(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本実施形態の外壁材の一例を示す。この外壁材は、基材1と、淡色塗装層3と、インクジェット印刷層4と、熱線遮蔽層6と、機能層7とを備えている。
【0017】
図2は本実施形態の外壁材の他の一例を示す。この外壁材は、基材1と、下塗層2と、淡色塗装層3と、インクジェット印刷層4と、クリアー層5と、熱線遮蔽層6と、機能層7とを備えている。
【0018】
上記のように下塗層2は、基材1と淡色塗装層3との間に介在してもしなくてもよい。同様にクリアー層5も、インクジェット印刷層4と熱線遮蔽層6との間に介在してもしなくてもよい。すなわち、下塗層2及びクリアー層5の形成は任意である。
【0019】
以下では、まず基材1、下塗層2、淡色塗装層3、インクジェット印刷層4、クリアー層5、熱線遮蔽層6、機能層7についてこの順に説明する。
【0020】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填材、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製される。水硬性膠着材としては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等からなる群より選ばれた1種以上のものを用いることができる。また無機充填材としては、例えば、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等からなる群より選ばれた1種以上のものを用いることができる。また繊維質材料としては、例えば、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維からなる群より選ばれた1種以上のものを用いることができる。成形は、押出成形、注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができる。成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、外壁材として用いられる窯業系基材を製造することができる。その他に基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることもできる。
【0021】
下塗層2は、上述のように基材1の表面に任意に形成される。下塗層2は、基材1の目止めやさび止め等のために形成される。下塗層2は、シーラー、プライマー、エナメル塗料等の下塗層用塗料を用いて形成することができる。ここで、シーラーとしては、低分子量の樹脂や小粒径のエマルションからなる浸透性タイプの下塗層用塗料を用いることができる。またプライマーとしては、基材1に対する付着性が高く厚膜に塗布可能な樹脂と耐食性に寄与する顔料とからなる防食性の高い下塗層用塗料を用いることができる。またエナメル塗料としては、下地の隠蔽力が高く耐久性に優れ種類豊富な色揃えを有し外観意匠性向上に寄与可能な下塗層用塗料を用いることができる。
【0022】
淡色塗装層3は、基材1の表面に形成される。基材1の表面に下塗層2を形成する場合には下塗層2の表面に淡色塗装層3が形成される。淡色塗装層3は、例えば酸化チタン白色顔料を含有し、淡色であるため、可視光線及び赤外線を反射する。反射される光の波長は約380〜1300nmの範囲内である。好ましくは淡色塗装層3は、この上に形成されるインクジェット印刷層4のインクを定着させるように構成されている。つまり淡色塗装層3はインク受理層として構成されていることも好ましい。このような淡色塗装層3によって、インクジェット印刷層4を透過してきた赤外線等の熱線を反射させることで、外壁材の内側に熱をこもりにくくすることができる。
【0023】
淡色塗装層3のCIEで規定のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値は60〜98の範囲内であることが好ましい。L
*値は、色彩色差計を用いて測定することができる。L
*値をこの範囲内に収めるためには、例えば、淡色塗装層3における酸化チタン白色顔料の含有量を調整すればよい。L
*値が上記の範囲内であると、淡色塗装層3の淡色が明るくなり、波長が約380〜1300nmの光の反射率をさらに高めることができる。淡色塗装層3を形成するための淡色塗装層用塗料は、有機溶剤で希釈した塗料でもよいが、水性塗料であることが好ましい。このように、水性塗料で淡色塗装層3を形成することによって、環境負荷を低減することができる。
【0024】
上記の水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。水性塗料には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方を配合しておくことが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることができ、あとでクリアー層5又は熱線遮蔽層6を水性塗料で形成する際に滲みを防止することができ、発色性も向上させることができる。ここで、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができる。吸湿性樹脂としては、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインク吸収性ポリマー等を用いることができる。また水性塗料には、着色顔料を配合することができる。着色顔料は、酸化チタンを主成分とし、さらに酸化鉄やカーボンブラックが含有されていてもよい。着色顔料における各成分の含有量を調整することによって、淡色塗装層3を所望の淡色とすることができる。
【0025】
