特許第6475352号(P6475352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475352炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の製造方法
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  • 特許6475352-炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475352
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20190218BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20190218BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190218BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190218BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20190218BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C01F11/18 J
   C09C1/02
   C09D7/40
   C09D201/00
   C09J11/04
   C09J201/00
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-542304(P2017-542304)
(86)(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公表番号】特表2017-534568(P2017-534568A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2015075266
(87)【国際公開番号】WO2016071226
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年6月28日
(31)【優先権主張番号】14192356.5
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンテンバイン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ−ハンセン,エスペン
(72)【発明者】
【氏名】オルテン,ロルフ・エンドレ
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−522189(JP,A)
【文献】 特表2009−508792(JP,A)
【文献】 特開平10−194735(JP,A)
【文献】 特表2006−505701(JP,A)
【文献】 特表2014−514393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0299823(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/009396(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/120934(WO,A1)
【文献】 特表2009−531267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F1/00−17/00
C09C 1/02
C09D 7/40
C09D 201/00
C09J 11/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム含有材料の製造方法であって、
a)炭酸カルシウム含有材料を含む少なくとも2つの水性懸濁液を提供する工程であって、
i)第1の水性懸濁液が、前記水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有し、ならびに
ii)第2の水性懸濁液が、前記水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および30.0を超え100.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する工程、
b)工程a)で提供された前記少なくとも2つの水性懸濁液を混合して、水性懸濁液混合物を得る工程、
c)混合工程b)で得られた前記水性懸濁液混合物を粉砕する工程、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも一方、および/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、少なくとも1つの分散剤が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの酸の誘導体の少なくとも部分的に中和されたホモポリマーまたはコポリマーのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩および/もしくはアンモニウム塩(ここで、アミン塩は直鎖または環式である。)、リン酸水素ナトリウムまたはポリホスフェート、カルボキシメチルセルロース、櫛形ポリマーならびに/またはこれの混合物から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、
)粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積が、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定される場合、0.1から30.0m/gの間であり、ならびに/または
ii)粉砕工程c)で得られた前記水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積が、第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する方法で製造された炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積よりも0.1から2.0m/gの間だけ小さいことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度が、50から5,000mPa・sの間であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料が、
i)50.0μm以下のトップカット粒径d98を有すること、ならびに/または
ii)0.1から10.0μmの間の重量中央粒径d50を有すること
を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、
i)第1の水性懸濁液の固体含有量が、前記水性懸濁液の全重量に対して、30.0から78.0重量%であり、ならびに/または
ii)第2の水性懸濁液の固体含有量が、前記水性懸濁液の全重量に対して、30.0から40.0重量%であり、ならびに/または
iii)粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物の固体含有量が、前記水性懸濁液の全重量に対して、20.0から80.0重量%である
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも一方を、濃縮工程に供することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、炭酸カルシウム含有材料が、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイトおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液が、第1および第2の水性懸濁液を、10.0重量%を超える量で含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液が、第1および第2の水性懸濁液から成ることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法であって、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物を濃縮して、水の少なくとも一部を機械的手段および/または熱的手段によって除去する、少なくとも1つの工程d)をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法であって、
)粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物、もしくは濃縮工程d)で得られた水性懸濁液混合物を乾燥させて水の少なくとも一部を除去して、部分脱水炭酸カルシウム含有材料を得るもしくは乾燥炭酸カルシウム含有材料を得る工程、ならびに場合により
f)工程e)の後に得られた前記乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの分散剤によって処理し、これを再希釈して分散炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を得る工程、ならびに/または
g)工程e)の後に得られた前記乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖もしくは分枝カルボン酸によって、ならびに/または少なくとも1つの一置換コハク酸無水物および/もしくは少なくとも1つの一置換コハク酸および/もしくは(1または複数の)塩反応生成物によって、ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはその反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはその反応生成物との少なくとも1つのリン酸エステルブレンドによって処理して、疎水化炭酸カルシウム含有材料を得る工程
