(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475243
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ユニフロー掃気を有する対向ピストンエンジンのための捕捉既燃ガス留分の制御
(51)【国際特許分類】
F02M 26/05 20160101AFI20190218BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20190218BHJP
F02B 25/08 20060101ALI20190218BHJP
F02M 26/47 20160101ALI20190218BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20190218BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20190218BHJP
F02B 75/28 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
F02M26/05
F02B37/00 302F
F02B25/08
F02M26/47 C
F02D21/08 311B
F02D21/08 311Z
F02D23/00 J
F02B75/28 E
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-536323(P2016-536323)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-532052(P2016-532052A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】US2014051102
(87)【国際公開番号】WO2015026627
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】13/974,883
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506405644
【氏名又は名称】アカーテース パワー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナガール,ニシット
(72)【発明者】
【氏名】クインビー,ドノヴァン,エム.
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0289916(US,A1)
【文献】
特開2001−165001(JP,A)
【文献】
特表2013−529275(JP,A)
【文献】
特開昭63−134845(JP,A)
【文献】
特開2002−276444(JP,A)
【文献】
特開2001−214749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/05
F02B 25/08
F02B 37/00
F02B 75/28
F02D 21/08
F02D 23/00
F02M 26/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気処理システムが装備されたユニフロー掃気式対向ピストンエンジンであって、
孔と、長手方向に離間された排気および吸気ポートと、前記孔内に対向して配設され、前記エンジンの作動中、前記排気ポートおよび前記吸気ポートを開閉するように作動する一対のピストンとを備えた少なくとも1つのシリンダと、
給気を少なくとも1つの前記吸気ポートに提供するための給気チャネルと、
少なくとも1つの前記排気ポートから排気ガスを受け入れるための排気チャネルと、
前記排気チャネルに結合されたループ入力部、および、前記給気チャネルに結合されたループ出力部を有する排気ガス再循環(EGR)ループと、
制御機構であって、
捕捉既燃ガス留分パラメータの値を決定し、前記捕捉既燃ガス留分パラメータの前記値を、前記EGRループ内のEGR流量に応答して調整し、
前記EGRループを通る排気ガス流を増大または低減するように弁を作動させることによって、前記EGRループ内の前記EGR流量を、前記捕捉既燃ガス留分パラメータの前記調整された値に基づいて調整するように作動可能である、制御機構と
を備える、対向ピストンエンジン。
【請求項2】
前記制御機構が、
現在のエンジン作動状態に対する所望の捕捉既燃ガス留分値を決定し、
