特許第6475237号(P6475237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475237
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/20 550
   A61M5/20 572
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-524772(P2016-524772)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公表番号】特表2016-536060(P2016-536060A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014064423
(87)【国際公開番号】WO2015004048
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】13175660.3
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケンプ
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/034984(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/063030(WO,A1)
【文献】 特表2010−532189(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02489380(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注射器(1)であって:
ケース(2)と、
該ケース(2)内に摺動可能に配置され、ストッパ(6)を含むシリンジ(3)を保持するように適用されたシリンジキャリア(8)と;
該シリンジキャリア(8)内に摺動可能に配置され、ストッパ(6)に力を加えるように適用されたプランジャ(12)と;
該プランジャ(12)内に配置され、プランジャ(12)をシリンジキャリア(8)に対して付勢する駆動ばね(10)と;
ケース(2)内に摺動可能に配置され、シリンジキャリア(8)の上に嵌め込み式に配置されたニードルシュラウド(7)と;
(i)該ニードルシュラウド(7)をシリンジキャリア(8)に連結するように適用され、かつ(ii)ニードルシュラウド(7)をケース(2)に連結するように適用された戻り止め機構(14)と
を含み、
該戻り止め機構(14)は、シリンジキャリア(8)のキャリア開口部(8.6)と解放可能に係合するシュラウドボス(7.1)を有するニードルシュラウド(7)の弾性シュラウドビーム(7.2)を含む、前記自動注射器。
【請求項2】
ケース(2)は、ニードルシュラウド(7)が第1の伸張位置(FEP)にあるときにシュラウドボス(7.1)と当接する近位ケースボス(2.9)を含む、請求項1に記載の自動注射器(1)。
【請求項3】
プランジャ(12)を解放可能にシリンジキャリア(8)に連結するように適用されたプランジャ解放機構(15)をさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項4】
プランジャ解放機構(15)は、プランジャ(12)のプランジャ開口部(12.1)と解放可能に係合するキャリアボス(8.4)を有するシリンジキャリア(8)の弾性キ
ャリアビーム(8.3)を含む、請求項3に記載の自動注射器(1)。
【請求項5】
自動注射器(1)であって:
ケース(2)と、
該ケース(2)内に摺動可能に配置され、ストッパ(6)を含むシリンジ(3)を保持するように適用されたシリンジキャリア(8)と;
該シリンジキャリア(8)内に摺動可能に配置され、ストッパ(6)に力を加えるように適用されたプランジャ(12)と;
該プランジャ(12)内に配置され、プランジャ(12)をシリンジキャリア(8)に対して付勢する駆動ばね(10)と;
ケース(2)内に摺動可能に配置され、シリンジキャリア(8)の上に嵌め込み式に配置されたニードルシュラウド(7)と;
(i)該ニードルシュラウド(7)をシリンジキャリア(8)に連結するように適用され、かつ(ii)ニードルシュラウド(7)をケース(2)に連結するように適用された戻り止め機構(14)と;
シリンジキャリア(8)上に摺動可能に配置されたカラー(16)と;
該カラー(16)に付勢力を加える制御ばね(9)と
を含む、前記自動注射器(1)。
【請求項6】
カラー(16)は、シリンジキャリア(8)の段(8.5)と解放可能に係合するように適用されたカラーボス(16.1)を有する弾性カラービーム(16.2)を含む、請求項5に記載の自動注射器(1)。
【請求項7】
カラー(16)は、ニードルシュラウド(7)が第1の伸張位置(FEP)にあるときにキャリアボス(8.4)に当接する、請求項に記載の自動注射器(1)。