インクジェット印刷層4は、淡色塗装層3の表面に形成される。インクジェット印刷層4は、インクジェット印刷により所望の色柄パターンで構成されている。インクジェット印刷層4を形成するためのインクとしては、例えば、水性インク、溶剤インク、UVインク等を用いることができる。水性インクは環境負荷の低減に効果的である。溶剤インクは速乾性に優れている。UVインクはさらに速乾性に優れ、環境負荷の低減にも効果的である。
【0026】
耐候性及び耐水性等の観点から、インクには、染料よりも無機顔料又は有機顔料が含まれていることが好ましい。例えば、無機顔料の一種である弁柄やオーカー等は酸化鉄(Fe
2O
3)等の金属酸化物を主成分とするものであるが、このような無機顔料は、光半導体としての性質も有している。そのため、もし無機顔料と有機顔料とが同じインクジェット印刷層4に共存していると、無機顔料が光半導体として作用することによって有機顔料が劣化し、早期に色褪せが生じてしまうおそれがある。そこで、顔料としては無機顔料又は有機顔料のいずれかを用いることが好ましい。
【0027】
無機顔料を含むCMYKの4色のインクとしては、次のようなものを用いることができる。
【0028】
すなわち、シアン(C)のインクとしては、Co−Al系ブルー、Co−Al−Cr系ブルーから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0029】
またマゼンタ(M)のインクとしては、赤色酸化鉄、Fe−Zn系ブラウン、Fe−Zn−Cr系ブラウン、Fe−Ni−Al系ブラウンから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0030】
またイエロー(Y)のインクとしては、黄色酸化鉄、Ti−Ni−Ba系イエロー、Ti−Sb−Ni系イエロー、Ti−Nb−Ni系イエロー、Ti−Sb−Cr系イエローから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0031】
またブラック(K)のインクとしては、黒色酸化鉄、Cu−Cr系ブラック、Cu−Cr−Mn系ブラック、Cu−Fe−Mn系ブラック、Co−Fe−Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0032】
有機顔料を含むCMYKの4色のインクとしては、次のようなものを用いることができる。
【0033】
すなわち、シアン(C)のインクとしては、フタロシアニンブルーを含有するものを用いることができる。
【0034】
またマゼンタ(M)のインクとしては、ジケトピロロピロール系顔料(DPP)、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料から選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0035】
またイエロー(Y)のインクとしては、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料から選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0036】
またブラック(K)のインクとしては、カーボン、ペリレン系顔料から選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0037】
クリアー層5は、上述のようにインクジェット印刷層4の表面に任意に形成される。クリアー層5は、可視光線を透過するように構成されている。この場合の可視光線の波長は、後述の熱線遮蔽層6を透過する可視光線の波長と同様でよい。クリアー層5を透過する可視光線の透過率も、後述の熱線遮蔽層6を透過する可視光線の透過率と同様でよい。クリアー層5を形成するためのクリアー層用塗料は、環境負荷の低減の観点から、水性塗料であることが好ましい。クリアー層用塗料に紫外線吸収剤を配合して、クリアー層5が紫外線を吸収するように構成されていてもよい。
【0038】
上記の水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることが好ましい。これにより、あとで形成される熱線遮蔽層6をクリアー層5に強く付着させることができる。水性塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくことが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。水性塗料の固形成分濃度は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上(実質上の上限は60質量%)であることがより好ましい。これにより、速く乾燥させることができ、インクの滲みを防止することができる。
【0039】
熱線遮蔽層6は、インクジェット印刷層4の表面に形成される。インクジェット印刷層4の表面にクリアー層5を形成する場合にはクリアー層5の表面に熱線遮蔽層6が形成される。熱線遮蔽層6は、可視光線を透過し、かつ赤外線を反射又は吸収して熱線を遮蔽するように構成されている。この場合の可視光線の波長は、例えば約380〜780nmの範囲内である。赤外線の波長は、淡色塗装層3が反射する赤外線の波長と同様でよいが、さらに波長の長い近赤外線の波長まで網羅することが望ましく、具体的には例えば約780〜2500nmの範囲内であることが好ましい。
【0040】
熱線遮蔽層6は、金属酸化物粒子と、オルガノポリシロキサン系樹脂とを含有することが好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、スズドープ酸化アンチモン(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO
2)を挙げることができる。これらの他に、熱線反射特性あるいは熱線吸収特性を有する銅、鉄、マンガン、ビスマスの複合酸化物も挙げることができる。オルガノポリシロキサン系樹脂は耐熱性に優れている。そのため、熱線遮蔽層6を形成するための熱線遮蔽層用塗料には、上記の金属酸化物粒子と、オルガノポリシロキサン系樹脂とが含有されていることが好ましい。
