特許第6475385号(P6475385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6475385
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】冷房装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0007 20190101AFI20190218BHJP
   F24F 1/039 20190101ALI20190218BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   F24F1/00 331
   F24F1/02 341
   F24F5/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-128790(P2018-128790)
(22)【出願日】2018年7月6日
【審査請求日】2018年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509353034
【氏名又は名称】クラフトワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益子 進
(72)【発明者】
【氏名】益子 暁弐
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−075645(JP,A)
【文献】 特開2017−133744(JP,A)
【文献】 特開2013−210136(JP,A)
【文献】 特開2007−132582(JP,A)
【文献】 特開2004−060999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環水を循環させる吸熱パイプを備えた冷風用パネルと、
前記循環水と地下水との熱交換を行わせる主熱交換器と、
前記地下水を充填材に散水して地下水温度を低下させる冷却塔と、
吸気ダクト及び送風ダクトを有し、
前記吸気ダクト及び前記送風ダクトの少なくとも一方には、ダクト内の空気と前記地下水との熱交換を行わせる水冷熱交換器を有し、
前記送風ダクトの送風口は、前記冷風用パネルの直近で前記冷風用パネルの平面に向けるように対向させて配置され、前記送風口から吐き出す空気を前記冷風用パネルに当てるように前記送風口から送出することを特徴とする冷房装置。
【請求項2】
前記吸気ダクトと前記送風ダクトは、前記冷却塔の排気筒に設けた排気熱交換器を介して接続され、前記吸気ダクト及び前記送風ダクトを通る空気と前記冷却塔からの排気との間で熱交換を行わせることを特徴とする請求項1に記載した冷房装置。
【請求項3】
前記水冷熱交換器であって、前記送風ダクトに設けられる水冷熱交換器は、前記主熱交換器に接続されると共に前記冷却塔に接続され、前記主熱交換器を介した地下水を前記送風ダクト内に設けた水冷熱交換器を通して前記冷却塔に送ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した冷房装置。
【請求項4】
前記水冷熱交換器であって、前記吸気ダクトに設けられる水冷熱交換器は、前記冷却塔内に蓄えられた地下水が供給され、前記吸気ダクト内に設けた当該水冷熱交換器を通した地下水を前記冷却塔に戻す、又は排水として外部に排出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載した冷房装置。
【請求項5】
前記冷却塔は、冷房を行う空間を形成する建屋内に配置され、当該冷却塔の排気筒の排気口は前記建屋の外部に配置され、前記吸気ダクトの吸気口は前記建屋内の前記空間の上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載した冷房装置。
【請求項6】
前記吸気ダクトに前記水冷熱交換器を有すると共に、前記送風ダクトにも前記水冷熱交換器を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載した冷房装置。
