(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6475381
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】磁石製品
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
A47G29/00 L
A47G29/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-85663(P2018-85663)
(22)【出願日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年5月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509099464
【氏名又は名称】株式会社マグエバー
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】澤渡 紀子
【審査官】
大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−084329(JP,U)
【文献】
特開2018−019834(JP,A)
【文献】
実開平03−017319(JP,U)
【文献】
特開2001−231676(JP,A)
【文献】
実開昭50−109727(JP,U)
【文献】
特開2012−104614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
F16B 45/00
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、
前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部を貫通させるために前記永久磁石部に設けられた貫通孔と、
前記永久磁石部の略全面を被覆する被覆部と
を具備し、
前記貫通孔には前記結合部の頭部と前記永久磁石部を被覆する被覆部との間に緩衝部を更に具備したことを特徴とする懸架用磁石製品。
【請求項2】
前記永久磁石部に隣接して配置される磁束調整部を更に備え、
前記被覆部は前記永久磁石部及び前記磁束調整部を被覆することを特徴とする請求項1記載の懸架用磁石製品。
【請求項3】
金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、
前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に隣接して配置される磁束調整部であって前記第2面と接する第3面を有する磁束調整部と、
前記磁束調整部の前記第3面と対向する第4面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部の頭部を収納するのに十分な第1の径を備え前記永久磁石部に穿設された第1の貫通孔と、
前記結合部の軸部を通すのに十分でありかつ前記結合部の前記頭部より小さな内径を備えて前記磁束調整部に穿設された第2の貫通孔と、
少なくとも前記第1面と前記第4面と前記第1面及び前記第4面の間に形成される側面との略全面にわたって、前記永久磁石部と前記磁束調整部とを被覆する被覆部と
を具備することを特徴とする懸架用磁石製品。
【請求項4】
前記結合部の頭部と前記磁束調整部を被覆する前記被覆部との間に緩衝部を更に具備したことを特徴とする請求項3記載の懸架用磁石製品。
【請求項5】
金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に隣接して配置される磁束調整部であって前記第2面と接する第3面を有する磁束調整部と、前記磁束調整部の前記第3面と対向する第4面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部の全体を収納できる第1の径を有して前記永久磁石部及び前記磁束調整部に設けられた第1の孔と、少なくとも前記第1面と前記第4面と前記第1面及び前記第4面の間に形成される側面との略全面にわたって、前記永久磁石部と前記磁束調整部とを被覆する被覆部と、を備えたマグネット部と、
前記第1の孔によって形成される第1の凹部に嵌合する凸部、前記凸部の内部に前記結合部の軸部を通すのに十分な第3の径を有する第3の孔、前記結合部の頭部の厚さより大きい深さと前記結合部の頭部の径より大きな内径とを持つ第2の凹部、前記第2の凹部から延出し前記第1面から若干セットバックされた第5面に拡開するように配置される羽部、を備える緩衝部であって、前記羽部の厚さよりも大きな深さと前記羽部の径よりも大きな第4の径とを有して前記第5面に形成される第4の凹部に前記羽部が完全に収納される、緩衝部と
