(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来からモーターを介してアクチュエーターを駆動してリンク機構を作動させ、ベッドを起伏させる技法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような電動ベッドは、主に、病院内の治療用や家庭内での介護用に利用される。
【0003】
電動ベッドにおけるこの起伏動作を実現するために、様々な構造のリンク機構が実用化され、油圧式のアクチュエーターを利用するものやモーター式のアクチュエーターを利用するものがあるが、一般的には、モーターを介してアクチュエーターを駆動してリンク機構を作動させるものが多い。特に、治療用或いは介護用の電動ベッドは、その起伏動作として、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さの3つの動作をそれぞれほぼ無段階に調整できるのが一般的である。
【0004】
ただし、このような電動ベッドは、大別してフィードバック制御を行わない第1のタイプと、フィードバック制御を行う第2のタイプの二種類がある。
【0005】
第1のタイプは、操作用のスイッチに表示される表示値を操作者が確認しながら、モーターを介してアクチュエーターを駆動してリンク機構を作動させ、所望値となる位置で操作者の操作により停止させるものである。この第1のタイプの電動ベッドは、比較的廉価のものが多い。
【0006】
しかしながら、例えば電動ベッドを利用する治療又は介護の対象者が医師の指導を受けてその背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについて制限されている場合、第1のタイプの電動ベッドでは、操作者の判断によって任意に背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さを調整することになるため、誤って操作してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、第2のタイプは、操作用のスイッチにて予め背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについて制限する設定値を入力しておき、モーターを介してアクチュエーターを駆動してリンク機構を作動させるにあたり、そのモーターの回転量をエンコーダーやポテンションメーターにより検知してフィードバック制御を行うよう構成したものである。
【0008】
この第2のタイプの電動ベッドでは、例えば電動ベッドを利用する治療又は介護の対象者が医師の指導を受けてその背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについて制限されている場合、予め対応する設定値を操作用のスイッチにて設定しておく。そして、操作者が操作用のスイッチにてモーターを介してアクチュエーターを駆動してリンク機構を作動させたとき、フィードバック制御によりその設定値を超えることなく作動する。このため、第2のタイプの電動ベッドは、操作者にとって、或いは治療又は介護の対象者にとって、安心・安全な電動ベッドとして実現される。
【0009】
特に、第2のタイプの電動ベッドでは、着床する対象者の身体的負担を少なくするよう細やかな動き、例えば背上げ角及び膝上げ高さを同時に可変に制御することや、スローアップ又はスローダウンなどの速度制御を行うなどの連動制御を実現することができ、このような制御は、第1のタイプの電動ベッドでは実現できない。
【0010】
図10に、従来の典型的な第2のタイプの電動ベッド10の例を示している。また、
図11は、従来の典型的な第2のタイプの電動ベッド10のスイッチ11の概略的な構成を示している。
【0011】
図10を参照するに、従来の典型的な第2のタイプの電動ベッド10は、人体を支えるベッドフレーム17の下方に、コントローラー12、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16が配設される。特に、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるように、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16を一組として合計3組設けられている。
【0012】
コントローラー12には各モーター13を駆動するためのハーネスが接続されている。各モーター13の出力軸にはそれぞれのアクチュエーター14が連結され、各アクチュエーター14のシリンダはそれぞれのリンク機構16に接続される。また、各モーター13の出力軸には、エンコーダーやポテンションメーターなどの回転量を検知する回転量検知センサー15がそれぞれ設けられ、この回転量検知センサー15の出力信号は、それぞれの信号ケーブル(図示せず)を経てコントローラー12に接続される。
