(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、上方に突出した上方突出物の位置を抽出する抽出動作と、前記抽出動作によって抽出された前記上方突出物の位置を地図情報として生成する生成動作と、前記非接触センサの検出結果と前記地図情報とを照合することにより前記作業機械の位置を特定する特定動作とを行う計測出力手段を備え、
前記計測出力手段は、前記抽出動作、前記生成動作及び前記特定動作の少なくとも1つを行う際、前記マスク領域内の位置を除外した情報を用いる、
請求項1又は請求項2に記載の作業機械の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
<作業機械の管理システムの概要>
図1は、本実施形態に係る作業機械の管理システムの一例を示す図である。
図2は、本実施形態に係る作業機械の管理システム及び作業機械の管理システム1が適用される鉱山の一例を示す平面図である。
【0014】
作業機械の管理システム1(以下、管理システムと記す)は、作業機械の管理を行う。作業機械の管理は、作業機械の運行管理、作業機械の生産性の評価、作業機械のオペレータの操作技術の評価、作業機械の保全、及び作業機械の異常診断の少なくとも一つを含む。
【0015】
作業機械とは、鉱山における各種作業に用いる機械類の総称である。作業機械は、ボーリング機械、掘削機械、積込機械、運搬機械、破砕機及び作業者が運転する車両の少なくとも一つを含む。掘削機械は、鉱山を掘削可能である。積込機械は、運搬機械に積荷を積み込み可能である。積込機械は、油圧ショベル、電気ショベル、及びホイールローダの少なくとも一つを含む。運搬機械は、鉱山において移動可能な移動体を含み、積荷を運搬可能である。運搬機械は、ダンプトラックを含む。積荷は、採掘により発生した土砂及び鉱石の少なくとも一方を含む。破砕機は、運搬機械から投入された排土を破砕する。
【0016】
管理システム1により、鉱山を走行する作業機械である運搬機械が管理され、本実施形態においては、作業機械であるダンプトラック2が管理される例について説明する。ダンプトラック2は、
図1及び
図2に示すように、鉱山における積込場LPAと、排土場DPAと、積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に通じる搬送路HLと、搬送路HL同士が交差する交差点ISと、の少なくとも一部において稼働する。少なくとも一つの排土場DPAは、排土を破砕する破砕機CRが配置されることがある。鉱山は、積込場LPAの外側、排土場DPAの外側及び搬送路HLの外側の少なくとも一つ以上に土が積み上げられて構成された土手BKが設けられる。
【0017】
ダンプトラック2は、鉱山において移動可能な移動体である。ダンプトラック2は、積込場LPA、排土場DPA、搬送路HL、及び交差点ISの少なくとも一部を走行可能である。即ち、鉱山に設けられるダンプトラック2の走行経路RPは、積込場LPA、排土場DPA、搬送路HL、及び交差点ISの少なくとも一部を含む。鉱山は、ダンプトラック2の稼働領域の表面から上方に所定高さ以上突出した上方突出物VPが設けられる。実施形態1において、上方突出物VPは、走行経路RPの外側に設けられた土手BK、積込場LPAと排土場DPAと搬送路HLとの少なくとも一つに設置される人工物AF、及び、積込場LPAと排土場DPAと搬送路HLとの少なくとも一つに設置される壁WLにより構成されるが、標識や建物などの人工物や岩なども含まれる。所定高さは、ダンプトラック2が、自律走行する際に上方突出物VPを乗り越えることが望ましくない高さである。
【0018】
ダンプトラック2は、積込場LPAにおいて、積荷を積み込まれる。ダンプトラック2は、排土場DPAにおいて、積荷を下ろす(排出する)。ダンプトラック2は、破砕機CRが設けられた排土場DPAにおいて、破砕機CR内に積荷である排土を投入する。ダンプトラック2は、鉱山の操業時には、通常、管理装置10からの指令信号により走行経路RPを自律走行する、所謂、無人ダンプトラックである。ダンプトラック2が、自律走行するとは、ダンプトラック2が作業者の操作により走行せずに管理装置10からの指令信号により走行することをいう。また、ダンプトラック2は、作業者(運転者)の操作により走行することも可能である。
【0019】
図1において、管理システム1は、鉱山に設置される管制施設7に配置された管理装置10と、通信システム9と、ダンプトラック2と、他の作業機械3と、を備えている。管理装置10は、鉱山の管制施設7に設置され、移動しない。また、管理装置10が移動可能でもよい。通信システム9は、管理装置10とダンプトラック2と他の作業機械3との間において無線通信により情報を伝達する。通信システム9は、管理装置10とダンプトラック2との間、管理装置10と他の作業機械3との間、及びダンプトラック2と他の作業機械3との間を、双方向に無線通信可能にする。本実施形態において、通信システム9は、信号(電波)を中継する中継器6を複数有する。
【0020】
本実施形態において、ダンプトラック2の位置及び他の作業機械3の位置が、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System、GNSSは、全地球航法衛星システムをいう)を利用して検出される。全地球航法衛星システムの一例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられるが、これに限定されない。RTK−GNSSは、複数の測位衛星5を有する。RTK−GNSSは、緯度、経度、及び高度を規定する座標系(グローバル座標系)における位置を検出する。RTK−GNSSにより検出される位置は、緯度、経度、及び高度の座標情報を含む。RTK−GNSSにより、鉱山におけるダンプトラック2の位置及び他の作業機械3の位置が検出される。RTK−GNSSにより検出される位置は、グローバル座標系において規定される絶対位置である。以下の説明においては、RTK−GNSSによって検出される位置を適宜、GPS位置、と称する。GPS位置は、絶対位置であり、緯度、経度、及び高度の座標情報(座標値)である。また、RTK−GNSSでは、測位衛星5の配置、電離層、対流圏、又は測位衛星5からの情報を受信するアンテナ周辺の地形の影響により測位の状態が変化する。この測位の状態には、例えば、Fix解(精度±1cmから2cm程度)、Float解(精度±10cmから数m程度)、Single解(精度±数m程度)、非測位(測位計算不能)等がある。
【0021】
また、管理システム1は、鉱山におけるダンプトラック2及び他の作業機械3の位置を、
図2に示す互いに直交するX軸方向とY軸方向とで規定される座標(以下、X−Y座標と記す)により管理する。また、管理システム1は、ダンプトラック2及び他の作業機械3の方位を、北を零度とし、東を90度とし、南を180度とし、西を270度として管理する。ダンプトラック2及び他の作業機械3の方位は、ダンプトラック2及び他の作業機械3が前方に走行する際に、移動する方向である。なお、本実施形態において、Y軸方向が、北を示しているが、これに限定されない。
【0022】
<管理装置>
次に、管制施設7に配置される管理装置10について説明する。管理装置10は、ダンプトラック2の作業機械の制御システム30に鉱山に設けられる走行経路RPを指定する情報である走行経路情報を送信するものであり、
図1に示すように、コンピュータ11と、表示装置16と、入力装置17と、無線通信装置18と、GPS基地局19と、を備えている。
【0023】
コンピュータ11は、処理装置12と、記憶装置13と、入出力部15とを備えている。表示装置16、入力装置17、無線通信装置18、及びGPS基地局19は、入出力部15を介して、コンピュータ11と接続される。入出力部15は、処理装置12と、表示装置16、入力装置17、無線通信装置18、及びGPS基地局19の少なくとも一つとの情報の入出力(インターフェース)に用いられる。
【0024】
処理装置12は、ダンプトラック2の管理に関する各種の処理及び他の作業機械3の管理に関する各種の処理を実行する。処理装置12は、通信システム9を介して取得した、ダンプトラック2の位置に関する情報及び他の作業機械3の位置に関する情報を処理する。処理装置12は、ダンプトラック2の走行経路情報を生成する。記憶装置13は、処理装置12と接続される。記憶装置13は、ダンプトラック2の管理に関する各種の情報及び他の作業機械3の管理に関する各種の情報を記憶する。記憶装置13は、ダンプトラック2の位置、及び他の作業機械3の位置を記憶する。記憶装置13は、処理装置12に各種の処理を実行させるためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0025】
