(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475336
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】rDNA NTS基盤の遺伝子多重挿入カセットセット、及びそれを用いたGRAS等級の組換え酵母菌株
(51)【国際特許分類】
C12N 15/81 20060101AFI20190218BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20190218BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20190218BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20190218BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20190218BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
C12N15/81 ZZNA
C12N15/40
C12N15/31
C12N15/53
C12N1/21
C12N1/19
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-529961(P2017-529961)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-527306(P2017-527306A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】KR2014013047
(87)【国際公開番号】WO2016027943
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年2月21日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0108910
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12607BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12608BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12609BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12610BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12611BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12612BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 12613BP
(73)【特許権者】
【識別番号】517060797
【氏名又は名称】チュン−アン ユニヴァーシティ インダストリー−アカデミー コーポレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】CHUNG−ANG UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMY COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193437
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 義和
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョナ
(72)【発明者】
【氏名】ムン ヘユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ホンジン
【審査官】
小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/046410(WO,A1)
【文献】
特開2005−112846(JP,A)
【文献】
特開2008−061627(JP,A)
【文献】
特表2006−510368(JP,A)
【文献】
国際公開第01/038510(WO,A2)
【文献】
Gene, 1989, Vol.79, p.199-206
【文献】
Yeast, 1996, Vol.12, p.467-477
【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol., 2002, Vol.58, p.797-805
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッカロミセスセレビシアエリボソームDNA非転写スペーサー(rDNA NTS)のN末端断片遺伝子、挿入目的遺伝子、プロモーター領域を含む栄養要求性選択標識マーカー遺伝子及びサッカロミセスセレビシアエrDNA NTSのC末端断片遺伝子を順次に含む遺伝子多重挿入カセット。
【請求項2】
前記rDNA NTSのN末端断片遺伝子は、配列番号1で表され、前記rDNA NTSのC末端断片遺伝子は、配列番号2で表されることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子多重挿入カセット。
【請求項3】
前記栄養要求性選択標識マーカー遺伝子は、配列番号3で表されるプロモーター領域を含むURA3遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子多重挿入カセット。
【請求項4】
前記挿入目的遺伝子は、ノダウイルスカプシドタンパク質(NNV)遺伝子、HMG−CoA還元剤(HMG1)遺伝子またはスクアレンエポキシダーゼ(ERG1)遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子多重挿入カセット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち何れか一項に記載の遺伝子多重挿入カセットを含む組換えベクター。
【請求項6】
前記組換えベクターは、
