特許第6475294号(P6475294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6475294-トランスミッション試験装置 図000014
  • 特許6475294-トランスミッション試験装置 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6475294
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】トランスミッション試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/02 20190101AFI20190218BHJP
【FI】
   G01M13/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-156817(P2017-156817)
(22)【出願日】2017年8月15日
【審査請求日】2018年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】杉田 満春
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−206177(JP,A)
【文献】 特開昭61−053541(JP,A)
【文献】 特開平02−132341(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0240517(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−13/04;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションを供試体とするトランスミッション試験装置において、
前記トランスミッションの入力軸に接続された駆動ダイナモメータと、
前記トランスミッションの出力軸に接続された吸収ダイナモメータと、
前記トランスミッションの入力軸に生じる軸トルク値を検出する軸トルク検出部と、
前記駆動ダイナモメータを制御する制御部と、を有し、
前記駆動ダイナモメータはエンジン実機の挙動を模擬するものであり、
前記制御部は、
軸トルクに対するエンジン実機単体の回転数応答と、軸トルクに対する駆動ダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させる軸トルク補正伝達関数Hfbを、前記軸トルク検出部により検出された軸トルク値に乗算して軸トルク補正値を生成すると共に、エンジントルクに対するエンジン実機単体の回転数応答と、エンジントルクに対する駆動ダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させるエンジントルク補正伝達関数Hffを、エンジントルク入力値に乗算してエンジントルク補正値を生成し、
前記軸トルク補正値と前記エンジントルク補正値との和をトルク指令値として、前記トルク指令値に基づいて、前記駆動ダイナモメータを制御することを特徴とするトランスミッション試験装置。
【請求項2】
前記制御部は、
下記(式1)で表される軸トルク補正伝達関数Hfbを求め、
【数1】
((式1)中、He1は軸トルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、Hd1は軸トルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示し、Hd2はエンジントルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答Hd2を示す。)
また、前記制御部は、前記(式1)で求められた軸トルク補正伝達関数Hfbと前記軸トルク値とから、下記(式2)を用いて、
【数2】
前記軸トルク補正値を生成することを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、
下記(式3)で表されるエンジントルク補正伝達関数Hffを求め、
【数3】
((式3)中、He2はエンジントルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、Hd2はエンジントルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示す。)
また、前記制御部は、前記(式3)で求められたエンジントルク補正伝達関数Hffと前記エンジントルク入力値とから、下記(式4)を用いて、
【数4】
前記エンジントルク補正値を生成することを特徴とする請求項1、又は2に記載のトランスミッション試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの性能試験を行う試験装置に関し、トランスミッションの入力側及び出力側の両方にダイナモメータを接続して、トランスミッションの性能試験を行うトランスミッション試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスミッション試験装置としては、供試体となるトランスミッションの入力軸に駆動ダイナモメータを接続した試験装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスミッション用台上試験機として、供試体であるトランスミッションの入力軸に駆動ダイナモメータを連結させたトランスミッション試験装置が開示されており、トランスミッションの性能試験が行われていた。