を具備することを特徴とする懸架用磁石製品。
【請求項6】
前記緩衝部の外縁に前記緩衝部の前記懸架部とは反対側の面と略同面で外縁緩衝部が更に配置されたことを特徴とする請求項5記載の懸架用磁石製品。
【請求項7】
前記マグネット部における前記被覆部と前記緩衝部とが溶融接着を含む一体化手段によって一体化されたことを特徴とする請求項5記載の懸架用磁石製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば磁石製品に係り、特に、金属製の壁に取り付けて使用され得る、懸架用の磁石製品に関する。
【背景技術】
【0002】
壁が磁石の吸着され得る金属製である場合には、磁石(マグネット)製品を使用するのが一般的である。現在、対象物に合わせた様々な形状のホルダーやラックやフックなど懸架用の磁石製品が販売されている。磁石は錆びやすいため、台所や洗面所や浴室など水場環境で使用するには、サビ防止のための対応が必要になる。
【0003】
また、磁石に懸架用の吊り具を組み付けて磁石製品を作ることを想定した場合、様々な懸架対象をこれに懸架する必要が生じることがある。このとき、懸架対象物の重量等に変動が生じる都度、この磁石製品の買い替えが必要になるとしたら経済的ではない。
【0004】
この点で、たとえば特許文献1では、断面コ字状を成すヨーク2の立上り部2a間に表裏面がN、S極を成す板状磁石4を当該ヨーク2の立上り部2aの上端面と同じかやや低めに配設し、このヨーク2の下端にフック金具3を取り付け、磁石4の外側に保護シート5を粘着して磁性吊下具1を構成したうえで、フック金具3の取り付け側に、壁面への当接面6aをヨーク2の立上り部2aの上端面より一定量突出させた軟質材の滑り止め6を設けることにより、フック金具3に過剰な荷重を掛けても、磁性吊下具1と壁面との間には保護シート5の摩擦抵抗に加えて滑り止め6の押圧力が加わり、その分、壁面との摩擦抵抗が増大するため、磁性吊下具1のズレや保護シート5の皺や捲れ等が防止される、とする技術思想が開示される。しかし、特許文献1の技術思想では、マグネットが壁に直に接触することから、金属製の壁を傷つける、滑る、錆が出るなどの問題に対応できていない、と指摘せざるを得ない。
【0005】
特許文献2では、マグネット2と、マグネット2を覆う硬質カバー3と、硬質カバー3を嵌装保持する軟質カバー4と、先端部が軟質カバー4を通して硬質カバー3内に差し込まれ、先端部6が硬質カバー3において抜けを阻止されつつ回動可能に支持されるフック部材5とから成り、フック部材5は、先端部6を有する横杆部7と、横杆部7を延長して下方に90度以上屈曲して形成される縦杆部8と、縦杆部8の下端を延長して上方に屈曲して形成した引掛け部9とを有する、とする技術思想が開示される。しかし、特許文献2の技術思想では、取り付け部がフック形状のため、洋服用ハンガーなどの懸架対象物に限定されているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−231676号公報
【特許文献2】特開2010−240034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、これまでは、壁が磁石を吸着する金属製の場合には、一般的にマグネット(磁石)式の取り付け用製品が使用されるところ、マグネットが壁に直に接触することから、金属製の壁を傷つける、滑る、サビが出るなどの問題があった。
【0008】
またインターネット検索で抽出されるマグネット式の取り付け用製品を見ると、色々なメーカーから多種多様な商品が出ていることが分かる。このことから利用者が用途に応じて色々な懸架タイプを選択していることが推察されるが、被懸架物や用途によって様々な形態の製品を購入しなければならないとすると費用がかかり、管理面でも負担になると言わざるを得ない。
【0009】
更にインターネット情報でユーザーの声の中に多く見られるのが、磁力による吸着力が弱く、掛けていたものが滑り落ちてしてしまう、サビが出て浴室などの水場では使えない、などという不満である。
【0010】