図1A、
図2A、
図5A、及び
図6Aからなる群から選択された何れか1つの開裂地図を有することを特徴とする請求項5に記載の組換えベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の組換えベクターに形質転換された組換え微生物。
【請求項8】
前記組換え微生物は、大腸菌であることを特徴とする請求項7に記載の組換え微生物。
【請求項9】
前記組換え微生物は、NTS−16U−NNV(寄託番号:KCTC 12608BP)、NTS−50L−NNV(寄託番号:KCTC 12610BP)、NTS−16U−tHMG1(寄託番号:KCTC 12609BP)、及びNTS−16U−ERG1(寄託番号:KCTC 12607BP)からなる群から選択された何れか1つであることを特徴とする請求項8に記載の組換え微生物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項4のうち何れか一項に記載の遺伝子多重挿入カセットが、サッカロミセスセレビシアエrDNA上に多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエ菌株。
【請求項11】
前記菌株は、ノダウイルスカプシドタンパク質(NNV)遺伝子が多重挿入されている請求項10に記載の組換えサッカロミセスセレビシアエY2805/NTS−16U−NNV(寄託番号:KCTC 12611BP)菌株またはY2806/NTS−50L−NNV菌株(寄託番号:KCTC 12613BP)。
【請求項12】
前記菌株は、HMG−CoA還元剤(HMG1)遺伝子が多重挿入されている請求項10に記載の組換えサッカロミセスセレビシアエY2805/NTS−16U−tHMG菌株(寄託番号:KCTC 12612BP)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リボソームDNA非転写スペーサー(ribosomal DNA nontranscribed spacer;rDNA NTS)基盤の遺伝子多重挿入カセットセット、及びそれを用いたGRAS等級の組換え酵母菌株に係り、詳細には、rDNA NTS断片と不完全プロモーターを有した栄養要求性選択マーカーとを含んだ遺伝子多重挿入カセットを開発し、それをサッカロミセスセレビシアエ菌株の染色体上に最適の数で多重挿入することによって、安全な経口用組換え菌株を作製することである。
【背景技術】
【0002】
農畜産/魚類養殖産業において、伝染病は、最も重要な問題点の1つである。養殖のような産業の大型化によって、伝染病の危険要素が増加している現状では、環境にやさしい疾病予防の要求が大きくなっている。その中でも、医薬用ワクチン及び免疫力増加機能性食品用新素材の発掘が未来農畜産/魚類産業市場を成長させることができる核心技術である。このような農畜産/魚類産業用ワクチンあるいは機能性食品素材開発のためには、安定かつ経済的な活性物質の量産が必須である。ワクチンとして使える抗原タンパク質を生産する形質転換微生物を用いた動物疾病に対する微生物経口ワクチンの開発は、安価であるだけではなく、経口ワクチンとして飼料に添加して使用が可能なので、ワクチン接種が容易であって、養殖農家に所得増大と労動力減少とを提供すると見込まれる。
【0003】
飼料添加剤は、生産性の改善目的として飼料に少量配合する非栄養素補助物質であって、抗生剤、生菌剤、酵素剤、有機酸剤、香味剤、甘味剤、抗酸化剤、各種の天然物質及び機能性物質などが飼料添加剤に分類されうる。実際に、これら飼料添加剤は、家畜飼料に広く使用されており、適切に飼料に適用される時、少量でも肯定的な効果を表わすことができる。飼料添加剤の全体市場規模は、大韓民国の国内で15兆ウォンに至り、人口増加、肉類消費増加、穀物価上昇などでその規模は成長し続けている。飼料添加剤の種類としては、アミノ酸、ビタミン、成長促進抗生剤、ミネラル、酵素、有機酸、カロチノイド色素、保存剤などが主をなしており、多くの製品が発酵過程を通じて生産され、その比重も、さらに増えている。このような飼料添加剤事業の核心成功要素は、微生物操作技術とバイオマスの活用技術とである。
【0004】
伝統酵母サッカロミセスセレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)は、長期間にわたってビールとパンの発酵で使用されてきた菌株であって、人体に対する安全性が保証されたGRAS(Generally Recognized as Safe)微生物として安全性が高い。特に、酵母は、高等生物と非常に類似した遺伝子転写及び翻訳システムと共に、タンパク質分泌器官を備えていて、翻訳後修飾を通して活性化されたタンパク質を生産することができて、大腸菌に比べて、高等生物由来の医薬用タンパク質の量産により有用な宿主システムとして用いられている。また、菌株の培養及び細胞外分泌タンパク質の精製が容易であって、スケールアップ(scale−up)が簡単なので、食品及び組換え医薬用タンパク質の産業的生産に有用な宿主システムである。酵母菌株を使って生産している組換えタンパク質は、ホルモン(インスリン、成長ホルモン)、ワクチン(肝炎ワクチン、子宮頸部癌ワクチン)、アルブミン、ヒルミンなどが成功的に量産されている。
【0005】
酵母の細胞壁成分であるβグルカンが、TLR(Toll−Like Receptor)を刺激するアジュバント(adjuvant)として作用する役割があって、抗原と共に投与される時、免疫反応をさらに増加させるという報告以後、伝統酵母サッカロミセスセレビシアエを経口用ワクチンのための抗原伝達物質として活用するための研究が試みられた。最近、研究結果によって、酵母の細胞壁成分が、微生物感染と関連した危険信号を伝達すれば、樹枝状細胞(Denritic Cell;DC)によって組換え酵母が有した抗原タンパク質が、MHC Class IとII経路を通じてT−cellを含めた免疫関連細胞の活性を増加させることが立証された。それを基盤で抗原タンパク質を発現している組換え酵母自体を人体または動物用の経口用ワクチン開発の可能性を打診する研究が、次世代ワクチン開発の優れた戦略として注目を浴びた。特に、多数研究から組換え酵母菌株を用いたワクチン開発は、酵母の免疫反応を増加させるアジュバントとしての役割だけではなく、宿主動物の臓粘膜に抗原を適切にターゲティングする効果的な伝達システムとしての可能性が提示されており、経口用ワクチン運搬体としての酵母の可能性を示唆している。