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって炭酸カルシウム含有材料を製造し、炭酸カルシウム含有材料を、紙用フィラーおよび紙用コーティング用途のため、プラスチック用途、塗料、接着剤、封止剤、コンクリート、農業用途、食品用途、化粧品用途または医薬用途において使用することを含む、炭酸カルシウム含有材料の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム含有材料の製造方法に、該方法によって得られた炭酸カルシウム含有材料に、ならび紙用フィラーおよび紙用コーティング用途のための、プラスチック用途、塗料、接着剤、封止剤、コンクリート、農業用途、食品用途、化粧品用途または医薬用途における炭酸カルシウム含有材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム含有材料などの水溶性固体の水性調製物およびとりわけ懸濁液は実際に、農業および医薬用途において、ならびに紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業において、製紙用のコーティング、フィラー、増量剤および顔料としてならびに水性ラッカーおよび塗料として幅広く使用されている。例えば、炭酸カルシウム、タルクまたはカオリンの懸濁液またはスラリは製紙産業で、フィラーおよび/またはコート紙作製における成分として大量に使用される。水溶性固体の代表的な水性調製物は懸濁液またはスラリの形態中に、水溶性固体化合物、および場合により、分散剤などのさらなる添加剤を含むことを特徴とする。
【0003】
このため、特有の特性を有する炭酸カルシウム含有材料の製造に対する多大な要望がある。この点で多種多様の方法が提案されている。例えばUS2010/0035076A1は、所望の粒径分布を有する微粒子炭酸カルシウムの製造方法であって、炭酸カルシウム供給原料を第1の位置にて粉砕して、約5%の2マイクロメートル未満から約75%の2マイクロメートル未満の範囲の粒径分布を有する第1の粉砕炭酸カルシウムを生成する工程、第1の粉砕炭酸カルシウムを安定化する工程、安定化粉砕炭酸カルシウムを第2の位置まで搬送する工程、および安定化粉砕炭酸カルシウムを第2の位置にてさらに粉砕して、所望の粒径分布を有する微粒子炭酸カルシウムを生成する工程を含む方法に関する。
【0004】
しかし専門家は、小さいBET比表面積を与える炭酸カルシウム含有材料を効率的に製造する問題になお直面している。炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積が小さいことが望ましいのは、このような材料によって、分散剤の消費量の低減がもたらされるとともに、光学特性ならびにコーティングホールドアウトも改善されるためである。
【0005】
このため当分野において、既存の炭酸カルシウム含有材料よりも優れた性能を与え、とりわけBET比表面積が小さい炭酸カルシウム含有材料を与えることができる炭酸カルシウム含有材料およびその製造方法を提供するニーズがなお存在する。特に、炭酸カルシウム含有材料の1つの水性懸濁液および場合により水を使用する従来の方法によって製造した炭酸カルシウム含有材料と比較して、より小さいBET比表面積を有する炭酸カルシウム含有材料を提供することが望ましい。このため、分散剤の全体の消費量を低減するが、光学特性およびコーティングホールドアウトを改善する炭酸カルシウム含有材料を提供することも望まれている。炭酸カルシウム含有材料の1つの水性懸濁液および場合により水を使用する従来の炭酸カルシウム含有材料の製造方法よりも時間効率がより良く、従ってエネルギー効率もより良い、炭酸カルシウム含有材料の製造方法を提供することがさらに望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0035076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため本発明の目的は、炭酸カルシウム含有材料の製造方法を提供することである。別の目的は、炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積を低減する効率的な方法を提供することにも見出され得る。本発明のさらなる目的は分散剤の全消費量を減少させるが、光学特性およびコーティングホールドアウトを改善する炭酸カルシウム含有材料の製造方法を提供することである。なおさらなる目的は、より時間効率的な炭酸カルシウム含有材料の製造方法を提供することにも見出され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のおよび他の目的は、炭酸カルシウム含有材料の製造方法であって、以下の工程を含む方法によって解決される:
a)炭酸カルシウム含有材料を含む少なくとも2つの水性懸濁液を提供する工程であって、
i)第1の水性懸濁液が、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有し、ならびに
ii)第2の水性懸濁液が、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および30.0未満から100.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する工程、
b)工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液を混合して、水性懸濁液混合物を得る工程、
c)混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物、および/または混合工程b)を行う前に工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液の少なくとも一方を粉砕する工程。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の方法の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである:
「炭酸カルシウム含有材料」という用語は、炭酸カルシウム含有材料の全乾燥重量に対して少なくとも50.0重量%の炭酸カルシウムを含む材料を示す。
【0011】
別途規定しない限り、用語「乾燥すること」は、少なくとも一部の水が乾燥される材料から除去される方法を示す。さらに、「乾燥」材料は、該乾燥材料の全重量に対して、別途規定しない限り、炭酸カルシウム含有材料の全重量に対して3.0重量%未満、好ましくは0.05から0.2重量%の範囲、より好ましくは0.01から0.1重量%の範囲である、その全含水量によってさらに定義してよい。別途指摘しない限り、材料の全含水量は、カールフィッシャー電量滴定法に従って、220℃のオーブン内で10分間水分を脱着し、乾燥窒素を使用して材料を100ml/分にて10分間、連続的にカールフィッシャー電量計(Mettler Toledo電量KF滴定装置C30、オーブンDO 0337)に通過させて測定することができる。この文脈において、水を使用する較正曲線を記録すべきであり、サンプルを含まない10分間の窒素流のブランクを考慮に入れる必要がある。
【0012】
本出願を通じて、炭酸カルシウムおよび他の材料の「粒径」は、粒径の分布によって説明される。値dは、粒子のx重量%が有するd未満の粒径に対する粒径を表す。このことは、d20値は全粒子の20重量%がこれより小さい粒径であり、d75値は全粒子の75重量%がこれより小さい粒径であることを意味する。d50値はこのため、重量中央粒径であって、すべての粒子の50重量%がこの粒径より大きく、50重量%がこれより小さい。d98値(「トップカット」とも呼ぶ)は、全粒子の98重量%が示した値よりも小さい粒径である。本発明の目的のために、別途指摘しない限り、粒径は重量中央粒径d50として規定する。別途指摘しない限り、材料の粒径は、マイクロメリティックスインスツルメント社(Micromeritics Instrument Corporation)のセディグラフ(Sedigraph)(商標)5120またはセディグラフ(商標)5100を使用することによって測定する。
【0013】
単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」または「この(the)」を使用する場合、何か他のことが特に示されない限り、これはこの名詞の複数を含む。
【0014】
「含む(comprising)」という用語を本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、これは他の要素を排除しない。本発明の目的のために、「より成る(consisting of」という用語は、用語「構成される(comprising)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下で群が少なくとも幾つかの実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみから成る群を開示すると理解されるものとする。
【0015】
「得られる(obtainable)」または「定義できる」および「得られる(obtained)」または「定義される」などの用語は、互換的に使用される。このことは例えば、文脈が別途明確に示さない限り、用語「得られた」は、例えば実施形態を例えば、用語「得られた」の後の一連のステップによって得なければならないことを示すものではないが、このような限定された認識は好ましい実施形態として用語「得られる」または「定義される」によって常に含められる。
【0016】
本発明の別の態様により、本方法によって得られる炭酸カルシウム含有材料が提供される。さらなる態様により、紙用フィラーおよび紙用コーティング用途のための、プラスチック用途、塗料、接着剤、封止剤、コンクリート、農業用途、食品用途、化粧品用途または医薬用途における炭酸カルシウム含有材料の使用が提供される。
【0017】
本発明の好都合な実施形態は対応する従属請求項に定義されている。
【0018】
本方法の一実施形態により、少なくとも1つの分散剤が、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも一方、および/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加される。
【0019】
本方法の別の実施形態により、少なくとも1つの分散剤は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびエステルまたはアミドなどのこれらの酸の誘導体、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリルアミド、の少なくとも部分的に中和されたホモポリマーまたはコポリマーのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩および/もしくはアンモニウム塩(アミン塩は直鎖または環式である。)、リン酸水素ナトリウムまたはポリホスフェート、例えばアルカリポリホスフェート、カルボキシメチルセルロース、立体分散剤、櫛形ポリマーならびに/またはこれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは、4,000から10,000g/molの、好ましくは4,000から8,000g/molの、および最も好ましくは約6,000g/molの分子量Mを有するポリアクリル酸ナトリウムから選択される。