本発明は上記のような従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、水場環境の使用によっても内部のマグネットがサビない構造であって、望ましくは対象物に合わせて懸架部を簡単に交換でき、かつ懸架対象物の荷重で滑り落ちない懸架用磁石製品の提供、を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決する為に、本発明の第1の態様として、マグネット部は、懸架部を取り付けるため結合部の軸部を通せる孔と懸架部を取り付ける側と反対側に結合部の頭部を収納できる凹部とを持ち、更に永久磁石部をシリコンゴムや、エラストマーなど弾力性のあるゴムや樹脂で被覆する態様とした。すなわち、本願の第1の態様は、金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部を貫通させるために前記永久磁石部に設けられた貫通孔と、前記永久磁石部の略全面を被覆する被覆部と、を具備することを特徴とする懸架用磁石製品として実現される。このとき、被覆部はマグネット部を完全に被覆するものが好ましいが、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する部分の一部を被覆していない態様であってもよい。
【0012】
ここで言う収納できる凹部とは、凹部の深さh1と径d1が、収納すべき結合部の頭部の厚さh2と径d2に対して、h1≧h2かつd1≧d2となり、結合部の頭部が完全に収まる凹部を意味するが、結合部の頭部がいわゆる皿ネジの頭部状の場合には、それが完全に収まる形状でも良く、以後本発明で「凹部」というときには、この両者を含む意味で用いることとする。
【0013】
また結合部とは、懸架部をマグネット部に取り付けることを実現する部品を意味する。結合部としては、ネジ状の機構が一般的に用いられるが、それと同様に懸架部をマグネット部に結合する機能を持っているものであれば良く、例えば結合部が樹脂製で、同じく樹脂製のフック部と嵌合するような構造で結合するものなどを含む。本願における「結合部」はネジ状の機構に限定されない広い語義を有するものとする。
【0014】
シリコンゴムなどの被覆部は永久磁石の磁力線を透過するので、この状態のマグネット部(被覆部で被覆された永久磁石)を用いても、磁石を吸着する金属製の壁への吸着強度は十分に確保される。懸架部に掛けるものの荷重は、結合部などを介してマグネット部と取り付ける壁との間に働く剪断力へと変換され、前記吸着強度により十分に実用に耐えうるものとなる。
【0015】
これらの場合において、マグネット部に内蔵される永久磁石としては例えば磁力の強力なネオジウム磁石を採用するのが好ましい。
【0016】
このような態様とすることで、懸架部とマグネット部とが分離され、このマグネット部に対して色々な形状の懸架部に交換可能な態様となる。
【0017】
本発明の第2の態様として、上述のユーザーの不満の声“磁力による吸着力が弱く、掛けていたものがずり落ちてしてしまう。”に対応する、より強力な吸着力を得るため、永久磁石からの磁束を集中させる鉄製などの磁束調整部(いわゆる「ヨーク」)を内蔵する態様としてもよい。すなわち、本願の第2の態様は、第1の態様において、前記永久磁石部に隣接して配置される磁束調整部を更に備え、前記被覆部は前記永久磁石部及び前記磁束調整部を被覆する構成を備えたものとして実現される。このとき、被覆部は永久磁石部と磁束調整部を完全に被覆するものが好ましいが、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する部分は、被覆していない態様であってもよい。
【0018】
この磁束調整部は、典型的には、永久磁石が吸着する方向以外へ磁束が漏れ出ないように覆う態様とするが、吸着する方向と反対側のみを板状に覆うバックプレート的なものであっても、永久磁石自体の磁力が十分であれば構わない。
【0019】
本発明の第3の態様として、本発明の第1の態様または第2の態様において、結合部の頭部と被覆部との間に、樹脂製あるいはゴム製などによる緩衝部を備える構成をとる。この緩衝部によって、結合などによる応力が緩和され、マグネット部の被覆部に亀裂が入ることを防ぐことができることから、結合や懸架物によって強い応力が加わる場合でも、錆の発生を防ぐことが確実にできる。たとえば製造的な作りやすさから結合部の被覆が無い場合でも、緩衝部を構成部品に備えることで、結合部の締結力により被覆部の弾力性を利用して、水分の入り込みによる錆の発生を防ぐことができる。
【0020】
永久磁石部に結合部の頭部を収納できる凹部を持たせるということは可能であるが、凹部を持たせない場合に比べて永久磁石部の製造においてコストがより多く掛かる。そこでこれを解決するために、本発明の第4の態様として、永久磁石部の中心部に結合部の頭部を収納できる孔を有し、磁束調整部の中心部には結合部の頭部よりも径の小さな結合部の軸部が通せる孔を有する構造とし、これらを被覆部により被覆したマグネット部の態様としてもよい。すなわち、本願の第4の態様は、金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部の頭部を収納するのに十分な第1の径及び深さを備えた第1の孔と、前記結合部の軸部を通すのに十分な径の第2の孔と、前記永久磁石部と前記磁束調整部とを被覆する被覆部とを具備することを特徴とする懸架用磁石製品として実現される。このような構造により、結合部の頭部による結合時の応力を磁束調整部で受け止めて剪断力に変換することが可能となる。このような構造にすることで、容易にマグネット部(被覆部で被覆された永久磁石部及び磁束調整部)を製造でき、製造面でのコストダウンが可能となる。
