能であるとともに、接着剤層9における均一な接着力と均一な熱伝達の特性が得られるという利点がある。
【0088】
・第1実施形態の半導体製造用装置21は、上述した接着剤層9を備えた静電チャック1を用いるので、セラミックス板5の平面方向における温度を容易に均一化することができる。
【0089】
従って、例えばプラズマによるエッチング加工を行う際に、半導体製造用装置21の高周波電極27、29によって、静電チャック1(詳しくは接着剤層9の強磁性粒子)に対して高周波電磁波を印加することによって、セラミックス板5の平面方向における温度を容易に均一化できる。そのため、例えばエッチング加工を行う場合に、加工速度にムラが生じる等の不具合を抑制することができる。
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容の説明は省略又は簡易化して説明する。なお、第1実施形態と同様な構成は同じ番号を用いる。
【0090】
本第2実施形態では、図4に示すように、平面視で、接着剤層9においては、強磁性粒子は、ヒータ配線13の配置された領域(即ちヒータ領域)R1とは異なる他の領域R2に、均一に分散して配置されている。
【0091】
つまり、強磁性粒子は、平面視で、ヒータ配線13と重なるヒータ領域R1には配置されておらず、ヒータ配線13とは重ならない領域R2(図4で灰色で示す領域)に配置されている。
【0092】
なお、図4では、リフトピン孔15等は省略して、ヒータ配線13の平面形状等を模式的に示している。
本第2実施形態では、第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、強磁性粒子は、通電により発熱するヒータ配線13と重ならない領域R2に配置されているので、セラミックス板9の温度を一層均一化できるという効果がある。
【0093】
なお、ここでは、ヒータ領域R1には、強磁性粒子を配置しない例が挙げたが、それ以外に、強磁性粒子が高周波電磁波によって発熱する場合に、他の領域R2における発熱状態がヒータ領域R1における発熱状態(例えば単位体積当たりの発熱量)より大となるように、強磁性粒子の種類及び配置状態(例えば単位体積当たりの強磁性粒子の重量%等)の少なくとも一方を設定してもよい。
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容の説明は省略又は簡易化して説明する。なお、第1実施形態と同様な構成は同じ番号を用いる。
【0094】
本第3実施形態では、図5に示すように、平面視で、接着剤層9においては、強磁性粒子は、リフトピン孔15等の貫通孔の周囲の領域R3及び接着剤層9の外周部分の領域R4と、それとは異なる他の領域R5とでは、配置状態(例えば単位体積当たりの強磁性粒子の重量%等)が異なるように設定されている。或いは、前記領域R3、R4と他の領域R5とでは、発熱能力が異なる強磁性粒子を配置してもよい。さらに、強磁性粒子の配置状態と使用する種類とを組み合わせて設定してもよい。
【0095】
詳しくは、セラミックス板5を厚み方向に貫通する貫通孔の周囲の領域R3や外周部分の領域R4と他の領域R5とについて、強磁性物質が高周波電磁波によって発熱する場合に、貫通孔の周囲の領域R3や外周部分の領域R4における発熱状態(例えば単位面積当たりの発熱量)が他の領域R5における発熱状態より大となるように、強磁性粒子の配置状態や種類が設定されている。
【0096】
つまり、セラミックス板5の貫通孔の周囲の領域R3や外周部分の領域R4は、他の領域R5に比べて温度が低くなり易いので、貫通孔の周囲の領域R3や外周部分の領域R4には、他の領域R4よりも接着剤層9における発熱状態が大となるように、強磁性粒子を多く配置したり発熱能力が大きな種類の強磁性粒子を配置する。
【0097】
これにより、第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、セラミックス板5の平面方向における温度を一層容易に均一化できる。
[4.実施例及び比較例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例として、本発明の範囲内の実施例1〜3と本発明の範囲外の比較例1〜3とについて説明する。
【0098】
<試料の作製>
実施例及び比較例として、前記第1実施形態の接着剤層とほぼ同様な構成のシートを作製した。
【0099】
具体的には、シリコーン樹脂系の接着剤として、付加硬化型の信越化学製KE−1056を用いた。軟磁性粒子として、バウダーテック社製の鉄粉RDL−500に熱処理したものを用いた。
【0100】
そして、下記表1に示すように、シリコーン樹脂100重量部に対して、軟磁性粒子又はアルミナ粒子を所定量添加し、軟磁性粒子又はアルミナ粒子を含む接着剤を作製した。調合は、主に三本ロールを用いて、充填材として均一に各粒子を分散させた。
【0101】
次に、この接着剤を用い、ロールコータによって、離型用ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム上に、厚さ300μmにシート化した。その後、130℃にて30分加熱して硬化させて、接着剤層に対応する評価用の接着剤のシートを作製した。
【0102】
なお、前記軟磁性粒子の鉄分は、原料の鉄粉を550℃の窒素雰囲気下で加熱して得たものである。この鉄粉は、平均粒径10μm、キュリー温度770℃、比透磁率5000、保持力80A/m、鉄損100W/kgである。一方、比較例のアルミナ粒子は、磁性粒子ではなく、このアルミナ粒子としては、平均粒径10μmのアドマテックス社製AO−509を用いた。
【0103】
<評価>
前記シート(即ち接着剤層)を、チャンバー内に配置し、磁界を発生させる電磁誘導装置の上に置き、チャンバー内を減圧して、シート全体を真空引きした。なお、真空引きする理由は、大気への放熱を抑制し、シートにおける温度変化を正確に測定するためである。
【0104】
その後、電磁誘導装置によって、磁界100T、周波数100kHzの条件にて、シートに磁界を100秒間与えて、シートの温度変化と温度分布とを測定した。なお、温度は、熱画像計測装置(サーモグラフィ)により測定した。その結果を、下記表1に示す。
【0105】
なお、表1において、「接着剤層の温度上昇」とは、シートにおける平均温度の上昇温度を示している。また、「温度分布が均等」とは、温度の高い部分と低い温度との温度差が1℃以下であることを示している。「ESC(静電チャック)の均熱化効果」とは、温度分布が均等であることを評価したものである。
【0106】
【表1】
【0107】
表1から明らかなように、アルミナを添加した比較例1〜3では、シートの温度上昇はなく、また、均熱化の効果もなかった。それに対して、軟磁性粒子を添加した実施例1〜3では、シートの温度が上昇するとともに、温度分布が均等で有り、好適であった。
[5.その他の実施形態]
尚、本発明は前記実施形態や実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0108】
(1)本発明は、静電チャック以外に、吸着用電極を有しないヒータなどに適当できる。例えば、CVD用ヒータ、PVD用ヒータ、シャワーヘッド、サセプターに適用することが可能である。
【0109】
(2)接着剤層の構成としては、単一の構成の接着剤層以外に、複数の層から構成してもよい。例えば強磁性粒子を含む接着剤層と強磁性粒子を含まない接着剤層とを積層してもよい。
【0110】
(3)本発明では、温度の均一化だけではなく、強磁性物質の配置などを調節することにより、所望の箇所の温度を選択的に上昇させることができるので、セラミックス板の平面方向における温度調節も可能である。
【0111】
(4)また、各実施形態の構成を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…静電チャック
3…半導体ウェハ
5…セラミックス板
7…金属板
9…接着剤層
11…吸着用電極
15…リフトピン孔
27、29…高周波電極
図1
図2
図3
図4
図5