特許第6475251号(P6475251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475251有機発光表示装置及び視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475251
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】有機発光表示装置及び視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190218BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190218BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190218BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20190218BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20190218BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/28
   H05B33/02
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】7
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-543576(P2016-543576)
(86)(22)【出願日】2014年12月31日
(65)【公表番号】特表2017-501585(P2017-501585A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2014095968
(87)【国際公開番号】WO2015101335
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】201310752797.6
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201310747785.4
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515179314
【氏名又は名称】昆山工研院新型平板顕示技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】KUNSHAN NEW FLAT PANEL DISPLAY TECHNOLOGY CENTER CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】504337718
【氏名又は名称】北京維信諾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 維維
(72)【発明者】
【氏名】劉 嵩
(72)【発明者】
【氏名】何 麟
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−043097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0168988(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/151039(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101540374(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0164772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−28
H01L 51/50
G09F 9/30
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
反射性を有する第1の電極と、
半透過半反射性を有する第2の電極と、
前記第2の電極の上に位置する光出力結合層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する有機層とを含み、
前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を含み、前記正孔注入層は、前記第1の電極に近接しかつ前記第1の電極の上に位置し、前記発光層は、それぞれ赤色、緑色及び青色画素領域に位置する赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を含む有機発光表示装置であって、
前記緑色及び赤色画素領域において、前記正孔注入層と前記正孔輸送層との間に位置する光学補償層をさらに含み、前記光学補償層が少なくとも二層構造であることを特徴とする有機発光表示装置。
【請求項2】
前記緑色画素領域における前記光学補償層は、第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から前記第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、
前記赤色画素領域における前記光学補償層は、第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から前記第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記緑色画素領域における前記光学補償層は、第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から前記第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、
前記赤色画素領域における前記光学補償層は、第1の光学補償層、第2の光学補償層、第3の光学補償層及び第4の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から前記第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、前記第3の光学補償層に用いられる材料が前記第1の光学補償層の材料と同じであり、前記第4の光学補償層に用いられる材料及び厚さが前記第2の光学補償層と同じであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記緑色画素領域及び前記赤色画素領域における前記第1の光学補償層の材料の一般化学式は、
【化1】

又は
【化2】

であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記緑色画素領域及び前記赤色画素領域における前記第2の光学補償層の材料の一般化学式は、
【化3】

であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記緑色画素領域及び前記赤色画素領域における前記第2の光学補償層の材料はHAT(CN)であり、分子構造が、
【化4】

であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記正孔注入層は二層構造であり、前記第1の電極の上に位置する第1の正孔注入層と前記第1の正孔注入層の上に位置する第2の正孔注入層とを含み、
前記第1の正孔注入層の材料は前記第1の光学補償層に用いられる材料と同じであり、
前記第2の正孔注入層の材料は前記第2の光学補償層に用いられる材料と同じであることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の分野に関し、具体的には、青色、緑色及び赤色画素を有する有機発光表示装置に関する。特に、本発明は、共振上の要件を満たすように、赤色画素装置と緑色画素装置に光学補償層を有する有機発光表示装置に関する。また、本発明は、さらに視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light−Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイは、赤、緑及び青の三色の発光装置によりカラー表示を実現する。OLEDは、出射光方向に従って、ボトムエミッション型装置(つまり、出射光が基板側へ出射する)とトップエミッション型装置(つまり、出射光が基板側と反対側へ出射する)に分けられる。より高い効率及び輝度を得るために、AMOLED(Active Matrix/Organic Light Emitting Diode:アクティブマトリクス型有機発光ダイオード)において、一般的にトップエミッション型発光構造を用いる。トップエミッション型装置は、反射層を有する陽極と半透過半反射の陰極を含むので、微小光共振器を形成し、有機材料から発した光は微小共振器の中で干渉作用が発生して、より高い効率及びより純粋な色度を得る。しかし、赤光、緑光及び青光のスペクトルが異なり、干渉が発生した時の光路長が異なるために、有機層の厚さが異なってくる。
【0003】
現在、業界では、一般的に正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)の厚さを調整することにより光路長の要件を満たす有機層の厚さを得るが、増加したHILの厚さは、装置の駆動電圧の上昇をもたらし、キャリアの平衡に影響し、さらに装置の効率及び耐用年数などの性能に影響する。一方、HILはその後ろに配置する正孔輸送層(HTL:Hole Transferring Layer)に合わせる必要があるため、HTLの材料の選択範囲が小さくなる。特許文献1には、補助層として緑色光と赤色光の共振周期を調整するための高正孔移動度の材料が開示されているが、該解決手段で選択された高正孔移動度の材料はわずかあり、製品開発が制限される。
【0004】
有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、OLEDと略称される)は、新型の自己発光表示装置として、その質量が軽く、厚さが薄く、高い耐衝撃性を有するとともに、有機半導体を用いて発光し、材料の選択範囲が広く、可視光範囲におけるフルカラー表示を実現でき、白色照明を実現しやすい。従来の主流の液晶表示装置(Liquid Crystal Display、LCDと略称される)に比べて、その視野角がより広く、応答速度がより速く、バックライト照明を必要とせず、発光効率が高く、かつフレキシブルな表示を実現できるため、LCDに代わる潜在性が最も高い表示装置である。
OLED装置は、発光位置に従って、ボトムエミッション型OLED(Bottom Emitting OLED、BEOLEDと略称される)とトップエミッション型OLED(Top Emitting OLED、TEOLEDと略称される)の二種類に分けられる。BEOLEDは、透明な酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxides、ITOと略称される)又は酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxides、IZOと略称される)電極で被覆したガラス基板にOLEDを作製する。OLEDに電圧を印加すると、OLEDから発した光は透明なITO(又はIZO)電極及びガラス基板を通過して底部から出射する。BEOLED構造において、透明なITO(又はIZO)電極は、OLEDを駆動する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFTと略称される)に接続されるが、OLEDの発光面積がTFTで損なわれるという問題が存在するため、装置の開口率(Aperture Ratio)が低くなる。
【0005】
一方、トップエミッション型OLEDでは、不透明な全反射電極をガラス又はシリコン基板に被せ、次にOLEDを作製し、OLEDに電圧を印加すると、光が上部の透明又は半透明な陰極から出射するものである。トップエミッション型OLED装置に基づくディスプレイにおいて、OLEDを駆動するTFTがOLEDの下に作製され、出光面がTFTとは別方向にあるため、開口率が低いという問題を根本的に解決できる。
トップエミッション型OLEDは、全反射電極及び半透明電極を含み、このような構造は微小共振器効果を形成することができる。この微小共振器効果により強いマルチビーム干渉が発生し、光源に対して選択、狭窄化及び増強などの作用を果たすので、常に装置の色度を高め、特定の波長の発光強度を増強し、装置の発光色を変更するなどに用いることができる。その一方で、微小共振器効果の存在は装置の視野角特性に影響し、すなわち、視野角のシフトにつれて、発光ピークがシフトするので、ディスプレイの輝度の差異及び色度のドリフトなどの問題をもたらす。
【0006】
現在、トップエミッション型OLEDの視野角特性を改善する解決手段として、一般的に陰極に、例えば、バソクプロイン(Bathocuproine、BCPと略称される)等の高屈折率で低吸収率の有機化合物の光出力結合層を追加するか、又は半透明な陰極の表面に高屈折率の誘電体ZnSe、ZnSなどを結合層として蒸着することにより、透過率及び光取り出し効率を高め、さらにマルチビーム干渉による影響を低減することが行われている。
しかし、マルチビーム干渉の抑制につれて、微小共振器効果における別の広角干渉が作用するようになり、上記解決手段は広角干渉の問題を解决できない。つまり、上記解決手段では、OLED装置における微小共振器効果への抑制作用が限られ、視野角特性を効果的に改善できないという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許CN101308863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、赤色画素及び緑色光画素装置に二層の光学補償層を備えることにより、装置の各要素の光学的及び電気的性能を効果的に改善し、かつ広い材料選択範囲を得る有機発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、基板と、反射性を有する第1の電極と、半透過半反射性を有する第2の電極と、前記第2の電極の上に位置する光出力結合層と、第1の電極と第2の電極との間に位置する有機層とを含む有機発光表示装置を提供する。
ここで、前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を含むとともに、前記正孔注入層は、前記第1の電極に近接しかつ前記第1の電極の上に位置し、前記発光層は、それぞれ赤色、緑色及び青色画素領域に位置する赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を含むことを特徴とする。
また、本発明の有機発光表示装置では、緑色及び赤色画素領域において、前記正孔注入層と正孔輸送層との間に位置する光学補償層をさらに含み、前記光学補償層が少なくとも二層構造であることを特徴とする。
【0010】
上記有機発光表示装置では、緑色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVである。また、赤色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであることを特徴とする。
また、上記有機発光表示装置では、緑色画素領域の前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVである。また、赤色画素領域の前記光学補償層は第1の光学補償層、第2の光学補償層、第3の光学補償層及び第4の光学補償層を含む。前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、前記第3の光学補償層に用いられる材料が前記第1の光学補償層の材料と同じであり、前記第4の光学補償層に用いられる材料及び厚さが前記第2の光学補償層と同じであることを特徴とする。
【0011】
上記有機発光表示装置は、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第1の光学補償層の材料の一般化学式が、
【化1】


