(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項7に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0023】
<反射型マスクブランクの構成及びその製造方法>
図1は、本発明に係る反射型マスクブランクの構成を説明するための要部断面模式図である。同図に示されるように、反射型マスクブランク100は、マスクブランク用基板1(単に、「基板1」ともいう。)と、第1主面(表面)側に形成された露光光であるEUV光を反射する多層反射膜2と、当該多層反射膜2を保護するために設けられ、後述する位相シフト膜4をパターニングする際に使用するエッチャントや、洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される保護膜3と、EUV光を吸収する位相シフト膜4とを有し、これらがこの順で積層されるものである。また、基板1の第2主面(裏面)側には、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。
【0024】
本明細書において、「マスクブランク用基板1の主表面の上に、多層反射膜2を有する」とは、多層反射膜2が、マスクブランク用基板1の表面に接して配置されることを意味する場合の他、マスクブランク用基板1と、多層反射膜2との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。他の膜についても同様である。例えば「膜Aの上に膜Bを有する」とは、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する他、膜Aと膜Bとの間に他の膜を有する場合も含む。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
【0025】
本明細書において、位相シフト膜が、「タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含む材料からなる」とは、位相シフト膜が、少なくとも、実質的に、タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含む材料で構成されていることを意味する。また、位相シフト膜が、「タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含む材料からなる」とは、位相シフト膜が、タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含む材料のみからなることを意味する場合がある。また、いずれの場合も、不可避的に混入する不純物が、位相シフト膜に含まれることを含む。
【0027】
<<基板>>
基板1は、EUV光による露光時の熱による位相シフトパターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO
2−TiO
2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0028】
基板1の転写パターン(後述の位相シフト膜がこれを構成する)が形成される側の第1主面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、吸収体膜が形成される側と反対側の第2主面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、反射型マスクブランク100における第2主面側の平坦度は、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
【0029】
また、基板1の表面平滑度の高さも極めて重要な項目である。転写用位相シフトパターンが形成される基板1の第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0030】
更に、基板1は、その上に形成される膜(多層反射膜2など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0031】
<<多層反射膜>>
多層反射膜2は、反射型マスクにおいて、EUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜の構成となっている。
【0032】
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜2として用いられる。多層膜は、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜2の最表面の層、即ち多層反射膜2の基板1と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板1から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となる。この場合、低屈折率層が多層反射膜2の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスクの反射率が減少する。そのため、最上層の低屈折率層上に高屈折率層を更に形成して多層反射膜2とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
【0033】
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び酸素(O)を含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られる。また、本実施形態において基板1としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜2としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜2の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)とRu系保護膜3との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。これにより、マスク洗浄耐性を向上させることができる。
【0034】
このような多層反射膜2の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜2の各構成層の厚み、周期は、露光波長により適宜選択すればよく、ブラッグ反射の法則を満たすように選択される。多層反射膜2において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層同士、そして低屈折率層同士の厚みが同じでなくてもよい。また、多層反射膜2の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
【0035】
