特許第6475401号(P6475401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6475401
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20190218BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08J5/04CEZ
   C08L51/00
   C08L25/12
   C08K7/14
   C08K3/40
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-565421(P2018-565421)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2018036223
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-199058(P2017-199058)
(32)【優先日】2017年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-130764(P2018-130764)
(32)【優先日】2018年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】片桐 寛夫
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275345(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115151(WO,A1)
【文献】 特開2014−55255(JP,A)
【文献】 特開2002−206053(JP,A)
【文献】 特開2008−141130(JP,A)
【文献】 国際公開第95/27603(WO,A1)
【文献】 特開平6−93165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00− 101/14
C08K 3/00− 13/08
C08J 5/04− 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を10〜100質量部、平均厚みが0.45〜1μmのガラスフレーク(C)を10〜100質量部、及び、扁平率が1.5超8以下の扁平断面ガラス繊維(D)を5〜50質量部含有し、扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)が0.1〜1であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ガラスフレーク(C)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(C)/(B)が、1.0超4.0未満である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
ガラスフレーク(C)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30質量部超100質量部以下である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
扁平断面ガラス繊維(D)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、15質量部超50質量部以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)が、0.5〜1である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
ガラスフレーク(C)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(C)/(B)が、1.5〜3.5である請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
リン系難燃剤を含有しないか、含有する場合でもその含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下であり、かつ、
フィブリル形成能を有するフッ素樹脂を含有しないか、含有する場合でもその含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
ISO 11359−2に基づいて測定されるMD方向とTD方向の線膨脹係数が、21×10−6/K〜28×10−6/Kの範囲にあり、MDとTDの線膨張係数比が0.9〜1.1の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形品。
【請求項10】
成形品が、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、投影露光装置、光学測定装置の筐体部品やレンズ鏡筒;スマートフォン用カメラ、車載カメラ、ドライブレコーダー、監視カメラ、ドローン搭載用小型カメラの筐体部品や機構部品;車の衝突防止センサー、バックモニター用センサー、車速センサー、温度センサー、防犯用センサーの筐体や機構部品;自動車、バイク、自転車、車椅子のフレーム部材や外板部材;家庭用テレビ、パソコン用ディスプレイ、車載モニター、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイのパネル部材や機構部品;バーコードリーダー、スキャナー筐体や機構部品からなる群から選択される成形品である請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
成形品が、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、投影露光装置、光学測定装置の筐体部品やレンズ鏡筒;スマートフォン用カメラ、車載カメラ、ドライブレコーダー、監視カメラ、ドローン搭載用小型カメラの筐体部品や機構部品;家庭用テレビ、パソコン用ディスプレイ、車載モニター、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイのパネル部材や機構部品からなる群から選択される成形品である請求項10に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、剛性が高く、寸法安定性に優れ、低線膨脹性のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械特性を有し、エンジニアリングプラスチックとして広く使用されており、利用分野によってはその性質、特に機械的物性を改善する目的で、様々の強化剤、添加剤を配合することが行われてきた。そして高い機械的強度、剛性の要求される分野においては、ガラス繊維等の繊維状の強化材を用いることが行われている。しかし、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を配合した樹脂組成物は機械的強度、剛性は優れるものの、繊維の配向による成形収縮率の異方性が生じてしまう欠点を有している。
【0003】
近年、例えばカメラ等のレンズを備える撮像又は光学機器においては、軽量化や低コスト化のため鏡胴用筒状体(鏡筒)の樹脂化が図られており、ポリカーボネート樹脂をガラス繊維で強化された材料も使用されている。レンズ鏡筒においては、合焦やズーム駆動時において、光学系の光軸がずれないように、鏡筒の材質には十分な剛性と高い寸法精度が要求される。
【0004】
特定の断面形状を有するガラス繊維を用いて寸法精度を改善することも行われている。
特許文献1ではポリカーボネート樹脂と特定の断面形状を有する扁平断面ガラス繊維とリン酸エステル系難燃剤からなる機械強度と難燃性の改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。その実施例では、扁平断面ガラス繊維と厚さ5μmのガラスフレークを特定の量比で配合し、さらにリン酸エステル系難燃剤及びポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物が記載されているが、その異方性は十分満足できるものとはいえず、またリン系難燃剤を使用しているためポリカーボネート樹脂を可塑化することによる衝撃強度及び耐熱性の低下が発生しやすいことから、衝撃強度と耐熱性と異方性は不十分であり満足できるものではなかった。
【0005】