又は
【化2】


であることを特徴とする。
上記有機発光表示装置は、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第2の光学補償層の材料の一般化学式が、
【化3】


であることを特徴とする。
上記有機発光表示装置は、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第2の光学補償層の材料がHAT(CN)であり、その分子構造が、
【化4】


であることを特徴とする。
【0012】
上記有機発光表示装置において、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第2の光学補償層の厚さが5〜15nmである。
上記有機発光表示装置において、前記正孔注入層は二層構造であり、第1の電極の上に位置する第1の正孔注入層と該第1の正孔注入層の上に位置する第2の正孔注入層とを含み、該第1の正孔注入層の材料は前記第1の光学補償層に用いられる材料と同じであり、該第2の正孔注入層の材料は前記第2の光学補償層に用いられる材料と同じである。
上記有機発光表示装置において、前記第1の正孔注入層と第1の電極との間に第3の正孔注入層が設けられ、該第3の正孔注入層に用いられる材料は第2の正孔注入層と同じである。
【0013】
上記有機発光表示装置において、前記第1の光学補償層の材料は
【化5】


及び
【化6】


とのドーピング構造であり、そのドーピング比が100:1〜5:1であり、或いは、前記第1の光学補償層の材料は、
【化7】


及び、
【化8】


とのドーピング構造であり、そのドーピング比が100:1〜5:1である。
本発明において、赤色及び緑色光装置の光学補償層の厚さは異なり、それぞれのスペクトル共振周期の光路長要件を満たす。同時に、本発明の有機発光表示装置の構造を採用すると、装置の各項の光学的及び電気的性能を効果的に改善し、かつ広い材料選択範囲を得ることができる。
【0014】
本発明が解決しようとする他の技術課題は、トップエミッション型OLED装置において、視野角のシフトにつれて輝度及び色度の偏差が生じるという現象を改善するために、視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置を提供することである。
上記技術課題を解決するために、本発明は以下の技術手段を採用する。
本発明は、基板と、基板に積層して設けられた第1の電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、第2の電極、光出力結合層とを含み、前記第2の電極の光透過率が25%以上であり、前記正孔注入層の屈折率が1.8以上である視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置を提供する。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記第2の電極は酸化インジウムスズ又は酸化インジウム亜鉛又は金属銀である。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記第2の電極は第1の金属層及び第2の金属層を含み、第1の金属層がアルカリ金属又はその合金、アルカリ土類金属又はその合金であり、第2の金属層が金属銀である。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記第2の電極の厚さは10nm〜30nmである。
【0015】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記発光層の発光波長が青色波長帯にある場合、前記正孔注入層の屈折率N≧2.0である。 上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記発光層の発光波長が緑色波長帯にある場合、前記正孔注入層の屈折率N≧1.9である。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記発光層の発光波長が赤色波長帯にある場合、前記正孔注入層の屈折率N≧1.8である。
【0016】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記正孔注入層の材料は三級アミン系化合物であり、その分子一般式は、
【化9】


である。
ここで、R、R、R、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基から選択され、

【化10】


又は
【化11】


又は
【化12】


であり、L1とL2はアセン化合物であり、その分子式はそれぞれ
【化13】


及び
【化14】


である。
【0017】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記正孔注入層の材料の構造式は、
【化15】


又は
【化16】


又は
【化17】


又は
【化18】


又は
【化19】

又は
【化20】

又は
【化21】


である。
【0018】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記光出力結合層は、バソクプロイン材料層である。
前記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、緑色及び赤色画素領域において前記正孔注入層と正孔輸送層との間に位置する光学補償層をさらに含み、前記光学補償層は少なくとも二層構造であることを特徴とする。
前記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、緑色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、赤色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであることを特徴とする。
前記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、緑色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVである。また、赤色画素領域における前記光学補償層は第1の光学補償層、第2の光学補償層、第3の光学補償層及び第4の光学補償層を含み、前記第1の光学補償層の最高占有分子軌道エネルギ準位から第2の光学補償層の最低非占有分子軌道エネルギ準位を引いた値が≧−0.2eVであり、前記第3の光学補償層に用いられる材料が前記第1の光学補償層の材料と同じであり、前記第4の光学補償層に用いられる材料及び厚さが前記第2の光学補償層と同じであることを特徴とする。
【0019】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、前記緑色画素領域及び赤色画素領域における第1の光学補償層の材料の一般化学式は、
【化22】