【請求項7】
前記冷却塔を配置する建屋の換気装置に換気熱交換器を取り付け、前記換気熱交換器は、前記冷風用パネルと並列として前記主熱交換器と接続し、前記主熱交換器からの前記循環水を当該換気熱交換器にも循環させ、前記建屋に取り入れる外気と前記循環水との間で熱交換をさせることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載した冷房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等、大規模空間の高温化を低減させる冷房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等、空間の閉鎖が困難な建屋において、高温の熱発生源となる種々の装置を作動させる場合、大型の送風機を用いて建屋の外気を建屋内に取り入れて建屋内の熱気を建屋外に放出させるようにすることが多かった。
【0003】
しかし、外気の取入れだけでは、作業場とされる大規模空間の高温化を低減させることができても、作業者にとって厳しい環境条件を解消することは難しく、冷房装置を使用することが種々提案され、実施もされている。
【0004】
例えば、特許文献1に示す例では、工場の上部天井付近の高温空気をダクトで吸込み、熱交換器を用いて外気との熱交換により一次冷却を行った後、空調冷却機により温度調整を行って工場の側壁下部や床面の通風口から吹き出し、低温の空気を床面付近に供給することにより、冷房装置の運転費用の低減化を図りつつ、作業員の作業の効率化を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−76326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工場等の大規模空間では、単に外気を送風機等により取り入れるだけでは、熱発生源となる大型装置を用いる場合、作業空間の高温化を防止するには不十分であり、空調装置等の人工冷熱を利用する冷房装置を用いる場合は、冷房装置の設備投資や運転経費が大きくなる問題点があった。
【0007】
本発明は、この様な問題点を解消し、効率良く大規模空間を冷却することができる冷房装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷房装置は、循環水を循環させる吸熱パイプを備えた冷風用パネルと、前記循環水と地下水との熱交換を行わせる主熱交換器と、前記地下水を充填材に散水して地下水温度を低下させる冷却塔と、吸気ダクト及び送風ダクトを有し、前記吸気ダクト及び前記送風ダクトの少なくとも一方には、ダクト内の空気と前記地下水との熱交換を行わせる水冷熱交換器を有し、前記送風ダクトの送風口は、前記冷風用パネルの直近で前記冷風用パネルの平面に向けるように対向させて配置され、前記送風口から吐き出す空気を前記冷風用パネルに当てるように前記送風口から送出することを特徴とするものである。
【0009】
また、前記吸気ダクトと前記送風ダクトは、前記冷却塔の排気筒に設けた排気熱交換器を介して接続され、前記吸気ダクト及び前記送風ダクトを通る空気と前記冷却塔からの排気との間で熱交換を行わせることを特徴とする。
【0010】
そして、前記水冷熱交換器であって、前記送風ダクトに設けられる水冷熱交換器は、前記主熱交換器に接続されると共に前記冷却塔に接続され、前記主熱交換器を介した地下水を前記送風ダクト内に設けた水冷熱交換器を通して前記冷却塔に送ることを特徴とする。
【0011】
更に、前記水冷熱交換器であって、前記吸気ダクトに設けられる水冷熱交換器は、前記冷却塔内に蓄えられた地下水が供給され、前記吸気ダクト内に設けた当該水冷熱交換器を通した地下水を前記冷却塔に戻す、又は排水として外部に排出する、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記冷却塔は、冷房を行う空間を形成する建屋内に配置され、当該冷却塔の排気筒の排気口は前記建屋の外部に配置され、前記吸気ダクトの吸気口は前記建屋内の前記空間の上方に配置されることがある。