表示装置16は、例えば、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを含む。表示装置16は、ダンプトラック2の位置に関する情報及び他の作業機械3の位置に関する情報を表示可能である。入力装置17は、キーボード、タッチパネル、及びマウスの少なくとも一つを含む。入力装置17は、処理装置12に操作信号を入力可能な操作部として機能する。
【0026】
無線通信装置18は、管制施設7に配置される。無線通信装置18は、通信システム9の一部である。無線通信装置18は、入出力部15を介して、処理装置12と接続される。無線通信装置18は、アンテナ18Aを有する。無線通信装置18は、ダンプトラック2及び他の作業機械3の少なくとも一方から送信された情報を受信可能である。無線通信装置18で受信した情報は、処理装置12に出力され、記憶装置13に記憶(登録)される。無線通信装置18は、ダンプトラック2と他の作業機械3の少なくとも一つに情報を送信可能である。無線通信装置18は、ダンプトラック2及び他の作業機械3等の移動物体についての位置の情報(移動物体位置情報)を送信可能である。この移動物体位置情報は、例えば上記のX座標及びY座標についての座標情報を含む。
【0027】
GPS基地局19は、管制施設7に配置される。GPS基地局19は、複数の測位衛星5からの情報を受信するアンテナ19Aと、アンテナ19Aに接続された送受信装置19Bと、を少なくとも備える。送受信装置19Bは、アンテナ19Aを介して測位衛星5からの情報を受信する受信機と、アンテナ19Cを介してダンプトラック2に情報を送信する送信機と、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、を少なくとも備える。送受信装置19Bは、アンテナ19Aが受信した情報からGPS基地局19のGPS位置を検出するとともに、ダンプトラック2のGPS位置を補正するための補正観測情報を生成する。GPS基地局19は、送受信装置19Bがアンテナ19Cを通して、ダンプトラック2及び他の作業機械3に補正観測情報を送信する。なお、GPS基地局19は、補正観測情報をアンテナ19Cに代えてアンテナ18Aを介して送信してもよい。
【0028】
コンピュータ11は、通信用の入出力部15と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、CPUにより情報が登録される不揮発性メモリとを少なくとも備える。処理装置12の機能は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを読み込んでRAMの作業領域で実行することにより実現される。記憶装置13の機能は、ROMが制御プログラムを記憶することと、CPUにより情報が不揮発性メモリに登録されることにより実現される。不揮発性メモリは、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含み、データベース13Bを実現する。また、複数の処理回路が、連携して、処理装置12、及び記憶装置13の機能を実現してもよい。
【0029】
<他の作業機械>
次に、他の作業機械3について説明する。本実施形態において、他の作業機械3は、ダンプトラック2以外の作業機械であり、作業者の操作により駆動する。他の作業機械3は、CPU(Central Processing Unit)を含みかつ作業内容に関する各種の処理を実行する処理装置と、GPS位置を検出するGPS受信器と、管制施設7の無線通信装置18と情報を送受信する無線通信装置と、を少なくとも備える。他の作業機械3は、所定時間毎にGPS位置を無線通信装置が管制施設7の無線通信装置18に送信する。
【0030】
<ダンプトラック>
次に、ダンプトラック2について説明する。
図3は、本実施形態に係るダンプトラックの制御ブロック図である。
図4は、本実施形態に係るダンプトラックのハードウエア構成図である。
図5は、本実施形態に係る障害物センサのレーザーセンサの検出範囲を示す平面図である。
【0031】
図4に示すように、ダンプトラック2は、車両本体21と、ベッセル22と、車輪23と、障害物センサ24と、作業機械の制御システム30と、を備える。車両本体21は、走行経路RPを含む稼働領域を走行するものである。なお、稼働領域は、搬送路HL、積込場LPA、排土場DPA及び交差点を含む領域であり、ダンプトラック2が走行及び作業を行う際に通過する領域である。車両本体21には、ディーゼルエンジンのような内燃機関2Eと、内燃機関2Eにより作動する発電機2Gと、発電機で発生した電力により作動する電動機23Mと、が配置される。電動機23Mにより、車輪23のうち後輪23Rが駆動される。なお、内燃機関2Eの動力が、トルクコンバータを含むトランスミッションを介して後輪23Rに伝達されてもよい。また、車両本体21は、車輪23のうち前輪23Fを操舵する操作装置2Sを備える。ベッセル22は、積込機械により積荷が積み込まれ、排出作業において持ち上げられて積荷を排出する。
【0032】
障害物センサ24は、車両本体21の前部の下部に配置される。障害物センサ24は、車両本体21の前方の障害物を非接触で検出する。本実施形態において、障害物センサ24は、複数のレーダー24Aと、非接触センサであるレーザーセンサ24Bと、を備える。レーダー24Aは、電波を発射して、その電波を障害物に照射し、障害物により反射された電波を受信する。これにより、レーダー24Aは、レーダー24Aに対する障害物の方向及び距離を検出可能である。本実施形態において、レーダー24Aは、車両本体21の左右方向に間隔をあけて三つ設けられているが、これに限定されない。
【0033】
レーザーセンサ24Bは、ダンプトラック2の周囲の物体の位置を検出するものであり、レーザー光線を発射して、そのレーザー光線を物体である障害物に照射し、障害物により反射されたレーザー光線を受信する。これにより、レーザーセンサ24Bは、レーザーセンサ24Bに対する障害物の方向及び距離を検出可能である。レーザーセンサ24Bは、レーザー光線を発射し、反射されたレーザー光線を受信するために、レーザーセンサ24Bの分解能は、レーダー24Aの分解能よりも高分解能である。本実施形態において、レーザーセンサ24Bは、車両本体21の左右方向に間隔をあけて二つ設けられているが、これに限定されない。
【0034】
また、レーダー24A及びレーザーセンサ24Bは、作業機械の制御システム30の第2通信線35Bに接続される。また、レーザーセンサ24Bは、作業機械の制御システム30の位置計測コントローラ33に接続される。
【0035】
<作業機械の制御システム>
次に、作業機械の制御システムを説明する。
図6は、本実施形態に係る作業機械の制御システムの位置計測コントローラの照合航法位置演算部が位置及び方位を検出する方法を説明する図である。
図7は、本実施形態に係る作業機械の制御システムのマップ保存用データベースに記憶される地図情報の一部を示す図である。
図8は、
図7中のXIV部を拡大して示す図である。
【0036】
作業機械の制御システム30は、ダンプトラック2に設置されて、ダンプトラック2を走行経路RPに従って自律走行させるシステムである。作業機械の制御システム30は、
図4に示すように、ジャイロセンサ26と、速度センサ27と、GPS受信器31と、走行経路作成装置32と、位置計測コントローラ33と、走行コントローラ20と、レーザーセンサ24Bと、無線通信装置34と、マップ保存用データベース36を少なくとも備える。この他に、作業機械の制御システム30は、第1通信線35Aと、第2通信線35Bと、安全コントローラ40とを備える。
【0037】
図4に示されるように、走行コントローラ20、走行経路作成装置32、位置計測コントローラ33、マップ保存用データベース36及び安全コントローラ40は、第1通信線35Aに接続される。これらは、第1通信線35を介して互いに通信して情報を送受信する。走行コントローラ20及び安全コントローラ40は、第2通信線35Bにも接続される。これらは、第2通信線35Bを介して互いに通信して情報を送受信する。実施形態1において、第1通信線35A及び第2通信線35Bを用いた通信の規格は、ISO11898及びISO11519として標準化されたCAN(Controller Area Network)であるが、これに限定されない。
【0038】
