【実施例】
【0248】
酵素療法の導入は、1型ゴーシェ病の自然史に多大な影響を与えている。残念なことに、単一の治療法の選択肢の存在は、1型ゴーシェ病に罹患する患者の治療において、固有の脆弱性を示す。イミグルセラーゼでの治療を受けた患者のうちの約15%は、IgG抗体を発現することが報告されており、これらの患者の約半数は、過敏性の症状を報告した(Starzyk K et al., Molec Genet Metab. 2007; 90:157−163)。全体的に、ゴーシェ病の治療における単一の製品への依存は、最近のイミグルセラーゼの不足によって強調されている(Steinbrook R et al.,N Engl J Med.2009;361:1525−1527)。イミグルセラーゼ注入を受けている者のうちで、未知数の患者が、可能性のある免疫介在性応答を軽減するために前投薬が必要とされる。場合によっては、患者は、ヒドロコルチゾンを必要とし、これは、それ自体が、AVNを含む医学的危険を伴う。さらに、最近公開されたデータは、イミグルセラーゼにより治療されたGD1患者の59%が、治療の用量および持続時間にかかわらず、治療してから最低4年後でも、少なくとも1つの治療目標も達成できないことを示唆している(Weinreb N et al.,Am J Hematol.2008;83:890−895)。
【0249】
ベラグルセラーゼアルファは、それをイミグルセラーゼと区別する独特の特性(野生型アミノ酸配列および高α−マンノシル含有)を有する、新規の酵素補充療法(ERT)である。以下に提供される実施例のいくつかは、ベラグルセラーゼアルファの安全性および有効性を評価するための臨床試験および継続試験を説明する。これらは、減用量および在宅療法を実行するためのERTを含む第1の臨床試験である。
【0250】
実施例1:TKT025およびTKT025EXTの試験
概要
本実施例は、ベラグルセラーゼアルファの安全性および有効性を評価するために実施されるベラグルセラーゼアルファ(TKT025)および進行中の継続(TKT025EXT)試験の、9ヶ月の第I/II相の非盲検の、単一中心試験であることを説明する。
【0251】
第I/II相試験の主目的は、1型(非神経障害型)ゴーシェ病(GD1)の症状を示す成人患者における、60U/kgの用量で、9ヶ月間、隔週静脈内投与されるベラグルセラーゼアルファの安全性を評価することであった。本試験の第2の目的は、主要な疾患特徴のベラグルセラーゼアルファの臨床活性を評価することであった(Barton NW et al. N Engl J Med.1991;324:1464−1470)。同様に、継続試験は、4つの疾患測定のヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積のベラグルセラーゼアルファの長期の安全性を評価し、ベラグルセラーゼアルファの効果を評価するように設計された(Barton NW et al. N Engl J Med.1991;324:1464−1470)。
【0252】
1型ゴーシェ病に罹患し、無傷の膵臓を有する症状を示す12人の成人患者が、第I/II相試験中、ベラグルセラーゼアルファ(60U/kg/注入)を受容した。当初は、13人の患者が、本試験に参加するためにスクリーニングされたが、1人の患者は、抗イミグルセラーゼ抗体が存在するため、除外された。継続試験は、本試験を完了した患者に提案し、段階的な減量(30U/kg/注入まで)が行われた。11人の患者は、第I/II相を完了し、10人は、継続試験に入り、9人の患者が、39ヶ月間の延長に達した。薬物関連の重篤有害事象または使用中止はなく、抗体は観察されなかった。在宅療法は、延長中、無事に行われた。統計的に有意な改善(p<0.004)を、ヘモグロビン(それぞれ、+19.2%、+21.7%)、血小板数(それぞれ、+67.6%、+157.8%)、正規化した肝体積(それぞれ、−18.2%、−42.8%)、および正規化した膵臓体積(それぞれ、−49.5%、−79.3%)について、ベースラインから9ヶ月およびベースラインから48ヶ月の平均変化率において示した。これらの有意な臨床変化および安全性のプロファイルにより、第III相試験を導き出し、1型ゴーシェ病の代替療法としてベラグルセラーゼアルファの可能性を明らかにする。
【0253】
方法
第I/II相および継続試験が、単一のセンターにおいて実行された(Gaucher Clinic,Shaare Zedek Medical Center;Jerusalem,Israel)。
【0254】
患者:1型ゴーシェ病の症状を示し、1型ゴーシェ病に罹患することが酵素的に確認された成人患者をスクリーニングした。適格標準は、年齢が18歳以上の、無傷の膵臓、疾患関連の貧血(性別について、正常下限(LLN)を下回る少なくとも1g/dLのヘモグロビン値)、血小板減少症(LLNを下回る血小板数)、ならびに、B型肝炎およびC型肝炎抗原およびヒト免疫欠損ウイルスに対する陰性の結果を含んだ。患者が、酵素補充療法を受けたことがないか、あるいは登録する前から12ヶ月以内にイミグルセラーゼを受けてなく、イミグルセラーゼ抗体陰性である場合、適していた。患者は、登録する前の30日以内に、いかなる他の適応症のための治験中の療法を受けたことがあるか、あるいは医学的もしくは非医学的根拠のいずれかのためのプロトコルで適合できなかった場合も、除外された。
【0255】
調製および投与:ベラグルセラーゼアルファは、凍結乾燥製品として、Shire HGTで供給され、2℃〜8℃で出荷された。この製品は、防腐剤の入っていない、注射用滅菌水で再構成された。ベラグルセラーゼアルファの適切な量(体重に基づく)は、最終容量の100mLまで、生理食塩水と徐々に混合された。希釈されたベラグルセラーゼアルファは、60分間(1.5mg/kg/時、1U/kg/分の最高速度)、0.2μmのフィルタを通して、静脈内投与された。
【0256】
第I/II相試験中、初めの3人の患者は、治験実施施設で、隔週スケジュールでベラグルセラーゼアルファを受けた。用量増加は、この初めの3人の患者に対して行われ、それによって、投与は、15U/kgの初回投与から60U/kgの最終投与が達成されるまで、倍になった。7日間の観察期間後に、初めの15U/kg注入のみを受けた第2および3番目の患者は、それぞれ、第1および2番目の患者について完了した。第3番目の患者が、60U/kgの単一用量を受け、7日間観察されると、9人の追加の患者が登録され、合計20個の用量の60U/kgの注入を隔週で受けた。用量増加が行われた患者は、合計20回の注入の、60U/kgでの17回のさらなる注入のための隔週スケジュールを継続した。
【0257】
継続試験中、全ての患者は、隔週での60U/kg/注入を継続した。継続試験から約6〜9ヶ月後、貧血、血小板減少症、肝腫大、および/または脾腫(Pastores GM et al.,Semin Hematol. 2004;41:4−14)の改善のため、4つの治療目標のうち少なくとも2つを達成した患者は、3ヶ月間、隔週での45U/kg/注入に移行され、次いで、隔週での30U/kg/注入に移行された。治療目標の達成に基づいた、この減量の慣習性は、イミグルセラーゼの患者における、酵素補充療法の個性化についての推奨に従うものである(Andersson HC et al.,Genet Med.2005;7:105−110)。
【0258】
加えて、イスラエルに在住する7人の患者は、継続相中、在宅療法に移行した。
【0259】
安全性評価:安全性は、有害事象(注入関連の反応を含む)、併用薬、注入前、注入中、注入後に行ったバイタルサインの隔週の評価によって、試験を通して評価された。さらなる安全性の評価は、ほぼ12週間ごとに行われ、治験実施施設での、健康診断、臨床検査室試験(血液学、血液生化学検査、尿検査、および妊娠検査)、12リード線心電図、および心エコー図を含んだ。抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の存在の判定は、Shire HGTで、3ヶ月間隔で行われた。
【0260】
抗体アッセイ:全ての参加者を、有効な間接ELISA法を用いて、抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の循環についてスクリーニングした。マイクロウェルプレートを、ベラグルセラーゼアルファで被覆し、洗浄し、ウシ血清アルブミンで遮断し、非特異的抗体結合を限定した。それらを、0.05%のTween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水中で、100倍に希釈した患者の血清試料で、37℃で60分間インキュベートした。マイクロウェルを洗浄し、次いで、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で共役した二次抗体でインキュベートした。それらを、HRP抗体、アイソタイプ特異的共役体:1)ヤギ抗ヒトIgG Fc、2)ヤギ抗ヒトIgA α鎖、3)ヤギ抗ヒトIgM μ鎖、または4)ヤギ抗ヒトIgE ε鎖二次抗体を用いて、別々にプローブした。マイクロウェルを、最後に1回洗浄し、HRP発色基質の3,3’,5,5’テトラメチルベンジジンでインキュベートした。2Nの硫酸を添加することによって、反応を停止し、450nm(A
450)における各ウェルの吸光度を、Molecular Devices SPECTRAmax Plus384プレートリーダーおよびSOFTMax PROソフトウェアを用いて、定量化した。抗体陽性血清試料は、イミグルセラーゼを受けている患者から得た。これらの患者の抗体は、ベラグルセラーゼアルファと交差反応し、抗ベラグルセラーゼ抗体のスクリーニングアッセイにおけるヒト陽性対照として使用した。したがって、これらの血清は、抗イミグルセラーゼおよび抗ベラグルセラーゼアルファの両方とも陽性であった。陰性および陽性のヒト血清対照は、全てのアッセイプレート内に含まれた。
【0261】
抗ベラグルセラーゼアルファ抗体に対するロバストELISA抗体陽性カットポイント吸光度は、酵素補充療法を受けたことがないゴーシェ病患者の血清試料(N=108)の平均吸光度から確立した。ELISA吸光度データのパラメータ解析を、使用して、各抗体アイソタイプについて、抗体陽性の下限値(平均+1.645×標準偏差、1.645は、正規分布の95パーセンタイルであり、したがって、5%の偽陽性率を潜在的に受け入れる)を算出した(Mire−Sluis AR et al., J Immunol Methods.2004;289:1−16)。酵素補充療法を受けたことがないゴーシェ病血清試料についてのELISAのA
450バックグラウンドは、抗ベラグルセラーゼアルファ抗体アイソタイプアッセイにおいて、0.040であると算出した。ELISAの抗体陽性カットオフは、比が2.0超およびA
450が0.040超として確立され、この比は、任意の時点で得られた患者試料のA
450を、第1の酵素補充療法の治療前のベースラインで得られた患者試料のA
450で割ったものである。ELISAの陽性カットオフを超えるいくつかの試料が、定量的放射性免疫沈降アッセイによって確認され、中和抗体について試験したが、確立したカットオフ標準を達成する試料はなかった(Mire−Sluis AR et al., J Immunol Methods.2004;289:1−16)。
【0262】
臨床活性:ヘモグロビン濃度および血小板数の主要な有効性評価は、既定の3ヶ月間隔で評価された。肝臓体積および膵臓体積は、ベースライン、6ヶ月、および9ヶ月間(Hadassah−Hebrew University Medical Centerにて)、ならびに継続試験中の24、33、および45ヶ月間(MOR−MAR Imaging unitにて)で行われた定量的腹部MRI(同じモデルの装置上で)を用いて測定された。肝臓体積および膵臓体積は、患者の識別および定量的腹部MRIを行う順序を盲目にした放射線医師によって、試験終了時に評価された。キトトリオシダーゼおよびCCL18は、Academic Medical Center;Amsterdam,the Netherlandsで測定された。
【0263】
統計分析:包括解析集団でもある、安全性集団は、ベラグルセラーゼアルファの少なくとも1回の注入(部分的または完全な)を受けている全ての登録された患者であり、全ての臨床活性で使用した。データ補完は使用しなかった。
【0264】
ヘモグロビン濃度、血小板数、肝臓体積、および膵臓体積の主要な臨床活性のパラメータについて、帰無仮説は、ベースライン値と試験終了時の値(9ヶ月間)、ならびにベースライン値と48ヶ月間の終了時の値との間の差異がないというものである。(すなわち、観察の各対のメンバー間の差異は、中央値0を有する。)比較は、5%の有意レベルで検定する両側仮説試験を用いて行われた。ベースラインと期間終了時の値の間の差異は、ウイルコクソンの符号順位検定を用いて分析された。ベースラインからの変化を算出し、ベースラインからの変化率は、記述統計量を用いて要約する。
【0265】
二次臨床活性パラメータについて、観察されたデータ、ベースラインからの変化、およびベースラインからの変化率は、平均値、標準誤差(SE)、および中央値を含む、来院によって要約された。正式な統計的検定は、これらのデータセットに適用されなかった。
【0266】
TKT025試験からの結果(9M、60U/kgのベラグルセラーゼアルファ)
ベラグルセラーゼアルファは、良好な耐容性を示し、抗体を形成した患者は、いなかった。血液学的パラメータおよび臓器体積における臨床的かつ統計的に有意な改善は、早ければ3〜6ヶ月で観察された(表1)。
【0267】
【表1】
【0268】
対象属性および性質:合計13人の患者をスクリーニングし、全てが本試験に参加することに同意したが、1人の患者(0004)は、イミグルセラーゼ抗体のため、除外された。全ての患者が、登録する前の12ヶ月間において、いかなるゴーシェ病固有の療法にも曝露されたことがないという理由で、プロトコルに従ってこの時点では治療を受けたことがなかったが、かなり昔に、2人の患者(0008および0009)は、それぞれ、イミグルセラーゼの3回の注入を受けたことがあり、1人の患者(0003)は、ミグルスタットに曝露されたことがあり、2人の患者(0005および0007)は、ミグルスタットとイミグルセラーゼの両方に曝露されたことがあった。
【0269】
包括解析集団(表2)は、ベラグルセラーゼアルファの少なくとも1回の用量を受けた12人の患者を含み、これらのうち、11人の患者(92%)は、第I/II相試験を完了した(1人の患者の0006は、3回の注入を受けた後、家族の突然死の後、同意を取り下げた)。
【0270】
第I/II相試験の登録時、7人の患者(58%)が女性であり、平均年齢は、41.7(SD±17.3;範囲19〜70)歳であり、平均体重は、59.6(SD±9.1 範囲50〜73)kgであり、平均身長は、169(SD±8.0;範囲160〜184)cmであった。2人の患者(16.7%)は、登録時、股関節の虚血壊死(AVN)があり、別の患者は、各足首に破壊的病変があった。表2は、ベースラインでの対象属性、遺伝子型、および臨床的特徴、ならびに第I/II相試験内で重要なデータ収集時点での各包括解析患者の臨床的所見を提供する。
【0271】
【表2】
第I/II相および継続試験中の、ベースラインで、および評価の選択時点での患者の対象属性および特徴には、コホートについての各臨床パラメータにおいて収集された最終値を含む。正規化肝臓体積および膵臓体積は、それぞれ、キログラム当たりの全体重の2.5%および0.2%として定義される(Pastores GM et al., Semin Hematol. 2004;41:4−14)。正常倍数は、観察された臓器体積を正規化臓器体積で割ったものである。24ヶ月までに、全ての患者は、ヘモグロビン濃度の正規化を示したが、1人の患者を除く全ての患者は、100*10
9/Lよりも大きい血小板数を示した。BL、ベースライン;Mo、ヶ月;M、男性;F、女性;*膵臓体積は、技術上のアーチファクトのため、解釈不可能であった。
【0272】
肝臓および膵臓の磁気共鳴映像法(MRI)スキャンの結果は、盲検化され、バイアスを最小にするために1人の検閲者によって解釈された。PFT(肺機能検査)、大腿および腰椎のMRI、ならびに骨密度を含む他の臨床パラメータからのベースラインデータの収集もまた、試験を通して種々の時点で行われた。
【0273】
本試験は、用量増加相および持続用量相の2つの相から成った。用量増加相中、第1の患者を、登録し、15U/kgのベラグルセラーゼアルファを静脈内(IV)投与し、次いで、安全性の評価を7日間行った。第1の患者について、安全性を確認した後、2人のさらなる患者を登録し、15U/kgのベラグルセラーゼアルファを静脈内投与し、次いで、安全性の評価を7日間行った。15U/kgの用量を受けた3人全ての患者について、安全性を確認した後、次の2つの高用量(30および60U/kg)を、同じ方法で投与した。3人全ての患者について、安全性を確認すると、さらなる9人の患者を登録し、60U/kgの用量で投与した。次いで、全ての患者は、合計20回の用量のベラグルセラーゼアルファを、60U/kgの用量を隔週受けた。
【0274】
ヒトにおける薬物動態(PK)は、TKT025において、1週目、3週目、5週目、および37/39週目に評価した。さらなるPK試験は、TKT025EXT試験の65週目に実行した。ベラグルセラーゼアルファは、各評価で、一次排泄動態を用いて、血中から急速に除去した。ベラグルセラーゼアルファに初期曝露した後、およびベラグルセラーゼアルファを反復投与した後での患者に対する排出半減期は、同様であった。対照的に、分布値のクリアランスおよび見かけ体積は、ベラグルセラーゼアルファの反復投与後に減少した。
【0275】
ヘモグロビン濃度および血小板数におけるベースラインからの統計的に有意な平均増加が、試験TKT025において、60U/kgのベラグルセラーゼアルファの隔週投与を開始してから3ヶ月間観察された。TKT025において25週目(6ヶ月目)までに、ヘモグロビン濃度は、13.57g/dL(正常範囲内)であり、試験の残留期間、正常範囲内で維持した。試験の終了時、11人のうち10人の患者が、ヘモグロビン濃度の正規化を経験した。平均血小板数において、ベースライン(57.3×10
3/mm
3)からの統計的に有意な増加量は、13週目(3ヶ月目)まで観察され、試験を通して継続した。37週目に、平均血小板数は、98.1×10
3/mm
3まで増加した。
【0276】
さらに、平均および正規化された(体重の割合によって修正された)肝臓体積および膵臓体積におけるベースラインからの統計的に有意な減少が、ベラグルセラーゼアルファ治療を開始してから6ヶ月間(25週目)および9ヶ月間(37週目)、観察された。バイオマーカー値(血清キトトリオシダーゼおよびケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド18[CCL18])の著しい減少が、3ヶ月目まで観察された。概して、これらのパラメータの全ての平均の改善は、ベラグルセラーゼアルファ投与の経過中、継続的であった。さらになお、各患者は、ゴーシェ病に固有の4つの治療パラメータ(例えば、ヘモグロビン濃度、血小板数、膵臓体積、および肝体積)のうち少なくとも2つの改善を経験した。
【0277】
簡潔に言えば、
図1A〜1Fは、第I/II相試験における、血液学的パラメータ、臓器体積、およびバイオマーカーの平均変化率を示す。(a)ヘモグロビン濃度および(b)血小板数の著しい増加は、(c)肝体積および(d)膵臓体積の著しい減少に伴って、25週目から37週目の間観察される。(e)キトトリオシダーゼおよび(f)CCL18についてのバイオマーカーのサンプリングは、不完全であったが、ベースラインと比較した両方のバイオマーカーの一般的な減少が、経時的に患者ごとに観察される。統計的に有意な改善(p<0.003)は、ヘモグロビン濃度(+21.7%)、血小板数(+67.6%)、正規化した肝体積(−18.2%)、および正規化した膵臓体積(−49.5%)における、ベースラインから9ヶ月間の平均変化率で示され、ヘモグロビン濃度および血小板数の両方において、ベースラインからの統計的に有意な改善を伴って、初めの3ヶ月間で達成した(
図2)。
図2では、ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積の平均変化率が、第I/II相および継続試験の両方について、時間とともにプロットされ、画定される。ベースラインからの統計的に有意な変化は、各パラメータについて、ベースラインから9ヶ月間(p<0.003)、観察される。最も著しい変化は、血小板数および膵臓体積について観察された。
【0278】
TKT025では、12人の患者が、1つ以上のAE(有害事象)を経験し、全体で、103個の有害事象が報告された。2つの有害事象(目まいおよび多汗症)が、15U/kgの用量中の1人の患者によって報告され、残りの101個の有害事象は、60U/kgの用量を受けている患者によって報告された。最も頻繁に報告された有害事象は、目まい、骨痛、および頭痛(それぞれ、5人の患者、41.7%)であった。関節痛、背痛、手足の痛み、インフルエンザ、上腹部の痛み、および無力症は、それぞれ、3人の患者(25%)に生じた。骨痛(中度の(2級)重篤度であり、治験薬とは関連のない)の1つの事象を除く全ての有害事象は、軽度(1級)であった。103個の有害事象はどれも、重篤または生命にかかわる(3級または4級)と見なされるものがなかった。有害事象のため、試験から除外される患者はいなかった。
【0279】
TKT025中に観察された有害事象の大部分は、治験薬の投与とは関連がないことが治験責任医師によって判定された(表3A)。10人の患者は、治験薬に関連の可能性あり、または多分関連ありと見なされる22個の有害事象を経験し、最も一般的には、目まい(3人の患者);背痛、骨痛、頭痛、体温の上昇、および嘔気(それぞれ、2人の患者)であった。9人の患者は、合計17個の注入関連の有害事象を経験し、これらは、注入した日に生じ、注入中あるいは注入後のいずれかで開始し、治験薬に関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として、プロトコルに定義された。これらの有害事象には、目まい、頭痛、背痛、骨痛、体温の上昇が含まれ、それぞれ、2人の患者に生じた。全ての注入関連の有害事象は、60U/kgの用量を受けている患者において報告された。1人の患者は、用量増加後、緩和を経験しなかったが、骨痛が悪化したため、減量した後、24ヶ月間、隔週で60U/kg/注入まで用量増加を行った。したがって、注入設定にもかかわらず、薬物関連の重篤有害事象はなかった。前投薬を実施せず、有害事象のため、投与を中止した患者はいなかった。ベラグルセラーゼアルファに対する抗体を形成した患者はいなかった。
【0280】
【表3A】
患者の割合は、治療群の患者の総数に基づく。有害事象は、MedDRA Version 7.0辞書を用いてコードされる。EOW:隔週。
【0281】
TKT025EXT(長期、30〜60U/Kgのベラグルセラーゼアルファ)からの結果
要約:TKT025EXTは、試験TKT025を完了した1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファ療法の非盲検継続試験である。TKT025EXTの第1の目的は、30または60U/kgの用量で、合計4年間、隔週静脈投与した場合のベラグルセラーゼアルファの長期安全性を評価することである。第2の目的は、血液学的パラメータならびに肝体積および膵臓体積の減少について測定した場合、これらの患者の臨床活性におけるベラグルセラーゼアルファの効果を継続して評価することである。血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18、ならびにPFT、大腿骨頸および腰椎のMRI、骨検索、ならびに骨密度測定もまた、評価される。
【0282】
10人の患者が、本臨床試験に参加するように選ばれた。累積治療(TKT025+TKT025EXT)から60ヶ月後、ベラグルセラーゼアルファは、良好な耐容性を示し、抗体を形成した患者はいなかった。血液学的パラメータおよび臓器体積における、継続し、持続した、臨床的かつ統計的に有意な改善が継続して見られた(表4)。
図3は、ベラグルセラーゼアルファにより60ヶ月間治療した患者における、ベースラインからの平均ヘモグロビン濃度および血小板数の増加を示す。
図4は、ベラグルセラーゼアルファにより60ヶ月間治療した患者における、ベースラインからの平均肝体積および膵臓体積の減少を示す。
【0283】
【表4】
【0284】
対象属性および性質:TKT025の41週目の評価が完了すると、患者は、TKT025EXTに参加することができた。試験TKT025を完了した11人の患者のうち、10人の患者は、試験TKT025EXTに登録した。1人の患者(0012)は、隔週の通院が不便であるため、継続試験の登録を承諾せず、1人の患者(0005)は、妊娠のため、継続試験を中止した。表2は、ベースラインでの対象属性、遺伝子型、および臨床的特徴、ならびに継続試験内で重要なデータ収集時点での各包括解析患者の臨床的所見を提供する。
【0285】
登録した全ての患者は、初めにベラグルセラーゼアルファの60U/kgを隔週で受けた。用量は、累積治療から1年後、血液学的パラメータ(ヘモグロビン濃度または血小板値)の改善および/または臓器体積(肝臓または膵臓)の改善があった患者に提供される30U/kgまで滴定した。TKT025EXTに初めに登録した10人全ての患者が、必要とされる減量基準を満たし、30U/kgの用量に移行された。
【0286】
TKT025EXTの9人全ての患者は、42ヶ月目まで利用可能なヘモグロビン濃度および血小板数データがあり、一方、3人の患者は、45ヶ月目まで利用可能なデータがあった。42ヶ月間で、前治療のベースラインからのヘモグロビンの平均(標準誤差[SE])の変化は、2.18(0.25)g/dL(p=0.004)であり、前治療のベースラインからの平均変化率の19.0%に相当する。血小板数に関しては、前治療のベースラインからの平均(標準誤差)の変化は、42ヶ月目で、82.1(8.4)×10
3/mm
3(p=0.004)であり、前治療のベースラインからの平均変化率の149.8%に相当する。
【0287】
体重の割合に対して正規化した肝体積および膵臓体積は、33ヶ月目まで分析され、9人全ての患者が、この評価について利用可能な肝臓データがあり、8人の患者が、利用可能な膵臓データがあった。33ヶ月目で、正規化した肝体積および膵臓体積における、前治療のベースラインからの平均(標準誤差)の変化は、それぞれ、−1.5(0.22)および−2.8(0.37)であった。結果は、正規化した肝体積および膵臓体積の前治療のベースラインからの平均変化率の−34.0%および−73.5%に相当した(それぞれ、p=0.004およびp=0.008)。さらなる改善もまた、血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18の両方のパラメータについて観察された。
【0288】
簡潔に言えば、
図2は、ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積の平均変化率を示し、継続試験について、時間とともにプロットされ、画定される。統計的に有意な変化は、各パラメータについて、ベースラインから48ヶ月間(p<0.004)、観察される。最も著しい変化は、血小板数および膵臓体積について観察された。ヘモグロビン値は、24ヶ月間、全ての患者について正規化した。肝体積は、正常に近づいた。これらの臨床的パラメータの継続的改善は、継続試験を通じて示され(
図2)、ヘモグロビンの正規化は、24ヶ月間、全ての患者に観察された(表2)。ベースラインから48ヶ月間の平均変化率は、ヘモグロビン濃度(+21.7%)、血小板数(+157.8%)、肝体積(−42.8%)、および膵臓体積(−79.3%)について、統計的に有意であった(p<0.004)。
【0289】
ある特定日まで利用可能な試験TKT025EXTの安全性および臨床活性データが分析された。本試験に登録された患者は、43.2ヶ月間(範囲:13.2〜45.0ヶ月間)の曝露の累積平均持続時間があった。合計248個の有害事象が、登録した10人全ての患者の間で報告された。有害事象の大部分は、重篤度において、軽度から中度であった。治験責任医師によって治験薬とは関連がないと見なされる3つの重度(3級)有害事象が、2人の患者(1人の患者の関節痛および無菌性骨壊死、ならびに1人の患者の頭痛)について報告された。3つの重度有害事象が、報告されている(1人の患者の無菌性骨壊死の2つの事象、および1人の患者の瘢痕の1つの事象)。これらの重度有害事象のそれぞれは、治験責任医師によって治験薬とは関連がないと見なされ、それぞれは、続発症がなく消散した。最も頻繁に報告された治療中に発生した有害事象は、インフルエンザ(8人の患者、24個の事象)、関節痛(8人の患者、21個の事象)、頭痛(6人の患者、13個の事象)、背痛(6人の患者、10個の事象)、咽喉頭痛(5人の患者、7つの事象)、上腹部の痛み(5人の患者、7つの事象)、ならびに歯肉出血、発熱、および疲労(各4人の患者、4つの事象)であった。