所望の捕捉既燃ガス留分値に到達するために求められる所望のEGR質量流量の比(%EGR比)を決定し、ここで、%EGR=Wegr/(Wair+Wegr)(式中、Wegrは前記EGRループ内のEGRガスの質量流量であり、Wairは、前記給気チャネル内への空気の質量流量である)であり、
前記所望の%EGR比と測定された%EGR比の間の差異に基づいて誤差値を決定し、
前記誤差値に応答して前記EGRループ内の前記弁を作動させることによってEGR流の流量を調整するようにプログラムされたエンジンを制御するユニットを含む、請求項1に記載の対向ピストンエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の対向ピストンエンジンを作動させる方法であって、
前記エンジンの少なくとも1つのポート付きシリンダ内で排気ガスを生成することと、
排気ガスを前記ポート付きシリンダの排気ポートから排気チャネルを通って輸送することと、
前記排気チャネルからの前記排気ガスの一部分を再循環させることと、
新鮮な空気を加圧することと、
再循環された排気ガスを前記加圧された新鮮な空気と混合して給気を形成することと、
前記給気を加圧することと、
前記給気を前記ポート付きシリンダの吸気ポートに提供することと、
捕捉既燃ガス留分パラメータの値を決定することと、
前記既燃ガス留分パラメータの値に到達するために求められる所望のEGR質量流量の比を決定することと、
EGRループを通る排気ガス流を増大または低減するように前記EGRループの弁を作動させることによって、前記EGRループの前記EGR流量を前記捕捉既燃ガス留分パラメータの前記調整された値に基づいて調整することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本国際出願は、2013年8月23日出願の米国特許出願第13/974,883号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、次の本願の譲受人に譲渡された出願:2011年12月1日に米国特許出願公開第2011/0289916号明細書として発行された、2011年5月16日出願の米国特許出願第13/068,679号明細書、2013年2月19日出願のPCT出願US2013/026737、2013年3月1日出願の米国特許出願第13/782,802号明細書、2013年5月10日出願の米国特許出願第13/891,622号明細書、および2013年6月25日出願の米国特許出願第13/926,360号明細書のものに関連する主題を含む。
【0003】
本分野は、2ストロークサイクル内燃エンジンである。特に、本分野は、燃焼のための加圧給気を提供し、燃焼生成物を処理する空気処理システムを備えたユニフロー掃気式対向ピストンエンジンに関する。一部の態様では、そのような空気処理システムは、燃焼温度を低下させるために、排気ガスを再循環させ、加圧給気と混合する。
【背景技術】
【0004】
2ストロークサイクルエンジンは、クランクシャフトの単一の一回転およびクランクシャフトに連結されたピストンの2ストロークで動力サイクルを完了する内燃エンジンである。2ストロークサイクルエンジンの1つの例は、2つのピストンが、対向方向の往復運動のために各々のシリンダの孔内に対向して配設された、1つまたは複数のシリンダを備えた対向ピストンエンジンである。各々のシリンダは、長手方向に離間された入口ポートおよび排気ポートを有し、これらのポートは、シリンダのそれぞれの端部近くに配置される。シリンダ内の対向ピストンの各々は、ポートの1つを制御し、これが底部中央(BC)場所に移動するときにポートを開き、これがBCから上部中央(TC)場所に向かって移動するときにポートを閉じる。ポートの一方は、孔から出る燃焼生成物のための通路を提供し、他方は、給気を孔内に流入させるように働き、これらは、それぞれ、「排気」および「吸気」ポートと呼ばれる。ユニフロー掃気式対向ピストンエンジンでは、給気はその吸気ポートを通ってシリンダ内に入り、排気ガスはその排気ポートから流出し、したがって、ガスは、シリンダ内を単一方向(「ユニフロー」)、すなわち吸気ポートから排気ポートに流れる。ガスのこの流れは、「ガス交換」プロセスと称される。ガス交換プロセスは、吸気および排気ポートが開いているときのサイクルのその部分の間に起こる。エンジンの各々のシリンダに対して、ガス交換は、サイクルの最初のポート開放時に始まり、サイクルの最後のポート閉鎖時に終わる。
【0005】