【0020】
本方法のまた別の実施形態により、i)粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積、もしくは粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定される場合、0.1から30.0m/gの間、好ましくは1.0から20.0m/gの間、より好ましくは2.0から14.0m/gの間および最も好ましくは8.0から10.0m/gの間であり、ならびに/またはii)粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積、もしくは粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する方法で製造された炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積よりも0.1から2.0m/gの間、好ましくは0.1から1.5m/gの間およびより好ましくは0.2から1.0m/gの間だけ小さい。
【0021】
本方法の一実施形態により、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度、または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度は、50から5,000mPa・sの間、好ましくは75から1,500mPa・sの間、およびより好ましくは150から500mPa・sの間である。
【0022】
本方法の別の実施形態により、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料、または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料は、i)50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下および最も好ましくは10.0μm以下のトップカット粒径d98、ならびに/またはii)0.1から10.0μmの間、好ましくは0.5から5.0μmの間および最も好ましくは1.0から2.0μmの間の重量中央粒径d50、を有する。
【0023】
本方法のまた別の実施形態により、i)第1の水性懸濁液の固体含有量は、水性懸濁液の全重量に対して、30.0から78.0重量%および好ましくは50.0から76.0重量%であり、ならびに/またはii)第2の水性懸濁液の固体含有量は、水性懸濁液の全重量に対して、30.0から40.0重量%および好ましくは34.0から43.0重量%であり、ならびに/またはiii)粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物の固体含有量、または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物の固体含有量は、水性懸濁液の全重量に対して、20.0から80.0重量%および好ましくは50.0から62.0重量%である。
【0024】
本方法の一実施形態により、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも一方を、濃縮工程、好ましくは沈殿または遠心分離による強制沈殿による機械的脱水に供する。
【0025】
本方法の別の実施形態により、炭酸カルシウム含有材料は、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイトおよびこれらの混合物、好ましくは天然炭酸カルシウム、例えば大理石、チョークおよび/または石灰石から選択される。
【0026】
本方法のまた別の実施形態により、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液は、第1および第2の水性懸濁液を、10.0重量%を超える、好ましくは30.0重量%を超える、より好ましくは60.0重量%を超えるおよび最も好ましくは65.0重量%を超える量で含む。
【0027】
本方法の一実施形態により、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液は、第1および第2の水性懸濁液から成る。
【0028】
本方法の別の実施形態により、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行う。
【0029】
本方法のまた別の実施形態により、方法は、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物、または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物を濃縮して、水の少なくとも一部を機械的手段および/または熱的手段によって除去する、少なくとも1つの工程d)をさらに含む。
【0030】
本方法の一実施形態により、方法は、e)粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、工程b)で得られた水性懸濁液、もしくは粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物、もしくは濃縮工程d)で得られた水性懸濁液混合物を乾燥させて、乾燥炭酸カルシウム含有材料を得る工程、ならびに場合により、f)工程e)の後に得られた乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの分散剤によって処理し、これを再希釈して分散炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を得る工程、ならびに/またはg)工程e)の後に得られた乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖もしくは分枝カルボン酸によって、ならびに/または少なくとも1つの一置換コハク酸無水物および/もしくは少なくとも1つの一置換コハク酸および/もしくは(1または複数の)塩反応生成物によって、ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはその反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはその反応生成物との少なくとも1つのリン酸エステルブレンドによって処理して、疎水化炭酸カルシウム含有材料を得る工程をさらに含む。
【0031】
以下では、本発明のさらなる詳細事項ならびにとりわけ本方法の上述の工程a)、b)およびc)について述べる。これらの詳細事項および実施形態はまた、炭酸カルシウム含有材料自体に、ならびに開示する用途のいずれにもおける前記材料の使用に適用されることが理解されるものとする。
【0032】
<少なくとも2つの水性懸濁液を提供する工程a)のキャラクタリゼーション>
本発明の方法の工程a)により、炭酸カルシウム含有材料を含む、少なくとも2つの水性懸濁液が提供される。
【0033】
「水性」懸濁液という用語は、懸濁液の液相または溶媒が水を含む、好ましくは水から成る系を示す。しかし前記用語は、水性懸濁液がメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ケトン、例えばアセトンまたはアルデヒドなどのカルボニル基含有溶媒、イソプロピルアセテートなどのエステル、ギ酸などのカルボン酸、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドおよびこれらの混合物を含む群から選択される有機溶媒を含むことを排除しない。水性懸濁液が有機溶媒を含む場合、水性懸濁液は有機溶媒を、水性懸濁液の液相の全重量に対して、40.0重量%まで、好ましくは1.0から30.0重量%、最も好ましくは1.0から25.0重量%の量で含む。例えば、水性懸濁液の液相は水から成る。水性懸濁液の液相が水から成る場合、使用する水は、工程水、水道水および/または脱イオン水などの入手可能ないずれの水であることもできる。
【0034】
本発明の意味における「水性懸濁液」という用語は、少なくとも溶媒としての水および炭酸カルシウム含有材料ならびに場合によりさらなる添加剤を含む系であって、炭酸カルシウム含有材料の粒子の少なくとも一部が溶媒中に未溶解固体として存在する系を示す。
【0035】
炭酸カルシウム含有材料を含む少なくとも2つの水性懸濁液が提供されることは、本方法の1つの要件である。
【0036】
本発明の意味における「少なくとも2つの」水性懸濁液という用語は、2つ以上の水性懸濁液が工程a)において提供されることを意味する。
【0037】
本発明の一実施形態において、2つの水性懸濁液が工程a)で提供される。または、3つ以上の水性懸濁液が工程a)で提供される。例えば、2つまたは3つの水性懸濁液が工程a)で提供される。好ましくは、2つの水性懸濁液が工程a)で提供される。
【0038】
このため、少なくとも第1の水性懸濁液および第2の水性懸濁液が工程a)で提供される。
【0039】
本発明の一実施形態において、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液は、第1および第2の水性懸濁液を、10.0重量%を超える、好ましくは30.0重量%を超える、より好ましくは60.0重量%を超えるおよび最も好ましくは65.0重量%を超える量で含む。例えば、工程a)で提供される少なくとも2つの水性懸濁液は、第1および第2の水性懸濁液から成り、即ち第1および第2の水性懸濁液は、工程a)で提供される水性懸濁液の100重量%を構成する。
【0040】
炭酸カルシウム含有材料を含む少なくとも2つの水性懸濁液、即ち第1の水性懸濁液および第2の水性懸濁液ならびに各必須ではない水性懸濁液は、これらの固体含有量および粒径分布が異なることが認識される。
【0041】
このため、第1の水性懸濁液が、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有することが、本発明の1つの要件である。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0042】
本方法の一実施形態において、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および5.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および10.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および15.0から25.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0043】