【0004】
このように、エンジン実機の挙動を模擬させた駆動ダイナモメータを用いたトランスミッション試験装置においては、エンジン実機が有する慣性と駆動ダイナモメータが有する慣性とには違いが生じることから、同じ値のエンジントルク値を付与したとしても、トランスミッションに生じる軸トルク値が一致しないことはよく知られていた。そこで、両者の軸トルク値を一致させるには、駆動ダイナモメータに慣性補償を行う必要があった。慣性補償の方法の一つとして、駆動ダイナモメータが有する慣性とエンジン実機が有する慣性との差分値に、トランスミッションの入力軸に生じた回転数の変化をかけて指令値を生成し、慣性補償を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−70895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当該慣性補償により生成した指令値は、微分を用いて算出していることにより、ノイズに弱く、特に高周波の帯域ではノイズが増幅されてしまい、高周波の帯域におけるエンジン実機の挙動を精度良く再現することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、エンジン実機の挙動を高精度に再現できるトランスミッション試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明のトランスミッション試験装置は、トランスミッションを供試体とするトランスミッション試験装置において、前記トランスミッションの入力軸に接続された駆動ダイナモメータと、前記トランスミッションの出力軸に接続された吸収ダイナモメータと、前記トランスミッションの入力軸に生じる軸トルク値を検出する軸トルク検出部と、前記駆動ダイナモメータを制御する制御部と、を有し、前記駆動ダイナモメータはエンジン実機の挙動を模擬するものであり、前記制御部は、軸トルクに対するエンジン実機単体の回転数応答と、軸トルクに対する駆動ダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させる軸トルク補正伝達関数Hfbを、前記軸トルク検出部により検出された軸トルク値に乗算して軸トルク補正値を生成すると共に、エンジントルクに対するエンジン実機単体の回転数応答と、エンジントルクに対する駆動ダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させるエンジントルク補正伝達関数Hffを、エンジントルク入力値に乗算してエンジントルク補正値を生成し、前記軸トルク補正値と前記エンジントルク補正値との和をトルク指令値として、前記トルク指令値に基づいて、前記駆動ダイナモメータを制御することを特徴とする。
この構成により、エンジン実機の挙動を高精度に再現することができることから、供試体であるトランスミッションの性能試験を正確に実施することができる。



【0009】
また、本発明のトランスミッション試験装置は、前記制御部は、下記(式1)で表される軸トルク補正伝達関数Hfbを求める。
【0010】
【数5】
【0011】
(式1)中、He1は軸トルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、Hd1は軸トルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示し、Hd2はエンジントルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答Hd2を示す。また、前記制御部は、前記(式1)で求められた軸トルク補正伝達関数Hfbと前記軸トルク値とから、下記(式2)を用い、軸トルク補正値を求める。
【0012】
【数6】
【0013】
前記制御部は、(式1)、(式2)を用いて前記軸トルク補正値を生成することを特徴とする。
この構成により、駆動ダイナモメータが軸トルクに対するエンジン実機の挙動を再現することができる。
【0014】
また、本発明のトランスミッション試験装置は、前記制御部は、下記(式3)で表されるエンジントルク補正伝達関数Hffを求める。
【0015】
【数7】
【0016】
(式3)中、He2はエンジントルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、Hd2はエンジントルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示す。また、前記制御部は、前記(式3)で求められたエンジントルク補正伝達関数Hffと前記エンジントルク入力値とから、下記(式4)を用い、エンジントルク補正値を求める。