ジャイロセンサ26は、ダンプトラック2の方位(方位変化量)を検出する。ジャイロセンサ26は、走行コントローラ20と接続される。ジャイロセンサ26は、検出結果である検出信号を走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26の検出信号に基づいて、ダンプトラック2の方位(方位変化量)を求めることができる。
【0039】
速度センサ27は、ダンプトラック2の走行速度を検出する。本実施形態において、速度センサ27は、車輪23の回転速度を検出して、ダンプトラック2の速度(走行速度)を検出する。速度センサ27は、走行コントローラ20と接続される。速度センサ27は、検出結果である検出信号を走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、速度センサ27の検出信号と、走行コントローラ20に内蔵されているタイマーからの時間情報とに基づいて、ダンプトラック2の移動距離を求めることができる。
【0040】
GPS受信器31は、GPSを用いてダンプトラック2の位置であるGPS位置を検出する位置検出手段である。GPS受信器31は、測位衛星5からの情報を受信するアンテナ31Aと、GPS基地局19からの補正観測情報を受信するアンテナ31Bと、が少なくとも接続される。アンテナ31Aは、測位衛星5から受信した情報に基づく信号をGPS受信器31に出力し、アンテナ31Bは、受信した補正観測情報に基づく信号をGPS受信器31に出力する。GPS受信器31は、測位衛星5からの情報と、GPS基地局19からの補正観測情報と、を用いて、アンテナ31Aの位置(GPS位置)を検出する。具体的には、GPS受信器31は、測位衛星5からの情報と、GPS基地局19からの補正観測情報と、を比較して、任意の測位衛星5までの距離を求め、更に、測位衛星5からの電波の位相を調べて、アンテナ31Aの位置(GPS位置)を検出する。本実施形態において、GPS受信器31は、RTK(Real Time Kinematic)−GNSSを用いるが、これに限定されない。
【0041】
GPS受信器31は、アンテナ31Aの位置(GPS位置)を検出することによって、ダンプトラック2の位置(GPS位置)を検出する。また、GPS受信器31は、アンテナ31Aの位置を検出する過程において、アンテナ31Aが情報を受信した測位衛星5の数などに基づいて、検出したGPS位置の精度を示すFix解、Float解、又はSingle解を検出する。GPS受信器31は、GPS位置を測位計算不能である場合に、非測位である信号を出力する。本実施形態において、Fix解のGPS位置の精度は、ダンプトラック2が自律走行を行うことができる精度であり、Float解、Single解のGPS位置の精度は、ダンプトラック2が自律走行を行うことができない精度であるが、これらに限定されない。このように、GPS受信器31は、検出したGPS位置の精度を示すFix解、Float解、又はSingle解を検出し、測位計算不能である場合に非測位である信号を走行経路作成装置32を介して走行コントローラ20及び位置計測コントローラ33に出力する。
【0042】
走行経路作成装置32は、
図3に示すように、管理装置10の処理装置12が生成した走行経路情報を記憶する経路位置記憶手段である経路位置記憶部32Aを備える。走行経路作成装置32は、アンテナ34Aが接続された無線通信装置34と接続している。無線通信装置34は、管理装置10及び自車両以外の作業機械4の少なくとも一つから送信された情報(指令信号を含む)を受信可能である。なお、自車両以外の作業機械4は、作業機械の制御システム30が設置されたダンプトラック2以外の作業機械4であり、ボーリング機械、掘削機械、積込機械、運搬機械、及び作業者が運転する車両を含む。即ち、自車両以外の作業機械4は、自車両以外のダンプトラック2を含む。
【0043】
無線通信装置34は、管制施設7の無線通信装置18が送信した走行経路情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報を受信して、走行経路作成装置32及び位置計測コントローラ33に出力する。なお、走行経路情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報は、X−Y座標で示されている。走行経路作成装置32は、無線通信装置34から走行経路情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報を受信すると、経路位置記憶部32Aに記憶する。走行経路作成装置32は、無線通信装置34から走行経路情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報を受信すると、自車両であるダンプトラック2の位置及び方位を無線通信装置34を通して、管制施設7の無線通信装置18に送信する。また、走行経路作成装置32は、第1通信線35Aに接続している。
【0044】
走行コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、不揮発性メモリと、を少なくとも備えるコンピュータである。走行コントローラ20は、GPS受信器31が検出したGPS位置及び位置計測コントローラ33が検出したダンプトラック2の位置を受信する。走行コントローラ20は、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置、又は位置計測コントローラ33の照合航法位置演算部33Bが検出したダンプトラック2の位置に基づいて、走行経路RPに従ってダンプトラック2を自律走行させる走行制御手段である。
【0045】
走行コントローラ20は、GPS受信器31の検出結果であるGPS位置、速度センサ27の検出結果であるダンプトラック2の走行速度、及びジャイロセンサ26の検出結果であるダンプトラック2の方位(方位変化量)に基づいて、ダンプトラック2の位置及び方位を特定する特定動作を行う。実施形態1において、走行コントローラ20は、GPS受信器31の検出結果であるGPS位置、速度センサ27の検出結果であるダンプトラック2の走行速度、及びジャイロセンサ26の検出結果であるダンプトラック2の方位(方位変化量)をカルマンフィルタKF(Kalman Filter)により統合して、ダンプトラック2の位置及び方位を特定する。具体的には、走行コントローラ20は、GPS受信器31からGPS位置が入力した時点のGPS位置及びジャイロセンサ26の検出結果である方位を基に、タイマーからの時間情報により速度センサ27の検出結果である走行速度を積分して、位置及び方位を特定する。走行コントローラ20は、位置及び方位の検出前、検出中、検出後のいずれかにおいてGPS位置をX−Y座標の位置に変換する。
【0046】
走行コントローラ20は、ダンプトラック2の位置が走行経路情報に含まれる走行経路RPの位置と重なる、即ち、ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行するように、ダンプトラック2のアクセル、制動装置及び操作装置2Sの少なくとも1つを制御する。このような制御により、走行コントローラ20は、ダンプトラック2を走行経路RPに沿って走行させる。走行コントローラ20の機能は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを読み込んでRAMの作業領域で実行することにより実現される。また、複数の処理回路が、連携して、走行コントローラ20の機能を実現してもよい。
【0047】
位置計測コントローラ33は、
図3に示すように、判定部33Aと、照合航法位置演算部33Bと、グリッドマップ作成部33Cと、を備える。位置計測コントローラ33は、ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行する際に、GPS受信器31の検出結果であるダンプトラック2のGPS位置及びレーザーセンサ24Bの検出結果から上方突出物VP(実施形態1において、主に土手BK)の位置を検出し、検出した上方突出物VPの有無及び位置を走行経路RPを含む稼働領域の地図情報MIとしてマップ保存用データベース36に記憶する計測出力手段である。位置計測コントローラ33は、第1通信線35に接続している。位置計測コントローラ33には、第1通信線35及び走行コントローラ20を介してジャイロセンサ26の検出結果であるダンプトラック2の方位(方位変化量)を示す検出信号及び速度センサ27の検出結果であるダンプトラック2の走行速度を示す検出信号が入力する。
【0048】
