特許第6475299号(P6475299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6475299
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】プリズム器具装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   G01C15/06 T
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-168433(P2017-168433)
(22)【出願日】2017年9月1日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】515300114
【氏名又は名称】植 弘三
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】植 弘三
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−034066(JP,U)
【文献】 実開平04−018315(JP,U)
【文献】 特開昭64−032187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚立に固定する略U字状のプリズムホルダーと、
前記プリズムホルダーの略U字状の両側壁中央部に外方に向かって突出固定した左右の
円柱ガイド軸と、
前記円柱ガイド軸の左右半円弧部分を縦方向に切削して形成した左右のスライド扁平面
と、
前記プリズムホルダーの略U字状内部に左右の前記円柱ガイド軸を介して収納支持した
プリズム器具と、
前記プリズム器具の左右側部に前後方向に形成したスライド転回用のスライド部と、
スライド部の複数位置に形成したプリズム器具転回用の円形孔部と、
スライド部の各円形孔部間を連通し、円柱ガイド軸のスライド扁平面のみ挿通可能な幅員
としたスリット
より構成したことを特徴とする測量用のプリズム器具装置。
【請求項2】
前記プリズム器具の形状を円筒形状又はH形状としたことを特徴とする請求項1に記載
の測量用のプリズム器具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量用プリズムの位置調整が容易で正確に行えるプリズム器具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測量技術はレーザー光線を使用して測量地点と観測地点との距離及び角度を測定しており、測量地点のターゲットとして入射した光を入射した方向に反射するコーナーキューブリフレクター構造を有した反射プリズムを使用している。
【0003】
この反射プリズムは観測地点に設けた三脚の頂部に載置固定するものであるが、反射プリズムとレーザー光線を放射する測量機器とは一対の関係であり測量機器が変更されるとその測量機器に応じて反射プリズムの測量機器に対する前後位置を調整する必要がある。
【0004】
また、測量機器が備えている自動視準機能では反射プリズムのプリズム頂点部が測量地点の垂直直線上に存在しないと測量結果に誤差を生じるため、反射プリズムを変更した際はその反射プリズムのプリズム頂点部の位置を測量地点に合致するように調整する必要がある。
【0005】
下記特許文献1では、光波測距儀から照射されるレーザー光を入射した方向へ反射する上部及び下部プリズムをプリズム収容体内に収容し、このプリズム収容体の右側面に両プリズムを測量地点のポールに対して取り付けるための取り付け機構を回動自在に設ける。この構成によれば、取り付け機構を回動すると、ポールと両プリズムとの間の距離が変更され測量機器を変更した際の測定誤差を低減できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−26662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では所定の支持ポールに対して位置変更が可能なプリズム収容体を取り付けているため、測量機器を変更した際にその測量機器に対応した位置関係に反射プリズムの位置を変更することは可能だが、自動視準による測量誤差に対応することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明では測量機器の変更及び測量機器の自動視準に対応した反射プリズムの位置調整を容易で正確に実現できるプリズム器具装