特許第6475323号(P6475323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475323ヒドロゲルを用いた3次元的幹細胞骨分化誘導方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475323
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ヒドロゲルを用いた3次元的幹細胞骨分化誘導方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20190218BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20190218BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20190218BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   C12N5/077
   !C12N5/0775
   !C12M1/00 C
   !C12M3/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-514360(P2017-514360)
(86)(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公表番号】特表2017-527297(P2017-527297A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】KR2015009658
(87)【国際公開番号】WO2016043488
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0125316
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517082560
【氏名又は名称】セフォ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヒュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リ、 サン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ジ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、 ソル
(72)【発明者】
【氏名】モ、 ヒュン ジュン
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0206022(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/062911(WO,A2)
【文献】 特開2016−013070(JP,A)
【文献】 特表2017−526378(JP,A)
【文献】 特表2009−542230(JP,A)
【文献】 J. Biomed. Mater. Res. Part A,2004年,Vol. 68, No. 4,pp. 773-782
【文献】 PLOS ONE,2014年,Vol. 9, Issue 6,e98640(pp. 1-11)
【文献】 J. Orthop. Res.,2003年,Vol. 21,pp. 139-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−5/28
C12M 1/00−3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1μm〜8μmの空隙を有する多孔性膜を細胞培養容器の内部に対して非接触的に位置させること
記多孔性膜の片側表面に濃度5%〜15%のヒドロゲル溶液を塗布してゾルゲル相転移を通して、厚さ1mm〜4mmのヒドロゲルをコーティングすることであって、
前記ヒドロゲルは、細胞培養温度である37℃ではゲル状態であって1.E+00mPa・s〜1.E+06mPa・s(10mPa・s〜10mPa・s)の粘度を有し、前記細胞培養温度未満においてゾル状態に転移可能である、前記コーティングすること
ーティングされた前記ヒドロゲルの上に幹細胞を接種すること;及び、
記幹細胞を骨分化誘導培地で培養すること、を含み、
前記多孔性膜及び前記ヒドロゲルは、空気及び培地の透過を許容する、
7日以内に幹細胞からの骨分化を誘導する方法。
【請求項2】
記多孔性膜と前記細胞培養容器との間に培地が流入して幹細胞と培地の接触表面積を増加させることで骨分化誘導期間を短縮させることを特徴とする請求項1に記載の幹細胞からの骨分化誘導する方法。
【請求項3】