図1では、ユニフロー掃気式、2ストロークサイクル内燃エンジンは、少なくとも1つのポート付きシリンダ50を有する対向ピストンエンジン49によって具体化される。たとえば、エンジンは、1つのポート付きシリンダ、2つのポート付きシリンダ、3つのポート付きシリンダ、または4つまたはそれ以上のポート付きシリンダを有することができる。各々のポート付きシリンダ50は、孔52と、シリンダ壁内の、シリンダのそれぞれの端部近くに形成されたまたは機械加工された、長手方向に離間された排気ポート54および吸気ポート56とを有する。排気ポート54および吸気ポート56の各々は、隣接する開口部が中実ブリッジによって分離された、開口部の1つまたは複数の円周配列を含む。一部の説明では、各々の開口部は、「ポート」と称されるが、そのような「ポート」の円周配列の構造は、
図1に示されるポート構造と差異はない。図示する例では、エンジン49は、さらに、2つのクランクシャフト71および72を含む。排気ピストン60および吸気ピストン62は、それらの端部表面61および63を互いに対向させて、孔52内に摺動可能に配設される。排気ピストン60は、クランクシャフト71に結合され、吸気ピストンは、クランクシャフト72に結合される。
【0006】
ピストン60および62がTCに近づくとき、燃焼室が、ピストンの端部表面61と63の間の孔52内に画定される。燃料は、シリンダ50の側壁を貫通する開口部内に配置された少なくとも1つの燃料噴射器ノズル100から燃焼室内に直接的に噴射される。燃料は、吸気ポート56から孔内に流入した給気と混合する。空気燃料混合物が端部表面間で圧縮されるとき、これは、燃焼を引き起こす温度に到達する。
【0007】
図1をさらに参照すれば、エンジン49は、エンジン49に提供された給気およびエンジン49によって生成された排気ガスの輸送を管理する空気処理システム51を含む。代表的な空気処理システム構造は、給気サブシステムおよび排気サブシステムを含む。空気処理システム51では、給気サブシステムは、新鮮な空気を受け入れ、これを給気になるよう処理する給気源と、給気源に結合され、給気がエンジンの少なくとも1つの吸気ポートまでそこを通って輸送される給気チャネルと、エンジンの吸気ポート(複数可)への送出前に、給気(または給気を含むガスの混合物)を受け入れ、冷却するように結合された、給気チャネル内の少なくとも1つの空気冷却器とを含む。そのような冷却器は、空気対液体および/または空気対空気装置、または別の冷却装置を備えることができる。排気サブシステムは、エンジンの排気ポートからの排気生成物を他の排気構成要素に送出するために輸送する排気チャネルを含む。
【0008】
さらに
図1を参照すれば、空気処理システム51は、共通シャフト123上で回転するタービン121および圧縮器122を備えたターボチャージャ120を含む。タービン121は、排気サブシステムに結合され、圧縮器122は、給気サブシステムに結合される。ターボチャージャ120は、排気ポート54を退出し、直接的に排気ポート54から、または排気ポート54を通って出力された排気ガスを収集する排気マニホールド125から排気チャネル124に流入する排気ガスからエネルギーを抜き出す。この点において、タービン121は、これを通過する排気ガスによって回転させられる。これは、圧縮器122を回転させて、新鮮な空気を圧縮することによってこれに給気を生成させる。給気サブシステムは、スーパチャージャ110を含む。圧縮器122によって出力された給気は、給気チャネル126を通って冷却器127まで流れ、ここでこれは、スーパチャージャ110によって吸気ポートまで圧送される。スーパチャージャ110によって圧縮された給気は、冷却器129を通って吸気マニホールド130に出力され得る。この点において、各々の吸気ポート56は、加圧された給気を吸気マニホールド130から受け入れる。好ましくは、複数シリンダの対向ピストンエンジンでは、吸気マニホールド130は、すべてのシリンダ50の吸気ポート56と連通する吸気プレナムから構成される。
【0009】
一部の態様では、
図1に示す空気処理システムは、排気ガスをエンジンのポート付きシリンダを通して再循環させることによって、燃焼によって生成されたNOx排出を低減するように構築され得る。再循環された排気ガスは、給気と混合されてピーク燃焼温度を低下させ、それによってNOxの生成を低減する。このプロセスは、排気ガス再循環(「EGR」)と称される。図示するEGR構造は、掃気中、ポート54から流れる排気ガスの一部分を得て、これらをシリンダ外部のEGRループを介して給気サブシステム内の新鮮な吸気空気の入来ストリーム内に輸送する。好ましくは、EGRループは、EGRチャネル131を含む。再循環された排気ガスは、弁138(この弁もまた「EGR弁」と呼ばれる)の制御下でEGRチャネル131を通って流れる。