また、位置計測コントローラ33は、無線通信装置34、走行経路作成装置32及び第1通信線35Aを介して、GPS受信器31と接続している。位置計測コントローラ33には、GPS受信器31の検出結果であるGPS位置を示す検出信号が入力される。
【0049】
判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置精度が所定精度を超えているか(つまり高精度か)否かを判定する判定手段である。本実施形態において、判定部33Aは、GPS位置の解がFix解であるか否かを判定し、GPS位置の解がFix解であると、検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が高精度であると判定する。判定部33Aは、GPS位置の解がFloat解である場合、Single解である場合、又はGPS位置が非測位である場合に、検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が低精度であると判定する。なお、所定精度は、ダンプトラック2が、後述する推測航法により走行経路RPに従って自律走行することができるGPS位置精度である。本実施形態において、GPS受信器31がGPS位置及び解の検出を行うが、解の検出を他の機器(例えば、判定部33A)が行ってもよい。
【0050】
グリッドマップ作成部33Cは、稼働領域の地図情報を生成する。グリッドマップ作成部33Cは、例えばGPS受信器31で検出されたダンプトラック2のGPS位置精度が所定精度を超えている(つまり高精度)と判定部33Aによって判定された場合に、上記地図情報MIを生成する。
【0051】
グリッドマップ作成部33Cは、まず、レーザーセンサ24Bで検出された検出情報から、上方突出物VPの位置を抽出する抽出動作を行う。抽出動作を行う際、グリッドマップ作成部33Cは、まず判定部33Aで検出されたダンプトラック2の位置及び方位と、レーザーセンサ24Bで検出された検出情報とを統合する。そして、統合した結果から上方突出物VP以外の検出結果を削除し、上方突出物VPの被検出物情報を抽出する。
【0052】
グリッドマップ作成部33Cは、上記のように抽出した被検出物情報に基づいて、地図情報の生成動作を行う。生成動作を行う際、グリッドマップ作成部33Cは、例えば上記の被検出物情報を、稼働領域の地図情報MIとしてマップ保存用データベース36に記憶する。
【0053】
図7に示すように、地図情報MIは、平面視における鉱山の稼働領域における土手BK等の上方突出部VPの有無及びの位置を示している。また、
図8に示すように、地図情報MIは、X方向及びY方向に格子状に配置された矩形のグリッド領域GRによって構成されている。各グリッド領域GRは、平面視における鉱山の矩形領域に対応している。各グリッド領域GRには、X座標及びY座標が設定されている。各グリッド領域GRは、上方突出物VPが存在するか否か、即ち、0か1かの情報を含んでいる。本実施形態では、
図7及び
図8に示すように、上方突出物VPが存在する場合にはグリッド領域GRを黒色(1)で示し、上方突出部VPが存在しない場合にはグリッド領域GRを白色(0)で示しているが、これに限定されない。
【0054】
マップ保存用データベース36は、上方突出物VPの位置に関する情報を稼働領域の地図情報MIとして記憶する地図情報記憶手段であり、第1通信線35Aに接続している。マップ保存用データベース36は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つにより構成される。マップ保存用データベース36は、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置精度が所定精度を超えていると判定部33Aが判定すると、レーザーセンサ24Bの検出結果から走行経路RPを含む稼働領域の上方突出物VPに関する検出結果を抜き出して、抜き出した上方突出物VPに関する検出結果を稼働領域の地図情報MIとして記憶するものである。マップ保存用データベース36は、グリッドマップ作成部33Cが検出した検出結果を、グリッドマップ作成部33Cが検出する度に地図情報MIとして記憶する。本実施形態において、マップ保存用データベース36に記憶される地図情報MIは、グリッドマップ作成部33Cが検出する度に上書きされるが、これに限定されない。
【0055】
照合航法位置演算部33Bは、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置精度が所定精度以下であると判定部33Aが判定すると、ジャイロセンサ26の検出結果、速度センサ27の検出結果、レーザーセンサ24Bの検出結果、及びマップ保存用データベース36に記憶された地図情報MIに基づいて、ダンプトラック2の位置及び方位を検出する。照合航法位置演算部33Bは、
図6に示すように、ジャイロセンサ26の検出結果、速度センサ27の検出結果、レーザーセンサ24Bの検出結果、及びマップ保存用データベース36に記憶された地図情報MIをパーティクルフィルタPF(Particle Filter)により統合して、ダンプトラック2の位置及び方位を検出する。本実施形態において、照合航法位置演算部33Bは、位置及び方位を検出し、走行コントローラ20に出力する。本実施形態において、走行コントローラ20は、T3毎に照合航法位置演算部33Bが検出した位置及び方位が入力される。
【0056】
また、位置計測コントローラ33は、GPS受信器31又は照合航法位置演算部33Bが検出した自車両であるダンプトラック2の位置及び方位に関する情報を無線通信装置34を介して、管制施設7の無線通信装置18に送信する。
【0057】
さらに、位置計測コントローラ33は、
図3に示すように、観測点座標変換部38と、観測点利用可能判断部39とを備える。観測点座標変換部38は、レーザーセンサ24Bからの方向及び距離で規定された座標で示されたレーザーセンサ24Bの検出結果の位置を、X−Y座標に変換する。観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果の位置は、X軸方向とY軸方向とにくわえ、これらの直交する高さ方向(Z軸方向)により規定されている。観測点利用可能判断部39は、経路位置記憶部32Aから自車両以外の作業機械4の位置に関する情報が入力される。観測点利用可能判断部39は、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から各種のノイズ、地表から所定高さ以下の検出結果、及び自車両以外の作業機械4を検出したと予想される検出結果を除去する。観測点利用可能判断部39は、ノイズを除去したレーザーセンサ24Bの検出結果を、グリッド領域GRの検出結果に合成する。観測点利用可能判断部39は、合成した検出結果をグリッドマップ作成部33Cと、照合航法位置演算部33Bとの双方に出力する。
【0058】
図9及び
図10は、ダンプトラック2が積込場LPAにおいてレーザーセンサ24Bを用いて検出を行う場合の一例を説明する図である。
図9では、自車両であるダンプトラック2は、積込場LPAに入り込み、ダンプトラック2とは異なる他の作業機械(例えば積込機械である油圧ショベル、電気ショベル等)4が壁部Wから土砂を採掘している状態を示している。
【0059】
作業機械4によって採掘される土砂は、ダンプトラック2に積み込まれる。このため、ダンプトラック2は、土砂を積み込むため作業機械4の近傍の位置まで移動する。管制施設7は、積込場LPAの入り口から土砂の積み込み位置までの走行ルートを設定してダンプトラック2に送信する。ダンプトラック2は、受信した走行ルートに沿って走行する。
【0060】
このとき、ダンプトラック2は、
図9に示すように、照射範囲IAHにレーザー光を照射しつつ積込場LPAを走行する。壁部Wのうちレーザー光の照射範囲IAHに含まれる部分は、上方突出物VPの一部Sとして検出される。また、作業機械4についても、レーザー光の照射範囲IAHに含まれる場合には上方突出物VPの一部Sとして検出される。ダンプトラック2は、検出結果に基づいて地図情報MIを生成し、マップ保存用データベース36に記憶させる。
【0061】
作業機械4による採掘が進むと、
図10に示すように、壁部Wの一部が削られて凹状に変形する。作業機械4は、この凹部Waに入り込むように移動して採掘を進める。この状態でダンプトラック2が積込場LPAに入ってきた場合、土砂の積み込み位置は、
図9に示す位置よりも凹部Wa側の位置に設定される。この状態から、例えばダンプトラック2が照合航法位置演算部33Bによって位置及び方位を算出するとする。この場合、