【0006】
一方、酵母は、多様な二次代謝産物の生合成経路を導入して発現させることができる宿主として関心が高まっている。多様な生命体が生産する二次代謝産物は、高付加価値化学化合物の主要供給先として多くの場合、重要な医薬的な性質を有している。特に、植物の代謝産物は、抗酸化剤または抗生剤の機能を通じてバクテリア、ウイルス、カビなどの感染を防ぎ、また、人体健康に有益な機能性物質で治療剤としての活用度が高くて、微生物を活用した量産技術に対する需要が高い。二次代謝生合成経路が自体的に制限的な酵母は、遺伝工学を通じて導入された外来代謝経路を妨害するか、競争せず、なによりも多様なオミックス分析システムがよく構築されていて、転写体と代謝体の分析を通じて酵母宿主の生理状態についての総体的な情報を確保することができるという長所がある。また、代謝過程に対する詳細なモデルが開発されて、変形された代謝ネットワークの行動を予測することができるイン・シリコ(in silico)酵母が構築されていて、それを活用した人工細胞デザイン及び作製がさらに容易な点が大きな長所である。さらに、単細胞真核微生物として酵母は、小胞体及びミトコンドリアのような小器官で発現されて初めて活性を有するcytochrome P450のような外来酵素の発現に適した宿主であり、植物及び動物由来の酵素活性に必須的なタンパク質の翻訳後、変形能がある点も、ワンヘック微生物宿主に比べて有する長所である。
【0007】
酵母で異種遺伝子発現を調節するさらに他の重要なツールセットは、所望の発現カセットのコピー数を調節することができる装置である。伝統酵母の場合、2ミクロン−基盤のプラスミドは、1細胞当たり約5〜30個のコピー程度存在する一方、酵母動原体(centromere)と連携された複製起点塩基配列(CEN/ARS)−基盤のプラスミドは、非常に低い複製数(細胞1つ当たり約1個)に存在する。高複製数発現ベクターは、暗号化された遺伝子を強く発現させて、細胞に大きな負担を与え、発現ベクター自体の不安定性をもたらしうる。低複製数発現ベクターは、さらに安定した発現プラットフォームを提供するが、低い遺伝子発現レベルが問題になりうる。相同組替えを通じる酵母宿主染色体上の標的遺伝子部位に発現カセットを挿入する場合、持続的な選択圧がない条件でも、発現ベクターが安定して保持されるという長所がある。発現ベクターの多重挿入のために、酵母染色体に反復的なコピーで存在しているリボソーム要素、デルタ要素、そして、シグマ要素の配列などを標的として活用する技術が開発された。
【0008】
リボソームは、rRNA分子とタンパク質とで構成されているが、真核リボソームは、28S、16S、5S rRNA分子を有している。真核細胞のリボソームDNAは、コーディング領域と非コーティング領域とで構成されている。また、rDNAは、進化に保存的な領域、他の領域よりも迅速に進化するITS(Internal Transcribed Spacer)領域、そして、IGS(Intergenic Spacer)領域があると知られている。真核細胞のrRNA遺伝子(rDNA)転写単位は、18S、5.8S、28Sの順になっており、それぞれのrDNAの間に2個のITS領域に分離連結されている。さらに他の転写単位は、5Sであり、NTS(Nontranscript Sequence)部位に取り囲まれている。伝統酵母サッカロミセスセレビシアエの場合、リボソームDNA unitは、染色体12番に100〜150個程度繰り返して挿入されている。このような多重で存在するrDNA遺伝子部位を用いた多重導入発現ベクターの場合、発現カセットの多重導入のために、主に抗生剤耐性遺伝子を選択マーカーとして活用している。しかし、抗生物質の使用は、培養規模が大きくなるほど、コスト及び環境的側面で大きな問題を引き起こし得る。特に、抗生剤耐性マーカーを有した組換え酵母菌株の場合、経口用ワクチンまたは飼料添加剤として開発しようとする場合、抗生剤耐性マーカー遺伝子が生態系に流出されて抗生剤耐性バクテリア出現を増幅させることができる安全性の問題が大きなイシューとして提起されている。したがって、抗生剤耐性マーカー挿入なしに、目的遺伝子を多重で宿主染色体に挿入させることができる発現カセットの開発に対する必要性がさらに注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、サッカロミセスセレビシアエリボソームDNA非転写スペーサー(rDNA NTS)のN末端断片遺伝子、挿入目的遺伝子、プロモーター領域を含む栄養要求性選択標識マーカー遺伝子及びサッカロミセスセレビシアエrDNA NTSのC末端断片遺伝子を順次に含む遺伝子多重挿入カセットを提供するところにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記遺伝子多重挿入カセットが、サッカロミセスセレビシアエrDNA上に多重挿入されている抗生剤耐性マーカーを有さないGRAS級の組換えサッカロミセスセレビシアエ菌株を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を果たすために、本発明は、サッカロミセスセレビシアエリボソームDNA非転写スペーサー(rDNA NTS)のN末端断片遺伝子、挿入目的遺伝子、プロモーター領域を含む栄養要求性選択標識マーカー遺伝子及びサッカロミセスセレビシアエrDNA NTSのC末端断片遺伝子を順次に含む遺伝子多重挿入カセットを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記遺伝子多重挿入カセットを含む組換えベクター及び前記組換えベクターに形質転換された組換え微生物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記遺伝子多重挿入カセットが、サッカロミセスセレビシアエrDNA上に多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエ菌株を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記菌株、その培養物、菌体破砕物またはこれより分離精製されたノダウイルスカプシドタンパク質(NNV)を有効成分として含むワクチン組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記菌株、その培養物、菌体破砕物またはこれより分離精製されたスクアレン(squalene)またはオキシドスクアレン(oxidosqualene)を有効成分として含む飼料添加用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、rDNA NTS基盤の遺伝子多重挿入カセットセット、及びそれを用いたGRAS等級の組換え酵母菌株に係り、詳細には、rDNA NTS断片と不完全プロモーターを有した栄養要求性選択マーカーとを含んだ遺伝子多重挿入カセットを開発し、それを抗生剤耐性マーカー遺伝子の挿入なしに、サッカロミセスセレビシアエ菌株の染色体上に最適の数で多重挿入することによって、安全な経口用組換え菌株を作製することである。