【0010】
多くの2ストロークエンジンでは、燃焼およびEGR作動は、エンジンに送出された給気量に関連付けられたさまざまな測定値に基づいて監視され最適化される。たとえば、シリンダ内の化学量論的燃焼に必要とされる給気の基準質量に対する、シリンダに送出された給気質量の比(「ラムダ」)が、エンジン作動状態の範囲にわたってNOX排出を制御するために使用される。しかし、ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンでは、ポート開放時間は、各々のサイクルの一部分の間重なり、吸気ポートを通ってシリンダに送出された給気の一部は、排気ポートが閉じられる前にシリンダから流出する。掃気中排気ポートから流出した給気は、燃焼に利用できない。したがって、ユニフロー掃気を有する対向ピストンエンジン内でシリンダの吸気ポートに送出された給気に基づくラムダの値(「送出されたラムダ」)は、燃焼に実際に利用できる給気の量より多いものである。
【0011】
関連出願の第13/926,360号によると、ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンでは、捕捉ラムダ(λ
tr)が、閉じる最後のポートによってシリンダ内に捕捉された給気に基づいて推定され、または算出される。この点において、閉じる最後のポートは、吸気ポートでも排気ポートでもよい。それに関連して、シリンダ内において化学量論的燃焼に必要とされる給気の基準質量に対する、閉じる最後のポートによって(これ以後「最後のポート閉鎖」または「LPC」)シリンダ内に捕捉された給気質量の比は、「捕捉ラムダ」と称される。これは燃焼に利用できる捕捉給気であるため、捕捉ラムダ値は、送出ラムダ値より正確な燃焼およびエンジンの排出可能性の表現を提供する。捕捉ラムダ(λ
tr)を決定するための方法は、関連出願の第13/926,360号で与えられる。
【0012】
他の空気処理パラメータは、2ストロークエンジン内の燃焼およびEGR作動のさまざまな態様を制御するために使用され、それらの値の決定は、ラムダを含む推定または算出に基づく。たとえば、既燃ガス留分(シリンダ内質量に対する既燃ガスの比)は、燃焼プロセス、したがって2ストロークエンジンの排出に大きな影響を与える。関連出願の第13/926,360号は、捕捉ラムダを用いて捕捉既燃ガス留分(BF
tr)を決定するための方法を開示する。捕捉既燃ガス留分は、実際と所望の捕捉既燃ガス留分間の誤差を最小限に抑えるためにEGR弁を用いてEGR流量(又は流率、フローレート)を変化させるために使用される。
【0013】
捕捉既燃ガス留分(trapped burned gas fraction)は、燃焼プロセス、したがって対向ピストンエンジンの排出の重要な尺度を提供する。捕捉既燃ガス留分の制御は、空気処理制御機構が、燃焼プロセスを監視、調整し、それによってエンジン作動状態が変化するときに排出を制御することを可能にする。シリンダ内の捕捉既燃ガス留分と外部EGRに基づく既燃ガス留分との間に大きな差異がある可能性があるので、外部既燃ガス留分の制御だけでは必要とされ得る正確性を必ずしも提供しない。したがって、排出を制御するために、捕捉既燃ガス留分を常に制御できることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、ユニフロー掃気式対向ピストンエンジン内における捕捉既燃ガス留分制御の正確性を改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
外部EGR設定点をリアルタイムで調整することによって、ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンにおいて捕捉既燃ガス留分を制御するための方法が、提供される。設定点は、これが、エンジンの任意のシリンダの外側(外部)の状態または要素に関連するという意味で外部のものである。一部の態様では、外部EGR設定点は、空気処理システム制御機構が、現在のエンジン作動状態にしたがって生成する出力として提供される。この点において、捕捉既燃留分は、所望の捕捉既燃ガス留分を得るために有用なEGRの一部分を決定することに基づいて制御される。この決定は、空気処理パラメータおよび経験的掃気モデルに基づく。有利には、方法は、リアルタイムでの捕捉既燃ガス留分の制御を可能にする。
【0016】