多層反射膜2の形成方法は当該技術分野において公知である。例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜2の各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、先ずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板1上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜し、これを1周期として、40から60周期積層して、多層反射膜2を形成する(最表面の層はSi層とする)。また、多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜2を形成することが好ましい。
【0036】
<<保護膜>>
保護膜3は、後述する反射型マスクの製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜2を保護するために、多層反射膜2の上に形成される。また、電子線(EB)を用いた位相シフトパターンの黒欠陥修正の際の多層反射膜2の保護も兼ね備える。ここで、
図1では保護膜3が1層の場合を示しているが、3層以上の積層構造とすることもできる。例えば、最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させた保護膜3としても構わない。例えば、保護膜3は、ルテニウムを主成分として含む材料により構成されることができる。すなわち、保護膜3の材料は、Ru金属単体でもよいし、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及びレニウム(Re)などから選択される少なくとも1種の金属を含有したRu合金であってよく、窒素を含んでいても構わない。このような保護膜3は、特に、位相シフト膜4をTaTi合金系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該位相シフト膜4をパターニングする場合に有効である。
【0037】
このRu合金のRu含有比率は50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合は、保護膜3への多層反射膜構成元素(ケイ素)の拡散を抑えつつ、EUV光の反射率を十分確保しながら、マスク洗浄耐性、位相シフト膜をエッチング加工した時のエッチングストッパ機能、及び多層反射膜経時変化防止の保護膜機能を兼ね備えることが可能となる。
【0038】
EUVリソグラフィーでは、露光光に対して透明な物質が少ないので、マスクパターン面への異物付着を防止するEUVペリクルが技術的に簡単ではない。このことから、ペリクルを用いないペリクルレス運用が主流となっている。また、EUVリソグラフィーでは、EUV露光によってマスクにカーボン膜が堆積したり、酸化膜が成長するといった露光コンタミネーションが起こる。そのため、EUV反射型マスクを半導体装置の製造に使用している段階で、度々洗浄を行ってマスク上の異物やコンタミネーションを除去する必要がある。このため、EUV反射型マスクでは、光リソグラフィー用の透過型マスクに比べて桁違いのマスク洗浄耐性が要求されている。Tiを含有したRu系保護膜を用いると、硫酸、硫酸過水(SPM)、アンモニア、アンモニア過水(APM)、OHラジカル洗浄水あるいは濃度が10ppm以下のオゾン水などの洗浄液に対する洗浄耐性が特に高く、マスク洗浄耐性の要求を満たすことが可能となる。
【0039】
このようなRu又はその合金などにより構成される保護膜3の厚みは、その保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜3の厚みは、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
【0040】
保護膜3の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0041】
<<位相シフト膜>>
保護膜3の上に、EUV光の位相をシフトする位相シフト膜4が形成される。位相シフト膜4が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させて、保護膜3を介して多層反射膜2から反射してくるフィールド部からの反射光と所望の位相差を形成するものである。位相シフト膜4は、位相シフト膜4からの反射光と、多層反射膜2からの反射光との位相差が、160°から200°となるように形成される。180°近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターンや露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を得るための位相シフト膜4の反射率の目安は、絶対反射率で1%以上、多層反射膜(保護膜付き)に対する反射比(相対反射率)で2%以上である。十分な位相シフト効果を得るためには、位相シフト膜4の反射率は、絶対反射率で2.5%以上が好ましい。
【0042】
位相シフト膜4の材料としては、タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含むTaTi系材料が好ましい。TaTi系材料は、TaTi合金、並びに、該TaTi合金に酸素、窒素、炭素及びホウ素のうち少なくとも一つを含有したTaTi化合物が挙げられる。TaTi化合物としては、例えば、TaTiN、TaTiO、TaTiON、TaTiCON、TaTiB、TaTiBN、TaTiBO、TaTiBON、及びTaTiBCONなどを適用することができる。
【0043】
Taは、硫酸や硫酸過水(SPM)等の洗浄に対する耐性が高く、フッ素系ガス及び塩素系ガスで容易にドライエッチングすることができる良好な加工特性を有しているため、位相シフト膜4の材料として優れている。Taの屈折率(n)は0.943であり、消衰係数(k)は0.041である。そのため、薄膜で十分な位相シフト効果を得るためには、Taと組み合わせる材料は、Taよりも消衰係数(k)が小さい材料又は屈折率(n)が小さい材料である必要がある。TiはTaに比べて消衰係数が小さいため、位相シフト効果を得る上で十分な反射率を得ることができる。また、TiNは屈折率(n)が0.932であり、消衰係数(k)が0.020であり、Taに比べて屈折率及び消衰係数が小さいため、TaとTiNとを組み合わせた薄膜により、所望の位相差及び反射率を得ることができる。
【0044】
例えば、TaTiN膜の13.5nmにおける屈折率nは約0.937、消衰係数kは約0.030である。位相シフト膜4は、反射率及び位相差が所望の値となる膜厚を設定することができ、膜厚を60nm未満、好ましくは50nm以下とすることができる。
図3に示すように、位相シフト膜4をTaTiN膜で形成した場合、膜厚が46.7nmで、多層反射膜(保護膜付き)に対する相対反射率が5.4%、位相差が約169°となり、膜厚が51.9nmで、多層反射膜(保護膜付き)に対する相対反射率が6.6%、位相差が約180°となる。なお、相対反射率とは、EUV光が多層反射膜(保護膜付き)に直接入射して反射した場合の絶対反射率を基準としたときの位相シフト膜のEUV光に対する反射率のことである。
【0045】