【0290】
TKT025EXTにおいて報告された有害事象の大部分は、治験責任医師によって治験薬とは関連がないと見なされた(表3B)。合計7つの治療中に発生した有害事象は、鼻血(2人の患者、各1つの事象)、腹痛(1人の患者、1つの事象)、上腹部の痛み(1人の患者、1つの事象)、疲労(1人の患者、1つの事象)、および悪化した痛み(1人の患者、1つの事象)を含む、4人の患者において報告された。2人の患者は、それぞれ、1つの注入関連の有害事象:1人の患者の手足の中度(2級)の痛み、および1人の患者の軽度(1級)の震えを経験した。したがって、注入設定にもかかわらず、薬物関連の重篤有害事象はなかった。加えて、ベラグルセラーゼアルファの投与の中断を必要とする注入関連の有害事象がある患者はいなかった。
【0291】
ベラグルセラーゼアルファに対する抗体を形成した患者はいなかった。継続試験の1年目の間に、イスラエルの7人全ての居住者は、在宅療法への移行に成功した。
【0292】
患者の割合は、安全性集団の患者の総数に基づく。事象の割合は、安全性集団の患者によって経験された事象の総数に基づく。有害事象は、MedDRA Version 9.0辞書を用いてコードされる。EOW:隔週。
【0293】
TKT025およびTKT025EXTの1型ゴーシェ病患者における骨塩密度の結果
長期の骨塩密度(BMD)の変化は、ベラグルセラーゼアルファにより治療した1型ゴーシェ病患者において評価された。患者は、BMDにおいて、有意かつ継続的改善を示した。
【0294】
評価:TKT025登録中、骨検索および二重エネルギーX線吸収法(DEXA)を使用して、骨格病変を評価した。腰椎および大腿骨頸のZスコアは、本試験を通して、所定の時間で分析された。一部の患者については、DEXAスキャンが実施されたが、Zスコアは、スキャンから評価されなかった。欠損しているZスコアには、1人の患者−ベースラインおよび9ヶ月目での大腿骨頸;1人の患者−ベースラインでの腰椎;ならびに1人の患者−9ヶ月目での大腿骨頸が含まれる。腰椎および大腿骨頸のZスコアもまた、本試験を中止した後の2人の患者:24ヶ月目前の1人の患者および57ヶ月目前の1人の患者については評価しなかった。
【0295】
Tスコアを使用して、「若く、正常な」健常な30歳成人の骨密度を、ピーク骨密度と比較した。ベースラインおよび69ヶ月目での臨床的な骨状態は、
>−1は、正常、>−2.5および<−1は、骨減少症、
<−2.5は、骨粗しょう症であるという、TスコアのWHO基準に従って特徴付けた。
【0296】
方法:
解析集団:一次解析は、長期の継続試験に参加するインフォームドコンセントに署名し、ベラグルセラーゼアルファの1回以上の総用量または部分的用量を受けた全ての患者として定義される、包括解析(ITT)集団(N=10)において実行された。骨塩密度におけるベラグルセラーゼアルファの効果はまた、酵素補充療法と同時にビスホスフォネートを受けた、または受けなかった亜群においても評価された。
【0297】
統計的方法:欠損しているベースラインのZスコアは、次の値で置き換えた。最終観察の引き延ばし補完(LOCF)法を、その後の欠損しているZスコアに使用した。線形混合モデルを、反復測定解析として使用して、経時的にZスコアを解析した。Zスコア単位の年次増加を示す、y切片および勾配の推定値を示す。骨粗しょう症から骨減少症もしくは正常まで、および骨減少症から正常までの推移を記録し、報告した。
【0298】
結果:
ベースラインの特徴:TKT025EXTに登録した全ての患者は、GD1関連の骨病変があった。腰椎(LS)の骨病変の臨床状態は、1人の患者(10%)は、正常な範囲であり、8人の患者(80%)は、骨減少症に罹患し、1人の患者(10%)は、骨粗しょう症に罹患していた。大腿骨頸(FN)の骨病変の臨床状態は、1人の患者(10%)は、正常な範囲であり、5人の患者(50%)は、骨減少症に罹患し、4人の患者(40%)患者は、骨粗しょう症に罹患していた。DXA Zスコアは、(中央値[範囲]):LSが−1.8[−2.9〜−0.4]、FNが−1.5[−2.9〜−0.2]であった。69ヶ月間を通して、平均ベラグルセラーゼアルファ用量は、40U/kgであった。また、10人のうち4人の患者も、ビスホスフォネートにより治療された。
【0299】
Zスコア:ITT集団(n=10)のベースラインおよび種々の時点でのZスコア、同時にビスホスフォネートを受けた患者、およびビスホスフォネートを受けなかった患者を、それぞれ、表5〜7に示す。また、腰椎および大腿骨頸の平均Zスコアの経時変化も、それぞれ、
図5および6に示す。
【0300】
【表5】
【0301】
【表6】
【0302】
【表7】
【0303】
69ヶ月間のコース中の、ベースラインのZスコアからの腰椎(LS)および大腿骨頸(FN)のZスコアの変化を表8に示す。
【0304】
【表8】
【0305】
表8に示すように、包括解析集団の骨塩密度は、24ヶ月目(腰椎:0.39(0.06, 0.72))および33ヶ月目(大腿骨頸:0.39(0.16, 0.62)までに有意に改善された。同時にビスホスフォネートを受けなかった患者の骨塩密度は、24ヶ月目(腰椎:0.58(0.08, 1.09))および33ヶ月目(大腿骨頸:0.48(0.10, 0.87))までに有意に改善された。
【0306】
線形混合モデルの推定されたZスコア: Zスコア(ITT集団、n=10、95% 信頼区間)は、参照集団の腰椎(y切片=−1.56[−2.09,−1.03]、P<0.0001)および大腿骨頸(y切片=−1.42[−2.06,−0.79]、P=0.0007)よりも有意に低かった。両方のパラメータは、経時的に有意に改善された(腰椎の勾配/月=+0.011[0.005,0.017]、P=0.0021(勾配+0.011 Zスコア単位/月は、+0.132/年に相当する)、大腿骨頸の勾配/月=+0.007[0.004,0.009]、P=0.0005(勾配+0.007 Zスコア単位/月は、+0.084/年に相当する))。
【0307】
ベラグルセラーゼアルファ(n=6、95% 信頼区間)のみを受けた患者のうちで、Zスコアの腰椎のy切片は、−1.29[−1.97,−0.62](P=0.0045)であり、大腿骨頸のy切片は、−1.24[−2.21,−0.27](P=0.0216)であり、有意な改善が経時的に見られた[腰椎の勾配/月=+0.013[0.002,0.024](P=0.028)(+0.158/年に相当する)、大腿骨頸の勾配/月=+0.009[0.004,0.013](P=0.0055)(+0.103/年に相当する)。
【0308】
同時にビスホスフォネートを受けた患者(n=4、95% 信頼区間)のうちで、Zスコアの腰椎のy切片は、−1.97[−3.06,−0.88](P=0.0104)であり、大腿骨頸のy切片は、−1.71[−3.02,−0.40](P=0.0252)であり、改善が経時的に見られた[腰椎の勾配/月=+0.009[0.001,0.017](P=0.0351)(+0.111/年に相当する)、大腿骨頸の勾配/月=+0.004[−0.001,0.010](P=0.0867)(+0.048/年に相当する)。
【0309】
観測データベースの解析(International Collaborative Gaucher Group Gaucher Registry)に基づいた線形混合モデルでは、酵素補充療法のイミグルセラーゼにより治療したGD1型患者は、追跡治療の開始時の参照集団よりも有意に低かった(n=340、Y切片−1.17、P<0.001) (Wenstrup et al. J Bone Min Res. 2007; 22: 119−26)。しかしながら、用量反応の改善は、Zスコアの勾配/年(15U/kg[n=113]:+0.064;30U/kg[n=116]:+0.086;60U/kg[n=111]:+0.132;全てのP<0.001)において観察された(Wenstrup et al. J Bone Min Res. 2007;22:119−26)。
【0310】
ベースラインおよび69ヶ月間での骨塩密度の状態: ベースラインおよび69ヶ月目での臨床的な骨状態は、WHO基準(正常=Tスコア:
>−1、骨減少症=Tスコア>−2.5および<−1、骨粗しょう症=Tスコア
<−2.5)を用いて特徴付けた。状態の変化は、同時にビスホスフォネートを用いずに、ベラグルセラーゼアルファを受けた患者(n=6)に観察された。69ヶ月目までに、2人の腰椎および大腿骨頸の骨減少症患者を正規化し、1人の大腿骨頸の骨粗しょう症患者は、骨減少症になった。ビスホスフォネートにおける4人全ての患者は、WHOカテゴリに変化がなかった。
【0311】
反復測定解析(縦)勾配の推定: 反復測定解析では、ITT集団(N=10)についてのZスコアの推定値[95% 信頼区間]は、腰椎の切片=−1.56[−2.09, −1.03]、P<0.0001;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.011[0.005,0.017]、P=0.0021;大腿骨頸の切片=−1.42[−2.06,−0.79]、P=0.0007;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.007[0.004,0.009]、P=0.0005であった。1ヶ月当たりの腰椎の勾配の0.011の増加は、1年当たり0.132の増加に相当し、1ヶ月当たりの大腿骨頸の勾配の0.007の増加は、1年当たり0.084の増加に相当する。
【0312】
ビスホスフォネートを受けなかった患者(N=6)についてのZスコアの推定値[95% 信頼区間]は、腰椎の切片=−1.29[−1.97,−0.62]、P=0.0045;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.013[0.002,0.024]、P=0.0280;大腿骨頸の切片=−1.24[−2.21,−0.27]、P=0.0216;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.009[0.004,0.013]、P=0.0055であった。1ヶ月当たりの腰椎の勾配の0.013の増加は、1年当たり0.158の増加に相当し、1ヶ月当たりの大腿骨頸の勾配の0.009の増加は、1年当たり0.103の増加に相当する。
【0313】
ビスホスフォネートを受けた患者(N=4)についてのZスコアの推定値[95% 信頼区間]は、腰椎の切片=−1.97[−3.06,−0.88]、P=0.0104;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.009[0.001,0.017]、P=0.0351;大腿骨頸の切片=−1.71[−3.02,−0.40]、P=0.0252;腰椎の勾配(1ヶ月当たり)=0.004[−0.001,0.010]、P=0.0867であった。1ヶ月当たりの腰椎の勾配の0.009の増加は、1年当たり0.111の増加に相当し、1ヶ月当たりの大腿骨頸の勾配の0.004の増加は、1年当たり0.048の増加に相当する。
【0314】
統計的なモデルは、全ての利用可能なデータを使用し、データ補完のデータは使用しなかった。
【0315】
結論:ゴーシェ病、およびベラグルセラーゼアルファにより治療したベースラインの骨減少症/骨粗しょう症に罹患する患者では、骨塩密度は、腰椎(24ヶ月目)および大腿骨頸(36ヶ月目)の両方において改善した。ベラグルセラーゼアルファ用量を、2年目の間に、60から30単位/kg/注入に減少させた場合、骨病変の改善は、継続的高用量療法に依存しなかった。
【0316】
長期の治療目標の達成
治療目標は、酵素補充療法を受けている1型ゴーシェ病に罹患する患者における、治療応答の達成、維持、および継続をモニタリングするために説明されている(Pastores G et al., (2004) Seminars in Hematology,41(suppl 5):4−14)。
【0317】
1型ゴーシェ病の5つの重要な臨床的パラメータ(貧血、血小板減少症、肝腫大、脾腫、および骨格病変)の治療目標に対するベラグルセラーゼアルファ治療の影響をベンチマークするために、ベースラインでの貧血、血小板減少症、肝腫大、および脾腫についての目標での患者の割合を、4年間でのこれらの目標のそれぞれを達成する割合と比較した。ベースラインおよび4年間での貧血、血小板減少症、肝腫大、脾腫、および骨格病変についての完了データは、8人の患者(3人の男性、5人の女性)について利用可能である。4年間での骨格病変目標を達成する割合は、ベースラインから4年間のZスコアの改善に基づいて、判定された。加えて、4年間で、5つ全ての目標を達成した患者の割合を、ベースラインで、5つ全てのパラメータについての目標の割合と比較した。
【0318】
ベースラインで、全ての臨床的パラメータについて目標を達成した患者はいなかった(表9)。治療から1年後、全ての患者は、ベースラインで存在する目標を維持し、全ては、2つ以上の目標を達成した。8人全ての患者は、15〜18ヶ月間、隔週でベラグルセラーゼアルファの30U/kgまでの段階的減量を開始した。治療から4年目までに、全ての患者は、5つ全ての臨床的パラメータについての目標を満たし、したがって、100%の達成が、5つの長期治療目標のそれぞれに見られた(表9)。
【0319】
【表9】
【0320】
骨格病変は、ベースラインと比較して4年目で、骨塩密度(BMD)の改善として測定された。
【0321】
このベラグルセラーゼアルファの第I/II相および継続試験では、それぞれの長期治療目標の臨床的に意味のある達成は、1年後に減量したにもかかわらず、各患者に観察された。これは、1型ゴーシェ病のための酵素補充療法を受けている全ての患者が、治療を開始してから4年以内に、これらの長期治療目標の5つ全てを達成した場合のコホートの第1の報告である。
【0322】
TKT025およびTKT025EXTからの結果の要約
本明細書に報告される所見は、ベラグルセラーゼアルファと関連する有害事象が、一般的に、重篤度において、軽度であり、療法とほとんど関連がないことを示す。治療中に発生した有害事象は、軽度から中度であり、ほとんど薬物関連ではなかった。抗体を形成したこれらの試験に登録した患者はなく、薬物関連の重篤有害事象は、注入設定または曝露の持続時間にかかわらず観察されず、有害事象のため、本試験を中止した患者はいなかった。試験部位での観察の初期後、適任の患者は、在宅ベースの、看護士により投与されるベラグルセラーゼアルファへの移行に成功した。
【0323】
ベラグルセラーゼアルファは、治療を始めてから初めの6ヶ月以内、そして試験および継続試験の経過を通して、観察されたベースラインからの統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善とともに試験された4つの疾患パラメータの有効性を示した。療法の開始から24ヶ月以内に、全ての患者は、ヘモグロビン値の正規化を達成したが、1人を除く全ての患者は、100,000/mm
3超の血小板数を達成し、全ての患者は、肝体積においてほぼ正規化を達成し、1人を除く全ての患者は、膵臓体積において、50%超の減少を示した。さらに、これらの改善は、減量相を含む、試験の持続時間を通して観察された。60U/kg/隔週の元の用量まで戻された唯一の患者は、15ヶ月で初期減量した後、骨痛に次いで39ヶ月でそうなった。この患者は、登録時に両足首に骨の破壊性病変があり(画像病変は、AVNを除外できなかった)、骨髄炎の病歴があった。主治験責任医師(AZ)は、先行する破壊性病変および先の病変に対して悪化する痛みに起因するものであり、減量または医療ミスとの関連の可能性はないと考えた。
【0324】
在宅治療への移行を含む観察される安全性のプロファイル、および減量にかかわらず、臨床的パラメータに観察される有意な変化は、ベラグルセラーゼアルファについてのさらなる3つの続く第III相試験(子供にも許容される)、ならびに世界規模の早期アクセスプログラム、およびFDAに認可される治療プロトコルをもたらす。
【0325】
実施例2:TKT032試験(12ヶ月、45または60U/kgのベラグルセラーゼアルファ)
実施例2.1:要約
本実施例は、1型ゴーシェ病における、ベラグルセラーゼアルファの有効性および安全性を評価するための、世界規模の多施設試験を説明する。25人の治療を受けたことがない貧血の1型ゴーシェ病患者(4〜62歳)は、12ヶ月間、隔週で静脈内ベラグルセラーゼアルファの60U/kg(n=12)または45U/kg(n=13)に無作為化した。
【0326】
患者は、45U/kg(N=13)または60U/kg(N=12)のベラグルセラーゼアルファを受けるように、1:1の比率で無作為化された。層別因子には、年齢(2〜17;
>18)および性別(男性、女性)が含まれた。患者のベースライン特性を表10に列挙する。血液学的パラメータおよび膵臓体積における、臨床的かつ統計的に有意な改善が、12ヶ月間観察された(表11)。
図7および8は、それぞれ、12ヶ月間、45U/kgまたは60U/kgのベラグルセラーゼアルファにより治療された患者のベースラインからの平均ヘモグロビン濃度および血小板数の増加を示す。
図9および10は、それぞれ、12ヶ月間、45U/kgまたは60U/kgのベラグルセラーゼアルファにより治療された患者のベースラインからの正規化した平均膵臓体積および肝体積の減少を示す。
【0327】
【表10】
【0328】
【表11】
【0329】
ベラグルセラーゼアルファは、良好な耐容性を示した。1人の患者が、試験の終了(12ヶ月間)時に、抗体を形成した。表12は、TKT032の安全性試験の結果を要約する。
【表12】
【0330】
12ヶ月時点で、ヘモグロビン濃度は、増加した(60U/kg:+23%;+2.4g/dL[95% 信頼区間(CI):1.5, 3.4;P<0.001];45U/kg:+24%;+2.4g/dL[95% 信頼区間:1.5, 3.4;P<0.001])、平均血小板数も増加した(60U/kg:+65.9%;+51×10
9/L[95% 信頼区間:24, 78;P=0.002];45U/kg:+66%;+41×10
9/L[95% 信頼区間:11, 71;P=0.01])。平均膵臓体積は、減少し(60U/kg:−50%[95% 信頼区間:−62, −39%]、正常[MN]の14.0〜5.8倍[P=0.003];45U/kg:−40%[95% 信頼区間:−52, −28%]、MNの14.5〜9.5[P=0.009])、平均肝体積も減少した(60U/kg:−17% [95% 信頼区間:−27, −7%]、MNの1.5〜1.2[P=0.03];45U/kg:−6%[95% 信頼区間: −18,6%]、MNの1.4〜1.2[P=0.32]。薬物関連の重篤有害事象または中止は観察されなかった。1人の患者が、抗体を形成した。
【0331】
試験の目的
本試験の第1の目的は、ヘモグロビン濃度の増加で測定した場合、1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファを60U/kgの用量で隔週投与する有効性を判定することである。
【0332】
本試験の第2の目的は、ベラグルセラーゼアルファを60および45U/kgの用量で隔週投与する安全性を評価すること、ヘモグロビン濃度の増加で測定する場合、ベラグルセラーゼアルファを45U/kgの用量で隔週投与する有効性を評価すること、血小板数の増加、膵臓体積および肝体積の減少、ならびに血漿キトトリオシダーゼおよびケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド18(CCL18)のレベルの減少で評価することによって、ベラグルセラーゼアルファを60および45U/kgの用量で隔週投与する有効性を評価すること、全体の生活の質(QoL)における、ベラグルセラーゼアルファを60および45U/kgの用量で隔週投与する有効性を評価すること、ならびに60および45U/kgの用量で投与した場合、ベラグルセラーゼアルファを隔週投与する単回および反復投与の薬物動態を評価することである。
【0333】
本試験の第3の目的は、ベラグルセラーゼアルファを60または45U/kgの用量で隔週投与した後、ヘモグロビン濃度の増加が、1g/dL以上であると定義して、ヘモグロビン応答を達成するベースラインからの時間を判定すること、18歳以上の患者における、肺機能検査(PFT)での、ベラグルセラーゼアルファを60および45U/kgの用量で隔週投与する有効性を評価することと、2〜17歳の患者における、発育速度およびタナー分類を評価すること、左手および手首のX線撮影による、2〜17歳の患者における、骨年齢の変化を評価すること、腰椎および大腿骨頸の磁気共鳴映像法(MRI)による、2〜17歳の患者における、骨疾患を評価するベースラインを確立すること、ならびに腰椎および大腿骨頸のDXA(冠状断撮像(coronal imaging)を含む)、ならびに、血清アルカリ性ホスファターゼ、N−テロペプチド架橋(NTx)、およびC−テロペプチド架橋(CTx)による、18歳以上の患者のゴーシェ病関連の局所および全身性骨疾患における、ベラグルセラーゼアルファ療法の長期効果を評価するベースラインを確立することである。
【0334】
全体の試験設計
これは、I型ゴーシェ病に罹患する患者のためのベラグルセラーゼアルファ療法の有効性および安全性を評価するように設計された、多施設第III相無作為化二重盲式の並列群の2用量試験である。
【0335】
本試験は、以下の通りの5つの相から構成された。(1)スクリーニング:−21日目から−4日目;ベースライン:−3日目から0日目(第1の用量前);治療相:1週目(1日目;第1の用量)から51週目(合計26回の注入が、患者ごとに実施された)まで;試験終了の来院:53週目;追跡調査:最終注入から30日後(53週目の評価前に中断/中止する患者について、または本試験は完了したが、その後の長期臨床試験の登録に選出されない患者について)。
【0336】
スクリーニング時に、本試験に参加する書面によるインフォームドコンセントを提出した患者は、試験の適任性を判定するために、試験参加基準についての再調査が行われ、スクリーニング評価を受けた。特に、患者は、ヘモグロビン濃度を測定するための血液試料を提供した。年齢および性別による正常値の下限を下回る少なくとも1g/dLであるヘモグロビン濃度を有する患者のみが、ベースライン相へと継続するのに適していた。統計分析の目的のために、追加の血液試料は、ヘモグロビン濃度の評価のためのスクリーニング時に採血された。
【0337】
スクリーニング評価を完了した後、試験参加に適していた患者は、第1の用量前に、ベースラインの過程および評価(すなわち、−3日目から0日目)を受けた。患者のヘモグロビン濃度が、年齢および性別による正常値の下限を下回る少なくとも1g/dLであることを確認するために、患者は、ベースラインで血液試料を提供した。ヘモグロビン濃度を、分析し、報告した。スクリーニングおよびベースラインの両方で、年齢および性別による正常値の下限を下回る少なくとも1g/dLであるヘモグロビン濃度を有する患者のみが、無作為化に適していた。統計分析の目的のために、追加の血液試料が、ヘモグロビン濃度の評価のためのベースラインで収集された。さらなるベースラインの手順および評価を、初期投与を実施る前に行った。
【0338】
ベースラインの評価が完了し、適任性が確認された後、患者は、コンピュータ処理の無作為化スケジュールによって、60U/kgのベラグルセラーゼアルファあるいは45U/kgのベラグルセラーゼアルファを受けるように、1:1の比率で無作為化された。
【0339】
患者は、合計51週間、隔週1回、臨床施設で、合計26回の静脈注入の二重盲検試験の医薬を受けた。安全性および有効性の評価は、治療期間中、一定間隔で行われた。安全性および有効性の最終評価は、51週目および53週目の来院で行われた。安全性は、有害事象(注入関連の有害事象を含む)、併用薬、およびバイタルサインの評価によって、本試験を通して評価された。12リード線心電図、健康診断、臨床検査室試験(血液学、血液生化学検査、および尿検査)を含む、さらなる安全性の評価は、13、25、37、および53週目に行われた。抗ベラグルセラーゼアルファ抗体および酵素中和抗体の存在の判定は、53週目までほぼ6週間ごとに行った。
【0340】
有効性は、ヘモグロビン濃度および血小板数、肝体積および膵臓体積、ならびに血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18値によって評価された。さらなる有効性の評価には、発育速度およびタナー分類、QoL指標、骨格成長、ならびに肺機能検査が含まれる。
【0341】
単回投与および反復投与のベラグルセラーゼアルファの薬物動態プロファイルもまた、本試験中に評価された。血液試料は、それぞれ、これらの分析のために、1週目(1日目)および37週目に収集された。
【0342】
本試験を完了した患者は、その後の長期臨床試験に登録する機会を与えられた。この長期試験の登録に選ばれた患者については、TKT032における、51週目および53週目の来院からのある種の評価は、ベースラインの評価として使用され、患者は、TKT032のために予定された53週目の手順が完了した後、53週目の来院時に、長期臨床試験のための第1のベラグルセラーゼアルファ注入を受けた。したがって、それは、患者が、2つの試験にわたって、継続的なベラグルセラーゼアルファ治療を受けることを意味した。本試験を完了したが、その後の長期試験の登録に選ばれなかった患者は、ベラグルセラーゼアルファの最後の注入から30日後、施設来院または電話による安全性の評価を得る。
【0343】
試験集団の選択
評価した39人の患者のうち、14人は、無作為化に適さなかった(12人は、試験対象患者基準を満たさず、2人は、除外基準を満たさなかった)。25人の参加者は、45U/kg(n=13)または60U/kg(n=12)の用量で、ベラグルセラーゼアルファに対して無作為化された。少なくとも1回の注入(または部分的な注入)を受けた全ての無作為化された患者は、包括解析(ITT)患者集団に含まれた。
【0344】
適格な参加者は、1型ゴーシェ病(白血球中の欠損グルコセレブロシダーゼ活性、または遺伝子型分析によって)、および疾患関連の貧血(年齢および性別による地域の検査室の正常値の下限を下回るヘモグロビン値
>1g/dL)と診断された、2歳以上の男性または女性であった。参加者はまた、触診による少なくとも中度の脾腫(左肋骨縁から2〜3cm下)、疾患関連の血小板減少症(血小板数<90x10
3血小板/mm
3)、または容易に触診可能な肥大肝のうちの1つ以上があった。参加者は、試験に参加する前の30ヶ月以内にゴーシェ病の治療を受けることができなかった。
【0345】
参加者は、脾摘を受けた場合、2型あるいは3型ゴーシェ病に罹患した(または罹患している疑いがあった)場合、抗体陽性があった、またはイミグルセラーゼに対してアナフィラキシー性ショックを経験したことがある場合、除外された。他の除外基準には、試験に参加する前の30日以内に、あらゆる非ゴーシェ病関連の治験薬またはデバイスによる治療;HIV、またはB型肝炎もしくはC型肝炎に対する陽性試験;悪化した貧血(ビタミンB12、葉酸、または鉄欠乏性関連)、または試験データに影響を及ぼし得るあらゆる有意な併存疾患が含まれた。妊娠または授乳中の女性は、除外され、出産する可能性がある女性は、常に、医学的に許容される避妊方法を用いることを必要とされた。
【0346】
試験治療
治療評価:患者は、51週間、隔週で、60U/kgのベラグルセラーゼアルファ(12人の患者、26回の注入)、または51週間、隔週で、45U/kgのベラグルセラーゼアルファ(12人の患者、26回の注入)を受けるように、1:1の比率で、無作為化された。
【0347】
無作為化:ベースラインの評価が完了し、適任性を確認した後、患者は、51週間、ベラグルセラーゼアルファの45U/kgあるいは60U/kgの隔週での注入を受けるように、コンピュータ処理された無作為化スケジュールによって、1:1の比率で、無作為化された。
【0348】
予後因子のバランスの追求は、第1の分析の統計的有効性という理由で小さな試験において重要であった。多くの予後因子(例えば、年齢および性別)にわたるこのバランスを達成するために、動的割当手法を使用した。動的無作為化の手順については、患者の割当は、問題になっている患者の層別因子の現行のバランスによって影響を受けた。本手法は、PocockおよびSimonによって示唆されるようなアプローチを使用し、ICH−9において提供された手引きと非常に一致した(Pocock et al. Biometrics. 1975; 31:105−115)。
【0349】
治療スケジュール:患者は、1週目に、第1の注入を受けた。全ての患者は、12ヶ月間(51週間)、隔週で治療され、したがって、合計26回のベラグルセラーゼアルファの注入を実施した。
【0350】
用量の算出:治験薬の実際の用量は、ベースラインでの患者の体重に基づいて算出された。先行の評価から13、25、または37週目に示された5%以上の体重の変化は、試験薬剤の用量を再度算出することを必要とした。
【0351】