記幹細胞は、臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical cord mesenchymal stem cell)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose derived mesenchymal stem cell)、胚性幹細胞由来間葉系幹細胞(Embryonic stem cell derived mesenchymal stem cell)、歯周靱帯細胞(Periodontal ligament cell)又は骨髄由来間葉系幹細胞(Bone marrow-derived mesenchymal stem cell)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の幹細胞からの骨分化誘導する方法。
【請求項4】
記ゾルゲル相転移は、37℃で1時間〜2時間の間に行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の幹細胞からの骨分化誘導する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞の骨分化誘導において、合成バイオゲルの上で短時間内に骨分化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、組織工学と再生医学の発達により、損傷した組織と臓器を治療可能な従来とは異なる方法が開発されているが、そのうち最も脚光を浴びているのが間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)による細胞治療である。幹細胞(stem cell)とは、未分化状態を維持しながら無限に増殖することができ、一定の環境と条件が与えられる場合、特定の機能と形態を有するように分化することができる細胞を言う。幹細胞には、ヒトの胚芽を用いて作ることができる胚性幹細胞(Embryonic stem cell)と、血球細胞を絶えず作る骨髄細胞のような成体幹細胞(Adult stem cell)がある。胚性幹細胞は、人体を成す全ての細胞と組織に分化することができるが倫理的な理由で使用が制限されている反面、成体幹細胞は、臍帯血や成長済みの成人の骨髄と血液などから抽出したものであり、成体幹細胞は、生体内移植後に特定組織及び臓器特異的に分化することができ、本来の細胞の特性とは異なる他の組織の細胞に転移分化することができる分化柔軟性を有する細胞で、倫理的な制限がなく組織工学に広く使われている。よって、最近は、医療分野で幹細胞を増殖した後、特定細胞に分化させて、患者の組織または器官の再生及び置換のために多様な試みと初期臨床実験が進行中にある。間葉系幹細胞は、発生が終わった身体の色々な臓器または血液に存在する成体幹細胞のうちの一つであり、維持方法が容易で、倫理的問題のない細胞源であり、現在再生医療分野で最も注目されている幹細胞であるが、胚性幹細胞に比べて体外継代培養及び分化能に限界点が存在するとの短所がある。
【0003】
既にヒトと動物を対象にした研究で成体幹細胞のうち骨髄由来幹細胞が骨形成細胞に分化されることが確認され(Friedenstein A.J. et al.,Transplantation.,6:230-247,1968)、最近の研究では骨髄から分離した幹細胞を培養して骨芽細胞に分化増殖させる方法に進展があり、これを通した臨床適用の可能性が高くなっている(Ohgushi H.et al.,J.Biomed Mater Res.,48:913-927,1999)。最近は、間葉系幹細胞から骨細胞を分化させる方法が主導的に研究されているのが実情である。
【0004】
一方、現在、幹細胞の分化に最も広く使われている方法は、2次元的なウェルプレート(well plate)で細胞を培養して分化させる方法である。しかし、最近、論文報告によると、2次元(monolayer)的細胞培養の場合、3次元的細胞培養時よりも細胞の機能が落ち、形態(morphology)も著しく変わるという報告があった(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,100:1943-1948,2003;Cell,111:923-925,2002;Cancer Cell 2:205-216,2002)。このように細胞の状態に悪影響を及ぼす方式で細胞を培養しながら分化を誘導すると、分化が難しく、期間が長くかかるとの短所がある。このような細胞培養の短所を克服しようと、韓国登録特許第10-0733914号では、3次元ゲルの中に細胞が存在することを特徴とする3次元微細細胞培養システムに関して提示しているが、幹細胞の細胞培養または分化後にゲル内部に存在する細胞を分離するためにはゲルを溶かし出さなければならないため、細胞損傷がひどいとの短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の2次元的細胞培養容器で幹細胞を骨分化誘導すると、幹細胞の一部分でのみ培地と接するため、分化に必要な栄養成分、誘導成分及び空気の流入が容易でなくて分化が難しく、分化期間が3乃至5週と長いという短所がある。