また、TaTi系材料は、実質的に酸素を含まない塩素(Cl)系ガスでドライエッチングすることが可能な材料である。上述したように、位相シフト効果が得られる材料として例えばRuが挙げられる。Ruはエッチングレートが低く、加工や修正が困難であるため、TaRu合金を含む材料で位相シフト膜を形成した場合、加工性に問題が生じる場合がある。
【0046】
TaTi系材料のTaとTiとの比率は、4:1〜1:4が好ましい。また、窒素を含む場合には、TaとTiNとの比率は4:1〜1:9が好ましい。
【0047】
このようなTaTi系材料からなる位相シフト膜4は、DCスパッタリング法及びRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法といった公知の方法で形成することができる。また、ターゲットは、TaTi合金ターゲットを用いてもよいし、TaターゲットとTiターゲットを用いたコースパッタリングとすることもできる。
【0048】
位相シフト膜4は単層の膜であっても良いし、2層以上の複数の膜からなる多層膜であっても良い。単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。なお、位相シフト膜が例えばTaTiN膜等の酸素を実質的に含まない単層膜の場合、成膜後の位相シフト膜が大気中に曝されることによって表層に自然酸化膜が形成される。この場合には、後述の2層構造からなる位相シフト膜のエッチングと同様に、フッ素系ガスで自然酸化膜を除去し、その後、塩素系ガスでエッチングを行うことが好ましい。
【0049】
位相シフト膜4が多層膜の場合には、第1の材料層と第2の材料層とを交互に3層以上積層した積層構造とすることができる。第1の材料層は、Ta及びTaBから選択され、第2の材料層は、TiN、TiO、TiON及びTiCONから選択することができる。第1の材料層及び第2の材料層の膜厚を調整することにより、膜厚変動に対する位相差及び反射率の安定性を向上させることが可能となる。また、位相シフト膜4の最上層を第1の材料層とすることにより、洗浄耐性を向上させることが可能となる。
【0050】
位相シフト膜4が多層膜の場合には、例えば、
図4に示すように、基板側から下層膜41と上層膜42からなる2層構造とすることができる。下層膜41は、EUV光の消衰係数が大きく、エッチング加工性が高いタンタル(Ta)、チタン(Ti)及び窒素(N)を含む材料層とする。上層膜42は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)及び酸素(O)を含む材料層とする。上層膜42は、例えばDUV光を用いたマスクパターン検査時の反射防止膜になるように、その光学定数と膜厚を適当に設定する。このことにより、DUV光を用いたマスクパターン検査時の検査感度が向上する。また、上層膜42は、下層膜41がTaTiN膜等の酸素を実質的に含まない場合に、酸化防止膜としても機能する。
【0051】
また、EUV光は波長が短いため、位相差及び反射率の膜厚依存性が大きい傾向にある。したがって、位相シフト膜4の膜厚変動に対する位相差及び反射率の安定性が求められる。しかしながら、
図3に示すように、位相シフト膜4の膜厚に対して、位相差及び反射率は各々振動構造を示している。位相差及び反射率の振動構造が異なるため、位相差及び反射率を同時に安定させる膜厚とすることは困難である。
【0052】
そこで、位相シフト膜4の膜厚が設計値に対して多少変動(例えば設計膜厚に対して±0.5%の範囲)した場合でも、位相差については、例えば面間の位相差ばらつきが180度±2度の範囲、反射率については、例えば面間の反射率ばらつきが6%±0.2%の範囲であることが望まれる。
【0053】
上層膜42の最表面からのEUV光の反射光を抑制することにより、振動構造をなだらかにして膜厚変動に対して安定な位相差及び反射率を得ることが可能となる。このような上層膜42の材料としては、下層膜41のEUV光における屈折率よりも大きく、外界の屈折率(n=1)よりも小さい屈折率を有する材料が好ましい。また、上層膜の膜厚は、波長の1/4周期程度であることが好ましい。下層膜41がタンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含む材料からなる場合、上層膜42の材料としては、ケイ素化合物が好ましい。ケイ素化合物としては、SiとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられ、好ましくはSiO
2、SiON及びSi
3N
4が挙げられる。下層膜41がTaTiN膜の場合、例えば上層膜42はSiO
2膜とすることができる。
【0054】
このように、位相シフト膜4を多層膜にすることによって、各層に様々な機能を付加させることが可能となる。
【0055】
上記の2層構造の位相シフト膜4の場合、上層膜42のエッチングガスは、CF
4、CHF
3、C
2F
6、C
3F
6、C
4F
6、C
4F
8、CH
2F
2、CH
3F、C
3F
8、SF
6、F
2等のフッ素系のガス、並びにフッ素系ガスとO
2とを所定の割合で含む混合ガス等から選択したものを用いることができる。また、下層膜41のエッチングガスは、Cl
2、SiCl
4、及びCHCl
3等の塩素系のガス、塩素系ガスとO
2とを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガスとHeとを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガスとArとを所定の割合で含む混合ガスから選択したものを用いることができる。ここで、エッチングの最終段階でエッチングガスに酸素が含まれていると、Ru系保護膜3に表面荒れが生じる。このため、Ru系保護膜3がエッチングに曝されるオーバーエッチング段階では、酸素が含まれていないエッチングガスを用いることが好ましい。
【0056】
位相シフト膜4上にはエッチングマスク膜を形成してもよい。エッチングマスク膜の材料としては、エッチングマスク膜に対する位相シフト膜4のエッチング選択比が高い材料を用いる。ここで、「Aに対するBのエッチング選択比」とは、エッチングを行いたくない層(マスクとなる層)であるAとエッチングを行いたい層であるBとのエッチングレートの比をいう。具体的には「Aに対するBのエッチング選択比=Bのエッチング速度/Aのエッチング速度」の式によって特定される。また、「選択比が高い」とは、比較対象に対して、上記定義の選択比の値が大きいことをいう。エッチングマスク膜に対する位相シフト膜4のエッチング選択比は、1.5以上が好ましく、3以上が更に好ましい。
【0057】
エッチングマスク膜に対する位相シフト膜4のエッチング選択比が高い材料としては、位相シフト膜4(又は上層膜42)をフッ素系ガスでエッチングする場合には、クロムやクロム化合物の材料を使用することができる。クロム化合物としては、CrとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料が挙げられる。また、位相シフト膜4(又は上層膜42)を、実質的に酸素を含まない塩素系ガスでエッチングする場合には、ケイ素やケイ素化合物の材料を使用することができる。ケイ素化合物としては、SiとN、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料、並びに、ケイ素又はケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)又は金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。金属ケイ素化合物としては、金属及びSiと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