【0013】
そして、操作用のスイッチ11はコントローラー12に接続されており、操作者は、スイッチ11を用いて着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるようになっている。
【0014】
第2のタイプの電動ベッド10のスイッチ11は、
図11では主要な機能のみを概略的に示しているが、設定値表示部111と操作・設定ボタン部112が設けられる。設定値表示部111には、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての現在の設定値がそれぞれの設定表示部111a,111b,111cに表示される。
【0015】
また、操作・設定ボタン部112には、設定ボタン112dと操作ボタン112eが設けられ、設定ボタン112dが押されると設定モードとなりLED表示部112fが点灯し、操作ボタン112eが押されると操作モードとなりLED表示部112gが点灯する。
【0016】
設定ボタン112dを押して設定モードとし、上下ボタン112a, 112b, 112
cを操作することで、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれ所望の設定値となるよう設定することができ、その設定値が設定値表示部111にそれぞれ表示される。
【0017】
操作ボタン112eを押して操作モードとし、上下ボタン112a, 112b, 112
cを操作することで、当該設定値を超えることのない範囲内で背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さの可変動作が可能となっており、フィードバック制御によりその設定値を超えることなく作動する。
【0018】
尚、
図11に示す例では、例えば背上げ角及び膝上げ高さを同時に可変に連動制御して動作させる操作ボタンの図示を省略しているが、この操作ボタンが押された時には、スローアップ又はスローダウンなどの速度制御を併用して当該設定値の位置まで自動的に可変動作する。
【0019】
このような従来の典型的な第2のタイプの電動ベッド10の全体の操作時の動作を実現する機能部の概略構成を
図12に示している。
図12を参照するに、まず、スイッチ11から操作モード時の操作信号がコントローラー12へ出力される。
【0020】
コントローラー12は、当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する所定の設定値に基づく操作信号を受け付けると、対応する動作を実現するため、駆動信号をモーター13に供給するとともに、エンコーダーやポテンションメーターなどのそれぞれの回転量検知センサー15から対応するモーター13の回転量を示す回転量信号を入力して監視し、当該回転量を基に当該所定の設定値に対応する状態となるようフィードバック制御を行う。
【0021】
当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さの調整をそれぞれ行う各アクチュエーター14のシリンダは、モーター13の回転に応じて伸縮し、この伸縮に応じてそれぞれのリンク機構16を介して電動ベッド10における着床部18の可変動作が行われる。
【0022】
尚、電動ベッドではないが、当該背上げ角の検出のために1軸加速度センサーを用いる技法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明による各実施形態の電動ベッド1について説明する。
【0043】
〔第1実施形態〕
(装置構成)
図1は、本発明による第1実施形態の電動ベッド1の概略構成を示す図である。また、
図2は、本発明による第1実施形態の電動ベッド1の全体の操作時の動作を実現する機能部の概略構成を示すブロック図である。尚、
図1及び
図2において、
図10乃至
図12に示す従来の電動ベッド10と同様の構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0044】
図1及び
図2を参照するに、本発明による第1実施形態の電動ベッド1は、
図10及び
図12に示す従来の電動ベッド10と比較して、エンコーダーやポテンションメーターなどの回転量を検知する回転量検知センサーが設けられていない点、3つの状態センサー20a,20b,20cが設けられている点、及び、コントローラー12の内部に、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号に基づくフィードバック(FB)制御部30が設けられている点で相違しているが、その他の構成要素は同様である。
【0045】
より具体的には、