ゲル内部に培養される従来の3次元培養方式は、細胞を分離することができないとの短所があることから、幹細胞の骨分化後、分化された細胞の分離及び使用が容易な3次元細胞培養システムの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明では、容易に細胞を分離できると共に、細胞の培地接触表面積を増加させて骨分化を促進させるために、細胞培養容器の内部に非接触的に存在しながら細胞の全方位で培地と接触して骨分化を促進させて骨分化期間の短縮を可能にする方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の幹細胞を骨分化誘導する方法を用いて幹細胞を骨分化すると、幹細胞と培地がより広い表面積で接触できることから、幹細胞の骨分化誘導が促進されて、従来の骨分化方法に比べて顕著に骨分化誘導期間を短縮させることができ、細胞がヒドロゲルの内・外面に付着されているが、培養温度である37℃未満ではゲル状態のヒドロゲルがゾル状態に変わるため、分化後も細胞の分離が容易であるとの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の3次元状態での幹細胞分化方法を示した図式である。
図2】従来の培養皿を用いた2次元状態での幹細胞分化方法を示した図式である。
図3】ヒドロゲルなしに高分子膜を用いた3次元的幹細胞分化方法を示した図式である。
図4】比較例1の方法(14日:control I、5日:control II)、比較例2の方法(レーン3、ヒドロゲル濃度0%)及び実施例の方法で骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞の骨分化を確認した図である。
図5】比較例1の方法、比較例2の方法(レーン2)及び実施例の方法で骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞の骨分化を確認した図である。
図6】比較例2の方法(control)、比較例2の方法に追加でBMP2 100ng/mlまたはWnt3a 20ng/mlを処理、及び実施例の方法で骨分化誘導した臍帯由来間葉系幹細胞(hydrogel(3D))の骨分化程度を確認した図である。
図7】実施例の方法で1日、3日、5日または7日間骨分化誘導した臍帯由来間葉系幹細胞の骨分化程度を確認した図である。
図8】骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(ADMSC)、臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)、胚性幹細胞由来間葉系幹細胞(ESMSC)及び歯周靱帯細胞(PDL)を比較例1の方法で14日間(2D)、比較例2の方法(without hygrogel)及び実施例の方法で骨分化誘導した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。但し、本発明は多様な形態に変更されて具現されることができ、ここで説明する具現例に限定されるものではない。
【0010】
一側面において、本発明は、
片側面にヒドロゲルが塗布された多孔性膜が非接触的に内部に位置した細胞培養容器で幹細胞を骨分化誘導する方法に関する。
【0011】
一具現例で、本発明は、
多孔性膜を細胞培養容器の内部に非接触的に位置させ;
上記多孔性膜の片側表面にヒドロゲル溶液を塗布してゾルゲル相転移を通してヒドロゲルをコーティングし;
上記コーティングされたヒドロゲルの上に幹細胞を接種し;及び、
上記幹細胞を骨分化誘導培地で培養して幹細胞を骨分化誘導することができる。
【0012】
一具現例で、幹細胞接種後、骨分化誘導培地で培養する前に上記幹細胞を骨分化前処理培地で10乃至24時間培養する段階をさらに含むことができる。上記前処理培地は、グルコース濃度が1.5g/l以下であり得る。
【0013】
一具現例で、上記多孔性膜を細胞培養容器の底に平行に非接触的に位置させることができる。上記多孔性膜にヒドロゲルをコーティングすることと、細胞培養容器の内部に非接触的に位置させることとの順序は特に限定されず、上記の場合、多孔性膜を細胞培養容器の底に非接触的に配置した後にヒドロゲルをコーティングすることもでき、予め多孔性膜にヒドロゲルをコーティングした後に細胞容器の内部に非接触的に配置することもできる。
【0014】
本発明の細胞培養容器は、一般的に細胞培養に使われる皿(dish)、ウェルプレートであり、細胞培養に使用され、多孔性膜を容器の底に非接触的に導入できる細胞培養容器ならば特に制限はない。
【0015】
一具現例で、細胞培養容器の内部で非水平的に細胞を培養して幹細胞を骨分化誘導する場合は、多孔性膜の片側表面にヒドロゲル溶液を塗布し、ヒドロゲルの上に細胞を付着した後、細胞培養容器の内部に非接触的に位置させて骨分化を誘導することもできる。
【0016】
一具現例で、上記幹細胞は、骨分化誘導培地で3乃至7日間培養されることができる。