本発明から作製されたカセットを用いてノダカプシド遺伝子を多重挿入し、挿入数に比例して組換えタンパク質発現量の増加が可能であった。また、本カセットを用いてスクアレン前駆体生合成遺伝子を多重挿入することによって、スクアレン生産量が増加した組換え酵母菌株を作製した。このような抗生剤耐性マーカーを有さない組換えタンパク質及び有用代謝産物生産菌株は、畜産産業や魚類養殖産業で生産品の価格の経済性のある経口用ワクチンまたは飼料添加剤として使えることができる。また、選択マーカーを複数個使用することができない酵母菌株の場合、同一マーカーを有している多様な発現カセットを酵母宿主の染色体上に100余個以上存在するrDNA NTS部位に同時に多重で挿入される組換え菌株を作製することができるだけではなく、多様な場合の比率で多重挿入された組換え菌株を作製することができて、多様な発現カセットの最適挿入比率で挿入されて、最適の生産量を示す組換え菌株を選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】rDNA NTS部位に多様な数字で多重挿入されるように長さが異なるプロモーターセットによって発現されるURA3選択マーカーを有したサッカロミセスセレビシアエ用多重挿入カセットセット(
図1A)と、多重挿入戦略模式図(
図1B)、及びrDNA NTS部位にノダカプシドタンパク質遺伝子多重挿入に対するqRT−PCR分析結果(
図1C)である。
【0018】
【
図2】rDNA NTS部位に多様な数字で多重挿入されるように長さが異なるプロモーターセットによって発現されるLEU2選択マーカーを有したサッカロミセスセレビシアエ用多重挿入カセットセット模式図(
図2A)、及びrDNA NTS部位にノダカプシドタンパク質遺伝子多重挿入に対するqRT−PCR分析結果(
図2B)である。
【0019】
【
図3】16bpプロモーターに発現されるURA3選択マーカーを活用したサッカロミセスセレビシアエコドン最適化されたノダカプシドタンパク質遺伝子多重挿入菌株NTS−16U−NNV/Y2805候補でノダカプシドタンパク質発現確認のためのウェスタンブロット分析結果(
図3A)と、宿主染色体に挿入されたNTS−16U−NNV発現カセットの安定性分析結果(
図3B)である。“WT”は、S.cerevisiae Y2805野生型菌株のサンプルであり、“Positive”は、2uベクターにNNVを発現したベクターYEGa−MCS−opt−RGNNV−CPを有した組換え菌株のサンプルである。
【0020】
【
図4】組換えNTS−16UNNV/Y2805酵母菌株の免疫原性及び中和抗体誘発性分析のために、マウスに凍結乾燥した組換え酵母菌株を経口投与してRGNNVのcapsidタンパク質に対する血中抗体形成レベルを調査した結果(
図4(A))、マウス血清のRGNNVに対する中和活性を測定した結果(
図4(B))、マウスグループの血清を1/100または1/200に希釈してRGNNVと混ぜた後、E−11魚類細胞に感染させ、培養した後、細胞と培養液をいずれも集めてウェスタンブロット(Western blot)(
図4の(C))を進行した結果である。ウェスタンブロットは、マウスanti−RGNNV capsid protein血清を使ってRGNNVカプシドタンパク質の検出を進行した。
【0021】
【
図5】16bpプロモーターに発現されるURA3選択マーカーを活用したN末端除去されたサッカロミセスセレビシアエHMG1遺伝子(tHMG1)多重挿入ベクターNTS(16U)−tHMG1(
図5A)、サッカロミセスセレビシアエのrDNA NTS部位にtHMG1多重挿入に対するqRT−PCR分析結果(
図5B)、HMG1タンパク質発現量を確認したウェスタンブロット分析結果(
図5C)、及びGC(Gas Chromatography)分析を通じるスクアレン量産菌株選別(
図5D)を示した図面である。
【0022】
【
図6】16bpプロモーターに発現されるURA3選択マーカーを活用したサッカロミセスセレビシアエスクアレンエポキシダーゼ(Squalene epoxidase)遺伝子(ERG1)多重挿入ベクターNTS(16U)−ERG1図式図(
図6A)、多重挿入戦略模式図(
図6B)、及びサッカロミセスセレビシアエのrDNA NTS部位にNTS(16U)−tHMG1とNTS(16U)−ERG1発現カセットが同時に多重挿入した組換え菌株選別のためのqRT−PCR分析結果(
図6C)を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、抗生剤耐性遺伝子の挿入なしに、酵母宿主のrDNA NTS部位を用いた目的遺伝子発現カセットのみ挿入される技術を開発して、既存の高発現システムと異なって、組換えタンパク質及び有用代謝産物の生産において、高濃度培養時に、抗生剤の供給が必要ない発現システムを構築し、本発明を完成した。本発明から開発された遺伝子多重挿入カセットで開発された組換え酵母菌株は、発現カセットの安定性も高い抗生物質非依存型高発現システムで経口用ワクチン及び飼料添加剤として活用が可能な産業化に適した発現系である。
【0024】
本発明は、サッカロミセスセレビシアエリボソームDNA非転写スペーサー(rDNA NTS、NCBI accession no.X00486.1)のN末端断片遺伝子、挿入目的遺伝子、プロモーター領域を含む栄養要求性選択標識マーカー遺伝子及びサッカロミセスセレビシアエrDNA NTSのC末端断片遺伝子を順次に含む遺伝子多重挿入カセットを提供する。