【0058】
エッチングマスク膜の膜厚は、転写パターンを精度よく位相シフト膜4に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜の膜厚は、レジスト膜の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましい。
【0059】
<<裏面導電膜>>
基板1の第2主面(裏面)側(多層反射膜2形成面の反対側)には、一般的に、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)は通常100Ω/□(Ω/Square)以下である。裏面導電膜5の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、クロム、タンタル等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
【0060】
裏面導電膜5のクロム(Cr)を含む材料は、Crにホウ素、窒素、酸素、及び炭素から選択した少なくとも一つを含有したCr化合物であることが好ましい。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどを挙げることができる。
【0061】
裏面導電膜5のタンタル(Ta)を含む材料としては、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかにホウ素、窒素、酸素及び炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物を用いることが好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどを挙げることができる。
【0062】
タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料としては、その表層に存在する窒素(N)が少ないことが好ましい。具体的には、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5の表層の窒素の含有量は、5原子%未満であることが好ましく、実質的に表層に窒素を含有しないことがより好ましい。タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5において、表層の窒素の含有量が少ない方が、耐摩耗性が高くなるためである。
【0063】
裏面導電膜5は、タンタル及びホウ素を含む材料からなることが好ましい。裏面導電膜5が、タンタル及びホウ素を含む材料からなることにより、耐摩耗性及び薬液耐性を有する裏面導電膜5を得ることができる。裏面導電膜5が、タンタル(Ta)及びホウ素(B)を含む場合、B含有量は5〜30原子%であることが好ましい。裏面導電膜5の成膜に用いるスパッタリングターゲット中のTa及びBの比率(Ta:B)は95:5〜70:30であることが好ましい。
【0064】
裏面導電膜5の厚さは、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜5はマスクブランク100の第2主面側の応力調整も兼ね備えていて、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランクが得られるように調整されている。
【0065】
また、近年、特許第5883249号に記載されているように、反射型マスク等の転写用マスクの位置合わせ等の誤差を補正するために、転写用マスクの基板に対してフェムト秒レーザパルスを局所的に照射することにより、基板表面又は基板内部を改質させ、転写用マスクの誤差を補正する技術がある。上記パルスを発生させるレーザビームとしては、例えば、サファイアレーザ(波長800nm)又はNd−YAGレーザ(532nm)等がある。
【0066】
上記技術を反射型マスク200に適用する際には、基板1の第2主面(裏面)側からレーザビームを照射することが考えられる。しかしながら、上述のタンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料からなる裏面導電膜5の場合、レーザビームを透過しにくいという問題が生じる。この問題を解消するために、裏面導電膜5は、少なくとも波長532nmの光における透過率が20%以上である材料を用いて形成することが好ましい。
【0067】
このような透過率の高い裏面導電膜(透明導電膜)5の材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を用いることが好ましい。透明導電膜の膜厚を50nm以上とすることにより、静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)を100Ω/□以下とすることができる。例えば、膜厚100nmのITO膜は、532nmの波長に対する透過率は約79.1%であり、シート抵抗は50Ω/□である。
【0068】
また、透過率の高い裏面導電膜(透明導電膜)5の材料としては、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)の金属単体を用いることが好ましい。また、所望の透過率及び電気的特性を満たす範囲内で、該金属にホウ素、窒素、酸素及び炭素の少なくとも一つを含有した金属化合物を用いることができる。これらの金属膜は、上記ITO等と比較して電気伝導率が高いため薄膜化が可能となる。金属膜の膜厚は、透過率の観点からは50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。また、膜厚が薄すぎるとシート抵抗が急激に増加する傾向にあること、及び成膜の際の安定性の観点から、金属膜の膜厚は2nm以上が好ましい。例えば、膜厚10.1nmのPt膜は、532nmの波長に対する透過率は20.3%であり、シート抵抗は25.3Ω/□である。
【0069】
更に、裏面導電膜5は、単層膜又は2層以上の積層構造としてもよい。静電チャックを行う際の機械的耐久性を向上させたり、洗浄耐性を向上させたりするためには、最上層をCrO、TaO又はSiO
2とすることが好ましい。また、最上層を、上記金属膜の酸化膜、即ちPtO、AuO、AlO又はCuOとしてもよい。最上層の厚さは、1nm以上であることが好ましく、5nm以上、更には10nm以上であるとより好ましい。裏面導電膜を透明導電膜とする場合には、透過率が20%以上を満たす材料及び膜厚とする。
【0070】