そして、さらに、鏡筒は樹脂材料とアルミニウムやマグネシウム等の金属(または合金)と複合化されているため、広い使用環境温度においても熱膨脹差に基づく光軸のずれを防止する必要があり、樹脂材料はこれら金属と線膨脹係数が近似していることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5021918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的(課題)は剛性が高く、寸法安定性に優れ、アルミニウム等の金属との線膨脹係数が同等レベルであるポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂にAS樹脂を特定量配合した上で、特定厚みのガラスフレークと特定の扁平率の扁平断面ガラス繊維とを特定の量比で含有することにより、強度と寸法安定性、低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルであり、さらに流動性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を10〜100質量部、平均厚みが0.45〜1μmのガラスフレーク(C)を10〜100質量部、及び、扁平率が1.5超8以下の扁平断面ガラス繊維(D)を5〜50質量部含有し、扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)が0.1〜1であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物に関する。
そして、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスフレーク(C)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(C)/(B)が、1.0超4.0未満であることが好ましい。
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスフレーク(C)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30質量部超100質量部以下であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、扁平断面ガラス繊維(D)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、15質量部超50質量部以下であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)が、0.5〜1であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスフレーク(C)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(C)/(B)が、1.5〜3.5であることが好ましい。
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系難燃剤を含有しないか、含有する場合でもその含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下であり、かつ、フィブリル形成能を有するフッ素樹脂を含有しないか、含有する場合でもその含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、ISO 11359−2に基づいて測定されるMD方向とTD方向の線膨脹係数が、21×10−6/K〜28×10−6/Kの範囲にあり、MDとTDの線膨張係数比が0.9〜1.1の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、強度と寸法安定性、低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルであり、さらに流動性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分等につき、詳細に説明する。
【0014】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂は、式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0015】
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0018】
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0019】
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0020】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0021】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0022】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0023】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
【0024】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0025】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0026】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0027】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
【0028】
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
【0029】
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0030】
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
【0031】
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0032】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0033】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0034】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0035】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0036】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、粘度平均分子量(Mv)で、16000〜50000の範囲にあることが好ましく、より好ましくは18000以上、さらに好ましくは20000以上であり、より好ましくは45000以下、さらに好ましくは40000、特に好ましくは38000以下である。粘度平均分子量を粘度平均分子量が16000より小さいと、成形品の耐衝撃性が低下しやすく、割れが発生する虞があるので好ましくなく、50000より大きいと流動性が悪くなり成形性に問題が生じやすいので好ましくない。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0037】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、
η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また極限粘度[η]は、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0038】
また、本発明においては、さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマー又はポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマー又はポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマー又はポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0039】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下、中でも20質量%以下、特に10質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0041】
[アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を含有する。アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)は、アクリロニトリルとスチレン系単量体との共重合体であり、さらに他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
【0042】
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0043】
スチレン系単量体とアクリロニトリル以外の他の共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
これらの中では(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にメチルメタアクリレートを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレートの表記はメタクリレート及びアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。
【0044】
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を製造する方法は、制限はなく、公知の方法が採用でき、例えば、塊状重合、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の方法が用いられる。
【0045】
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)中のアクリロニトリル単量体は、5〜50質量%が好ましく、8〜45質量%がより好ましい。また、スチレン系単量体に由来する単位の含有率は、50〜95質量%が好ましく、55〜92質量%がより好ましい。
【0046】
また、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)のメルトボリュームレート(MVR)としては、220℃、荷重10kgで5〜100cm/10分の範囲にあることが好ましく、10〜80cm/10分がより好ましい。
また、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、6万〜22万の範囲にあることが好ましく、8万〜20万であることがより好ましい。
なお、本発明において、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)の測定は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法によって行われる。
【0047】
アクリロニトリル−スチレン系共重合体は、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)またはアクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)が挙げられ、特にアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)が好ましい。
【0048】
アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10〜100質量部である。含有量が10質量部未満では樹脂溶融粘度が高く成形性が悪くなり、100質量部を超えると耐熱性が低下することに加え、ウェルド強度が低下する。アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量は、好ましくは12質量部以上であり、13質量部以上がより好ましく、好ましくは80質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらには50質量部以下、中でも40質量部以下、特には30質量部以下であることが好ましい。
【0049】
[ガラスフレーク(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスフレークを含有し、平均厚みが0.45〜1μmのガラスフレーク(C)を使用する。
本発明におけるガラスフレーク(C)は平均厚みが0.4〜1μmであり、通常のガラスフレークの厚みが5μm程度であるのに比べ、より薄肉のものを使用する。ガラスフレーク(C)の平均厚みは、好ましくは0.5〜0.9μmであり、さらに好ましくは0.55〜0.85μm、特に好ましくは0.6〜0.8μmである。平均厚みが上記範囲の上限を超える場合は、ポリカーボネート樹脂組成物の弾性率が低下しやすく、また平均厚みが上記範囲の下限を下回る場合は、ガラスフレークが極端に割れやすくなり、剛性や耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0050】
ここでガラスフレークの平均厚みは、以下の方法で測定される値である。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、100枚以上のガラスフレークにつき厚みを測定し、その測定値を平均することによって求める。この場合、ガラスフレーク単体を走査型電子顕微鏡で観察してもよく、ガラスフレークを樹脂に充填して成形し、これを破断し、その破断面を観察して測定してもよい。
【0051】
また、ガラスフレーク(C)の平均粒径(長さ)は、5〜1000μmが好ましく、より好ましくは20〜700μm、さらに好ましくは50〜200μmである。ここで平均粒径は、ガラスフレークの長径であり、重量平均分布のメジアン径として算出されるものである。
【0052】
ガラスフレーク(C)は、公知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、メチルハイドロジェンシロキサン、チタネートカップリング剤、またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度向上の点から好ましい。さらに、ガラスフレークは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の結合剤により、造粒または集束したものがハンドリングの点より好ましい。但し、かかる造粒または集束により得られる顆粒物または集束物に対しては、上述したガラスフレークの平均粒径範囲や厚みの範囲は適用されない。また、ガラスフレークのガラス組成は、特に制限はなく、Aガラス、Cガラス及びEガラス等に代表される各種のガラス組成のものを適宜選択し用いることができる。
【0053】
ガラスフレーク(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10〜100質量部であり、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは25質量部以上であり、特に好ましくは30質量部超であり、また、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
【0054】
[扁平断面ガラス繊維(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、扁平率が1.5〜8の扁平断面ガラス繊維(D)を、上記した薄肉のガラスフレーク(C)と組み合わせて含有することを特徴とする。このような扁平断面のガラス繊維(D)をガラスフレーク(C)と組み合わせて用いることで、強度と低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルであるポリカーボネート樹脂組成物ことが可能となる。
【0055】
扁平断面ガラス繊維(D)の扁平率は、ガラス繊維の繊維方向断面における長径(幅)と短径(厚み)の比(幅/厚み、以下「扁平率」という。)の平均値は、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下である。
【0056】
また、扁平断面ガラス繊維(D)の繊維断面の長径(幅)の平均値は、10〜50μmであるものが好ましく、より好ましくは12〜40μm、さらに好ましくは15〜35μm、特に好ましくは、18〜30μmである。また、また、扁平断面ガラス繊維(D)の繊維断面の短径(厚み)の平均値は、好ましくは3〜20μmであり、より好ましくは4〜15μm、さらに好ましくは5〜12μmである。