【0025】
望ましくは、前記rDNA NTSのN末端断片遺伝子は、配列番号1で表され、前記rDNA NTSのC末端断片遺伝子は、配列番号2で表される。
【0026】
望ましくは、前記栄養要求性選択標識マーカー遺伝子は、配列番号3で表されるプロモーター領域を含むURA3遺伝子(NCBI accession no.NM_001178836.3)または配列番号4で表されるプロモーター領域を含むLEU2遺伝子(NCBI accession no.NM_001178665.1)であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0027】
望ましくは、前記挿入目的遺伝子は、ノダウイルスカプシドタンパク質遺伝子(NNV、NCBI accession no.CAE55208.2)、HMG−CoA還元剤遺伝子(HMG1、NCBI accession no.NM_001182434.1)またはスクアレンエポキシダーゼ遺伝子(ERG1、NCBI accession no.NM_001181304.1)であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、遺伝子多重挿入カセットは、プロモーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーのような発現調節エレメント以外にも、膜標的化または分泌のための信号配列またはリーダー配列を含み、目的によって多様に製造可能である。
【0029】
また、本発明は、前記遺伝子多重挿入カセットを含む組換えベクターを提供する。望ましくは、前記組換えベクターは、
図1A、
図2A、
図5A、及び
図6Aからなる群から選択された何れか1つの開裂地図であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0030】
本発明において、“ベクター”は、クローン遺伝子(または、クローンDNAの他の切片)を運ぶのに使用される自ら複製されるDNA分子を意味する。
【0031】
また、本発明は、前記組換えベクターに形質転換された組換え微生物を提供する。望ましくは、前記組換え微生物は、大腸菌(E.coli)であり得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
さらに望ましくは、前記組換え微生物は、NTS−16U−NNV(寄託番号:KCTC 12608BP)、NTS−50L−NNV(寄託番号:KCTC 12610BP)、NTS−16U−tHMG1(寄託番号:KCTC 12609BP)またはNTS−16U−ERG1(寄託番号:KCTC 12607BP)であり得る。
【0033】
前記NTS−16U−NNV(寄託番号:KCTC 12608BP)菌株は、本明細書の
図1AのpT−NTS−16U−NNVベクターに形質転換された大腸菌菌株である。
【0034】
前記NTS−50L−NNV(寄託番号:KCTC 12610BP)菌株は、本明細書の
図2AのpT−NTS−50L−NNVベクターに形質転換された大腸菌菌株である。
【0035】
前記NTS−16U−tHMG1(寄託番号:KCTC 12609BP)菌株は、本明細書の
図5AのpT−NTS−16U−tHMG1ベクターに形質転換された大腸菌菌株である。
【0036】
前記NTS−16U−ERG1(寄託番号:KCTC 12607BP)菌株は、本明細書の
図6AのpT−NTS−16U−ERG1ベクターに形質転換された大腸菌菌株である。
【0037】
また、本発明は、前記遺伝子多重挿入カセットが、サッカロミセスセレビシアエrDNA上に多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエ菌株を提供する。
【0038】
望ましくは、前記菌株は、ノダウイルスカプシドタンパク質(NNV)遺伝子が多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエY2805/NTS−16U−NNV(寄託番号:KCTC 12611BP)菌株またはY2806/NTS−50L−NNV菌株(寄託番号:KCTC 12613BP)であり得る。
【0039】
望ましくは、前記菌株は、HMG−CoA還元剤(HMG1)遺伝子が多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエY2805/NTS−16U−tHMG菌株(寄託番号:KCTC 12612BP)であり得る。
【0040】
望ましくは、前記菌株は、HMG−CoA還元剤(HMG1)遺伝子及びスクアレンエポキシダーゼ(ERG1)遺伝子が多重挿入されている組換えサッカロミセスセレビシアエCEN.PK−1C/NTS−16U−tHMG&NTS−16U−ERG1菌株であり得る。
【0041】
また、前記菌株、その培養物、菌体破砕物またはこれより分離精製されたノダウイルスカプシドタンパク質(NNV)を有効成分として含むワクチン組成物を提供する。
【0042】
本発明のワクチン組成物は、薬剤学的に許容される担体を含みうるが、抗原物質を生体内部位への伝達に適した任意の成分を意味し、例えば、水、食塩水、リン酸塩緩衝食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンス溶液、その他の水溶性の生理学的平衡溶液、オイル、エステル及びグリコールなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記担体は、化学的安定性及び等張性を増進させるために適した補助成分と保存剤とを含み、トレハロース、グリシン、ソルビトール、ラクトースまたはグルタミン酸ナトリウム(MSG)のような安定化剤を含ませて、温度変化または凍結乾燥に対してワクチン組成物を保護することができる。本発明のワクチン組成物は、滅菌水または食塩水(望ましくは、緩衝された食塩水)のような懸濁液を含みうる。
【0044】
本発明のワクチン組成物は、免疫原に対する免疫反応を向上させるのに十分な量の任意のアジュバントを含有することができる。例えば、アルミニウム塩(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、スクアレン混合物(SAF−1)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリア細胞壁製造物、モノホスホリル脂質A、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゲン及び誘導体、及び免疫刺激複合体(ISCOMs)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