【請求項8】
カラー(16)、ニードルシュラウド(7)およびシリンジキャリア(8)は、ニードルシュラウド(7)が第1の伸張位置(FEP)から第1の後退位置(FRP)へと動くときにケース(2)に対して近位に動く、請求項7に記載の自動注射器(1)。
【請求項9】
シリンジキャリア(8)の近位端(8.1)は、ニードルシュラウド(7)が第1の後退位置(FRP)にあるときに、フィードバックをもたらすようにケース(2)の近位端(2.11)に当接する、請求項7に記載の自動注射器(1)。
【請求項10】
キャリア開口部(8.6)と解放可能に係合するシュラウドボス(7.1)は、ニードルシュラウド(7)が第1の後退位置(FRP)にあるときに、近位ケースボス(2.9)の近位にある、請求項8に記載の自動注射器(1)。
【請求項11】
シリンジキャリア(8)は、ニードルシュラウド(7)が第1の後退位置(FRP)の近位の第2の後退位置(SRP)にあるときに、シュラウドボス(7.1)がキャリア開口部(8.6)を係合解除すると、遠位に前進する、請求項10に記載の自動注射器(1)。
【請求項12】
シュラウドボス(7.1)がキャリア開口部(8.6)を係合解除すると、カラー(16)はシリンジキャリア(8)を遠位に、シリンジキャリア(8)がケース(2)の前方止め具(2.8)に当接するまで押し、カラー(16)はまた、制御ばね(9)の付勢力を受けてシリンジキャリア(8)を係合解除し、ニードルシュラウド(7)をケース(2)に対して第2の伸張位置(SEP)になるまで押す、請求項11に記載の自動注射器(1)。
【請求項13】
カラー(16)がシリンジキャリア(8)を係合解除すると、キャリアボス(8.4)はプランジャ開口部(12.1)を係合解除してプランジャ(12)を解放する、請求項12に記載の自動注射器(1)。
【請求項14】
シュラウドボス(7.1)は、ニードルシュラウド(7)が第2の伸張位置(SEP)にあるときに遠位ケースボス(2.10)に当接する、請求項12に記載の自動注射器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射を投与することは、使用者および医療専門家にとって精神的にも肉体的にもいくつかの危険および課題をもたらす作業である。注射デバイスは、典型的には手動デバイスおよび自動注射器の2つのカテゴリーに分けられる。従来の手動デバイスでは、薬剤を針の中に通すための手動力が必要とされる。これは通常、注射中に継続して押されなければならない何らかの形のボタン/プランジャによって行われる。この手法には多数の欠点が伴う。たとえば、ボタン/プランジャが早期に解放された場合、注射が中断することになり、注射器は意図された用量を患者に送達することができない。さらに、ボタン/プランジャを押すために必要な力が使用者には大きすぎることもある(たとえば、使用者が高齢または子供である場合)。また、注射デバイスを位置合わせすること、注射すること、および注射中に注射デバイスを静止させておくことは器用さを必要とすることがあるが、この器用さが一部の患者(たとえば、高齢の患者、子供、関節炎の患者など)にはないこともある。
【0003】
自動注射器は、自己注射を患者にとってより容易なものにすることを目的とする。従来の自動注射器は、注射するための力をばねによって与え、トリガボタンまたは他の機構を使用して注射を起動することができる。自動注射器は、使い捨てとすることも再利用可能とすることもできる。
【0004】
改善された自動注射器が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善された自動注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な実施形態では、本発明による自動注射器は、ケースと、ケース内に摺動可能に配置され、ストッパを含むシリンジを保持するように適用されたシリンジキャリアと、シリンジキャリア内に摺動可能に配置され、ストッパに力を加えるように適用されたプランジャと、プランジャ内に配置され、プランジャをシリンジキャリアに対して付勢する駆動ばねとを含む。
【0007】
例示的な実施形態では、自動注射器はさらに、ケース内に摺動可能に配置されたニードルシュラウドを含む。ニードルシュラウドは、シリンジキャリアの上に嵌め込み式に配置される。例示的な実施形態では、自動注射器はさらに、ニードルシュラウドをシリンジキャリアに連結するように適用され、かつニードルシュラウドをケースに連結するように適用された戻り止め機構を含む。戻り止め機構は、シリンジキャリアのキャリア開口部と解放可能に係合するシュラウドボスを有するニードルシュラウドの弾性シュラウドビームを含む。ケースは、ニードルシュラウドが第1の伸張位置にあるときにシュラウドボスと当接する近位ケースボスを含む。
【0008】