【0017】
【数8】
【0018】
前記制御部は、(式3)、(式4)を用いて前記エンジントルク補正値を生成することを特徴とする。
この構成により、駆動ダイナモメータがエンジントルクに対するエンジン実機の挙動を再現することができる。
【0019】
また、本発明のトランスミッション試験装置は、前記トルク指令値は、前記軸トルク補正値と前記エンジントルク補正値との和であることを特徴とする。
この構成により、駆動ダイナモメータが軸トルク補正伝達関数及びエンジントルク補正伝達関数の有効な周波数帯域でエンジン実機の挙動を高精度に再現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジン実機の代わりに、駆動ダイナモメータを用いたトランスミッション試験装置において、エンジン実機の挙動を高精度に再現できることから、供試体であるトランスミッションの性能試験を正確に実施することができるトランスミッション試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態のトランスミッション試験装置の全体構成を示した模式図である。
図2】本発明の実施形態のトランスミッション試験装置の制御部の機能構成を示した模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本実施形態のトランスミッションの性能試験を行う車両用試験装置10を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係る実施形態の車両用試験装置10の全体構成を示した模式図である。
【0023】
車両用試験装置10は、トランスミッションを供試体とするトランスミッション試験装置であり、当該トランスミッションの各種測定データを取得することができる試験装置である。
【0024】
車両用試験装置10は、供試体であるトランスミッション11の入力軸11aに接続された駆動ダイナモメータDM1と、トランスミッション11の1対の出力軸にデフ14を介して接続された吸収ダイナモメータDM2、DM3と、トランスミッション11の入力軸11aに生じる軸トルク値を検出する軸トルク検出部12と、駆動ダイナモメータDM1を制御する制御部13とを有し、制御部13は、軸トルク検出部12により検出された軸トルク値を用いて駆動ダイナモメータDM1の軸トルク補正値を生成すると共に、エンジントルク入力値を受け付け、受け付けたエンジントルク入力値を用いて駆動ダイナモメータDM1のエンジントルク補正値を生成し、軸トルク補正値とエンジントルク補正値とから生成したトルク指令値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1を制御する。
【0025】
また、車両用試験装置10は、制御部13に制御されて駆動ダイナモメータDM1を動作させるインバータ21と、制御部13に制御されて吸収ダイナモメータDM2を動作させるインバータ22と、制御部13に制御されて吸収ダイナモメータDM3を動作させるインバータ23とを備える。
【0026】
トランスミッション11は、例えば、入力軸11aと、クラッチと、複数のギアから構成される変速機構と、出力軸とを備える。また、トランスミッション11は、駆動ダイナモメータDM1から付与されるトルクを、入力軸11aで受け付け、クラッチ、及び変速機構を介して、出力軸へ伝達する。さらに、出力軸から出力されたトルクはデフ14を介して、吸収ダイナモメータDM2、DM3により吸収される。トランスミッション11は、例えばマニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション、又はセミオートマチックトランスミッション等である。
【0027】
駆動ダイナモメータDM1及び吸収ダイナモメータDM2、DM3は、制御部13により制御される。また、駆動ダイナモメータDM1及び吸収ダイナモメータDM2、DM3の内部構成は、一般的なダイナモメータと同様な構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
駆動ダイナモメータDM1は、エンジン実機の代替品として、エンジン実機の挙動を模擬する。また、駆動ダイナモメータDM1は、トランスミッション11の入力軸11aに接続されている。なお、駆動ダイナモメータDM1は、レシプロエンジンや、ロータリーエンジンといったエンジン実機を代替可能である。
【0029】
吸収ダイナモメータDM2、DM3は、仮想車体として、トランスミッション11の出力軸から出力されたトルクを吸収する。吸収ダイナモメータDM2、DM3は、デフ14を介して、トランスミッション11の出力軸に接続されている。
【0030】
軸トルク検出部12は、トランスミッション11の入力軸11aに配置され、トランスミッション11の入力軸11aに生じた軸トルク値を検出する。そして、軸トルク検出部12は、検出した軸トルク値を制御部13へ送信する。
【0031】
制御部13は、軸トルク検出部12から送信された軸トルク値を受け付ける。また、制御部13は、情報処理装置(図示しない)から入力されたエンジントルク入力値を受け付ける。