また、裏面導電膜5の基板側に、中間層を設けてもよい。中間層は、基板1と裏面導電膜5との密着性を向上させたり、基板1からの裏面導電膜5への水素の侵入を抑制したりする機能を持たせることができる。また、中間層は、露光源としてEUV光を用いた場合のアウトオブバンド光と呼ばれる真空紫外光及び紫外光(波長:130〜400nm)が基板1を透過して裏面導電膜5によって反射されるのを抑制する機能を持たせることができる。中間層の材料としては、例えば、Si、SiO
2、SiON、SiCO、SiCON、SiBO、SiBON、Cr、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCON、Mo、MoSi、MoSiN、MoSiO、MoSiCO、MoSiON、MoSiCON、TaO及びTaON等を挙げることができる。中間層の厚さは、1nm以上であることが好ましく、5nm以上、更には10nm以上であるとより好ましい。裏面導電膜を透明導電膜とする場合には、中間層と透明導電膜とを積層したものの透過率が20%以上を満たす材料及び膜厚とする。
【0071】
上述した通り、裏面導電膜5には、電気的特性(シート抵抗)及び裏面からレーザビームを照射する場合には透過率を所望の値にすることが求められるが、これらの要求を満たすために裏面導電膜5の膜厚を薄くすると、別の問題が生じる場合がある。通常、多層反射膜2は高い圧縮応力を有しているため、基板1の第1主面側が凸形状となり、第2主面(裏面)側が凹形状となる。一方、多層反射膜2のアニール(加熱処理)、及び裏面導電膜5の成膜によって応力調整がなされ、全体として平坦又は第2主面側が若干凹形状の反射型マスクブランクが得られるように調整されている。しかし、裏面導電膜5の膜厚が薄いとこのバランスがくずれ、第2主面(裏面)側の凹形状が大きくなり過ぎてしまう。この場合、静電チャックを行った際に、基板周縁部(特にコーナー部)にスクラッチが生じ、膜剥がれやパーティクル発生の問題が生じることがある。
【0072】
この問題を解決するためには、裏面導電膜5が形成された導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にすることが好ましい。導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にする第1の方法としては、裏面導電膜5を成膜する前の基板1の第2主面側の形状を凸形状にするとよい。予め基板1の第2主面を凸形状とすることにより、膜厚が10nm程度のPt膜等からなる膜応力の小さい裏面導電膜5を成膜し、高い圧縮応力を有する多層反射膜2を成膜しても、第2主面側の形状を凸形状とすることができる。
【0073】
また、導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にする第2の方法としては、多層反射膜2成膜後に150℃〜300℃でアニール(加熱処理)する方法が挙げられる。特に210℃以上の高温でアニールすることが好ましい。多層反射膜2はアニールすることにより、多層反射膜の膜応力を小さくすることができるが、アニール温度と多層反射膜の反射率とはトレードオフの関係にある。多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からアルゴン(Ar)イオン粒子を供給する従来のArスパッタリングの場合には、高温でアニールすると所望の反射率が得られない。一方、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給するKrスパッタリングを行うことにより、多層反射膜2のアニール耐性を向上させることが可能となり、高温でアニールしても高い反射率を維持できる。したがって、Krスパッタリングで多層反射膜2を成膜後に150℃〜300℃でアニールすることにより、多層反射膜2の膜応力を小さくできる。この場合、膜厚が10nm程度のPt膜等からなる膜応力の小さい裏面導電膜5を成膜しても、第2主面側の形状を凸形状とすることができる。
【0074】
更に、上記第1の方法と第2の方法とを組み合わせてもよい。なお、裏面導電膜をITO膜等の透明導電膜とする場合には、膜厚を厚くすることが可能である。そのため、電気的特性を満たす範囲で厚膜化することにより、導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状とすることができる。
【0075】
このように導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状とすることにより、静電チャックを行った際に、基板周縁部(特にコーナー部)にスクラッチが生じるのを防止することが可能となる。
【0076】
<反射型マスク及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスクを製造する。ここでは概要説明のみを行い、後に実施例において図面を参照しながら詳細に説明する。
【0077】
反射型マスクブランク100を準備して、その第1主面の位相シフト膜4に、レジスト膜を形成し(反射型マスクブランク100としてレジスト膜を備えている場合は不要)、このレジスト膜に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターンを形成する。
【0078】
反射型マスクブランク100の場合は、このレジストパターンをマスクとして位相シフト膜4をエッチングして位相シフトパターンを形成し、レジストパターンをアッシングやレジスト剥離液などで除去することにより、位相シフトパターンが形成される。最後に、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行う。
【0079】
ここで、位相シフト膜4のエッチングガスとしては、Cl
2、SiCl
4、CHCl
3、及びCCl
4等の塩素系のガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス等が用いられる。位相シフト膜4のエッチングにおいて、エッチングガスに実質的に酸素が含まれていないので、Ru系保護膜に表面荒れが生じることがない。この酸素を実質的に含まれていないガスとしては、ガス中の酸素の含有量が5原子%以下であるものが該当する。
【0080】
以上の工程により、シャドーイング効果が少なく、且つ側壁ラフネスの少ない高精度微細パターンを有する反射型マスクが得られる。
【0081】
<半導体装置の製造方法>
上記本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に反射型マスク200上の位相シフトパターンに基づく所望の転写パターンを、シャドーイング効果による転写寸法精度の低下を抑えて形成することができる。また、位相シフトパターンが、側壁ラフネスの少ない微細で高精度なパターンであるため、高い寸法精度で所望のパターンを半導体基板上に形成できる。このリソグラフィー工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を製造することができる。
【0082】