例示的な実施形態では、自動注射器はさらに、プランジャを解放可能にシリンジキャリアに連結するように適用されたプランジャ解放機構を含む。プランジャ解放機構は、プランジャのプランジャ開口部と解放可能に係合するキャリアボスを有するシリンジキャリアの弾性キャリアビームを含む。
【0009】
例示的な実施形態では、自動注射器はさらに、シリンジキャリア上に摺動可能に配置されたカラーと、カラーに付勢力を加える制御ばねとをさらに含む。カラーは、シリンジキャリアの段と解放可能に係合するように適用されたカラーボスを有する弾性カラービームを含む。カラーは、ニードルシュラウドが第1の伸張位置にあるときにキャリアボスに当接する。カラー、ニードルシュラウドおよびシリンジキャリアは、ニードルシュラウドが第1の伸張位置から第1の後退位置へと動くときにケースに対して近位に動く。シリンジキャリアの近位端は、ニードルシュラウドが第1の伸張位置にあるときに、フィードバックをもたらすようにケースの近位端に当接する。シュラウドボスは、ニードルシュラウドが第1の後退位置にあるときに、近位ケースボスの近位にある。シリンジキャリアは、ニードルシュラウドが第1の後退位置の近位の第2の後退位置にあるときに、シュラウドボスがキャリア開口部を係合解除すると、遠位に前進する。シュラウドボスがキャリア開口部を係合解除すると、カラーはシリンジキャリアを遠位に、シリンジキャリアがケースの前方止め具に当接するまで押し、カラーはまた、制御ばねの付勢力を受けてシリンジキャリアを係合解除し、ニードルシュラウドをケースに対して第2の伸張位置になるまで押す。カラーがシリンジキャリアを係合解除すると、キャリアボスはプランジャ開口部を係合解除してプランジャを解放する。シュラウドボスは、ニードルシュラウドが第2の伸張位置にあるときに遠位ケースボスに当接する。
【0010】
例示的な実施形態では、一体化された駆動ばねを有するシリンジキャリアにより、自動注射器をトリガするとき、または針挿入中に、これらの動作が駆動ばねよりも著しく弱く指定される制御ばねによって達成または阻止されるので、使用者への衝撃が少しもなく強い駆動ばねを使用することが可能になる。これにより、高粘度の薬物を送出することが可能になる。
【0011】
例示的な実施形態では、ある挿入深さに針が達したときに駆動を解放することにより、いわゆるウェット注射、すなわち、針挿入も注射もストッパを押すことによって実現される従来技術の自動注射器の問題である針からの薬物漏洩、が回避される。
【0012】
例示的な実施形態では、自動注射器は、ほとんどの従来の自動注射器と比較して部材点数が特に少なく、したがって製造コストが低減する。シリンジおよびニードルシュラウドを前進させるための別個の制御ばね、および流体注射用の駆動ばねを用いた配置により、1つの設計を使用することが、粘度の異なる液体では駆動ばねを変更するだけで、また異なる容積ではプランジャの長さを変更するだけで可能になる。これは、駆動ばねがまた針の挿入および/またはシュラウドを前進させる働きもする従来技術の設計にまさる利点である。
【0013】
本発明のさらなる適用可能性の範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかになろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示すとはいえ、この詳細な説明から本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が当業者には明らかになるので、例示として提示されているにすぎないことを理解されたい。
【0014】
本発明は、詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されることになろう。図面は例示として与えられているにすぎず、したがって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明による自動注射器の使用前の例示的な実施形態の斜視図である。
図1B】本発明による自動注射器の使用前の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図1C】本発明による自動注射器の使用前の例示的な実施形態の別の長手方向断面図である。
図2A】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の斜視図である。
図2B】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図2C】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の別の長手方向断面図である。
図3A】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の斜視図である。