【0021】
上記の場合においても、結合部による応力により被覆部に亀裂が入って錆が発生する不具合が起こる。そこで本発明の第5の態様として、第4の態様において結合部の頭部と被覆部との間に樹脂製あるいはゴム製などによる緩衝部を設ける態様としてもよい。このような態様によって、被覆部に結合などで掛かる強い応力を緩和させられるので亀裂の発生を防ぐことができ、錆の発生という不具合を防ぐことができる。
【0022】
第6の態様として、前記緩衝部に結合部の頭部を収納する凹部と結合部の頭部より小さい径で結合部の軸部を通す孔とを設け、さらに該緩衝部のマグネット部側が凸状部を持ち、該凸状部が、永久磁石部と磁束調整部とを被覆部で被覆したマグネット部の中心部の孔または凹状部に収納され、かつ結合部の応力を分散して受け止める大きさの面積を持った羽部を有し、該羽部が前記懸架部とは反対側に設けられた永久磁石部の被膜部の浅い凹部に収納される態様としてもよい。すなわち、本願の第6の態様は、金属壁面に取り付けられる第1面を有する永久磁石部と、前記永久磁石部の前記第1面と対向する第2面に結合される懸架部を前記第1面側から保持する結合部の全体を収納できる第1の径を有する第1の孔と、前記第1の径と略同径の第2の孔を有し前記永久磁石部と略同軸に隣接して配置される磁束調整部と、前記永久磁石部と前記磁束調整部とを被覆する被覆部とを備えたマグネット部と、前記第1の孔及び前記第2の孔によって形成される第1の凹部に嵌合する凸部、前記第1の凸部の内部に前記結合部の軸部を通すのに十分な第3の径を有する第3の孔、前記結合部の頭部の厚さより大きい深さと前記結合部の頭部の径より大きな内径とを持つ第2の凹部、前記第2の凹部から延出し前記懸架部の取り付け面である前記第2面に拡開するように配置される羽部、を備える緩衝部であって、前記マグネット部に前記羽部の厚さよりも大きな深さと前記羽部の径よりも大きな第4の径とを有する第4の凹部に前記羽部が完全に収納される、緩衝部とを具備することを特徴とする懸架用磁石製品として実現される。この場合、該緩衝部は該羽部がある程度の面積を持って応力や剪断力を受け止める訳であるが、より好ましくは結合部による応力や剪断力に耐えうる硬度を持った樹脂等の素材であることが好ましい。
【0023】
また、本願の第7の態様として、第6の態様において、前記緩衝部の外縁に前記緩衝部の前記懸架部とは反対側の面と略同面で外縁緩衝部が更に配置された構成をとることができる。
【0024】
さらにまた、本願の第8の態様として、第6の態様において、前記マグネット部における前記被覆部と前記緩衝部とが溶融接着を含む一体化手段によって一体化された構成をとることができる。
【発明の効果】
【0025】
取り付ける壁が磁石を吸着する金属製の場合に、被覆部により永久磁石部などが直接接触しないので、取り付けた後に外しても、磁石が吸着される金属製の壁には傷が付かない。また滑り落ちる、錆が出るなどの問題点を磁束調整部、被覆部及び緩衝部によって解決することができる。交換可能な構造としているので、用途に応じて様々な形状のホルダーやラックやフックなど懸架用磁石製品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の懸架部がフック形状を例にした実施形態に係る斜視図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態に係る上面図である。
【
図2B-1】本発明の第1の実施形態に係る断面図である。
【
図2B-2】本発明の第1の実施形態に係る断面図である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図2C】本発明の第1の実施形態に係る下面図である。
【
図3A-1】本発明の第2の実施形態に係る断面図(平板型磁束調整部)である。
【
図3A-2】本発明の第2の実施形態に係る断面図(平板型磁束調整部)である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図3B-1】本発明の第2の実施形態に係る断面図(囲み型磁束調整部)である。
【