より詳しく説明すると、EUV露光装置は、EUV光を発生するレーザプラズマ光源、照明光学系、マスクステージ系、縮小投影光学系、ウエハステージ系、及び真空設備等から構成される。光源にはデブリトラップ機能と露光光以外の長波長の光をカットするカットフィルタ及び真空差動排気用の設備等が備えられている。照明光学系と縮小投影光学系は反射型ミラーから構成される。EUV露光用反射型マスク200は、その第2主面に形成された裏面導電膜5により静電吸着されてマスクステージに載置される。
【0083】
EUV光源の光は、照明光学系を介して反射型マスク垂直面に対して6°から8°傾けた角度で反射型マスク200に照射される。この入射光に対する反射型マスク200からの反射光は、入射とは逆方向にかつ入射角度と同じ角度で反射(正反射)し、通常1/4の縮小比を持つ反射型投影光学系に導かれ、ウエハステージ上に載置されたウエハ(半導体基板)上のレジストへの露光が行われる。この間、少なくともEUV光が通る場所は真空排気される。また、この露光にあたっては、マスクステージとウエハステージを縮小投影光学系の縮小比に応じた速度で同期させてスキャンし、スリットを介して露光を行うスキャン露光が主流となっている。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。本発明では、シャドーイング効果の小さな薄膜で、しかも側壁ラフネスの少ない高精度な位相シフトパターンを持つマスクが用いられている。このため、半導体基板上に形成されたレジストパターンは高い寸法精度を持つ所望のものとなる。そして、このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような露光工程や被加工膜加工工程、絶縁膜や導電膜の形成工程、ドーパント導入工程、あるいはアニール工程等その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0084】
以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、実施例において同様の構成要素については同一の符号を使用し、説明を簡略化若しくは省略する。
【0085】
[実施例1]
図2は、反射型マスクブランク100から反射型マスク200を作製する工程を示す要部断面模式図である。
【0086】
反射型マスクブランク100は、裏面導電膜5と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、位相シフト膜4とを有する。位相シフト膜4はTaTi合金を含む材料からなる。そして、
図2(a)に示されるように、位相シフト膜4上にレジスト膜11を形成する。
【0087】
先ず、反射型マスクブランク100について説明する。
【0088】
第1主面及び第2主面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO
2−TiO
2系ガラス基板を準備し基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0089】
SiO
2−TiO
2系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、ArとN
2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚20nm。
【0090】
次に、裏面導電膜5が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板1上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。先ず、Si膜を4.2nmの厚みで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚みで成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜2を形成した。ここでは40周期としたが、これに限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
【0091】
引き続き、Arガス雰囲気中で、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリング法によりRu膜からなる保護膜3を2.5nmの厚みで成膜した。
【0092】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaTiN膜からなる位相シフト膜4を形成した。TaTiN膜は、TaTiターゲットを用いて、ArガスとN
2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、51.9nmの膜厚で成膜した。TaTiN膜の含有比率は、Ta:Ti:N=1:1:1であった。
上記形成したTaTiN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaTiN:n=0.937、k=0.030
【0093】
なお、位相シフト膜の表層には、位相シフト効果に影響のない範囲の極薄の自然酸化膜(TaTiON膜)が形成されていた。
【0094】
上記のTaTiN膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける絶対反射率は、4.3%(保護膜付き多層反射膜面に対する反射率は6.6%に相当)であった。又、位相シフト膜4の膜厚は51.9nmであり、位相シフト膜をパターニングした時の位相差が180°に相当する膜厚である。後述する比較例におけるTaN膜の位相シフト膜の膜厚65nmよりも約20%薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。このシャドーイング効果の低減に関しては、「半導体装置の製造」の項目で詳細を述べる。
【0095】
次に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
【0096】
前述のように、反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(
図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(
図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、位相シフト膜4の表層(自然酸化膜)を、CF
4ガスを用いてドライエッチング除去し、引き続きTaTiN膜(位相シフト膜4)のドライエッチングを、Cl
2ガスを用いて行うことで、位相シフトパターン4aを形成した(
図2(c))。
【0097】
その後、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク200を製造した(
図2(d))。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
【0098】
実施例1の反射型マスク200では、位相シフト膜4がTaTi合金系材料であるため、塩素系ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は51.9nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、後述の通り、シャドーイング効果を低減することができた。