【0057】
扁平断面ガラス繊維(D)の数平均繊維長は、0.5〜20mmであることが好ましく、1〜15mmであることがより好ましく、2〜10mmであることがさらに好ましい。
また、扁平断面ガラス繊維(D)の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は、好ましくは2〜120であり、より好ましくは2.5〜70、さらに好ましくは3〜50である。扁平断面ガラス繊維の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)が、2未満の場合は、機械的強度が低下する傾向にあり、逆に120を超える場合は、ソリや異方性が大きくなるほか、成形品外観が著しく悪化する傾向にある。
【0058】
扁平断面ガラス繊維(D)としては、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであれば、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成も使用可能である。中でも本発明に用いる扁平断面ガラス繊維(D)としては、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性を向上させる目的から無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。
【0059】
本発明で使用する扁平断面ガラス繊維(D)は、ポリカーボネート樹脂との密着性を向上させる目的で、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などにより表面処理を行うことができる。
【0060】
また、扁平断面ガラス繊維(D)は、これらの繊維を多数本集束したものを、所定の長さに切断したチョップドストランドとして用いることも好ましく、このとき扁平断面ガラス繊維は収束剤を配合することが好ましい。収束剤を配合することで、ポリカーボネート樹脂組成物の生産安定性が高まる利点に加え、良好な機械物性を得ることができる。
収束剤としては、特に制限はないが、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系等の収束剤が挙げられる。
【0061】
扁平断面ガラス繊維(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、5〜50質量部である。扁平断面ガラス繊維(D)の含有量が5質量部未満では弾性率や耐衝撃性が不十分であり、逆に50質量部を超えると耐衝撃性や流動性が不十分となる。扁平断面ガラス繊維(D)の含有量は、好ましくは6質量部以上、より好ましくは7質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上、特に好ましくは15質量部超であり、また好ましくは47質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは38質量部以下、特に好ましくは32質量部以下である。
【0062】
[扁平断面ガラス繊維(D)/ガラスフレーク(C)の含有量の比]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)は、0.1〜1とする。ガラスフレーク(C)の量に比べて扁平断面ガラス繊維(D)の量を少なくすることで、強度と低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルであり、さらに流動性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。(D)/(C)は好ましくは0.25以上、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下である。
【0063】
また、ガラスフレーク(C)及び扁平断面ガラス繊維(D)の含有量の合計は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、30〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは35質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、特には50質量部以上が好ましく、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下、特には85質量部以下である。
【0064】
[ガラスフレーク(C)/アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の比]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ガラスフレーク(C)とアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(C)/(B)は、1.0超4.0未満とすることが好ましい。アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)の量に比べてガラスフレーク(C)の量を多くすることで、高流動性でかつ線膨張係数の異方性を少なくすることができる。(C)/(B)は、より好ましくは1.5〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.2である。
【0065】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、難燃剤、蛍光増白剤、顔料、染料、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤あるいは他の樹脂は1種または2種以上を配合してもよい。
【0066】
顔料としては、染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられ、特に無機顔料として、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックを含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0067】
しかしながら、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系難燃剤を含有しないことが好ましい。即ち、リン系難燃剤を含有しないか、含有する場合でもその含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下、中でも0.7質量部以下、特に0.5質量部以下までとすることが好ましい。リン系難燃剤をこのような量を超えて含有すると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性及び熱安定性を悪化させる傾向にあるので好ましくない。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、滴下防止剤である、フィブリル形成能を有するフッ素樹脂を含有しないことが好ましい。即ち、フィブリル形成能を有するフッ素樹脂を含有しないか、含有する場合でもその含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以下、中でも0.7質量部以下、特に0.5質量部以下とすることが好ましい。フィブリル形成能を有するフッ素樹脂をこのような量を超えて含有すると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘性が高くなり成形加工性を悪化させる傾向にあるので好ましくない。
【0068】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)及びアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)以外の他のポリマーを含有することもできる。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