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の測量用のプリズム器具装置では、脚立に固定する略U字状のプリズムホルダーと、このプリズムホルダーの略U字状の両側壁中央部に外方に向かって突出固定した左右の円柱ガイド軸と、この円柱ガイド軸の左右半円弧部分を縦方向に切削して形成した左右のスライド扁平面と、プリズムホルダーの略U字状内部に左右の前記円柱ガイド軸を介して収納支持したプリズム器具と、このプリズム器具の左右側部に前後方向に形成したスライド転回用のスライド部と、スライド部の複数位置に形成したプリズム器具転回用の円形孔部と、スライド部の各円形孔部間を連通し、円柱ガイド軸のスライド扁平面のみ挿通可能な幅員としたスリットと、より構成した。
【0010】
また、本発明の測量用のプリズム器具装置では、前記プリズム器具の形状を円筒形状又はH形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測量用のプリズム器具装置によれば、脚立に固定する略U字状のプリズムホルダーと、このプリズムホルダーの略U字状の両側壁中央部に外方に向かって突出固定した左右の円柱ガイド軸と、この円柱ガイド軸の左右半円弧部分を縦方向に切削して形成した左右のスライド扁平面と、プリズムホルダーの略U字状内部に左右の前記円柱ガイド軸を介して収納支持したプリズム器具と、このプリズム器具の左右側部に前後方向に形成したスライド転回用のスライド部と、スライド部の複数位置に形成したプリズム器具転回用の円形孔部と、スライド部の各円形孔部間を連通し、円柱ガイド軸のスライド扁平面のみ挿通可能な幅員としたスリットと、より構成したので、スライド部と円柱ガイド軸を介して所望の位置にプリズム器具を正確かつ簡単にセットすることができる。また、前後位置の調整がスライド扁平面とスリットを介して行われるために移動時に幅員方向でぶれることがない。また、一旦所望のプリズム器具転回用の円形孔部に到達し水平方向に転回すると円形孔部に連通したスリットに円柱ガイド軸が侵入できず、位置固定したプリズムが所望の位置からずれることがない。
【0012】
また、本発明の測量用のプリズム器具装置では、プリズム器具の形状を円筒形状またはH形状としたので、反射プリズムの外観形状に依らずプリズム器具に反射プリズムを装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例のプリズム固定装置を示す斜視図である。
図2】第1実施例のプリズムホルダーを示す正面図である。
図3】第1実施例のプリズムホルダーを示す側面図である。
図4】第1実施例のプリズムホルダーに取り付けるブラケットを示す正面図である。
図5】第1実施例のプリズム器具を示す斜視図である。
図6】第1実施例のプリズム器具を示す天面図である。
図7】第1実施例の円柱ガイド軸を示す図である。
図8】第1実施例の円柱ガイド軸を示す図である。
図9】第2実施例のプリズム器具を示す斜視図である。
図10】第2実施例のプリズム器具を示す天面図である。
図11】第1実施例のプリズム固定装置の位置変更の方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、脚立に固定する略U字状のプリズムホルダーと、このプリズムホルダーの略U字状の両側壁中央部に外方に向かって突出固定した左右の円柱ガイド軸と、この円柱ガイド軸の左右半円弧部分を縦方向に切削して形成した左右のスライド扁平面と、プリズムホルダーの略U字状内部に左右の前記円柱ガイド軸を介して収納支持したプリズム器具と、このプリズム器具の左右側部に前後方向に形成したスライド転回用のスライド部と、スライド部の複数位置に形成したプリズム器具転回用の円形孔部と、スライド部の各円形孔部間を連通し、円柱ガイド軸のスライド扁平面のみ挿通可能な幅員としたスリットと、より構成し、さらにプリズム器具の形状を円筒形状又はH形状としたことを要旨とする。
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳説する。
【0016】
図1は本発明の第1実施例にかかるプリズム器具装置100の概略構成図である。プリズム器具装置100は、測量地点に載置される支持ポールに取り付けるためのプリズムホルダー10と、このプリズムホルダー10に固定され反射プリズムPを取り付けるためのプリズム器具20と、プリズムホルダー10及びプリズム器具20を係合するための円柱ガイド軸30と、円柱ガイド軸30を嵌め合わせて固定するための蝶ナット40と、で構成している。
【0017】
