特許第6475285号(P6475285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6475285-蕎麦および蕎麦の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475285
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】蕎麦および蕎麦の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20190218BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20190218BHJP
【FI】
   A23L7/109 F
   A23L29/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-116865(P2017-116865)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-29(P2019-29A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】517210163
【氏名又は名称】種村 孝一
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】種村 孝一
【審査官】 吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−262208(JP,A)
【文献】 特開昭61−212251(JP,A)
【文献】 特開昭51−012953(JP,A)
【文献】 松茸練り込み蕎麦,MTG松本トレーニングジム,2016年11月24日,[平成30年6月13日検索],URL,https://ameblo.jp/mtg345323/entry-12222347093.html
【文献】 坂上忍も大満足!バター風味とカツオだしの組合せが度肝を抜く高級「トルフそば」,ぐるなび テレビに出たお店ニュース,2015年 6月16日,[平成30年6月13日検索],URL,http://r.gnavi.co.jp/area/aream2178/23029609/tvnews/
【文献】 キッチン秀,【世界初】逸品とはトリュフ蕎麦の鴨せいろ,[online],2015年 8月 8日,URL,https://cookpad.com/recipe/3337734
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109−7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコペーストを生成するキノコペースト生成工程と、
前記キノコペースト生成工程で生成した前記キノコペーストを用いて蕎麦生地を生成する混練工程とを備え、
前記キノコペースト生成工程では、
蕎麦粉を含む原材料の粉に対し、8重量%より多く、かつ、15重量%より少ない、生の松茸、生のしめじ、および生の黒トリュフの少なくともいずれかのキノコを粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程で粉砕した前記キノコに加水する第1の加水工程と、
前記粉砕した前記キノコと前記第1の加水工程で加水した水分とをペースト状になるまで撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌工程でペースト状にした前記キノコを30〜90分ねかせるねかせ工程と、を含む工程を実行することで、前記キノコペーストを生成する蕎麦の製造方法。
【請求項2】
前記混練工程では、
前記原材料の粉に前記キノコペーストを混ぜ合わせる混ぜ合わせ工程と、
前記原材料の粉に加水する第2の加水工程と、
前記混ぜ合わせ工程で前記キノコペーストと混ぜ合わせられ、かつ、前記第2の加水工程で加水された前記原材料の粉を練り込む練り込み工程と、含む工程を実行することで前記蕎麦生地を生成する請求項1に記載の蕎麦の製造方法。
【請求項3】
最終的に加水する水分の40〜60重量%を前記第1の加水工程で加水し、残りを前記練り込み工程の直前に加水する請求項2に記載の蕎麦の製造方法。
【請求項4】
前記キノコは、生の松茸を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の蕎麦の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より日持ちする蕎麦およびこの蕎麦の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蕎麦は、主原材料の蕎麦粉や小麦粉に含まれる土壌菌により劣化が進み、あまり日持ちしないことが知られている。一方で、日持ちを考慮した蕎麦や蕎麦の日持ちを向上させる添加剤が提案されている。たとえば、特許文献1には、褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む高粘度抽出液を蕎麦粉と共に原料として用いた十割り蕎麦が開示されている。また、特許文献2には、蕎麦麺を製造する際に使用できる麺類製造用のアルコール製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−123407号公報