図3B】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図3C】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の別の長手方向断面図である。
図4A】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の斜視図である。
図4B】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図4C】本発明による自動注射器の使用中の例示的な実施形態の別の長手方向断面図である。
図5A】本発明による自動注射器の使用後の例示的な実施形態の斜視図である。
図5B】本発明による自動注射器の使用後の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図5C】本発明による自動注射器の使用後の例示的な実施形態の別の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
すべての図で、対応する部材は同じ参照記号で標示されている。
【0017】
図1Aは、ケース2およびキャップ11を含む自動注射器1の使用前の例示的な実施形態の斜視図である。図1Bおよび図1Cは、自動注射器1の使用前の長手方向断面図である。
【0018】
例示的な実施形態では、自動注射器1は、組み立て中に連結される遠位ケース2.1および近位ケース2.2を含むケース2を含む。キャップ11が着脱可能にケース2の遠位端に連結される。ケース2は、ケース2の孔または透明部である視認窓2.7を含む。
【0019】
ケース2は、薬剤を含むシリンジ3を保持するように適用される。シリンジ3は充填済みシリンジであってもよく、遠位端に針4が配置されている。別の例示的な実施形態では、シリンジ3は、針4を着脱可能に受けるように適用された(たとえば、スナップフィット、摩擦、ねじ山などによって)薬剤カートリッジである。保護ニードルシース5が針4に着脱可能に取り付けられる。ストッパ6が、シリンジ3を近位で封止するため、およびシリンジ3に含まれる液体薬剤Mを針4に通して変位させるために配置される。
【0020】
ニードルシュラウド7がケース2内に嵌め込み式にされ、伸張位置と後退位置の間で可動である。ニードルシュラウド7は、ケース2に対し伸張位置の方へ制御ばね9によって付勢される。
【0021】
例示的な実施形態では、シリンジ3は、ケース2内に摺動可能に配置されているシリンジキャリア8の中に保持される。シリンジキャリア8は、シリンジ3を保持するように適用された遠位部分、およびプランジャ12を保持するように適用された近位部分を含む。たとえば圧縮ばねである駆動ばね10は、近位でシリンジキャリア8の近位端にて、また遠位でプランジャ12の遠位端にて止まる。例示的な実施形態では、プランジャ12はシリンジキャリア8の近位部分に嵌め込み式に連結され、駆動ばね10はプランジャ12内に配置され、プランジャ12を遠位に付勢する。
【0022】
例示的な実施形態では、駆動ばね10はシリンジキャリア8の近位部分8.1内に配置される。プランジャ12は、駆動ばね10の力をストッパ6へ送る働きをする。例示的な実施形態では、プランジャ12は中空であり、嵌め込み式でシリンジキャリア8の近位部分8.1内にあり、駆動ばね10がプランジャ12の中に配置されて、プランジャ12をシリンジキャリア8に対して遠位方向Dに付勢する。
【0023】
例示的な実施形態では、自動針挿入を開始するための戻り止め機構14が設けられる。戻り止め機構14はまた、自動注射器が伸張位置で注射部位から除去された後に、ニードルシュラウド7をロックする。
【0024】
例示的な実施形態では、戻り止め機構14は、ニードルシュラウド7をシリンジキャリア8にロックするための、シリンジキャリア8内でキャリア開口部8.6に係合するように適用された少なくとも1つのシュラウドボス7.1を含む。シュラウドボス7.1の少なくとも1つの面およびキャリア開口部8.6には、制御ばね9の付勢力に抗してニードルシュラウド7を伸張位置から後退位置まで変位させるのに必要な力を小さくするための傾斜がつけられる。ニードルシュラウド7にかかる力が制御ばね9の付勢力に打ち勝つと、シュラウドボス7.1はキャリア開口部8.6に当接し、シュラウドボス7.1に連結されたコンプライアントビーム7.2によって半径方向に偏向して、ニードルシュラウド7をシリンジキャリア8から係合解除する。ニードルシュラウド7が、ケース2に対して第1の伸張位置FEPにあるとき(図1Bおよび図1Cに示す)、シュラウドボス7.1は、ニードルシュラウド7が第1の伸張位置FEPにあるときにニードルシュラウド7がシリンジキャリア8を係合解除しないようにする半径方向ケースボス2.9に半径方向に当接する。軸方向ケースボス2.10は、使用前にニードルシュラウド7が第1の伸張位置FEPを越えて遠位に動くことがないように、シュラウドボス7.1に遠位で当接するように適用される。シュラウドボス7.1の面の少なくとも1つ、および軸方向ケースボス2.10には、遠位方向Dの向きの軸方向の力がケース2に対してニードルシュラウド7に加えられた場合にニードルシュラウド7がケース2に対して遠位方向Dに動き、シュラウドボス7.1が弾性ビーム7.2によって軸方向ケースボス2.10の周辺で半径方向内向きに偏向するように、傾斜がつけられる。使用前、シュラウドボス7.1は、シリンジキャリア8があることによって、半径方向内向きに偏向することが防止されている。したがって、使用前にニードルシュラウド7.1はケース2を係合解除しない。