または第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および5.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および10.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および15.0から25.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0044】
例えば、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および5.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および10.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および15.0から25.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0045】
本発明の一実施形態において、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および1.0から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および1.0から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および1.0から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0046】
本方法の一実施形態において、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および2.5から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および2.5から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して1.0から82.0重量%の固体含有量および5.0から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0047】
または第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および2.5から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および2.5から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から78.0重量%の固体含有量および5.0から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0048】
例えば、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および2.5から20.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および2.5から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第1の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して50.0から76.0重量%の固体含有量および5.0から15.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0049】
第2の水性懸濁液が、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および30.0を超えて100.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有することが、本発明の別の要件である。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および30.0を超えて100.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および30.0を超えて100.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0050】
本方法の一実施形態において、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および40.0を超えて90.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および50.0から80.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および60.0から70.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0051】
または第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および40.0から90.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および50.0から80.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および60.0から70.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0052】
例えば、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および40.0から90.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および50.0から80.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および60.0から70.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0053】
本発明の一実施形態において、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および10.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および10.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および10.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0054】
本方法の一実施形態において、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および20.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および25.0から40.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および27.5から35.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0055】
または第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および20.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および25.0から40.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して30.0から40.0重量%の固体含有量および27.5から35.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0056】
例えば、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および20.0から50.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および25.0から40.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。最も好ましくは、第2の水性懸濁液は、水性懸濁液の全重量に対して34.0から43.0重量%の固体含有量および27.5から35.0重量%の範囲の、1μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する。
【0057】
本方法の一実施形態により、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液は、水性懸濁液の異なる画分をアップコンセントレート(up−concentrating)および分離することによって得られる。例えば、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液の第1の水性懸濁液は、水性懸濁液を所望の固体含有量まで部分脱水することによって得られる。好ましくは、得られたケーキが水性懸濁液の全重量に対して、1.0から82.0重量%の固体含有量および1.0から30.0重量%の範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する第1の水性懸濁液を形成するように、水性懸濁液を部分脱水することができる。
【0058】
本方法の一実施形態において、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの第2の水性懸濁液は、第1の水性懸濁液から分離された上清を所望の固体含有量まで部分脱水することによって得られる。好ましくは、第1の水性懸濁液から分離された上清を部分脱水することによって得られた上清は、得られたケーキが水性懸濁液の全重量に対して10.0から82.0重量%の固体含有量および30.0を超え100.0重量%までの範囲の、2μm未満の粒径を有する粒子の含有量を有する第2の水性懸濁液を形成するように、さらに部分脱水することができる。
【0059】