【0041】
金属酸化物粒子の平均粒子径は0.02〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。本実施形態において平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0042】
熱線遮蔽層6は、上記のような金属酸化物粒子によって、可視光線を透過させ、かつ赤外線を反射又は吸収させることができる。赤外線が反射又は吸収されて熱線が遮蔽されることにより、外壁材の内側に熱をこもりにくくすることができる。例えば太陽光が外壁材の外側に当たった場合、内側に熱をこもりにくくすることができる。そして金属酸化物が赤外線を吸収して熱に変換した場合であっても、耐熱性を有するオルガノポリシロキサン系樹脂によって、熱線遮蔽層6自体の熱劣化を抑制して耐候性を向上させることができる。
【0043】
オルガノポリシロキサン系樹脂としては、例えば、特許第3242442号公報に記載されているように、次のような(A)〜(C)成分が配合されたコーティング用組成物を用いることができる。すなわち、
(A)一般式(I)
R
1nSiX
4−n…(I)
(式中、R
1は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液、
(B)平均組成式(II)
R
2aSi(OH)
bO
(4−a−b)/2…(II)
(式中、R
2は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)で表わされ、成分中のR
2にフェニル基を全R
2基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン、および、
(C)(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する触媒を必須成分とし、(A)成分においてシリカを固形分として5〜95質量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、(A)成分1〜99質量部に対して(B)成分99〜1質量部が配合されているコーティング用組成物である。
【0044】
熱線遮蔽層6の日射反射率は5〜30%の範囲内であり、又は日射吸収率は10〜40%の範囲内であることが好ましい。日射反射率は、JIS A5759に規定の方法によって求めることができる。日射吸収率は、「日射吸収率=100−日射反射率−日射透過率」の式によって求めることができる。この式中の日射透過率も、JIS A5759に規定の方法によって求めることができる。日射反射率又は日射吸収率は、例えば熱線遮蔽層6における金属酸化物粒子の含有量などにより調整することができる。このように熱線遮蔽層6の日射反射率又は日射吸収率を調整すれば、外壁材の内側に熱をこもりにくくすることができる。
【0045】
熱線遮蔽層6の可視光線透過率は50%以上であることが好ましい。可視光線透過率は、JIS A5759に規定の方法によって求めることができる。可視光線透過率は、例えば熱線遮蔽層6における金属酸化物粒子の平均粒子径などにより調整することができる。このように熱線遮蔽層6の可視光線透過率を調整すれば、熱線遮蔽層6を透してインクジェット印刷層4を視認しやすくすることができる。
【0046】
機能層7は、熱線遮蔽層6の表面に形成される。機能層7は、外壁材の外側に位置し、可視光線を透過し、かつ親水性又は撥水性を有するように構成されている。この場合の可視光線の波長は、熱線遮蔽層6を透過する可視光線の波長と同様でよい。機能層7が親水性又は撥水性を有していることにより、外壁材の最表面に位置する機能層7への汚れの付着を抑制することができ、たとえ機能層7に汚れが付着したとしてもこの汚れを容易に水などで洗い流すことができる。
【0047】
機能層7は、オルガノポリシロキサン系樹脂を含有することが好ましい。オルガノポリシロキサン系樹脂としては、上述の(A)〜(C)成分が配合されたコーティング用組成物を用いることができる。このコーティング用組成物を機能層用塗料として用いて機能層7を形成すると、オルガノポリシロキサン系樹脂によって、外壁材の防汚性をさらに向上させることができる。
【0048】
機能層7に親水性を付与するにあたっては、機能層7に酸化チタン等の光触媒を含有させることが好ましい。これにより、外壁材の最表面の機能層7に太陽光が当たった場合に、機能層7に付着している有機化合物などの汚れを光触媒によって分解することができる。分解された汚れは水などで容易に洗い流すことができるので、外壁材の防汚性をさらに向上させることができる。
【0049】
機能層7に撥水性を付与するにあたっては、例えば、飽和フルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基などの官能基をもつ物質を機能層7に含有させる。
【0050】
次に
図2に示す外壁材の製造方法について説明する。
【0051】
まず基材1の表面に下塗層用塗料を塗布し、焼付け乾燥することによって下塗層2を形成することができる。この場合、下塗層用塗料を基材1の表面に塗布量1〜300g/m
2で塗布することが好ましい。焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、60〜250℃、0.1〜20分の条件で行うことが好ましい。
【0052】
次に、下塗層2の表面に淡色塗装層用塗料を塗布し、焼付け乾燥することによって淡色塗装層3を形成することができる。この場合、淡色塗装層用塗料を下塗層2の表面に塗布量30〜200g/m
2で塗布することが好ましい。焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、100〜130℃、1〜20分の条件で行うことが好ましい。
【0053】
次に、淡色塗装層3の表面にインクジェット印刷することによってインクジェット印刷層4を形成することができる。
【0054】
ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、
図3に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、噴射ノズル8を設けた塗装ノズルヘッド9、塗装ノズルヘッド9の噴射ノズル8にインクを供給する塗料供給タンク10、塗装ノズルヘッド9の噴射ノズル8からのインクの噴射を制御する塗装制御システム11などを設けた塗装機12と、基材1を搬送する搬送コンベア13とを備えて形成されている。
【0055】
塗装ノズルヘッド9は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド9c、9m、9y、9kで形成され、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク10も同様に4種類のものからなる。シアンのインクを供給する塗料供給タンク10cは塗装ノズルヘッド9cに、マゼンタのインクを供給する塗料供給タンク10mは塗装ノズルヘッド9mに、イエローのインクを供給する塗料供給タンク10yは塗装ノズルヘッド9yに、ブラックのインクを供給する塗料供給タンク10kは塗装ノズルヘッド9kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド9c、9m、9y、9kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0056】
塗装制御システム11は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成され、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成されている。塗装データ作成部は、原画をスキャン等して得た色柄パターンのデータを入力して保存する。塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄パターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力する。また噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド9c、9m、9y、9kの各噴射ノズル8に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル8を制御する。各噴射ノズル8は例えばピエゾ制御方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル8を制御することによって、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができる。
【0057】
搬送コンベア13は、塗装機12の下方に配置される。搬送コンベア13は、ベルトコンベアで形成することができる。
【0058】
そして、上記のインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、淡色塗装層3が形成された基材1を搬送コンベア13上に導入する。導入された基材1はそのまま送られて塗装機12の塗装ノズルヘッド9c、9m、9y、9kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア13で送りながら、塗装ノズルヘッド9c、9m、9y、9kからインクを噴射させて塗着させることによって、淡色塗装層3の表面にインクジェット印刷層4を形成することができる。
【0059】
次に、インクジェット印刷層4の表面にクリアー層用塗料を塗布し、焼付け乾燥することによってクリアー層5を形成することができる。この場合、クリアー層用塗料をインクジェット印刷層4の表面に塗布量20〜200g/m
2で塗布することが好ましい。焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、100〜200℃、30秒以上の条件で行うことが好ましい。
【0060】
次に、クリアー層5の表面に熱線遮蔽層用塗料を塗布し、焼付け乾燥することによって熱線遮蔽層6を形成することができる。この場合、熱線遮蔽層用塗料をクリアー層5の表面に塗布量30〜100g/m
2で塗布することが好ましい。焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜180℃、30秒以上の条件で行うことが好ましい。
【0061】
次に、熱線遮蔽層6の表面に機能層用塗料を塗布し、焼付け乾燥することによって機能層7を形成することができる。この場合、機能層用塗料を熱線遮蔽層6の表面に塗布量30〜100g/m
2で塗布することが好ましい。焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜180℃、30秒以上の条件で行うことが好ましい。このようにして
図2に示すような外壁材を得ることができる。下塗層2及びクリアー層5の形成を省略すれば、
図1に示すような外壁材を得ることができる。
【0062】
下塗層用塗料、淡色塗装層用塗料、クリアー層用塗料、熱線遮蔽層用塗料、機能層用塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0063】
上記のようにして得られた
図2に示す外壁材の外側に太陽光が当たると、可視光線は、機能層7、熱線遮蔽層6、クリアー層5を透過するので、これらの層を透して外壁材の外側からインクジェット印刷層4を視認することができる。赤外線等の熱線は、機能層7を透過するが、熱線遮蔽層6によって反射されたり吸収されたりして遮蔽される。これによりインクジェット印刷層4が熱劣化することを抑制して耐候性を向上させることができる。熱線遮蔽層6に上述の金属酸化物粒子が含有されていれば、熱線遮蔽層6によって紫外線も遮蔽することができ、インクジェット印刷層4が紫外線により劣化することも抑制することができる。また赤外線等の熱線の一部が、熱線遮蔽層6及びインクジェット印刷層4を透過しても、淡色塗装層3によって外壁材の外側に反射される。このようにして外壁材の内側に熱をこもりにくくすることができ、建築物の内部の温度上昇を抑制して省エネルギーを実現することができる。さらに機能層7は、親水性又は撥水性を有しているので、汚れが付着しにくく、付着したとしても容易に水などで洗い流すことができる。このようにして外壁材の防汚性を向上させることができる。以上の効果は、クリアー層5のない