【0025】
例示的な実施形態では、プランジャ解放機構15が、ある挿入深さに針4が達する前にプランジャ12を解放しないように、また針4がその挿入深さに達したらプランジャ12を解放するように、配置される。例示的な実施形態では、プランジャ解放機構15は:それぞれの第1のボス8.4がシリンジキャリア8上に配置された1つまたはそれ以上のコンプライアントビーム8.3と、第1のボス8.4と係合するための、プランジャ12に横方向に配置されたそれぞれの第1の開口部12.1と、ケース2の中、かつシリンジキャリア8の上に摺動可能に配置されたカラー16とを含む。ニードルシュラウド7が第1の伸張位置FEPにあるとき、カラー16は第1のボス8.4に当接して、それが第1の開口部12.1を係合解除しないようにする。以下でさらに説明するように、針4がその挿入深さに達すると、カラー16は第1のボス8.4から離れて軸方向に動き、それにより第1のボス8.4はビーム8.3によって偏向し、第1の開口部12.1から係合解除する。次に、シリンジキャリア8がプランジャ12から係合解除する。第1のボス8.4を第1の開口部12.1から係合解除するのに必要な力を小さくするために、少なくとも第1のボス8.4の面および第1の開口部12.1に傾斜がつけられる。
【0026】
例示的な実施形態では、制御ばね9をシリンジキャリア8またはニードルシュラウド7に選択的に連結するための制御機構21(図3Bに示す)が、遠位方向Dに前進するように、またはその動きと反対に近位方向Pに前進するように配置される。例示的な実施形態では、カラー16は制御機構21の部材である。制御ばね9は、近位でケース2内にて止まり、遠位では、ケース2に対して軸方向に可動であると共にシリンジキャリア8の上に配置されているカラー16に接する。カラー16は、キャリア8の段8.5に係合するように適合された少なくとも1つのカラーボス16.1を含む。キャリアボス16.1および段8.5の嵌合面のうちの少なくとも1つには、段8.5にキャリアボス16.1が当接したときにそれをコンプライアントカラービーム16.2によって半径方向に偏向させるのに必要な力を小さくするために、傾斜がつけられる。組み立てられるとカラーボス16.1は、ケース2内の狭いセクション2.4によって、半径方向に偏向することが防止される。広いセクション2.5は、狭いセクション2.4から遠位に配置される。シリンジキャリア8およびカラー16が遠位方向Dに軸方向運動するとき、キャリアボス16.1は、カラー16が広いセクション2.5に入ると半径方向に偏向し、制御スプリング9からの力を受けてカラー16をシリンジ8から係合解除することができる。
【0027】
例示的な実施形態では、使用前に制御ばね9は、ケース2とカラー16の間で圧縮される。制御機構21は、カラー16をシリンジキャリア8に連結し、このシリンジキャリアが次に戻り止め機構14によってケース2に連結される。
【0028】
自動注射器1の一連の操作の例示的実施形態は以下の通りである:
【0029】
使用前、自動注射器1は図1Aから図1Cで示された状態にある。該当する場合、使用者は自動注射器1を包装から取り出す。薬剤Mは、視認窓2.7を通して見ることができる。キャップ11は、遠位方向Dにキャップ11を引っ張ることによってケース2から除去される。キャップ11は保護ニードルシース5に連結されており、したがって、キャップ11を除去すると保護ニードルシース5もまた除去される。使用前に、ニードルシュラウド7は第1の伸張位置FEPにあり、ケース2から遠位方向Dに突出している。第1の伸張位置FEPは、戻り止め機構14によって、すなわちシュラウドボス7.1がシリンジキャリア8のキャリア開口部8.6に係合し、かつシュラウドボス7.1が軸方向ケースボス2.10に、キャリア開口部8.6からシュラウドボスが係合解除しないように当接することによって、画成される。
【0030】
図2A〜Cは、注射部位に押し付けられている自動注射器1の斜視図等である。自動注射器1が注射部位に押し付けられると、ニードルシュラウド7は、ケース2に対して第1の伸張位置FEPから第1の後退位置FRPの方へ動く。ニードルシュラウド7が戻り止め機構14によってシリンジキャリア8に連結されているので(シュラウドボス7.1がキャリア開口部8.6と係合することによって)、シリンジキャリア8(およびその中のシリンジ3)はケース2に対して後退し、そのため針4は露出しない。カラー16がシリンジキャリア8に連結されているので(段8.5に当接するカラーボス16.1によって)、カラー16は、シリンジキャリア8と共に近位方向Pに制御ばね9の力に抗して動く。