図3B-2】本発明の第2の実施形態に係る断面図(囲み型磁束調整部)である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図4-1】本発明の第3の実施形態に係る断面図である。
【
図4-2】本発明の第3の実施形態に係る断面図である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図5-1】本発明の第4の実施形態に係る断面図である。
【
図5-2】本発明の第4の実施形態に係る断面図である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図6-1】本発明の第5の実施形態に係る断面図である。
【
図6-2】本発明の第5の実施形態に係る断面図である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図7-1】本発明の第6の実施形態に係る断面図である。
【
図7-2】本発明の第6の実施形態に係る断面図である。結合部の軸部が接する部分の被覆部が被覆していない態様。
【
図8】本発明の一実施形態に係る懸架部の実施4例(基本形、標準形、丸孔形、ホルダータイプ)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る懸架部がフック形状の場合について説明する。以下、図面に示される構成や形状などは、本発明の一実施形態の例であり、懸架部がフック形状であることにこだわらない。本発明は図面において図示されたものに限定されない。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態を説明するための斜視図である。同図に示されるように、第1の実施形態に係る磁石製品1は、マグネット部2と懸架部3とを備えて構成され、懸架部が交換可能であるように構成される。
図2Aはその上面図、
図2B−1と
図2B−2はその断面図、
図2Cはその下面図である。
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る概略構成としては、マグネット部2に内蔵される永久磁石部11がシリコンゴムや、エラストマーなどの弾力性のあるゴムや樹脂などで形成される被覆部10によって被覆され、懸架部3とマグネット部2とが分離され懸架部3が交換可能な懸架部交換可能磁石製品を形成している(
図2B−1等)。
【0030】
上述したように、本発明の第1の実施形態として、懸架部がフック形状の磁石製品1は、シリコンゴムなどの一定程度の弾力性を有するという特性を利用した被覆部10により永久磁石部11が被覆されて形成されるマグネット部2と懸架部3とが結合部30によって一体的に緊結された形態となっている。
【0031】
磁石を吸着する壁にしっかりと取り付ける為の構成として、マグネット部2には結合部の軸部32が挿通できるのに十分な径/外素材を有する孔及び、結合部の頭部31を収納するために十分な径/深さ寸法を有する凹部13がマグネット部2の取りつく壁側の面に刻設された形状を備えている。すなわち、マグネット部2と懸架部3とが結合部30によって締結された状態において結合部の頭部31が凹部13ののみこみ深さを超えてしまう場合には(図示しない)金属壁面とマグネット部2の当該金属壁面側の接着面13Bとの間に意図しない空隙が生じることになって、両者の剥離を促すことになってしまうことに鑑み、凹部13の深さは結合部の頭部31を十分覆うことのできる程度とするのが好ましい。一方、マグネット部2の凹部13の形状/剛性に関しては、結合部30で懸架部3をマグネット部2に一体的に緊結するべく、結合部30の頭部31による応力や剪断力が一定程度かかってもマグネット部2で十分受け止められる構造になっている。
【0032】
上述のように、永久磁石部11が被覆部10により被覆された形態により、たとえば利用者が(図示しない)金属壁に吸着しているフック付き磁石製品をマグネット部2の取りついているこの金属製の壁から外しても、外したあとの当該金属製の壁には傷が付くことはない。更に、マグネット部2と懸架部3とが結合部30などによって一体に緊結されることをたとえば螺子止め構造によって担保する形態とすることで、懸架部3は取り換え可能となる、或いは取り換え動作がスムーズになる。
【0033】
図2B−2は、製造面でのコストダウンを考慮して、結合部30の軸部32が接する被覆部10の一部が被覆されていない(同図中の白抜き部分)第1の実施形態の一つの変形例を表す断面図である。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3A−1,
図3A−2および
図3B−1、