他のあらゆるワクチン組成物と同様に、免疫原の免疫学的有効量は、経験的に決定されなければならず、この場合、考慮される因子は、免疫原性、投与経路及び投与される免疫投与回収が挙げられる。
【0046】
本発明ワクチン組成物中の抗原物質である細胞の培養物またはノダウイルスカプシドタンパク質は、本発明の組成物内で多様な濃度で存在することができるが、通常、前記抗原物質が生体内で適切なレベルの抗体形成の誘導に必要な濃度で含む。
【0047】
本発明のワクチン組成物は、全身または粘膜経路を通じて投与することによって、ノダウイルス感染に敏感な動物を保護または治療するために使用される。ワクチン組成物の投与は、筋内、腹膜内、皮内または皮下経路を通じる注射、経口/食事、呼吸器、泌尿生殖管への粘膜投与を含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
また、前記菌株、その培養物、菌体破砕物またはこれより分離精製されたスクアレンまたはオキシドスクアレンを有効成分として含む飼料添加用組成物を提供する。
【0049】
前記飼料は、一般的に家畜飼育に使用される公知の構成の飼料に、本発明の飼料添加用組成物を追加して構成することができる。
【0050】
前記公知の構成の飼料は、販売されている一般飼料をいずれも含み、これに限定されるものではないが、米糠、トウモロコシ、大豆粕、豆、キビ、米、麦、小麦、燕麦、ライ麦、粟、ソバ、ティリティゲイル、サツマイモ、タピオカ、小麦ふすま、麦糠、大豆皮、トウモロコシふすま、麦芽根、澱粉粕、コーヒー粕、蚕糞、蚕沙、海鳥糞、綿実粕、菜種粕、カノーラ粉、エゴマ粕、ゴマ粕、亜麻粕、ヒマワリ種粕、落花生粕、ヤシ粕、トウモロコシグルテン、酒精粕、トウモロコシ胚芽粕、トウガラシ種粕、ルピン種実、魚粉、羽毛粉及び肉粉であり得る。
【0051】
また、前記組成物には、一般的な飼料添加剤、例えば、塩、骨粉、リン酸カルシウム剤、無機物混合剤、ビタミン剤、アミノ酸剤、抗生物質、ホルモン剤などの特殊目的のための飼料添加剤が使用される。
【0052】
本発明による飼料添加用組成物は、有効成分として含有される前記菌株、その培養物またはこれより分離精製されたスクアレンまたはオキシドスクアレンを基準に家畜または家禽類に1日0.5〜1.0g/kgの量で投与し、このような投与量は、投与の対象となる動物の種類、動物の年齢、動物の体重、動物の予防しようとする疾病、所望の効果などによって、当該分野の専門家が適切に調節することができる。
【0053】
さらに、本発明は、前記ノダウイルスカプシドタンパク質及びスクアレン以外にも、多様な組換えタンパク質または有用代謝産物を量産するGRAS級の組換え酵母菌株を作製することができる技術を提供する。すなわち、イリドウイルス、口蹄疫ウイルス、豚流行性下痢ウイルス、ロタウイルス、ヘパティスBウイルスなど魚類、家畜及びヒトに感染を誘発する感染ウイルス及び豚流行性肺炎など感染細菌などから由来したタンパク質を大量発現する組換え酵母菌株の作製に使用される。また、アルテミシニン、ジンセノサイドのような多様なイソプレノイド類系の高機能性代謝産物、フラボノイド、アントシアニンのような抗酸化性機能を有したポリフェノール化合物系の二次代謝産物を量産する組換え酵母菌株の作製にも有用に使用される。
【0054】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、当業者にとって自明である。
【0056】
実施例1:多様な長さのプロモーターを有した選別標識マーカーの作製及びそれを活用したrDNA NTSターゲット多重挿入ベクターセットの開発
【0057】
サッカロミセスセレビシアエを宿主として使った経口用組換えタンパク質多重挿入カセットを作製するために、rDNA NTS部分のうち、それぞれN断片(47bp)、C断片(49bp)を、URA3遺伝子合成に使用するプライマー作製時に共に含んだNTS−300U−fwとNTS−300U−rvプライマーとを使ってURA3選択マーカーを増幅した。増幅断片は、pGEM T easy vectorシステムに挿入してpT−NTS−300Uベクターを作製した。引き続きGAL10(p)−NNV−GAL7(t)断片をYEGα−MCS−NNVcp(国際特許公開番号:WO2014046410 A1)を鋳型としてGAL10P−fwとGAL7T−rvプライマーとを使って増幅した後、BamHI/XbaIを処理して挿入、ベクターpT−NTS−300U−NNVを最終的に作製した(
図1A)。ベクターpT−NTS−300U−NNVをNotI/XbaI処理して300bpサイズのプロモーターを有したURA3遺伝子(300U)を除去した後、77U−fwと77U−rvプライマーとを用いて77bpサイズのプロモーターを有したURA3遺伝子断片(77U)を合成し、16U−fwと16U−rvプライマーとを用いて16bpサイズのプロモーターを有したScURA3遺伝子断片(16U)をそれぞれ合成した後、NotI/XbaI処理して準備されたバックボーン(backbone)ベクターに挿入、pT−NTS−77U−NNV、pT−NTS−16U−NNVベクターをそれぞれ作製した(
図1A)。それぞれのベクターは、SphI/MlnI処理して発現カセットを回収した後、S.cerevisiae Y2805(MATa pep4::HSI3、prb1−d、can1、GAL2、his3、ura3−52)菌株を形質転換させた後、ウラシル(Uracil)欠乏の最小培地(SC−URA)に生き残る形質転換体を選別して、発現カセットが宿主rRNAのNTS部位に多重挿入されるように誘導した。確保されたUra