図10に示すように、照射範囲IAHにレーザー光を照射しつつ積込場LPAを走行し、壁部W及び作業機械4を上方突出物VPの一部Sとして検出する。
【0062】
図11は、
図9に示す場合の検出によって生成された地図情報MIの一例を示す図である。
図12は、
図10に示す場合の検出によって生成された被検出物情報DIの一例を示す図である。
図11及び
図12に示すように、地図情報MI及び被検出物情報DIは、それぞれ壁部Wの上方突出物VPの一部Sに対応する被検出物情報S1と、作業機械4に対応する被検出物情報S1とを含んでいる。一方、被検出物情報DIには、壁部Wの凹部Waに対応する被検出物情報S1aが含まれている。この被検出物情報S1aは、地図情報MIには含まれていない。また、地図情報MIと被検出物情報DIとの間では、被検出物情報S1の位置がずれている。したがって、地図情報MIと被検出物情報DIとに基づいて照合航法位置演算部33Bがダンプトラック2の位置を演算する場合、互いの位置情報に不一致の部分が存在するため、演算結果の精度が低くなってしまう可能性がある。
【0063】
そこで、本実施形態では、演算結果の精度の低下を抑制するため、位置計測コントローラ33では、地図作成及び位置演算の際、上記の凹部Waのように作業の進行に伴い作業機械4を用いることで地形が変化する地形変化部分や作業機械4にマスク領域を設定し、被検出物情報の当該マスク領域の位置情報を用いないようにする、つまり、マスク領域の位置情報を除外した情報を用いるようにする。
【0064】
図13は、観測点利用可能判断部39の一例を示すブロック図である。
図13に示すように、観測点利用可能判断部39は、マスク領域設定部51と、情報設定部52とを有する。ダンプトラック2は、無線通信装置34を介して、地形変化部分又は他の作業機械4の位置に関する位置関連情報を受信可能である。マスク領域設定部51は、無線通信装置34で受信した位置関連情報に基づいて、地形変化部分又は他の作業機械4を含むマスク領域を設定する。
【0065】
図14から
図17は、地形変化部分及びマスク領域の一例を示す図である。
図14は、積込場LPAにおける例を示している。
図14に示すように、積込場LPAでは、油圧ショベル、電動ショベル等の作業機械4により、壁部Wの一部が採掘される。この場合、壁部Wのうち作業機械4によって採掘される部分Wbは、地形変化部分である。したがって、マスク領域設定部51は、作業機械4と、当該作業機械4によって採掘される部分(地形変化部分)Wbとを含む領域にマスク領域MA1を設定可能である。マスク領域MA1は、例えば所定の半径を有する円形の領域として設定される。なお、マスク領域MA1の形状は円形に限定するものではなく、楕円形や多角形等、他の形状のマスク領域MA1が設定されてもよい。
【0066】
図15は、排土場DPAのうちエッジダンプエリアにおける例を示している。
図15に示すように、排土場DPAのエッジダンプエリアでは、ダンプトラック2から崖部(エッジ部)Eに土砂等の積荷が排出される。ダンプトラック2が排出を繰り返す場合、排出された土砂等によって崖部Eの地形が変化することがある。この場合、積荷が排出される崖部Eは、地形変化部分である。そこで、マスク領域設定部51は、
図15に示すようなエッジダンプエリアの地形変化部分である崖部Eを含む領域にマスク領域MA2を設定可能である。この場合、マスク領域MA2は、崖部Eに沿って帯状に形成される。マスク領域MA2としては、1つの領域が矩形状に設定されるが、これに限定するものではなく、複数の領域が設定されてもよいし、矩形状とは異なる形状であってもよい。
【0067】
図16は、排土場DPAのうちパドックダンプエリアにおける例を示している。
図16に示すように、排土場DPAのパドックダンプエリアでは、異なる排出位置が順次管制施設7から送信され、ダンプトラック2から路面Fに土砂等の積荷が排出される。排出された積荷は路面Fに積み上げられる。ダンプトラック2が排出を繰り返す場合、排出された土砂等が路面Fの複数箇所に配置されるため、路面Fの地形が変化する。この場合、積荷が配置される路面Fは、地形変化部分である。そこで、マスク領域設定部51は、
図16に示すようなパドックダンプエリアの路面Fのうち土砂等が配置されうる領域にまとめてマスク領域MA3を設定可能である。この場合、マスク領域MA3としては、1つの領域が矩形状に設定されるが、これに限定するものではなく、複数の領域が設定されてもよいし、矩形状とは異なる形状であってもよい。
【0068】
図17は、搬送路HLにおける例を示している。
図17に示すように、搬送路HLには、ダンプトラック2が走行する。また、搬送路HLには、当該搬送路HLの土手BK等を補修する補修用車両5が走行する。補修用車両5によって土手BKが補修されることにより、土手BKの地形が変化する。この場合、土手BKは、地形変化部分である。そこで、マスク領域設定部51は、
図17に示すように、補修用車両5の走行軌跡に沿った領域にマスク領域MA4を設定可能である。この場合、マスク領域MA4は、土手BKを含んでもよい。
【0069】
マスク領域設定部51は、管制施設7からの位置関連情報に基づいて、上記のマスク領域MA1〜MA4を設定する。上記の積込場LPAの例では、位置関連情報として、油圧ショベル、電動ショベル等の作業機械4の位置に関する情報や、作業機械4によって採掘される位置に関する情報等が含まれる。また、上記のエッジダンプエリアの例では、位置関連情報として、ダンプトラック2が積荷を排出する予定の位置に関する情報等が含まれる。また、上記のパドックダンプエリアの例では、位置関連情報として、ダンプトラック2が排出する予定の位置に関する情報などが含まれる。
【0070】
また、上記の搬送路HLの例では、位置関連情報として、補修用車両5の走行位置に関する情報等が含まれる。補修用車両5の走行位置が変化する場合、マスク領域設定部51は、補修用車両5の走行位置を推定し、推定結果に基づいてマスク領域MA4を設定してもよい。
【0071】
情報設定部52は、被検出物情報がマスク領域MA内に存在するか否かを判別する。情報設定部52は、マスク領域MA内に被検出物情報が存在すると判別した場合、マスク領域MA内に存在する被検出物情報を移動物体情報として設定する。以下、情報設定部52の機能について具体例を挙げて説明する。
【0072】
図18及び
図19は、積込場LPAにおいてマスク領域MA1が設定された状態でレーザーセンサ24Bによる検出を行う場合の例を説明する図である。
図18に示すように、自車両であるダンプトラック2は、積込場LPAを走行しつつ、照射範囲IAHにレーザー光を照射する。ダンプトラック2は、壁部W及び作業機械4を上方突出物VPの一部Sとして検出すると共に、検出結果に基づいて地図情報MIを生成する。
【0073】
この状態で作業機械4による採掘が進むと、
図19に示すように、壁部Wの一部が削られて凹状に変形する。ただし、凹部Wa及び作業機械4は、マスク領域MA1内に収まっている。この状態でダンプトラック2が積込場LPAに入り、照合航法位置演算部33Bによって位置及び方位を算出するとする。この場合、
図19に示すように、照射範囲IAHにレーザー光を照射しつつ積込場LPAを走行し、壁部W及び作業機械4を上方突出物VPの一部Sとして検出する。
【0074】
図20は、
図18に示す場合に得られる被検出物情報DI及び地図情報MIの一例を示す図である。被検出物情報DIには、作業機械4に対応する被検出物情報S1が含まれている。この状態で、情報設定部52は、内外判定処理などにより、レーザーセンサ24Bで検出された上方突出物VPの位置情報がマスク領域MA1に存在するか否かを判別する。例えば情報設定部52は、マスク領域MA1内に被検出物情報S1の一部と被検出物情報S1とが存在することを判別する。マスク領域MA1内に上方突出物VPの位置情報が存在すると判別された場合、情報設定部52は、当該マスク領域MA1内の上方突出物VPの位置情報を削除する。これにより、被検出物情報S1が削除される。その後、グリッドマップ作成部33Cは、位置情報を削除した被検出物情報DIに基づいて地図情報MIを作成する。
図20に示すように、地図情報MIには、マスク領域MA1に沿った形状を削除された部分の被検出物情報S3が形成されている。
【0075】
一方、
図21は、
図19に示す場合に得られる被検出物情報DIの一例を示す図である。被検出物情報DIには、凹部Waに対応する被検出物情報S1aと、作業機械4に対応する被検出物情報S1とが含まれている。この状態で、情報設定部52は、内外判定処理などにより、マスク領域MA1に上方突出物VPの位置情報が存在するか否かを判別する。例えば情報設定部52は、マスク領域MA1内に被検出物情報S1a及び被検出物情報S1が存在することを判別する。マスク領域MA1内に上方突出物VPの位置情報が存在すると判別された場合、情報設定部52は、当該マスク領域MA1内の上方突出物VPの位置情報を削除する。これにより、被検出物情報S1a及び被検出物情報S1が削除される。