図1に示す第1実施形態の電動ベッド1は、人体を支えるベッドフレーム17の下方に、コントローラー12、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16が配設される。特に、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるように、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16を一組として合計3組設けられている。
【0046】
コントローラー12には各モーター13を駆動するためのハーネスが接続されている。各モーター13の出力軸にはそれぞれのアクチュエーター14が連結され、各アクチュエーター14のシリンダはそれぞれのリンク機構16に接続される。
【0047】
そして、操作用のスイッチ11はコントローラー12に接続されており、操作者は、スイッチ11を用いて着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるようになっている。スイッチ11の構成は、
図11に示すものと同様とすることができる。尚、
図11に示す例では、例えば背上げ角及び膝上げ高さを同時に可変に連動制御して動作させる操作ボタンの図示を省略しているが、この操作ボタンが押された時には、スローアップ又はスローダウンなどの速度制御を併用して当該設定値の位置まで自動的に可変動作する。
【0048】
ところで、第1実施形態の電動ベッド1には、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての可動部位の位置に、それぞれ3つの状態センサー20a,20b,20cが設けられている。状態センサー20a,20b,20cは、それぞれ状態変化を1次元以上で検出するためのジャイロセンサーや、角度センサー、加速度センサー、衝撃センサーのうちいずれかとすることができる。3つの状態センサー20a,20b,20cから出力される各センサー信号は、破線で示すそれぞれの信号ケーブルを経てコントローラー12に接続される。
【0049】
このような第1実施形態の電動ベッド1の全体の操作時の動作を実現する機能部の概略構成を
図2に示している。
図2に示すように、コントローラー12の内部には、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号に基づくFB制御部30が設けられている。
【0050】
図2を参照するに、まず、スイッチ11から操作モード時の操作信号がコントローラー12へ出力される。
【0051】
コントローラー12は、当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する所定の設定値に基づく操作信号を受け付けると、対応する動作を実現するため、駆動信号をモーター13に供給するとともに、FB制御部30の機能により状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号を入力して監視し、当該センサー信号を基に当該所定の設定値に対応する状態となるようフィードバック制御を行う。
【0052】
当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さの調整をそれぞれ行う各アクチュエーター14のシリンダは、モーター13の回転に応じて伸縮し、この伸縮に応じてそれぞれのリンク機構16を介して電動ベッド10における着床部18の可変動作が行われる。
【0053】
ここで、状態センサー20a,20b,20cは、従来の治療用や介護用の電動ベッドに利用するエンコーダーやポテンションメーターと比較して廉価である。
【0054】
また、状態センサー20a,20b,20cは、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての可動部位の位置に設けられているため、実際の着床部18の位置を直接的に検知する。このため、実際の着床部18の位置とモーター13の回転量とが誤差が吸収され、経年変化で着床部18が変形してしまうような場合でもその検出精度に影響がほとんどない。そして、状態センサー20a,20b,20cのセンサー出力は、累積誤差が発生することもなく高精度化が実現できる。
【0055】
図3は、本実施形態の電動ベッド1におけるFB制御部30の概略構成を示すブロック図である。FB制御部30は、第1信号入力部31、第2信号入力部33、第3信号入力部33、設定値入力部34、信号変換部35、及び比較部36を備える。
【0056】
第1信号入力部31、第2信号入力部33、及び第3信号入力部33は、それぞれ状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号を入力し、信号変換部35へ出力する。
【0057】