プリズムホルダー10は、図2,3に示すように正面視略U字形状であり、このU字形状の両先端部近傍に長孔形状に穿設したネジ孔11,11を形成し、さらにU字形状の下端部略中央部に略円形状のねじ切り孔12を設けている。
このねじ切り孔12には、図4に示すように略円柱状で上端部にねじ切り部14を設けたブラケット13を係合固定している。
【0018】
また、ブラケット13の形状は略円柱状としているがプリズムホルダー10を支持するポール(図示せず)に固定する形状によってブラケット13の形状を変化させることが可能であり、例えば、ブラケット13を略円錐形状としても良い。
【0019】
プリズム器具20は図5,6に示すように、略円柱形状で中空部24を有しており、外周面上には対向する向きに略板状のスライド部21,21を形成している。また、プリズム器具20の中空部24には、プリズム器具20の長手方向略中央部に中空部24を閉塞するように底部25が形成されている。
【0020】
各スライド部21は短手方向略中央部に長手方向に向かって形成した細長のスリット22と、このスリット22の両端部及びいずれか一端部の近傍に設けた3箇所の円形孔部23―1,23―2,23−3で構成している。
【0021】
スリット22は細長の穿設部であり、後述する円柱ガイド軸30に形成したスライド扁平面32と略同等の幅員としている。また、円形孔部23―1,23―2,23−3はそれぞれ略円形状に穿設しており、後述する円柱ガイド軸30に形成したスライド扁平面32と略同径としている。
【0022】
さらに、円形孔部23―1,23―2,23−3は、スリット22の一端部に形成した円形孔部23−1を基点としてスリット22に沿って30mm離れた位置に円形孔部23−2を形成し、さらに円形孔部23−1を基点としてスリット22に沿って40mm離れた位置に円形孔部23−3を形成している。
なお、本実施例ではプリズム調整距離を30mm及び40mmに合わせているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
また、底部25は図6に示すように正面視略円形で各スライド部21の近傍を縦方向に切削して長孔形状としており、この切削端部26,26とプリズム器具20の内側面との間に通過孔27,27を形成している。また、底部25の略中央部には略円形でねじ切りした固定孔28を形成している。
【0024】
各通過孔27は後述する円柱ガイド軸30がスライド部21に形成したスリット22を移動する際に円柱ガイド軸30の頭部31が干渉しないように設けられた空間である。
【0025】
円柱ガイド軸30は図7,8に示すように特殊六角ボルトであり、六角形状の頭部31と、この頭部31に隣接する略円形のネジ部の左右半円弧部を縦方向に切削して形成した長孔形状のスライド扁平面32と、で構成している。
【0026】
このように構成されたプリズム器具装置100は、プリズムホルダー10のネジ孔11にプリズム器具20のいずれかの円形孔部23−1,23−2,23−3の位置を合わせ、プリズム器具20の中空部24より該円形孔部23−1,23−2,23−3に円柱ガイド軸30のスライド扁平面32を挿通し、ネジ孔11より突出したスライド扁平面32を蝶ナット40に螺合することで形成される。
【0027】
次にプリズム固定装置100の第2実施例として図9,10に示すようにプリズム器具20をH型形状としたプリズム器具装置100´について説明する。なお、その他の構成については第1実施例と同様であるため重複説明は適宜省略する。
【0028】
第2実施例におけるプリズム器具50は、正面視略H型形状でありH形状の両側辺の対向する向きに略板状のスライド部51,51を形成し、更に各スライド部51の間に略板状のプリズム固定部54を横架している。
【0029】
各スライド部51は短手方向略中央部に長手方向に向かって形成した細長のスリット52と、このスリット52の両端部及びいずれか一端部の近傍に設けた3箇所の円形孔部53−1,53−2,53−3で構成している。
【0030】
スリット52は細長の穿設部であり、前述の円柱ガイド軸30に形成したスライド扁平面32と略同等の幅員としている。また、円形孔部53−1,53−2,53−3はそれぞれ略円形状に穿設しており、前述の円柱ガイド軸30に形成したスライド扁平面32と略同径としている。
【0031】
さらに、円形孔部53−1,53−2,53−3は、スリット52の一端部に形成した円形孔部53−1を基点としてスリット52に沿って30mm離れた位置に円形孔部53−2を形成し、さらに円形孔部53−1を基点としてスリット52に沿って40mm離れた位置に円形孔部53−3を形成している。