【0031】
ニードルシュラウド7が第1の後退位置FRPに達すると、シリンジキャリア8の近位端8.1はケース2の近位端2.11と接触する(またはほとんど接触する)。シリンジキャリア8とケース2の間の接触(および/または制御ばね9によってもたらされる抵抗の増大)は、ニードルシュラウド7をさらに押し下げることで自動注射器1が起動するという触覚フィードバックをもたらす。第1の後退位置FRPでは、シュラウドボス7.1がもはやケース2.9に当接しないように、シュラウドボス7.1がケースボス2.9の近位にある。しかし、例示的な実施形態では、制御ばね9の付勢力は、シュラウドボス7.1をキャリア開口部8.6から偏向させるのに必要な力より小さい。したがって、ニードルシュラウド7がさらに押し下げられずに自動注射器1が注射部位から除去された場合(または軸方向の力がもはや自動注射器1に加えられない場合)、ニードルシュラウド7は第1の伸張位置FEPになるまで再び延び、自動注射器1はその初期状態に戻る。
【0032】
図3A〜3Cは、注射部位に押し付けられている注射器の斜視図等である。使用者がニードルシュラウド7を第2の後退位置SRPになるまで押し下げ続けると、ケース2が、ケース2の近位端2.11とシリンジキャリア8の近位端8.1との接触によって、シリンジキャリア8をニードルシュラウド7に対して遠位方向Dに前進させるにつれ、抵抗の増大が感じられる。ケース2が遠位方向Dに前進するにつれて、シュラウドボス7.1がケースボス2.9によって半径方向にもはや支持されなくなると、シュラウドボス7.1は、それがキャリア開口部8.6に当接したときに半径方向に偏向して、シリンジキャリア8をニードルシュラウド7から係合解除する。
【0033】
図4A〜Cは、注射部位に押し付けられている自動注射器1の斜視図等である。シュラウドボス7.1がキャリア開口部8.6を係合解除すると、シリンジキャリア8はニードルシュラウド7からデカップリングされる。制御ばね9は付勢力をカラー16に加え、カラーボス16.1は、シリンジキャリア8の段8.5を押してシリンジキャリア8(およびシリンジ3)を遠位方向Dに駆動する。シリンジキャリア8がケース2の前方止め具2.8に当接すると、針4がケース2の遠位端を越えて突出し、注射部位に挿入される。カラー16は、カラーボス16.1が狭いセクション2.4でもはや支持されない程まで遠位方向Dに前進したが、ケース2の広いセクション2.5に達している。制御ばね9は継続してカラー9を前進させ、前方止め具2.8に当接したシリンジキャリア8により、カラーボス16.1は半径方向に偏向して、カラー16をシリンジキャリア8から係合解除する。カラー16は、制御ばね9の力を受けて、ニードルシュラウド7に当接するまでさらに前進する。
【0034】
カラー16が前進するとき、駆動ばね10による負荷を受けた第1の開口部との傾斜係合により第1のボス8.4の半径方向偏向が可能になるのは、シリンジキャリア8の第1のボス8.4の遠位である。したがって、プランジャ12は解放され、駆動ばね10によって前進してシリンジ3内のストッパ6を変位させ、薬剤Mを針4から排出する。プランジャ解放機構15の解放により、可聴および/または触覚のフィードバックが使用者にもたらされる。薬剤Mの送達の進行状況は、視認窓2.7を通してプランジャ12の動きを調べることで確認することができる。プランジャ12(ケース2と対照的な色にすることができる)は視認窓2.7の中に見え、それによって、自動注射器1が使用されたかどうかについての視覚フィードバックがもたらされる。
【0035】
使用者が自動注射器1を、ある挿入深さに針4が達した後のいかなる時点でも注射部位から除去した場合には、ニードルシュラウド7は、制御ばね9によって駆動されているカラー16に当接しているので、遠位方向Dに動く。
【0036】
図5A〜Cは、注射部位から除去された後の自動注射器1の斜視図等である。ニードルシュラウド7が制御ばね9の力を受けて遠位方向に前進すると、シュラウドボス7.1は、シリンジキャリア8が針挿入の間遠位方向に動いておりシュラウドボス7.1には当接しないので、軸方向ケースボス2.10によって半径方向に偏向される。したがって、シュラウドボス7.1は、ケースボス2.1の周辺で偏向し、次に、ケースボス2.10の遠位になったときに非偏向位置に戻る。シュラウドボス7.1は、残っている制御ばね9の軸方向の力を解消しニードルシュラウド7の伸張を阻止するシリンジキャリア8の傾斜止め具8.7に当接する。ここでニードルシュラウド7は、第1の伸張位置FEPにあるよりもケース2から遠くに延びて第2の伸張位置SEPにあり、伸張針4は、ニードルシュラウド7の中で見えないように、また指が近づかないようになっている。