【0017】
一具現例で、上記多孔性膜と細胞培養容器との間に培地が流入して幹細胞と培地の接触表面積を増加させることで骨分化誘導期間の短縮を可能にする。本発明の多孔性膜及びヒドロゲルは、空気及び培地の透過を許容し、多孔性膜と細胞培養容器が非接触的に配置されることで生じた多孔性膜と細胞培養容器との間の空間に培地が流入して培地及び空気が細胞の付着部位にも提供されるため、より広い表面積で幹細胞が培地及び空気と接し、これにより骨分化誘導時間が短縮される。一例として、既存の骨分化方式は3週乃至5週かかるが、本発明の方法を用いれば3日乃至7日で骨分化が起きる。
【0018】
本発明の細胞培養容器は、一般的に細胞培養に使われる皿(dish)、ウェルプレートであり、細胞培養に使用され、多孔性膜を容器に非接触的に導入できる細胞培養容器ならば特に制限はない。
【0019】
一具現例で、上記ヒドロゲル溶液(ヒドロゾル)のヒドロゲルへのゾルゲル相転移は、37℃で1乃至2時間の間に行われることができる。
【0020】
一具現例で、上記ヒドロゲルは、1乃至40%ヒドロゲルであり得、より望ましくは、1乃至15%ヒドロゲルである。0%ヒドロゲルでは幹細胞が分化することができず、40%以上では骨分化効率がさらに増加せず意味がない。これに限定されない。
【0021】
一具現例で、1乃至40%のヒドロゲルを多孔性膜に200乃至300μl/cm塗布することができ、ゾルゲル相転移を通して形成されたヒドロゲルの厚さは1乃至4mmであり得る。
【0022】
一具現例で、上記ヒドロゲルは、ヒドロゲル%によって37℃での粘度が1.E+00乃至1.E+06(100乃至106)mPa・sであり得、上記範囲以外の気孔サイズを有するヒドロゲルでは幹細胞の付着または分化が難しい場合がある。本発明のヒドロゲルは、細胞培養温度である37℃ではゲル状態であるためゲルの内外で細胞が培養されるが、培養温度未満ではゾル状態に変わるため細胞分化後に分離が容易である。
【0023】
一具現例で、上記多孔性膜は、空隙が0.1乃至8μmであり得るが、培地及び空気は通過できヒドロゲルは通過できない空隙サイズならば制限はない。
【0024】
一具現例で、上記幹細胞は、臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical cord mesenchymal stem cell)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose derived mesenchymal stem cell)、胚性幹細胞由来間葉系幹細胞(Embryonic stem cell derived mesenchymal stem cell)、歯周靱帯細胞(Periodontal ligament cell)または骨髄由来間葉系幹細胞(Bone marrow-derived mesenchymal stem cell)であり得る。上記幹細胞は、特にその由来に制限はなく、その例として、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギ由来の細胞がある。上記幹細胞は、望ましくはヒト由来の幹細胞であるが、これに制限されない。
【0025】
本発明で、用語“多孔性膜”または“高分子膜(polymer membrane)”は、培地及び空気は通過できヒドロゲルは通過できない多孔性膜、透過性膜またはフィルム形態の物質を言う。細胞培養培地及び空気透過性である多孔性構造物であれば特に制限はない。
【0026】
本発明で用語“ヒドロゲル(hydrogel)”は、ゾルゲル相転移を通して水を分散媒とする液体が固まって流動性を喪失し多孔性構造を成す物質を言う。細胞の付着及び培養に適したヒドロゲルならば特に制限はなく、本発明の一実施例では生分解性合成バイオゲルを使った。
【0027】
本発明で、用語“幹細胞”は、自己複製能及び分化増殖能を有する未分化細胞を意味する。幹細胞には、分化能力によって、全分化能幹細胞(pluripotent stem cell)、多分化能幹細胞(multipotent stem cell)、単分化能幹細胞(unipotent stem cell)などの亜集団が含まれる。上記全分化能幹細胞は、生体を構成する全ての組織や細胞に分化することができる能力を有する細胞を意味し、多分化能幹細胞は、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞に分化することができる能力を有する細胞を意味する。単分化能幹細胞は、特定の組織や細胞に分化することができる能力を有する細胞を意味する。全分化能幹細胞としては、胚性幹細胞(ES Cell)、胚性生殖細胞(EG Cell)、人工多能性幹細胞(iPS cell)などを挙げることができ、多分化能幹細胞としては、間葉系幹細胞(脂肪由来、骨髄由来、臍帯血または臍帯由来など)、造血幹細胞(骨髄または末梢血液などから由来)、神経幹細胞、生殖幹細胞などの成体幹細胞などを挙げることができ、単分化能幹細胞としては、平常は分裂能の低い状態で存在するが活性化以後に旺盛な分裂で単に肝細胞のみを作る前駆細胞(Committed stem cell)などを挙げることができる。