ベラグルセラーゼアルファ投与:ベラグルセラーゼアルファは、60および45U/kgの両方の用量レベルで、継続的な静脈内注入として投与された。全ての注入は、1時間の持続時間にわたって投与された。全ての注入は、4.3mLの防腐剤の入っていない、注射用滅菌水中で再構成され、次いで、生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)中で希釈し、100mLの全体積を得た。治験薬注入は、その週のほぼ同日に行われたが、患者スケジューリングを促進するために、予定された日の14日(±3日)ごとに行われる場合がある。
【0352】
試験手順およびデータ収集方法
遺伝子型:全ての患者は、ゴーシェ病の遺伝子型および血漿キトトリオシダーゼの遺伝子型のために、スクリーニング時に、血液試料を提供した。
【0353】
病歴:スクリーニング時に、患者の完全な病歴を記録した。これには、体組織の再評価、現行および先行の医療手順の文書化、ならびに現行および先行の併用薬の使用の文書化、ならびに患者が、試験に参加する前の30ヶ月以内にゴーシェ病の治療を受けなかったという文書が含まれた。
【0354】
バイタルサイン:記録されたバイタルサインパラメータには、脈拍、血圧、呼吸速度、および体温が含まれた。以下のスケジュールにより、注入の来院時に、バイタルサインを記録するために追跡調査した。注入開始(注入を開始する前の10分以内)、注入中(30分(±5分))、注入後(注入が完了してから5分、30分(±5分)、および60分±5分)以内)。スクリーニング時に、ベースラインおよび53週目のバイタルサインは、1回の時点でのみ収集された。
【0355】
健康診断:健康診断は、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに試験13、25、37、および53週目に、実施された。健康診断には、全体的な様子、内分泌物、頭頸部、心臓血管、眼、腹部、耳、非尿生殖器、鼻、皮膚、喉、筋骨格、胸部および肺、ならびに神経系が含まれた。加えて、肝臓および膵臓の触診は、患者が、中度の脾腫(左肋骨縁から2〜3cm下)、およびゴーシェ病関連の肥大肝があることを確認するために、スクリーニング中、実施された。
【0356】
身長および体重:身長および体重は、ベースライン、ならびに試験13、25、37、および53週目に記録された。
【0357】
12リード線心電図:12リード線心電図は、ベースライン、ならびに試験13、25、37、および53週目に実施された。各12リード線心電図には、PR、QRS、QT、およびQTc間隔、ならびに心拍数の評価が含まれた。
【0358】
臨床検査室試験:血液および尿試料は、臨床検査室試験について以下に記載されるように収集した。全ての血液試料は、静脈穿刺によって収集した。
【0359】
血液学:血液試料は、完全血液学試験のために、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに13、25、37、および53週目に収集された。以下の血液学パラメータは、差動による完全血球算定(CBC)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPPT)、網状赤血球数(臨床施設の地域検査室によって分析され、報告された)、血小板数、およびプロトロンビン時間(PT)を評価した。スクリーニング時、ベースライン時、ならびに毎回の試験の来院時(1週目の来院を除く)に、血液試料は、ヘモグロビン濃度および血小板数を測定するために採血された。
【0360】
血液生化学検査:血液試料は、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに試験13、25、37、および53週目に、血清生化学検査のために採血された。以下の血液生化学検査パラメータは、ナトリウム、アラニンアミノトランスフェラーゼ、カリウム、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルコース、乳酸脱水素酵素、全カルシウム、ガンマグルタミン酸転移酵素、総タンパク質、クレアチニンホスホキナーゼ、アルブミン、NTx*、クレアチニン、CTx
*、尿素窒素、葉酸(スクリーニングのみ)、総ビリルビン、ビタミンB
12(スクリーニングのみ)、アルカリ性ホスファターゼ
*を評価した(
*の結果は、骨バイオマーカーの評価のために使用された)。
【0361】
尿検査:尿試料は、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに試験13、25、37、および53週目に、尿検査のために収集された。以下の尿検査パラメータは、pH、巨視的評価、微視的評価を評価した。
【0362】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定:全ての患者は、血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定のために、スクリーニング中のみ、採血した血液試料を得た。陽性の結果を有する患者は、本試験から除外された。
【0363】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定:患者は、ベースライン時、ならびに治療相中、ほぼ6週間おき(7、13、19、25、31、37、43、および49週目)、および53週目に、血清中の抗ベラグルセラーゼアルファ抗体を測定するために血液試料を提供した。治療相中、これらの血液試料は、注入前に収集された。
【0364】
有害事象:有害事象は、本試験を完了したが、53週目の来院前に、本試験から長期臨床試験の登録に選ばれなかった患者については、インフォームドコンセント/同意から最終の注入から30日後までの試験を通して観察した。本試験を完了し、かつ長期臨床試験の登録に選ばれた患者については、有害事象は、インフォームドコンセント/同意から53週目の来院までモニタリングした。
【0365】
既存および併存する病気:ベースラインで存在するさらなる病気は、併存する病気として見なされ、CRFの適切な病歴のページに文書化された。初発するか、もしくは本試験中検出される病気、または本試験中併存する病気の悪化は、有害事象として見なされ、CRF等に文書化された。
【0366】
肝臓および膵臓のMRI:患者は、ベースライン、25週目、および51週目に、肝臓および膵臓のMRIを有した。肝臓および膵臓の大きさは、定量的な腹部MRIを用いて、測定された。
【0367】
血漿キトトリオシダーゼ値:血液試料(約2.5mL)は、ベースライン、13、25、37、および53週目に、血漿キトトリオシダーゼ値の評価のために収集された。
【0368】
血漿CCL18値:血液試料(約2.5mL)は、ベースライン、13、25、37、および53週目に、血漿CCL18値の評価のために収集された。
【0369】
生活の質試験:ベースライン時、および53週目での患者の生活の質は、Short Form 36(SF−36)、バージョン2(18歳以上の患者に対して)、および小児健康調査票(CHQ)、PF50(5〜17歳の患者に対して)を含む、有効な質問表を用いて評価した。
【0370】
発育速度およびタナー分類:2〜17歳の患者の発育は、ベースライン時、ならびに13、25、37、および53週目に評価した。発育速度は、身長および体重測定を用いて算出され、本試験中の一定の時点で記録した。本試験中の患者の発育速度は、疾病対策予防センターの身長および体重のデータから得られた同等の年齢の正常な個人の発育速度に対抗して測定された。タナー分類は、ベースライン時、ならびに13、25、37、および53週目に記録した。
【0371】
骨格成長:2〜17歳の患者は、骨年齢の評価のために、ベースライン時および51週目に、左手および手首のX線撮影を行った。
【0372】
肺機能検査:ベースライン時および53週目に、肺活量測定を実施する設備のある試験施設で登録した18歳以上の患者は、PFTを有した。
【0373】
肺活量測定は、肺活量測定の標準化について米国胸部学会(American Thoracic Society)または欧州呼吸器学会(European Respiratory Society)によって公開された手引きに従って実施した(American Thoracic Society. Standardization of Spirometry. Am J Respir Crit Care Med. 1995; 152:1107−1136、Quanjer et al. Eur Respir J. 1993; 16(Suppl):5−40)。努力肺活量(FVC)および努力呼気肺活量/秒(FEV
1)はともに、絶対値および正常の予測された割合(%)として表され、これは、成人の公開された参照値に基づいて算出された(Hankinson et al. Am J Respir. Crit Care Med. 1999; 159:179−187)。現在の身長を算出のために使用した。
【0374】
肺容量および拡散容量(DL
CO)の判定は、肺活量検査と同時に実施された。肺容量の測定は、全排気量(TLC)および残留量(RV)を含み、これらは、公開された参照値に基づいて、絶対値および正常の予測された割合(%)として記録した。DL
COもまた、公開された参照値に基づいて、絶対値および正常の予測された割合(%)として表された。
【0375】
薬物動力学的評価:18歳以上の患者については、血液試料は、1週目(1日目)および37週目に、以下の時間で収集された:初期投与直後、注入中(試料は、5、10、15、20、40、および60(注入の終了)分間で収集)、および注入後(試料は、65、70、80、90、105、および120分間で収集)。
【0376】
2〜17歳の患者については、血液試料は、1週目(1日目)および37週目に、以下の時間で収集された:初期投与直後、注入中(試料は、10、20、40、および60(注入の終了)分間で収集)、および注入後(試料は、70、80、および90分間で収集)。
【0377】
血清試料は、グルコセレブロシダーゼ抗原免疫測定法を用いて、投与したベラグルセラーゼアルファの存在について評価した。以下のPKパラメータは、AUC(濃度曲線下面積)、C
max(最大血清濃度)、T
max(最大血清濃度到達時間)、CL(mL/分/kg)(血清クリアランス、体重に対して正規化)、V
ss(mL)(定常状態での見かけの分布体積)、V
ss(%BW)(V
ssは、体重に対して正規化)、MRT(平均滞留時間)、およびT
1/2(排出半減期(適切なPKモデルを用いて分析)を評価した。
【0378】
骨バイオマーカー:ベースライン時でのみ、18歳以上の患者は、ゴーシェ病関連の局所および全身骨疾患を判定するために、冠状断撮像を含む、腰椎および大腿骨頸のDXAを行った。骨量の減少および脱塩はまた、血清アルカリ性ホスファターゼ、NTx、およびCTxを測定することによって判定された。これらのパラメータの結果は、ベースライン時でのみ、臨床検査試験のために採血された血液試料から得られた。
【0379】
2〜17歳の患者の大腿骨頸および腰椎のMRIは、ベースラインで得た(すなわち、同時に、患者は、肝臓および膵臓のMRIを行った)。いかなる治療効果は、本試験中、これらのパラメータに対して明らかであることは、期待されず、したがって、測定は、長期臨床試験中、これらのバイオマーカーをモニタリングするための参照点を確立するために、ベースライン時でのみ収集された。
【0380】
有害事象
有害事象の定義:有害事象(AE)は、身体的兆候、症状、および/または臨床試験のいかなる相に生じる検査室での変化によって示されるような、治験薬関連であると見なされるか、または見なされないにかかわず、解剖学的、生理学的、または代謝機能の任意の有毒な、病理、または意図的ではない変化である。これには、先行する状態の再燃が含まれる。有害事象は、インフォームドコンセント/同意から、治験薬の最終投与から30日後まで、および/または事象が消散する/安定化される、あるいは成果を達するまで、いずれか早い方で収集された。本試験を完了し、かつその後の長期臨床試験の登録に選ばれた患者については、有害事象は、患者がインフォームドコンセントを提出した時からTKT032の53週目の来院までモニタリングした。
【0381】
有害事象には、本試験の開始時に存在する状態の悪化(性質の変化、重症度、または頻度);病気の併発;薬物間相互作用;併用薬に関連する、または関連の可能性がある事象;異常な検査室での値(これは、治験責任医師が臨床的に重要であると見なす正常の範囲内でベースラインからの有意な推移を含む);健康診断、バイタルサイン、体重、およびECGの臨床的に有意な異常を含む。
【0382】
加えて、有害事象はまた、著しく範囲外になり、治験責任医師によって臨床的に有意であると判定された予期しない試験値も含み得る。
【0383】
注入関連の有害事象の定義:注入関連の有害事象は、1)注入中、あるいは注入を開始してから12時間以内に始まる、および2)治験薬への関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として定義される。注入前に実施された、プロトコル定義された試験および評価(例えば、検査室試験、ECG、および健康診断)と関連する有害事象と同様に、注入前に生じた他の有害事象は、注入関連の有害事象として定義されない。
【0384】
重篤有害事象の定義:重篤有害事象(SAE)は、以下の結果のいずれかをもたらす任意の投与で生じる任意の有害事象である:死亡、生命にかかわる、入院を必要とする、既存の入院の延長を必要とする、持続的もしくは重大な障害/不能、および先天異常/出生異常。
【0385】
死に至らないかもしれない、生命にかかわる、または入院を必要とする重大な医療事象は、適切な医療判断に基づき、患者を危険にさらし、上記の結果のうちの1つを防止するために医療または手術の介入を必要とする場合に、重篤有害事象として見なされる場合がある。
【0386】
生命にかかわる有害事象は、最初の報告者の観点から、それが生じた際、その有害事象から直接死の危険性に患者を置く有害事象として定義される(すなわち、さらに重症な状態で生じた場合、死を招いたかもしれない有害事象は含まない)。
【0387】
有害事象と重篤有害事象の分類:国立癌研究所共通毒性基準(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria、NCI CTC) Version 3.0の評価尺度を、有害事象の重症度を評価する場合に参照した。有害事象が、NCI CTCに記載されなかった場合、重症度は、以下の尺度に基づいて記録された。全ての有害事象/重篤有害事象の重症度は、それぞれ、軽度、中度、重度、または生命にかかわるの重症度に相当するグレード1、2、3、または4として、適切なCRFページに記録した。グレード1(軽度)は、日常活動には支障がないとして定義される。グレード2(中度)は、日常活動にいくつかの支障があるとして定義され、グレード3(重度)は、日常活動を行うことができないとして定義され、グレード4(生命にかかわる)は、直接死の危険性があるとして定義される。
【0388】
盲検治験薬との有害事象または重篤有害事象の関係は、以下の定義に基づいて治験責任医師によって判定された。「関連なし」とは、治験薬とは関連がないとして定義される。「関連の可能性あり(Possibly related)」とは、治験薬の投与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、これは、併発症または他の薬物/化学物質によっても説明され得る。「多分関連あり(Probably related)」とは、治験薬の投与与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、併発症または他の薬物および化学物質に起因する可能性は低く、投与中止(dechallenge)における臨床的に妥当な反応が起こる。臨床事象/検査所見の異常の関連性はまた、少なくとも理論的基礎において、いくつかの生物学的妥当性を有さなくてはならない。
【0389】
重篤と重度との明確化:「重度」という用語は、しばしば、特定の事象の強度(重症度)(軽度、中度、または重度の心筋梗塞等の場合)を説明するために使用されるが、事象それ自体は、比較的規模の小さい医学的意義(重度の頭痛等)である場合がある。これは、「重篤」とは同じではなく、通常、生命の危険または生活機能(functioning)を脅かすものをもたらす事象と関連する結果または作用基準に基づく。重篤度(重症度ではない)および因果関係は、規制報告義務を定義するための指針としての役割を果たす。
【0390】
有害事象のモニタリングおよび観察期間:本試験の目的ための観察期間は、インフォームドコンセント/同意から、本試験の患者の最終評価まで延長された。安全性の目的のための最終評価は、本試験を完了し、長期試験の登録に選ばれなかった患者のために、最後の注入から約30日後に実施される試験後の安全性評価として定義された。本試験を完了し、かつ長期臨床試験の登録に選ばれた患者については、有害事象は、患者がインフォームドコンセントを提出した時からTKT032の53週目の来院までモニタリングした。
【0391】
統計的方法:
一般的な統計的方法:統計分析は、全ての有効性変数のITT原則に基づいた。ITT分析は、少なくとも1回の注入(完全または部分的な注入)を受けた全ての無作為化した患者に基づいた。要約統計量を、治療群によって各パラメータについてベースラインからの変化および変化率に対して提供した。ベースラインからの平均変化および平均変化率における、両側95%信頼区間は、各エンドポイントについて、治療群によって示された。
【0392】
ベースライン時およびその後の試験の来院時に収集された継続的データは、要約され、各変数についての平均値、標準偏差、最小値、最大値、および中央値は、治験薬に起因する可能性のある、経時的動向についての追求を促進した。カテゴリ変数は、頻度および割合に関して示された。群内での変化は、対応のあるt検定を用いて解析した。統計的有意性は、0.05の水準で定義された。
【0393】
対象属性の特性およびベースライン特性は、頻度およびパーセント値として要約され、データは、記述統計量を用いて示された。さらなる分析は、2〜17歳の患者に特定して実行された。
【0394】
概して、記述統計量およびグラフは、関連性のある場合、個人的に、および各治療群について、患者についての経時的発育を示すグラフを含む、試験の結果を示すために使用された。
【0395】
安全性は、報告された有害事象、臨床検査室データ、ECG記録、病歴、バイタルサイン、および健康診断に基づいて評価された。加えて、血液試料は、抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の存在の判定のために分析された。
【0396】
仮説検定:全ての仮説検定は、両側であり、0.05水準の有意性で実施された。各変数は、ベースラインからの平均変化またはベースラインからの平均変化率として定量化した。検定される各変数についての帰無仮説は、51週目または53週目に、ベースラインからの変化がないことである。対立仮説は、ベースラインからのいずれの方向の変化があることである。
【0397】
スクリーニング不適格:本試験に登録するためにスクリーニングされた全ての患者の処分が、スクリーニング不適格の理由とともに表に示された。全ての無作為化した患者の処分は、治療および来院別に表に示し、中断の理由は治療別に表に示した。
【0398】
サンプルサイズの正当化:本試験のサンプルサイズは、ベースラインから12ヶ月時点の平均ヘモグロビン濃度の臨床的に有意な差異を検出するために高性能であるように選択された。治療群当たり合計12人の患者が、一次分析のために必要とされた。この数は、ベースラインの結果からの患者における変化の試験を行った、第I/II相試験TKT025からの結果に基づいた。25週目に、ベースラインからの平均ヘモグロビン増加は、1.92g/dLであり、0.824の標準偏差があることが観察された。仮説は、平均変化の標準偏差がほぼ同じであるというものであった。0.05の両側のアルファ水準の使用、ヘモグロビンの1単位の変化の見込みは、臨床的に有意であると見なされ、ベースラインからの変化の標準偏差は、0.824であり、10人の患者は、検出力90%を有するために試験に必要とされる。20%のドロップアウトを見込み、治療群当たり12人の患者が必要とされる。さらなる安全性データを収集し、起こり得る患者のドロップアウトから保護し、標的患者集団を達成するために、最大30人の患者が、本試験に登録され得る。
【0399】
分析集団:有効性データの解析のために一次集団は、少なくとも1回のベラグルセラーゼアルファ注入(または部分的な注入)を受ける全ての登録した、治療を受けた患者として定義される、ITT患者集団であった。ベースライン後のデータの欠落による、元の無作為化試料からの人員の欠落は、かかる患者の除外による、バイアスに関する懸念を最小化するために、十分に小さい(5%以下)ことが、予測された。
【0400】
安全性集団は、少なくとも1回の試験注入(または部分的な注入)を受けた全ての無作為化した患者から構成された。患者を無作為化した試験注入を受けなかった安全性集団の任意の患者は、彼らが無作為化治療以外に主に受けた注入に従って分析された。このような患者は、パープロトコル(Per−Protocol)(PP)患者集団から除外された。パープロトコル患者集団は、予定された注入の80%以上を受け、かつベースラインならびに51週目および/または53週目の評価が有効である、全ての無作為化した患者として定義される。
【0401】
有効性分析:本試験に登録するためにスクリーニングされた全ての患者の性質が、スクリーニング不適格の理由とともに表に示された。全ての無作為化した患者の性質は、治療および来院別に表に示し、中断の理由は表に示した。
【0402】
一次臨床活性変数は、60U/kgのベラグルセラーゼアルファに対して無作為化された患者におけるヘモグロビン濃度である。第1の目的は、60U/kgのベラグルセラーゼアルファに対して無作為化された患者における、ベースラインから12ヶ月時点でのヘモグロビンの平均変化を示すことによる有効性を示すことである。分析目的のために、スクリーニングおよびベースラインで収集されたヘモグロビン値を平均化して、変化を算出するために使用されるベースラインを確立した。帰無仮説は、ベースラインから12ヶ月時点で、ヘモグロビン濃度の変化がないことである。ベースラインから12ヶ月時点までの平均差は、対応のあるt検定またはウイルコクソンの符号順位検定を用いて検定された。平均差の95%信頼区間も示された。
【0403】
二次および三次臨床活性変数は、ヘモグロビン濃度(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、45U/kg群について評価された);血小板数(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、両方の治療群について評価された);膵臓体積(ベースラインから12ヶ月時点(51週目)までの変化率は、両方の治療群について評価された;観察された値に加えて、膵臓体積は、体重によって正規化され、複数の正常によっても示された);肝体積(ベースラインから12ヶ月時点(51週目)までの変化率は、両方の治療群について評価された;観察された値に加えて、肝体積は、体重によって正規化され、複数の正常によっても示された);血漿キトトリオシダーゼ(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、両方の治療群について評価された;統計的に有意な減少が、治療から12ヶ月後に予測された);血漿CCL18(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、両方の治療群について評価された;統計的に有意な減少が、治療から12ヶ月後に予測された);生活の質(SF−36およびCHQ)(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、両方の治療群について評価された);ヘモグロビン応答(ヘモグロビン応答を達成するまでの時間、両方の治療群について評価される1g/dL以上のヘモグロビン濃度の増加として定義される);発育速度およびタナー分類(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、2〜17歳の患者の両方の治療群について評価された);骨年齢(ベースラインから12ヶ月時点(51週目)までの変化は、2〜17歳の患者の左手および手首のX線撮影によって測定されるように、両方の治療群について評価された);ならびに、PFT(ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までの変化は、18歳以上の患者の両方の治療群について評価された)である。
【0404】
45U/kgのベラグルセラーゼアルファに対して無作為化した患者における、ベースラインから12ヶ月時点(53週目)までのヘモグロビンの平均変化を示すために使用される第2の目的のために、帰無仮説は、ベースラインから12ヶ月時点(51週目または53週目)までの変化がないだろうというものである。分析目的については、スクリーニングおよびベースラインで収集されたヘモグロビン値を平均化して、変化を算出するために使用されるベースラインを確立した。ベースラインから12ヶ月時点(51週目または53週目)までの平均差は、対応のあるt検定またはウイルコクソンの符号順位検定を用いて検定された。平均差の95%信頼区間も示された。
【0405】
残りの二次パラメータについては、帰無仮説は、各治療群について、ベースラインから12ヶ月時点(51週目または53週目)までの変化がないだろうというものである。分析目的については、スクリーニングおよびベースラインで収集された血小板値を平均化して、両方の治療群についての変化を算出するために使用されるベースラインを確立した。ベースラインから12ヶ月時点(51週目または53週目)までの平均差は、対応のあるt検定またはウイルコクソンの符号順位検定を用いて検定された。平均差の95%信頼区間も示された。
【0406】
ヘモグロビン応答までの時間については、カプランマイヤー(積極限)生存曲線を、各治療群について示した。中央値の時間および95%信頼区間を得た。本試験の終了時(すなわち、53週目)で事象を経験しなかった患者は、53週目で打ち切った。加えて、本試験中、正常範囲内でヘモグロビン値を達成した患者の割合を示した。
【0407】
ベースラインからの変化を分析する残りの三次パラメータについては、帰無仮説は、各治療群について、ベースラインから12ヶ月時点(51週目または53週目)までの変化がないだろうというものである。ベースラインと12ヶ月時点(51週目または53週目)の間の平均差は、対応のあるt検定またはウイルコクソンの符号順位検定を用いて検定された。平均差の95%信頼区間も示された。
【0408】
安全性分析:少なくとも1回の治験薬の投与(または部分的な投与)を受けた全ての患者は、臨床的安全性および耐容性について評価された。安全性パラメータにおける正式な統計的検定は実施されなかった。バイタルサイン、12リード線心電図、臨床化学、血液学、および尿検査の安全性モニタリングは、各患者について記載され、異常値をフラグ化した。有害事象等のカテゴリ変数については、各有害事象を経験している患者数および割合を表に示した。有害事象を、事象の重症度別に要約した。薬物関連の有害事象を経験している患者数および割合、ならびに治験薬と関連すると見なされない事象も表示した。
【0409】
臨床検査室評価(血液学、血液生化学検査、尿検査、および抗ベラグルセラーゼアルファ抗体への判定)を使用して、ベラグルセラーゼアルファの安全性を評価した。
【0410】
亜群の分析:さらなる分析は、2〜17歳の患者に特定して実行された。また、ヘモグロビンベースライン値に関しては、疾患重症度に対する分析において考慮がなされた。
【0411】
薬物動態分析:ベラグルセラーゼアルファについての単回および反復投与の薬物動態プロファイルは、それぞれ、1週目および37週目に、標準PKパラメータを分析することによって、確立された。
【0412】
結果
12ヶ月で、ヘモグロビン濃度は、両群で増加し(60U/kg:23.3%の増加、+2.4±0.3g/dL、P=0.0001;45U/kg:23.8%の増加、+2.4±0.5g/dL、P=0.0001)、平均血小板数も増加した(60U/kg:66%の増加、+51±12×10
9/L、P=0.0016;45U/kg:66%の増加、+41±12×10
9/L;P=0.0111)。平均膵臓体積は、両群で減少し(60U/kg:50%の減少、−1.9±0.5%体重、P=0.0032、ベースラインで正常[MN]の14.0倍から5.6MN;45U/kg:40%の減少、−1.9±0.6%体重、P=0.0085;14.5から9.5のMN)、肝体積も減少した(60U/kg:17%の減少、0.8±3.%体重、P=0.0282、1.5から1.2のMN;45U/kg:6%の減少、−0.3±0.3%体重、P=0.3149、1.4から1.2のMN)。
【0413】
両群では、15週目までに、患者の3/4が、1g/dL以上のヘモグロビン濃度の増加を達成し、60U/kg群では、全ての患者が、27週目までに1g/dL以上の増加を達成し、45U/kg群において、37週目までに達成した。
【0414】