なお、第2実施例においても位置変更距離を30mm及び40mmに合わせているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
また、プリズム固定部54の略中央部には略円形でねじ切りした固定孔56を形成し、さらにプリズム固定部54の両端部、すなわち各スリット部51とプリズム固定部54の連結部分には略半円形状の穿設孔である通過孔55を形成しており、前述した円柱ガイド軸30の頭部31が通過できるようにしている。
【0033】
このように構成されたプリズム器具装置100´は、プリズムホルダー10のネジ孔11にプリズム器具50のいずれかの円形孔部53−1,53−2,53−3に位置を合わせ、プリズム器具50の内側より円柱ガイド軸30のスライド扁平面32を挿通し、ネジ孔11より突出したスライド扁平面32を蝶ナット40に螺合することで形成される。
【0034】
本発明のプリズム器具装置100,100´の構成は上記の通りであり、該器具装置100,100´を使用して測量機器を変更した際や反射プリズムPを変更した際の測量誤差を低減するためのプリズム器具20の位置変更手順は次の第1〜4工程までの4つの工程によって行われる。ここでは、プリズム器具装置100の構成にて位置変更手順を説明する。
なお、図11(a)〜(d)は、プリズム器具装置の位置変更手順を示す図面であり、上段の図が位置変更手順を示す側面図で、下段の図が図11(a)〜(d)の上段の図に対応したプリズム器具20と円柱ガイド軸30との位置関係を示す図である。
【0035】
まず第1工程では、プリズムホルダー10のねじ孔11,11の外部に位置する蝶ナット40,40を緩めて、プリズム器具20をプリズムホルダー10の内側で回動自在とする。
【0036】
次に第2工程では、図11(b)に示すようにスリット22をスライド扁平面32が移動できるようにプリズム器具20を縦方向に転回する。次いで、スライド部21のスリット22内に円柱ガイド軸30の左右のスライド扁平面32を挿入遊嵌してスリット22に沿ってプリズム器具20を縦方向に移動し所定の位置となる例えば円形孔部23−2の位置まで変位する。
【0037】
次に第3工程では、図11(c)に示すように第1工程と同様に円形孔部23−2内で左右の円柱ガイド軸30を中心としてプリズム器具20を水平状態に転回する。このプリズム器具20の水平位置状態がプリズム器具20の調整固定位置となる。
【0038】
次に第4工程では、図11(d)に示すように反射プリズムPをプリズム器具20の底部25に形成した固定孔28に螺着し、対向方向からの測量レーザー照射を反射プリズムPが受けて測量が行われる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、実用新案登録請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0040】
P 反射プリズム
100,100´ プリズム器具装置
10 プリズムホルダー
11 ネジ孔
12 ねじ切り孔
13 ブラケット
14 ねじ切り部
20 プリズム器具
21 スライド部
22 スリット
23−1,23−2,23−3 円形孔部
24 中空部
25 底部
26 切削端部
27 通過孔
28 固定孔
30 円柱ガイド軸
31 頭部
32 スライド扁平面
40 蝶ナット
50 プリズム器具
51 スライド部
52 スリット
53−1,53−2,53−3 円形孔部
54 プリズム固定部
55 通過孔
56 固定孔

【要約】
【課題】
測量機器や反射プリズムの変更に伴う測量誤差を低減するプリズム器具装置の提供を図る。
【解決手段】
脚立に固定する略U字状のプリズムホルダーと、前記プリズムホルダーの略U字状の両側壁中央部に外方に向かって突出固定した左右の円柱ガイド軸と、前記円柱ガイド軸の左右半円弧部分を縦方向に切削して形成した左右のスライド扁平面と、前記プリズムホルダーの略U字状内部に左右の前記円柱ガイド軸を介して収納支持したプリズム器具と、前記プリズム器具の左右側部に前後方向に形成したスライド転回用のスリットと、スリットの複数位置に形成したプリズム器具転回用の円形孔部と、スリットの各円形孔部間を連通し、円柱ガイド軸のスライド扁平面のみ挿通可能な幅員としたスライド部とより構成することで測量機器や反射プリズムの変更に伴う測量誤差を低減したプリズム器具装置を提供できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11