一部の態様では、外部EGR設定点は、「%EGR」と呼ばれ、これは、給気チャネルを通る圧縮された新鮮な空気および排気ガスの総質量流量に対する、EGRチャネルを通る排気ガスの質量流量の比を指す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】EGRを備えた空気処理システムを装備した対向ピストンエンジンの図であり、「従来技術」と適切に標識される。
【0018】
【
図2】対向ピストンエンジン内の空気処理システムの調節のための制御機構を示す概略図である。
【0019】
【
図3】空気処理制御パラメータの数値を評価し、調整するためのプロセスを示す制御流れ図である。
【0020】
【
図4】
図3の評価および調整プロセスを実施する制御機構を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
エンジンの作動状態における変動に応答して燃焼および排出の最適な制御を維持するために、ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンの給気チャネルを通る給気流を制御することが望ましい。
図1のエンジンを基本として用いて、
図2は、本明細書による空気処理システムを制御するために有用である改変形態および追加に基づいて、そのような対向ピストンエンジンのための制御機構を示す。
【0022】
ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンのための特有のEGRループ構造の一例が、
図2に示される(限定的であるよう意図するものではないが)高圧構成である。この点において、高圧EGRループは、タービン121への入力部の上流側の源から得られた排気ガスを、圧縮器122の出力部の下流側の混合点まで循環させる。このEGRループにおいて、EGRチャネル131およびEGR弁138は、排気ガスの一部分を、排気チャネル124から給気チャネル126に迂回させ、そこでこれは、圧縮器122によって出力された圧縮された新鮮な空気と混合される。弁138の作動は、EGR制御信号に応答して、アクチュエータ141によって制御される。排気/空気の混合が必要とされない場合、弁138は、完全に遮断され、排気ガス成分を有さない給気が、シリンダに送出される。弁138が開かれるにつれて、排気ガスの増加した量が、給気内に混合される。対照的に、開状態から、弁138が閉じられるにつれて、排気ガスの低減した量が、給気内に混合される。このループは、再循環された排気ガスを2つの冷却器127および129の冷却効果に供する。冷却が小さい方が良い場合、排気ガス部分を冷却器127を避けてサブチャージャ110の入力部に迂回させることができ、この代替策は、排気ガス部分を給気冷却器129のみによる冷却に供する。排気ガスのみを冷却する専用のEGR冷却器が、EGRチャネル131内に、弁138と直列に、または弁138の出力ポートおよびサブチャージャ110への入力部と直列に組み込まれ得る。
【0023】
図2にしたがい、ほとんどの態様では、スーパチャージャ110は、駆動機構111によって、それによって駆動されるクランクシャフトに結合される。駆動機構111は、段階式変速装置または連続可変式変速装置(CVT)を備えることができ、この場合、給気流を、駆動機構に提供された速度制御信号に応答してスーパチャージャ110の速度を変化させることによって変化させることができる。あるいは、駆動機構111は、固定式ギア装置であることができ、この場合、スーパチャージャ110は、固定された速度で連続的に駆動される。そのような場合、給気流は、スーパチャージャ110の出力部をその入力部に結合する迂回チャネル112によって変更され得る。迂回チャネル112内にバイパス弁139を設けることにより、スーパチャージャ110出口の下流側の給気の圧力の変調によって給気流を変化させることが可能になる。一部の態様では、弁139は、迂回制御信号に応答してアクチュエータ140によって作動される。
【0024】
図2に見られるように、ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジンの空気処理システムを作動させるための制御機構は、ECU149を含む。好ましくは、ECU149は、弁138および139(場合によっては他の弁)、多段速度または可変速度装置が使用される場合にスーパチャージャ110、および可変ジオメトリ装置が使用される場合にターボチャージャを自動的に作動させることにより、指定されたエンジン作動状態に応答して、給気流および加圧給気と混合される排気ガスの量を制御するように構築される。当然ながら、弁およびEGRに使用される関連要素の作動は、電気的、空気的、機械的、および油圧的な駆動作動の任意の1つまたは複数を含むことができる。高速の、正確な自動作動のために、弁が、連続的な可変設定を有する、高速のコンピュータ制御された装置であることが好ましい。各々の弁は、ガスがそこを流れることを可能にするために(ECU149によって制御された何らかの設定まで)開いている状態と、ガスがそこを流れ抜けることをブロックするために閉じられている状態とを有する。