信号変換部35は、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号を基に背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する状態値へと変換する。信号変換部35は、中央演算処理ユニット(CPU)と記憶部とを備え、記憶部に格納されるプログラムをCPUにより読み出し、当該状態値へと変換する演算を実行することで実現される。尚、信号変換部35は、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する状態値へと変換のために、予め状態センサー20a,20b,20cの設置位置に基づいて較正したテーブル又は演算式を当該記憶部に予め保持しており、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号を基に直ちに背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する状態値へと変換することができる。
【0058】
設定値入力部34は、当該操作信号における背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する所定の設定値を入力し、比較部36へ出力する。
【0059】
比較部36は、信号変換部35から得られる状態値と、設定値入力部34から得られる設定値を比較して、その差分の有無を示す比較信号を出力する。
【0060】
従って、コントローラー12は、当該比較信号を基にモーター13をフィードバック制御する。
【0061】
(装置動作)
図4は、本発明による第1実施形態の電動ベッド1の全体の操作時の動作を示すフローチャートである。
【0062】
まず、ベッド(着床部18)の可変動作に関する操作信号をスイッチ11からコントローラー12へ送信する(ステップS1)。
【0063】
操作信号を受け付けたコントローラー12は、対応するモーター13の駆動を制御し、アクチュエーター14を駆動する(ステップS2)。
【0064】
このとき、コントローラー12は、FB制御部30の比較信号を基に、状態センサー20a,20b,20cのセンサー信号を監視し(ステップS3)、ベッド(着床部18)の可変動作は設定値に到達したか否かを判定する(ステップS4)。
【0065】
コントローラー12は、ベッド(着床部18)の可変動作が設定値に到達していなければ(ステップS4:No)、当該モーター13の駆動を継続する。
【0066】
一方、コントローラー12は、ベッド(着床部18)の可変動作が設定値に到達したとして判定すると(ステップS4:Yes)、モーター13の駆動を停止し、アクチュエーター14の位置を保持する(ステップS5)。
【0067】
以上のように、本実施形態の電動ベッド1によれば、より低
廉で尚且つ高精度のフィードバック制御が実現可能となり、結果としてベッド自体も低廉化させることができる。
【0068】
〔第2実施形態〕
(装置構成)
図5は、本発明による第2実施形態の電動ベッド1の概略構成を示す図である。また、
図6は、本発明による第2実施形態の電動ベッド1の全体の操作時の動作を実現する機能部の概略構成を示すブロック図である。尚、
図5及び
図6において、
図1及び
図2に示すものと同様の構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0069】
図5及び
図6を参照するに、本発明による第2実施形態の電動ベッド1は、
図10及び
図12に示す従来の電動ベッド10と比較して、エンコーダーやポテンションメーターなどの回転量を検知する回転量検知センサーが設けられていない点、3つの状態センサー20a,20b,20cが設けられている点、及び、スイッチ11の内部に、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号に基づくフィードバック(FB)制御部30が設けられている点で相違しているが、その他の構成要素は同様である。
【0070】
より具体的には、
図5に示す第2実施形態の電動ベッド1は、第1実施形態と同様に、人体を支えるベッドフレーム17の下方に、コントローラー12、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16が配設される。特に、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるように、モーター13、アクチュエーター14、及びリンク機構16を一組として合計3組設けられている。
【0071】
即ち、第1実施形態と同様に、第2実施形態の電動ベッド1には、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての可動部位の位置に、それぞれ3つの状態センサー20a,20b,20cが設けられている。3つの状態センサー20a,20b,20cから出力される各センサー信号は、破線で示すそれぞれの信号ケーブルを経てコントローラー12に接続される。