図21に示すように、被検出物情報DIaには、マスク領域MA1に沿った形状の削除部分S3が形成されている。この被検出物情報DIaの位置情報は、
図20に示す地図情報MIの位置情報と一致する。したがって、
図20に示す地図情報MIと、被検出物情報DIaとに基づいて照合航法位置演算部33Bがダンプトラック2の位置を演算する場合、互いの位置情報の間での不一致部分が除去されるため、演算結果の精度が低下することを抑制できる。
【0076】
位置計測コントローラ33は、通信用の入出力と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing unit)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、CPUにより情報が登録される不揮発性メモリとを少なくとも備えるコンピュータである。判定部33A、照合航法演算部33B、グリッドマップ作成部33C、観測点座標変換部38、及び観測点利用可能判断部39の機能は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを読み込んでRAMの作業領域で実行することにより実現される。不揮発性メモリは、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。また、複数の処理回路が、連携して、判定部33A、照合航法演算部33B、グリッドマップ作成部33C、観測点座標変換部38、及び観測点利用可能判断部39の機能を実現してもよい。
【0077】
安全コントローラ40は、レーダー24A及びレーザーセンサ24Bの検出信号に基づいて、ダンプトラック2と障害物との相対位置を求める。安全コントローラ40は、障害物との相対位置を用いて、アクセル、制動装置23B及び操作装置2Sの少なくとも1つを制御するための指令を生成し、走行コントローラ20に出力する。走行コントローラ20は、安全コントローラ40から取得した指令に基づいてダンプトラック2を制御して、ダンプトラック2が障害物に衝突することを回避する。
【0078】
また、走行コントローラ20は、判定部33AがGPS位置の解がFloat解である場合、Single解である場合、又はGPS位置が非測位であることが所定時間経過し、照合航法位置演算部33Bがマップ保存用データベース36に記憶された地図情報MIとの最終推定値が所定値よりも低いレーザーセンサ24Bの検出結果しか得られない場合に、走行コントローラ20に車両本体21を停車させる制動装置23Bを制御するための指令を出力する。
【0079】
<作業機械の制御方法>
次に、本実施形態に係る作業機械の制御方法、即ち作業機械の制御システム30の動作の一例について説明する。
図22は、本実施形態に係る作業機械の制御システムのフローチャートの一例である。
図23は、
図22のステップST3のフローチャートの一例である。
【0080】
作業機械の制御方法は、稼働領域を走行経路RPに従って走行するダンプトラック2の作業機械の制御方法である。作業機械の制御方法において、処理装置12は、無線通信装置18を介して、ダンプトラック2の走行経路作成装置32及び位置計測コントローラ33に指令信号を送信する。指令信号は、ダンプトラック2の走行条件に関する情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報を含む。走行条件に関する情報は、処理装置12で生成された走行経路情報、及びダンプトラック2の走行速度に関する情報を含む。走行経路作成装置32は、通信システム9を介して送信された処理装置12からの指令信号のうち走行経路情報及び自車両以外の作業機械4の位置に関する情報を経路位置記憶部32Aに記憶する。位置計測コントローラ33は、走行経路作成装置32が走行経路情報を含む処理装置12からの指令信号を受信すると、無線通信装置34を介して、自車両であるダンプトラック2の位置及び方位に関する情報を処理装置12に送信する。走行コントローラ20は、処理装置12からの指令信号に基づいて、ダンプトラック2のアクセル、制動装置23B及び操作装置2Sを制御して、ダンプトラック2の走行を制御する。
【0081】
作業機械の制御システム30の走行コントローラ20は、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置に基づいて、走行経路RPに従ってダンプトラック2を推測航法により走行させるステップST1を実行する。本実施形態において、走行コントローラ20は、管理装置10の処理装置12により生成された走行経路情報、及び処理装置12で設定された走行速度(目標走行速度)を含む走行条件に従って、ダンプトラック2を積込場LPA、排土場DPA、搬送路HL、及び交差点ISの少なくとも一部で走行させる。推測航法とは、既知の位置からの方位(方位変化量)と移動距離とに基づいて、対象物(ダンプトラック2)の現在位置を推測する航法をいう。ダンプトラック2の方位(方位変化量)は、ダンプトラック2に配置されたジャイロセンサ26を用いて検出される。ダンプトラック2の移動距離は、ダンプトラック2に配置された速度センサ27を用いて検出される。ジャイロセンサ26の検出信号及び速度センサ27の検出信号は、ダンプトラック2の走行コントローラ20に出力される。
【0082】
走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26からの検出信号に基づいて、既知の起点からのダンプトラック2の方位(方位変化量)を求めることができる。走行コントローラ20は、速度センサ27からの検出信号に基づいて、既知の起点からのダンプトラック2の移動距離を求めることができる。走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26からの検出信号及び速度センサ27からの検出信号に基づいて、ダンプトラック2が生成された走行経路RPに従って走行するように、ダンプトラック2の走行に関する制御量を生成する。制御量は、アクセル信号、制動信号、及び操舵信号を含む。走行コントローラ20は、操舵信号、アクセル信号及び制動信号に基づいて、ダンプトラック2の走行(操作)を制御する。
【0083】
次に、推測航法により求められた推測位置がRTK−GNSS又は照合航法位置演算部33Bを使って補正されつつダンプトラック2が走行する例について説明する。ダンプトラック2の走行距離が長くなると、ジャイロセンサ26及び速度センサ27の一方又は両方の検出誤差の蓄積により、推測された位置(推測位置)と実際の位置との間に誤差が生じる可能性がある。その結果、ダンプトラック2は、処理装置12によって生成された走行経路RPから外れて走行してしまう可能性がある。本実施形態において、走行コントローラ20は、推測航法により導出(推測)されたダンプトラック2の位置(推測位置)を、GPS受信器31により検出されたGPS位置又は照合航法位置演算部33Bが検出した位置を使って補正しつつ、ダンプトラック2を走行させる。走行コントローラ20は、ジャイロセンサ26からの検出信号と、速度センサ27からの検出信号と、GPS受信器31からのGPS位置又は照合航法位置演算部33Bが検出した位置とに基づいて、ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行するように、ダンプトラック2の位置を補正する補正量を含む、ダンプトラック2の走行に関する制御量を算出する。走行コントローラ20は、ダンプトラック2が走行経路RPに従って走行するように、算出した補正量及び制御量に基づいて、ダンプトラック2の走行(操作)を制御する。
【0084】
次に、位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置精度が所定精度を超えているか否かを判定するステップST2を実行する。即ち、ステップST2において、位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置の精度が高精度であるか否かを判定する。具体的には、位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解であるか否かを判定する。
【0085】