水性懸濁液の固体含有量は、当業者に公知の方法によって調整することができる。水性懸濁液の固体含有量を調整するために、水性懸濁液は、沈殿、濾過、遠心分離または熱分離法によって部分脱水され得る。例えば、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの第1の水性懸濁液は、水性懸濁液を遠心分離によって所望の固体含有量まで部分脱水することによって得られ、および/または工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの第2の水性懸濁液は、第1の水性懸濁液から分離した上清を沈殿によって所望の固体含有量まで部分脱水することによって得られる。
【0060】
遠心分離および/または沈殿による部分脱水は、当業者に周知の方法を使用して行うことができる。
【0061】
少なくとも2つの水性懸濁液は、炭酸カルシウム含有材料を含む。特に、炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウム含有粒子を含む。
【0062】
本発明の一実施形態により、少なくとも2つの水性懸濁液の一部である炭酸カルシウム含有材料は、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイトおよびこれらの混合物の中から選択される。
【0063】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然源、例えば石灰石、大理石および/またはチョークから得られ、湿式および/または乾式処理、例えば粉砕、ふるい分けおよび/または分画により、例えばサイクロンまたは分級機によって加工された炭酸カルシウムである。
【0064】
粉砕炭酸カルシウム(GCC)は例えば、大理石、石灰石および/またはチョークの1つ以上を特徴とし得る。本発明の一実施形態により、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態により、GCCは湿式粉砕と後続の乾燥によって得られる。
【0065】
概して、粉砕ステップは、いずれの従来の粉砕装置を用いて、例えば精製が2次体との衝突から主に生じるような条件下で、即ちボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロール粉砕機、遠心分離インパクトミル、縦型ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダ、デクランパ(de−clumper)、ナイフカッターまたは当業者に既知である他のこのような装置の1つ以上で行うことができる。炭酸カルシウム含有粒子が湿式粉砕炭酸カルシウム含有粒子を含む場合、粉砕工程は、自生粉砕が起こるような条件下でならびに/または水平ボールミリングおよび/もしくは当業者に既知の他の方法によって実施され得る。このように得られた湿式加工粉砕炭酸カルシウム含有粒子は、周知の方法によって、洗浄され、乾燥前に例えば凝集、濾過または強制蒸発によって脱水され得る。後続の乾燥ステップは、噴霧乾燥などの単一のステップで行っても、少なくとも2つのステップで行ってもよい。不純物を除去するために、このような炭酸カルシウム含有粒子に選鉱ステップ(浮遊選鉱、漂白または磁力選鉱ステップなど)を行うことも一般的である。
【0066】
本発明の意味における「ドロマイト」は、CaMg(CO(「CaCO・MgCO」)の化学組成を有する炭酸系(carbonatic)カルシウム−マグネシウム鉱物である。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの全重量に対して少なくとも30.0重量%のMgCO、好ましくは35.0重量%を超える、より好ましくは40.0重量%を超えるMgCOを含有する。
【0067】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によってまたは水中でのカルシウム源およびカーボネートイオン源の沈降によって得られる合成材料である。
【0068】
沈降炭酸カルシウム(PCC)は、アラゴナイト、ファーテライトおよび/またはカルサイト鉱物学的形態的形態の1つ以上を特徴とし得る。アラゴナイト形態は、普通、針状形態であるのに対して、ファーテライト形態は六方晶結晶系に属する。カルサイト形態は、偏三角面体、柱状、球状および菱面体形態を形成できる。PCCは、各種の方法で、例えば二酸化炭素を用いた沈降、石灰ソーダ法またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法によって製造することができる。得られたPCCスラリは、機械的に脱水および乾燥することができる。
【0069】
例えば炭酸カルシウム含有材料は、大理石、チョーク、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択されるGCCである。一実施形態において、炭酸カルシウム含有材料は、大理石またはチョーク、好ましくは大理石から選択されるGCCである。
【0070】
炭酸カルシウムに加えて、炭酸カルシウム含有材料は、さらなる金属酸化物、例えば二酸化チタンおよび/または三酸化アルミニウム、金属水酸化物、例えば三水酸化アルミニウム、金属塩、例えばサルフェート、例えば石膏もしくは繻子白、シリケート、例えばタルクおよび/もしくはカオリン粘土および/もしくは雲母、カーボネート、例えばマグネシウムカーボネートならびに/またはこれらの混合物を含み得る。
【0071】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウム含有材料は、前記炭酸カルシウム含有材料の全重量に対して、少なくとも50.0重量%、好ましくは少なくとも70.0重量%、より好ましくは少なくとも80.0重量%、さらに好ましくは少なくとも90.0重量%および最も好ましくは90.0から98.0重量%の炭酸カルシウムを含有する。
【0072】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウム含有材料は、セディグラフ5120またはセディグラフ5100によって測定される場合、0.1から100.0μm、0.25から50.0μmまたは0.3から25.0μm、好ましくは2.5または20.0μmの重量中央粒径d50を有する。
【0073】
本発明の一実施形態において、第1の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料および第2の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料の重量中央粒径d50は同じである。または、第1の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料および第2の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料の重量中央粒径d50は異なる。好ましくは、第1の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料および第2の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料の重量中央粒径d50は同じである。
【0074】
第1の水性懸濁液および第2の水性懸濁液が、好ましくは同じ炭酸カルシウム含有材料を含み、即ち、第1の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料が天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイトおよびこれらの混合物から選択され、第2の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料が同じ材料から選択されることが認識される。
【0075】
または、第1の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料および第2の水性懸濁液中の炭酸カルシウム含有材料は独立して、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイトおよびこれらの混合物の中から選択される。
【0076】
本発明の一実施形態において、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つを、濃縮工程、好ましくは沈殿または遠心分離による強制沈殿による機械的脱水に供する。好ましくは、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの第1の水性懸濁液を濃縮工程、好ましくは沈殿または遠心分離による強制沈殿による機械的脱水に供する。
【0077】
工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つの固体含有量を調整するために、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つを、濃縮工程、好ましくは沈殿または遠心分離による強制沈殿による機械的脱水で得ることも可能である。例えば、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの第1の水性懸濁液を、濃縮工程、好ましくは沈殿または遠心分離による強制沈殿による機械的脱水で得る。
【0078】
<少なくとも2つの水性懸濁液を混合する工程b)のキャラクタリゼーション>
本発明の方法の工程b)により、少なくとも2つの水性懸濁液を混合して水性懸濁液混合物を得る。
【0079】
本方法の一実施形態により、第1の水性懸濁液および各必須ではないさらなる水性懸濁液を第2の水性懸濁液に添加する。本方法の別の実施形態により、第2の水性懸濁液および各必須ではないさらなる水性懸濁液を第1の水性懸濁液に添加する。
【0080】
本発明の一実施形態において、十分な混合は、より完全な混合をもたらし得る、水性懸濁液の振とうまたは撹拌によって達成され得る。本発明の一実施形態において、混合工程b)は、少なくとも2つの水性懸濁液を確実に完全に混合するために、撹拌下で行う。このような撹拌は、連続的にまたは不連続的に行うことができる。当業者は、混合速度および温度などの混合条件を自分の処理装置に適合させる。
【0081】
混合工程b)は、室温にて、即ち20℃±2℃にてまたは他の温度にて行ってよい。一実施形態により、混合工程b)は、5から140℃、好ましくは10から110℃、最も好ましくは20から105℃の温度にて行う。熱は、内部剪断によって、外部源またはこれらの組合せによって導入され得る。
【0082】
<工程c)粉砕のキャラクタリゼーション>
本発明の方法の工程c)により、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物および/または混合工程b)を行う前の工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つを粉砕する。