患者は、2つのキトトリオシダーゼ変異の複製があった場合(患者6、45U/kg)、または5700を下回るベースラインのキトトリオシダーゼ活性があった場合(患者4、60U/kg;患者15、45U/kg)、キトトリオシダーゼの分析から除外された。治療から12ヶ月後、平均血漿キトトリオシダーゼ活性は、両方の治療群において、ベースラインから減少した。60U/kg群では、83%減少(95%信頼区間:−91.15、−74.08%;N=11;p<0.001)、および45U/kg群では、60%減少した(95%信頼区間:−73.26、−46.63%;N=11;p<0.001)。平均CCL18値もまた、60U/kgおよび45U/kgのベラグルセラーゼアルファによる1年間にわたる治療により、それぞれ、66%減少(95%信頼区間:−77.81、−54.22;p<0.001)および47%減少した(95%信頼区間:−63.37、−30.15%;p<0.001)。
【0415】
ベラグルセラーゼアルファは、一般的に、薬物関連の重篤有害事象のない、良好な耐容性を示し、有害事象による投与を中止する患者は、いなかった。最も一般的な有害事象は、頭痛、鼻咽頭炎、損傷、関節痛、咳、および発熱であった。1人の患者は、抗体を形成した。
【0416】
結論として、この世界的規模の多施設試験では、60U/kgおよび45U/kgのベラグルセラーゼアルファは、一般的に、良好な耐容性を示し、1型ゴーシェ病に罹患する成人および子供の第一選択治療として有効であった。両方の投与は、ヘモグロビン値の迅速な改善と関連があり、大部分の患者は、早ければ15週間で効果を示した。測定した全ての臨床的パラメータは、12ヶ月後、臨床的に有意な改善を示し、60U/kgのベラグルセラーゼアルファでより大きな効果が見られた。
【0417】
実施例3:HGT−GCB−039(9ヶ月、60U/kgのベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼ)
要約
本実施例は、1型ゴーシェ病に罹患する患者の治療における、酵素補充療法のベラグルセラーゼアルファの安全性および有効性を、イミグルセラーゼと比較するように設計された、多施設第III相無作為化二重盲式の並列群検定である。
【0418】
本実施例の第1の目的は、ベースラインから41週目(9ヶ月)までのヘモグロビン濃度の変化によって測定されるように、ベラグルセラーゼアルファがイミグルセラーゼより劣っていないことを示すことである。主要な第2の目的は、血小板数の増加または肝体積/膵臓体積の減少において、41週目まで、2つの群間で差異がないことを示すことである。
【0419】
患者は、60U/kgのベラグルセラーゼアルファ(N=17)またはイミグルセラーゼ(N=17)を受けるように、1:1の比率で無作為化された。患者のベースライン特性を、表13および14に記載する。層別因子には、年齢(2〜17;
>18)および脾摘状態(Y;N)が含まれた。第1および第2の目的はともに、満たされた。第1および第2の有効性評価の結果を、それぞれ、表15および16に示す。
図11および12は、それぞれ、41週間、60U/kgのベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼにより治療した患者における、ベースラインからの平均ヘモグロビン濃度および血小板数の同等の増加を示す。
図13は、41週間、60U/kgのベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼにより治療した膵臓のない患者における、ベースラインからの平均血小板数の同等の増加を示す。
図14は、41週間、60U/kgのベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼにより治療した患者における、ベースラインからの正規化した平均肝体積の同等の減少を示す。ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼの間で安全性の有意な差異はなかった。治療中に発生した有害事象を、表17に要約する。ベラグルセラーゼアルファを受けている患者は、抗体を形成しなかった(表18)。イミグルセラーゼを受けている4人の患者は、抗イミグルセラーゼ抗体を形成した(表18)。
【0420】
【表13】
【0421】
【表14】
【0422】
【表15】
【0423】
【表16】
【0424】
【表17】
【0425】
【表18】
【0426】
試験の目的
本試験の第1の目的は、1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ヘモグロビン濃度へのベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を比較することであった。
【0427】
本試験の第2の目的は、血小板数におけるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を比較すること;肝体積および膵臓体積(MRIにより)におけるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を比較すること;ゴーシェ病固有のバイオマーカー(血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18値)におけるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を比較すること;各治療群について、標準的な臨床検査による評価(抗体形成速度および酵素中和抗体活性を含む)および安全性評価(注入関連の有害事象の速度および注入関連の有害事象を管理するために前投薬を必要とする患者の割合を含む)によって測定する場合、1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの安全性を評価すること;ならびにヘモグロビンに対する応答までの初期時間におけるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を比較すること(ベースラインと比較して、1g/dL以上のヘモグロビン値の改善として定義される)であった。
【0428】
本試験の第3の目的は、2〜17歳の患者の発育速度およびタナー分類における、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を評価すること;左手および手首のX線撮影による、2〜17歳の患者の骨年齢における、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を評価すること;18歳以上の患者に対しては、SF−36、および患者5〜17歳の患者に対しては、CHQ PF−50によって測定されるように、全般的QoLの変化における、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を評価すること;選択されたサイトカイン評価(TNF−α、IL6、IL1b、IL8、、IL13、CD14、およびGM−CSF)によって測定されるように、18歳以上の患者の免疫および炎症反応における、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を評価すること;腰椎および大腿骨頸のMRIにより、2〜17歳の患者の骨疾患を評価するためのベースラインを確立すること;ならびに、冠状断撮像を含む、腰椎および大腿骨頸の二重エネルギーX線吸収法(DXA)ならびに、血清アルカリ性ホスファターゼ、N−テロペプチド架橋(NTx)、およびC−テロペプチド架橋(CTx)による、18歳以上の患者のゴーシェ病関連の局所および全身骨疾患における、ベラグルセラーゼアルファ療法の長期効果を評価するためのベースラインを確立することである。
【0429】
試験エンドポイント
本試験の第1のエンドポイントは、2つの治療群間のヘモグロビン濃度のベースラインから41週目/試験終了時(EOS)の平均変化を測定することである。
【0430】
本試験の第2のエンドポイントは、有害事象および注入関連の有害事象(および注入関連の有害事象を管理するために前投薬を必要とする患者の割合を含む)、臨床検査室評価、バイタルサイン、12リード線心電図(ECG)、抗体形成および酵素中和抗体活性によって評価されるように、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの安全性を評価すること;治療群間での血小板数におけるベースラインからの平均変化率を比較すること;治療群間でのMRIによる、肝体積および膵臓体積におけるベースラインからの平均変化率を比較すること;治療群間での血漿キトトリオシダーゼおよび血漿CCL18値におけるベースラインからの平均変化率を比較すること;および治療群間での治療群間でのヘモグロビン濃度(ベースラインと比較したヘモグロビン値の1g/dL以上の改善として定義される)に対する応答時間を比較することである。
【0431】
本試験の第3のエンドポイントは、各治療群内の2〜17歳の患者について、発育速度およびタナー分類におけるベースラインからの変化を評価すること;各治療群内の18歳以上の患者について、SF−36パラメータにおけるベースラインからの変化を評価すること;選択されたサイトカイン評価(TNF−α、IL6、IL1b、IL8、IL13、CD14、およびGM−CSF)によって測定されるように、18歳以上の患者について、免疫および炎症反応におけるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの効果を評価すること;各治療群内の5〜17歳の患者について、CHQ(PF−50)パラメータにおけるベースラインからの変化を評価すること;および各治療群内の2〜17歳の患者について、左手および手手首のX線撮影によって評価されるように、骨年齢におけるベースラインからの変化を評価することである。
【0432】
全般的試験設計
本試験は、以下の通りの5つの相から構成された。スクリーニング:−21日目から−4日目;ベースライン:−3日目から0日目(患者の無作為化を通して);治療:1週目(1日目、すなわち、初期投与日)から39週目まで;試験終了の来院:41週目;
追跡調査の連絡:最終の注入から30日後(41週目の評価前に中断/中止する患者に対して、または長期臨床試験の登録に選ばれない患者に対して)。
【0433】
スクリーニングで、本試験に参加する書面によるインフォームドコンセントを提出した患者は、適任性を判定するために、試験参加基準についての再調査が行われた。患者は、ヘモグロビン濃度を測定するために血液試料を提供した。年齢および性別による正常値の下限を下回るヘモグロビン濃度を有するこれらの患者のみが、登録に適した。統計分析の目的のために、追加の血液試料が、ヘモグロビン濃度の評価のためのスクリーニングで収集された。
【0434】
スクリーニング評価を完了した後、試験参加に適した患者は、ベースラインの手順および評価(すなわち、−3日目から0日目)を受けた。患者のヘモグロビン濃度が、年齢および性別による正常値の下限を下回ることを確認するために、患者は、ベースラインで血液試料を提供した。ヘモグロビン濃度を、分析し、報告した。スクリーニング時およびベースライン時の両方で、年齢および性別による正常値の下限を下回るヘモグロビン濃度を有するこれらの患者のみが、登録に適した。統計分析の目的のために、追加の血液試料は、ヘモグロビン濃度の評価のためのベースライン時に採血された。さらなるベースラインの手順および評価を、盲検治験薬の初期投与を実施する前に行った。
【0435】
スクリーニングおよびベースラインの手順が完了し、患者の適任性が確認されると、患者は、二重盲検治験薬(60U/kgのベラグルセラーゼアルファあるいは60U/kgのイミグルセラーゼのいずれか)を受けるように、1:1の比率で無作為化された。無作為化は、中央審査方式(centralized procedure)によって達成した。コンピュータ処理の無作為化スケジュールを利用して、治療群に患者を割り当てた。年齢、ヘモグロビン濃度、患者が脾摘を受けたことがあるか等のある種の予後変数が同程度である治療群を得る試みがなされた。無作為化スケジュールは、本試験前に準備された。
【0436】
患者は、合計39週間、隔週1回、臨床施設で、合計20回の静脈注入の二重盲検治験薬を受けた。安全性および有効性の評価は、治療相中、一定間隔で行われた。安全性および有効性の最終評価は、41週目の来院時(最終の注入から2週間後)に行われた。
【0437】
安全性は、有害事象(注入関連の有害事象を含む)、併用薬、およびバイタルサインの評価によって、本試験を通して評価された。12リード線心電図、健康診断、臨床検査室試験(血液学、血液生化学検査、および検尿)を含む、さらなる安全性の評価は、13、25、および41週目に行われた。抗ベラグルセラーゼアルファ抗体または抗イミグルセラーゼ抗体および酵素中和抗体の存在の判定は、41週目までほぼ6週間ごとに行った。
【0438】
有効性は、ヘモグロビン濃度および血小板数、肝体積および膵臓体積、ならびに血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18値によって評価された。さらなる有効性の評価には、発育速度およびタナー分類、QoL指標、骨格成長が含まれた。免疫および炎症反応(選択されたサイトカインパラメータによって測定される)は、試験参加時に18歳以上の患者において測定された。本試験における治療の持続期間は、39週間であり、本試験に参加する患者の持続期間は、最長11ヶ月間(スクリーニングから追跡調査まで)であった。本試験を完了した患者は、その後の非盲検の長期臨床試験に登録する機会が与えられ、ここで、全ての患者は、ベラグルセラーゼアルファを受けた。その後の非盲検の長期臨床試験の登録に選ばれた患者については、41週目の来院からある種の評価が、その臨床試験のベースライン評価として使用され、患者は、本試験に予定された41週目の手順および評価が終了した後、長期臨床試験のための第1のベラグルセラーゼアルファの注入を受けた。したがって、それは、患者が、2つの試験にわたって、継続的な治療を受けることを意味した。本試験を完了したが、その後の長期試験の登録に選ばれなかった患者は、本試験において、最後の注入から30日間後、施設来院または電話による安全性の評価を得た。
【0439】
試験集団の選択
34人の患者が登録した(17人の患者は、各治療群に割当られた)。
【0440】
適格の参加者は、1型ゴーシェ病(白血球中の欠損グルコセレブロシダーゼ活性、または遺伝子型分析によって)、および疾患関連の貧血(年齢および性別による地域の試験所の正常値の下限を下回るヘモグロビン値)と診断された、2歳以上の男性または女性であった。参加者はまた、触診による少なくとも中度の脾腫(左肋骨縁から2〜3cm以下)、疾患関連の血小板減少症(血小板数<120×10
3血小板/mm
3)、または容易に触診可能な肥大肝のうちの1つ以上があった。参加者は、試験に参加する前の12ヶ月以内にゴーシェ病の治療を受けることができなかった。
【0441】
参加者は、脾摘を受けた場合、2型あるいは3型ゴーシェ病に罹患した(または罹患している疑いがあった)場合、抗体陽性があった、またはイミグルセラーゼに対してアナフィラキシー性ショックを経験したことがある場合、除外された。他の除外基準には、試験に参加する前の30日以内に、あらゆる非ゴーシェ病関連の治験薬またはデバイスによる治療;HIV、またはB型肝炎もしくはC型肝炎に対する陽性試験;悪化した貧血(ビタミンB12、葉酸、または鉄欠乏性関連)、または試験データに影響を及ぼし得るあらゆる有意な併存疾患が含まれた。妊娠または授乳中の女性は、除外され、出産する可能性がある女性は、常に、医学的に許容される避妊方法を用いることを必要とされた。
【0442】
試験治療
治療評価:患者は、39週間、隔週で60U/kgのベラグルセラーゼアルファ(最高16人の患者、20回の注入)、または39週間、隔週で60U/kgのイミグルセラーゼ(最高16人の患者、20回の注入)の初回投与前に、1:1の比率で無作為化された。全ての治験薬は、1時間にわたって静脈内注入により投与され、治療盲検を維持した。
【0443】
治療実施
治験薬の注入:二重盲検治験薬の注入が、継続的な1時間の静脈内注入として、臨床施設で実施され、治療盲検を維持した。治験薬の注入は、その週のほぼ同日に行われたが、患者スケジューリングを促進するために、14日間(±3日)ごとに行われた。
【0444】
用量の算出:二重盲検治験薬の初回投与は、ベースラインでの患者の体重に基づいた。ベースラインから、またはつい最近記録された測定(13週目または25週目)から5%以上の体重の変化は、治験薬の用量の再算出の必要がある。
【0445】
治験薬の説明
ベラグルセラーゼアルファ:ベラグルセラーゼアルファは、臨床試験施設に供給され、出荷され、2〜8℃で貯蔵される、凍結乾燥製品であった。
【0446】
イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標)):イミグルセラーゼ(Cerezyme)は、滅菌の、非発熱性の白色からオフホワイト色の凍結乾燥製品として供給された。
【0447】
試験手順およびデータ収集方法
試験参加基準:スクリーニングで、患者は、試験参加基準に対する適格性についての再調査が行われた。試験参加基準を満たさなかった患者は、スクリーニング不適応と見なされた。
【0448】
適格性の確認:スクリーニングで、患者は、試験の適格性を判定するために、ヘモグロビン濃度を測定するための血液試料を提供した。年齢および性別による地域の試験所の正常値の下限を下回るヘモグロビン濃度を有するこれらの患者のみが、登録に適した。
【0449】
ベースラインで、患者は、彼らのヘモグロビン濃度が、年齢および性別による地域の試験所の正常値の下限を下回ることを確認するために、血液試料を提供した。スクリーニングおよびベースラインの両方で、年齢および性別による正常値の下限を下回るヘモグロビン濃度を有するこれらの患者のみが、本試験に適していることを確認した。
【0450】
遺伝子型:全ての患者は、ゴーシェ病の遺伝子型および血漿キトトリオシダーゼの遺伝子型のためのスクリーニングで血液試料を提供した。
【0451】
病歴:スクリーニングで、患者の完全な病歴を記録した。これには、体組織の再評価、現行および先行の医療手順の文書化、ならびに現行および先行の併用薬の使用の文書化、ならびに患者が、試験に参加する前の12ヶ月以内にゴーシェ病の治療を受けなかったという文書が含まれた。
【0452】
バイタルサイン:記録されたバイタルサインパラメータには、脈拍、血圧、呼吸速度、および体温が含まれた。以下のスケジュールは、注入の来院でバイタルサインを記録するために追跡した。注入開始(注入を開始する前の10分以内)、注入中(30分(±5分))、注入後(注入が完了してから5分、30分(±5分)、および60分±5分)以内)。スクリーニングで、ベースラインおよび41週目のバイタルサインは、1回の時点でのみ収集された。
【0453】
健康診断:健康診断は、スクリーニング、ベースライン、ならびに試験13、25、および41週目に、実施された。健康診断には、全体的な様子、内分泌物、頭頸部、心臓血管、眼、腹部、耳、非尿生殖器、鼻、皮膚、喉、筋骨格、胸部および肺、ならびに神経系が含まれた。身体所見のあらゆる異常変化は、適切なCRFページの有害事象として記録した。
【0454】
身長および体重:身長および体重は、ベースライン、ならびに試験13、25、および41週目に、記録した。小児患者(すなわち、2〜17歳)については、身長および体重の評価を使用して、発育速度を判定した。
【0455】
12リード線心電図:12リード線心電図は、ベースライン、ならびに試験13、25、および41週目に実施され、これには、PR、QRS、QT、およびQTc間隔、ならびに心拍数の評価が含まれた。
【0456】
臨床検査室試験:血液および尿試料は、臨床検査室試験について以下に記載されるように収集した。
【0457】
血液学:血液試料は、統計分析のためのヘモグロビン値を測定するために、スクリーニング中、およびベースラインで収集された。血液試料はまた、完全血液学試験のために、スクリーニング、ベースライン、ならびに13、25、および41週目に収集された。以下の血液学パラメータは、差動による完全血球算定(CBC)、血小板数、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPPT)、網状赤血球数(臨床施設の地域検査室によって分析され、報告された)、およびプロトロンビン時間(PT)を評価した。スクリーニング、ベースライン、ならびに毎回の試験の来院時(1週目の来院を除く)に、血液試料は、ヘモグロビン濃度および血小板数を測定するために収集した。
【0458】
血液生化学検査:血液試料は、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに試験13、25、および41週目に、血清生化学検査のために採血された。以下の血液生化学検査パラメータは、ナトリウム、アラニンアミノトランスフェラーゼ、カリウム、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルコース、乳酸脱水素酵素、全カルシウム、ガンマグルタミン酸転移酵素、総タンパク質、クレアチニンホスホキナーゼ、アルブミン、NTx*、クレアチニン、CTx*、尿素窒素、葉酸(試験の適任性を判定するため)、総ビリルビン、ビタミンB
12(スクリーニングのみ)、アルカリ性ホスファターゼ*を評価した(*の結果は、骨バイオマーカーの評価のために使用された)。スクリーニングで、葉酸および/またはビタミンB
12欠損関連の貧血を有した患者、および試験酸化基準を満たさなかった患者は、スクリーニング不適格と見なされた。
【0459】
尿検査:尿試料は、スクリーニング、ベースライン、ならびに試験13、25、および41週目に尿検査のために収集された。以下の尿検査パラメータは、pH、巨視的評価、および微視的評価を評価した。
【0460】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体:患者は、スクリーニング、ならびに治療相中、ほぼ6週間おき(7、13、19、25、31、および37週目)、および41週目に、血清中の抗ベラグルセラーゼアルファ抗体を測定するために血液試料を提供した。治療相中、これらの血液試料は、二重盲検に治験薬の注入前に収集された。
【0461】
抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定のために収集された血液試料を評価した。これらの試料は、抗体連結型免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてスクリーニングし、全ての陽性試料は、放射性免疫沈降法(RIP)を用いて陽性であることを確認した。陽性試料は、アイソタイプ(IgG、IgA、IgM、またはIgE)であった。加えて、陽性試料は、インビトロアッセイを用いて、酵素中和活性について試験した。
【0462】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定:患者は、抗イミグルセラーゼ抗体を測定するために、スクリーニング時に血液試料を提供した。抗イミグルセラーゼ抗体分析は、抗ベラグルセラーゼアルファ抗体分析のために得た同じ試料を用いて実施した。
【0463】
これらの血液試料は、抗イミグルセラーゼ抗体の存在を判定するために評価された。これらの試料は、抗体連結型免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてスクリーニングし、全ての陽性試料は、放射性免疫沈降法(RIP)を用いて陽性であることを確認した。陽性試料は、アイソタイプ(IgG、IgA、IgM、またはIgE)であった。加えて、陽性試料は、インビトロアッセイを用いて、酵素中和活性について試験した。
【0464】
スクリーニング時に、抗イミグルセラーゼ抗体に対して陽性反応を示す患者は、本試験には適さなかった。
【0465】
抗体交差反応試験(ベラグルセラーゼアルファに対する)は、本試験中、抗イミグルセラーゼ抗体を形成する患者に対して実行した。
【0466】
免疫および炎症反応試験:18歳以上の患者は、ベースライン、ならびに13、25、および41週目に、免疫および炎症反応試験のために血液試料を提供した。1つの試料は、ベースラインで得た。13、25、および41週目に、試料は、治験薬を用いた各注入前、注入直後、および注入から1時間後に得た。
【0467】
有害事象:有害事象は、本試験を完了し、その後の長期の非盲検臨床試験の登録に選ばれなかった患者、または41週目の来院前に、本試験を中断、または中止した患者について、インフォームドコンセントから最終の注入から30日後までの試験を通してモニタリングされた。本試験を完了し、かつその後の非盲検の長期臨床試験の登録に選ばれなかった患者については、有害事象は、インフォームドコンセントから41週目の来院までモニタリングした。
【0468】
注入関連の有害事象の管理:タンパク質の注入は、注入物への応答と関連があり得る。注入関連の有害事象は、1)注入中、あるいは注入を開始してから12時間以内に始まる、および2)盲検治験薬への関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として定義される。
【0469】
肝臓および膵臓のMRI:患者は、ベースライン、25週目および41週目/試験終了時で、肝臓および膵臓のMRIを受けた。肝臓および膵臓の大きさは、定量的含むMRIを用いて測定した。
【0470】
血漿キトトリオシダーゼ値:血液試料は、ベースライン、ならびに1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、および41週目に、血漿キトトリオシダーゼ値の評価のために収集された。キトトリオシダーゼは、酵素活性アッセイを用いて分析した。
【0471】
血漿CCL18値:血液試料は、ベースライン時、ならびに1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、および41週目に、血漿CCL18値の評価のために収集された。CCL18値は、市販のキットにおいて、抗体連結型免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定された。
【0472】
生活の質試験:ベースライン時および41週目での患者の生活の質は、18歳以上の患者に対しては、Short Form 36(SF−36)、バージョン2、および5〜17歳の患者に対しては、小児健康調査票(CHQ)、PF50を含む、有効な質問表を用いて評価した(Ware Arch Phys Med Rehabil Vol 84, Suppl 2, April 2003:43−51、SF−36v2
TM Health Survey 1996, 2000 by QualityMetric Incorporated and Medical Outcomes Trust. All Rights Reserved、Landgraf et al. Child Health Questionnaire: A User’s Manual. 2
nd printing, Health Act, Inc., Boston MA, 1999、Landgraf et al. Quality of Life Research. 1998; 7(5):433−445)。
【0473】
発育速度およびタナー分類:2〜17歳の患者の発育は、ベースライン時、ならびに13、25、および41週目に評価した。発育速度は、本試験中の一定の時点で記録した身長および体重測定を用いて算出され、タナー分類と相関させた。タナー分類は、ベースライン時、ならびに13、25、および41週目に記録した。各治療群における、2〜17歳の患者のベースラインからの変化は、第3の有効性パラメータとして評価された。
【0474】
骨格成長:2〜17歳の患者は、骨年齢の評価のために、ベースライン時および41週目に、左手および手首のX線撮影を行った。
【0475】
骨バイオマーカー:ベースライン時および41週目に、18歳以上の患者は、ゴーシェ病関連の局所および全身骨疾患を判定するために、冠状断撮像を含む、腰椎および大腿骨頸のDXAを行った。骨量の減少および脱塩は、ベースライン時および41週目に、血清アルカリ性ホスファターゼ、NTx、およびCTxを測定することによって判定された。
【0476】
2〜17歳の患者については、大腿骨頸および腰椎のMRIは、これらの患者は、肝臓および膵臓のMRIを行うと同時に、ベースラインおよび41週目に得た。
【0477】
本試験中、これらのパラメータに対していかなる治療効果が明らかとなることも期待されなかったが、ベースラインおよび41週目で収集された測定値は、その後の非盲検の長期臨床試験中に、これらのバイオマーカーをモニタリングするための参照点を確立するために利用されるだろう。
【0478】
既存および併存の病気:ベースラインで存在するさらなる病気は、併存する病気として見なされ、病歴のCRFの適切なページに文書化された。初発するか、もしくは本試験中検出される病気、または本試験中併存する病気の悪化は、有害事象として見なされ、CRF等に文書化された。