図1に示す外壁材であっても得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0065】
(実施例1)
基材1としては、窯業系セメント基板を用いた。まず基材1の表面に下塗層用塗料を塗布量100g/m
2でスプレーガンを用いて塗布し、焼付け乾燥することによって下塗層2を形成した。下塗層用塗料としては、アクリルエマルション樹脂エナメル塗料を用いた。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、110℃、3分の条件で行った。
【0066】
次に、下塗層2の表面に淡色塗装層用塗料を塗布量100g/m
2でスプレーガンを用いて塗布し、焼付け乾燥することによって淡色塗装層3を形成した。淡色塗装用塗料としては、アクリルエマルション樹脂エナメル塗料を用いた。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、110℃、3分の条件で行った。
【0067】
次に、淡色塗装層3の表面にインクジェット印刷することによってインクジェット印刷層4を形成した。インクとしては、インクジェット用水性インク(アゾ系赤インク)を用いた。印刷濃度は30%とした。
【0068】
次に、インクジェット印刷層4の表面にクリアー層用塗料を塗布量50g/m
2でスプレーガンを用いて塗布し、焼付け乾燥することによってクリアー層5を形成した。クリアー層用塗料としては、アクリルエマルション樹脂クリアー塗料を用いた。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、110℃、1秒の条件で行った。
【0069】
次に、クリアー層5の表面に熱線遮蔽層用塗料を塗布量50g/m
2でスプレーガンを用いて塗布し、焼付け乾燥することによって熱線遮蔽層6を形成した。熱線遮蔽層用塗料としては、ATO含有ポリシロキサン系クリアーコートを用いた。ATO含有ポリシロキサン系クリアーコートは、金属酸化物粒子であるATOと、オルガノポリシロキサン系樹脂とを含有し、ATO含有量はPWC(pigment weight content)換算で50%である。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、150℃、60秒の条件で行った。
【0070】
次に、熱線遮蔽層6の表面に機能層用塗料を塗布量50g/m
2でスプレーガンを用いて塗布し、焼付け乾燥することによって機能層7を形成した。機能層用塗料としては、光触媒コーティング材を用いた。焼付け乾燥は、ジェット乾燥機を用いて、150℃、60秒の条件で行った。このようにして
図2に示すような外壁材を得た。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、下塗層2及びクリアー層5の形成を省略して、
図1に示すような外壁材を得た。
【0072】
(比較例1)
実施例1において、熱線遮蔽層6及び機能層7の形成を省略して、外壁材を得た。
【0073】
表1に実施例1、2及び比較例1の外壁材の塗装仕様及び評価結果を示す。
【0074】
各外壁材における淡色塗装層3のCIEで規定のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値は、色彩色差計を用いて測定した。
【0075】
実施例1、2の外壁材における熱線遮蔽層6の日射反射率、日射吸収率及び可視光線透過率は、次のようにして求めた。まず厚さが5μmとなるように熱線遮蔽層用塗料をPETフィルムの表面に塗布し、この塗布面を厚さ3mmの板ガラスの表面に重ね、気泡が入らないようにPETフィルム及び板ガラスを均一にはり付けて試験片を作製した。次にJIS A5759に規定の方法によって、この試験片の日射反射率、日射透過率及び可視光線透過率を求めた。試験片の日射吸収率は、「日射吸収率=100−日射反射率−日射透過率」の式によって求めた。
【0076】
(インクの褪色)
外壁材にスーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて、照度180W/m
2、波長300〜400nmの試験条件で1000時間、紫外線を照射した。色彩色差計を用いて照射前後の色差(ΔE)を求めた。
【0077】
(遮熱性能)
外壁材の表面から外部に300mm離れた箇所に白熱電球(100W)を設置し、この白熱電球を2時間点灯させた後の外壁材の表面温度及び裏面温度を測定し、この両者の温度差(ΔT)を求めた。この温度差が大きい方が遮熱効果が大きい。
【0078】
(耐汚染性)
耐汚染性は、次のようなカーボン汚染試験を行って評価した。外壁材の機能層の表面に5質量%カーボンブラック水分散液を噴霧した後、この表面を流水で洗浄した。そして、5質量%カーボンブラック水分散液の噴霧前における機能層の表面の明度と流水洗浄後における機能層の表面の明度との差(ΔL
*)で耐汚染性を評価した。ΔL
*が2以下の場合を「○」、2より大きく5未満の場合を「△」、5以上の場合を「×」と判定した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から明らかなように、実施例1、2の外壁材の方が、比較例1の外壁材に比べて、熱が内側にこもりにくく、インクジェット印刷層4の熱劣化を抑制して耐候性を向上させることができ、さらに防汚性を向上させることができることが確認された。