又は
【化23】

であることを特徴とする。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、前記緑色画素領域及び赤色画素領域における第2の光学補償層の材料の一般化学式は、
【化24】

であることを特徴とする。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置は、前記緑色画素領域及び赤色画素領域における第2の光学補償層の材料はHAT(CN)であり、その分子構造は、
【化25】

であることを特徴とする。
【0020】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第2の光学補償層の厚さは5〜15nmである。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記正孔注入層は二層構造であり、第1の電極の上に位置する第1の正孔注入層と該第1の正孔注入層の上に位置する第2の正孔注入層とを含み、該第1の正孔注入層の材料は前記第1の光学補償層に用いられる材料と同じであり、該第2の正孔注入層の材料は前記第2の光学補償層に用いられる材料と同じである。
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置において、前記第1の正孔注入層と第1の電極との間に第3の正孔注入層が設けられ、該第3の正孔注入層に用いられる材料は第2の正孔注入層と同じである。
【0021】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置であって、前記第1の光学補償層の材料は、
【化26】


及び、
【化27】

とのドーピング構造であり、そのドーピング比が100:1〜5:1であり、
或いは、前記第1の光学補償層の材料は、
【化28】

及び、
【化29】


とのドーピング構造であり、そのドーピング比が100:1〜5:1である。
【0022】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、前記第1の光学補償層の材料は三級アミン系化合物であり、その分子一般式は
【化30】


である。
ここで、R、R、R、Rがそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基から選択され、
R1が
【化31】

又は
【化32】


又は
【化33】

であり、L1とL2がアセン化合物であり、それらの分子式はそれぞれ、
【化34】

及び、
【化35】

であることを特徴とする。
【0023】
上記視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置は、前記緑色画素領域及び赤色画素領域の第1の光学補償層の材料の構造式が、
【化36】

又は
【化37】

又は
【化38】

又は
【化39】


又は
【化40】

又は
【化41】

又は
【化42】


であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記技術手段は、従来の技術に比べて、以下の利点を有する。
(1)本発明の視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、まず光透過率が25%以上の第2の電極を用いて、微小共振器効果におけるマルチビーム干渉の作用を抑制し、視野角特性を改善する。ここで、マルチビーム干渉が抑制されると、微小共振器効果における広角干渉が作用するようになるので、この広角干渉を抑制するため、本発明は高屈折率の有機材料を正孔注入層として用いる、つまり、前記正孔注入層の屈折率は1.8以上である。高屈折率の正孔注入層は極薄の第2の電極構造に合わせ、第1の電極の反射光と発光層の出射光との干渉の増強を抑制する。こうして、OLED装置における広角干渉を軽減し、微小共振器効果を抑制し、OLED装置の視野角特性を改善することができる。同時に、正孔注入層の屈折率が向上するので、正孔注入層の厚さが低下し、さらに装置全体の厚さが低下することにより、装置の生産で材料及び作業時間を節約することができる。
(2)本発明の視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、さらに光出力結合層を補助とする。前記光出力結合層の材料は、低光吸収率のバソクプロイン材料又はZnSe、ZnSなどの高屈折率の材料から選択される。この構成により、半透明金属電極の反射を減少し、内部光の出力効率を増加し、装置の視野角特性をさらに改善することができる。
(3)本発明の視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置では、赤色及び緑色光装置の光学補償層の厚さが異なり、それぞれのスペクトル共振周期の光路要件を満たす。同時に、本発明の有機発光表示装置の構造を採用すると、装置の各要素の光学的及び電気的性能を効果的に改善し、かつ広い材料選択範囲を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の内容をより明瞭に理解しやすくするために、以下、本発明の具体的な実施形態および図面を組み合わせて、本発明をさらに詳細に説明する。
図1図1は本発明の有機発光装置の構造概略図である。
図2図2は本発明の第1の光学補償層と第2の光学補償層との界面で電荷分離効果が発生する場合の概略図である。
図3図3は本発明の第2の正孔注入層と第1の光学補償層との界面及び2つの正孔注入層の界面で電荷分離効果が発生する場合の概略図である。
図4図4は本発明の実施例5〜11に係る視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置の概略図である。
図5図5は本発明の選択した三級アミン系化合物の屈折率が波長に応じて変化する曲線及び4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンの屈折率が波長に応じて変化する曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、以下添付図を参照しながら本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1に示すように、OLED表示装置は赤、緑及び青の三つの画素を含む。本発明のOLED表示装置は、下から上まで順に基板、反射層1、反射性を有する第1の電極2、半透過半反射性を有する第2の電極8及びに第2の電極の上に位置する光出力結合層9を含む。また、第1の電極2と第2の電極8との間に有機層を有し、前記有機層は、正孔注入層3、正孔輸送層(HTL)5、発光層7及び電子輸送層6を含む。前記正孔注入層3が第1の電極2に近接し、かつ前記第1の電極2の上に位置する。前記の反射層1、第1の電極2、正孔注入層3、正孔輸送層5、電子輸送層6、第2の電極8及び光出力結合層9は同じ材料及び厚さを有し、前記発光層は、それぞれ青色、緑色及び赤色画素領域に位置し、かつ異なる材料を有する青色発光層61、緑色発光層62及び赤色発光層63を含む。ここで、赤、緑及び青の発光スペクトルの波高値は、赤色光≧緑色光≧青色光の関係にあるので、式(1)
【式1】
【0028】