【0013】
そして、前記吸気ダクトに前記水冷熱交換器を有すると共に、前記送風ダクトにも前記水冷熱交換器を有することが好ましいものである。
【0014】
また更に、前記冷却塔を配置する建屋の換気装置に換気熱交換器を取り付け、前記換気熱交換器は、前記冷風用パネルと並列として前記主熱交換器と接続し、前記主熱交換器からの前記循環水を当該換気熱交換器にも循環させ、前記建屋に取り入れる外気と前記循環水との間で熱交換をさせることもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る冷房装置は、冷風用パネル、主熱交換器、冷却塔、吸気ダクト及び送風ダクトを有し、吸気ダクト及び送風ダクトの少なくとも一方には水冷熱交換器を有し、更に送風ダクトの送風口は、冷風用パネルの直近で送風口から吐き出す空気を冷風用パネルに当てるものであるから、吸気ダクト又は送風ダクトに設けた水冷熱交換器により吸気ダクトや送風ダクトを通過する屋内空気を冷却し、更に、送風ダクトの送風口から吹き出す屋内空気を冷風用パネルに当てて冷却することができ、屋内温度を地下水の顕熱や潜熱により順次温度低下させ、屋内空気の温度を効果的に低下させることができる。
【0016】
また、吸気ダクトと送風ダクトは、冷却塔の排気筒に設けた排気熱交換器を介して接続され、吸気ダクト及び送風ダクトを通る空気と冷却塔からの排気との間で熱交換を行わせるから、吸気ダクト及び送風ダクトを通る屋内空気を、吸気ダクト又は送風ダクト内で水冷熱交換器により冷却すると共に排気熱交換器でも冷却し、段階的に温度を低下させることにより、より一層効果的に屋内空気を冷却することができる。
【0017】
そして、水冷熱交換器であって、送風ダクトに設けられる水冷熱交換器は、主熱交換器を介した地下水を送風ダクト内に設けた水冷熱交換器を通して冷却塔に送るため、低温の地下水により主熱交換器により循環水を冷却した後の地下水により送風ダクトを通る屋内空気を水冷熱交換器により冷却し、水冷熱交換器により温度を低下させた屋内空気を冷風用パネルに当て、汲み上げた低温の地下水により循環水の温度を低く保ち、送風ダクトを通って吹き出される屋内空気の温度を順次低下させると共に、主熱交換器及び送風ダクト内の水冷熱交換器で順次温度上昇した地下水を冷却塔で冷却し、散水パイプや送風機の稼働と充填材の機能とにより冷却塔に蓄えられる冷却水の温度を一定とするように冷却水とする地下水の温度上昇を抑えることができる。
【0018】
更に、水冷熱交換器であって、吸気ダクトに設けられる水冷熱交換器は、冷却塔内に蓄えられた地下水が供給され、吸気ダクト内に設けた当該水冷熱交換器を通した地下水を冷却塔に戻す、又は排水として外部に排出するから、吸気ダクト及び送風ダクトを通る屋内空気を冷却塔で冷却した地下水の顕熱によって効果的に冷却することができる。
【0019】
また、冷却塔は、冷房を行う空間を形成する建屋内に配置され、当該冷却塔の排気筒の排気口は建屋の外部に配置され、吸気ダクトの吸気口は建屋内空間の上方に配置されるから、屋内空間上方の高温の空気を吸気ダクトで吸込み、吸気ダクト及び送風ダクトを介して冷却し、更に、送風ダクトから吐き出す空気を冷風用パネルで冷却することができ、且つ、建屋内の高温の空気を冷却塔に吸い込んで屋外に排出することもできる。
【0020】
そして、吸気ダクトに水冷熱交換器を有すると共に、送風ダクトにも水冷熱交換器を有することにより、吸気ダクトで吸い込んだ高温の屋内空気を冷却塔を介した地下水の顕熱で冷却し、送風ダクトを通る屋内空気を主熱交換器を介した地下水の顕熱で冷却し、送風ダクトから吐き出す空気を汲み上げた地下水と熱交換した循環水の顕熱により冷風用パネルで冷却することができ、吸気ダクト及び送風ダクトで多段に冷却を行うに際し、順次高温の空気を冷却して効果的に温度低下をさせることができる。
【0021】