【0037】
ニードルシュラウド7をケース2に対して第2の伸張位置SEPから近位方向Pにどのように変位させようとしても、シュラウドボス7.1がケースボス2.10の遠位端に当接するので阻止される。
【0038】
別の例示的な実施形態では、開口部がケース2の近位端2.11に配置されて、シリンジキャリア8の近位部分8.1がケース2から突出し、トリガボタンとして機能することが可能になる(図示せず)。この例示的な実施形態では、戻り止め機構14が、ニードルシュラウド7を後退位置RPに押し下げる前にトリガボタンが解放されることを防止する。ニードルシュラウド7は、第2の後退位置SRPになるまで完全に押し下げられ、それによって、シリンジキャリア8の近位部分8.1が、注射を開始するために次に押し下げられるケース2から延びる。トリガボタンがこの時点で押し下げられない場合、ニードルシュラウド7は第1の伸張位置FEPになるまで再び延びることができ、自動注射器1はその初期状態に戻ることができる。トリガボタンが押し下げられた場合には、トリガボタンは押し下げ位置でケースにロックされて、自動注射器1が使用されたという視覚標示がもたらされる。
【0039】
ニードルシュラウド7が第2の後退位置SRPになるまで完全に押し下げられた後、シュラウドボス7.1は、もはやケースボス2.9によって支持されない。たとえばケース2から近位に突出するシリンジキャリア8の近位端8.1であるトリガボタンは、ここで押し下げることができ、それによって、シュラウドボス7.1がキャリア開口部8.6との係合から、これらの傾斜係合により、半径方向外向きに偏向される。したがって、シリンジキャリア8はニードルシュラウド7からデカップリングされ、制御機構21によってシリンジキャリア8に連結された制御ばね9は、シリンジキャリア8を遠位方向Dに前進させて針4をケース2から遠位方向Dに延ばす。シリンジキャリア8およびケース2の長さは、針4がその挿入深さに達したら、シリンジキャリア8の近位端8.1がケース2の近位端2.11と同一の平面にあるようになる長さである。
【0040】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0041】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0042】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0043】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0044】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0045】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0046】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0047】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0048】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0049】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0050】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0051】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0052】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0053】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0054】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0055】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0056】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0057】
当業者には、装置、方法および/またはシステムの様々な構成要素ならびに本明細書に記載の諸実施形態の修正(追加および/または除去)を、このような修正、およびそのあらゆる均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱せずに加えることができることが理解されよう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C