により、赤色光装置の有機層の厚さが最も厚く、緑色光装置の有機層の厚さがその次で、青色光装置が最も薄くなる。式(1)中、λは発光スペクトルのピーク値で、Φは反射層の位相角で、Φは陰極の位相角で、dmは有機層における各層及びITO(酸化インジウムスズ)層(すなわち反射層と第2の電極との間の各層)の厚さ(合計厚さd=Σdm)で、nmは各層に対応する屈折率で、θは各層に対応する出射光角度で、kは定数である。
【0029】
上記の層厚どうしの関係により、緑色画素領域は光学補償層をさらに含む。前記光学補償層は第1の光学補償層421及び第2の光学補償層422を含む。また、赤色画素領域は光学補償層を含み、前記光学補償層は第1の光学補償層431及び第2の光学補償層432を含む。ここで、赤色画素領域及び緑色画素領域において、第1の光学補償層の厚さ≧第2の光学補償層の厚さとなるため、赤、緑及び青色装置の各有機層の厚さは上記式(1)の要件を同時に満たす。
第1の光学補償層はHOMO(最高占有分子軌道エネルギ準位)≧−5.4eVであり、かつトリフェニルアミングループを含有する材料である。第2の光学補償層は厚さが5〜15nmで、LUMO(最低非占有分子軌道エネルギ準位)≦−5.2eVである材料である。また、正孔輸送層(HTL)5もHOMO≧−5.4eVであって、トリフェニルアミノ基を含有する材料である。図2に示すように、第1の光学補償層及びHTLのHOMOエネルギ準位から第2の光学補償層のLUMOエネルギ準位を引くと、≧−0.2eVであるので、HTLと第1の光学補償層との界面で電子と正孔との分離が発生する。このため、第1の光学補償層と第2の光学補償層との界面で有效な電荷交換が行われることにより、有機層の厚さの厚すぎによる電圧上昇問題を解消できる。
【0030】
第1の光学補償層の材料は下記一般式
【化43】