【0479】
患者は、本試験のいずれの時点でも、または最後の注入後30日以内に、赤血球成長因子または治験薬もしくはデバイスを用いた治療を受けなかった。
【0480】
本試験の治療相の間、患者は、考えられる注入関連の有害事象を軽減するために、前投薬としてコルチコステロイドを受けた可能性がある。
【0481】
有害事象
有害事象の定義:有害事象(AE)は、身体的兆候、症状、および/または臨床試験のいかなる相に生じる検査室での変化によって示されるような、治験薬関連であると見なされるか、または見なされないにかかわず、解剖学的、生理学的、または代謝機能の任意の有毒な、病理、または意図的ではない変化である。これには、先行する状態の再燃が含まれる。有害事象は、患者が署名済みのインフォームドコンセントを提出した時から、盲検治験薬の最終投与から30日後まで、および/または事象が消散する/安定化される、あるいは成果を達するまで、いずれか早い方で収集された。41週目の来院前に、中断した、または中止した患者の有害事象は、最終注入から最長30日まで追跡調査した。本試験を完了し、かつ長期臨床試験の登録に選ばれた患者の有害事象は、患者がインフォームドコンセントを提出した時から41週目の来院までモニタリングした。
【0482】
有害事象には、本試験の開始時に存在する状態の悪化(性質の変化、重症度、または頻度);病気の併発;薬物間相互作用;併用薬に関連する、または関連する可能性がある事象;異常な検査室での値(これは、治験責任医師が臨床的に重要であると見なす正常の範囲内でベースラインからの有意な推移を含む);健康診断、バイタルサイン、体重、およびECGの臨床的に有意な異常を含む。
【0483】
加えて、有害事象はまた、著しく範囲外になり、治験責任医師によって臨床的に有意であると判定された予期しない検査室での値も含み得る。予期しない範囲外の値の事象では、検査試験は、それが正常値に戻るまで、または患者の安全性には危険性がないことが説明され得るまで繰り返される。
【0484】
注入関連の有害事象の定義:注入関連の有害事象は、1)注入中、あるいは注入を開始してから12時間以内に始まる、および2)盲検の治験薬への関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として定義された。注入前に実施された、プロトコル定義された試験および評価(例えば、検査室試験、ECG、および健康診断)と関連する有害事象と同様に、注入前に生じた他の有害事象は、注入関連の有害事象として定義されなかった。
【0485】
重篤有害事象の定義:重篤有害事象(SAE)は、以下の結果のいずれかをもたらす任意の用量で生じる任意の有害事象である:死亡、生命にかかわる、入院を必要とする、既存の入院の延長を必要とする、持続的もしくは重大な障害/不能、および先天異常/出生異常。
【0486】
死亡に至らないかもしれない、生命にかかわる、または入院を必要とする重大な医療事象は、適切な医療判断に基づき、患者を危険にさらし、上記の結果のうちの1つを防止するために医療または手術の介入を必要とする場合に、重篤有害事象として見なされる場合がある。
【0487】
生命にかかわる有害事象は、最初の報告者の観点から、それが生じた際、その有害事象から直接死の危険性に患者を置く有害事象として定義される(すなわち、さらに重症な状態で生じた場合、死を招いたかもしれない有害事象は含まない)。
【0488】
有害事象と重篤有害事象の分類:国立癌研究所共通毒性基準(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria、NCI CTC) Version 3.0の評価尺度を、有害事象の重症度を評価する場合に参照した。有害事象が、NCI CTCに記載されなかった場合、重症度は、以下の尺度に基づいて記録された。全ての有害事象/重篤有害事象の重症度は、それぞれ、軽度、中度、重度、または生命にかかわるの重症度に相当するグレード1、2、3、または4として、適切なCRFページに記録した。グレード1(軽度)は、日常活動には支障がないとして定義される。グレード2(中度)は、日常活動にいくつかの支障があるとして定義され、グレード3(重度)は、日常活動を行うことができないとして定義され、グレード4(生命にかかわる)は、死への直接の危険性があるとして定義される。
【0489】
盲検治験薬との有害事象または重篤有害事象の関係は、以下の定義に基づいて治験責任医師によって判定された。「関連なし」とは、治験薬とは関連がないとして定義される。「関連の可能性あり」とは、治験薬の投与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、これは、併発症または他の薬物/化学物質によっても説明され得る。「多分関連あり(Probably related)」とは、治験薬の投与与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、併発症または他の薬物および化学物質に起因する可能性は低く、投与中止(dechallenge)における臨床的に妥当な反応が起こる。臨床事象/検査所見の異常の関連性はまた、少なくとも理論的基礎において、いくつかの生物学的妥当性を有さなくてはならない。
【0490】
重篤と重度との明確化:「重度」という用語は、しばしば、特定の事象の強度(重症度)(軽度、中度、または重度の心筋梗塞等の場合)を説明するために使用されるが、事象それ自体は、比較的規模の小さい医学的意義(重度の頭痛等)である場合がある。これは、「重篤」とは同じではなく、通常、生命の危険または生活機能(functioning)を脅かすものをもたらす事象と関連する結果または作用基準に基づく。重篤度(重症度ではない)および因果関係は、規制報告義務を定義するための指針としての役割を果たす。
【0491】
有害事象のモニタリングおよび観察期間:本試験の目的のための観察期間は、患者がインフォームドコンセントを提出した時から、本試験の患者の最終評価まで延長された。安全性の目的のための最終評価は、本試験を完了し、長期試験の登録に選ばれなかった患者、または41週目の来院前に本試験を中断した、もしくは中止した患者のための、最後の注入から約30日後に実施される試験後の安全性評価として定義された。本試験を完了し、かつ長期臨床試験の登録に選ばれた患者については、有害事象は、患者がインフォームドコンセントを提出した時から41週目の来院までモニタリングした。治験責任医師は、観察期間の終了後、試験患者における有害事象を報告する必要があると見なした場合、医師は、いかに有害事象を文書化し、報告すべきかを判断するため、治験依頼者に連絡する。
【0492】
統計的方法:
一般的な統計的方法:有効性の統計分析のための2つのデータセット:1)包括解析(ITT)データセットおよび2)パープロトコル(PP)データセットが考えられた。ITTデータセットは、少なくとも1回の完全または部分的な治験薬の投与を受けた全ての無作為化した患者から構成される。PPデータセットは、ITTデータセットのサブセットであり、これには、本試験を41週間完了し、ベースラインおよび41週目の両方の一次有効性変数の測定値を収集し、予定された注入の投与のうちの少なくとも80%を受けた患者が含まれる。
【0493】
連続分布に従う変数については、表にまとめた要約は、n、平均、標準偏差、最小値、最大値、および中央値から構成された。主要な有効性変数のグラフは、治療群によって示された。カテゴリ変数については、表にまとめた要約は、治療群別の各カテゴリにおける頻度および割合を示すものから構成された。一次有効性変数は、治療群別に示され、これには、そのままの値:もともと報告された尺度の未変換の変数値;ベースラインからの値の絶対変化、すなわち、X−B(Bは、ベースライン値であり、Xは、ベースライン後の値である);およびベースラインからの値の変化率、すなわち、100*(X−B)/B(Bは、ベースライン値であり、Xは、ベースライン後の値である)が含まれる。
【0494】
仮説検定:本試験は、ベラグルセラーゼアルファの効果とイミグルセラーゼを比較した。本目的は、ベラグルセラーゼアルファが、0.025の有意水準で、少なくともイミグルセラーゼと同様に臨床的に良好であることであった。
【0495】
一次有効性のエンドポイントについての帰無仮説は、ベラグルセラーゼアルファにおけるベースラインから41週目までのヘモグロビン濃度の平均変化が、イミグルセラーゼにおけるベースラインから41週目までのヘモグロビン濃度の平均変化よりも少なくとも1g/dL下回るというものである。検定すべき仮説は、
H
0: μ
Vela− μ
IMIG < −1 vs. H
A: μ
Vela − μ
IMIG > −1
または
H
0: ベラグルセラーゼアルファは、平均ヘモグロビン応答に関して劣性である。
H
A: ベラグルセラーゼアルファは、平均ヘモグロビン応答に関して非劣性である、として提示することができる。
【0496】
スクリーニング不適格および患者の処分:本試験に登録するためにスクリーニングされた全ての患者の処分が、スクリーニング不適格の理由とともに示された。全ての無作為化した患者の処分は、治療群および来院別に表に示し、中断の理由は治療群別に表に示した。
【0497】
サンプルサイズの正当化:各治療群の試料サイズが、14人である場合、2つの群の0.025の片側t検定は、平均差が、−1超であるという代替の仮説を支持して、ヘモグロビンの平均差が、−1g/dL以下であるという帰無仮説を排斥する80%の検出力を有し、これは、予期された平均差は、0であり、一般的な標準偏差は、0.90であると仮定する。
【0498】
15%がドロップアウトすると仮定すると、合計32人の患者(治療群当たり16人の患者)を、本試験に登録した。
【0499】
有効性分析
解析集団:2つのデータセットは、有効性の統計分析のためであると考えられた(包括解析(ITT)データセットおよびパープロトコル(PP)データセット)。
【0500】
一次有効性分析:一次有効性エンドポイントは、2つの治療群間でのベースラインから41週目までのヘモグロビン濃度の平均変化である。一次分析は、ITT集団を用いて実行された。これは、ベラグルセラーゼアルファが、1型ゴーシェ病に罹患する患者を治療する際の有効性に関して、イミグルセラーゼより劣っていないことを示すように設計された非劣性無作為化対照臨床試験である。
【0501】
片側97.5%信頼区間を使用した。非劣性は、片側信頼区間、あるいは、イミグルセラーゼ治療の差が、低等価の限界よりも大きいという代替物に対して、治療差が、ヘモグロビンの低等価の限界以下(−1g/dL)であるという帰無仮説を検定するための仮説検定によって示された。つまり、信頼区間の片側に焦点を絞り、片側97.5%信頼区間[(a,∞)]の他の結果を無視し、ここで、aは、片側信頼区間の下界であり、有効性の結論を出すことができた。
【0502】
二次有効性分析:治療群間でベースラインからの変化を比較する二次有効性パラメータ(血小板数、肝臓および膵臓体積、キトトリオシダーゼ、およびCCL18)については、2つの治療群間で、ベースラインから41週目までの平均変化が、統計的に有意である(統計的に有意であるとは、p値が0.05を下回るものとして定義される)場合、統計学的検定が、評価された。95%信頼区間は、例えば、共変量としてベースラインの年齢が含まれる、共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて、2つの治療群間で、ベースラインからの平均変化の差異について示した。
【0503】
事象結果判定法までの時間(すなわち、ベースラインから1g/dL以上の第1のヘモグロビン応答時間)については、カプランマイヤー(積極限)生存曲線を、各治療群について示し、ログランク検定を使用して、治療群間の曲線を比較した。中央値の時間および95%信頼区間を、各治療群について示した。本試験の終了時(すなわち、41週目)で事象を経験しなかった患者は、41週目で打ち切った。41週目の評価前に中止した、または中断した患者、および中止した、または中断した時に、応答を達成しなかった患者は、その患者の最後の評価を知らされる時に打ち切った。加えて、応答対非応答の患者の割合を示し、フィッシャーの正確確率検定(Fisher’s Exact Test)を用いて、治療群間で比較した。
【0504】
安全性分析:少なくとも1回の治験薬の投与(または部分的な投与)を受けた全ての患者は、臨床的安全性および耐容性について評価された。安全性パラメータにおける正式な統計的検定は実施されなかった。バイタルサイン、12リード線心電図、臨床化学、血液学、および尿検査の安全性モニタリングを要約した。有害事象等のカテゴリ変数については、各有害事象を経験している患者数および割合を表に示した。有害事象を、事象の重症度別に要約した。薬物関連の有害事象を経験している患者数および割合、ならびに治験薬と関連すると見なされない事象も表示する。臨床検査室評価(血液学、血液生化学検査、尿検査、および抗ベラグルセラーゼアルファ抗体への判定)を使用して、ベラグルセラーゼアルファの安全性を評価した。
【0505】
実施例4:TKT034試験(イミグルセラーゼによる治療から移行した患者における多施設非盲検試験)
要約
本実施例は、イミグルセラーゼを以前受けている1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファの安全性および有効性を分析するための世界的規模の非盲検の12ヶ月間の試験を説明する。2歳以上の患者は、それらの先行のイミグルセラーゼ用量と同等の用量で、隔週1時間にわたる注入投与で、ベラグルセラーゼアルファを受けた。
【0506】
40人の患者は、ベラグルセラーゼアルファを受けた(18人の男性;4人 脾摘経験あり;年齢範囲、9〜71歳)。先行イミグルセラーゼ使用の中央値は、67ヶ月間(22〜192ヶ月間)であった。ベラグルセラーゼアルファ用量は、15〜22.5U/kg(n=14)(「15U/kg基」)、22.5〜37.5U/kg(n=12)(「30U/kg基」)、37.5〜52.5U/kg(n=7)(「45U/kg基」)、および>52.5U/kg(n=7)(「60U/kg基」)であった。ベラグルセラーゼアルファは、一般的に、ほとんどの有害事象(AE)が軽度または中度の重症度である、良好な耐容性を示した。11人の患者(28%)は、治験薬への関連の可能性あり、または多分関連あると見なされる有害事象を経験し、その大部分は、注入関連であると見なされた。生命にかかわる有害事象を経験した患者はいなかった。1つの重篤有害事象は、治療に多分関連があると見なされた:1人の患者は、初回注入中、グレード2の過敏反応があり、本試験を中断することを選択された。この患者は、注入時および2週間後、IgE、IgM、IgG、IgA、および中和抗体に対して陰性を示した。ベラグルセラーゼアルファに対するIgG抗体を形成した患者はいなかった。ヘモグロビン濃度、血小板数、肝臓体積、および膵臓体積は、1年間を通して、治療レベルを持続した。
【0507】
結論として、22ヶ月以上の間、イミグルセラーゼにより以前に治療したことがある1型ゴーシェ病に罹患する成人および小児患者は、ベラグルセラーゼアルファへの移行に成功し、12ヶ月を超える臨床疾患手段において安定性があった。
【0508】
試験の目的
本試験の第1の目的は、イミグルセラーゼにより以前に治療した1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与の安全性を評価することである。
【0509】
第2の目的は、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与後のベースラインからのヘモグロビン濃度の変化を評価すること、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与後のベースラインからの血小板数の変化を評価すること、およびベラグルセラーゼアルファの隔週投与後の腹部MRIによる、ベースラインからの肝体積および膵臓体積の変化を評価することであった。
【0510】
第3の/予備的な目的は、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与後のベースラインからの血漿キトトリオシダーゼおよびケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド18(CCL18)のレベルの変化を評価すること、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与後のベースラインからの左手および手首のX線撮影による、2〜17歳の患者の骨年齢の変化を評価すること、ベラグルセラーゼアルファの隔週投与後の2〜17歳の患者の発育速度およびタナー分類の変化を評価すること、腰椎および大腿骨頸の骨密度(DXA)(冠状断撮像を含む)、血清アルカリ性ホスファターゼ、N−テロペプチド架橋(NTx)、およびC−N−テロペプチド架橋(CTx)によって測定されるように、18歳以上の患者のゴーシェ病関連の局所および全身性骨疾患における、ベラグルセラーゼアルファ療法の長期効果をモニタリングするためのベースラインを確立すること、ならびに腰椎および大腿骨頸のMRIにより、2〜17歳の患者における、骨疾患を評価するためのベースラインを確立することであった。
【0511】
全般的試験設計
これは、I型ゴーシェ病のイミグルセラーゼ療法を現在受けている患者のためのベラグルセラーゼアルファ療法の安全性を評価するために設計された、多施設第II/III相非盲検試験である。イミグルセラーゼ用量と同じ単位数のベラグルセラーゼアルファを受けるために、41人の患者が登録された。用量は、15U/kg〜60U/kgの範囲であった。患者は、試験登録前の6ヶ月間、同用量のイミグルセラーゼを受けていた。各患者の試験の全持続期間は、約14ヶ月間(スクリーニングから試験終了および/または必要に応じて、追跡調査まで)であった。
【0512】
本試験は、以下の通りの5つの相から構成された。スクリーニング(−14日目〜−4日目)、ベースライン(−3日目〜0日目(初回投与前))、治療相:1週目(1日目;初回投与)から51週目(合計26回の注入が、患者ごとに実施された)まで;試験終了の来院:53週目、追跡調査:最終注入から30日間後(53週目の評価前に中断/中止した患者について、または本試験は完了したが、その後の長期臨床試験の登録に選ばれない患者について)。
【0513】
書面によるインフォームドコンセントを提出した患者(または親/法的保護者)は、患者の登録の適格性を判定するために、初回投与前の2週間以内にスクリーニング評価を行った。試験の適格性を判定するために、血液試料は、ヘモグロビン濃度および血小板数を評価するために、スクリーニング中、各患者から収集した。
【0514】
さらなる血液試料は、統計分析の目的のためのヘモグロビン濃度および血小板数の評価のためのスクリーニング中、収集された。
【0515】
治験薬の初回用量の投与は、1週目(1日目)として定義された。ベラグルセラーゼアルファ注入は、合計26回の注入で、12ヶ月間(51週間)、隔週投与された。患者は、イミグルセラーゼ用量と同じ単位数のベラグルセラーゼアルファを受けた。用量は、15U/kgから60U/kgの範囲であった。注入時間は、60分間(1時間)であった。注入持続期間の増加(例えば、2時間)は、ソースの文書化および適切なCRFにおいて文書化された。注入は、持続時間において、1時間未満ではなかった。
【0516】
各患者への初めの3回のベラグルセラーゼアルファ注入が臨床施設で投与された。治療関連の重篤有害事象またはベラグルセラーゼアルファ注入関連の有害事象を経験しなかった患者は、治験責任医師の裁量および指示によって、資格のある訓練を受けた医療関係者によって、在宅でその後の注入を受けてもよい。注入関連の有害事象を経験した患者は、在宅注入への移行を考慮するための試験中、後の時点で再評価され得る。在宅療法としてベラグルセラーゼアルファを受けている患者は、7、13、19、25、31、37、45、51、および53週目に、臨床施設に戻る必要があった。
【0517】
本試験完了の来院は、53週目として定義される。患者は、1)51週目の治療期間が完了する、ならびに2)51週目および53週目に、本試験の来院を完了すると、本試験が完了したと見なされた。
【0518】
本試験を完了した患者は、その後の長期非盲検臨床試験に登録する機会を与えられた。その後の長期非盲検臨床試験の登録に選ばれた患者については、本試験(TKT034)のための51週目および53週目の来院からのある種の評価は、その試験のベースライン評価として使用され、患者は、53週目の来院時に、その来院についての全ての評価が完了し、その後の長期非盲検臨床試験に参加するための書面によるインフォームドコンセントを提出した後、その後の長期非盲検臨床試験のための初回注入を受ける。したがって、それは、患者が、2つの試験にわたって、継続的なベラグルセラーゼアルファ治療を受けることを意味した。本試験を完了したが、その後の長期非盲検臨床試験の登録に選ばれなかった患者は、それらの最後の注入から30日後、施設来院または電話による安全性の評価(有害事象および併用薬の収集のため)を得る。
【0519】
試験集団の選択
少なくとも1回の注入(または部分的な注入)を受けた全ての登録患者は、ITT患者集団に含まれた。
【0520】
適格な参加者は、1型ゴーシェ病(白血球中の欠損グルコセレブロシダーゼ活性、または遺伝子型分析によって)であると診断され、継続的に最低30ヶ月間イミグルセラーゼによる一貫した治療を受けた、2歳以上の男性または女性であり、1人の患者は、イミグルセラーゼによる継続的に22ヶ月間の参加が認められた。
【0521】
参加者が、10g/dL以下のヘモグロビン濃度および80×10
3血小板/mm
3以下の血小板数の両方を有した場合、スクリーニング前の6ヶ月間、不安定なヘモグロビン濃度(スクリーニング値の±1g/dLの範囲を超える)または血小板数(スクリーニング値の
+20%を超える)を有した場合、;2型または3型ゴーシェ病を有した(または有する疑いがあった)場合、イミグルセラーゼに対するアナフィラキシーショックを経験した場合、試験に参加する前の6ヶ月間に、イミグルセラーゼによる一貫性のない治療を有する、もしくはミグルスタットを受けたことがある場合、またはスクリーニングの12ヶ月以内に、放射能で確認された活性のある臨床的に有意な膵臓感染もしくは骨の壊死の悪化を有した場合、参加者は、除外された。
【0522】
他の除外基準には、試験に参加する前の30日間以内に、あらゆる治験薬またはデバイスによる治療;HIV、またはB型肝炎もしくはC型肝炎に対する陽性試験;スクリーニング時、非ゴーシェ病関連の貧血、または試験データに影響を及ぼし得るあらゆる有意な併存疾患が含まれた。妊娠または授乳中の女性は、除外され、出産する可能性がある女性は、常に、医学的に許容される避妊方法を用いることを必要とされた。
【0523】
試験治療
治療評価:患者は、彼らのイミグルセラーゼ用量と同じ単位数で、隔週ベラグルセラーゼアルファ注入を受けた。患者の現在のイミグルセラーゼ用量を、ベースラインで記録した。ベラグルセラーゼアルファ用量は、15U/kg〜60U/kgの範囲であった。
【0524】
治療スケジュール:患者は、1週目(1日目)に初回注入を受けた。全ての患者は、12ヶ月間(51週間)、隔週1回、ベラグルセラーゼアルファを受けた;したがって、合計26回の注入を投与するものとする。
【0525】
ベラグルセラーゼアルファの全ての用量は、1U/kg/分間の最大速度で、継続的静脈内注入として投与された。注入時間は、60分間(1時間)であった。注入持続期間の増加(例えば、2時間)は、ソースの文書化および適切なCRFにおいて文書化された。注入は、持続時間において、1時間未満でないかもしれない。患者は、試験に参加する前の最長30日間、および試験に参加する前の最短14日間、最終イミグルセラーゼ用量を受けた。
【0526】
用量の算出:ベースラインから、または13、25、または37週目に用量を算出するために使用された体重の5%以上の体重の変化は、治験薬の用量の再算出の必要があった。
【0527】
用量の調節:患者は、臨床的パラメータ(すなわち、ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積)の変化について、治療期間を通してモニタリングされた。患者が、これらのパラメータの臨床的に有意な変化を示した場合、治験責任医師は、15U/kgまで患者の用量を増加させるためのオプションを評価した。以下の4つのうち2つ以上の基準を満たし、2つを超える継続的な評価が一貫した場合、用量の調節が、認められた。1g/dL超のヘモグロビン濃度のベースラインからの減少;20%超の血小板数のベースラインからの減少;臓器の触診によって示されるような、およびMRIによって測定される場合、ベースラインと比較して15%超であることが確認されるような、肝体積の増加;ならびに、臓器の触診によって示されるような、およびMRIによって測定される場合、ベースラインと比較して15%超であることが確認されるような、膵臓体積の増加。
【0528】
臨床パラメータ値が、3ヶ月以内にベースライン値まで戻らなかった場合、治験責任医師は、15U/kgの増加量まで用量を増加させる選択肢があった。60U/kgの用量を受けている患者に提供される用量の増加はなく、60U/kgを超える用量は、許容されなかった。患者が、60U/kgの最大用量に対して応答しない場合、この患者は、治験責任医師の臨床上の判断に基づいて、適切であると見なされる場合、中止する場合がある。
【0529】
ベラグルセラーゼアルファ投与
ベラグルセラーゼアルファ投与用の一般的な取扱説明書:ベラグルセラーゼアルファは、静脈投与した。治験薬注入は、その週のほぼ同日に行われたが、患者スケジューリングを促進するために、標的日の14日(±3日)ごとに行われる場合がある。もし可能であるならば、欠損した注入は避けるべきである。患者は、予定された投与から17日間以内に投与されなかった場合、この患者は、本試験において継続することが患者に対する承認後、できるだけ早く次の注入を受ける。前回の注入から早くとも7日後に、次の注入を得ることは許容され得る。その後の注入は、元のスケジュールに戻る。
【0530】
ベラグルセラーゼアルファ投与用の在宅注入の説明:初めの3回のベラグルセラーゼアルファ注入は、臨床施設で実施された。初めの3回の投与後、治療関連の重篤有害事象または注入関連の有害事象を経験しなかった患者は、在宅でその後の注入を受けてもよい。注入関連の有害事象を経験した患者は、在宅注入への移行を考慮するための試験中、後の時点で再評価され得る。在宅療法としてベラグルセラーゼアルファを受けている患者は、7、13、19、25、31、37、45、51、および53週目に、臨床施設に戻る必要があった。
【0531】
在宅設定では、バイタルサインおよび有害事象の文書化は、各来院時に収集された。
【0532】
注入関連の有害事象の管理:注入関連の有害事象は、1)注入中、あるいは注入を開始してから12時間以内に始まる、および2)治験薬への関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として定義される。
【0533】
試験薬の説明:治験薬の説明ベラグルセラーゼアルファは、臨床試験施設に正規の供給源によって供給され、出荷され、2〜8℃で貯蔵される、凍結乾燥製品であった。
【0534】
ゴーシェ病固有の治療歴:スクリーニング時での、患者の現行のイミグルセラーゼ投与を含む、全てのゴーシェ病固有の治療を記録した。患者の初期のベラグルセラーゼアルファ用量は、記録された現行のイミグルセラーゼ用量に基づいた。
【0535】
ヘモグロビンおよび血小板の病歴値:試験に参加する前の30ヶ月以内のヘモグロビン濃度および血小板数の全ての評価が収集され、患者の適格性を判定するために再調査を行った。
【0536】
ゴーシェ病およびキトトリオシダーゼの遺伝子型:スクリーニング時のみ、全ての患者は、ゴーシェ病および血漿キトトリオシダーゼの遺伝子型のために採血された血液試料があった。
【0537】
バイタルサイン:記録されたバイタルサインパラメータには、脈拍、血圧、呼吸速度、および体温が含まれた。
【0538】
以下のスケジュールにより、全ての注入の来院時に、バイタルサインを記録するために追跡調査した。注入開始(注入を開始する前の10分以内)、注入中(30分(±5分))、注入後(注入が完了してから5分以内、注入が完了してから30分(±5分)以内、および注入が完了してから60分(±5分)以内)。
【0539】
および53週目に、実施された。健康診断には、全体的な様子、内分泌物、頭頸部、心臓血管、眼、腹部、耳、非尿生殖器、鼻、皮膚、喉、筋骨格、胸部および肺、ならびに神経系が含まれた。身体所見のあらゆる異常変化は、適切なCRFページの有害事象として記録した。
【0540】
身長および体重:身長および体重は、ベースラインの来院時、ならびに13、25、37、および51週目に記録した。発育速度は、身長および体重測定を用いて算出され、タナー分類と相関させた。
【0541】
12リード線心電図:12リード線心電図は、ベースラインの来院時、ならびに13、25、37、および51週目に実施された。各12リード線心電図には、PR、QRS、QT、およびQTc間隔、ならびに心拍数の評価が含まれた。