【0072】
また、第1実施形態と同様に、コントローラー12には各モーター13を駆動するためのハーネスが接続されている。各モーター13の出力軸にはそれぞれのアクチュエーター14が連結され、各アクチュエーター14のシリンダはそれぞれのリンク機構16に接続される。
【0073】
そして、操作用のスイッチ11はコントローラー12に接続されており、操作者は、スイッチ11を用いて着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてそれぞれほぼ無段階の調整ができるようになっている。
【0074】
第2実施形態のコントローラー12は、第1実施形態とは異なり、コントローラー12を
図10及び
図12に示す従来のコントローラー12を変更なくそのまま用いることができる。
【0075】
本実施形態のスイッチ11は、その基本構成として、
図11に示すものと同様とすることができ、
図11に示す例では、例えば背上げ角及び膝上げ高さを同時に可変に連動制御して動作させる操作ボタンの図示を省略しているが、この操作ボタンが押された時には、スローアップ又はスローダウンなどの速度制御を併用して当該設定値の位置まで自動的に可変動作する。
【0076】
ただし、本実施形態のスイッチ11には、
図6に示すように、状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号に基づくFB制御部30が設けられている。尚、本実施形態のスイッチ11におけるFB制御部30の構成は、第1実施形態における
図3に示すものと同様とすることができる。
【0077】
図6を参照するに、まず、スイッチ11から操作モード時の操作信号がコントローラー12へ出力される。
【0078】
コントローラー12は、当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さに関する所定の設定値に基づく操作信号を受け付けると、対応する動作を実現するため、駆動信号をモーター13に供給する。
【0079】
当該背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さの調整をそれぞれ行う各アクチュエーター14のシリンダは、モーター13の回転に応じて伸縮し、この伸縮に応じてそれぞれのリンク機構16を介して電動ベッド10における着床部18の可変動作が行われる。
【0080】
スイッチ11は、FB制御部30の機能により状態センサー20a,20b,20cからのセンサー信号を入力して監視し、当該センサー信号を基に当該所定の設定値に対応する状態となるようフィードバック制御を行う。
【0081】
前述したように、状態センサー20a,20b,20cは、従来の治療用や介護用の電動ベッドに利用するエンコーダーやポテンションメーターと比較して廉価である。
【0082】
また、状態センサー20a,20b,20cは、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての可動部位の位置に設けられているため、実際の着床部18の位置を直接的に検知する。このため、実際の着床部18の位置とモーター13の回転量とが誤差が吸収され、経年変化で着床部18が変形してしまうような場合でもその検出精度に影響がほとんどない。そして、状態センサー20a,20b,20cのセンサー出力は、累積誤差が発生することもなく高精度化が実現できる。
【0083】
(装置動作)
図7は、本発明による第2実施形態の電動ベッド1の全体の操作時の動作を示すフローチャートである。
【0084】
まず、ベッド(着床部18)の可変動作に関する操作信号をスイッチ11からコントローラー12へ送信する(ステップS11)。
【0085】
操作信号を受け付けたコントローラー12は、対応するモーター13の駆動を制御し、アクチュエーター14を駆動する(ステップS12)。
【0086】
このとき、スイッチ11は、FB制御部30の比較信号を基に、状態センサー20a,20b,20cのセンサー信号を監視し(ステップS13)、ベッド(着床部18)の可変動作は設定値に到達したか否かを判定する(ステップS14)。
【0087】
スイッチ11は、ベッド(着床部18)の可変動作が設定値に到達していなければ(ステップS14:No)、当該モーター13の駆動を停止させる操作信号を送信せず、その駆動を継続させる。
【0088】
一方、スイッチ11は、ベッド(着床部18)の可変動作が設定値に到達したとして判定すると(ステップS14:Yes)、モーター13の駆動を停止させるための操作信号をコントローラー12に送信する(ステップS15)。