ただし、ポリカーボネート樹脂(A)及びアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらに5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0069】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)及びアクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)、ガラスフレーク(C)及び扁平断面ガラス繊維(D)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常260〜320℃の範囲である。
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して各種成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
【0071】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ISO 11359−2に基づいて測定されるMD方向とTD方向の線膨脹係数が、好ましくは、21×10−6/K〜28×10−6/Kの範囲にあり、MDとTDの線膨張係数比が0.9〜1.1の範囲にある。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくはこのような範囲の線膨脹係数を有することで、例えば、アルミニウムやマグネシウム等の金属(または合金)と複合化した鏡筒等としてすると、これら金属と線膨脹係数が近似しており、広い使用環境温度においても熱膨脹差に基づく真円度や光軸のずれ等を防止することが可能となる。
MDとTDの線膨張係数比(MD/TD)は、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.94以上であり、また、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06以下である。
【0072】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、強度と低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルである。従って、その用途としては、例えば、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、投影露光装置、光学測定装置等の筐体部品やレンズ鏡筒等、スマートフォン用カメラ、車載カメラ、ドライブレコーダー、監視カメラ、ドローン搭載用小型カメラ等の筐体部品や機構部品等、車の衝突防止センサー、バックモニター用センサー、車速センサー、温度センサー、防犯用センサー等のセンサーの筐体や機構部品、自動車、バイク、自転車、車椅子等のフレーム部材や外板部材、家庭用テレビ、パソコン用ディスプレイ、車載モニター、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイのパネル部材や機構部品等、バーコードリーダー、スキャナー等の読み取り装置の筐体や機構部品、エアコン、空気清浄器、コンプレッサー等の筐体や機構部品、有線・無線LANルーター、WIFI受信機、WIFIストレージ、USBメモリ、メモリーカード、カードリーダー、データーサーバー保存機器等の情報機器の筐体や機構部品、光学機器、半導体パッケージ基板、半導体製造装置などの製造・加工設備部品、計測機器部品等が好ましく挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0074】
以下の実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
【表1】
【0075】
(実施例1〜12、比較例1〜21)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記したポリカーボネート樹脂(A)とAS樹脂(B)をタンブラーミキサーにて均一混合した後、ホッパーから、押出機にフィードして溶融混練した。なお、ガラスフレーク(C、CX)及びガラス繊維(D、DX)は、それぞれ押出機の上流からバレル長さLの2/3の下流位置からサイドフィードした。
押出機としては、日本製鋼所社製二軸押出機(TEX25αIII、L/D=52.5)を用い、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度300℃、吐出量25kg/hrの条件で溶融押出した。ガラスフレーク及びガラス繊維以外の原料のサイドフィード後の溶融混練時間は15秒であった。押出されたストランドを水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化した。
【0076】
上記製造方法で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製のNEX80射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、射出速度100mm/s、保圧80MPaの条件で、厚さ4mmのISOダンベル試験片と、長さ100mm×幅100mm×厚さ2mmの平板状成形品を成形した。
【0077】
[曲げ弾性率の測定]
上記で得られたISOダンベル片(厚さ4mm)を用い、ISO178に基づいて、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0078】
[シャルピー衝撃強度(ノッチ付き)の測定]
上記で得られたISOダンベル片(厚さ4mm)を用い、ISO179に基づいて、ノッチ付きシャルピー強度(単位:kJ/m)を測定した。
シャルピー衝撃強度は6kJ/m以上であることが好ましく、6.5kJ/m以上がより好ましい。
【0079】
[線膨張係数の測定]
上記で得られた平板状成形品の中心部を、MD/TD方向にそれぞれ長さ15mm×幅10mm×厚さ2mmに切り出すことで試験片を得、線膨張係数の測定に用いた。
測定機器としては、日立ハイテクサイエンス製TMA/SS6100を用い、試験片の長さ部分を測定の対象にし、−30〜+120℃まで20℃/分の速度で昇温し、温度変化量に対する寸法の変化量の傾きから線膨張係数(単位:/K)を算出した。
【0080】
[異方性の評価]
上記で算出したMDとTDとの線膨張係数の比(MD/TD)を算出した。
【0081】
上記製造方法で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、東芝機械社製のEC160NII射出成形機を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度120℃、射出速度100mm/s、保圧70MPaの条件で、直径100mm、厚さ1mmの円盤状成形品を成形した。
【0082】
[反りの評価]
上記で得られた円盤状成形品を平らな金属板の上に成形品の中心部が金属板と接触するように配置し、成形品の端部の高さをキーエンス社製3D形状測定機VR−3000で測定した。また、反り量は下式の通り計算した。
反り量(mm)=成形品端部高さ(mm)−成形品厚さ(mm)
反りの評価は反り量に応じて、以下のA−Dの4段階で評価した。
A:反り量1mm以下
B:反り量1〜2mm
C:反り量2〜4mm
D:反り量4mm以上
【0083】
[流動性]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製のNEX80射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、射出圧力150MPaの条件で射出成形し、厚さ2mm、幅20mmのバーフロー流動長を測定し、10ショットの平均値(単位:mm)を求めた。
以上の評価結果を以下の表2〜5に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、強度と寸法安定性、低異方性に優れ、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルであり、さらに流動性にも優れるので、鏡筒他、各種の用途に好適に使用でき、産業上の利用性は高い。
【要約】
剛性が高く、寸法安定性に優れ、低線膨脹性のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、アクリロニトリル−スチレン系共重合体(B)を10〜100質量部、平均厚みが0.45〜1μmのガラスフレーク(C)を10〜100質量部、及び、扁平率が1.5超8以下の扁平断面ガラス繊維(D)を5〜50質量部含有し、扁平断面ガラス繊維(D)とガラスフレーク(C)の含有量の質量比(D)/(C)が0.1〜1であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。