を有し、また具体的には
【化44】
又は、

を含む。
【0031】
また、第2の光学補償層は一般式、
【化45】


を有し、具体的には、
【化46】


を含む。
第2の光学補償層は以下に示すHAT(CN)
【化47】


であってもよい。
なお、本発明の第1の光学補償層は、上記第1の光学補償層の材料と第2の光学補償層の材料とのドーピング構造であってよく、そのドーピング比は100:1〜5:1である。
【実施例2】
【0032】
本発明の実施例2は、実施例1を基に、第1の正孔注入層及び第2の正孔注入層を含む二層構造の正孔注入層(HIL)3を用い、第1の正孔注入層はHOMO≧−5.4eVであり、かつトリフェニルアミノ基を含有する材料であり、すなわち第1の光学補償層に用いられる材料と同じである。第2の正孔注入層は、厚さが5〜15nmで、LUMO≦−5.2eVである材料であり、すなわち第2の光学補償層に用いられる材料と同じである。第2の正孔注入層と第1の光学補償層との界面及び2つのHILの界面で、実施例1の記載に類似した物理的変化が発生するので、装置の駆動電圧をさらに低減することができる(図3に示す)。
【実施例3】
【0033】
本発明の実施例3は、実施例2を基に、第1の正孔注入層と第1の電極との間に第3の正孔注入層を追加した。第3の正孔注入層に用いられる材料は第2の正孔注入層と同じである。また、前記第3の正孔注入層の厚さは5〜15nmで、LUMO≦−5.2eVである材料であるので、装置の駆動電圧をさらに低減することができる。
【実施例4】
【0034】
本発明の実施例4は、実施例1を基に赤色光の光学補償層を改善する。赤色光の光学補償層は四層構造であり、緑色光の光学補償層と同じ第1の光学補償層及び第2の光学補償層を含み、第3の光学補償層(なお、ここに用いる材料は第1の光学補償層材料と同じである)及び第4の光学補償層(なおここに用いる材料及び厚さは、第2の光学補償層と同じである)をさらに含む。
【0035】
本発明の上記各実施例における各層の構造では、下記表1に示す材料及び厚さなどのパラメーターを採用し、各実施例と比較例とのデータ比較結果を表2に示す。
【表1】
【0036】
【表2】

【0037】
本発明の上記各実施例における各層の構造では、以下の表3に示す材料及び厚さなどのパラメーターを採用し、各実施例と比較例とのデータ比較結果を表4に示す。
【表3】








【0038】
【表4】


但し、以上は本発明の好ましい実施例であって、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【実施例5】
【0039】
本実施例では、視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置を提供する。図4に示すように、基板1’と、基板1’に積層して設けられた第1の電極2、正孔注入層3、正孔輸送層5、発光層7、電子輸送層6、第2の電極8、及び光出力結合層9とを含む。前記発光層7の発光波長が可視光の波長帯にある場合、前記正孔注入層3の屈折率は≧1.8以上である。前記第2の電極の厚さは10nm〜30nmであり、好ましくは10〜15nmである。前記光出力結合層9は、低光吸収率のバソクプロイン材料又はZnSe、ZnSなどの高屈折率の材料から選択され、その厚さは55nmである。
本実施例において、前記第1の電極2は陽極であり、全反射作用を果たす第1のAg層と前記第1のAg層に設けられた透明なITO層とを含み、第1のAg層の厚さは150nmであり、ITO層の厚さは20nmである。
また、前記第2の電極8は陰極であり、ITO、IZO又は金属銀であってよい。また、前記第2の電極8は、金属層がアルカリ金属又はその合金である第1の金属層と、アルカリ土類金属又はその合金である第2の金属層とを含む複合構造であってもよい。本実施例では、好ましくは前記第2の電極が前記の第1の金属層及び第2の金属層を含み、前記第1の金属層はMg:Ag層であり、前記第2の金属層は金属銀である。また、Mg:Ag材料層の厚さは2nmであり、MgとAgの比率関係は4:1であり、金属銀の厚さは14nmである。
【0040】
ここで、前記第1の電極2と前記第2の電極8との間に微小共振器効果を発生させることができる。
前記発光層7が励起されると発光し、発した光が第1の電極2及び第2の電極8の方向へ射出する。射出した光は第1の電極2により反射された後に、正孔注入層3、正孔輸送層5、発光層7、及び電子輸送層6を通過して第2の電極8にまで至る。
本実施例に係る発光層7の発光波長は青色光波長帯にあり、すなわち発光波長が460nmである。前記正孔注入層の屈折率はN≧2.0であるが、本実施例では前記正孔注入層の屈折率として2.04を選択した。前記正孔注入層の厚さは100nm〜105nmであるが、この厚さは実際の要求に応じて選択できる。本実施例における前記正孔注入層3の厚さは好ましくは103nmである。本実施例における他の各層の厚さについては、前記正孔輸送層の厚さは20nmであり、前記発光層の厚さは20nmであり、前記電子輸送層の厚さは35nmである。
【0041】
前記正孔注入層3及び正孔輸送層5の材料は、三級アミン系化合物である。本実施例に係る正孔注入層の材料の構造式は、
【化48】

である。
また、前記正孔輸送層の材料は、前記正孔注入層の材料と同じであってよく、他の構造式の三級アミン系化合物であってよい。本実施例に係る正孔輸送層の材料の構造式は、
【化49】