【0089】
コントローラー12は、当該操作信号を受け付けて、モーター13の駆動を停止し、アクチュエーター14の位置を保持する(ステップS16)。
【0090】
以上のように、本実施形態の電動ベッド1によれば、より低
廉で尚且つ高精度のフィードバック制御が実現可能となり、結果としてベッド自体も低廉化させることができる。
【0091】
また、第2実施形態の電動ベッド1は、フィードバック制御を行わない既存の第1のタイプの電動ベッドについて、スイッチ11の付け替えと、状態センサー20a,20b,20cの設置のみで、第2のタイプの電動ベッドを新たに購入するよりも低廉で第2のタイプの電動ベッドへと変様させることができる。
【0092】
また、第2実施形態の電動ベッド1は、エンコーダーやポテンションメーターなどの回転量を検知する回転量検知センサーに基づくフィードバック制御を行う既存の第2のタイプの電動ベッドについて、スイッチ11の付け替えと、状態センサー20a,20b,20cの設置のみで、より高精度化した第2のタイプの電動ベッドへと変様させることができる。
【0093】
以上、特定の実施形態の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態の例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した各実施形態の例では、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについての可動部位の位置に、それぞれ3つの状態センサー20a,20b,20cを設ける例を説明したが、これは好適例であり、着床部18の背上げ角及び膝上げ高さについての可動部位の位置にそれぞれ2つの状態センサー20a,20bを設けるのみでも、着床部18の背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さについてのフィードバック制御は可能である。特に、本発明に係るフィードバック制御に用いる状態センサー20a,20b,20cは、ジャイロセンサーや、角度センサー、加速度センサー、衝撃センサーのうちいずれかとすることができるが、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さ等のそれぞれの起伏動作に対応する1次元の位置を検出するものを複数配置し、当該起伏動作に関する状態変化を2次元以上で検出するのが好適である。このため、本発明は、1種の起伏動作を行う電動ベッドに対しては、1つの状態センサーとすることができ、或いは3種以上の起伏動作を行う電動ベッドに対し、共通の可動部位には1つの状態センサーとすることでより低廉化を図ることができる。
【0094】
また、上述した実施形態の例では、着床部18に状態センサー20a,20b,20cを設ける例を説明したが、例えばリンク機構16やアクチュエーター14など、着床部18の可動に係る可動部位であれば、任意の箇所に設置することができる。
【0095】
また、上述した実施形態の例では、モーター13によるアクチュエーター14を駆動機構として用いる例を説明したが、これは細密な連動制御を行うための好適例であり、油圧式や空気圧式のアクチュエーター、或いはその他の駆動機構を用いる電動ベッドとすることもできる。
【0096】
また、本発明に係る電動ベッドは、スイッチ11の操作信号を有線又は無線でコントローラー12に送信する形態とすることもできる。
【0097】
(状態センサー)
上述したように、本発明に係るフィードバック制御に用いる状態センサー(本例では3つの状態センサー20a,20b,20c)は、1次元又は複数次元の状態変化の検出で、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さ等のそれぞれの起伏動作に対応する位置を検出可能とするものであればよい。特に、起伏動作に対応する位置を検出するには、絶対座標軸に対する、状態センサーを設置する可動部位の傾きを検出可能なセンサーとするのが好適である。また、以下に説明するが、本発明に係るフィードバック制御に用いる状態センサー(本例では3つの状態センサー20a,20b,20c)として、2軸(2次元)以上の絶対座標軸(例えばxyz軸に対しxy軸)に対し各軸(例えばxy軸)に対応する当該可動部位の傾きを検出可能なセンサーとするとするのがより好適である。このため、状態センサーとして、ジャイロセンサーや、角度センサー、加速度センサー、衝撃センサー等を利用できる。
【0098】