【0083】
粉砕工程c)は、好ましくは湿式粉砕によって行う。
【0084】
本発明による方法の意味において「湿式粉砕」という用語は、水の存在下での(例えば鉱物源の)固体材料の(例えばボールミルにおける)細砕を示し、前記材料が水性懸濁液の形態であることを意味する。
【0085】
概して、粉砕工程c)は、いずれの従来の粉砕装置を用いて、例えば精製が2次体との衝突から主に生じるような条件下で、即ちボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロール粉砕機、遠心分離インパクトミル、縦型ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダ、デクランパ(de−clumper)、ナイフカッターまたは当業者に既知である他のこのような装置の1つ以上で行うことができる。粉砕工程c)は、自生粉砕が起こるような条件下でならびに/または水平およびもしくは垂直ボールミリングおよび/もしくは当業者に既知の他の方法によっても行われ得る。
【0086】
本発明の目的のために、当分野で既知のいずれの好適なミルも使用してよい。しかし、前記粉砕ユニットは、好ましくはボールミル内で行う。粉砕工程c)は少なくとも1つの粉砕装置を使用することによって行うことに、即ち、例えばボールミル、例えば半自生ミルまたは自生ミルから選択され得る一連の粉砕装置も使用できることに留意されたい。
【0087】
粉砕される水性懸濁液中に存在している水の量は、前記水性懸濁液の全重量に基づく全含水量によって表され得る。通例、湿式粉砕工程は、10.0から99.0重量%の範囲に及ぶ全含水量を有する水性懸濁液を使用して行う。
【0088】
好ましくは、粉砕工程c)は、高い固体含有量にて、即ち低い全含水量にて、例えば前記水性懸濁液の全重量に対して10から80.0重量%の範囲に及ぶ全含水量にて行う。
【0089】
一実施形態により、好ましくは粉砕工程c)を混合工程b)の前に行う場合、粉砕工程c)の第1の水性懸濁液中の全含水量は、水性懸濁液の全重量に対して10から35.0重量%、好ましくは15.0から30.0重量%およびより好ましくは20.0から27.0重量%の範囲に及ぶ。
【0090】
一実施形態により、好ましくは粉砕工程c)を混合工程b)の前に行う場合、粉砕工程c)の第2の水性懸濁液中の全含水量は、水性懸濁液の全重量に対して40.0から80.0重量%、好ましくは50.0から70.0重量%およびより好ましくは55.0から65.0重量%の範囲に及ぶ。
【0091】
粉砕工程c)を混合工程b)の後に行う場合、粉砕工程c)の水性懸濁液中の全含水量は、30から60重量%、好ましくは35から50重量%の範囲に及ぶ。
【0092】
加えてもしくはまたは、炭酸カルシウム含有材料の粉砕ビーズに対する特定の比において粉砕工程c)を行うことが有利である。例えば、粉砕装置内での炭酸カルシウム含有材料の粉砕ビーズに対する重量比(重量/重量)は、2:1から10:1、好ましくは3:1から8:1、より好ましくは3:1から6:1および最も好ましくは4:1から6:1である。最も好ましくは、粉砕装置内での炭酸カルシウム含有材料の粉砕ビーズに対する重量比(重量/重量)は、約5:1である。
【0093】
粉砕ビーズは、炭酸カルシウム含有材料の水性懸濁液を粉砕するのに好適ないずれの材料であることもできる。例えば粉砕ビーズは、融着粉砕ビーズでであって、粉砕ビーズの全重量に対して68重量%のバデレアイトおよび32重量%のアモルファスシリカから成る融着粉砕ビーズであることができる。
【0094】
粉砕工程c)には、10℃から150℃の範囲に及ぶ温度が特に好適である。好ましくは、粉砕工程c)は10から80℃または10℃から50℃の範囲に及ぶ温度にて行う。最も好ましくは,粉砕工程c)は室温、即ち約20℃±3℃にて行う。
【0095】
本発明の一実施形態により、粉砕工程c)を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも10分間、例えば少なくとも15分間、30分間もしくは45分間にわたって行う。または粉砕工程c)を最長で10時間、好ましくは最長で7時間、例えば最長で5時間、3時間もしくは2時間にわたって行う。例えば、1分間から10時間、例えば10分間から7時間、15分間から5時間、30分間から3時間または45分間から2時間に及ぶ範囲で行う。
【0096】
加えてもしくはまたは、粉砕工程c)は、100rpmから10,000rpm、好ましくは1,000rpmから7,500rpm、より好ましくは1,500rpmから5,000rpmおよび最も好ましくは1,500rpmから4,000rpmの範囲に及ぶミリング速度で行う。
【0097】
粉砕は、混合工程b)の前および/または後に行うことができる。即ち、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物を粉砕するために、方法工程c)を行うことができる。加えてもしくはまたは、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つを混合工程b)を行う前に粉砕するために、方法工程c)を行う。
【0098】
本発明の一実施形態において、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つを混合工程b)を行う前に粉砕するために、方法工程c)を行う。例えば、第1の水性懸濁液および/または第2の水性懸濁液および/または各必須ではないさらなる水性懸濁液を、混合工程b)を行う前に粉砕する。好ましくは、第1の水性懸濁液または第2の水性懸濁液または各必須ではないさらなる水性懸濁液を、混合工程b)を行う前に粉砕する。
【0099】
粉砕工程c)を混合工程b)の前に行う場合、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液の水性懸濁液を粉砕して、2μm未満の粒径を有する粒子の最低含有量を与えることが好ましい。このため、この実施形態において、混合工程c)を行う前に第1の水性懸濁液を粉砕することが好ましい。
【0100】
発明者らによって、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物を粉砕するために、方法工程c)を行うことが好ましいことが見出されている。このため、粉砕工程c)は、好ましくは混合工程b)の後に行う。
【0101】
一実施形態により、少なくとも1つの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。
【0102】
「少なくとも1つの」分散剤という表現は、1種類以上の分散剤が、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加され得ることを意味する。
【0103】
本発明の好ましい一実施形態により、一種類のみの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。本発明の別の実施形態により、2種類以上の分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。例えば、2または3種類の分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物液に添加する。好ましくは、2種類の分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。または、1種類のみの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。
【0104】
本方法の一実施形態において、少なくとも1つの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。例えば少なくとも1つの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つまたは混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。発明者らにより、少なくとも1つの分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加するのが好ましいことが見出されている。
【0105】
当業者に公知の従来の分散剤を使用することができる。別の実施形態により、少なくとも1つの分散剤は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの酸の誘導体、好ましくはエステルまたはアミド、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリルアミド、の少なくとも部分的に中和されたホモポリマーまたはコポリマーのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩および/もしくはアンモニウム塩(アミン塩は直鎖または環式である。)、リン酸水素ナトリウムまたはポリホスフェート、例えばアルカリポリホスフェート、カルボキシメチルセルロース、立体分散剤、櫛形ポリマーならびに/またはこれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは、4,000から10,000g/molの、好ましくは4,000から8,000g/molの、および最も好ましくは約6,000g/molの分子量Mを有するポリアクリル酸ナトリウムから選択される。
【0106】
本発明による方法の一実施形態において、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度を、分散剤の添加によって2,000mPa・s未満、好ましくは1,000mPa・s未満、より好ましくは750mPa・s未満、なおより好ましくは500mPa・s未満および最も好ましくは250mPa・s未満に調整する。
【0107】
本発明による方法の変形は、方法工程a)、b)およびc)の間にいずれの分散剤も存在させずに行うことを特徴とする。
【0108】
この方法は、分散剤が存在する場合、該分散剤が全乾燥炭酸カルシウム含有材料に対する重量%で0.001重量%から5.0重量%、好ましくは0.001重量%から2.0重量%および最も好ましくは0.05重量%から1.0重量%、例えば0.16重量%から0.22重量%の範囲で存在することも特徴とする。
【0109】