である。
【0042】
本実施例中、極薄の第2の電極8の光透過率は25%以上である。微小共振器効果におけるマルチビーム干渉作用を抑制して、光取り出し効率及び透過率を向上させるとともに、正孔注入層3の屈折率を向上させる。また、第1の電極2の反射光と発光層7の出射光との干渉の増強を抑制し、広角干渉を抑制することにより、微小共振器効果を軽減させて、OLED装置の視野角特性を効果的に改善することができる。さらにまた、光出力結合層によって、半透明金属電極の反射を減少し、内部光の出力効率を増加し、表示装置の光学的性質をさらに改善することができる。
また、発光層から発する光が可視光の波長帯にある場合、発光層の材料は発光波長帯に基づいて選択することができる。本願において発光層の発光波長帯が青色光波長帯、緑色光波長帯及び赤色光波長帯にある場合、発光層に選択される材料は従来技術の材料でよい。
但し、発光層に選択される材料は本願の着眼点の要点ではないので、本願の各々の実施例では、その説明を省略する。
【実施例6】
【0043】
本実施例におけるトップエミッション型OLED装置は、実施例5を基にして、図4に示すような構造を有する。本実施例に係る発光層7の発光波長は緑色光波長帯にあり、すなわち発光波長が510nmである。前記正孔注入層の屈折率はN≧1.9であるが、本実施例では、正孔注入層の屈折率として1.93を選択し、厚さは150nm〜155nmとした。この厚さは実際の要求に応じて選択でき、本実施例における前記正孔注入層の厚さは好ましくは153nmである。
本実施例は実施例5に比べると、前記発光層7の発光波長が異なるので、前記発光層に用いる材料が異なる。本実施例では、正孔注入層の厚さを変更したが、他の各層の厚さはいずれも実施例5と同じである。
【0044】
本実施例において、前記正孔注入層の材料の構造式は、
【化50】


であり、
前記正孔輸送層の材料の構造式は、
【化51】


である。
本実施例において、極薄の第2の電極8の光透過率は25%以上であり、微小共振器効果におけるマルチビーム干渉作用を抑制し、光取り出し効率及び透過率を向上させる。さらに、同様に正孔注入層3の屈折率を向上させて、第1の電極2の反射光と発光層7の出射光との干渉の増強を抑制することにより、OLED装置の視野角特性を効果的に改善する。また、光出力結合層は、半透明金属電極の反射を減少し、内部光の出力効率を増加するので、表示装置の光学的性質をさらに改善することができる。
【実施例7】
【0045】
実施例5及び実施例6とは異なり、本実施例に係る発光層の発光波長は、色光波長帯にあり、すなわち発光波長が620nmである。前記正孔注入層の屈折率はN≧1.8であるが、前記正孔注入層の屈折率として1.81を選択した。厚さは100nm〜105nmであり、この厚さは実際の要求に応じて選択でき、本実施例における前記正孔注入層の厚さは好ましくは203nmである。本実施例は実施例5又は実施例6に比べて、前記発光層7の発光波長が異なるので、前記発光層に用いる材料が異なる。
本実施例において、前記正孔注入層の材料の構造式は、
【化52】

であり、
前記正孔輸送層の材料の構造式は、
【化53】

である。
本実施例では、正孔注入層の厚さだけを変更したが、他の各層の厚さはいずれも実施例5と同じである。
本実施例において極薄の第2の電極8の光透過率は25%以上であり、微小共振器効果におけるマルチビーム干渉作用を抑制し、光取り出し効率及び透過率を向上させる。さらに、正孔注入層3の屈折率をも向上させ、第1の電極反射光と発光層の出射光との干渉の増強を抑制することにより、OLED装置の視野角特性を効果的に改善した。また、光出力結合層は半透明金属電極の反射を減少し、内部光の出力効率を増加するので、装置の視野角特性をさらに改善することができる。
【実施例8】
【0046】
本実施例に係る発光層7の発光波長は青色光波長帯にあり、すなわち発光波長が460nmである。前記正孔注入層の屈折率はN≧2.0であり、厚さは100nmである。本実施例における他の各層の厚さについては、前記正孔輸送層の厚さは20nmであり、前記発光層の厚さは20nmであり、前記電子輸送層の厚さは35nmである。
前記正孔注入層3と正孔輸送層5の材料は三級アミン系化合物であり、その構造式は、
【化54】