尚、水冷熱交換器を有する吸気ダクト及び水冷熱交換器を有する送風ダクトを冷却塔の排気筒に設けた排気熱交換器を介して接続する場合は、吸気ダクトで吸い込んだ屋内空気を冷却塔を介した地下水の顕熱で冷却して送風ダクトに送るに際し、冷却塔で地下水の気化熱によって冷却された屋内空気の顕熱により排気熱交換器で冷却し、更に送風ダクト内で主熱交換器を介した地下水の顕熱で冷却することができ、吸気ダクト及び送風ダクトを通る屋内空気をより効果的に温度低下させることができる。
【0022】
また更に、冷却塔を配置する建屋の換気装置に換気熱交換器を取り付け、換気熱交換器は、冷風用パネルと並列として主熱交換器と接続し、主熱交換器からの循環水を当該換気熱交換器にも循環させ、建屋に取り入れる外気と循環水との間で熱交換をさせる場合は、屋外の空気温度が高い場合にも、温度を低下させて屋内に取り入れ、屋内の温度上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る冷房装置の概要を示す図。
図2】本発明に係る冷房装置の他の例の概要を示す図。
図3】本発明に係る冷房装置のその他の例の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る冷房装置の実施形態は、図1に示す様に、地下水と熱交換を行って冷却された循環水を循環させる冷風用パネル21を有し、この冷風用パネル21に空気を吹き付ける送風ダクト75及び地下水を冷却する冷却塔50を有し、送風ダクト75に送る空気を、循環水と熱交換した後の地下水や冷却塔50の排出空気と熱交換させることによって、冷却を行う様に複数個の熱交換器を介して屋内の空気を循環させ、建屋10内の空気温度を低下させるものである。
【0025】
即ち、高温の熱発生源18となる装置類が設置された工場等の建屋10において、建屋10内の空気を吸い込む吸気口73を建屋10内の上部空間に配置し、この吸気口73を設ける吸気ダクト71中に吸気ファン81と第1の水冷熱交換器85を、吸気ダクト71に接続された送風ダクト75内に第2送風ファン83と第2の水冷熱交換器87を設け、送風タクトの送風口77の近辺に冷風用パネル21を配置するものである。
【0026】
そして、この冷風用パネル21は、熱伝導性の高い平面を備え、この平面の周囲に吸熱パイプを、又は平面上に蛇行させた吸熱パイプを有し、循環ポンプ35を備えた循環水戻り配管33及び循環水送水配管32により吸熱パイプを主熱交換器31に接続し、主熱交換器31の二次側パイプを通る循環水(ブライン)を吸熱パイプに循環させるものである。
【0027】
そして、主熱交換器31の一次側パイプには井戸水等の地下水を供給し、この地下水により二次側パイプを通る循環水を15℃〜20℃程度の温度として冷風用パネル21に送るものである。
【0028】
この主熱交換器31の一次側パイプには、給水ポンプ41を備えた汲み上げ管43及び第1配管37が接続され、汲み上げ管43により汲み上げた地下水を主熱交換器31の一次側パイプを介して第1配管37に送出するものである。
【0029】
そして、この第1配管37は、送風ダクト75内に配置する第2の水冷熱交換器87の入水口に接続し、第2の水冷熱交換器87の出水口は第2配管38により冷却塔50の水槽52に接続するものである。
【0030】
この冷却塔50は、底部51の内側に水槽52を有し、底部51の上方に底部51から連続する胴壁55を有し、この胴壁55の下方部分に空気取り入れ口56を、空気取り入れ口56よりも上方の胴壁55の内部に充填材57を有し、充填材57の上方には充填材57に散水する散水パイプ61と、空気取り入れ口56から吸入した空気を冷却塔50の上部から排出するための送風機63を備えるものである。
【0031】
そして、水槽52は、冷却水送出ポンプ45を備えた第3配管46により吸気ダクト71内に配置された第1の水冷熱交換器85の入水口に接続し、第1の水冷熱交換器85の出水口を第4配管47により冷却塔50の散水パイプ61に接続するものである。
【0032】
尚、冷却塔50の水槽52には、水槽52に蓄えた地下水の液面を検出するためのフロート59を備え、また、水槽52に蓄えられた地下水である冷却水を排出するために、開閉バルブ49を備えた排出管48を接続している。