【0028】
一側面において、本発明は、
細胞培養容器;
片側面に細胞が付着されるヒドロゲルが付着された多孔性膜;及び、
上記細胞培養容器の内部に上記ヒドロゲルが付着された多孔性膜が非接触的に配置されることを含む幹細胞分化装置に関する。
【0029】
一具現例で、上記多孔性膜及びヒドロゲルは、培地及び空気の透過が可能なものであり得る。
【0030】
下記実施例を通して本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は、本発明の内容を具体化するためのものであるだけで、これにより本発明が限定されるわけではない。
【実施例】
【0031】
実施例1.3次元状態での幹細胞分化方法
幹細胞の分化を促進させるために、3次元的に分化を行う。このために、細胞培養皿またはウェルの底に水平になるように非接触的に0.4μm乃至1μmの高分子膜(Corning,USA)を設け、生分解性合成バイオゲル(BASF,Germany)を滅菌された3次蒸留水に溶かして製造した多様な%の生分解性合成バイオゲル(BASF,Germany)を高分子膜の上に250μl/cm塗布した後、1時間30分の間37℃でゲルに固めて分化用細胞培養器を製作した。ゾルゲル相転移後の生分解性合成バイオゲルの厚さは、最小1mmであり、平均2.5mmであった。脂肪由来間葉系幹細胞はCEFOgro ADMSC培地(CB-ADMSC-GM,CEFO,Korea)、骨髄由来間葉系幹細胞はCEFOgro BMMSC培地(CB-BMMSC-GM,CEFO,Korea)、胚性幹細胞由来間葉系幹細胞はCEFOgro ESMSC培地(CB-ESMSC-GM,CEFO,Korea)、臍帯由来間葉系幹細胞はCEFOgro UCMSC培地(CB-UCMSC-GM,CEFO,Korea)、歯周靱帯細胞(PDL)はCEFOgro PDL培地(CB-PDL-GM,CEFO,Korea)で37℃、CO培養器にて3日乃至4日間培養した後、それぞれの幹細胞を上記バイオゲルの上に接種し、骨分化前処理培地(CB-DM-Osteo-PT,CEFO,Korea)を入れ、37℃、CO培養器にて18時間培養した。その後、骨分化誘導培地(CB-DM-Osteo,CEFO,Korea)に培地を交換し37℃、CO培養器にて5日間骨分化を誘導した(図1)。
【0032】
比較例1.2次元状態での幹細胞分化方法
従来の幹細胞分化方法である2次元的分化方法で幹細胞を分化した。具体的に、12ウェル細胞培養容器(皿)に細胞を接種し、骨分化誘導のための前処理培地(CB-DM-Osteo-PT,CEFO,Korea)で細胞密度が85乃至90%になるまで培養した後、骨分化誘導培地(CB-DM-Osteo,CEFO,Korea)に交換して14乃至21日間骨分化を誘導した(図2)。
【0033】
比較例2.ヒドロゲルなしに3次元状態での幹細胞分化方法
上記実施例1で高分子膜の上に生分解性合成バイオゲルが0%である(高分子膜だけ存在)場合における幹細胞の分化を確認するために、高分子膜の上に幹細胞を接種した後、実施例1と同一に5日間培養した(図3)。
【0034】
実験例1.骨髄由来間葉系幹細胞の骨分化確認
上記比較例1の方法で14日または5日間骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞、上記比較例2の方法(0%生分解性合成バイオゲル)で5日間骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞及び上記実施例の方法(5%、10%または15%生分解性合成バイオゲル)で骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞の骨分化を位相差顕微鏡を通して肉眼で確認した。また、骨分化した細胞をアリザリンレッド染色を通して確認するために各細胞をPBSで2回洗浄した後、70%エチルアルコールで10分間常温で固定し、3次蒸留水で2回洗浄した。その後、アリザリンレッド(Alizarin Red)染色キット(CB-SK-Osteo)のSol Iを処理し、常温で30分間反応させた。その後、Sol IIで3回きれいに洗浄した後、倒立顕微鏡(LEICA,Germany)でイメージ分析を行った。また、これを数値化するために、イメージ分析後、Sol IIIを処理して30分間常温で反応させ、染色された試薬を完全に溶かした。溶かした溶液を100μlずつとって96ウェルプレートに入れ、550nmで吸光度を測定した。その結果、比較例1の方法で5日間骨分化誘導した場合、及び比較例2の方法で5日間骨分化誘導した場合、骨分化がなされなかったが、実施例の方法で5日間骨分化を誘導した場合は、5日で十分な骨分化が誘導された。特に、実施例の方法で骨分化したとき、1乃至30%ヒドロゲルで骨分化が全てよく起き、特に10%濃度で骨分化がもっとも最適であることが分かった(図4)。