【特許文献2】特開2013−138653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、風味のよい蕎麦の研究を行う過程の中で、キノコには蕎麦をより日持ちさせる効果があるとの知見を得た。
【0005】
本発明は、この本発明者が得た知見に基づき、より日持ちする風味のよい蕎麦、およびこの蕎麦の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る蕎麦は、蕎麦粉を含む原材料の粉に対し8〜15重量%の粉砕されたキノコが練り込まれている。
【0007】
また、この蕎麦は、練り込まれるキノコが松茸、しめじ、および黒トリュフの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る蕎麦の製造方法は、キノコを粉砕する粉砕工程と、蕎麦粉を含む原材料の粉に対し8〜15重量%の粉砕工程で粉砕されたキノコを、原材料の粉に練り込む練り込み工程と、を含む。
【0009】
また、この蕎麦の製造方法は、練り込むキノコが松茸、しめじ、および黒トリュフの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0010】
また、この蕎麦の製造方法は、練り込み工程に先んじて、粉砕工程で粉砕されたキノコに加水して撹拌することでキノコペーストを生成することが好ましい。
【0011】
また、この蕎麦の製造方法は、最終的に加水する水分の40〜60重量%をキノコペーストの生成の際に加水し、残りを練り込み工程の際に加水することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より日持ちする風味のよい蕎麦、およびこの蕎麦の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の蕎麦の製造工程の流れを示すフローチャートである。
図2】キノコペースト生成工程における流れを示すフローチャートである。
図3】混練工程における流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の蕎麦は、蕎麦粉70重量%および小麦粉30重量%を原材料の粉とする手打蕎麦である。この蕎麦は、最終的な加水量が原材料の粉の48〜57重量%になるように製造される。また、この蕎麦は、原材料の粉に練り込まれた蕎麦粉を含む原材料の粉に対し10重量%の粉砕された松茸を含む。
【0015】
本実施形態の蕎麦の製造方法は、図1に示すように、キノコペースト生成工程S1、混練工程S2、および製麺工程S3を順に実施する。以下、各製造工程について、さらに詳しく説明する。
【0016】
キノコペースト生成工程S1では、図2に示すような工程を経てキノコペーストを生成する。キノコペースト生成工程S1では、まず、蕎麦粉を含む原材料の粉に対し10重量%の加熱処理をしていない生の松茸を、フードプロセッサで非常に細かく粉砕する(粉砕工程S11)。次に、粉砕工程S11で粉砕した松茸に、最終的な加水量の40〜60重量%の水分を加水する(第1の加水工程S12)。次に、粉砕した松茸と水分とをペースト状になるまでフードプロセッサで撹拌する(撹拌工程S13)。次に、撹拌工程S13でペースト状にした松茸を30分〜90分程度ねかす(ねかせ工程S14)。キノコペースト生成工程S1では、ねかせ工程S14を実施することで、キノコペーストにより粘りを出している。なお、キノコペースト生成工程S1では、第1の加水工程S12を実施してから粉砕工程S11および撹拌工程S13を同時に実施、つまり松茸に加水してからフードプロセッサで粉砕と撹拌とを同時に実施してもよい。
【0017】
混練工程S2では、図3に示すような工程を経て蕎麦生地を生成する。混練工程S2では、まず、蕎麦粉(原材料の粉の70重量%)および小麦粉(原材料の粉の30重量%)に、松茸が原材料の粉の10重量%になる量のキノコペースト生成工程S1で生成したキノコペーストを混ぜ合わせる(混ぜ合わせ工程S21)。次に、混ぜ合わせ工程S21で混ぜ合わせた粉およびキノコペーストに最終的な加水量の残り(第1の加水工程S12で加水した残り)の水分を加水する(第2の加水工程S22)。次に、粉およびキノコと水分とを手打ち(手作業)で十分に練り込み、熟成させて蕎麦生地を生成する(練り込み工程S23)。なお。混練工程S2では、第2の加水工程S22を実施してから混ぜ合わせ工程S21および練り込み工程S23を同時に実施、つまり混ぜ合わせていない粉およびキノコペーストに加水してから混ぜ合わせと練り込みとを同時に実施してもよい。
【0018】
製麺工程S3では、混練工程S2で生成した蕎麦生地を延べ棒で圧延してから包丁で麺線状に裁断する。
【0019】
ここで、松茸が練り込まれた蕎麦に関して、本発明者が練り込む松茸の量を変えて、風味、加工性、茹で上げ後の劣化、および日持ちについて評価して得た知見について説明する。
【0020】
風味については、本発明者は、茹で上げ直後の蕎麦の口にふくんだ際の香りおよび見た目を評価した。その結果、原材料の粉に対し8重量%以下の松茸を練り込んだ蕎麦は、松茸の香りが遠かった。また、原材料の粉に対し16重量%以上の松茸を練り込んだ蕎麦は、松茸の香りが強すぎて蕎麦の香りが損なわれていたのと共に、茶褐色に変色して見た目が好ましくなかった。これらの評価結果から、本発明者は、原材料の粉に対し8〜15重量%の松茸を練り込むと、風味のよい蕎麦を製造できるとの知見を得た。