位置計測コントローラ33の判定部33Aが、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解であると判定する、即ち、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置精度が高精度であると判定する(ステップST2:Yes)と、グリッドマップ作成部33Cが、地図情報MIを作成する(ステップST3)。即ち、位置計測コントローラ33は、GPS受信器31が検出したGPS位置精度が高精度であると判定すると、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置に基づいて経路位置記憶部32Aが記憶した走行経路RPに従ってダンプトラック2を自律走行させるとともに、レーザーセンサ24Bの検出結果から上方突出物VPに関する検出結果を抜き出して、抜き出した上方突出物VPに関する検出結果を稼働領域の地図情報MIとしてマップ保存用データベース36に記憶するステップST3を実行する。
【0086】
具体的には、まず、マスク領域設定部51は、管制施設7から送信される位置関連情報に基づいて、積込場LPA、排土場DPA、搬送路HL、及び交差点ISの各部にマスク領域MAを設定する(ステップST31)。
【0087】
次に、観測点座標変換部38は、レーザーセンサ24Bから方向及び距離で規定された座標で示されたレーザーセンサ24Bの検出結果の位置を、X−Y座標で示された座標の位置に変換して被検出物情報DIを生成する(ステップST32)。
【0088】
次に、情報設定部52は、被検出物情報DIにおいてマスク領域MA内に上方突出物VPの被検出物情報が含まれるか否かを判断する(ステップST33)。マスク領域MA内に上方突出物VPの被検出物情報が存在しないと判別された場合(ステップST33のNo)、当該被検出物情報DIから上方突出物VPの被検出物情報を抽出する抽出動作を行う(ステップST34)。
【0089】
また、マスク領域MA内に上方突出物VPの被検出物情報が存在すると判別された場合には(ステップST33のYes)、位置計測コントローラ33は、被検出物情報DIからマスク領域MA内の上方突出物VPの位置情報を削除し(ステップST35)、その後、抽出動作を行う(ステップST34)。
【0090】
抽出動作を行う場合、観測点利用可能判断部39は、まず、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果の各種のノイズを除去する。具体的には、観測点利用可能判断部39は、ノイズとして、反射強度の低い検出結果、レーザー光線が透明物体を通過したと思われる検出結果、レーザー光線が埃を検出したと思われる検出結果、地面によりレーザー光線が反射されたと思われる検出結果、及びレーザー光線が地面上の土の塊を検出したと思われる検出結果を、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から除去する。
【0091】
なお、ステップST31において、観測点利用可能判断部39は、まず、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果の各種のノイズを除去する。具体的には、観測点利用可能判断部39は、ノイズとして、反射強度の低い検出結果、レーザー光線が透明物体を通過したと思われる検出結果、レーザー光線が埃を検出したと思われる検出結果、地面によりレーザー光線が反射されたと思われる検出結果、及びレーザー光線が地面上の土の塊を検出したと思われる検出結果を、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から除去する。
【0092】
観測点利用可能判断部39は、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から、ダンプトラック2からの距離が最大距離以上の検出結果、及び距離が最少距離以下の検出結果を除去する。本実施形態において、所定の最大距離は、太陽光によるノイズを除去するために必要な距離であり、所定の最少距離は、レーザーセンサ24Bから近距離で起こる濃い埃のノイズを除去するための距離である。
【0093】
観測点利用可能判断部39は、観測点座標変換部38により座標が変換された検出結果から地表から所定高さ以下の検出結果を除去する。本実施形態において、観測点利用可能判断部39は、所定高さ以下の検出結果を除去するが、これに限定されない。このように、観測点利用可能判断部39は、検出結果から各種のノイズなどを除去する。
【0094】
観測点利用可能判断部39は、各種のノイズなどが除去された検出結果を、X−Y座標で位置が示されたグリッド領域GRで構成される検出結果に合成する。観測点利用可能判断部39は、合成した検出結果をグリッドマップ作成部33Cと、照合航法位置演算部33Bとの双方に出力する。
【0095】
その後、位置計測コントローラ33のグリッドマップ作成部33Cは、観測点利用可能判断部39が合成した検出結果である上方突出物VPの位置を走行経路RPの地図情報MIとしてマップ保存用データベース36に記憶する(ステップST36)。これにより、地図情報の作成が行われる。
【0096】
また、
図24に示すように、位置計測コントローラ33の判定部33Aは、GPS受信器31が検出したGPS位置の解がFix解ではないと判定する、即ち、GPS受信器31が検出したダンプトラック2のGPS位置精度が所定精度以下であると判定する(ステップST2:No)と、照合航法位置演算部33Bが、レーザーセンサ24Bの検出結果及びマップ保存用データベース36に記憶された地図情報MIに基づいて、ダンプトラック2の位置及び方位を検出して、走行経路RPに従ってダンプトラック2を走行させる(ステップST4)。即ち、位置計測コントローラ33は、GPS受信器31が検出したGPS位置精度が所定精度以下であると判定すると、レーザーセンサ24Bの検出結果とマップ保存用データベース36が記憶した地図情報MIとを照合することにより、ダンプトラック2の位置及び方位を算出する。
【0097】
具体的には、地図作成の場合と同様に、観測点座標変換部38は、レーザーセンサ24Bから方向及び距離で規定された座標で示されたレーザーセンサ24Bの検出結果の位置を、X−Y座標の位置に変換する被検出物情報DIを生成する(ステップST41)。次に、情報設定部52は、被検出物情報DIにおいてマスク領域MA内に位置情報が含まれるか否かを判断する(ステップST42)。マスク領域MA内に位置情報が含まれないと判断された場合(ステップST42のNo)、被検出物情報DIから上方突出物VPの位置情報を抽出する抽出動作を行う(ステップST43)。また、マスク領域MA内に位置情報が含まれると判断された場合(ステップST42のYes)、位置計測コントローラ33は、被検出物情報DIからマスク領域MA内の位置情報を削除した後(ステップST44)、抽出動作を行う(ステップST43)。なお、ステップST41からステップST44までの処理は、上記のステップST32からステップST35までの処理と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0098】
その後、照合航法位置演算部33Bは、ダンプトラック2の位置及び方位を算出する(ステップST45)。ステップST45において、照合航法位置演算部33Bは、観測点利用可能判断部39によりノイズが除去された検出結果をアイソレーションフィルタ(Isolation Filter)に通して、検出結果を間引きする。具体的には、照合航法位置演算部33Bは、観測点利用可能判断部39によりノイズが除去された検出結果のうち互いに所定距離以上離れた検出結果のみ残し、他の検出結果を除去する。
【0099】
照合航法位置演算部33Bは、ジャイロセンサ26の検出結果、速度センサ27の検出結果、レーザーセンサ24Bの検出結果、及びマップ保存用データベース36に記憶された地図情報MIをパーティクルフィルタPFにより統合して、ダンプトラック2の位置及び方位を検出する。具体的には、照合航法位置演算部33Bは、ジャイロセンサ26の検出結果である方位及び速度センサ27の検出結果である走行速度を基に、ある時点でダンプトラック2が存在すると予想される範囲内の複数の位置及び方位を算出する。
【0100】