【0035】
実験例2.脂肪由来間葉系幹細胞の骨分化確認
上記比較例1の方法で14日間骨分化誘導した脂肪由来間葉系幹細胞、上記比較例2の方法(0%生分解性合成バイオゲル)で5日間骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞及び上記実施例の方法(5%、10%または15%生分解性合成バイオゲル)で骨分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞の骨分化を位相差顕微鏡を通して肉眼で確認した。また、骨分化した細胞をアリザリンレッド染色を通して確認するために各細胞をPBSで2回洗浄した後、70%エチルアルコールで10分間常温で固定し、3次蒸留水で2回洗浄した。その後、アリザリンレッド(Alizarin Red)染色キット(CB-SK-Osteo)のSol Iを処理し、常温で30分間反応させた。その後、Sol IIで3回きれいに洗浄した後、倒立顕微鏡(LEICA,Germany)でイメージ分析を行った。その結果、比較例2の方法で5日間骨分化誘導した場合、骨分化が全くなされなかったが、実施例の方法で5日間骨分化したとき、1乃至30%生分解性合成バイオゲルで骨分化が全てよく起き、特に5乃至10%濃度で骨分化がもっとも最適であることが分かった(図5)。
【0036】
実験例3.臍帯由来間葉系幹細胞の骨分化確認
上記比較例2の方法で5日間骨分化誘導した臍帯由来間葉系幹細胞、上記比較例2の方法で細胞を接種しBMP(bone morphogenic protein)2(peprotech,israel)100ng/mlまたはWnt3a(peprotech,israel)20ng/mlを処理して5日間骨分化を誘導した臍帯由来間葉系幹細胞及び上記実施例の方法(10%生分解性合成バイオゲル)で骨分化誘導した臍帯由来間葉系幹細胞の骨分化を位相差顕微鏡を通して肉眼で確認した。また、骨分化した細胞をアリザリンレッド染色を通して確認するために各細胞をPBSで2回洗浄した後、70%エチルアルコールで10分間常温で固定し、3次蒸留水で2回洗浄した。その後、アリザリンレッド(Alizarin Red)染色キット(CB-SK-Osteo)のSol Iを処理し、常温で30分間反応させた。その後、Sol IIで3回きれいに洗浄した後、倒立顕微鏡(LEICA,Germany)でイメージ分析を行った。また、これを数値化するために、イメージ分析後、Sol IIIを処理して30分間常温で反応させ、染色された試薬を完全に溶かした。溶かした溶液を100μlずつとって96ウェルプレートに入れ、550nmで吸光度を測定した。その結果、骨分化を促進させるものとして知られているBMPとWnt3aを処理し比較例2の方法で5日間骨分化誘導した場合よりも、本発明の実施例方法を用いた臍帯由来間葉系幹細胞の骨分化効率が著しく優れていた(図6)。
【0037】
実験例4.臍帯由来間葉系幹細胞の骨分化期間による変化確認
上記実施例の方法(10%生分解性合成バイオゲル)で骨分化を1日、3日、5日または7日間誘導した臍帯由来間葉系幹細胞につき、アリザリンレッド染色を通してイメージ分析を行った。また、これを数値化するために550nmで吸光度を測定した。その結果、骨分化誘導1日目から骨分化が誘導され始め、骨分化期間が長くなるほど骨分化が強く起きた。特に、臍帯由来間葉系幹細胞の場合は、従来の2次元方式で他の間葉系幹細胞に比べて骨分化がよく起きないものとして知られているが、本発明の実施例の3次元骨分化誘導方法を用いた場合は、他の間葉系幹細胞のように骨分化がよくなされていることが分かった(図7)。
【0038】
実験例5.多様な間葉系幹細胞の骨分化確認
骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、胚性幹細胞由来間葉系幹細胞及び歯周靱帯細胞をそれぞれ上記比較例1の方法で14日間、上記比較例2の方法(0%生分解性合成バイオゲル)で5日間、または上記実施例の方法(10%生分解性合成バイオゲル)で5日間、骨分化誘導した後、アリザリンレッド染色を通して間葉系幹細胞の骨分化程度を確認した。
【0039】
その結果、比較例1の方法及び比較例2の方法で5日間骨分化を誘導した場合は、各間葉系幹細胞の骨分化が全く誘導されなかったが、実施例の方法で生分解性合成バイオゲルの上で3次元的に5日間、骨分化を誘導した場合は、間葉系幹細胞の由来にかかわらず骨分化がよくなされることが観察できた(図8)。
【0040】
上記のように、従来の2次元的骨分化方法では間葉系幹細胞の骨分化が約2週乃至5週かかるが、細胞培養容器の上に高分子膜を非接触的に配置し、その上にヒドロゲルを塗布し、その上に間葉系幹細胞を接種して骨分化前処理培地で培養した後、骨分化誘導培地で処理する本発明の3次元的骨分化方法を用いれば、3乃至7日で骨分化が起きることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8