【0021】
また、加工性については、本発明者は、蕎麦生地の粘りおよび切れ難さを評価した。その結果、原材料の粉に対し8〜15重量%の松茸を練り込んだ蕎麦は、松茸を練り込んでいない蕎麦生地よりも粘りがあり切れ難くかった。この評価結果から、本発明者は、原材料の粉に対し8〜15重量%の松茸を練り込むと、切れ難く長い蕎麦を形成することが可能であるとの知見を得た。なお、本発明者は、粘りのあるキノコペーストがつなぎとして機能することで、この評価結果になったと考察する。
【0022】
また、茹で上げ後の劣化については、本発明者は、茹で上げ後の蕎麦の伸びおよびくっつきを評価した。その結果、松茸を練り込んでいない蕎麦は、10分程度で伸びてくっつきやすくなった。一方で原材料の粉に対し8〜15重量%の松茸を練り込んだ蕎麦は、15分経過しても伸びたりくっついたりしなかった。この評価結果から、本発明者は、原材料の粉に対し8重量%〜15重量%の松茸を練り込むと、茹で上げ後の劣化を抑制できるとの知見を得た。なお、本発明者は、松茸のような菌類が土壌菌の働きを抑制することで、この評価結果になったと考察する。
【0023】
さらに、日持ちについては、本発明者は、常温放置した蕎麦の劣化を評価した。その結果、松茸を練り込んでいない蕎麦および原材料の粉に対し7重量%以下の松茸を練り込んだ蕎麦は、2〜3日で発酵臭、茹で上げた際の切れやすさ、および茹で上げ後のくっつきやすさの点で明らかな劣化が見られた。一方で原材料の粉に対し8〜15重量%の松茸を練り込んだ蕎麦は、6〜7日経過してもこれらの明らかな劣化が見られなかった。この評価結果から、本発明者は、原材料の粉に対し8重量%〜15重量%の松茸を練り込むと、蕎麦を日持ちさせることができるとの知見を得た。なお、本発明者は、松茸のような菌類が土壌菌の働きを抑制することで、この評価結果になったと考察する。
【0024】
本実施形態の蕎麦は、松茸が原材料の粉に対し10重量%練り込まれている。このため、本実施形態の蕎麦は、松茸の風味が蕎麦自体の風味と調和し全体的に非常に風味がよく、前述の評価結果で述べたように茹で上げ後の劣化、および日持ちの点で優れる。したがって、本実施形態によれば、風味のよい日持ちする蕎麦を提供することができる。
【0025】
また、本実施形態の蕎麦の製造方法は、松茸を粉砕する粉砕工程S11を実施するため、松茸が非常に細かくなる。また、本実施形態の蕎麦の製造方法は、蕎麦粉を含む原材料の粉に対し8〜15重量%の細かく粉砕された松茸を練り込む練り込み工程S23を実施するため、原材料の粉にまんべんなくしっかりと松茸を練り込むことができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、風味のよい日持ちする蕎麦を製造することができる。
【0026】
また、本実施形態の蕎麦の製造方法は、練り込み工程S23(混練工程S2)に先んじて、粉砕工程S11で粉砕された松茸に加水して(第1の加水工程S12)、撹拌する(撹拌工程S13)ことで、キノコペーストを生成する(キノコペースト生成工程S1)。これにより、混練工程S2において、原材料の粉に粉砕された松茸をより練り込みやすくすることができる。
【0027】
また、本実施形態の蕎麦の製造方法は、最終的な水分量の40〜60重量%をキノコペーストの生成の際(キノコペースト生成工程S1)に加水し、残りを練り込み工程S23の直前に加水する。これにより、松茸をペースト状にしやすくできると共に蕎麦生地を生成することができるように、水分を配分することができる。
【0028】
別の実施形態の蕎麦は、同様の手順にて製造されたものであるが、松茸ではなく、他の生のキノコが蕎麦粉を含む原材料の粉に対し8〜15重量%で練り込まれている。少なくとも、しめじ、および黒トリュフが練り込まれている蕎麦は、前述した評価と同様の評価によって、風味がよく、より日持ちすることが確認されている。
【0029】
また、さらに別の実施形態の蕎麦は、同様の手順にて製造されたものであるが、手打ち(練り込み工程S23が手作業)ではなく、機械打ち(練り込み工程S23が機械作業)である。この蕎麦は、加水量が原材料の粉の38〜40重量%となっている。このように機械打ちで製造された蕎麦であっても、前述した評価と同様の評価によって、風味がよく、より日持ちすることが確認されている。
【0030】
また、さらに別の実施形態の蕎麦は、同様の手順にて製造されたものであるが、原材料の粉が、いわゆるギフト用の配合(蕎麦粉70重量%および小麦粉30重量%)ではなく、いわゆる業務用の配合(蕎麦粉50重量%および小麦粉50重量%)である。このように業務用の配合の原材料の粉を用いて製造された蕎麦であっても、前述した評価と同様の評価によって、風味がよく、より日持ちすることが確認されている。なお、十割り蕎麦についても、前述した評価と同様の評価によって、風味がよく、より日持ちすることが確認されていることを補足する。
【符号の説明】
【0031】
S1‥キノコペースト生成工程、S2‥混練工程、S3‥製麺工程
S11‥粉砕工程、S12‥第1の加水工程、S13‥撹拌工程、S14‥ねかせ工程
S21‥混ぜ合わせ工程、S22‥第2の加水工程、S23‥練り込み工程
図1
図2
図3