である。
【実施例9】
【0047】
本実施例に係る発光層7の発光波長は緑色光波長帯にあり、前記正孔注入層の屈折率はN≧1.90であり、厚さは150nmである。
前記正孔輸送層の厚さは20nmであり、前記発光層の厚さは20nmであり、前記電子輸送層の厚さは35nmである。
前記正孔輸送層3と正孔輸送層5の材料は三級アミン系化合物であり、その構造式は、
【化55】


である。
【実施例10】
【0048】
本実施例に係る発光層7の発光波長は赤色光波長帯にある。前記正孔注入層の屈折率はN≧1.8であり、厚さは200nmである。前記正孔輸送層の厚さは20nmであり、前記発光層の厚さは20nmであり、前記電子輸送層の厚さは35nmである。
前記正孔輸送層3と正孔輸送層5の材料は三級アミン系化合物であり、その構造式は、
【化56】


である。
【実施例11】
【0049】
本実施例に係る発光層7の発光波長は赤色光波長帯にある。前記正孔注入層の屈折率はN≧1.8であり、厚さは200nmである。前記正孔輸送層の厚さは20nmであり、前記発光層の厚さは20nmであり、前記電子輸送層の厚さは35nmである。
前記正孔輸送層3と正孔輸送層5の材料は三級アミン系化合物であり、その構造式は、
【化57】


である。
【0050】
本発明に係る視野角特性を改善したトップエミッション型OLED装置の利点をさらに明らかにするために、特に比較例1〜3を設計しかつ実施して、出願における本実施例5〜7の試験結果と比較する。
【比較例1】
【0051】
本比較例では、トップエミッション型OLED装置を提供する。具体的な構造は実施例5と同じであるが、唯一の違いとして、その正孔注入層の材料は、m−MTDATA正孔注入材料を選択し、その名称は、4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンである。分子式は、
【化58】


である。
上記材料は、波長が460nmの場合、屈折率が1.8である。
【比較例2】
【0052】
本比較例では、トップエミッション型OLED装置を提供する。具体的な構造は実施例6と同じであるが、唯一の違いとして、その正孔注入層の材料は、m−MTDATA正孔注入材料を選択し、その名称は、4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンである。分子式は、
【化59】


である。
上記材料は、波長が510nmの場合、屈折率が1.73である。
【比較例3】
【0053】
本比較例では、トップエミッション型OLED装置を提供する。具体的な構造は実施例7と同じであるが、唯一の違いとして、その正孔注入層の材料はm−MTDATA正孔注入材料を選択し、その名称は、4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンである。分子式は、
【化60】


である。
上記材料は、波長が620nmの場合、屈折率が1.67である。
【0054】
発光層の発光波長が同じであり、かつ視野角がいずれも60度である場合に、比較例1〜3及び実施例5〜7の構造の発光ピークのシフト量を試験した結果を、表5〜表7に示す。
【表5】



【表6】



【表7】


【0055】
表5から表7のデータから分かるように、発光層の発光波長が同じであると、同じ視野角の場合、発光ピークのシフト量が効果的に減少する。
また、図5は、本発明で選択した三級アミン系化合物の屈折率が波長に応じて変化する曲線及び4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンの屈折率が波長に応じて変化する曲線を示す。図面から分かるように、可視光の波長帯(波長が300nmから600nmまでである)の場合、本願で選択された三級アミン系化合物の屈折率は、常に4,4’,4’’−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミンの屈折率より大きい。そのため、正孔注入層に本発明で選択した材料を用いると、空穴注入層の屈折率を効果的に向上させ、第1の電極2の反射光と発光層7の出射光との干渉の増強を効果的に抑制することにより、OLED装置の視野角特性を効果的に改善することができる。
【0056】
なお、明らかに、上記実施例は、実施形態を限定するものではなく、明確に説明するために例示したものに過ぎない。当業者であれば、上記説明を基に種々の変形又は変更を行うことができる。ここで、全ての実施形態を列挙する可能性も必要性もない。これから導出した明らかな変形又は変更は本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0057】
1’−基板、1−反射層、2−第1の電極、3−正孔注入層、421−第1の光学補償層、422−第2の光学補償層、431−第1の光学補償層、432−第2の光学補償層、5−正孔輸送層、6−電子輸送層、61−青色発光層、62−緑色発光層、63−赤色発光層、7−発光層、8−第2の電極、9−光出力結合層
図1
図2
図3
図4
図5