本発明の一実施形態において、対応する水性懸濁液の固体含有量が、対応する水性懸濁液の全重量に対して20.0重量%以上および最も好ましくは20.0から82.0重量%である場合に、分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に添加する。例えば、対応する水性懸濁液の固体含有量が対応する水性懸濁液の全重量に対して、20.0重量%以下および最も好ましくは20.0から82.0重量%である場合に、分散剤を、工程a)で提供された少なくとも2つの水性懸濁液のうちの少なくとも1つおよび/または混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物に、炭酸カルシウム含有材料の全乾燥重量に対して0.001重量%から5.0重量%、好ましくは0.001重量%から2.0重量%および最も好ましくは0.05重量%から1.0重量%、例えば0.16重量%から0.22重量%の範囲の量で、添加する。
【0110】
本発明の必須ではない実施形態により、方法は、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物を濃縮する、少なくとも1つの工程d)をさらに含む。
【0111】
粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物の、または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られる水性懸濁液混合物の固体含有量は、当業者に公知の濃縮方法によって調整することができる。対応する水性懸濁液混合物の濃縮は、例えば蒸発器における熱的方法によって、または例えばナノ濾過などのフィルタプレスにおけるおよび/もしくは遠心分離における機械的方法によって行ってよい。
【0112】
本発明の方法によって得られる対応する水性懸濁液混合物の固体含有量は、固体含有量が対応する水性懸濁液混合物の全重量に対して20.0から80.0重量%、より好ましくは30.0から70.0重量%、最も好ましくは40から65.0重量%となるように、水の少なくとも一部を除去することによって濃縮できる。一実施形態により、対応する水性懸濁液混合物の固体含有量は、固体含有量が対応する水性懸濁液混合物の全重量に対して50.0から62.0重量%となるように、中程度の固体含有量まで濃縮される。
【0113】
本発明の必須ではない一実施形態により、本発明の方法によって得られる対応する水性懸濁液混合物を濃縮する工程は、乾燥生成物が得られるように行う。
【0114】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の方法は、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物または粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られる水性懸濁液混合物における、水性懸濁液の全重量に対して20.0から80.0重量%および好ましくは50.0から62.0重量%の固体含有量を直接もたらし得るが、このことは本発明の方法では、追加の濃縮工程が実施されないことを意味する。
【0115】
本方法の別の実施形態において、方法は、
e)粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、工程b)で得られた水性懸濁液、もしくは粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物、もしくは濃縮工程d)で得られた水性懸濁液混合物を乾燥させて水の少なくとも一部を除去して、部分脱水炭酸カルシウム含有材料を得るもしくは乾燥炭酸カルシウム含有材料を得る工程、ならびに場合により
f)工程e)の後に得られた乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの分散剤によって処理し、これを再希釈して分散炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を得る工程、ならびに/または
g)工程e)の後に得られた乾燥炭酸カルシウム含有材料を少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖もしくは分枝カルボン酸によって、ならびに/または少なくとも1つの一置換コハク酸無水物および/もしくは少なくとも1つの一置換コハク酸および/もしくは(1または複数の)塩反応生成物によって、ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはその反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはその反応生成物との少なくとも1つのリン酸エステルブレンドによって処理して、疎水化炭酸カルシウム含有材料を得る工程
をさらに含む。
【0116】
部分脱水および/または乾燥炭酸カルシウム含有を、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物および/もしくは少なくとも1つの1置換コハク酸および/もしくは(1または複数の)塩反応生成物によって、ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはその反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはその反応生成物との少なくとも1つのリン酸エステルブレンドならびにコーティングのための好適な化合物によって処理する方法は、参照により本明細書に組み入れられているEP2722368A1およびEP2770017A1に記載されている。
【0117】
乾燥炭酸カルシウム含有材料および/または部分脱水炭酸カルシウム含有材料を処理するための好適な飽和脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、例えば、乾燥の間および/または前および/または後に、5から24個の炭素原子を有する脂肪族直鎖または分枝カルボン酸である。好ましくは、乾燥炭酸カルシウム含有材料および/または部分脱水炭酸カルシウム含有材料は、乾燥の前または後に、5から24個の炭素原子を有する脂肪族直鎖または分枝カルボン酸によって処理する。より好ましくは、乾燥炭酸カルシウム含有材料および/または部分脱水炭酸カルシウム含有材料は、乾燥の前に、5から24個の炭素原子を有する脂肪族直鎖または分枝カルボン酸によって処理する。
【0118】
本発明の意味における脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、1つ以上の直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または脂環式カルボン酸から選択され得る。好ましくは、脂肪族直鎖または分枝カルボン酸はモノカルボン酸であり、即ち脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、1個のカルボキシル基が存在することを特徴とする。前記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置されている。
【0119】
本発明の一実施形態において、脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は飽和非分枝カルボン酸から選択され、即ち脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、好ましくはペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸およびこれらの混合物から成るカルボン酸の群から選択される。
【0120】
本発明の別の実施形態において、脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびこれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、脂肪族直鎖または分枝カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの混合物から成る群から選択される。
【0121】
例えば、脂肪族直鎖または分枝カルボン酸はステアリン酸である。
【0122】
<炭酸カルシウム含有材料>
本発明者らは驚くべきことに、本発明の方法により、第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する従来方法と比べて、最終製品のBET比表面積が小さい炭酸カルシウム含有材料が得られることを見出した。
【0123】
このため、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、ISO 9277に従って窒素およびBET法を使用して測定される場合、0.1から30.0m/gの間、好ましくは1.0から20.0m/gの間、より好ましくは2.0から14.0m/gの間および最も好ましくは8.0から10.0m/gの間である。加えてもしくはまたは、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する方法によって製造された炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積よりも0.1から2.0m/gの間、好ましくは0.1から1.5m/gの間およびより好ましくは0.2から1.0m/gの間だけ小さい。
【0124】
代替的な実施形態において、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料が粉砕工程c)で得られる場合、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、ISO 9277に従って窒素およびBET法を使用して測定される場合、0.1から30.0m/gの間、好ましくは1.0から20.0m/gの間、より好ましくは2.0から14.0m/gの間および最も好ましくは8.0から10.0m/gの間である。加えてもしくはまたは、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料が粉砕工程c)で得られる場合、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積は、第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する方法によって製造された炭酸カルシウム含有材料のBET比表面積よりも0.1から2.0m/gの間、好ましくは0.1から1.5m/gの間およびより好ましくは0.2から1.0m/gの間だけ小さい。
【0125】