照合航法位置演算部33Bは、マップ保存用データベース36に保存された地図情報MIに基づいて、ダンプトラック2が存在すると予想される各位置及び方位にダンプトラック2が位置する場合にレーザーセンサ24Bが検出すると予想される検出結果を推定する。照合航法位置演算部33Bは、レーザーセンサ24Bが検出すると予想される検出結果と、レーザーセンサ24Bが現実に検出した検出結果とを照合して、各位置及び方位においてレーザーセンサ24Bが検出すると予想される検出結果のレーザーセンサ24Bが現実に検出した検出結果に対する尤度を算出する。照合航法位置演算部33Bは、各位置及び方位の尤度を正規化する。
【0101】
照合航法位置演算部33Bは、各位置及び方位においてレーザーセンサ24Bが検出すると予想される検出結果の尤度と各位置とから最終推定値を算出し、レーザーセンサ24Bが検出すると予想される検出結果がレーザーセンサ24Bが現実に検出した検出結果に最も似る位置及び方位を算出する。照合航法位置演算部33Bは、最も似る位置及び方位をダンプトラック2の位置及び方位として検出する。照合航法位置演算部33Bは、最も似る位置及び方位を算出した際に、最も似る位置及び方位の推定精度、信頼度も算出する。
【0102】
以上のように、本実施形態によれば、抽出動作、生成動作及び特定動作を行う際、被検出物情報DIのうち鉱山の一部に設定されるマスク領域MAの被検出物情報を用いないようにするため、ダンプトラック2の位置を演算する際に、演算結果の精度の低下を抑制することができる。これにより、鉱山における生産性の低下を抑制できる。
【0103】
本実施形態で説明した鉱山に設定された走行経路に沿って無人で走行するダンプトラックの制御システムでは、走行経路が搬送路内の同じ位置に設定され、所定の精度ないで走行経路に沿って走行している。そのため、走行中に行われる土手の形状などの上方突出部の検出がほぼ同じ位置から行われるため、検出結果のばらつきが抑えられる。したがって、地形情報の作成や位置の特定の精度を向上することができる。
【0104】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、マスク領域MA内の位置情報をすべて除去する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。
【0105】
図25は、ダンプトラック2が積込場LPAにおいてレーザーセンサ24Bを用いて検出を行う場合の変形例を説明する図である。
図25に示すように、積込場LPAには、ターゲットTGが配置されている。マスク領域MAが広範囲に設定される場合、除去される被検出物情報が多くなるため、利用可能な被検出物情報が少なくなってしまう可能性がある。この場合、照合航法位置演算部33Bの算出動作において利用可能な被検出物情報が少なくなり、演算結果の精度が低下する可能性がある。そこで、積込場LPA等にターゲットTGを配置し、当該ターゲットTGを含む部分については、マスク領域MA内に含まれた場合でも被検出物情報を用いるように設定することができる。
【0106】
図26は、
図25の例において位置検出を行った場合の被検出物情報DIを示す図である。
図26に示すように、被検出物情報DIには、マスク領域MAの外側の壁部Wの被検出物情報S11、S12と、ターゲットTGの配置領域TA内のターゲットTGの被検出物情報S13、S14とが含まれている。また、被検出物情報DIには、マスク領域MA内の壁部Wや作業機械4については含まれていない。この被検出物情報DIに基づいて地図情報MIが生成される場合、マスク領域MAの近傍の壁部Wについての被検出物情報を用いることができないが、ターゲットTGの被検出物情報S13、S14を用いることができる。このため、照合航法位置演算部33Bの特定動作においては、ダンプトラック2の位置及び方位を高精度に算出できる。
【0107】
また、上記実施形態では、マスク領域MAが直線又は曲線で囲まれた領域として設定される場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。
図27は、積込場LPAに設定されるマスク領域MAの変形例を示す図である。
図27に示すように、マスク領域MAaが、格子状に区画された複数の単位領域UAを含む領域として設定し、単位領域UAごとに処理を行ってもよい。これにより、直線又は曲線で囲まれた領域として設定される場合に比べて、レーザの観測点の内外判定が容易となるため、計算コストを削減することができる。
【0108】
また、上記実施形態においてマスク領域MAを設定した後、マスク領域MAの位置を変更したり、マスク領域MAの設定を解除したりしてもよい。
図28は、積込場LPAに設定されるマスク領域MAの変形例を示す図である。
図28に示すように、作業機械4が積込場LPA内で移動する場合、作業機械4によって採掘される壁部Wの位置も移動する。このため、形状が変形する形状変形部分の位置が移動することになる。そこで、
図28に示すように、作業機械4の位置に対応して、マスク領域MAの位置を変更させてもよい。また、作業機械4の動作が停止した場合、マスク領域MAの設定が解除されてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、ダンプトラック2が個々にマスク領域MAを設定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、一のダンプトラック2がマスク領域MAを設定又は設定解除した後、当該設定又は設定解除したマスク領域MAの位置情報をマスク領域情報として管制施設7に送信する構成であってもよい。また、管制施設7では、ダンプトラック2から送信されたマスク領域情報を受信し、管理装置10に保存させてもよい。管制施設7は、各ダンプトラック2からのマスク領域情報を受信した場合、管理装置10に保存されるマスク領域情報を更新してもよい。
【0110】
また、ダンプトラック2から管制施設7に対して例えば一定時間ごとにマスク領域MAの位置情報を送信するように要求し、ダンプトラック2からの要求があった場合に管制施設7がダンプトラック2に最新のマスク領域情報を送信する構成であってもよい。この場合、ダンプトラック2は、受信した最新のマスク領域情報に基づいてマスク領域MAを設定することができる。
【0111】
なお、ダンプトラック2が一定期間電源を停止させている場合、この期間には管制施設7に対してマスク領域情報を要求することができない。したがって、この場合には、ダンプトラック2の電源をオンにする際に管制施設7に対してマスク領域情報の要求を行ってもよい。
【0112】
図29は、ダンプトラック2と管制施設7との間の通信動作の一例を示すフローチャートである。
図29に示すように、例えば一定時間の電源停止の後、ダンプトラック2が電源をオンにした場合(ステップST51)、電源停止の期間に更新されたマスク領域情報を送信するように管制施設7に要求する(ステップST52)。ステップST52では、例えばダンプトラック2は、電源停止の期間を示すオフ期間情報を管制施設7に送信する。管制施設7は、ダンプトラック2から送信されたオフ期間情報に基づいて、当該ダンプトラック2の電源停止期間に更新されたマスク領域情報を検索し(ステップST61)、該当するマスク領域情報をダンプトラック2に送信する(ステップST62)。ダンプトラック2は、マスク領域情報を受信した場合(ステップST53のYes)、当該マスク領域情報に基づいてマスク領域MAを設定する(ステップST54)。その後、ダンプトラック2は、自律走行を開始させる(ステップST55)。これにより、ダンプトラック2が一定期間電源を停止させる場合であっても、電源を再度オンにする際に更新されたマスク領域MAの更新情報を取得することができる。
【0113】
また、上記実施形態では、ダンプトラック2のマスク領域設定部51がマスク領域MAを設定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、管制施設7がマスク領域MAを設定してもよい。この場合、設定されたマスク領域MAの情報は、無線通信装置18からダンプトラック2に送信されてもよい。また、作業者が手作業でマスク領域MAを設定してもよい。
【0114】
管制装置7がマスク領域MAを設定する場合、鉱山のサイトマップに応じて処理装置12がマスク領域MAを設定してもよい。サイトマップに開発情報データが組み込まれる場合、地形変化部分に対して自動でマスク領域MAが設定されてもよい。開発情報は、例えば採掘場所情報又は搬送路補修計画情報を含む。また、オペレータが表示装置16を見ながら、タッチパネル又はマウスのような入力デバイスで所望の箇所に任意形状のマスク領域MAを設定してもよい。
【0115】
また、サービスカーやダンプトラックに処理装置、表示装置、及び入力装置を設けておき、サービスマンやオペレータが上述の管制オペレータと同様の手順でマスク領域MAを設定してもよい。