【0542】
臨床検査試験:血液および尿試料は、以下の評価について下に記載されるように収集した。
【0543】
血液学:血液試料は、スクリーニングおよびベースラインの来院時、ならびに7、13、19、25、31、37、45、51、および53週目に収集された。以下の血液生化学検査パラメータは、差動による完全血球算定(CBC)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPPT)、網状赤血球数(施設の地域検査室によって実施された)、血小板数、およびプロトロンビン時間(PT)を評価した。スクリーニング時、ベースライン時、ならびに毎回の試験の来院時(1週目の訪問を除く)、血液試料を、ヘモグロビン濃度および血小板数を測定するために採血した。
【0544】
さらなる血液試料は、統計分析の目的のためのヘモグロビン濃度および血小板数の評価のために、スクリーニング中、採血された。
【0545】
血液生化学検査:血液試料は、ベースラインの訪問時、および13、25、37、51、および53週目に、血清生化学検査のために採血された。
【0546】
以下の血清化学パラメータを評価した:ナトリウム、総ビリルビン、カリウム、アルカリ性ホスファターゼ
*、グルコース、アラニンアミノトランスフェラーゼ、全カルシウム、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、総タンパク質、乳酸脱水素酵素、アルブミン、ガンマグルタミン酸転移酵素、クレアチニン、クレアチニンホスホキナーゼ、尿素窒素、CTx、NTx
*(
*の結果は、骨バイオマーカーの評価のために使用された)。スクリーニング時に、葉酸および/またはビタミンB
12欠損関連の貧血を有した患者、および試験酸化基準を満たさなかった患者は、スクリーニング不適格と見なされた。これらの患者は、臨床施設の標準的な業務に従って、治験責任医師の裁量で、最長12週間、葉酸および/またはビタミンB
12欠損関連の貧血のために治療され得る。このような患者は、葉酸および/またはビタミンB
12治療計画を完了した後、本試験のために再度スクリーニングされ得る。
【0547】
尿検査:尿試料は、ベースラインの来院時、ならびに13、25、37、51、および53週目に、尿検査のために収集された。以下の尿検査パラメータは、pH、巨視的評価、および微視的評価を評価した。
【0548】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定:全ての患者は、血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定のために、ベースライン時でのみ、血液試料を得た。患者は、彼らの抗イミグルセラーゼ抗体状態に関わらず、本試験において、登録に適した。抗イミグルセラーゼ抗体陽性であった患者は、本試験に参加することが可能であった。これらの血液試料は、抗イミグルセラーゼ抗体の存在を判定するために評価された。
【0549】
血清抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定:血液試料は、ベースラインの訪問時、および7、13、19、25、31、37、45、および51週目に、抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定のために採血された。抗ベラグルセラーゼアルファ抗体の判定のために採血された血液試料が、評価された。これらの試料は、抗体連結型免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてスクリーニングされた。
【0550】
有害事象:有害事象は、本試験を完了し、その後の長期の非盲検臨床試験の登録に選ばれなかった患者、または53週目の来院前に、本試験を中断、または中止した患者について、患者が署名済みのインフォームドコンセントを提出した時から最終の注入から30日間後までの試験を通してモニタリングされた。本試験を完了したが、その後の長期の非盲検臨床試験の登録に選ばれなかった患者については、有害事象は、インフォームドコンセントから本試験(TKT034)の53週目の来院までモニタリングされた。
【0551】
既存および併存の病気:ベースライン時に存在するさらなる病気は、併存する病気として見なされ、CRFの適切な病歴のページに文書化された。初発するか、もしくは本試験中検出される病気、または本試験中併存する病気の悪化は、有害事象として見なされ、CRF等に文書化された。
【0552】
有効性評価のための試験手順
ヘモグロビン濃度:ヘモグロビン濃度は、本明細書に記載の時点で測定された。ベースラインから12ヶ月時点までのヘモグロビン濃度の変化は、本試験の第2のエンドポイントであった。
【0553】
血小板数:血小板数は、本明細書に記載の時点で測定された。ベースラインから12ヶ月時点までの血小板数の変化は、本試験の第2のエンドポイントであった。
【0554】
腹部MRIにより測定された肝体積および膵臓体積:患者は、ベースライン時、25週目、および51週目に、肝臓および膵臓の定量的腹部MRIを行った。ベースラインから12ヶ月時点までの肝体積および膵臓体積の変化は、本試験の第2のエンドポイントであった。
【0555】
血漿キトトリオシダーゼおよびCCL19値:血液試料は、ベースラインの来院時、ならびに13、25、37、51、および53週目に、血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18値の評価のために、採血された。ベースラインから12ヶ月時点までのキトトリオシダーゼおよびCCL18値の変化は、本試験の第3のエンドポイントであった。
【0556】
発育速度およびタナー分類:2〜17歳の患者の発育は、本明細書で規定された時点で評価した。発育速度は、本試験中の一定の時点で記録した身長および体重測定を用いて算出し、タナー分類と相関させた。ベースラインから12ヶ月時点までの発育速度よびタナー分類の変化は、本試験の第3のエンドポイントであった。
【0557】
骨格成長:2〜17歳の患者は、骨年齢の評価のために、ベースライン時および51週目に、左手および手首のX線撮影を行った。ベースラインから12ヶ月時点までの2〜17歳の患者の骨格成長の変化は、本試験の第3のエンドポイントであった。
【0558】
さらなる試験手順
骨バイオマーカー:ベースライン時でのみ、18歳以上の患者は、ゴーシェ病関連の局所および全身骨疾患を判定するために、冠状断撮像を含む、腰椎および大腿骨頸のDXAを行った。骨量の減少および脱塩はまた、血清アルカリ性ホスファターゼ、NTx、およびCTxを測定することによって判定された。これらのパラメータの結果は、ベースライン時でのみ、臨床検査試験のために採血された血液試料から得られた。
【0559】
2〜17歳の患者の大腿骨頸および腰椎のMRIは、ベースライン時に得た(すなわち、同時に、患者は、肝臓および膵臓のMRIを行った)。いかなる治療効果が、本試験中、これらのパラメータに対して明らかであることは、期待されず、したがって、測定は、その後の非盲検の長期臨床試験中、これらのバイオマーカーをモニタリングするための参照点を確立するために、ベースライン時でのみ収集された。
【0560】
有害事象
有害事象の定義:有害事象(AE)は、身体的兆候、症状、および/または臨床試験のいかなる相に生じる検査室での変化によって示されるような、治験薬関連であると見なされるか、または見なされないに関わらず、解剖学的、生理学的、または代謝機能の任意の有毒な、病理、または意図的ではない変化である。これには、先行する状態の再燃が含まれる。有害事象は、インフォームドコンセントから、治験薬の最終投与から30日間後まで、および/または事象が消散する/安定化される、あるいは成果を達するまで、いずれか早い方で収集された。53週目の来院前に、中断した、または中止した患者の有害事象は、ベラグルセラーゼアルファの最終注入から最長30日まで追跡調査した。
【0561】
有害事象には、本試験の開始時に存在する状態の悪化(性質の変化、重症度、または頻度);病気の併発;薬物間相互作用;併用薬に関連する、または関連する可能性がある事象;異常な試験所での値(これは、治験責任医師が臨床的に重要であると見なす正常の範囲内でベースラインからの有意な推移を含む);健康診断、バイタルサイン、体重、およびECGの臨床的に有意な異常を含む。
【0562】
加えて、有害事象はまた、著しく範囲外になり、治験責任医師によって臨床的に有意であると判定された予期しない検査室での値も含み得る。予期しない範囲外の値の事象では、検査試験は、それが正常値に戻るまで、または患者の安全性には危険性がないことが説明され得るまで繰り返される。
【0563】
注入関連の有害事象の定義:注入関連の有害事象は、1)注入中、あるいは注入を開始してから12時間以内に始まる、および2)治験薬への関連の可能性あり、または多分関連ありと判断される、有害事象として定義された。注入前に実施された、プロトコル定義された試験および評価(例えば、検査試験、ECG、および健康診断)と関連する有害事象と同様に、注入前に生じた他の有害事象は、注入関連の有害事象として定義されなかった。注入関連の有害事象は、上記のように管理された。
【0564】
重篤有害事象の定義:重篤有害事象(SAE)は、以下の結果のいずれかをもたらす任意の用量で生じる任意の有害事象である:死亡、生命にかかわる、入院を必要とする、既存の入院の延長を必要とする、持続的もしくは重大な障害/不能、および先天異常/出生異常。
【0565】
死亡に至らないかもしれない、生命にかかわる、または入院を必要とする重大な医療事象は、適切な医療判断に基づき、患者を危険にさらし、上記の結果のうちの1つを防止するために医療または手術の介入を必要とする場合に、重篤有害事象として見なされる場合がある。
【0566】
生命にかかわる有害事象は、最初の報告者の観点から、それが生じた際、その有害事象から直接死の危険性に患者を置く有害事象として定義される(すなわち、さらに重症な状態で生じた場合、死を招いたかもしれない有害事象は含まない)。
【0567】
有害事象と重篤有害事象の分類:国立癌研究所共通毒性基準(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria、NCI CTC) Version 3.0の評価尺度を、有害事象の重症度を評価する場合に参照した。有害事象が、NCI CTCに記載されなかった場合、重症度は、以下の尺度に基づいて記録された。全ての有害事象/重篤有害事象の重症度は、それぞれ、軽度、中度、重度、または生命にかかわるの重症度に相当するグレード1、2、3、または4として、適切なCRFページに記録した。グレード1(軽度)は、日常活動には支障がないとして定義される。グレード2(中度)は、日常活動にいくつかの支障があるとして定義され、グレード3(重度)は、日常活動を行うことができないとして定義され、グレード4(生命にかかわる)は、直接死の危険性があるとして定義される。
【0568】
盲検治験薬との有害事象または重篤有害事象の関係は、以下の定義に基づいて治験責任医師によって判定された。「関連なし」とは、治験薬とは関連がないとして定義される。「関連の可能性あり」とは、治験薬の投与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、これは、併発症または他の薬物/化学物質によっても説明され得る。「多分関連あり(Probably related)」とは、治験薬の投与への妥当な時間系列がある臨床事象/検査所見の異常として定義されるが、併発症または他の薬物および化学物質に起因する可能性は低く、投与中止(dechallenge)における臨床的に妥当な反応が起こる。臨床事象/検査所見の異常の関連性はまた、少なくとも理論的基礎において、いくつかの生物学的妥当性を有さなくてはならない。
【0569】
重篤と重度との明確化:「重度」という用語は、しばしば、特定の事象の強度(重症度)(軽度、中度、または重度の心筋梗塞等の場合)を説明するために使用されるが、事象それ自体は、比較的規模の小さい医学的意義(重度の頭痛等)である場合がある。これは、「重篤」とは同じではなく、通常、生命の危険または生活機能(functioning)を脅かすものをもたらす事象と関連する結果または作用基準に基づく。重篤度(重症度ではない)および因果関係は、規制報告義務を定義するための指針としての役割を果たす。
【0570】
有害事象のモニタリングおよび観察期間:本試験の目的ための観察期間は、患者が署名済みのインフォームドコンセントを提出した時から、本試験の患者の最終評価まで延長された。安全性の目的のための最終評価は、本試験を完了したが、その後の長期非盲検臨床試験の登録に選ばれなかった患者、または53週目前に本試験を中断した、もしくは中止した患者のための、最後の注入から約30日後に実施される試験後の安全性評価として定義された。その後の長期非盲検臨床試験の登録に選ばれた患者の有害事象は、53週目までモニタリングされ;本試験のための53週目の来院現在で消散しなかった有害事象は、その後の長期非盲検臨床試験の患者の病歴に記録された。
【0571】
統計的方法:
一般的な統計的方法:包括解析(ITT)患者集団は、少なくとも1回の注入(完全または部分的な注入)を受けた全ての登録患者として定義された。統計的データ解析は、ITT集団において実施された。ベースライン時およびその後の試験の来院時に収集された継続的データは、記述統計学(n、平均値、中央値、最小値、最大値、および標準偏差)を用いて要約された。カテゴリデータは、頻度および割合として要約された。記述統計学は、対象属性およびベースライン特性に従って、ITT集団中の全ての患者について示された。
【0572】
第2のエンドポイントの解析(すなわち、臨床パラメータ)は、以下に説明されるように、非劣性仮説に基づいた。
【0573】
サンプルサイズの正当化:これは、安全性試験であり、本試験について、単一の第1の安全性結果因子を確認するのは困難であった。しかしながら、有効性パラメータに基づいて選択されたサンプルサイズは、あまり一般的ではない有害事象の評価には好適であった。
【0574】
少なくとも26人の患者の包括は、安全性および耐容性における基本的な情報を提供した。TKT025試験から、6ヶ月間での患者の平均変化は、ベースラインからの有害事象(AE)のいかなる悪化も示さない。一部の患者は、有害事象を消散し、一部の患者は、有害事象を悪化させる。患者が自然変動すると仮定すると、ある1人の患者への悪化が見られる可能性は、11%である。この11%の欠損率は、1人の患者についてのものである。本試験における26人全ての患者が、重篤有害事象を有さないという尤度は、重篤有害事象を有さない患者1の尤度、かけることの重篤有害事象を有さない患者2の尤度、かけることの( . . . 等 . ..)重篤有害事象を有さない患者26の尤度と等しい。それは、26人のうちの少なくとも1人の患者が、ベースラインから有害事象の悪化を示す、95%の尤度である[1−(.89)
26=0.95]。言い換えれば、事象の確率が、0.11である場合、26人のサンプルサイズの少なくとも1つの事象を観察する確率は、0.95である。そうでなければ、事象が観察されない場合、95%の信頼区間において、稀な事象の確率に対して、0.11の上限を得るためには、26人のサンプルサイズを必要とする。
【0575】
帰無仮説は、それぞれの選択された臨床パラメータ(ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積)のベースライン(すなわち、イミグルセラーゼ治療終了)から12ヶ月時点までの平均変化が、事前に指示された臨床的に有意な値内であるというものである。ヘモグロビンのベースラインから53週目までの臨床的に有意な変化は、1gm/dL以上の変化、および血小板数の20%の変化として定義された。正規化した肝体積および膵臓体積のベースラインから53週目までの変化は、15%以下の増加として定義された。26人の患者のサンプルサイズの推定値は、0.671の標準偏差、0.05の両側アルファ水準および80%検出力を有する、対応のあるt検定の平均値に基づいた。
【0576】
一次解析:少なくとも1回の完全なまたは部分的な治験薬の投与を受けた全ての患者は、臨床的安全性および耐容性について評価された。安全性モニタリングのために収集されたバイタルサイン、臨床化学、および血液学は、各患者について記載され、異常値をフラグ化した。有害事象等のカテゴリ変数については、各有害事象を経験している患者数および割合を表に示した。有害事象を、事象の重症度別に要約した。薬物関連の有害事象を経験している患者数および割合、ならびに治験薬と関連すると見なされない事象も表示した。注入関連の有害事象反応および抗ベラグルセラーゼアルファ抗体形成の速度も要約した。
【0577】
一次臨床的変数は、イミグルセラーゼにおいて臨床的に安定したI型ゴーシェ病に罹患する患者に隔週投与されたベラグルセラーゼアルファの安全性を評価することであった。安全性は、各試験の来院時に、バイタルサインを評価し、有害事象(タイプ、頻度、および重症度別に)を文書化することによって、ならびに、必要とされる来院時に、健康診断を行い、臨床検査による評価の変化によって評価することによって、評価された。
【0578】
全ての有害事象は、MedDRA Coding Dictionaryを用いてコードされた。有害事象の要約は、一般に、患者が治験薬を初回注入した(治療中に発生した)後に生じる全ての有害事象に基づいた。
【0579】
二次解析:本試験の第2のエンドポイントは、ベースラインから12ヶ月時点までのヘモグロビン濃度の変化;ベースラインから12ヶ月時点までの血小板数の変化;腹部MRIによるベースラインから12ヶ月時点までの膵臓体積の変化(変化率(%)として評価)(膵臓体積は、体重別に正規化された);および腹部MRIによるベースラインから12ヶ月時点までの肝体積の変化(変化率(%)として評価)(肝体積は、体重別に正規化された)である。
【0580】
各臨床活性パラメータについては、対立仮説は、ベースライン(すなわち、イミグルセラーゼ治療終了)から12ヶ月時点までの平均変化が、評価されるべきパラメータに対して特定の臨床的に有意なレベル内であった(ここで、ヘモグロビンのベースラインからの集団平均変化は、1g/dL以内であり、血小板数は、20%以内であり、肝体積および膵臓体積は、15%以内である)。これは、これらの臨床パラメータについて、ベースラインからの真の差異の両側の90%信頼区間を用いて評価した。例えば、ベラグルセラーゼアルファの有効性は、ヘモグロビンのベースラインからの変化の信頼区間が、−1〜1g/dLの区間内である場合に、終了した。
【0581】
治験依頼者の期待は、平均ヘモグロビン濃度が、12ヶ月間にわたって本質的に一定であったことである。例えば、ヘモグロビンについて、二次有効性解析のために、90%信頼区間を用いる代わりに、それぞれ0.05のアルファ水準で、以下の対の統計的仮説検定を使用することができるだろう。
H
01:μ
d > 1対H
11: μ
d < 1
H
02:μ
d < −1 対H
21: μ
d > −1
【0582】
第1の対立仮説(H
11)を支持して、第1の帰無仮説(H
01)を棄却することによって、ヘモグロビンについて、ベースラインからの治療平均変化は、ベースライン値よりも高い1g/dL未満である、0.05の有意水準で終了する。第2の対立仮説(H
21)を支持して、第2の帰無仮説(H
02)を棄却することによって、ヘモグロビンについて、ベースラインからの治療平均変化は、ベースライン値よりも低い1g/dL超である、0.05の有意水準で終了する。H
01およびH
02は、同時に真であり得ないため、全体のI型の誤差率は、仮定検定の上記の対について、0.05である。したがって、対立仮説を支持して両方の帰無仮説を棄却することによって、治療(ベラグルセラーゼアルファ)のヘモグロビン濃度が、−1〜1g/dLの区間内である0.05の有意水準で終了する。
【0583】
治験依頼者は、信頼区間法が、仮説検定を用いた対応する方法よりも容易に解釈されると考える。したがって、信頼区間法は、二次的推理に使用される。
【0584】
三次解析:本試験の第3のエンドポイントは、ベースラインから12ヶ月時点までの血漿キトトリオシダーゼおよびCCL18値の変化;ベースラインから12ヶ月時点までの2〜17歳の患者における骨年齢の変化;ならびに、ベースラインから12ヶ月時点までの発育速度およびタナー分類の変化である。
【0585】
第3のエンドポイントは、各時点での記述的統計学(平均値、中央値、標準偏差、最小値、および最大値)を用いて要約された。データが、ベースライン時、および本試験中の他の時点で収集されたエンドポイントについて、群内の変化を分析した。
【0586】
亜群の分析:さらなる分析は、2〜17歳の患者に特定して実行された。また、ヘモグロビンベースライン値に関しては、疾患重症度に対する分析において考慮がなされた。
【0587】
結果
40人の患者が、包括解析(ITT)の解析に含まれ(表19)、38人の患者(93%)が、本試験を完了した。1人の患者は、治験薬を受ける前に中断し;15U/kg群の2人の患者が中断し、1人は、ベラグルセラーゼアルファを伴う初回注入中のアナフィラキシー様反応のため、1人は、ゴーシェ病関連の症状の改善が十分でないという認識のため、31週目で中断した。
【0588】
患者は、先行のイミグルセラーゼ計画に対して同じ単位数で、ベラグルセラーゼアルファを受けた。先行のイミグルセラーゼ使用の中央値は、67ヶ月間(22〜192ヶ月間)であった。ベラグルセラーゼアルファ用量は、4つの範囲:
<22.5U/kg(n=14)、22.5〜37.5U/kg(n=12)、37.5〜52.5U/kg(n=7)、および>52.5U/kg(n=7)にグループ分けされた。治験責任医師は、患者が、ヘモグロビンまたは血小板数において臨床的に有意な変化を示す場合、ベラグルセラーゼアルファ用量を(隔週で、最大60U/kgまで)増加させる選択肢があった。本試験中、用量の調節はなされなかった。
【0589】
【表19】
【0590】
臨床パラメータは、1年間を通して、治療レベルで持続した(表20)。
【0591】
【表20】
【0592】
ベラグルセラーゼアルファは、一般的に、ほとんどの有害事象(AE)が軽度または中度の重症度である、良好な耐容性を示した(表21)。最も頻繁に報告された有害事象は、鼻咽頭炎(8人/40人の患者)、関節痛(9人/40人の患者)、および頭痛(12人/40人の患者)であった。概して、40人のうち11人の患者(28%)は、治験薬への関連の可能性あり、または多分関連あると見なされる有害事象を経験し、これらの事象の大部分は、注入関連であると見なされた。生命にかかわる有害事象を経験した患者はいなかった。1つの重度の有害事象は、治療への関連の可能性ありと見なされ、これは、重度の過敏反応を有した1人の患者に生じた。この患者は、注入時および2週間後の両方で、中和抗体を含む、全ての4つのアイソタイプ(IgE、IgM、IgG、IgA)に対して陰性を示した。1人の患者(15U/kg群)は、中断をもたらすアナフィラキシー様反応を経験したが、有害事象により中断した他の患者はいなかった。ベラグルセラーゼアルファに対してIgG抗体を形成した患者はおらず、これは、スクリーニング時に、抗イミグルセラーゼアルファ抗体に対して陽性を示した3人の患者を含んだ。
【0593】
【表21】
【0594】
各患者に対して初めの3回の注入は、臨床施設で投与され、この後、薬物関連の重度の有害事象または注入関連の有害事象を経験しなかった患者は、在宅でその後の注入を受けるのに適していた。本試験中、40人のうち25人(63%)の適格な患者は、少なくとも1回の在宅療法を受け、これは、15U/kg群において、10人の患者(67%)、30U/kg群において、6人(50%)、45U/kg群において、5人(83%)、および60U/kg群において、4人(57%)であった。
【0595】
ヘモグロビン濃度について、ベースラインの平均変化は、−0.1g/dLであり、−0.3〜0.1g/dLの90%信頼区間があり、±1g/dLの所定の有効性基準内であった。血小板数について、ベースラインからの変化率(%)は、+7.0%であり、0.5〜13.5%の90%信頼区間があり、±20%の所定の有効性基準内であった。肝体積について、ベースラインからの変化率(%)は、−0.0%であり、−2.6〜2.6%の90%信頼区間があり、±15%の所定の有効性基準内であった。膵臓体積について、ベースラインからの変化率(%)は、−5.6%であり、−10.8〜−0.4%の90%信頼区間があり、±15%の所定の有効性基準内であった。ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積は、臨床的に有意な変化に対する事前に指示された有効性基準によって示されるように、1年間のベラグルセラーゼアルファ治療を通して治療レベルで持続した。ヘモグロビンの平均変化および血小板数および臓器体積の平均変化率を、
図15〜18に示す。各パラメータについて、同様の結果が、4つの用量群を通して見られた。
【0596】
血漿キトトリオシダーゼおよび血漿CCL18の変化率(%)を、
図19および20に示す。両方のバイオマーカーのレベルは、持続し、12ヶ月の治療期間を通して減少する可能性があった。
【0597】
実施例5:HGT−GCB−058試験
要約
HGT−GCB−058は、新たに診断された(治療を受けたことがなかった)、またはイミグルセラーゼからベラグルセラーゼアルファに移行した、1型ゴーシェ病に罹患する患者における、ベラグルセラーゼアルファの安全性を観察するための多施設非盲検治療試験である。本試験設計は、2歳以上の男性または女性の患者のためのものであった。ベラグルセラーゼは、1時間の静脈内(IV)注入によって、15〜60U/kgの用量で、隔週投与され、患者は、先行のイミグルセラーゼ用量と同じ単位数のベラグルセラーゼアルファ(15U/kg未満のイミグルセラーゼを隔週で受けている患者は、15U/kgのベラグルセラーゼアルファを受けた)を受けた。注入速度は、最大1U/kg/分であった。
【0598】
患者および方法
HGT−GCB−058は、供給上の制約のため、そうでなければ限定された、またはイミグルセラーゼへのアクセスがない患者のための代替の治療選択肢を提供するために開始された。第1のエンドポイントは、ベラグルセラーゼアルファの安全性を観察することであった。
【0599】
HGT−GCB−058について、第1の施設で開始されてから3ヶ月以内に、米国中の20個の臨床施設は、患者を登録した。2009年9月1日から2010年1月31日の間で、150人超の患者が、HGT−GCB−058に登録し、少なくとも1回のベラグルセラーゼアルファの注入を受けた。わずか3人の患者が治療を受けたことがなく、その他の全ては、イミグルセラーゼにより以前治療していた。
【0600】
予備的安全性の結果
中断:10%未満;コンセントおよびその他の中止(10%未満);重篤有害事象を含む有害事象の経験(2%未満)。
【0601】
治療中に発生した有害事象(TE−AE):
治療を受けたことがない患者(n=3):重度の有害事象なし;重篤有害事象なし;2人の患者は、中度の有害事象:頭痛(中度)および背痛(中度)(注入関連〜関連の可能性あり)を経験した。
【0602】
イミグルセラーゼにより以前に治療(n>150):35.8% 少なくとも1つの治療中に発生した有害事象;18.2% 少なくとも1つの関連の可能性あり/多分関連がある治療中に発生した有害事象;13.8% 少なくとも1つの注入関連の応答;1%未満−関連性のない重篤有害事象(69歳の女性は、入院を必要とする重度の脳血管障害を経験);3.1%−少なくとも1つの重度の有害事象:関節痛(関連性なし)、疲労(多分関連あり)、骨痛(関連性なし)、手足の痛み(関連性なし)、白血球減少症(関連の可能性あり)、脳血管障害(関連性なし)。
【0603】
実施例6:比較試験
本実施例の目的は、1型ゴーシェ病を治療する際の、Ceredase(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、ベラグルセラーゼアルファ、Genz−112638、およびZavesca(登録商標)の有効性を比較することである。ヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積は、治療から6ヶ月、9ヶ月、または12ヶ月後に測定された。
【0604】
用量:酵素補充療法(ERT):60U/kgを隔週;Genz112638:50および100mgを1日2回;Zavesca:100mgを1日3回
男性対女性の比率:Cerezyme(8対7);Ceredase(3対2);ベラグルセラーゼ第I/II相TKT025試験(5対7);ベラグルセラーゼ−TKT032試験−45U/kgの投与(8対5);ベラグルセラーゼ−TKT032試験−60U/kgの投与(7対5);Zavesca(1対1);Genz−112638(3対4)
試験対象患者基準:
CerezymeおよびCeredase:貧血および脾腫
ベラグルセラーゼTKT025:貧血および血小板減少症
Genz−112638:貧血、血小板減少症、および脾腫
Zavesca投与:臓器肥大症および100/nL未満の血小板または11.5未満のヘモグロビン