図3B−2は本発明の第2の実施形態に係る懸架部交換可能磁石製品の概略構成を示した断面図である。
図3A−2および
図3B−2は、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する被覆部10の一部が被覆していない第2の実施形態の変形例の一つである。
【0035】
図3A−1,
図3A−2および
図3B−1、
図3B−2に示されるように、第2の実施形態に係る懸架用磁石製品101または111は、マグネット部2Bまたは2Cに内蔵される永久磁石部11と磁束調整部(いわゆるヨーク)12または12Bとの結合体(両者は必ずしも互いに付着していなくてもよい)がシリコンゴムなどの被覆部10により被覆され、懸架部3とマグネット部2Bまたは2Cとが分離され懸架部が交換可能な構成となっている。
【0036】
上記第2の実施形態は、
図3A−1,
図3A−2および
図3B−1、
図3B−2のマグネット部2Bまたは2Cに示されるように、永久磁石部11と永久磁石部11からの磁束を集中させる鉄製などの磁束調整部12または12Bとがシリコンゴムなどの被覆部10により被覆されて形成されていることから、磁束調整部12または12Bは永久磁石部11からの磁束を集中させる。これにより、より強力な磁力が生じ、その結果、(図示しない)金属壁面への吸着力が増大する。これにより、本懸架用磁石製品101または111によって懸架されるものの耐荷重性能が十分に確保される。
【0037】
<第3の実施形態>
図3A−1,
図3A−2および
図3B−1、
図3B−2に示された実施形態において、マグネット部2Bまたは2Cと懸架部3とは結合部30によって一体的に緊結される構成となっている。この場合、ネジを締め付ける緊結力が大き過ぎると、マグネット部2Bまたは2Cの(シリコンゴムなどの)被覆部10に過剰な応力が働いて亀裂が発生したり、その亀裂から水分などが入り込んで内部に錆が発生したりするという不具合が起こる場合がある。
【0038】
このような不具合が起こらないようにする為に、結合部30と被覆部10との間に樹脂製あるいはゴム製などによる緩衝部を備えさせる構成が望ましい。このための構成として、
図4−1、
図4−2は本発明の第3の実施形態に係る懸架部交換可能磁石製品の概略構成を示した断面図である。
図4−2は、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する被覆部10の一部が被覆していない第3の実施形態の変形例の一つである。
【0039】
同両図に示されるように、第3の実施形態に係る懸架用磁石製品121は、マグネット部2と懸架部3とが結合部30によって一体的に緊結されるにあたって、緩衝部20を結合部30と被覆部10との間に備えさせる構成が示されている。この実施形態においては、マグネット部2の懸架部3とは反対側に設けられる凹部13は、結合部の頭部31と緩衝部20とを収納させる必要があるので、凹部の深さh1と径d1は、結合部の頭部の厚さh2と径d2、及び緩衝部の厚さh3と径d3に対して、h1≧h2+h3、d1≧d2、d1≧d3となって、結合部の頭部と緩衝部が完全に収まる凹部とする。
【0040】
<第4の実施形態>
図5−1、
図5−2は本発明の第4の実施形態に係る懸架用磁石製品の断面図である。
図5−2は、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する被覆部10の一部が被覆していない第4の実施形態の一つである。同両図に示されるように、第4の実施形態に係る懸架用磁石製品131は、マグネット部2Dにおいて永久磁石部11Aの中心部に結合部の頭部31を収納できる凹部を有し、磁束調整部12の中心部には前記結合部の頭部31よりも径の小さな結合部の軸部が通せる径を持つ孔を有しており、これらを被覆部10により被覆した構造が示されている。この実施形態においても、凹部13は結合部の頭部31を完全に収納できるような径及び深さを備える凹部となっている。
【0041】
<第5の実施形態>
図6−1、
図6−2は本発明の第5の実施形態に係る懸架用磁石製品の断面図である。
図6−2は、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する被覆部10の一部が被覆していない第5の実施形態の一つである。同両図に示されるように、第5の実施形態に係る懸架用磁石製品141は、マグネット部2Dと結合部の頭部31との間に樹脂製あるいはゴム製などによる緩衝部20を備えた構造が示されている。この実施形態においては、マグネット部2Dの結合部とは反対側に設けられた凹部13は、結合部の頭部31と緩衝部20とを完全に収納できる径及び深さを備える凹部となっている。
【0042】