【0033】
また、吸気ダクト71には、吸気口73から建屋10内の空気を吸い込むための吸気ファン81を有し、吸気ダクト71の吐出し端部近辺には第1送風ファン82を有し、吸気ダクト71の吐出し端部を冷却塔50の排気筒65が接続される気体・気体熱交換器である排気熱交換器86に接続しているものである。
【0034】
そして、第2の水冷熱交換器87を備える送風ダクト75は、送風ダクト75の吸込み端部近辺に第2送風ファン83を有して送風ダクト75の吸込み端部を排気熱交換器86に接続しているものである。
【0035】
また、この送風ダクト75は、第2の水冷熱交換器87よりも吐出し端部側において、送風ダクト75を複数に分岐して送風口77を複数とし、この送風口77は、固定具25により冷風用パネル21の平面に対向させるように固定し、送風口77から吹き出す空気を冷風用パネル21に当てるように吹き付けるものである。
【0036】
尚、冷却塔50の排気筒65は、冷却塔50から排出されて排気熱交換器86を介した排気を建屋10の屋外に排出するように排気口66を建屋10の外部に位置させている。
【0037】
このように、本実施の形態における冷房装置20は、建屋10内の高温の空気を、循環水や建屋10内の空気と熱交換した地下水である冷却塔50の冷却水を通す第1の水冷熱交換器85により吸気ダクト71を通過中に温度低下させ、更に、気体・気体熱交換器である排気熱交換器86により、冷却塔50内で気化熱により温度を低下させた屋内空気である冷却塔50の排気と熱交換を行って温度低下させ、そしてまた、送風ダクト75を通す際に循環水と熱交換した後の地下水である比較的低温の水を通す第2の水冷熱交換器87により温度低下させ、この温度低下した空気を送風口77から吹き出すに際して、地下水により低温とした循環水(ブライン)を通す冷風用パネル21に吹き付けるように当てて屋内に放出させるものである。
【0038】
従って、第1の水冷熱交換器85により冷却塔50内で気化熱により低温化された冷却水を用いて屋内空気の温度を低下させ、排気熱交換器86により気化熱で温度低下させられた屋内空気(冷却塔50の排気空気)と熱交換させて吸気ダクト71に吸い込まれた屋内空気の温度を低下させることができ、汲み上げた地下水の気化熱を利用して、湿度を高めることなく屋内空気の温度を低下させることができるものである。
【0039】
このように、本実施の形態の冷房装置20は、屋内空気の湿度を上昇させることなく気化熱により温度を低下させるため、作業者の体感温度が高くなることを防止して作業環境を改善することができる。
【0040】
更に、送風ダクト75では、循環水の温度を低下させた後の比較的低温の地下水を通す第2の水熱交換器により送風ダクト75内の空気を冷却し、この冷却された空気を冷風用パネル21に吹き付けてさらに温度を低下させて建屋10内に放出させるものである。
【0041】
従って、冷風用パネル21で23℃〜25℃程度に温められた循環水を主熱交換器31に送り、通常15℃〜18℃程度の地下水により主熱交換器31を用いて循環水の温度を20℃以下に低下させ、20℃〜23℃程度に温度上昇した地下水を第2の水熱交換器を介して25℃〜30℃程度として冷却塔50に送り、冷却塔50に蓄える地下水である冷却水の温度を30℃以下に保つようにすることによって、40℃以上となる屋内の空気を25℃程度又はそれ以下に低下させることができる。
【0042】
そして、送風ダクト75の送風口77を冷風用パネル21に接近させて冷風用パネル21に対向させているため、送風口77から吹き出す送風を分散させて緩やかな送風として屋内に排出させることができる。
【0043】
更に、熱伝導率の高い平面を備えてこの平面を循環水により低温とする冷風用パネル21を用いているため、冷風用パネル21からの放射熱によっても、作業者に涼しさを感じさせることができる。
【0044】