【0099】
実施例1で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。この露光におけるシャドーイング効果を評価するために、マスクに入射してくる露光光に対して平行に配置されたパターンと垂直に配置されたパターンを用いて、その転写寸法の差を測定した。
図5(a)はマスク上に配置された位相シフトパターンの平面図であり、入射露光光50に対して平行の向きに配置された位相シフトパターン4bと垂直の向きに配置された位相シフトパターン4cが示されている。位相シフトパターン4bと4cは、配置方向以外は同一形状のパターンであり、したがって位相シフトパターン4bの線幅LMPと位相シフトパターン4cの線幅LMNは同じ線幅である。露光光50はマスク表面の法線方向に対して6°傾いた角度でマスクに入射する。
図5(b)は、露光、現像によりウエハ上に形成されたレジストパターンの平面図を示す。レジストパターン24b及び24cは、それぞれ、位相シフトパターン4b及び4cによって転写形成されたものである。転写形成されたレジストパターンの線幅LPPとLPNの差ΔL(=LPN−LPP)がシャドーイング効果を示す指標となる。一般に、この差のことは、シャドーイング効果による寸法XY差と呼ばれ、位相シフトパターンが壁になって生じた露光光の影により、ポジ型レジストを用いた場合、線幅LPNの方が線幅LPPに対して太くなる。
【0100】
実施例1で作成した反射型位相シフトマスクの場合、この寸法XY差ΔLは2.0nmであった。比較例の項目で改めて述べるが、膜厚65nmのTaNの単層膜位相シフト膜を用いた場合は、この寸法XY差ΔLは2.6nmであり、実施例1で作成した反射型位相シフトマスクを用いることによって、シャドーイング効果起因の転写精度低下を20%以上改善できた。又、実施例1で作成した反射型位相シフトマスクは、位相シフトパターンの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の絶対反射率は4.3%(保護膜付き多層反射膜面に対して6.6%の反射率)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
【0101】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0102】
[実施例2]
実施例2は、裏面導電膜5をCrN膜からPt膜とした場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0103】
即ち、SiO
2−TiO
2系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、Arガス雰囲気中でPtターゲットを使用したDCマグネトロンスパッタリング法によりPt膜からなる裏面導電膜5を5.2nm、10.1nm、15.2nm、及び20.0nmの膜厚で各々成膜し、4枚の導電膜付き基板を作製した。
【0104】
作製された4枚の導電膜付き基板の第2主面(裏面)から波長532nmの光を照射して透過率を測定したところ、
図6に示すように、透過率は各々39.8%、20.3%、10.9%、6.5%であり、膜厚が5.2nm及び10.1nmの導電膜付き基板が透過率20%以上を満たすものであった。また、シート抵抗は、4端子測定法により測定したところ、各々57.8Ω/□、25.3Ω/□、15.5Ω/□、及び11.2Ω/□であり、何れも100Ω/□以下を満たすものであった。
【0105】
膜厚が10.1nmの導電膜付き基板について、実施例1と同様の方法で反射型マスクブランク100を作製し、その後反射型マスク200を作製した。作製された反射型マスク200の基板1の第2主面(裏面)側から波長532nmのNd−YAGレーザのレーザビームを照射したところ、裏面導電膜5が透過率の高いPt膜で形成されているため、反射型マスク200の位置合わせ誤差を修正することができた。
【0106】
[実施例3]
実施例3は、位相シフト膜4をTiN膜とTa膜との多層膜で形成した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0107】
DCマグネトロンスパッタリング法により、TiN膜を保護膜3上に形成した。TiN膜は、Tiターゲットを用いて、ArガスとN
2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、0.7nmの膜厚で成膜した。次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、Ta膜をTiN膜上に形成した。Ta膜は、Taターゲットを用いて、Arガス雰囲気によるスパッタリングで、1.6nmの膜厚で成膜した。TiN膜とTa膜とを交互に25周期成膜し、最上層にTa膜を2.4nmの膜厚で形成し、多層膜の膜厚を58.3nmとした。多層膜における各元素の含有比率は、Ta:Ti:N=7:3:6であった。
【0108】
上記形成したTa/TiN多層膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
Ta/TiN多層膜:n=0.943、k=0.028
【0109】
上記の多層膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は6.3%であり、位相差は180度であった。
【0110】
実施例1と同様にして、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。但し、実施例3における位相シフト膜4の最上層はTa膜のため、CF
4ガスを用いた自然酸化膜の除去工程は行わなかった。
【0111】
実施例3の反射型マスク200では、位相シフト膜4がTa/TiN多層膜であるため、塩素系ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は58.3nmであり、後述する比較例におけるTaN膜の位相シフト膜の膜厚65nmよりも約10%薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0112】
実施例3で作製した反射型マスク200をEUV露光装置にセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。
【0113】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0114】
[実施例4]
実施例4は、位相シフト膜4を下層膜41と上層膜42の2層構造にした場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0115】
DCマグネトロンスパッタリング法により、TaTiN膜からなる下層膜41を保護膜3上に形成した。TaTiN膜は、TaTiターゲットを用いて、ArガスとN
2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、45.1nmの膜厚で成膜した。TaTiN膜の含有比率は、Ta:Ti:N=6:5:8であった。
【0116】