【0032】
さらに、制御部13は、軸トルク検出部12により検出された軸トルク値に基づいて、後述する軸トルク補正伝達関数Hfbを用いて、軸トルク補正値を生成する。また、制御部13は、受け付けたエンジントルク入力値に基づいて、後述するエンジントルク補正伝達関数Hffを用いて、エンジントルク補正値を生成する。
【0033】
そして、制御部13は、軸トルク補正値とエンジントルク補正値とから生成したトルク指令値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1を制御する。
【0034】
ここで、制御部13による駆動ダイナモメータDM1の制御について、図2に基づいて説明する。図2は、車両用試験装置10の制御部13の機能構成を示した模式図である。図2に示された、Xはエンジントルク入力値を、Yは軸トルクを、Zは駆動ダイナモメータDM1の回転数を示す。
【0035】
制御部13は、駆動ダイナモメータDM1にエンジン実機の挙動を再現させるために、駆動ダイナモメータDM1に対して、トルク指令値を生成し、生成したトルク指令値をインバータ21に出力する。そして、インバータ21は、トルク指令値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1に電力を供給し、駆動ダイナモメータDM1の動作を制御する。
【0036】
本実施形態では、制御部13は、駆動ダイナモメータDM1に対し、図2に示された制御を実施する。
【0037】
先ず、制御部13は、駆動ダイナモメータDM1に対し、軸トルクYの不足分を補償する。具体的には、制御部13は、軸トルク検出部12により検出された軸トルク値を受け付け、(式1)で示される軸トルク補正伝達関数Hfbを用いて、軸トルク補正値を算出する。
【0038】
【数9】
【0039】
(式1)の、He1は軸トルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、Hd1は軸トルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示し、Hd2はエンジントルクに対するダイナモメータ単体の回転数応答を示す。ここで、He1は、駆動ダイナモメータDM1の対象となるエンジン実機の慣性や、剛性等のエンジン実機の各種仕様やデータから求められる。具体的には、対象となるエンジン実機の設計値から算出され、図示しない記憶部に予め記憶されている。また、Hd1及びHd2は、駆動ダイナモメータDM1の慣性や、剛性等のダイナモメータの各種仕様やデータから求められる。具体的には、駆動ダイナモメータDM1の設計値から算出され、図示しない記憶部に予め記憶されている。また、トランスミッション11の各種評価試験を実施する前に、車両用試験装置10を構成する駆動ダイナモメータDM1を計測したデータから同定して求めてもよい。
【0040】
さらに、(式1)のHe1−Hd1は、トランスミッション11の入力軸11aにおける回転数の不足分伝達関数を示す。また、1/Hd2は回転数再現に必要なトルク伝達関数を示す。本実施形態の制御部13は、図示しない記憶部に記憶されているHe1、Hd1、及びHd2を抽出して、(式1)を実行する。
【0041】
このように、(式1)により算出された軸トルク補正伝達関数Hfbは、軸トルク値に対するエンジン単体の回転数応答と、軸トルク補正値に対するダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させる補正伝達関数である。
【0042】
そして、制御部13は、(式2)を用いて、(式1)により算出された軸トルク補正伝達関数Hfbと、軸トルク検出部12により検出された軸トルク値とを乗算することにより、軸トルク補正値を生成することができる。このように生成された軸トルク補正値に応じて、制御部13が、駆動ダイナモメータDM1を制御することにより、軸トルクに対するエンジン実機の挙動を再現することができる。なお、制御部13は、(式1)及び(式2)による軸トルク補正値の計算処理をリアルタイムで実施することができる。
【0043】
【数10】
【0044】
なお、(式1)、(式2)は、例えば、図示しない記憶部に予め記憶されている。
【0045】
次に、駆動ダイナモメータDM1に対し、エンジントルク入力値Xの不足分を補償する。具体的には、制御部13は、エンジントルク入力値Xを受け付け、(式3)で示されるエンジントルク補正伝達関数Hffにより、駆動ダイナモメータDM1に対するエンジントルク補正値を算出する。
【0046】
【数11】
【0047】
ここで、(式3)の、He2はエンジントルクに対するエンジン単体の回転数応答を示し、また1/Hd2は回転数再現に必要なトルク伝達関数を示す。ここで、He2は、駆動ダイナモメータDM1の対象となるエンジン実機の慣性や、剛性等のエンジン実機の各種仕様やデータから求められる。具体的には、対象となるエンジン実機の設計値から算出され、図示しない記憶部に記憶されている。本実施形態の制御部13は、図示しない記憶部に記憶されているHe2及びHd2を抽出して、(式3)を実行する。