この様に、この冷房装置20では、地下水の温度は屋内空気と熱交換されて温度上昇するも、冷風用パネル21に冷温を供給する主熱交換器31及び送風ダクト75に設けた第2の水冷熱交換器87を介した地下水は、冷却塔50で気化熱により温度低下させて第1の水冷熱交換器85で利用する冷却水とするものであり、地下水の温度は各熱交換器を介して順次上昇するも、屋内空気は各熱交換器を通過することにより順次温度を低下させ、効率良く熱交換を行って屋内空気の温度を低下させることができるものである。
【0045】
また、この冷房装置20は、地下水の顕熱と気化熱とを利用して屋内の空気温度を低下させるため、送風用のファンや地下水を送出するポンプを駆動するために必要なエネルギーを消費するのみであり、当該冷房装置20の駆動に必要なエネルギーの消費量を少なくすることができるものであって、ダクトや熱交換器、冷却塔50、及び地下水を流す配管等の設置により組み立てることができ、冷房が必要な建屋10への設置を容易且つ安価に行うことができる。
【0046】
そして、図1に示すように、太陽光発電パネル11及び蓄電池13を電源設部として用いることにより、商用電力等の人工エネルギーの消費量を一層少なくした省エネルギー型の冷房装置20とすることができるものである。
【0047】
更に、図1に示した冷房装置20は、冷風用パネル21に循環させる循環水の温度が20℃以上となった時、給水ポンプ41を駆動した地下水を汲み上げて循環水の温度を低下させるように地下水の汲み上げ量を少なくすることができるものであるも、地下水を多量に汲み上げることができる場合、図2に示す様に配管を変更することもある。
【0048】
この図2に示す実施形態では、送風ダクト75に組み込む第2の水冷熱交換器87の出水口に接続する第2配管38を冷却塔50の散水パイプ61に接続し、吸気ダクト71に組み込む第1の水冷熱交換器85の出水口は排出管48に接続するものである。
【0049】
従って、この第2の実施形態では、当該冷房装置20の作動時は、常に給水ポンプ41及び冷却水送出ポンプ45を駆動して地下水を汲み上げ、低温の地下水の顕熱により循環水(ブライン)を地下水温度近くに保ち、主熱交換器31や第2の水冷熱交換器87で温度上昇した地下水を冷却塔50の充填材57を通して一部気化させることにより低温に戻し、気化熱により温度低下した地下水である冷却水を第1の水冷熱交換器85に送った後に排水するため、循環水や冷却水の温度を地下水温度に近い低温に保ち、屋内の冷房を効果的に行うことができる。
【0050】
尚、図1及び図2に示した冷房装置20は、冷却塔50を含めて屋内に配置し、冷却塔50の空気取り入れ口56から建屋10内の高温空気を吸い込んで屋外に排出しているも、冷却塔50は、屋外に配置することもある。
【0051】
尤も、冷却塔50を屋内に配置すれば、冷却塔50の排気口66を屋外に配置するように排気筒65を長くするのみで、当該冷房装置20の設置を容易に行うことができ、且つ、建屋10内の空気を排出することで、建屋10内に温度の低い新鮮な外気を取り込ませることもできる。
【0052】
また、冷却塔50を屋外に設置する場合、吸気ダクト71や送風ダクト75は長くなるも、冷却塔50に吸い込む空気を外気とし、冷却塔50から排出する排気や冷却水の温度を低くし、第1の水冷熱交換器85や排気熱交換器86による吸気ダクト71及び送風ダクト75を通る屋内空気の温度低下率を高めることができる。
【0053】
また、図1及び図2に示した冷風用パネル21は、当該冷風用パネル21を立てて用いることとしているも、送風口77を上向きとして建屋10内の適宜箇所に固定し、冷風用パネル21の平面を水平として、この送風口77の上方に冷風用パネル21を配置固定して送風口77に冷風用パネル21を対向させることもある。
【0054】
そして、図1及び図2は、建屋10の内部が高温となる熱発生源18としての装置機器が設けられた工場等における大規模空間の冷房を行うものであるも、夏場等の気温が30℃前後又は30℃以上になって屋内が40℃以上の高温となる農業用大型ビニルハウス等の設備とされた建屋10においても、当該冷房装置20は効果的に使用することができるものである。
【0055】
