【実施例】
【0020】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明することを意図しており、本請求項に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈すべきではない。下記表で、’nd’は実施せず又は測定せずを意味する。以下の実施例で使用された式Cu
5Siのケイ化銅粒子は、ACI Alloysから購入した。原料である銅及びケイ素は、99.99%純度であった。粒子は5mm〜10mmの粒径を有し、ジョークラッシャで粉砕し、ふるいにかけた。シリカは、Clariantから購入した。炭化ケイ素は、99.8%純度を有するβ相であり、Alfa Aesarから購入した。炭化ケイ素を、177μmスクリーンに通し、2つの異なる粒径分布を作り出した。
【0021】
これらの実施例で使用された流動床装置は2.54cmの外側石英管を含み、垂直位置に位置するリンドバーグブルー炉内にて加熱した。ガラス内側管は0.9525cmの内径を有しており、この中で流動化を実施した。窒素を使用して、この装置内で粒子を流動化した。窒素ガスを外側管内に供給し、下方に流して予熱した。次に、窒素はガラスフリットを通過して、内側管を通って上昇した。この内側管により、粒子が流動化するようになった。窒素が大気中へ流出される場合、内側管は、一緒に運ばれる任意の粒子を回収するように拡張頭部の中へと出ていく。
【0022】
この装置用の器具は、窒素フローをコントロールするためのロタメータ、内側管中のサーマルウェル(thermal well)の内側に配置された熱電対及び差圧トランスミッタを含む。差圧は、入口のガス圧力及び内側管を出て大気中へ向かう窒素の圧力の間で測定した。系の圧力損失が、フリットに起因するなど、床の圧力損失から分離されることを考慮するために、全ての温度において空の床で、系を較正した。
【0023】
各実施例では、最初に床温度を50℃に設定した。次に、全ての流動化レジームを測定した。窒素速度はゼロで始まり、ゆっくりと増加させた。差圧を連続的に監視し、床を通り抜ける速度が増加するにつれて、増加させた。窒素速度が増加する時に圧力損失が一定に保たれる場合、均一な流動化を確認した。また、目視観測を使用して、均一な流動化を確認した。
【0024】
均一な流動化が確立したら、窒素速度をゆっくりと低下させて流動化を停止し、床を固定状態に戻した。次に、この方法を、温度を上昇させて繰り返し、200℃、400℃、500℃、600℃、700℃及び750℃で試験した。流動化圧力損失に対しては、窒素速度を増加させる間に、圧力損失オーバーシュートによって、流動化挙動を数値化した。加えて、固定状態に戻る際、圧力損失対窒素速度の直線を計算した。圧力損失オーバーシュートとは、流動化の閾値と流動化圧力損失の間にある差を意味し、高アスペクト比を有する実験室用サイズの床を使用した関数である。流動化を開始させるには、流動化圧力損失を超えなければならない。しかし、流動化が始まると、流動化圧力損失は減少する(すなわち、均一な流動化が維持されている間の圧力損失)。
【0025】
比較例1では、流動床装置に45〜106μmの範囲の粒径を有する純Cu
5Si(20g)を充填した。温度を50℃に設定した。窒素速度をゆっくりと増加させて、圧力損失が理論上の流動化圧力損失(2.67kPa(水中10.7))と等しくなった場合に均一な流動化を達成した。次に、窒素速度を低下させ、床を固定状態に戻した際に圧力損失を観察した。非流動化すると、床は固定されるようになり、圧力損失はゆっくりとゼロへ減少した。200℃で、同様の結果となった。400℃で、固定床通過圧力損失は、2.67kPa(水中10.7)の圧力損失で流動化するのに先立って、最大3.89kPa(水中15.6)に達した。それによって、不均一な流動化を示した。窒素速度が流動化を支持するのに十分ではない地点で、床は、圧力損失がほぼゼロになることを可能にする溝とともに凝集した。500℃で、固定床通過圧力損失は、一瞬の間だけ流動化するのに先立って最大6.53kPa(水中26.2)に達したが、均一な流動化は500℃で達成されなかった。床は直ちに崩壊して凝集状態になり、窒素が乱されずに通過できる溝を形成した。500℃より大きい温度では、粒子が凝集する前に、一般的に認められた任意の長さの時間での流動化は達成できなかった。
【0026】
実施例2では、流動床装置に45〜106マイクロメートルの粒径を有するCu
5Si粒子及び63〜88μmの粒径を有するケイ素粒子を充填した。Cu
5Si粒子の量は装置中の粒子の95%で、ケイ素粒子の量は装置中の粒子の5%であった。粒子の合計量は全体で20グラムであった。50℃の温度で開始し、床が流動化するまで窒素速度をゆっくりと増加させた。次に、窒素速度を低下させ、床を固定状態に戻した際に圧力損失を観察した。600℃の温度までこれを繰り返した。500℃通過温度で、混合物をうまく流動化させることができた。500℃で、観察された最大圧力損失は、流動化の圧力損失(2.81kPa(水中11.3))と等しかった。窒素速度を低下させて固定床状態に戻ると、窒素速度(R