<第6の実施形態>
図7−1、
図7−2は本発明の第6の実施形態に係る懸架用磁石製品の断面図である。
図7−2は、製造面でのコストダウンを考慮して結合部の軸部が接する被覆部10の一部が被覆していない第6の実施形態の一つである。同両図に示されるように、第6の実施形態に係る懸架用磁石製品151において、マグネット部2Eにおいて永久磁石部11Bと磁束調整部12とは中心部に孔14を有しており、これらを被覆部10で被覆した構造が示されている。
【0043】
永久磁石部11Bと磁束調整部12との孔14及び被覆部10により、マグネット部2Eの中心部にはこれまでの実施形態の場合よりは比較的大径の孔14及び比較的浅い深さの凹部13が形成される。緩衝部20は、このマグネット部2Eの孔14及び凹部13でできる空間に内挿される形状を有している。
【0044】
更に、緩衝部20には、マグネット部中心部の孔14または凹部13に嵌合する形状に形成された中心部22を有し、この中心部22の懸架部3とは反対側には結合部の頭部31を収納する凹部131が形成され、更には結合部の軸部32を通すのに十分な寸法を持つ径の孔と、マグネット部2Eの表面に形成された被膜部10の浅い凹部13に収納される羽部21とを有している。
【0045】
被膜部10の凹部13は、羽部21の厚みよりもたとえば略0.5〜1mm程度の余分の深さがあることで、被膜部10の弾力性を利用して外部からの水の侵入を防ぐことができる。この羽部21は、たとえば比較的硬い樹脂から構成されてもよい。
【0046】
中心部22の懸架部3との間に隙間ができるよう、被膜部10によって被覆されたマグネット部2Eの上面と懸架部3との接触面Sからたとえば略0.5〜1mm程度、中心部22の懸架部3側突端面をセットバックさせることで、結合部の締結力と被膜部10の弾力性とを利用して、懸架部3と被膜部10との密着性を上げることができ、外部からの水の侵入を防ぐことが可能となる。
【0047】
<第7の実施形態>
また第6の実施形態において、マグネット部の被覆部10と緩衝部20とを溶融などにより一体化したものを第7の実施形態とすることもできる(図示しない)。これにより緩衝部20を紛失することを防ぐことができる。
【0048】
これらの実施形態において、
図8の3、3B、3C、3Dを懸架部の一例として上げる。懸架部は用途に応じて様々な形状や機能のものが求められている。したがって実施例として
図8に図示されたもの以外にも、用途やデザイン性なども考慮し、様々な形状や機能を持ったものを提供することが望ましく、図示されたものに限定されない。
【0049】
更にこれらの実施形態において、マグネット部は略円柱形としたものを図示したが、マグネット部の頭部の見付面に係る平面形状は三角形、四角形、星形などの多角形や楕円など様々な形状としても良く、図示されたものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る懸架用磁石製品は、サビない構造のマグネット部を備えることから一般的な事務所や家庭などで水場環境下にある金属製の壁に利用できるうえ、様々な形状のホルダーやラックやフックなど懸架部の交換が可能であるため、一般家具付帯用品として販売することができ、建設業、インテリア産業等各種産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0051】
1 フック型の懸架用磁石製品
2 マグネット部(永久磁石部が凹型)
2B マグネット部(永久磁石部が凹型、磁束調整部が平板型)
2C マグネット部(永久磁石部が凹型、磁束調整部が囲み型)
2D マグネット部(永久磁石部が平板型、磁束調整部が平板型)
2E マグネット部(永久磁石部が平板型、磁束調整部が平板型、結合部が羽根型)
3 懸架部(フック型基本形)
3B 懸架部(フック型標準形)
3C 懸架部(フック型丸孔形)
3D 懸架部(ホルダー型)
10 被覆部
11 永久磁石部(凹型)
11A 永久磁石部(平板型)
12 磁束調整部(平板型)
12B 磁束調整部(囲み型)
13 結合部の頭部収納用のマグネット部の凹部
13B 結合部の頭部収納用の永久磁石部の凹部
20 緩衝部
21 緩衝部の羽部
22 中心部
30 結合部
31 結合部の頭部
32 結合部の軸部
【要約】
【課題】 懸架部を取り換え可能で、かつサビない懸架用磁石製品を提供すること。
【解決手段】 永久磁石部及び磁束集中用の磁束調整部(いわゆるヨーク)をシリコンゴムやエラストマーなど弾力性のある樹脂で被覆することで、サビない懸架用磁石製品を提供し、水場などの金属製の壁に設置できるようにするとともに、経済的に費用がかからないように懸架部を取り換え可能とした。
【選択図】
図2B−2