【0025】
ユニフロー掃気を有する2ストロークサイクル対向ピストンエンジン(これ以後「エンジン」)の捕捉既燃ガス留分を制御するための方法は、さまざまなパラメータを使用して、シリンダの最後のポート閉鎖によってエンジンのシリンダ内に捕捉された燃焼の要素の大きさおよび比を算出または推定する。この点において、「燃焼の要素」は、燃焼の成分および生成物のいずれかまたは両方を含む。これらの方法のより良好な理解のために、これらの要素を表すために使用されるいくつかの空気処理パラメータの説明が、
図2による空気処理制御機構のさまざまな要素を参照して与えられる。以下の説明における空気処理パラメータのすべては、別途明記されない限り、SI単位を有する。
[空気処理パラメータ]
W
air=新鮮な空気の質量流量(kg/s)
W
egr=EGRガスの質量流量(kg/s)
W
sc=シリンダへ送出された給気の質量流量(kg/s)
W
f=命令されたエンジン燃料注入速度(kg/s)
M
res=シリンダ内の残留物の質量(kg)
M
tr=LPCにおける捕捉されたシリンダガスの質量(kg)
M
ret=シリンダ内に保持された送出された給気の質量(kg)
M
del=シリンダに送出された給気の質量(kg)
M
O2_tr=ガス交換プロセスの終了時の捕捉酸素の質量
M
O2_air=新鮮な空気中のO
2の質量留分
M
O2_egr=EGR内のO
2の質量留分
m
O2_res=シリンダ残留物中のO
2の質量留分
m
O2_im=吸気マニホールド内のO
2の質量留分
T
comp_out=圧縮器出口温度(K)
T
egr=冷却器後のEGR温度(K)
T
tr=LPCにおけるシリンダ内の捕捉給気の温度(K)
[O
2]
im=吸気マニホールド内のO
2の容積パーセント濃度
[O
2]
egr=排気ガス中のO
2の容積パーセント濃度
[O
2]
air=新鮮な空気中のO
2の容積パーセント濃度
(O
2/F)
S=化学量論的酸素対燃料比
(A/F)
S=化学量論的空気対燃料比
r=比熱比
N=シリンダの数
V
d=シリンダごとの変位容積(m
3)
V
tr=シリンダごとのLPCにおける変位容積(m
3)
R=空気のガス定数J/Kg/K
R
o2=酸素のガス定数J/Kg/K
AFR
S=ディーゼルの化学量論的空気燃料比
AFR
g=全体的な空気燃料比(新鮮な空気対燃料比)
AFR
tr=捕捉空気燃料比(シリンダ内の空気対燃料比)
P
レール=燃料レール圧力
Inj_time=注入タイミング
【0027】
捕捉ラムダ:捕捉ラムダを決定するための有用な方法は、関連出願の第13/926,360号によって与えられる:
[式1]
【0028】
既燃ガスは、燃料の化学量論的燃焼の結果となるガス組成物である。このガス組成物は、いかなる酸素分子も有さず、通常、これは、CO2、H2O、N2および空気中に存在する他の不活性ガスを含む。
【0029】
既燃ガス留分は、基準質量に対する既燃ガスの比である。1の既燃ガス留分は、化学量論的燃焼を示し、空気中のすべての酸素が、燃料(C
xH
y)をCO
2およびH
2Oに変換するために消費されたことを示す。他方で、<1の既燃ガス留分は、非化学量論的燃焼を示し、既燃ガス以外に酸素の一部が残っていることを示す。
【0030】
捕捉既燃ガス留分は、捕捉質量に対する、ガス交換プロセスの終了時にシリンダ内に捕捉された既燃ガスの比である。
【0031】
LPCによって表される、ガス交換プロセスの終了時、捕捉質量は、捕捉空気および捕捉既燃ガスに等しい。したがって、捕捉既燃ガス留分は、次のように算出され得る:
[式2]
【0032】
捕捉既燃ガス留分を決定するための別の方法が、関連出願の第13/926,360号内の式35によって与えられる。
【0033】
%EGRを用いる捕捉既燃ガス留分の制御:
空気処理制御は、
図2に示すものに基づく空気処理制御機構を使用して実施可能であり、この機構では、ECU149は、
図3および4の図によって示す方法による空気処理システムの作動を制御するようにプログラムされ得る。この点において、