+形質転換体を前培養した後、OD=0.5になるように接種し、本培養を24時間行った後、遠心分離を通じて酵母細胞を回収した。該回収された酵母細胞にSTES(20mM Tris−HCl pH7.5、500mM NaCl、10mM EDTA、1%SDS)緩衝溶液とガラスビーズ(glass bead)とを同量添加して破砕させた後、TE buffer(10mM Tris−HCl pH8.0、1mM EDTA)とPhenol/chloroform/isoamyalcohol=24:1:1混合液をそれぞれ200ul添加してもう一度破砕し、細胞溶解物(lysate)を確保して、エタノール沈澱法でgenomic DNA(gDNA)を回収した。得られたgDNAをURA3 RT−PCR用プライマー(表1)を用いてqRT−PCR(quantatitive real−time polymerase chain reaction)分析を行った(
図1C)。面白くも、NTS−300U−NNVカセットが挿入された形質転換体に比べて、NTS−77U−NNVとNTS−16U−NNVの2つのベクターを活用して確保された形質転換体は、さらに多数のカセット挿入数を示した。特に、NTS−77U−NNV比べて、NTS−16U−NNVカセットに形質転換された組換え菌株は、平均的に多数の挿入を示した(
図1C)。
【0058】
サッカロミセスセレビシアエLEU2マーカーセットも、同じ方式でプロモーター長さをそれぞれ50、100、400bpに異ならせて、XbaI/Not1 ScURA3標識遺伝子切片と交換を行って、pT−NTS−400L−NNV、pT−NTS−100L−NNV、pT−NTS−50L−NNVベクターを作製した(
図2A)。それぞれのベクターは、SphI/MlnI処理して発現カセットを回収した後、S.cerevisiae Y2806(MATa pep4::HSI3、prb1−d、can1、GAL2、his3、ura3−52、leu2::tc)菌株を形質転換させた後、ロイシン(leucine)欠乏の最小培地(SC−LEU)に生き残る形質転換体を選別して、発現カセットが宿主rRNAのNTS部位に多重挿入されるように誘導した。NTS−400L−NNVの場合、ただNTS−50L−NNVカセットを挿入した組換え菌株のみで多重挿入を示したが、約50コピー(copy)まで挿入されたと分析された(
図2B)。前記作製された多重挿入カセットは、Y2805由来のサッカロミセスセレビシアエ菌株以外に、BY4742菌株でも使用可能であった。したがって、本発明から作製された多重挿入カセットは、多様なサッカロミセスセレビシアエ菌株で使用可能であると期待する。
【0065】
実施例2:pT−NTS−16U−NNV用いた経口用ノダウイルスワクチン量産組換え酵母の開発及び特徴分析
【0066】
実施例1から確保されたY2805/NTS−16U−NNV菌株のノダカプシドタンパク質の発現量を確認するために、酵母細胞を回収した後、TNE(50mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、5mM EDTA)緩衝溶液を添加して、破砕して細胞溶解物を確保した。それをSDSサンプルローディングバッファ(62.5mM Tris−HCl pH6.8、0.1%BPB、10%glycerol、10%SDS、1%beta−mercaptoethanol)と混合した後、沸湯に10分間熱処理してウェスタンブロット分析を行った。1次抗体は、ノダカプシド抗体を用い、2次抗体は、rabbit−AP(alkalion phosphatase)を使った。その結果、多重でNNV発現カセットが挿入された酵母菌株で予想されたサイズのノダカプシドタンパク質発現を確認することができた。それだけではなく、前記行ったカセット挿入数とタンパク質発現量とが正比例的に増加することを確認することができた(
図3A)。ウェスタンブロット分析で、“WT”は、S.cerevisiae Y2805野生型菌株のサンプルであり、“Positive”は、本研究チームの先行研究によって作製された2u基盤のベクターにNNVをGAL10プロモーターに発現するベクターYEGa−MCS−opt−RGNNV−CPを有した組換え菌株のサンプルである。
図3の結果は、pT−NTS−16U−NNVを用いてNNV発現カセットのみがrDNAのNTSに挿入された組換え酵母菌株が、既存の組換え酵母菌株とほぼ類似しているか、少し高いNNV発現を示していることを示している。
【0067】
既存の研究されたYEGα−MCS−NNVcp/Y2805(positive control(+)菌株と本発明から作製されたNTS−16U−NNV/Y2805菌株との間の安定性(stability)を比較分析するために、YPG栄養培地とSC−URA−Gal選択培地とで24、48、72時間培養したサンプルに対して、qRT−PCR分析を行った(
図3B)。その結果、YEGα−MCS−NNVcp/Y2805(positive control(+))菌株は、SC−URA−Gal選択培地では安定して挿入数が保持される一方、YPG栄養培地では24時間培養のみでも多数のベクターを失うことを確認した。しかし、NTS−16U−NNV/Y2805菌株の場合、YPG栄養培地、Sc−URA−Gal選択培地とはかかわらずに、多数のカセットが安定または保持されていることを確認した(
図3B)。
【0068】
前記本発明から開発された遺伝子多重挿入カセットで作製された組換え酵母菌株が、経口用ワクチンとして開発される可能性を検証するために、NTS−16UNNV/Y2805酵母菌株の免疫原性及び中和抗体誘発性分析を行った。YPG培地で72時間培養した後、凍結乾燥した組換えNTS−16U−NNV/Y2805菌体をマウスに経口投与した後、RGNNVカプシドタンパク質に対する血中抗体形成レベルをELISA方法を用いて分析した(
図4(A))。この際、陰性対照群として生理食塩水(PBS)と凍結乾燥した野生型Y2805菌株とを経口免疫させた。組換えNTS−16UNNV/Y2805菌体を3回、4回経口投与した後、血中RGNNVカプシドタンパク質に対する抗体力価レベルを測定した結果、陰性対照群に比べて、組換えNTS−16UNNV/Y2805酵母菌体が、経口投与されたマウスでノダウイルスカプシドタンパク質を認知する抗体形成が顕著に誘導されたということを確認することができた。また、ノダウイルスRGNNVに対する中和活性を測定するために、単一層で培養したE−11魚類細胞に4次経口免疫後、確保されたマウス血清とRGNNV混合液を感染させた後、細胞病変の有無を通じて中和活性を観察した(