ベラグルセラーゼHGT−GCB−039およびTKT032:貧血および1つの他のパラメータの兆候
【0605】
治療を受けたことがない患者におけるベースライン比較を表22に示す。
【0606】
【表22】
【0607】
Ceredase(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、ベラグルセラーゼアルファ、またはGenz−112638により、6ヶ月間治療した患者からの比較結果を表23に示す。
【0608】
【表23】
【0609】
Ceredase(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、ベラグルセラーゼアルファ、またはGenz−112638により、9ヶ月間および12ヶ月間治療した患者からの比較結果を表24に示す。
【0610】
【表24】
【0611】
結論:本試験は、ベラグルセラーゼアルファが、1型ゴーシェ病を治療する際、治療を開始してから6ヶ月、9ヶ月、または12ヶ月後のヘモグロビン濃度、血小板数、肝体積、および膵臓体積の測定に基づいて、Ceredase(登録商標)、Cerezyme(登録商標)、Genz−112638、およびZavesca(登録商標)と少なくとも同様の有効性があったことを示す。
【0612】
実施例7:抗薬物抗体(ADA)アッセイ
要約
治療用タンパク質に対する抗体の開発は、患者の安全性、有効性、および薬物動態学に影響を及ぼし得る。抗薬物抗体(ADA)および中和抗体(NAb)のパネルアッセイが、3つのベラグルセラーゼアルファ第III相試験のうちの1つにおいて、ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを受けている患者の抗体応答を評価および比較するために、開発および確認された。
【0613】
酵素補充療法(ERT)等の生物学的療法の潜在的な免疫原性の評価を、以下のステップによって実施した:
1.酵素補充療法に対する抗体についてのスクリーニング
i. 偽陽性を考慮する
ii. 全てのアイソタイプについての広範囲の特異性
iii.薬物の存在に対する耐性
2.確認ステップ
i. 偽陽性の除外
ii. アイソタイプの特異性
3.タイターステップ
i. 相対濃度
4.中和抗体のための試験
i. インビトロ活性
ii. インビトロ細胞取り込み
本評価は、任意の酵素補充療法のために実施され得る。
【0614】
このような評価の例を
図21に示す。
【0615】
免疫測定法
抗ベラグルセラーゼアルファおよび抗イミグルセラーゼ抗体を、架橋免疫測定法および免疫グロブリン(Ig)のサブクラス特異的直接免疫測定法を同様に用いて評価し、全ては、電気化学発光のプラットフォーム、ならびに、RIPアッセイに基づく。架橋電気化学発光免疫測定法は、全ての免疫グロブリンのサブクラスを検出し、抗体スクリーニングアッセイと見なされた。Igのサブクラス電気化学発光免疫測定法は、IgA、IgM、およびIgE抗体の存在のための確認アッセイであり、一方、RIPアッセイは、IgG抗体の存在のための確認であった。抗体スクリーニングアッセイおよびIgGアッセイは、較正され、定量的であり、ヒト抗体陽性対照を使用した。IgA、IgM、およびIgEアッセイは、半定量であり、ハイブリッド(ヒト−ヒツジ)陽性対照を使用した。
【0616】
全ての抗ベラグルセラーゼアルファおよび抗イミグルセラーゼの免疫測定法は、陽性カットオフ基準を含み、ベラグルセラーゼアルファあるいはイミグルセラーゼのいずれかを使用して、試料をインテロゲートする(interrogate)ことを除いては、同一であった。これらのアッセイは、ハイスループットであり、検出のための表面積の増加を提供し、最小非特異的結合を用いて、高濃度の血清試料の使用を可能にし、全ての抗体のサブクラスを検出する。
【0617】
抗体スクリーニングアッセイ
図22に示されるように、抗薬物抗体スクリーニングは、電気化学発光(ECL)免疫測定法を用いて実施することができる。
【0618】
抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体は、ストレプトアビジン被覆マイクロウェルプレート上で、固定化したビオチン共役ベラグルセラーゼアルファ(またはイミグルセラーゼ)を用いて検出された。固定化したビオチン化ベラグルセラーゼアルファ(またはイミグルセラーゼ)は、患者の血清中に存在する抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体を捕捉し、非結合タンパク質を洗浄することによって除去した。ルテニウム複合体で標識したベラグルセラーゼアルファ(またはイミグルセラーゼ)を、各マイクロウェルに添加し、結合抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体との複合体の形成をもたらす。これに続いて、第2の洗浄ステップを行い、ここで、非結合標識タンパク質を除去した。
【0619】
マイクロウェル表面付近で結合した標識分子は、電気化学発光反応により引き起こされたプロセスにおいて、発光し、これは、MSD SECTOR Imager 2400 機器によって測定された(http://www.mesoscale.com/CatalogSystemWeb/WebRoot/products/imager_2400.aspx)。ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼと交差反応するマウスモノクローナル抗体は、各アッセイプレート内で較正物質として使用され、ベラグルセラーゼアルファと交差反応するヒト抗イミグルセラーゼ抗体は、陽性アッセイ対照として使用された。試験試料中の抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体の濃度は、較正曲線における知られていない測定された電気化学発光信号を補間することによって推定された。
【0620】
67人のゴーシェ病患者の最低限のベースラインが、これらのアッセイの抗体陽性カットポイントを設定するために試験された。この試験設計には、少なくとも14日間にわたる、異なるプレートロット番号を用いた、少なくとも3人の分析専門家の試験複製試料が含まれた。少なくとも3つの異なるマイクロウェルプレートを使用した。2つの利用可能なMSD装置を、各アッセイの合計1269個の判定のために無作為に使用した。抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体のアッセイカットポイントは、Mire−Sluis,AR et al. Journal of Immunological Methods 289(2004),pp1−16に推奨されるように得た電気化学発光値の平均値+1.645の標準偏差として確立した。アッセイの検出感度は、それぞれ、抗ベラグルセラーゼアルファおよび抗イミグルセラーゼ抗体に対して、33.4および65.6ng/mLであると推定された。
【0621】
本アッセイ(薬物としてベラグルセラーゼを用いる)のスクリーニング特性を表25に示す。
【0622】
各パラメータの仕様は、高感度かつ再生産可能な抗薬物抗体スクリーニングアッセイは、ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを受けている患者において、抗体応答を評価することが確認されたことを示す。
【0623】
【表25】
【0624】
ベラグルセラーゼについてのスクリーニングアッセイ用量反応曲線を
図23に示す。
【0625】
BIACORE(登録商標)プラットフォーム上のモノクローナル抗薬物抗体の親和性および結合反応速度の例を、表26に示す。同様のリガンド親和性および結合反応速度を、抗薬物抗体アッセイ較正物質について観察した。
【0626】
【表26】
【0627】
放射性免疫沈降アッセイ
抗薬物抗体が試料中に検出される場合、抗体のIgアイソタイプを判定するために、確認アッセイを実施することができる。免疫グロブリンG(IgG)抗体は、放射性免疫沈降法を用いて検出された。放射性免疫沈降(RIP)アッセイを
図24に示す。
【0628】
放射性免疫沈降アッセイでは、抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)のIgG抗体は、溶液相中の
125I−ベラグルセラーゼアルファ(またはイミグルセラーゼ)に結合し、プロテインGのミニカラムを用いて捕捉した抗原/抗体の複合体を形成した患者血清中に存在する。ミニカラムを洗浄し、遊離標識を除去し、ガンマ計測器において、直接定量化した。ミニカラム中に残留した放射線計数は、試験試料中の抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)のIgG抗体の濃度に比例した。試験試料中の抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)のIgG抗体の濃度は、上で論じされた同じモノクローナル抗体較正物質を用いて、較正曲線から推定した。上記の同じヒト抗体陽性対照を、本アッセイに使用した。
【0629】
十分に特徴付けられた公知の抗体濃度を用いて、高純度への最小二乗直線適合、モノクローナル抗体ベースの較正曲線は、アッセイの判定における不確定を算出するための信頼性のある、一貫した方法を提供した。このツールは、試薬の放射性標識の崩壊、放射線自己分解(radioautolysis)、および/またはアッセイ操作の変動から生じ得る、計数におけるアッセイ間変化のカットポイントの正規化を可能にし、また非特異的結合の変化および経時的に生じ得るアッセイ読み出しの変化を可能にする。
【0630】
合計59人のゴーシェ病患者のベースラインが、本アッセイの抗体陽性カットポイントを設定するために試験された。抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)のIgGについてのアッセイカットポイントは、上記およびMire−Sluis et al
2に推奨されるように、確立された。アッセイ感度は、それぞれ、抗ベラグルセラーゼアルファのIgGおよび抗イミグルセラーゼのIgGアッセイに対して、28.3および64.5ng/mLであると推定された。
【0631】
薬物としてベラグルセラーゼを用いて、このようなアッセイで得られた結果の例を表27に示す。
【0632】
高感度かつ再生産可能なIgG抗薬物抗体確認アッセイは、ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを受けている患者において、抗体応答を評価することが確認された。
【0633】
【表27】
【0634】
ベラグルセラーゼを用いて、RIPアッセイのために得た用量反応曲線の例を
図25に示す。
【0635】
間接電気化学発光免疫測定法
IgG抗体のスクリーニングに平行して、IgE抗体の存在についてのスクリーニングするために、アッセイが実施される。また、IgAおよびIgM抗体の存在を検出するためにもアッセイを実施することができる。
【0636】
IgA、IgM、およびIgE抗薬物抗体は、ECLアッセイを用いて検出された。このようなアッセイの例を
図26に示す。
【0637】
抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)抗体は、間接電気化学発光免疫測定法を用いて、それらのIgのサブクラスについて分析された。抗体は、ストレプトアビジン被覆マイクロウェルプレート上で、ビオチン共役ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)を固定化することによって、血清中に検出された。希釈した血清試料を、固定化したベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)に添加し、これは、試料中に存在する任意の抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)抗体を捕捉した。試料のインキュベーション後、マイクロウェルを洗浄し、非結合タンパク質を除去した。次に、IgA、IgM、またはIgEに対するルテニウム複合体で標識した抗ヒト二次抗体を別々に添加し、さらにインキュベートし、任意の結合抗ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼ抗体とのIgクラス特異的複合体の形成をもたらす。これに続いて、別の洗浄ステップを行い、ここで、非結合標識二次抗体を除去した。次いで、マイクロウェル表面付近で結合した標識分子は、上記のように、発光する。
【0638】
人工抗体陽性対照は、抗ベラグルセラーゼアルファ(抗イミグルセラーゼ)IgA、IgM、またはIgE抗体が入手できなかったため、これらのアッセイのために調製された。ヒトIgA、IgM、およびIgE抗体ハイブリッドは、ベラグルセラーゼアルファにより過免疫化され(hyperimmunized)、イミグルセラーゼと交差反応するヒツジにおいて引き起こされる抗体に対する、化学的に架橋し、精製した、非特異的ヒトIgA、IgM、またはIgEフラグメントによって合成された。したがって、IgA、IgM、およびIgE抗体ハイブリッドは、ヒツジ抗体ドメインによってベラグルセラーゼアルファ(またはイミグルセラーゼ)に結合され、それぞれ、ヒトIgA、IgM、またはIgEドメインに対してルテニウム複合体で標識された抗ヒト二次抗体を用いて検出された。
【0639】
抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)のIgA、IgM、およびIgEについてのアッセイカットポイントは、上記およびMire−Sluis et al
2に推奨されるように、確立された。アッセイ感度は、それぞれ、抗ベラグルセラーゼアルファのIgEおよび抗イミグルセラーゼのIgEアッセイに対して、10.6および11.0ng/mLであると推定された。抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)のIgAおよびIgM抗体については、時点信号の注入前のベースライン信号に対する2.0以上の比率に加えて、アッセイ陽性カットポイントを満たさなければならなかった
3。
【0640】
これらのアッセイについては、ハイブリッド陽性対照を使用することができる。例えば、
−ヒツジ抗薬物抗体IgG、およびヒトIgA、IgM、およびIgEを処理して、ピリジルチオール活性化したタンパク質を得る(Gu M. L., Feng S. L., and Glenn J. K. Development of an animal−human antibody complex for use as a control in ELISA. J. Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 32 (2003), 523−529を参照のこと)。
−活性化したIgA、IgM、およびIgEを還元し、脱塩した。
−活性化したIgGは、還元したIgA、IgM、またはIgEと混合する。
−形成されたハイブリッド抗体は、サイズ排除クロマトグラフィーおよびECL ELISAによって特徴付けられた。
−IgAおよびIgMに対してヒト/ヒツジのモル比の5、およびIgEに対して2を得た。
【0641】
IgA、IgM、およびIgEの確認アッセイ特性の例(ベラグルセラーゼが、薬物として使用された場合)を表28に示す。
【0642】
高感度かつ再生産可能なIgA、IgM、およびIgE抗薬物抗体のアイソタイプアッセイは、ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを受けている患者において、抗体応答を評価することが確認された。
【0643】
【表28】
【0644】
インビトロ酵素活性の抗体阻害
抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)抗体によるインビトロ酵素活性の阻害は、ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)活性を阻害する抗体を検出し、定量化するアッセイを用いて試験された。本方法は、合成基質4−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシドを加水分解してp−ニトロフェノールおよびD−グルコピラノシドにする、ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)の能力を測定する比色活性アッセイに基づく。
【0645】
抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)抗体陽性血清試料は、それぞれ、37℃で、30分間、固定量のベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼで予めインキュベートした。ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼのインビトロ活性を阻害することが知られているヒツジポリクローナル抗体を、陽性対照として使用した。次いで、4−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド基質溶液を添加し、37℃で、1時間、血清試料/酵素の混合物でインキュベートした。酵素反応は、グリシン/炭酸ナトリウムの緩衝液(pH10.7)を添加することによって停止させ、生成物(p−ニトロフェノール)を、吸光度の405nmの波長で測定した。ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)活性の1単位は、37℃で、1分間、1μモルの基質4−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシドを加水分解するために必要とされる酵素の量として定義された。酵素活性は、試験試料中の放出されたp−ニトロフェノールおよびアッセイ対照を同じアッセイプレート中で測定されるp−ニトロフェノール較正曲線と比較することによって定量化された。試験試料の結果は、血清試料がない場合に測定されたベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)の活性と比較して表され、阻害率(%)として報告された。
【0646】
アッセイカットポイントは、個人の健常なヒトドナー血清(N=52)および酵素補充療法を受けたことがないゴーシェ病患者(N=35)から判定された。ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ中和抗体アッセイのカットポイントは、これらの87個の試料に基づいて、20.0%超の阻害として定義された。したがって、患者試料は、観察された阻害のレベルが、20.0%以下である場合、阻害抗体に対して陰性であり、阻害が20.0%を超えた場合、陽性であると見なされた。
【0647】
インビトロ細胞系アッセイ
インビトロ細胞系アッセイを使用して、抗薬物抗体を評価して、抗体が中和しているかどうかを判定した。
【0648】
表29は、抗薬物抗体(ベラグルセラーゼを薬物として使用)の中和レベルのアッセイ特性の仕様を示す。
【0649】
【表29】
【0650】
ゴーシェ病のための酵素補充療法等の酵素補充療法における中和抗体に対して、考慮すべき点として以下のものが挙げられる:
・ 受容体媒介の細胞取り込みは、治療剤のインビボ機能にとって重要である。
・ 抗薬物抗体による受容体結合干渉は、酵素トラフィッキングを妨害し得る。
・ 細胞取り込みの阻害は、以下の理由で、成功した酵素補充療法を評価するために重要なツールである。
・ それが、機構をそっくり模倣し、これによって、NAbが、インビボでの効果を発揮し得、および
・ NAbが、治療剤の生物活性を減少させる、または終了させ得る。
・ 細胞系アッセイは、NAbの評価のための最適な生物学モデルを提供する。
【0651】
ゴーシェ病のための臨床試験において、酵素補充療法を受けている患者からの試料を、ベラグルセラーゼまたはイミグルセラーゼに対する中和抗体について評価した。結果を表30に示す。
【0652】
【表30】
【0653】
インビトロ細胞系アッセイI
主要目的:実験は、CD206を発現するように改変されたヒト細胞株(HT1080)によるCD206により媒介された組み換え酵素の取り込みを阻害する(遮断するまたは中和する)ために、ベラグルセラーゼアルファおよび/またはイミグルセラーゼと反応するヒト抗体反応の能力を判定するため、ならびにこの点において、イミグルセラーゼに反応して産生された抗薬物抗体(ADA)を、ベラグルセラーゼアルファに反応して産生された抗薬物抗体と比較するために、実行された。仮説は、抗原性の差異が、ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼの間に存在し、これらのエピトープが、細胞結合、細胞内在化、および/または治療剤の細胞内トラフィッキングにおける抗薬物抗体の機能的効果に関して、ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼを識別するであろうというものである。
【0654】
材料および装置:
重要な材料
1.細胞株MRC1−18は、株HT1080に由来し、ヒトCD206(マクロファージマンノース受容体;MMR、MRC1、マンノース受容体C1型とも称される)を安定にトランスフェクトしている。HT1080(saf)細胞は、電気穿孔法によりMMR(ヒト肝臓cDNAライブラリーから単離された)をコードする遺伝子を運ぶ発現ベクターをトランスフェクトされ、96ウェルプレートに直ちに播種した。安定したクローンが、0.4mg/mLのG418を含有する培地を用いて選択された。MRC1発現は、FITC抗−MRC1染色および蛍光シフトによる分析を用いて分析された。MRC1−18におけるMMRの発現は、抗MMR Abを用いて染色する表面によって確認された。さらに、MRC1−18は、Fc(ガンマ)受容体の発現に対して陰性を示すことが免疫染色およびフローサイトメトリーによって確認されている。
2.Alexa FLUOR(登録商標)488を共役したベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ:ベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼは、製造業者のプロトコル(Molecular Probes、カタログ番号A10235)に従って、Alexa FLUOR(登録商標)r488タンパク質標識キットを用いて、Alexa FLUOR(登録商標)488で共役した。
3.臨床試験のTKT−032、TKT−034、およびHGT−GCB−039からのイミグルセラーゼまたはベラグルセラーゼアルファの抗薬物抗体陽性患者の血清(試料IDについては、表31を参照のこと)
4.アッセイ陽性対照(PC):正常ヒト血清(NHS;BRH127439)における、250μg/mLの精製されたポリクローナルヒツジ抗ベラグルセラーゼアルファ抗体(G140)
5.陰性対照試料:正常な健常ドナーからのヒト血清試料(Bioreclamation、カタログ番号HMSM、BRH127438、BRH127439)、または臨床試験のTKT−032(N=25)に登録した患者からのベースライン血清試料
6.マンナン:Sigma カタログ番号M7054
7.D−マンノース−6−リン酸塩:Sigma カタログ番号M3655
8.成長培地:4mMのL−グルタミン(Invitrogen カタログ番号25230)および0.4mg/mLのジェネティシン(Geneticin)(G418、Invitrogen カタログ番号11811−031)で補充した50% CD−CHO(Invitrogen カタログ番号10743)および50% CD−293(Invitrogen カタログ番号11913)
9.0.05% トリプシン−EDTA: Invitrogen カタログ番号25300
10.洗浄緩衝液:PBS/0.5%BSA
11.BD血球計算器設定および追跡ビーズ:BD Bioscience カタログ番号641319
【0655】
装置の部分的な表
1. 5% CO
2を用いた、37℃のインキュベーター:Forma Scientific Model 3033
2. 遠心分離機:Thermo Scientific Model Sorvall Legend T +
3. 細胞計数器:Mexcelom Bioscience LLC、Model Cellometer Auto T 4
4. フロー血球計算器:BD Bioscience、FACSCanto II
【0656】
方法:抗体スクリーニングおよび確認アッセイにより抗薬物抗体に対して陽性を示した患者血清は、ヒトマクロファージマンノース受容体(MMR)を発現するように改変されたHT1080細胞株を使用して、インビトロ細胞取り込みアッセイによって、さらに検査を行った。簡潔に言えば、MRC1−18細胞を、0.5mg/mLのG418で補充したCD培地中で維持した。各アッセイのために、G418が入ったCD培地中の1.5×10
5細胞/ウェルを、平底96ウェルプレート中に添加し、1:20で希釈した試験患者血清試料、1:20で希釈した正常ヒト血清(NHS)、または1:20で希釈したNHS中のアッセイ陽性対照(G140抗体、5mg/mLのマンナン)を用いて、37℃で15分間予めインキュベートした。次いで、5nMのAlexa FLUOR(登録商標)488で標識したベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを添加し、37℃で、さらに2時間インキュベートした。Alexa FLUOR(登録商標)488で標識したベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼの較正曲線は、1:20で希釈したNHS中のAlexa FLUOR(登録商標)488で標識したベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼ(0〜10nM)を用いて、37℃で2時間、MRC1−18細胞をインキュベートすることによって、各実験に含まれた。
【0657】
2時間インキュベートした後、培地を遠心分離によって除去し、細胞をトリプシン−EDTAで3分間処理して、表面結合のベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを除去し、次いで、10%のFBSが入った等量の培地を添加することによって中和した。細胞は、PBS/0.5% BSAで1回洗浄し、PBS/0.5% BSA中で再懸濁させ、固定機器を設定したBD FACS Canto IIによって分析した。Canto II機器は、各分析前に、BD 血球計算機の設定および追跡ビーズとともに設定された。結果は、FlowJoソフトウェアで分析され、各試料の平均蛍光強度(MFI)を記録した。調整されたMFIは、各試料のMFIからバックグラウンド試料(0nMの薬物を有する細胞)のMFIを差し引くことによって算出された。患者試料によるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みの阻害は、正常ヒト血清試料(NHS)、または入手可能な場合は、患者自身の無処置ベースライン試料と比較して判定された。阻害率は、以下の等式を用いて算出することができる。
阻害率(%)=1−(試験試料の修正平均蛍光強度/患者ベースラインまたはNHSの修正平均蛍光強度)×100
【0658】
結果:
アッセイ開発:
以下の初期結果は、本アッセイの開発時に得られた(データは図示せず):
・MRC1−18細胞株によるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの内在化は、用量依存的である。
・MRC1−18細胞株によるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの内在化は、内在化が、M6P(5mM)によってではなくマンナン(5mg/mL、89%超)によって阻害されたため、マンノース受容体によって媒介された。
・1:20で希釈したNHS(正常ヒト血清)中にスパイクしたG140抗体は、MRC1−18細胞株によって、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みを阻害する。阻害は、用量依存的である。
・1:20の希釈で試験した12ロットのNHSは、MRC1−18細胞株によって、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みを阻害しなかった。
【0659】
アッセイ変動:
臨床検査からの25個の個々の無処置ゴーシェ病血清試料を、3日間(N=75)にわたって試験して、MRC1−18細胞株へのベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼの取り込みにおけるベースライン効果を確立した。
【0660】
ベラグルセラーゼアルファの取り込みにおける平均ベースライン血清効果は、イミグルセラーゼの取り込みにおけるベースライン血清効果と同様であった。しかしながら、CV%として算出された変動は、ベラグルセラーゼアルファに対する変動よりもイミグルセラーゼに対する変動がさらに大きかった(28%対15%)(データは示さず)。