図3は、空気処理制御パラメータの数値を評価し調整するためのプロセスを示す。
図4は、
図3の評価および調整プロセスを実施する好ましい制御機構を概略的に示す。
【0034】
最初、ECU149は、エンジン作動の現在の状態における空気処理パラメータの現在の数値を決定するために、利用可能なエンジンセンサー200を読み取る。これらのセンサー値を用いて、ECU149は、トルク要求(負荷)およびRPMに関する現在のエンジン作動状態を決定し、本質的に式1および2に対応する作動および算出のシーケンスを含むルーティンを実行する。
【0035】
EGR設定点の決定:
所望の捕捉既燃ガス留分が、EGR弁138を調整することによって直接的に得られ得る。所望の捕捉既燃ガス留分はまた、最初、これおよび他の作動状態から所望の%EGR設定点を決定し、次いでEGR弁138を調整することによっても得られ得る。この方法は、所望の%EGR設定点が決定された後、ECU149はこれを使用してEGR流量を調節できるので有利である。次の式は、捕捉既燃ガス留分設定点から%EGR設定点を決定するための方法を概説する。
【0036】
所望の捕捉既燃ガス留分を満たすために必要とされるEGRの質量(M
egr)は、次の通りに算出され得る:
[式3]
【0037】
式3では、BF
trは、経験的モデルから得られ、ECU149内にまたはこれを用いて記憶された所望の目標値であり、さらに
[式4]
[式5]
となる。
【0038】
M
trおよびBF
trを決定するための方法は、関連出願の第13/926,360号に記載される。
【0039】
M
egrは現在知られているため、W
egrは、
[式6]
によって計算可能である。
【0040】
したがって、所望のBF
trに到達するために必要とされる%EGRは、
[式7]
によって算出され得る。
【0041】
捕捉既燃ガス留分設定点を達成するためのEGR制御方法:
外部EGR設定点は、
図2に示すEGR弁138の位置を調整することによって制御される。ECU149は、全ての利用可能なエンジンセンサー200を読み取る。センサー値に基づき、EGR制御方法は、現在のエンジントルク要求(負荷)およびRPMを決定する。この情報は、ECU149によって実行される所望の捕捉シリンダ状態ルーティンに送られる。このルーティンでは、ECU149は、所望のパフォーマンスおよび排出目標を満たすために、エンジントルクおよびRPMによってインデックスが付けられたルックアップマップ(テーブル)に基づいてBF
trを決定する。決定されたBF
tr設定点は、別のマップに基づいて捕捉温度の変動に対して修正される。これらのマップは、エンジン動力計試験に基づいて事前に埋められ、ECU149内にまたはこれを用いて記憶される。ECU149は、所望の外部%EGRを決定し、捕捉既燃ガス留分を制御する方法を実行する。方法の代表的な実施形態は、
図3に示す流れ図および
図4の制御図によって示される。
【0042】
図3にしたがい、捕捉既燃ガス留分ルーティン300は、ステップ302においてマップにアクセスして、現在のエンジン作動状態に対する所望の捕捉既燃ガス留分値を決定し、次いで、ステップ304において、この所望の捕捉既燃ガス留分値を満たすEGRの所望の質量流量を決定する。ステップ306では、実際の(測定されたまたは算出された)EGR質量流量値が、所望のEGR質量流量値と比較される。好ましくは、比較プロセスは、測定された値から所望の値を引くことを含む。この差異の絶対値が閾値より大きい場合、ステップ308において、ルーティン300は、この絶対値を閾値以下にもっていくようにEGR弁138の位置を調整する。ルーティン300は、エンジン作動中、連続的に循環する。一部の態様では、ルーティン300のサイクル時間は、エンジンのサイクル時間を超える、またはこれに等しくなることができる。さらに別の態様では、ルーティン300は、シリンダごとに循環することができる。
【0043】
実際の捕捉既燃ガス留分を制御することができる例示的な制御機構が、
図4に示される。この制御機構400は、フィードフォワード制御装置410と、フィードバック制御装置412と、所望の捕捉既燃ガス留分および所望の%EGR比それぞれのマップ416および418とを含む。フィードフォワード制御装置410は、エンジン負荷および速度によってインデックスが付けられたマップに基づいて、EGR弁設定点Θを出力する。このマップは、エンジン動力計試験に基づき、ECU149内にまたはこれを用いて記憶された経験的データによって事前に埋められる。マップ416は、エンジン負荷および速度によってインデックスが付けられた値のテーブルに基づいて所望の既燃ガス留分設定点(BF