2=0.980)に対して直線的に圧力損失が減少し、凝集及びチャネリングの兆候は現れなかった。しかし、600℃では、粒子が溝の中に配置されて窒素が自由に通過可能なほど窒素速度が十分になると、床は凝集した。
【0027】
実施例3では、流動床装置に45〜106μmの粒径を有するCu
5Si粒子及び20〜40μmの粒径を有するシリカ粒子を充填した。Cu
5Si粒子の量は装置中の粒子の95%で、シリカ粒子の量は装置中の粒子の5%であった。粒子の合計量は全体で20グラムであった。50℃の温度で開始し、床が流動化するまで窒素速度をゆっくりと増加させた。次に、窒素速度を低下させ、床を固定状態に戻した際に圧力損失を観察した。750℃の最高試験温度までこれを繰り返した。試験を実施した全ての温度で、粒子を流動化させることができた。750℃で、観察された最大圧力損失は2.2kPa(水中9.0)であり、流動化で観察された2.1kPa(水中8.3)という圧力損失よりも大きかった。窒素速度を低下させて固定床状態に戻ると、窒素速度(R
2=0.967)に対して直線的に圧力損失が減少し、凝集及びチャネリングの兆候は現れなかった。
【0028】
実施例4では、流動床装置に45〜106μmの粒径を有するCu
5Si粒子及び1〜3μmの粒径を有する炭化ケイ素粒子を充填した。Cu
5Si粒子の量は装置中の粒子の95%で、炭化ケイ素粒子の量は装置中の粒子の5%であった。粒子の合計量は全体で20グラムであった。同一手順を使用し、50℃の温度で開始した。床が流動化するまで窒素速度をゆっくりと増加させた。次に、速度を低下させ、反応器を固定床状態に戻した。750℃の最高試験温度までこれを繰り返した。試験を実施した全ての温度で、混合物をうまく流動化させることができた。750℃で、観察された最大圧力損失は、流動化の圧力損失(2.0kPa(水中8.1))と等しかった。窒素速度を低下させて固定床状態に戻ると、窒素速度(R
2=0.985)に対して直線的に圧力損失が減少し、凝集及びチャネリングの兆候は現れなかった。
【0029】
実施例5では、流動床装置に45〜106μmの粒径を有するCu
5Si粒子及び1〜3μmの粒径を有する炭化ケイ素粒子を充填した。Cu
5Si粒子の量は装置中の粒子の98%で、炭化ケイ素粒子の量は装置中の粒子の2%であった。同一手順を使用し、50℃の温度で開始した。床が流動化するまで窒素速度をゆっくりと増加させた。次に、速度を低下させ、反応器を固定床状態に戻した。750℃の最高試験温度までこれを繰り返した。試験を実施した全ての温度で、粒子を流動化させることができた。750℃で、観察された最大圧力損失は、流動化の圧力損失(2.3kPa(水中9.3))と等しかった。窒素速度を低下させて固定床状態に戻ると、窒素速度(R
2=0.976)に対して直線的に圧力損失が減少し、凝集及びチャネリングの兆候は現れなかった。
【0030】
比較例6では、ACI Alloys社(San Jose,California,U.S.A)から購入した式Cu
0.816Si
0.167Pd
0.008Ni
0.008のケイ化銅を、装置に充填した。このケイ化銅は、45〜106μmの粒径を有した。上記実施例と同一の手順に従った。400℃で試験する間、窒素速度は最小流動化速度未満まで低下するにつれて、床通過圧力損失は、ほぼゼロになった。これは、床における凝集及びチャネリングに起因した。流動化は、窒素速度を流動化に必要な速度よりも高い地点まで増加することにより、又は外部のエネルギー源(例えば振動)を供給することにより再開させることができた。500℃及び600℃では、凝集及びチャネリングがより厳しくなるとともに、同様の現象が観察された。700℃では、流動化は連続的に床に振動を与える間のみに発生し、750℃では、床は圧力損失値を記録するほど十分に流動化しなかった。750℃〜400℃へ冷却すると、流動化を再び達成することができた。このことは、追加金属を含むケイ化銅には、二元系ケイ化物と同様の凝集課題が存在することを示した。
【0031】
実施例7では、比較例6と同様に、式Cu
0.816Si
0.167Pd
0.008Ni
0.008のケイ化銅を、装置に再び充填した。流動化添加剤である粒径1〜3μmの炭化ケイ素を、炭化ケイ素粒子の重量が炭化ケイ素及びケイ化銅粒子の総重量の2%を構成するように添加し、装置内で粒子の混合物を形成した。上記実施例と同一の試験手順に従った。粒子混合物は、試験した全ての温度で、振動やその他の外部操作を伴うことなく、均一な流動化を維持することができた。750℃で、測定された最大圧力損失は、流動化の圧力損失(3.26kPa(水中13.1))と等しかった。窒素速度を低下させて固定床状態に戻ると、窒素速度(R
2=0.977)に対して直線的に圧力損失が減少し、凝集及びチャネリングの兆候は現れなかった。本実施例は、流動化添加剤が追加金属を含むケイ化銅に対して効果的であることを示した。
【0032】
表1は、流動化が持続し、床の凝集及びチャネリングをもたらさない最高試験温度を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