上記形成したTaTiN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaTiN:n=0.943、k=0.026
【0117】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaTiON膜からなる上層膜42を下層膜41上に形成した。TaTiON膜は、TaTiターゲットを用いて、ArガスとN
2ガス及びO
2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、14.0nmの膜厚で成膜した。TaTiON膜の含有比率は、Ta:Ti:O:N=8:6:1:20であった。
【0118】
上記形成したTaTiON膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaTiON:n=0.955、k=0.022
【0119】
上記の2層膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は7.2%であり、位相差は180度であった。また、DUV光に対する反射率は、190〜300nmにおいて24.1%以下だった。
【0120】
次に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
【0121】
前述のように、反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(
図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(
図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、位相シフト膜4の上層膜42のドライエッチングを、CF
4ガスを用いて行い、引き続き下層膜41のドライエッチングを、Cl
2ガスを用いて行うことで、位相シフトパターン4aを形成した(
図2(c))。
【0122】
その後、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク200を製造した(
図2(d))。
【0123】
実施例4の反射型マスク200では、上層膜42であるTaTiON膜が下層膜41のエッチングマスクとなるため、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は59.1nmであり、後述する比較例におけるTaN膜の位相シフト膜の膜厚65nmよりも約9%薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0124】
実施例3と同様にして、本実施例で作製した反射型マスク200を用いることにより、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0125】
[実施例5]
実施例5は、実施例4の下層膜41の膜厚を変え、上層膜42をSiO
2膜に変えた場合の実施例であって、それ以外は実施例4と同じである。
【0126】
DCマグネトロンスパッタリング法により、TaTiN膜からなる下層膜41を保護膜3上に50.6nmの膜厚で成膜した。TaTiN膜の含有比率は、Ta:Ti:N=4:6:6であった。上記形成したTaTiN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaTiN:n=0.936、k=0.028
【0127】
次に、RFマグネトロンスパッタリング法により、SiO
2膜からなる上層膜42を下層膜41上に形成した。SiO
2膜は、SiO
2ターゲットを用いて、Arガス雰囲気によるスパッタリングで、3.5nmの膜厚で成膜した。したがって、位相シフト膜4(上層膜42及び下層膜41)の膜厚は、54.1nmである。
【0128】
上記形成したSiO
2膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
SiO
2:n=0.974、k=0.013
【0129】
図7に示すように、上記の2層膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は、±0.5%の膜厚変動に対して6.0%±0.03%であった。また、位相差は、±0.5%の膜厚変動に対して179.4度±1.1度であった。これにより、高安定な位相シフト膜4が得られた。
【0130】
実施例4と同様にして、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
【0131】
本実施例の反射型マスク200では、上層膜42であるSiO
2膜が下層膜41のエッチングマスクとなるため、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は54.1nmであり、後述する比較例におけるTaN膜の位相シフト膜の膜厚65nmよりも約17%薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0132】
実施例3と同様にして、本実施例で作製した反射型マスク200を用いることにより、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[比較例1]
【0133】
比較例では、位相シフト膜4として単層のTaN膜を用いた以外、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク、反射型マスクを製造し、又、実施例1と同様の方法で半導体装置を製造した。
【0134】
単層のTaN膜は、実施例1のマスクブランク構造の保護膜3の上に、TaTiN膜に代えて形成した。このTaN膜の形成方法は、Taをターゲットに用い、XeガスとN
2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングを行ってTaN膜を成膜した。TaN膜の膜厚は65nmであり、この膜の元素比率は、Taが88原子%、Nが12原子%である。
【0135】
上記のように形成したTaN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaN:n=0.949、k=0.032
【0136】
上記の単層のTaN膜からなる位相シフト膜の波長13.5nmにおける位相差は180°である。反射率は多層反射膜面に対して1.7%であった。比較例では位相シフト効果が少なく、投影光学像のコントラストを十分改善することはできなかった。
【0137】
その後、実施例1と同様の方法で、レジスト膜を単層のTaN膜からなる位相シフト膜上に形成し、所望のパターン描画(露光)及び現像、リンスを行ってレジストパターンを形成した。そして、このレジストパターンをマスクにして、TaN単層膜からなる位相シフト膜を、塩素ガスを用いたドライエッチングして、位相シフトパターンを形成した。レジストパターン除去やマスク洗浄なども実施例1と同じ方法で行い、反射型マスクを製造した。
【0138】
実施例1の半導体装置の製造方法の項目で述べたように、この反射型位相シフトマスクを用いてシャドーイング効果を調べたところ、寸法XY差ΔLは2.6nmであった。