tr_sp)を出力する。マップ418は、マップ416によって生成された所望の既燃ガス留分設定点によってインデックスが付けられた値のテーブルに基づいて、所望のEGR質量流量(W
egr_des)を出力する。マップ416および418は、エンジン動力計試験に基づき、ECU149内にまたはこれを用いて記憶された経験的データによって事前に埋められる。420では、実際のEGR質量流量が、感知することによっておよび/または算出によって決定される。EGR質量流量測定および算出の例に関しては、関連出願の第13/926,360号の式5および6を参照されたい。
【0044】
加算器421は、所望および実際の%EGR比の比較に基づく誤差を生成し(
図3のステップ306)、フィードバック制御装置412は、誤差を最小限に抑えるためにEGR流(ΔW
EGR)内に必要とされる変化にこの誤差を変換する。フィードバック制御装置412は、PID制御装置、ゲインスケジュールドPID制御装置、またはスライディングモード制御装置などの別の非線形制御装置によって実装され得る。EGR弁アクチュエータ制御装置423は、EGR流内の必要とされる変化をEGR弁位置に変換する。EGR流の変化をEGRアクチュエータ出力(ΔΘ)に移行するEGRアクチュエータ制御装置423は、EGRモデル(物理的または経験的)と併用してPID制御装置またはゲインスケジュールドPID制御装置として実装され得る。アクチュエータ制御装置423からのEGRアクチュエータ出力は、424において、フィードフォワード制御装置410の出力に加えられる(またはサインに応じて差し引かれる)。最終EGR弁アクチュエータ命令が、次いで、ECU149を介して送られる。EGR弁アクチュエータ命令は、EGR制御信号としてEGR弁アクチュエータ141に提供される。
【0045】
図4を再度参照すると、一部の態様では、LPCにおけるシリンダ内の捕捉質量の温度の推定に基づき、所望の既燃ガス留分設定点を調整することが望ましくなり得る。これは、関連出願の第13/926,360号の式42にしたがって演算ユニット426によって算出され得る。この点において、ユニット426は、次いで、実際の捕捉温度T
trを捕捉温度の所定値と比較する。捕捉温度の所定値は、エンジン動力計試験に基づいて決定され、ECU149内にまたはこれによって記憶される。実際の捕捉温度がこの所定温度より大きいことが判明したとき、制御機構400は、排出に対する捕捉温度の影響を最小限に抑えるように428において所望の捕捉既燃ガス留分設定点を調整する。この点において、所望の捕捉既燃ガス留分設定点に対する調整は、426によって出力された捕捉温度誤差e
Ttrによってインデックスが付けられたルックアップテーブル427によって実装されたマップに基づいて行われる。このルックアップテーブルの値は、エンジン動力計試験によって決定され、ECU149内にまたはこれを用いて記憶され得る。
【0046】
本明細書において示され説明される実施形態は、マニホールド125および130内の状態に基づく実際のパラメータ値がエンジンのシリンダに起因すると考えるが、コストおよびスペースにより、生産エンジンのシリンダの1つまたは複数上に関連センサーを配置し作動させることが可能になると想定して、関係する原理を個々のシリンダそれ自体に適用できることが当業者に明白であるはずである。さらに、所望のパラメータ値は、これらの値を、たとえば、動力計内で稼動する、ユニフロー掃気式2ストロークサイクル対向ピストンエンジンのシリンダのポート閉鎖時間にマッピングまたは同期させる経験的方法によって得られる。
【0047】
空気処理制御が、特定の捕捉パラメータおよび特定の外部状態の調整を参照して説明されてきたが、EGR流またはEGR設定点の調整による捕捉既燃ガス留分の制御は、他の空気処理パラメータの調整による他の捕捉状態の制御と組み合わせられ得ることを当業者は気付くであろう。
【0048】
空気処理制御が、2つのクランクシャフトを備えた対向エンジンを参照することによって説明されてきたが、これらの構造を1つまたは複数のクランクシャフトを備えた対向ピストンエンジンに適用できることを理解すべきである。さらに、これらの構造のさまざまな態様は、ポート付きシリンダが対向しておよび/または1つまたは複数のクランクシャフトのいずれか側に配設された、対向ピストンエンジンに適用され得る。
【0049】
それにしたがって、上記で説明された構造による本特許の保護は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。