注意:5%シリカ及び炭化ケイ素の両試験結果について、最高試験温度はもっと高くなるであろうが、750℃よりも高い温度は今回設定した実施例において試験されなかった。
【0035】
表2は、圧力損失オーバーシュートの流動化圧力損失に対する割合、並びに窒素速度に対して速度低下させる間の圧力損失の直線性についてまとめている。表は、全ての測定温度で均一に流動化し、凝集及びチャネリングしなかった3つの純Cu
5Si混合物についてのデータを示す。
【0036】
【表2】
【0037】
これらの実施例は、ケイ素、シリカ及び炭化ケイ素のそれぞれが、同一条件下でケイ化銅の流動化を促進することを示す。しかし、凝集又はチャネリングがない均一な流動化を維持できる温度は、ケイ素で達成する温度よりも高かったので、シリカ及び炭化ケイ素は、ケイ素よりもより良い結果となった。
【0038】
発明の概要及び要約は、参照により本明細書に組み込まれる。全ての比、パーセンテージ及びその他の量は、明細書の文脈により別途記載のない限り、重量によるものである。冠詞「a」、「an」、及び「the」はそれぞれ、明細書の文脈により別途記載のない限り、1つ又はそれ以上を指す。本明細書で使用される略語は以下の表Aに定義される。
【0039】
【表A】
【0040】
範囲の開示は、その範囲自体及びそこに含まれる任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0〜4.0の範囲の開示は、2.0〜4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5及び4.0も個別に含むことに加えて、範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0〜4.0の範囲の開示は、例えば、2.1〜3.5、2.3〜3.4、2.6〜3.7及び3.8〜4.0の部分集合に加えて、にその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。
【0041】
様々な実施形態の特定の特徴又は態様を記載するために本明細書が依拠するマーカッシュ群に関して、他の全てのマーカッシュ要素から独立したそれぞれのマーカッシュ群の各要素から、異なる、特別な、及び/又は予期しない結果が得られる可能性があることが理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個別に、及び/又はマーカッシュ群の任意の他の1つ若しくはそれ以上の要素と組み合わせて依拠されてもよく、各要素は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態のための適切な根拠を提供する。例えば、マーカッシュ群「アルキル、アリール、及び炭素環式」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を含む。
【0042】
また、本開示の種々の実施形態を記載する際に依存する任意の範囲及び部分範囲が、添付の特許請求の範囲内に個別かつ集合的に入ることも理解されるべきであり、またかかる値が明白に記載されていない場合でも、全体及び/又は部分値を含む全ての範囲を記載し、考慮することが理解される。列挙された範囲及び部分範囲は本開示の種々の実施形態を十分に記述し、それらを可能にし、そのような範囲及び部分範囲は更に関連した半分、3分の1、4分の1、5分の1等と表現できる。ほんの一例として、範囲「400〜750」は、下の方の3分の1、すなわち、400〜516、中間の3分の1、すなわち、517〜633、及び上の方の3分の1、すなわち、634〜750に更に詳述でき、これらは、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」等の範囲を定義又は修飾する用語に関して、かかる用語が部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも0.1%」の範囲は、本質的に、5%〜35%の部分範囲、10%〜25%の部分範囲、23%〜30%の部分範囲等を含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供する。最終的には、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。例えば、範囲「1〜9」は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は分数)を含む個別の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
【0043】
独立請求項及び従属請求項(単一項従属及び多数項従属の両方とも)の全ての組合せの主題が明白に想到されるが、簡潔にするために詳細には記載されていない。本開示は例示的に記載したものであり、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉としての性質を持つものであることが理解されるべきである。前述した教示に照らして本開示の多くの修正形態及び変形形態が可能であり、本開示は、具体的に記述されているものとは異なる方法で実施することができる。