念のため、これらの具体的なセンサーについて説明すると、まず、ジャイロセンサーは回転角速度センサーとも称され、振動式、地磁気式、光学式、熱式、或いは機械式等の種々の機構のものがあるが、最も一般的に民生機器に搭載されているものとして、ICタイプの1軸(上下、左右、或いは前後といった一次元)や3軸(上下、左右、及び前後といったxyz軸の3次元)の振動式ジャイロセンサーがあり、この振動式ジャイロセンサーにはシリコンを使う静電容量方式や、水晶や他の圧電材料を使うピエゾ方式などがある。振動式ジャイロセンサーは、動き(状態変化)に応じて機械的な動作をする素子と、その素子の動作に基づく信号を処理する電子回路とを組み合わせたものであり、回転角速度を検知することで、動き(状態変化)を検知することができる。従って、3軸のジャイロセンサーや1軸のジャイロセンサーを複数用いて複数軸(複数次元)の状態を検知する状態センサーとして構成することができる。
【0099】
また、角度センサーは、いわば1軸のジャイロセンサーであり、一般的には、動き(状態変化)に応じて回転する回転体と、その回転体に設けられるスリットが通過する際に磁界又は光を遮るのを検出する電子回路とを組み合わせたロータリーエンコーダーと同原理のものや、動き(状態変化)に応じて静電容量が変化する容量式膜と、その静電容量の変化に基づく信号を処理する電子回路とを組み合わせたものなどがあり、このような回転体や静電容量の変化の変化を検知することで、動き(状態変化)を検知することができる。従って、1軸の角度センサーを複数用いて複数軸(複数次元)の状態を検知する状態センサーとして構成することができる。
【0100】
また、加速度センサーは、振動式、地磁気式、光学式、熱式、或いは機械式等の種々の機構のものがありジャイロセンサーの一種として扱われることがあるが、厳密には、1軸(上下、左右、或いは前後といった一次元)や3軸(上下、左右、及び前後といったxyz軸の3次元)における各軸方向の加速度を検出するものであり、電子回路の処理が異なるのみで動作原理はジャイロセンサーと同様である。加速度センサーには、最も一般的に民生機器に搭載されているものとして、ICタイプの1軸(上下、左右、或いは前後といった一次元)や3軸(上下、左右、及び前後といったxyz軸の3次元)のものがあり、特に、携帯電話等では地球の重力加速度を計測することで携帯電話の傾きを検出し、画面が常に正しい向きで表示されるようにしている。従って、3軸の加速度センサーや1軸の加速度センサーを複数用いて複数軸(複数次元)の状態を検知する状態センサーとして構成することができる。
【0101】
衝撃センサーは、加速度センサーの一種として扱われることがあるが、厳密には、動き(状態変化)に応じて移動するマグネットと、そのマグネットの動きに基づく加速度を示す信号を処理する電子回路とを組み合わせたものであり、単純にセンサー部位に生じる衝撃の強さを出力するように構成される。このような1軸の衝撃センサーを複数用いて複数軸(複数次元)の状態を検知する状態センサーとして構成することができる。
【0102】
本発明に係るフィードバック制御に用いる状態センサー(本例では3つの状態センサー20a,20b,20c)として、直接的に1軸(上下、左右、或いは前後といった一次元)や3軸(上下、左右、及び前後といったxyz軸の3次元)の軸方向の状態変化を示す信号を出力するものだけでなく、これらの軸方向の状態変化へと変換できるものであれば様々なセンサーを利用できる。
【0103】
ただし、上述したジャイロセンサーや、角度センサー、加速度センサー、或いは衝撃センサーは、民生用にも広く用いられているため低廉化の観点で有利であり、特に、ジャイロセンサーや加速度センサーは広く用いられているとともに高精度であり、低コスト化だけでなく、本発明に係るフィードバック制御の高精度化にも適している。
【0104】
ところで、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さ等のそれぞれ起伏動作に対応する位置制御を可能とするには、当該起伏動作に対応する角度で制御すればよい。このため、1軸(上下、左右、或いは前後といった一次元)の状態変化を検出するのみでも本発明に係るフィードバック制御を構成することができる。ただし、その起伏動作に対応する位置制御を行うのに、複数次元の状態変化の検出を利用することで、本発明に係るフィードバック制御における位置制御がより高精度になる。この点について検証したため、以下に説明する。
【0105】
実験的に、状態センサー20aについて、3軸の加速度センサーを用い、その3軸の出力信号のうち1軸の状態変化の検出でフィードバック制御における位置制御を行った場合と、その3軸の出力信号のうち2軸の状態変化の検出でフィードバック制御における位置制御を行った場合との誤差をそれぞれ検証した。
【0106】
図8は、本発明に係るフィードバック制御に用いる状態センサーについて2軸で角度検出を行う際の原理図である。
図8に示すように、当該加速度センサーが絶対座標(x軸:水平方向,y軸:鉛直方向)に対し角度θで傾いているときの各センサー軸をax,ayとすると、当該加速度センサーから得られる2軸の出力信号Sx,Syは、その角度θに相当する重力(G)成分の信号として得られるため、出力信号Sx,Syの各々から当該角度θを検出することができる。