図4(B))。この際、血清は、1/200に希釈した後、RGNNVと混ぜた後、細胞に感染させた。PBSと野生型Y2805菌株を経口兔疫したマウス血清は、RGNNVを中和させることができなくて、細胞病変が表われたが、組換えNTS−16U−NNV/Y2805酵母菌体で経口兔疫したマウス血清は、細胞病変が表われず、RGNNVを中和させると確認された。さらに、マウスグループの血清を1/100または1/200に希釈して、RGNNVと混ぜた後、E−11魚類細胞に感染させ、培養した後、細胞と培養液をいずれも集めてウェスタンブロット分析を行った結果、PBSとY2805グループ血清を適用した細胞では、RGNNVカプシドタンパク質が強く検出されたが、NTS−16U−NNV/Y2805グループの血清を適用した細胞では、RGNNVカプシドタンパク質が検出されず、NTS−16U−NNV/Y2805の経口免疫が、RGNNVに対する中和抗体を誘導すると確認された。前記結果は、本発明から開発された遺伝子多重挿入カセットで作製された組換えノダウイルスカプシド発現酵母菌株が、経口用ワクチンとして開発される可能性を強力に提示する。
【0070】
実施例3:rDNA NTSと不完全なプロモーターを有した必須アミノ酸選択マーカーとを用いた多重挿入ベクターを活用したスクアレン量産組換え酵母菌株の作製
【0071】
スクアレン量産S.cerevisiae組換え菌株を作製するために、前記作製されたpT−NTS−16U−NNVベクターでBamHI/SalI GAL10(p)−NNV遺伝子切片を除去し、表1に記述されたプライマーtHMG1−fwとtHMG1−rvとを用いてN末端552個のアミノ酸が除去されたHMG1遺伝子を増幅し、それをTDH3プロモーターに連結して作製されたTDH3(p)−tHMG1遺伝子切片を挿入して、pT−NTS−16U−tHMG1ベクターを作製した(
図5A)。前記作製されたpT−NTS−16U−tHMG1ベクターをSpeIとMluIとに切断して、NTS−16U−tHMG1カセットを回収してS.cerevisiae Y2805菌株に導入し、URA3標識遺伝子を用いてSC−URA培地で成長する形質転換体を選別した。確保された形質転換体であるY2805/NTS−16U−tHMG1菌株を前記と同じ方法でgDNAを回収した。得られたgDNAは、URA3 RT−PCR用プライマー(primer)を用いてqPCR分析及びウェスタンブロット分析を通じて確認した。その結果、多様な数のカセットが挿入された組換え菌株が得られた(
図5B及び
図5C)。
【0072】
N末端552個のアミノ酸が除去されたHMG−CoA還元剤(HMG−CoA reductase)に対するtHMG1遺伝子の過発現によって生産が増加したと予想されるスクアレンは、生産量をGC分析を通じて確認した。確保された形質転換体であるY2805/NTS−16U−tHMG1菌株をOD
600(0.5)でYPD培地に本培養を始めた後、3日後にサンプルを回収した後、0.01gの酵母菌体(50ul)に100ul 50mM Tris−HCl(pH7.5)を同量添加した後、beadbeater(5000、10s、3times)を用いて破砕した後、遠心分離を通じて上澄み液を回収した後、同じ体積のヘキサン(hexane)を添加した後、遠心分離を通じて上澄み液(ヘキサン層)を獲得した。得られたヘキサン層に残された水分を除去するために、Na
2SO
4粉を添加した後、遠心分離を通じて上澄み液(ヘキサン層)を再び回収した後、乾燥を通じてヘキサンを除去した後、150ulクロロホルム(chloroform)にサンプルを再び溶かした後、GC分析を行った。その結果、4個程度のカセットが挿入された組換え菌株7番で高い量のスクアレンが生成されることを確認した(
図5D)。組換えタンパク質生産とは異なって、挿入数によって比例的にスクアレン生産が増加する態様は表われなかったが、qRT−PCRスクリーンを通じてスクアレン量産に適した挿入数についての情報を得た。
【0074】
実施例4:サッカロミセスセレビシアエでrDNA NTSと不完全なプロモーターを有した栄養要求性選択マーカーとを用いた同一選択マーカーを有した2種のベクターの同時多重挿入
【0075】
本遺伝子多重導入ベクターが、プロモーターが短い選別標識遺伝子を活用すれば、rDNA NTSに50コピーまで高効率で挿入可能な長所を用いて同じ選択マーカーを有した2種のベクターが同時に多重で挿入される組換え酵母菌株の作製を試みた。その例として、NTS−16U−tHMG1カセット(N末端除去されたサッカロミセスセレビシアエHMG−CoA還元剤遺伝子;tHMG1)とNTS−16U−ERG1カセット(サッカロミセスセレビシアエスクアレンエポキシダーゼ遺伝子;ERG1)の2個を同時に多重挿入して、オキシドスクアレン量産組換え菌株を作製しようとした(
図6A)。前記作製されたNTS−16U−ERG1カセットの作製のために、pT−NTS−16U−NNVベクターでBamHI/SalI GAL10(p)−NNVを除去した後、表1に記載のプライマーを使ってPCRで増幅されたERG1遺伝子とTEF1プロモーターが連結されたBamHI/SalI TEF(p)−ERG1遺伝子切片を挿入して、pT−NTS−16U−ERG1ベクターを作製した。2つのカセットNTS−16U−tHMG1とNTS−16U−ERG1をそれぞれSpeI/MluIで切断した後、回収してS.cerevisiae CEN.PK−1C(MATa ura3−52trp1−289leu2−3、112his3−D1MAL2−8C SUC2)内に導入し、SC−URA最小培地で成長する形質転換体を選別した(
図6B)。確保された形質転換体であるY2805/NTS−16U−tHMG1、NTS−16U−ERG1菌株を前記と同じ方法でgDNAを回収して、表1に記載のgDNAは、HMG1、ERG1RT−PCR用プライマーを用いてqRT−PCR分析を行った。その結果、ERG1発現カセットに比べて、tHMG1発現カセットが多様な比率で多重挿入された形質転換体#106(4:1)、#107(8:3)、#108(2:4)、#109(5:2)、#14(5:11)が得られた(
図6C)。
【0077】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい具現例であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物とによって定義される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]