本方法の一実施形態において、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度は、50から5,000mPa・sの間、好ましくは75から1,500mPa・sの間およびより好ましくは150から500mPa・sの間である。または、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、水性懸濁液混合物が粉砕工程c)で得られる場合、粉砕工程c)で得られた水性懸濁液混合物のブルックフィールド粘度は、50から5,000mPa・sの間、好ましくは75から1,500mPa・sの間およびより好ましくは150から500mPa・sの間である。
【0126】
本発明の一実施形態において、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料は、50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下および最も好ましくは10.0μm以下のトップカット粒径d98を有する。加えてもしくはまたは、粉砕工程c)を混合工程b)の前に行うという条件で、混合工程b)で得られた水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料は、0.1から10.0μmの間、好ましくは0.から5.0μmの間および最も好ましくは1.0から2.0μmの間の重量中央粒径d50を有する。
【0127】
代替的な実施形態において、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料が粉砕工程c)で得られる場合、炭酸カルシウム含有材料は、50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下および最も好ましくは10.0μm以下のトップカット粒径d98を有する。加えてもしくはまたは、粉砕工程c)を混合工程b)の後に行うという条件で、水性懸濁液混合物中の炭酸カルシウム含有材料が粉砕工程c)で得られる場合、炭酸カルシウム含有材料は、0.1から10.0μmの間、好ましくは0.5から5.0μmの間および最も好ましくは1.0から2.0μmの間の重量中央粒径d50を有する。
【0128】
炭酸カルシウム含有材料の有利な特性、とりわけ第2の水性懸濁液の代わりに水を使用する従来の方法と比べて最終製品のBET比表面積が小さいことを鑑みて、本発明はさらに、本発明によって得られる炭酸カルシウム含有材料に関する。
【0129】
本発明の炭酸カルシウム含有材料は、紙用フィラーおよび紙用コーティング用途のために、プラスチック用途、塗料、接着剤、封止剤、コンクリート、農業用途、食品用途、化粧品用途または医薬用途において使用され得る。
【0130】
炭酸カルシウム含有材料はBET比表面積が小さいため、該材料はコート紙の印刷および光沢特性を調整するために紙コーティング中で有利に使用され得る。さらに炭酸カルシウム含有材料は、塗料であって、このような塗料によって処理される表面の光学特性の改善をもたらし得る塗料にも使用され得る。
【0131】
プラスチック用途におけるフィラー材料としての本発明による炭酸カルシウム含有材料の使用も、特に有利であり得る。例えば、前記炭酸カルシウム含有材料を熱可塑性ポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィンおよびポリスチレン中で使用してよい。
【0132】
以下の図面、実施例および試験は本発明を例示するが、本発明を決して限定するものではない。
【実施例】
【0133】
[実験項]
[1.測定方法]
以下では、実施例で行った測定方法について説明する。
【0134】
[微粒子材料の粒径分布(粒径がX未満の粒子の質量%)および重量中央径(d50)]
微粒子材料の重量粒径および粒径質量分布は、沈降法、即ち重力場における沈降挙動の分析によって測定した。測定は、Micromeritics Instrument Corporation製のSedigraph(商標)5120またはSedigraph(商標)5100を用いて行った。
【0135】
方法および機器は当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒径を決定するためによく使用されている。測定は0.1重量%Na水溶液中で行う。高速撹拌機および超音波を使用して試料を分散させる。
【0136】
[材料のBET比表面積]
本文書を通じて、微粒子材料の比表面積(m/g)は、当業者に周知である(吸着ガスとして窒素を使用する)BET法(ISO 9277:1995)を使用して求めた。次いで、微粒子材料の全表面積(m)を比表面積と微粒子材料の質量(g)との積によって得る。方法および機器は当業者に公知であり、微粒子材料の比表面を求めるためによく使用されている。
【0137】
[懸濁液pH測定]
懸濁液のpHは、メトラートレド(Mettler Toledo)セブンイージー(Seven Easy)pH計およびメトラートレドInLab(R)エキスパートプロ(Expert Pro)pH電極を使用して、25℃にて測定した。機器の3点較正(セグメント法による。)を、20℃にて4、7および10のpH値を有する市販の緩衝溶液(アルドリッチ(Aldrich))を使用して、最初に行う。報告したpH値は、機器によって検出した終点値である(終点は、測定した信号の平均からの差が最後の6秒間にわたって0.1mV未満である場合である。)。
【0138】
[ブルックフィールド粘度]
本発明の目的のために、用語「粘度」または「ブルックフィールド粘度」は、ブルックフィールド粘度を示す。ブルックフィールド粘度はこの目的のために、ブルックフィールド(Type RVT)粘度計により25℃±1℃、100rpmにて、ブルックフィールド RVスピンドルセットの適切なスピンドルを使用して測定し、mPa・sで規定する。当業者は、自分の技術知識に基づいて、ブルックフィールド RVスピンドルセットから測定する粘度範囲に好適であるスピンドルを選択する。例えば、200から800mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号3が使用され得て、400から1600mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号4が使用され得て、800から3200mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号5が使用され得る。
【0139】
[固体含有量]
固体含有量(「乾燥重量」としても公知)は、スイスのMettler−Toledo社製の水分分析装置HR73を以下の設定:温度120℃、自動スイッチオフ3、標準乾燥、生成物5から20gを使用して決定した。
【0140】
[顔料白色度]
顔料白色度R457は、Datacolor社製のELREPHO 3000を使用して、ISO 2469:1994(DIN 53145−2:2000およびDIN 53146:2000)に従って測定した。
【0141】
[光散乱係数]
光散乱係数「S」は、紙コーティングバインダであるBASF製Acronal(商標)S 360 D 10部(乾量基準)および炭酸カルシウム懸濁液90部(乾量基準)を使用して紙コーティングカラーを調製して、ドイツ、58675、HemerのEricksen製のラボラトリーコーターTypモデル624を使用してプラスチック支持体(Synteape、Argo Wiggins)に各種のコート重量の範囲でコーティングすることによって測定した。コーティングカラーはすべて、別途記載しない限り、45.0重量%の固体含有量を有していた。
【0142】
光散乱係数Sは、US2004/0250970に記載された方法に従って測定し、該方法において、光散乱能力は、該方法によって求められ、専門家に周知であり、Kubelkaおよび Munk(Zeitschrift fur Technische Physik 12,539(1931))ならびにKubelka(J.Optical Soc.Am.38(5),448(1948)およびJ.Optical Soc.Am.44(4),330(1954))の刊行物ならびにUS5,558,850に記載されている、クルベカ−ムンク(Kubelka−Munk)光散乱係数によって表される。光散乱係数Sは、20g/mにて内挿された値として見積もる。
【0143】
[2.実施例]
以下の出発材料を実施例に使用した。
【0144】
【表1】
【0145】
[水性懸濁液1(AS1)の調製]
ノルウェー産大理石(40−48μm)を25重量%の固体含有量にて、W.Bachofen AG製のダイノーミルMultilab内で(粉砕チャンバの全容積=600cm、ミル速度=2,500rpm、フロー=500cm/分、融着粉砕ビーズであって、粉砕ビーズの全重量に対して68重量%のバデレアイトおよび32重量%のアモルファスシリカから成り、1.0から1.6mmの範囲の直径を有する融着粉砕ビーズ1,070gを充填)d50が8μmとなるまで粉砕した。
【0146】
懸濁液を遠心分離して、固体含有量が75%のケーキおよび固体含有量が2%の上清を得た。ケーキを、下の表2に示す量の分散剤1または2を用いて、75重量%の固体含有量で分散させた。
【0147】
[水性懸濁液2(AS2)の調製]
AS1からの上清を沈殿瓶に入れ、沈殿物が37%の固体含有量に達するまで数日放置した。上清の水をデカンテーションして、沈殿物をAS2として使用した。
【0148】
[混合物の調製および粉砕]
AS1をAS2およびまたは水と混合した。さらに、下の表2に示す量の分散剤を添加した。混合物を激しく撹拌して、ミル内を圧送した。1バッチは、およそ5kgの(乾燥)炭酸カルシウムを含有していた。続いて、得られた炭酸カルシウム含有懸濁液を、炭酸カルシウム含有材料が所望の重量中央粒径d50を有するまで、即ち約60分間、室温にて粉砕した。粉砕には、W.Bachofen AG製のダイノーミルMultilab(粉砕チャンバの全容積=600cm、ミル速度=2,500rpm、フロー=500cm/分、融着粉砕ビーズであって、粉砕ビーズの全重量に対して68重量%のバデレアイトおよび32重量%のアモルファスシリカから成り、1.0から1.6mmの範囲の直径を有する融着粉砕ビーズ1,070gを充填)を使用した。得られた生成物の物理データを下の表2に示す。ΔSSAが本発明の実施例のBET比表面積の対応する比較例との差を示すことに留意すべきである。
【0149】
【表2】
【0150】
表2におけるE1とCE1との、E2とCE2との、E3とCE3との、およびE4とCE4との比較により、本方法によってBET比表面積がより小さい炭酸カルシウム含有材料を製造できることが示されている。このため、本発明の炭酸カルシウム含有材料の製造方法は、光学特性ならびにコーティングホールドアウトの改善と併せて、分散剤の消費をより少なくできる材料ももたらす。さらに、本発明による粉砕方法は、より時間効率的であるため、よりエネルギー効率的となることも期待されている。
図1