【0048】
(式3)により算出されたエンジントルク補正伝達関数Hffは、エンジントルク入力値に対するエンジン単体の回転数応答と、エンジントルク補正値に対するダイナモメータ単体の回転数応答とを一致させる補正伝達関数である。
【0049】
そして、制御部13は、(式4)を用いて、(式3)により算出されたエンジントルク補正伝達関数Hffと、エンジントルク入力値Xとを乗算することにより、エンジントルク補正値を生成することができる。このように生成されたエンジントルク補正値に応じて、制御部13が、駆動ダイナモメータDM1を制御することにより、エンジントルクに対するエンジン実機の挙動を再現することができる。なお、制御部13は、(式3)及び(式4)によるエンジントルク補正値の計算処理をリアルタイムで実施することができる。
【0050】
【数12】
【0051】
なお、(式3)、(式4)は、例えば、図示しない記憶部に予め記憶されている。
【0052】
(式1)〜(式4)から算出された軸トルク補正値とエンジントルク補正値とに基づいて、制御部13は、駆動ダイナモメータDM1を制御する。具体的には、軸トルク補正値とエンジントルク補正値とを加算した加算値をトルク指令値として、インバータ21に出力し、駆動ダイナモメータDM1へ出力する。そして、インバータ21は、トルク指令値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1に電力を供給し、駆動ダイナモメータDM1の動作を制御する。
【0053】
尚、制御部13を備えた制御装置のハードウェア構成について特に限定しないが、当該制御装置は、例えば、CPU、補助記憶装置、主記憶装置、ネットワークインターフェース及び入出力インターフェースを備えるコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成することができる。この場合、入出力インターフェースには、軸トルク検出部12と、エンジントルク入力値Xを送信してくる情報処理装置(図示せず)とが接続されている。また、補助記憶装置には、上述した各部(軸トルク検出部12、制御部13)の機能を実現するためのプログラム(コンピュータプログラム)が記憶されている(例えば、(式1)〜(式4))。そして、上述した各部(軸トルク検出部12、制御部13)の機能は、CPUが上記プログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0054】
車両用試験装置10は、軸トルク補正伝達関数Hfbとエンジントルク補正伝達関数Hffとにより算出した軸トルク補正値、及びエンジントルク補正値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1の動作を制御することにより、軸トルク補正伝達関数Hfb及びエンジントルク補正伝達関数Hffの有効な周波数帯域でエンジン実機の挙動を精度良く再現することができる。すなわち、車両用試験装置10は、エンジン実機を用いることなく、トランスミッション11の性能試験を正確に行うことができ、トランスミッション11の各種測定データを取得することができる。
【0055】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0056】
本実施形態の車両用試験装置10は、制御部13が駆動ダイナモメータDM1を制御するものであるが、吸収ダイナモメータDM2、3に対しても、同様に制御することができる。
【0057】
本実施形態の車両用試験装置10に係る制御部13は、ローパスフィルタ等のフィルタを介して、軸トルク補正伝達関数Hfb、又はエンジントルク補正伝達関数Hffを求めても良い。車両用試験装置10の発振等による影響を防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…車両用試験装置
11…トランスミッション
11a…入力軸
12…軸トルク検出部
13…制御部
14…デフ
21、22、23…インバータ
DM1…駆動ダイナモメータ
DM2、DM3…吸収ダイナモメータ
Hfb…軸トルク補正伝達関数
Hff…エンジントルク補正伝達関数
【要約】
【課題】エンジン実機の挙動を高精度に再現できるトランスミッション試験装置を提供する。
【解決手段】トランスミッション11の入力軸11aに接続された駆動ダイナモメータDM1と、トランスミッション11の出力軸に接続された吸収ダイナモメータDM2、DM3と、トランスミッション11の入力軸11aに生じる軸トルク値を検出する軸トルク検出部12と、駆動ダイナモメータDM1を制御する制御部13と、を有し、制御部13は、軸トルク検出部12により検出された軸トルク値を用いて、駆動ダイナモメータDM1の軸トルク補正値を生成すると共に、エンジントルク入力値を受け付け、受け付けたエンジントルク入力値を用いて、駆動ダイナモメータDM1のエンジントルク補正値を生成し、軸トルク補正値とエンジントルク補正値とから生成したトルク指令値に基づいて、駆動ダイナモメータDM1を制御する。
【選択図】図1
図1
図2