【0661】
本アッセイの抗薬物抗体陽性患者血清試料の結果および再現性:
イミグルセラーゼまたはベラグルセラーゼアルファに対して抗体を有することが以前に判定された患者血清試料によるベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みの阻害を試験した。各血清試料は、酵素製剤が、初めは、抗体の産生を誘発したにも関わらず、イミグルセラーゼ取り込み、およびベラグルセラーゼアルファ取り込みを遮断する能力について、同時に試験した。表31は、患者血清試料および受けたタンパク質治療を記載する(1人の抗体陽性患者であるENUのみが、ベラグルセラーゼアルファによる治療を受けた)。
【0662】
【表31】
【0663】
患者ENU、RW、GAJ、AVL、およびSBからの試料は、イミグルセラーゼあるいはベラグルセラーゼアルファ取り込みのいずれの阻害も示さなかった(データ示さす)。患者試料のJMS、KM、MPQ、およびSB(陰性対照として)による、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みの阻害の再現性を、3日間にわたって、正常ヒト血清試料、または入手可能である場合は、患者自身の無処置ベースライン試料と比較して、判定した(表32)。
【0664】
患者KM(039−167−0001)は、ベースラインでは無処置であり、その後の試験において、イミグルセラーゼによる治療を受けた。全ての3回の来院からの試料は、ベラグルセラーゼアルファ取り込みの同等の阻害(0〜15%、これは、本アッセイの変動範囲内である)と比較して、イミグルセラーゼ取り込みの有意な阻害(そのベースラインと比較して24〜52%阻害)を示した。
【0665】
患者SB(034−027−0002)、JMS(034−154−0001)、およびMPQ(034−164−0001)は、イミグルセラーゼにより以前治療したことがあった。患者SBからの血清は、正常ヒト血清試料と比較して、イミグルセラーゼ取り込みの阻害(0%)あるいはベラグルセラーゼアルファ取り込みの阻害(0%)のいずれも示さなかった。患者JMSからの血清によるイミグルセラーゼ取り込みの阻害(0〜14%)は、ベラグルセラーゼアルファ取り込みから観察された阻害(0〜20%)と一致した。患者MPQからの血清によるイミグルセラーゼ取り込みの阻害(32〜45%)は、ベラグルセラーゼアルファ取り込みの同等の阻害(0〜15%、これは、本アッセイの変動範囲内である)よりも著しく高かった。
【0666】
これらの予備結果は、患者KMおよびMPQからの血清中に存在する中和抗体は、細胞へのイミグルセラーゼ取り込みを阻害するが、ベラグルセラーゼアルファ取り込みを阻害しないことを示唆する。
【0667】
【表32】
【0668】
マンノース阻害剤マンナンおよびポリクローナルヒツジ抗ベラグルセラーゼアルファ抗体G140(陽性対照)によるイミグルセラーゼまたはベラグルセラーゼアルファの取り込みの阻害はまた、3日間にわたって判定された(表33)。マンナンは、マンノース受容体を通して、MRC1−18細胞へのイミグルセラーゼおよびベラグルセラーゼアルファの両方の取り込みを阻害する。G140抗体は、等量によるMRC1−18細胞へのイミグルセラーゼおよびベラグルセラーゼアルファの両方の取り込みを阻害する。
【0669】
【表33】
【0670】
結論:ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼは、タンパク質配列(例えば、イミグルセラーゼにおけるR495H変異)および炭水化物構造の両方に関して、構造的に異なる。実験は、抗原性の差異が、ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼの間で存在し、これらのエピトープが、各治療法の細胞結合および/または細胞の内在化を遮断する抗薬物抗体(ADA)の能力に関して、ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼを識別するという仮説に対処するために実施された。実験は、治療薬の取り込みが、主に、MMRによって促進され、他の公知の取り込み機構による困惑を最小限にしか混乱を来たさない、最近開発されたHT1080細胞株を用いて行われた。患者血清試料によるイミグルセラーゼまたはベラグルセラーゼアルファ取り込みの阻害を測定して、互いに比較された。データは、イミグルセラーゼ治療に応答して抗薬物抗体を産生した患者から採血した合計7つの血清試料のうちから、ベラグルセラーゼアルファ治療に応答して抗薬物抗体を産生した患者から採血した1つの血清試料、およびイミグルセラーゼに応答して抗薬物抗体を産生した患者からの2つの血清(2/7=29%)が、イミグルセラーゼの細胞取り込みを24%〜52%阻害が生じたが、アッセイ変動内であるベラグルセラーゼアルファの細胞取り込みのわずか0〜15%阻害が生じたことを示す。相対的に、1人の患者のみが、ベラグルセラーゼアルファ治療に応答して抗体を産生したことを示すことが特定されたが、この血清は、取り込みを阻害しなかった。
【0671】
各血清試料は、酵素製剤が、初めは、抗体の産生を誘発したにも関わらず、イミグルセラーゼ取り込み、および/またはベラグルセラーゼアルファ取り込みを遮断する能力について、同時に試験した。ベラグルセラーゼアルファ取り込みの阻害対イミグルセラーゼ取り込みの阻害のかかる比較は、各治療薬の生物学的に関連のある部分にエピトープのおおまかな「マッピング」を可能にする(但し、本明細書で試験された抗血清が、ポリクローナルであり、ひいては各抗血清が、抗原特異性のある混合物を含有する可能性があり、恐らく、複数のエピトープを認識する)。これらの事前の注意を考慮して、抗イミグルセラーゼ抗血清で観察された取り込みの阻害は、同じ抗血清が、同時に試験されたベラグルセラーゼアルファの内在化を阻害しないため、イミグルセラーゼに限定されていると思われる。これらのデータは、イミグルセラーゼに応答して産生したいくつかの抗薬物抗体が、イミグルセラーゼの独特に曝されるエピトープによって細胞内内在化を阻害することを示唆する。さらに、イミグルセラーゼ対ベラグルセラーゼアルファ取り込みにおける血清効果が観察された変動差異は、恐らく、翻訳後の修正に関してイミグルセラーゼ製剤よりもベラグルセラーゼアルファ製剤における均質性が大きいためであり得る。
【0672】
抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)抗体による酵素取り込みの阻害は、マクロファージマンノース受容体(MMR)により媒介されるベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)取り込みを妨げる抗体を検出し、定量化する細胞系アッセイを使用して、試験を行った。この方法は、定義された条件下でMRC1‐18細胞によって内在化される、蛍光標識したベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)の定量化に基づく。MRC1‐18は、ヒトマクロファージマンノース受容体C、1型を安定にトランスフェクトしたHT1080細胞からの、Shire HGTで改変された細胞株である。
【0673】
簡潔に言えば、抗ベラグルセラーゼアルファ(イミグルセラーゼ)抗体陽性血清試料を、平底96ウェルプレート内で培養培地中のMRC1‐18細胞とともに37℃で15分間予めインキュベートした。プールされた正常ヒト血清(NHS)を、陰性対照として使用した。ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ取り込みを阻害することが知られるヒツジポリクローナル抗体、ならびにMMR特異的リガンドであるマンナン(Sung SJ et al.J.Cell Biol. 1983; 96:160−166)を、酵素取り込みを遮断するために陽性対照として使用した。
【0674】
予備インキュベーション後、Alexa Fluor‐488で標識したベラグルセラーゼアルファまたはイミグルセラーゼを添加し、37℃でさらに2時間インキュベートした。MRC1‐18細胞とのAlexa Fluor‐488で標識した酵素のインキュベーションから成る較正曲線を、各実験に含めた。インキュベーション後、培地を遠心分離により除去し、細胞をトリプシン−EDTAで3分間処理し、表面に結合した酵素を除去し、最後に反応pHを等体積の培養培地の添加により中性に戻した。細胞を1回洗浄し、0.5%のBSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水を使用して再懸濁させた。細胞は、Becton Dickinson FACS CantoII機器を使用し、この機器の血球計算器設定および追跡ビーズを使用して各分析前にこの機器を校正して、分析した。
【0675】
その結果をこの機器のFlowJoソフトウェアで分析し、各試料の平均蛍光強度(MFI)を記録した。調製されたMFIは、酵素を含有しない試料のウェルからのバックグラウンドMFIを、知られていない試料および対照試料のそれぞれのMFIから差し引くことによって計算された。患者の血清試料による酵素取り込みの阻害を、以下の等式に従って、NHS対照に対して推定した。
阻害(%)=[1−[試験試料の調整されたMFI/NHSの調整されたMFI]]×100
【0676】
アッセイカットポイントは、治療を受けたことがないゴーシェ病患者から収集された25の個々の血清の分析により決定された。各血清を4つの別個の日に合計100の値について試験し、陽性カットポイントを、これらの値の平均に1.645の標準偏差を加えたものよりも大きい阻害として定義した。
【0677】
インビトロ細胞系アッセイII
本アッセイは、ベラグルセラーゼアルファの取り込みをイミグルセラーゼと比較するために開発された。
【0678】
方法:実験設計(DOE)アッセイについて、一般的因子設計は、Statease DESIGN EXPERT(商標)ソフトウェアによって補助された。DOEは、ホルボールミリステートアセテート(PMA)で誘導されたU937細胞に由来するマクロファージを利用し、5mMのマンノース−6−リン酸塩(M6P)の存在下で行われた。内在化の比較のために、U937に由来するマクロファージを、10mMのカルシウムを用いてpH7.5でGCBとともに3時間インキュベートした内在化した薬物を、切断時に蛍光を発する合成基質(4−MU−glc)を用いた活性アッセイによって測定した。
【0679】
結果:ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼの内在化率のU937細胞における比較は、ベラグルセラーゼアルファがイミグルセラーゼより最大2.5倍より効率的に内在化されることを示した。細胞の内在化におけるこの差別化は、MMRを発現するマウス細胞株J774を使用しても観察された。特定のアッセイ条件下では、カルシウムの添加がイミグルセラーゼの細胞取り込みを軽度に阻害し、一方ベラグルセラーゼアルファの取り込みを強化した。両酵素の内在化は、J774細胞によるベラグルセラーゼアルファ取り込みの阻害がイミグルセラーゼのものよりもより完全ではあったが、培養培地へのマンナンの添加により阻害される可能性がある。DOEアッセイは、i)カルシウムとpHとの相互作用が取り込みに大きく影響を及ぼすこと、ならびにii)バイオアッセイ試料比較には、MMRの知られているカルシウム依存性と一貫したカルシウムの存在が必要であることを明らかにした。DOE実験におけるマンノース−6−リン酸塩(M6P)の存在は、U937細胞上のM6P受容体が測定される内在化に寄与しないことを保証した。
【0680】
これらのデータは、ベラグルセラーゼアルファがイミグルセラーゼより効率的に内在化されることを示唆する。双方の酵素がMMRを介して最初に内在化されるが、ベラグルセラーゼアルファよりもイミグルセラーゼに対してより大きいがわずかである割合が、代替機構によって内在化される。これらのデータは、ベラグルセラーゼアルファ、イミグルセラーゼ、および他の未来の療法の差別化において貴重なものとなる可能性がある。
【0681】
要約
これらの試験から、抗体検出方法の要約は以下の通りである:
・ ICHおよびFDAガイドラインによる、ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼADAに対して確認されている同等のアッセイ。例えば、http://www.fda.gov/downloads/RegulatoryInformation/Guidances/UCM128049.pdf およびhttp://www.ich.org/LOB/media/MEDIA417.pdfを参照。
・ スクリーニング
・ 確認
・ タイター
・ アイソタイプ
・ 中和、を参照されたい。
・ ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼADAを並行して評価した、マスキングした患者の検体
・ 広範囲の抗体親和性を対象とした対照および較正物質
・ ヒト陽性血清が見出されない場合、開発されたアイソタイプ特異的ハイブリッド対照
【0682】
第III相試験における患者の免疫原性状態:
・ TKT032:ベラグルセラーゼアルファ60U/kgまたは45U/kg隔週に無作為化された患者
・ ベースラインでADA陰性であった1人の患者が、ベラグルセラーゼアルファに応答してNabを生じさせた。
・ TKT034:前にイミグルセラーゼで安定であり、ベラグルセラーゼアルファ15〜60U/kgに切り替えた患者
・ ベースラインで抗イミグルセラーゼ陽性であった3人の患者は、12ヶ月の治療を通じて抗ベラグルセラーゼ陰性であった。
・ HGT−GCB−039:ベラグルセラーゼアルファ60U/kgまたはイミグルセラーゼ60U/kg隔週に無作為化された患者
・ ベースラインでADA陰性だった4人の患者が、イミグルセラーゼに応答して血清転換した。
・ これらのうち、1人がイミグルセラーゼおよびベラグルセラーゼアルファの双方に対して反応性のNabを発達させ、一方3人がイミグルセラーゼのみに対して反応性である非阻害IgG ADAを発達させた。
【0683】
患者の血清変換の要約を表34に示す。治療を受けた99人の患者のうち、82人は、ベラグルセラーゼアルファを受け、17人は、イミグルセラーゼを受けた。ベラグルセラーゼアルファを受けている82人の患者のうちの1人およびイミグルセラーゼを受けている17人の患者のうちの4人が、試験中、抗体を形成した。
【0684】
【表34】
【0685】
本実施例において論じられた試験の臨床的意味合いは、以下の通りである。
・ ベラグルセラーゼアルファおよびイミグルセラーゼ治療に応答する患者の抗体を直接評価および比較するために、高感度およびかつ同等の方法を開発し、最適化し、確認した。
・ 結果は、ベラグルセラーゼアルファで治療された患者の1%、およびイミグルセラーゼで治療された患者の23%における血清転換を示し、ベラグルセラーゼアルファとイミグルセラーゼとの間の著しい抗原性の差異を示唆している。
・ 加えて、イミグルセラーゼのADAによる際立った細胞取り込みの阻害があったが、ベラグルセラーゼアルファにはなかった。
【0686】
実施例8:凍結乾燥されたベラグルセラーゼ製品の安定性に対する水分含量の効果
目的:凍結乾燥されたベラグルセラーゼ製品に対する水分含量の効果を評価すること。
【0687】
方法:このタンパク質を、スクロースを含有する溶液中に配合し、FTSの実験室規模の凍結乾燥機(Lyostar II)を使用して凍結乾燥した。凍結乾燥バイアルを一次乾燥後に試料採取器を用いていくつかの間隔で除去し、異なる水分含量の試料を得た。凍結乾燥されたタンパク質の二次構造をFT−IRにより検査した。これらの試料の熱安定性を、外観、水分含量サイズ排除および逆送HPLC、ならびにペプチドマッピング方法による酸化により特徴付けた。
【0688】
注射用滅菌水での再構成後、ベラグルセラーゼ製品は、約2.5mg/mL(40U/mL)のベラグルセラーゼアルファ、50mg/mLのスクロース、12.9mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、1.3mg/mLのエン酸一水和物、および0.11mg/mLのポリソルベート20を含有する。
【0689】
結果:凍結乾燥製品では、1.3%〜6.2%の水分含量の範囲が達成された。ケーキの崩壊が、高水分含量(5%以上)を有する薬物製品内で、加速温度(40℃)で観察された。しかしながら、再構成された溶液に対する化学的安定性試験結果は、SE−HPLCおよびRP−HPLCの双方の方法によって、より高い水分含量(3%以上)を有する試料がより乾燥した試料より著しく低い劣化を示し、またより低量の酸化を示すことを示している。この安定性の傾向は、乾燥製品のFT−IRによる二次構造で観察された変化と相関する。
【0690】
結論:より高い水分含量が、凍結乾燥されたタンパク質のより良好な化学的安定性をもたらした。この安定性の傾向は、より高い水分含量での固相における二次構造への変化がより少ないことにより説明される。凍結乾燥製品中の適切な水分含量の選択は、ケーキの構造的安定性および本タンパク質の化学的安定性の双方の均衡をとることを必要とする。
【0691】
実施例9:ベラグルセラーゼアルファについての治療目標の分析
酵素補充療法を受けている1型ゴーシェ病に罹患する患者における、治療応答の達成、維持、および継続をモニタリングするための治療目的が説明されている(Pastores G et al., (2004) Seminars in Hematology, 41 (suppl 5):4−14)。
【0692】
1型ゴーシェ病の臨床的パラメータ(貧血、血小板減少症、肝腫大、および脾腫)の治療目的に対するベラグルセラーゼアルファ治療の影響をベンチマークするために、ベースラインでの貧血、血小板減少症、肝腫大、および脾腫についての目標の患者の割合を、9ヶ月または1年で、これらの目標のそれぞれを達成した割合と比較した。
【0693】
データデータ補完は使用しなかった。それぞれの目標について双方の時点でデータを有する患者のみが含まれる。血液学的パラメータについて、ベースラインはスクリーニング値およびベースライン値の平均であり、1年の治療目標値は、TKT032およびTKT034については51週目および53週目の値の平均であり、HGT−GCB−039については39週目および41週目の値の平均であった。臓器体積については、41週目の値をHGT−GCB−039における1年の治療目標基準に適用した。
【0694】
TKT032、HGT−GCB−039、無傷の膵臓を有するHGT−GCB−039患者、HGT−GCB−039脾摘患者、TKT034、およびTKT025の治療目標を、表35〜40に記載する。
【0695】
【表35】
【0696】
【表36】
【0697】
【表37】
【0698】
【表38】
【0699】
【表39】
【0700】
【表40】
【0701】
実施例10:3型ゴーシェ病の子供と青年期の人におけるベラグルセラーゼアルファの有効性および安全性の研究
ゴーシェ病は、酵素のグルコセレブロシダーゼ(GCB)の欠損により生じるまれなリソソーム貯蔵障害である。ゴーシェ病は、神経症状の存在または不在および神経症状の重症度に基づいて3つの臨床亜型に分類されている。2型ゴーシェ病の患者は、急性の神経機能低下を呈し、3型ゴーシェ病の患者は、典型的に、より亜急性の神経学的経過を示す;あらゆる場合の90%超を占める最も一般的な形態である1型ゴーシェ病は中枢神経系に関与しない。
【0702】
ベラグルセラーゼアルファは、1型ゴーシェ病の小児患者と成人患者にとって認可された酵素補充療法(ERT)である。ERTは、臓器肥大症を減少させ、血液パラメータを改善し、健康関連QOLにプラスに影響することが実証されている。ERTは、血液脳関門を横断することが示されておらず、その結果、ゴーシェ病に関連する神経学的(中枢神経系;CNS)兆候を改善する能力は限られている。
【0703】
この研究は、3型ゴーシェ病の患者におけるベラグルセラーゼアルファの有効性および安全性を調査する基礎を提供する。本研究は、3型ゴーシェ病の子供と青年期の人におけるベラグルセラーゼアルファ酵素補充療法の介入型、多施設、非盲検の有効性および安全性の研究となる。主要転帰測定としては、ヘモグロビン濃度におけるベースラインからの変化;血小板数におけるベースラインからの変化;磁気共鳴映像法(MRI)を使用して測定した正規化肝体積におけるベースラインからの変化;磁気共鳴映像法(MRI)を使用して測定した正規化脾臓体積におけるベースラインからの変化;および神経症状におけるベースラインからの変化が挙げられる。安全性の評価としては、有害事象および注入関連の有害事象;重篤な有害事象;臨床検査値;尿検査;生命兆候;12誘導心電図(ECG)記録;身体検査;および抗ベラグルセラーゼアルファ抗体形成の評価が挙げられる。この研究で実験に使用される腕には、隔週で、静脈内点滴によりベラグルセラーゼアルファが投与される。
【0704】
この研究に含まれるには、各患者は、以下の基準の全てを満たさなければならない:3型ゴーシェ病の確定診断;登録時点で2才以上かつ18才未満;治療を受けたことがないか、または研究登録の以前の12ヶ月以内に治療(治験または承認)を受けていないかのいずれか;患者は、年齢および性別について正常の下限未満のヘモグロビン濃度として定義される、ゴーシェ病関連貧血を患っていなければならない。患者は、以下の基準の1つ以上も満たさなければならない:触診による少なくとも中程度の脾腫(左助骨縁より2から3cm下);120×10,000血小板/立方mm未満の血小板数として定義される、ゴーシェ病関連血小板減少症;ゴーシェ病関連の容易に触診される肥大肝。脾臓摘出を経験した患者は、この研究に参加する資格がまだあるであろう。出産能力を有する女性の患者は、この研究中常に医学的に許容された避妊法を使用することに同意しなければならない。妊娠検査は、登録の時点と、研究の参加中ずっと必要に応じて、行われる。男性の患者は、研究中常に医学的に許容された避妊法を使用することに同意し、パートナーの妊娠を調査員に報告することに同意しなければならない。患者の(両)親または患者の法的に承認された代理人は、施設内治験審査委員会/医療機関内倫理委員会(IRB/IEC)により承認された書面による同意書を提出しなければならない。
【0705】
以下の基準のいずれかを満たす患者は、この研究から除外される:患者が、2型またはI型ゴーシェ病に罹患した疑いがある;患者が2才未満である;患者が、ゴーシェ病のためのいずれかの酵素補充療法(承認または治験)に対して重度の(3等級以上)注入関連過敏性反応(アナフィラキシー反応またはアナフィラキシー様反応)を経験したことがある;患者が、研究に登録する以前の30日以内に治験薬によるいずれかの非ゴーシェ病関連の治療を受けたことがある;患者が、妊娠中および/または授乳中の女性である。
【0706】
本発明のいくつかの実施形態について説明した。それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正を加えることが可能であることが理解されるだろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
他の実施態様
1.III型ゴーシェ病に罹患する対象を治療する方法であって、
前記対象への2時間未満にわたる静脈内注入によってグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を実施し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
2.前記グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法は、90分以内にわたって実施される、実施態様1に記載の方法。
3.前記グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法は、60分以内にわたって実施される、実施態様1に記載の方法。
4.前記対象への2時間未満にわたる静脈内注入によって第2のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を実施することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
5.前記グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法は、ベラグルセラーゼ、イミグルセラーゼ、およびuplyso(商標)からなる群より選択される、実施態様1に記載の方法。
6.前記グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法は、15〜60U/kgの用量で実施される、実施態様1に記載の方法。
7.対象を、グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法による治療に適しているとして特定するための方法であって、
グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法に対する中和抗体が、前記対象からの試料中に存在するか否かを判定して、前記療法に対する抗体の測定値を得る、および
前記療法に対する抗体の測定値を標準値と比較する、
各工程を含み、
前記対象は、現在、第1のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を実施されているか、または第1のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を以前に受けたことがあり、前記抗体の測定値が前記標準値を超える場合、前記対象は、前記グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法に対する抗体を有し、ベラグルセラーゼを用いたグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法の候補者であると特定され、前記抗体の測定値が、前記標準値を超えない場合、前記対象は、前記第1のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法または代替のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を用いたグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法の候補者であると特定される、方法。
8.前記第1のグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法は、イミグルセラーゼまたはuplyso(商標)である、実施態様7に記載の方法。
9.前記試料は、血液または血清試料である、実施態様7に記載の方法。
10.前記血液または血清試料は、修正されている、実施態様9に記載の方法。
11.前記試料は、分析用試薬または基質と接触させられている、実施態様10に記載の方法。
12.前記試料は、血液または血清試料の濃縮部分である、実施態様10に記載の方法。
13.前記対象は、ベラグルセラーゼを用いたグルコセレブロシダーゼ酵素補充療法の候補者として特定され、前記対象にベラグルセラーゼを投与することをさらに含む、実施態様7に記載の方法。
14.グルコセレブロシダーゼ酵素補充療法を現在受けているかまたは以前受けたことがあるIII型ゴーシェ病に罹患する対象を治療する方法であって、
前記対象が、ゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法に対する抗体の産生の検査で陽性反応を示したことに基づいて、対象を選択する、および
ベラグルセラーゼを前記対象に投与する、
各工程を含む方法。
15.前記対象がゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法に対するIgE抗体の産生の検査で、前記対象が陽性反応を示す、実施態様14に記載の方法。
16.前記対象がゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法に対するIgM抗体の産生の検査で、前記対象が陽性反応を示す、実施態様14に記載の方法。
17.前記対象がゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法に対するIgG抗体の産生の検査で、前記対象が陽性反応を示す、実施態様14に記載の方法。
18.前記対象がゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法が、イミグルセラーゼである、実施態様14に記載の方法。
19.前記対象がゴーシェ病のために現在受けているまたは以前に受けたことがある療法が、uplyso(商標)である、実施態様14に記載の方法。
20.ベラグルセラーゼが、15〜60U/kgの用量で投与される、実施態様14に記載の方法。
21.前記ベラグルセラーゼが、90分以内にわたって静脈内注入によって前記対象に投与される、実施態様14に記載の方法。