【0107】
例えば出力信号Sxから当該角度θを検出するときは、cos0°(x軸)の時の重力(G)は1Gとなり、cos1°の時は0.9998G、cos45 °の時は0.7071G、cos89°の時は0.0175G、cos90 °の時は0Gとなる。
【0108】
このcosの角度が0 °,1°,45°,89°,90°と大きくなるにつれ、重力が1G、0.9998G,0.7071G,0.0175G,0Gと減少する。cos 0°からcos1°における変化量の差は0.0002、cos89°からcos90°における変化量の差は0.9825となり、Gが減少するにつれ変化量の差が大きくなる。
【0109】
一方、出力信号Syから当該角度θを検出するときは、sin0°(y 軸)の時の重力(G)は0Gとなり、sin1°の時は0.0175G 、sin45°の時は0.7071G、sin89°の時は0.9998G 、sin90°の時は1G となる。このsinの角度が0°,1°,45°,89°,90°と大きくなるにつれ、重力が0G,0.0175G,0.7071G,0.9998G,1Gと増加する。sin0°から1°における変化量の差は0.9825、sin89°からsin90°における変化量の差は0.0002となり、Gが増加するにつれ変化量の差が小さくなる。
【0110】
(1軸のフィードバック制御の場合)
表1には、1軸(1次元)のフィードバック制御に関して実際に測定したデータを示している。表1から理解されるように、出力信号Sxからcos演算で検出される角度(x(cos)センサー角度)と、出力信号Syからsin演算で検出される角度(y(sin)センサー角度)との精度を比較すると、1軸(1次元)においてはx軸のみ用いる場合、cos90°の時は変化量の差が大きくなり精度が上がり、cos0°の時は差が小さくなり精度が下がる傾向となっている。また、1軸(1次元)においてはy軸のみ用いる場合に、0°の時は差が大きくなり精度が上がり、sin90°の時は差が小さくなり精度が下がる傾向となっている。従って、センサー軸ax,ayのいずれか一方のみを用いた1軸のフィードバック制御の場合では誤差3°未満ではあるが精度ムラが生じ、特に、センサー軸axのみを用いたフィードバック制御の場合では水平近辺で分解能の影響が大きくなり他の角度域と比べて精度が低下するといった現象が生じている。
【0112】
(2軸のフィードバック制御の場合)
一方、表2には、2軸(2次元)のフィードバック制御に関して実際に測定したデータを示している。表2から理解されるように、2軸にするとcos0°からcos1°における変化量の差は0.0002で精度が下がるが、sin0°からsin1°における変化量の差が0.9825となり、精度が上がる。また、sin89 °からsin90°における変化量の差は0.0002で精度が下がるが、cos89 °からcos90°における変化量の差が0.9825となり、精度が上がる。表2から理解されるように、出力信号Sxからcos演算で検出される角度(x(cos)センサー角度)と、出力信号Syからsin演算で検出される角度(y(sin)センサー角度)との精度を比較すると、実角度に対する精度が対称的であるため、“x(cos)センサー角度”で精度が下がる角度の範囲では“y(sin)センサー角度”の精度が上がり、“y(sin)センサー角度”で精度が下がる角度の範囲では“x(cos)センサー角度”の精度が上がる。従って、x軸の出力信号Sxで精度が悪い重力成分の範囲ではy軸の精度が良いためy軸の出力信号Syで補うことができ、y軸の出力信号Syで精度が悪い重力成分の範囲ではx軸の精度が良いためx軸の出力信号Sxで補うことができるため、精度ムラを抑制することができる。
【0114】
表1及び表2の実測結果を基に、
図9には、本発明に係るフィードバック制御において、実角度θ=0〜70°における、x軸(1次元)のみでフィードバック制御を行う場合、y軸(1次元)のみでフィードバック制御を行う場合、及びx,y軸(2次元)でフィードバック制御を行う場合における各角度誤差の分布を概略的に示している。
【0115】
図9からも理解されるように、2軸(2次元)のフィードバック制御であれば、実角度θの範囲に関係なく精度ムラを抑制することができ、1軸(1次元)のフィードバック制御よりも位置制御に関する精度をより向上させることができる(実験では誤差0.6°以下)。
【0116】
従って、本発明に係るフィードバック制御において、状態センサーの次元数を増加させるほど、更に位置制御に関する精度が向上するため、背上げ角、膝上げ高さ、及びベッド高さ等のそれぞれの起伏動作に対応する位置制御のために、1次元よりも複数次元の状態変化の検出を行うのが好適である。