この農業用大型ビニルハウス等の建屋10において、冷却塔50を建屋10内に配置する場合、図3に示す様に、換気装置91に換気熱交換器95を取り付け、この換気熱交換器95を冷風用パネル21と並列とするように循環水送水配管32及び循環水戻り配管33を接続するものである。
【0056】
従って、冷却塔50を駆動して冷却塔50の排気筒65から建屋10内の空気を屋外に排出しつつ吸入ファン93を駆動して換気装置91により外気を建屋10内に取り込むとき、換気熱交換器95に循環水を循環させ、外気を温度低下させつつ建屋10内に吸い込み、建屋10内の温度上昇を軽減させることができる。
【0057】
そして、吸気ダクト71の吸気口73は、1個に限ることなく、複数個の吸気口73とすることがあり、送風ダクト75の送風口77も2個に限ることなく、より多くの送風口77を設ける場合や又は1個とすることもある。
【0058】
また、この送風口77は、固定具25により冷風用パネル21に対向させるようにして冷風用パネル21に固定しているも、冷風用パネル21に固定する固定具25を用いることなく、送風口77を建屋10内で所定箇所に固定し、この送風口77の直近に冷風用パネル21を配置して冷風用パネル21と送風口77とを対向させることもある。
【0059】
更に、図1乃至図3に示した実施形態では、吸気ダクト71の吐出し端部及び送風ダクト75の吸込み端部を排気熱交換器86を介して接続しているも、吸気ダクト71の吐出し端部を送風ダクト75の吸込み端部へ直接に接続し、排気熱交換器86を省略して冷房装置20を簡素化することがある。
【0060】
また、図2及び図3に示した第2の水冷熱交換器87を省略し、第1配管37により主熱交換器31の一次側パイプ出水口を冷却塔50の散水パイプ61に直結することや、図2及び図3に示した第1の水冷熱交換器85及び冷却水送出ポンプ45を備えた第3配管46を省略し、散水パイプ61から散水されて水槽52に蓄えられる冷却水を、図1に示したように開閉バルブ49を備えた排出管48から排水するようにして、冷房装置20を簡素化することもある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る冷房装置20は、設置が容易であり、運転経費を節約しつつ工場等、大規模空間の温度を効果的に低下させることができるものである。
【符号の説明】
【0062】
10 建屋
11 太陽光発電パネル 13 蓄電池
18 熱発生源
20 冷房装置
21 冷風用パネル 25 固定具
31 主熱交換器 32 循環水送水配管
33 循環水戻り配管 35 循環ポンプ
37 第1配管 38 第2配管
41 給水ポンプ 43 汲み上げ管
45 冷却水送出ポンプ 46 第3配管
47 第4配管 48 排出管
49 開閉バルブ
50 冷却塔
51 底部 52 水槽
55 胴壁 56 空気取り入れ口
57 充填材 59 フロート
61 散水パイプ 63 送風機
65 排気筒 66 排気口
71 吸気ダクト 73 吸気口
75 送風ダクト 77 送風口
81 吸気ファン 82 第1送風ファン
83 第2送風ファン 85 第1の水冷熱交換器
86 排気熱交換器 87 第2の水冷熱交換器
91 換気装置 93 吸入ファン
95 換気熱交換器
【要約】
【課題】 冷房装置の設備投資や運転経費を大きくすることなく、効率良く大規模空間を冷却することができる冷房装置を提供する。
【解決手段】 循環水を循環させる吸熱パイプを備えた冷風用パネル21と、循環水と地下水との熱交換を行わせる主熱交換器31と、地下水を充填材57に散水して地下水温度を低下させる冷却塔50と、吸気ダクト71及び送風ダクト75を有し、吸気ダクト71及び送風ダクト75の少なくとも一方には、ダクト内の空気と地下水との熱交換を行わせる水冷熱交換器を有し、送風ダクト75の送風口77は、冷風用パネル21の直近で冷風用パネル21の平面に向けるように対向させて配置され、送風口77から吐き出す空気を送風用パネル21に当てるように送風口77から送出する冷房装置20とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3